JP4018752B2 - コンフォメーション的に固定された主鎖環化ソマトスタチン類似体 - Google Patents
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Description
本発明は、新規な結合を介して環化され、コンフォメーション的に固定されたNα主鎖−環化ソマトスタチン類似体、これらの主鎖環化ペプチド類似体の製造法、これらのペプチド類似体の使用法およびそれらを含む医薬組成物に関する。
発明の背景
ソマトスタチン類似体
ソマトスタチンは、中枢神経系および周辺組織の両方に存在する環式テトラデカペプチドである。それは、最初に、哺乳類の視床下部から単離され、下垂体前葉製剤からの成長ホルモン分泌物の重要な阻害剤として同定された。その多重生物学的活性として、膵臓からのグルカゴンおよびインシュリンの分泌の抑制、ほとんどの消化管ホルモンの調節ならびに中枢神経系全体にわたる運動活性および認識過程に関与する他の神経伝達物質の放出の調節がある(概説としてLamberts, Endocrine Rev., 9:427, 1988を参照)。さらに、ソマトスタチンおよびその類似体は、様々な種類の腫瘍の治療に対して潜在的に有用な抗増殖剤である。
下記構造:
の天然のソマトスタチン(ソマトトロピン放出阻害因子(SRIF)としても知られる)は、最初に、Guilleminおよび同僚(Bruzeauら、Science, 179:78, 1973)によって単離された。このソマトスタチンは受容体のファミリーと相互作用することによってその効果を発揮する。近年、SSTR1-5と称する5つの受容体サブタイプが同定され、クローン化された。ソマトスタチンの天然形は、二つの望ましくない性質(生物学的利用能が小さく、作用時間が短い)を示すので、治療剤としての使用は限られる。この理由により、ここ20年間は、効力、生体安定性、作用時間、または成長ホルモン、インシュリンもしくはグルカゴンの放出の抑制を考慮した選択性のいずれかが優れたソマトスタチン類似体を見い出すためにかなりの努力がなされている。
構造−活性の関係の研究、円偏光二色性および核磁気共鳴などの分光学法、ならびに分子設計法から、次のことが分かる。すなわち、天然ソマトスタチンの環状部分のコンフォメーションは恐らく逆平行βシートであり;Phe6およびPhe11が二つの芳香環の間の疎水的相互作用によるファーマコホアコンフォメーション(pharmacophore conformation)の安定化において重要な役割を果たし;逆平行βシートのβ−ターンの周囲に広がる4個のアミノ酸Phe7−Trp8−Lys9−Thr10がファーマコホアに必須であり;(D)Trp8の方が(L)Trp8よりも、ソマトスタチン受容体サブタイプ2〜5との相互作用に好ましいということである。
にもかかわらず、
で表されるジスルフィド架橋によって結合したこれら4個のアミノ酸を含むヘキサペプチドソマトスタチン類似体は、in vitroおよびin vivoの両方においてほとんど不活性であるが、天然ソマトスタチンのPhe6−Phe11疎水的相互作用が共有ジスルフィド架橋で置き換えられるという利点がある。
このヘキサペプチドソマトスタチン類似体の活性を増加させるために、主要な4種類の方法が試みられている。すなわち、(1)ジスルフィド架橋を、シス−アミド結合を刺激する環化、または二環式類似体を生じる分子への第二の環化により置き換える。どちらの場合も、得られる類似体のコンフォメーションの自由度は減少する。(2)Phe7−(D)Trp8−Lys9−Thr10の配列のもとの残基を他の天然または非天然アミノ酸で置き換える、例えば、Phe7をTyr7で、Thr10をVal10で置き換える。(3)天然のソマトスタチンの別の官能基を組み入れて、これらの新しい要素が受容体との相互作用に寄与するようにする。(4)そのような類似体はより選択性が大きいと仮定して、4個のアミノ酸Phe7−(D)Trp8−Lys9−Thr10の一つを除去する。
ソマトスタチン類似体MK−678:
シクロ
