JP4018762B2 - モリブデンエポキシ化触媒分を分離する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
オレフィンと有機ヒドロペルオキシドとの触媒反応によるオキシラン化合物たとえば酸化プロピレンの生産は、大きな商業的重要性を有する方法である。一般に、均一モリブデン触媒が使用される。酸化プロピレンとスチレンモノマーとの同時生産のためのオキシラン法(Oxirane Process)は、この技術の例である。
【0002】
本発明の方法は、前記のエポキシ化プロセス技術における、モリブデンエポキシ化触媒分の分離に関する。
【0003】
【従来の技術】
酸化プロピレンとスチレンモノマーとの同時生産のための非常に成功した方法は、エチルベンゼンを分子酸素酸化してエチルベンゼンヒドロペルオキシドを生成させること、このヒドロペルオキシドをプロピレンと触媒反応させて酸化プロピレンと1−フェニルエタノールを生成させること、およびこの1−フェニルエタノールを脱水してスチレンモノマーとすること、を含む。この方法に関する基本特許は、米国特許第3,351,635号である。
【0004】
前記方法の実施において、エポキシ化反応混合物は、通常未反応プロピレンを蒸留によって分離してから、苛性ソーダ水溶液で処理される。この苛性ソーダ水溶液は、含まれるモリブデン分と反応してモリブデン酸ナトリウムを生成し、かつやはりエポキシ化生成物(epoxidate)に含まれる有機不純物たとえば酸およびフェノールと反応するのに必要な量よりも過剰に使用される。たとえば、米国特許第4,405,572号、第5,276,235号、および第5,171,868号明細書を参照されたい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記の先行技術に含まれる問題は、モリブデン、ナトリウム、および有機物を含む割合に大量の水性プロセス流の発生と、そのような水性プロセス流の廃棄とである。モリブデンの存在が特に面倒なことである。この物質は下水への排出に先立って環境規制を満たすように除去しなければならないからである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、モリブデン分とナトリウム分、および有機物を含む水性プロセス流がたとえば灰化によって処理され、まず有機物が分離される。灰化工程中、モリブデン分とナトリウム分からなる粒状灰が焼却炉中を焼却炉ガスとともに下方に通過する。灰含有ガスは水と混合することによって冷却され、焼却炉排出流(blowdown)が生成される。この排出流は、エポキシ化プロセス流からのモリブデン分をモリブデン酸ナトリウムとして、ナトリウム分を炭酸ナトリウムとして含む水溶液である。この排出流溶液は重金属モリブデンを含み環境に危険性を与えるため、そのまま排出することはできない。本発明によれば、この水性排出流をたとえばHClによって酸性化して、炭酸塩が、容易に除去できるCO2 に転換されるようにする。そのあと、実質的に炭酸塩を含まない流れを、本発明に従って慎重に制御した条件下で処理し、含まれるモリブデン分をCaMoO4 に転換させる。CaMoO4 は溶液から沈殿し、採取される。このあと、含有モリブデン量が大幅に減少した生成水溶液は、最小限の後続処理で廃棄することができて好都合である。
【0007】
本発明によるモリブデン分のCaMoO4 への転換に先立って、灰化のかわりに、他の方法たとえば含水空気(wet air)酸化あるいはバイオ処理(biotreatment)を用いて有機物を除去することができる。この場合、CO2 分離のための前述の酸性化は必要でない。しかし、灰化が有機物分離のための好ましい方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、モリブデン触媒分、苛性ソーダ処理からのナトリウム分、および有機物を含む水性エポキシ化流が公知の方法によって灰化される。実質的に完全な有機物の燃焼が達成される。モリブデン分とナトリウム分は水性の焼却炉排出流として採取される。
【0009】