は、上記の最初の3個の方法を使用して設計した、効力がかなり高いソマトスタチン類似体の一例である(Veberら、Life Science, 34:371, 1984)。このヘキサペプチド類似体では、シス−アミド結合がN−Me−AlaとPhe11との間に位置し、Tyr7およびVal10が各々、Phe7およびThr10と置き代わり、Phe11が天然のソマトスタチンから組み込まれる。
別のグループのソマトスタチン類似体(米国特許4,310,518および4,235,886)としては、オクトレオチド:
が挙げられ、これは、現在利用できる唯一の認知されたソマトスタチン類似体である。それは、上記の第三の方法を使用して開発された。この場合、(D)Phe5および還元されたC−末端のThr12−CH2OHは、各々、天然のPhe6およびThr12に利用できるコンフォメーション的空間の一部を占めると考えられる。
化合物 TT-232:
は、オクトレオチドに密接に関連し、上記の第四の方法を行う例である。Thr10の欠如が、恐らく、抗腫瘍活性に関する高い機能的選択性の一因である。
これらの効力の高いソマトスタチン類似体の例は、6および11位のフェニルアラニンがファーマコホアコンフォメーション(pharmaconhore conformation)の安定化において重要な役割を果たすだけでなく、受容体との相互作用において機能的役割を有することを示唆する。受容体との相互作用には一つのフェニルアラニン(Phe6またはPhe11)で十分であるか、または両方が必要であるかどうかは、まだ解決していない問題である。
現在、ソマトスタチン受容体は、5種類の受容体サブタイプのファミリーを構成し(BellおよびReisine, Trends Neurosci., 16, 34-38, 1993)、それらは、組織特異性および/または生物活性に基づいて区別することができることが知られている。従来公知のソマトスタチン類似体は、十分な選択性、または受容体サブタイプ選択性(特に、抗腫瘍剤として)を付与しない(ReubiおよびLaissue, TIPS, 16, 110-115 ,1995)。
転移性類癌腫に関連する症状(潮紅および下痢)および血管作用性腸管ペプチド(VIP)分泌腺腫に関連する症状(水様性下痢)は、ソマトスタチン類似体によって治療される。ソマトスタチンは、重度の胃腸の出血の治療に対しても認可されている。ソマトスタチンはまた、その抗分泌活性により、他のホルモン分泌腫瘍(例えば、膵臓島−細胞腫瘍および先端巨大症)およびホルモン依存性腫瘍(例えば、軟骨肉腫および骨肉腫)の姑息的治療にも有用である。
ペプチド模倣体
有機化学および分子生物学の大きな進歩の結果、現在、多くの生物活性ペプチドを、薬剤および臨床用途に十分な量で製造することができる。すなわち、ここ2、3年で、ペプチドが関与している病気の処置および治療に対する新しい方法が確立されてきた。しかし、ペプチドの薬物としての使用は、次の要因により制限される。すなわち、a)胃腸管および血清でのタンパク質分解に対する代謝安定性が低いこと、b)経口摂取後の吸収が、特にその分子量が比較的高いか、もしくは特異的輸送系に欠けるか、またはその両方のために、悪いこと、c)肝臓および腎臓を通過する排出が速いこと、およびd)ペプチド受容体は生物体に広く分布し得るので、標的としない器官系において所望しない副作用があることである。
さらに、2、3の例外を除いて、大きさが小〜中(30未満のアミノ酸)の天然のペプチドは、希釈水溶液に動的平衡にある多数のコンフォメーションで無秩序に存在し、その結果、受容体の選択性に欠け、代謝を受けやすく、生物学的に活性なコンフォメーションを測定するための試みを妨害するようになり得る。ペプチドがそれ自体生物学的に活性なコンフォメーションを有する、すなわち受容体に結合したコンフォメーションを有する場合は、結合時のエントロピーの減少が、柔軟なペプチドの結合に対する減少より小さいので、受容体に対する親和性の増加が予想される。従って、秩序があり、均質で、生物学的に活性なペプチドを求め、開発することが重要である。
近年、その原型の天然ペプチドよりも好ましい薬理特性を示すペプチド模倣体またはペプチド類似体を開発するためにかなりの努力がなされてきた。その薬理特性が最適化された天然ペプチド自体は、一般的に、これらのペプチド模倣体を開発するための模範としての役目を果たす。しかし、そのような物質の開発における大きな問題は、生物学的に活性なペプチドの活性領域の発見である。例えば、少数のアミノ酸(通常は4〜8個)のみが受容体によるペプチドリガンドの認識に寄与することが多い。この生物学的に活性な部位がいったん決定されると、ペプチド模倣体を開発するための模範構造は、例えば構造−活性の関係の研究によって最適化することができる。