そのあと、モリブデンおよびナトリウム含有排出流は5よりも小さなpHまで酸性化され、適当な攪拌により炭酸塩がCO2 に転換され、CO2 は気化・分離される。ナトリウムは添加された酸のナトリウム塩に転換される。CO2 除去の達成には、温度25℃〜沸点を使用することができる。残留溶解CO2 を最小限におさえるためには、高い温度が好ましい。必要または適当であれば、散布または沸騰法を使用することができる。酸性化とストリッピングによる炭酸塩の転換とCO2 除去は、CaMoO4 を生成させる後続の処理において、残留炭酸塩との反応によってCaCO3 が生じてカルシウム分の消費量が大きくなるという理由で重要である。
【0010】
次に、CO2 除去後の酸性化排出流溶液、または他の有機物除去法を用いた場合にこれに相当する水性のモリブデン含有流を処理して、含有モリブデン分を不溶性CaMoO4 に転換する。このCaMoO4 はろ過によって採取することができる。このステップには、いくつかの臨界的な点がある。溶液のpHはNaOH水溶液の添加によってpH6〜9好ましくは7〜8に調節される。一般に、カルシウム分は酸性化に使用される酸の塩の形(たとえば酸性化にHClが使用される場合、CaCl2 )で添加されるが、CaOHまたはCaOも使用することができる。
【0011】
モリブデン分のCaMoO4 への十分な転換を達成するためには、添加カルシウムの量を少なくとも1/1のCa/Moとしなければならない。Ca/Mo比が大きくなると、CaMoO4 への転換率が大きくなり、したがってモリブデンの除去百分率が大きくなる。好ましくは2/1〜100/1のCa/Mo比を使用し、さらに好ましくは3/1〜10/1とする。競合不純物たとえば炭酸塩または硫酸塩が存在する場合、大きなCa/Mo比が必要である。
【0012】
温度も同様に重要な考慮すべき事柄である。モリブデン分のCaMoO4 への迅速な転換を進行させるためには、約80℃から溶液の沸点までの温度を使用する。80℃以上の温度では、固体CaMoO4 は数分間のうちに生成されるが、一般に15分〜数時間で十分である。
【0013】
溶液のpHも同様に重要な変数である。CaMoO4 の適当な沈殿が起こるためには、溶液のpHが6〜9の範囲になければならない。この範囲内でははっきりした最適pHはないように思われる。
【0014】
本発明によれば、生成されるCaMoO4 は溶液から容易に沈降する微細な粒子である。固体はデカンテーションまたはろ過またはこれらの方法の組合せによって分離することができる。条件の適当な選択により、水溶液からの95%よりも多くのモリブデンの除去が達成される。
【0015】
【実施例】
以下、添付の図面を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。焼却炉の水性排出流は、ライン3から導入されるHClとともに、ライン2から帯域1に導入される。このHClの量は、生成される溶液のpHを約5に下げるのに十分なものである。帯域1の溶液の温度は80℃よりも高く保つことができ、焼却炉排出流内の炭酸塩分の酸性化の結果として生成される二酸化炭素がライン4から除去される。ストリッピングガスたとえば窒素(図示せず)を帯域1に導入して、CO2 除去を促進することができる。
【0016】
実質的に炭酸塩を含まない溶液が帯域1からライン5によってフィルター6に送られ、このフィルターにおいて、帯域1で生成される少量の固体が溶液からろ過され、ライン7によって除去される。これらの固体はMo、Fe、およびNaの化合物からなり、除去しないと、後続のCaMoO4 の生成と沈殿を妨害しうる。
【0017】
溶液はフィルター6からライン8を通って帯域9に送られる。苛性ソーダ水溶液がライン10から帯域9への供給流に加えられる。この苛性ソーダ水溶液の量は生成される溶液のpHを6〜9に増大させるのに十分なものである。また、帯域9への供給流にはライン11からCaCl2 水溶液流も加えられる。CaCl2 水溶液流の量は帯域9において少なくとも1/1のCa/Mo化学量論比、好ましくは少なくとも2/1のCa/Mo化学量論比を与えるのに十分なものである。
【0018】
帯域9においては、溶液温度が約88℃〜沸点に保たれ、滞留時間は15分以上である。ここでCaMoO4 が固体の不溶性沈殿として生成される。帯域9では通常の方法により適当な混合が行われる。
【0019】
固体含有溶液は帯域9からライン12を通ってフィルター13に達し、フィルター13において、CaMoO4 採取のためのライン14によって固体沈殿物が分離される。モリブデン分含有率が大幅に低下した溶液がライン15によって採取される。
【0020】
図面に示す単位部分(item)は下記のいずれかを示すものとすることができる。