本明細書で使用する「ペプチド模倣体」は、受容体のリガンドとして、ペプチドの生物学的効果を受容体レベルで模倣(作動物質)または遮蔽(拮抗物質)することができる化合物である。最も可能性のある作動物質としてのペプチド模倣体を達成するためには、次の因子を考慮すべきである。すなわち、a)代謝安定性、b)良好な生物学的利用能、c)高い受容体親和性および受容体選択性、ならびにd)最少の副作用である。
一般に適用できる、最近成功した方法は、コンフォメーション的にが制限されたペプチド模倣体の開発である。それは、内因性ペプチドリガンドの受容体に結合したコンフォメーションをできるだけ正確に模倣したものである(RizoおよびGierasch, Ann. Rev. Biochem., 61:387, 1992)。これらの型の類似体を調べると、プロテアーゼに対する耐性が増加していることが分かる。すなわち、代謝安定性が増加するとともに選択性が増加し、それにより、副作用が少なくなる(VeberおよびFriedinger, Trends Neurosci., p. 392, 1985)。
コンフォメーションが固定されたそれらのペプチド模倣体化合物がいったん製造されると、最も活性の高い構造は、構造と活性との関係を調べることにより選択される。そのようなコンフォメーション的な固定は、構造の局所の変化または全体的なコンフォメーションの束縛を含み得る(再検討には、GiannisおよびKolter, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32:1244, 1993参照)。
コンフォメーション的に固定されたペプチド類似体
ペプチドの隣接する二つのアミノ酸の間の架橋は、局所的なコンフォメーションの変化をもたらし、その柔軟性は、正規のジペプチドと比較して制限される。そのような架橋を形成するためのいくつかの可能性として、ラクタムおよびピペラジノンの組み込みが挙げられる。γ−ラクタムおよびδ−ラクタムは、ある程度「回転模倣体(turn mimetics)」として設計されており、いくつかの場合、そのような構造のペプチドへの組み込みは、生物学的に活性な化合物をもたらす。
ペプチドのコンフォメーションにおける全体的な制限は、環化によりペプチド鎖の柔軟性を制限することにより可能である(Hrubyら、Biochem. J., 268:249, 1990)。生物活性ペプチドの環化は、その代謝安定性および受容体の選択性を改善するだけでなく、コンフォメーションの均質性を高める束縛を付与し、コンフォメーション分析を容易にする。環化の通常の形は、天然の環式ペプチドに見られるものと同じである。これらは、側鎖−側鎖の環化または側鎖−末端基の環化を含む。この目的のために、受容体の認識に関与しないアミノ酸の側鎖を、共に、またはペプチド主鎖に結合させる。別の通常の環化は、末端−末端の環化である。
これらの古典的環化形式に対する主な制限は、それらが、環化を達成するためにアミノ酸側鎖の置換を必要とすることである。
ペプチドのコンフォメーションの固定に対する別の概念上の方法が、Gilonら(Biopolymers, 31:745, 1991)によって導入された。彼らは、ペプチドの主鎖−主鎖環化を提案した。この方法の理論的利点として、所与のペプチドの特異的受容体との相互作用に対して重要であり得る側鎖を妨害することなく、ペプチドの主鎖の炭素または窒素により環化を行うことができることが挙げられる。その概念は、興味のある直鎖状ペプチドに適用できるものとして意図されたが、実際問題として、その提案された方法には、架橋基を介して結合すべきアミノ酸を置換するために使用されなければならない適当なビルディング単位の入手可能性という制限因子があった。主鎖環化のこの概念は、グリシン以外のアミノ酸のビルディング単位の実用的な製造法を見いだすことができないことにより、現実には実施できなかった(Gilonら、J. Org. Chem., 587:5687, 1992)。
Gilon, EPO出願第564,739 A2号およびJ. Org. Chem., 57:5687, 1992には、ビルディング単位を合成するための基本的な二つの方法が記載されている。第一の方法は、ジアミンと臭素酸との反応で開始する。ωアミンを選択的に保護し、さらに保護基を合成することにより、Boc化学ペプチド合成に適するビルディング単位が得られる。第二の方法は、ジアミンの選択的保護および生成物のクロロ酢酸との反応で開始し、Fmocペプチド合成に適する保護されたグリシン誘導体を得る。
主鎖環化ペプチド類似体の概念を利用する別のモードがWO95/33765に開示されており、同様にグリシン以外のビルディング単位の新規の合成方法が提供されている。W095/33765において開示されているペプチド類似体のファミリーの中には、種々のソマトスタチン類似体がある。上記出願に開示されているいずれの類似体のファミリーも、受容体サブタイプに結合するにあたって固有の性質、または予期できない利点を有しているとは示されていない。
主鎖環化ペプチド類似体のライブラリー
上述したように、直鎖ペプチドは、in vivoにおいてひどく不安定であり、しばしば受容体に対する高度な結合親和性を欠き、1つの種類の受容体に対する選択性をよく欠き、概して経口摂取による生体内での利用可能量が低く、可能性のある薬剤としてはいくつかの重大な欠点を有する。これらの問題を克服するために、合成ペプチドライブラリーに関連して開発された方法論を利用して、環状ペプチド、新規のバイオポリマー、そしてさらには新規の分枝オリゴマー化合物の集合を生成することも可能である(Zuchkermann, Current Opinion in Structural Biology 3, 580-584, 1993に概説されている)。
環状ペプチドのライブラリーの生成には、上述した考慮点に加えて、環化反応が高い収量かつ最小限の追加の操作で行われることが必要となる。残念ながら、古典的な環化反応は、期待される収量の点で配列に大きく依存し、ペプチド混合物の均一な環化を不確実なものにする。
固体担体上でのペプチドの直接環化における近年の進歩により、合成過程が改良され、公知の環化スキームに基づく環化反応の自動化さえ可能になった。過去には、環化は典型的には、高い希釈条件下の溶液中にて行われた。ポリマーに支持された(polymer-supported)環化は、オリゴマー化(origomerization)等の潜在的な副作用を回避し、生成物精製を容易にすることの両方が可能である。例えば、近年、2本の側鎖の間にチオエーテル、ジスルフィド、またはラクタムで形成された架橋を有する環状ペプチド、アミノ末端と側鎖との間にラクタムで形成された架橋を有する環状ペプチド、そしてアミノおよびカルボキシ末端の間にラクタムで形成された架橋を有する環状ペプチドを調製するために樹脂上環化法(on-resin cyclization methods)が使用されている(Zuckermann, Current Opinion in Structural Biology 3,前掲に概説されている)。
組み合わせライブラリー中の樹脂結合環状ペプチドおよび遊離環状ペプチドの使用が、WO92/00091に開示されている。しかし、これらの環状ペプチドは、コンフォメーション的に固定されたエレメントを全く含まず、環化が達成された場合には、これらのペプチドはやはりいくつかのコンフォメーションを取り、直鎖ペプチドと同じ多くの欠点を有する可能性がある。
WO95/01800に開示されているセミランダム環状ペプチドライブラリーは、排他的に、1つ以上のランダム化されたアミノ酸、および隣接するアミノ酸残基同士のβターン角を固定するプロリン等のアミノ酸残基の形態でコンホーメーション的に固定されたエレメントを含む環状ペンタ-ペプチドライブラリーおよびヘキサ−ペプチドライブラリーである。上記方法の発明者らは、このようなコンフォメーション的に固定されたエレメントの利点に重点をおいている。しかし、特定のアミノ酸残基をペプチド配列に組み入れることによってこのようなエレメントを包含することは、受容体認識または他の生物学的活性に必要な残基に対して好ましくない影響を及ぼし得る。さらに、上記開示(WO95/01800)において、環化反応は、直鎖ペプチドの末端アミノ基が該ペプチドの末端カルボキシ基に結合されるただの結合反応でしかない。