【0021】
1)連続作業システムの場合、各帯域は単位操作を示す。
【0022】
2)回分作業システムの場合、帯域1と9はバッチ系列におけるステップを示す。
【0023】
この方法は連続作業とバッチ作業のいずれも可能である。
【0024】

添付の図面を参照しつつ説明する。酸化プロピレンおよびスチレンモノマープロセスからのモリブデン含有流を通常の方法によって灰化し、モリブデンと炭酸ナトリウムからなる排出流を採取した。7wt%の炭酸ナトリウム、5wt%の重炭酸ナトリウム、1100wtppmのMo、1100wtppmのS、および100wtppmのFeを含む排出流をライン2から帯域1に8160kg/hr(18000 lb/hr)の流量で供給した。また、37wt%のHClを含む塩酸水溶液流を、ライン3から帯域1に1620kg/hr(3580lb/hr)の流量で供給し、生成される混合物のpHを約5に調節した。帯域1において、溶液の温度を85℃に保ち、生成されるCO2 をライン4から488kg/hr(1075 lb/hr)の流量で除去した。
【0025】
実質的に炭酸塩を含まない溶液を帯域1からライン5によってフィルター6に送り、フィルター6において、100ppmの固体をライン7によって分離した。これら固体は主としてMo、Fe、およびNa分からなる。
【0026】
フィルター6からのろ液は、ライン8を通って、ライン11から導入される4.5kg/hr(10 lb/hr)の苛性ソーダ水溶液(50wt%NaOH)および138kg/hr(305 lb/hr)のCaCl2 水溶液(45wt%CaCl2 )と混合して、帯域9に達する。帯域9の混合物は完全に混合し、90℃に保った。滞留時間は30分である。帯域9において、供給溶液中のモリブデン分と導入カルシウム化合物との間で反応が起こり、モリブデン酸カルシウムが生成して沈殿した。帯域9からの混合物を、ライン12によってフィルター13に送り、フィルター13において、モリブデン酸カルシウムを溶液からろ過し、ライン14によって36kg/hr(80 lb/hr)の流量で除去した。ろ液を、ライン15によって9412kg/hr(20750 lb/hr)の流量で採取した。このろ液は25ppmのモリブデンを含む。この流れはそれ以上の処理なしで排出するのに適当である。
【図面の簡単な説明】
【図1】添付の図面は本発明の実施態様を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 水性排出流を酸性化する帯域
3 HCl導入ライン
9 CaMoO4 沈殿生成帯域
10 苛性ソーダ導入ライン
11 CaCl2 導入ライン
14 CaMoO4 採取ライン

Claims (7)

  1. モリブデン、ナトリウム、および有機物を含むエポキシ化プロセス流からモリブデンエポキシ化触媒分を分離する方法であって、
    前記プロセス流から有機物を分離し、
    モリブデン分とナトリウム分を含む水性流を採取し、
    この採取された流れを、pH6〜9、温度80℃〜沸点においてカルシウム化合物と反応させ、このとき添加Caと溶液中のMoとの比を少なくとも1/1とし、
    生成されるCaMoO4 固体を分離する、
    ことからなることを特徴とする方法。
  2. 添加CaとMoとの比が2/1〜100/1である請求項1に記載の方法。
  3. 有機物が灰化によって分離される請求項1に記載の方法。
  4. モリブデンとナトリウムを含むエポキシ化プロセス流からモリブデンエポキシ化触媒分を分離する方法であって、
    前記プロセス流を灰化し、
    この灰化工程からの、モリブデン分とナトリウム分を含む水性流を分離し、
    この分離された水性流を酸性化して、生成されるCO2 を分離し、残りの溶液を、pH6〜9、温度80℃〜沸点において、カルシウム化合物と反応させ、このとき添加Caと溶液中のMoとの比を少なくとも1/1とし、
    生成されるCaMoO4 固体を分離する、
    ことからなることを特徴とする方法。
  5. 前記分離された水性流が5よりも小さなpHとなるように酸性化される請求項4に記載の方法。
  6. 前記分離された水性流がHClによって酸性化される請求項4に記載の方法。
  7. 前記pHが7〜8である請求項4に記載の方法。
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