発明の要旨
本発明により、αアミノ酸のα窒素に架橋基が結合した新規のビルディング単位を組み入れたことを特徴とする新規のペプチド模倣化合物が生成された。
本アプローチの最も顕著な利点は:
1)本方法により、ペプチドのいずれの側鎖も弱める(compromising)ことなくペプチド配列の環化が可能になり、その結果、生物学的認知および機能に必須の官能基を損ねる機会が低くなる。
2)本方法により、環において、架橋の長さ、方向、および結合の型(例えば、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、チオエステル等)ならびに結合の位置の置換が可能になり、ペプチドコンフォメーションの最適化が可能になる。
3)公知の活性を有する直鎖ペプチドの環化に適用された場合、ペプチドの活性領域およびそのコグネイト受容体との相互作用が最小限となるように架橋を設計することができる。これにより、環化アームが認知および機能を妨害する機会が減り、また、放射性トレーサー、細胞障害性薬剤、光捕捉物質(lightcapturing substances)、または他の所望の標識等のタグの付着に適した部位をつくる。
本発明により開示される新規に生成されたライブラリーは、ペプチドが作用物質または拮抗物質としての役割を果たすのに最適な主鎖コンフォメーションを見出すために、種々のコンフォメーション、および種々の柔軟性(固定)レベルを可能にする。これは、橋頭の両方の位置(即ち、環化されるべき残基の直鎖配列における位置)を変化させ、かつこれらの単位間の架橋の長さ、方向および結合の型を変化させることによって達成される。
本発明の別の目的は、以下に記載する架橋基に結合されたペプチド主鎖の窒素原子を1個含むペプチド配列からなる主鎖環化ソマトスタチン類似体を提供することである。本発明においては、1対またはそれ以上のビルディング単位が一緒に結合して環構造を形成している。かくして、本発明の一態様によると、一般式(I):
〔式中、a〜cはそれぞれが独立に1〜8の整数またはゼロを表し;(AA)はアミノ酸残基を表し、その際、各鎖中のアミノ酸残基は同じでも異なっていてもよく;QはHまたはアシル基を表し;Eはヒドロキシル基、カルボキシル保護基またはアミノ基を表し、また、末端カルボキシ基はCH2-OHに還元することができ;R1およびR2はそれぞれが特定の保護基と結合していてもよいアミノ酸側鎖であり;そして線は式:(i) -X-M-Y-W-Z- または(ii) -X-M-Z-の架橋基を表し、MおよびWは独立にアミド、チオエーテル、チオエステル、およびジスルフィドよりなる群から選ばれ;そしてX、YおよびZはそれぞれが独立にアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、ホモ−またはヘテロ−シクロアルキレンおよび置換シクロアルキレンよりなる群から選ばれる〕
を有する主鎖環化ソマトスタチン類似体が提供される。
いくつかの好ましい態様において、式(I)の末端カルボキシ基はカルボキシ末端アミドに置換されるか、またはCH2OH基に還元される。
本発明の別の態様は、一般式(II):
〔式中、d〜fはそれぞれが独立に1〜8の整数またはゼロを表し;(AA)はアミノ酸残基を表し、その際、各鎖中のアミノ酸残基は同じでも異なっていてもよく;QはHまたはアシル基を表し;Eはヒドロキシル基、カルボキシル保護基またはアミノ基を表し、また、末端カルボキシ基はCH2−OHに還元することができ;R1は特定の保護基と結合していてもよいアミノ酸側鎖(H、CH3など)であり;そして線は式:(i) -X-M-Y-W-Z- または(ii) -X-M-Z-の架橋基を表し、MおよびWは独立にアミド、チオエーテル、チオエステル、およびジスルフィドよりなる群から選ばれ;そしてX、YおよびZはそれぞれが独立にアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、ホモ−またはヘテロ−シクロアルキレンおよび置換シクロアルキレンよりなる群から選ばれる〕
を有するN−主鎖−側鎖環化ソマトスタチン類似体を包含する。
本発明の好ましい態様は、線が式:-(CH2)x-M-(CH2)y-(ここでMはアミド、チオエーテル、チオエステル、およびジスルフィドよりなる群から選ばれ;並びにxおよびyはそれぞれが独立に1〜10の整数を表す)の架橋基を表す式IまたはIIの主鎖環化ソマトスタチン類似体を包含する。
さらに、R1およびR2がH以外のもの、例えばCH3-、(CH3)2CH-、(CH3)2CHCH2-、CH3CH2CH(CH3)-、CH3S(CH2)2-、HOCH2-、CH3CH(OH)-、HSCH2-、NH2C(=O)CH2-、NH2C(=O)(CH2)2-、NH2(CH2)3-、HOC(=O)CH2-、HOC(=O)(CH2)2-、NH2(CH2)4-、C(NH2)2NH(CH2)3-、HO-フェニル-CH2-、ベンジル、メチルインドール、またはメチルイミダゾールである式IまたはIIの主鎖環化ソマトスタチン類似体が好適である。
本発明の別の好ましい態様は、フェニルアラニン側鎖をそのまま残して、6位と11位とを結合させた新規なソマトスタチン類似体を生成するための主鎖環化に向けられる。このコンフォメーション安定化は天然ソマトスタチンのPhe6,Phe11疎水相互作用よりもかなり強く、Cys-Cysジスルフィド架橋よりも還元/酸化反応に対して安定である。換言すると、もとのPhe6とPhe11の一方または両方を保持させたままで、安定した共有結合による架橋が初めて達成され得る。
さらに、主鎖環化を用いて、6位と11位だけでなくPhe7-(D)Trp8-Lys9-Thr10の活性反応の内側のβターンをも固定して、好ましいコンフォメーションを有する単環式類似体または非常に強固な二環式類似体を製造できる。この場合も、薬理活性アミノ酸の側鎖はそのまま残り、コンフォメーション空間を制限するという変化があるにすぎない。
本明細書、請求の範囲および以下のより好ましい主鎖環化ペプチド類似体において用いるアミノ酸の後の上付き数字は天然ソマトスタチンでのそれらの位置番号を示す。
より好ましい主鎖環化ソマトスタチンの新規類似体は式(Va):
を有する。最も好ましい類似体は式(Vb):
を有し、上記各式中、mおよびnは1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミドまたはアルコールであり;R5は存在しないか、Gly、(D)-もしくは(L)-Ala、(D)-もしくは(L)-Phe、Nal、またはβ-Asp(Ind)であり;R6およびR11は独立にGlyまたは(D)-もしくは(L)-Pheであり;R7はPheまたはTyrであり;R10は存在しないか、Gly、Abu、ThrまたはValであり;R12は存在しないか、Val、ThrまたはNalであり;そしてY2はアミド、チオエーテル、チオエステル、およびジスルフィドよりなる群から選ばれる。これらの単環式ソマトスタチン類似体では、主鎖環化がCys6-Cys11ジスルフィド架橋に取って代わり、天然ソマトスタチンと同様にフェニルアラニンの側鎖が残っている。Phe7がTyr7で置換され、Thr10がVal10で置換された類似体はより一層好ましいものである。
6位と11位ではなく、活性領域の内側の位置でこの分子を固定する他のより好ましい単環式類似体は式VI(a, b)およびVII(a-c):
を有するものである。上記各式中、iおよびjは独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミドまたはアルコールであり;R5は存在しないか、(D)-もしくは(L)-Phe、Nal、またはβ-Asp(Ind)であり;R6は(D)-または(L)-Pheであり;R10は存在しないか、Gly、Abu、またはThrであり;R11は(D)-または(L)-Pheであり;R12は存在しないか、ThrまたはNalであり;そしてY1はアミド、チオエーテル、チオエステルおよびジスルフィドよりなる群から選ばれる。
さらに他のより好ましい類似体は、式VIおよびVIIにおけるような主鎖環化とともに、式Vにおけるような6位と11位での主鎖環化を含み、強固な二環式類似体が得られる。
他のより好ましい二環式類似体は、6位と11位のアミノ酸をシステインで置換してジスルフィド結合を形成することにより式V-VIIと相違し、式VIII(a, b)およびIX(a, b)では1つの主鎖環化のみが残っている:
上記各式中、iおよびjは独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミドまたはアルコールであり;R5は存在しないか、(D)-もしくは(L)-Phe、Nal、またはβ−Asp(Ind)であり;R6およびR11は独立にGlyまたはPheであり;R10は存在しないか、Gly、Abu、ValまたはThrであり;R12は存在しないか、ThrまたはNalであり;そしてY1はアミド、チオエーテル、チオエステル、およびジスルフィドよりなる群から選ばれる。
本発明の最も好適な実施態様は、一般に:
(即ち、シクロ[NPhe−Try−(D)Trp−Lys−Val−NPhe]−Thr−X):PTR3046で示す)
及び
(即ち、シクロ[NPhe−Phe−(D)Trp−Lys−Thr−NPhe]−Val−X:PTR3040で示す)
[式中、Xはカルボキシ末端酸、アミド、エステル又はアルコールを示す]
である。これら2つの類似体は、特定のソマトスタチンレセプターのサブタイプに対するその選択性により、意外にも有用な特性を有することが分かった。
より好適な単環式ソマトスタチン類似体もまた、活性類似体のライブラリーとして調製することができる。これは最適なコンホーマーをスクリーニングするのに特に有用である。
本発明の他のより好適なソマトスタチン類似体には、一般式X〜XIVの組成物が含まれる:
[式中i及びjはそれぞれ独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミド又はアルコールを示し;R5は(D)Phe又は2−Nalであり;R6はPhe、Gly又はAlaであり;R7はTyr又はpClPheであり;R10はTyr、Val、Ser又はAbuであり;R11はPhe、Gly又はAlaであり;R12はThr、Val、2−Nal又は(D)2−Nalであり、及びY1はアミド、チオエーテル、チオエステル及びジスルフィドからなる群より選択される。]。
式XI
[式中i及びjは独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミド又はアルコールを示し;R5は(D)Phe又は(L)Phe、Ala又はLysであり;R6は不在又はPheであり;R7はTyr又はPheであり;R10は不在又はTyr、Val、Ser又はAbuであり;R11はPhe、Gly又はAlaであり;R12はTrp、Thr、Val、2−Nal又は(D)2−Nalであり、及びY1はアミド、チオエーテル、チオエステル及びジスルフィドからなる群より選択される。]。
式XII
[式中i及びjは独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミド又はアルコールを示し;R5はPhe、(L)2-Nal又は(D)2−Nalであり;R6はPhe、Gly又はAlaであり;R7は(D)Phe、pCl(D)Phe、pNH2Phe又は(D)Tryであり;R10は(D)Thr、(D)Val、(D)Ala、(D)Leu又は(D)Gluであり;R11はPhe、Gly又はAlaであり;R12は不在又はThr又はValであり、及びY1はアミド、チオェーテル、チオエステル及びジスルフィドからなる群より選択される。]。
式XIII
[式中i及びjは独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミド又はアルコールを示し;R5は不在又は(D)Phe又は2-Nalであり;R6はPhe、Gly又はAlaであり;R7は(D)Phe、pCl(D)Phe、pNH2Phe又は(D)Tryであり;R8は(D)又は(L)Trpであり;R10は(D)Thr、(D)Val、(D)Ala、(D)Leu又は(D)Gluであり;R11はPhe、Gly又はAlaであり;R12はThr、Val、Ala、β−Ala、(L)2−Nal又は(D)2-Nalであり;及びY1はアミド、チオエーテル、チオエステル及びジスルフィドからなる群より選択される。]。
式XIV
[式中i及びjは独立に1〜5であり;Xはカルボキシ末端アミド又はアルコールを示し;R1はAla又は(D)2−Nalであり;R3はPhe、Gly、Ala又はLysであり;R4はLys又はArgであり;R5は(L)Asn又は(D)Asnであり;R7はPhe、Gly、Ala又はLysであり、及びY1はアミド、チオエーテル、チオエステル及びジスルフィドからなる群より選択される。]。
本発明の他の態様は、一般式(I):
〔式中、a〜cはそれぞれが独立に1〜8の整数またはゼロを表し;(AA)はアミノ酸残基を表し、その際、各鎖中のアミノ酸残基は同じでも異なっていてもよく;QはH又はアシル基を表し;Eはヒドロキシル基、カルボキシル保護基またはアミノ基を表し、或いは、末端カルボキシル基はCH2-OHに還元することができ;R1〜R4はそれぞれ特定の保護基と任意に結合していてもよいアミノ酸側鎖を表し;そして線は式:
(i) -X-M-Y-W-Z- または(ii) -X-M-Z-
の架橋基を表し、ここでMおよびWは独立にアミド、チオエーテル、チオエステル及びジスルフィドよりなる群から選ばれ;そしてX、YおよびZはそれぞれが独立にアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、ホモ−またはヘテロ−シクロアルキレンおよび置換シクロアルキレンよりなる群から選ばれる〕
を有する環状ペプチドの製造方法である。
この方法は、式(III):
〔式中、Xはアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、シクロアルキレンおよび置換シクロアルキレンよりなる群から選ばれるスペーサー基であり;R′は特定の保護基と任意に結合していてもよいアミノ酸側鎖であり;Bはアルキルオキシ、置換アルキルオキシ、またはアリールカルボニルよりなる群から選ばれる保護基であり;Gはアミン、チオール、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステル、アルデヒド、アルコールおよびアルキルハライドよりなる群から選ばれる官能基であり;AはGの特定の保護基である〕
を有する少なくとも1つのNα−ω−官能化アミノ酸誘導体をペプチド配列中に組み入れ、続いて、該官能基を該ペプチド配列中のアミノ酸の側鎖の1つとともに、または他のω−官能化アミノ酸誘導体とともに選択的に環化させる、各工程を含む。
好ましいビルディング単位は、Xがアルキレンであり、Gがチオール基、アミン基またはカルボキシル基であり、Rがフェニル、メチルまたはイソブチルである(ただし、Gがアミン基であるとき、RはH以外のものである)共官能化アミノ酸誘導体である。
さらに好ましいものはRが特定の保護基で保護されているω−官能化アミノ酸誘導体である。
より好ましいものは式IIIを有するω−官能化アミノ酸誘導体である[式中Gはアミノ基、カルボキシル基、またはチオール基である]:
〔各式中、X、R、AおよびBは先に定義したとおりである〕。
本発明の更なる態様は、少なくとも1つのNα−ω−官能化アミノ酸誘導体をペプチド配列に組み込み、続いて、該官能基を該ペプチド配列中のアミノ酸の側鎖の1つとともに、または他のω−官能化アミノ酸誘導体とともに選択的に環化する各工程を含んでなる、新規な主鎖環状ソマトスタチン類似体の製造方法を提供することである。本発明の主鎖環化類似体は医薬組成物として、または、術後の疼痛、あらゆる種類の炎症、特に膵炎、がん、内分泌障害および胃腸障害を含めてさまざまな疾患の治療方法のために使用できる。
したがって、本発明の更なる目的は、本明細書中に記載の方法により製造した薬理活性主鎖環化ペプチド作動薬または拮抗薬および製剤学的に許容される担体または希釈剤を含んでなる医薬組成物、並びにそれを用いた炎症、がん、内分泌障害および胃腸障害の治療方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
図1は、異なるSSTRサブタイプへのソマトスタチン(SRIF-14)の結合の阻害を、主鎖環状ソマトスタチン類似体PTR3046の濃度の関数として表したグラフである。
図2は、マウスの下垂体AtT20細胞系上のソマトスタチンレセプターへのソマトスタチン(SRIF-14)の結合の阻害を、主鎖環状ソマトスタチン類似体PTR3046及びPTR3040の濃度の関数として表したグラフである。
図3は、ラットの成長ホルモン放出に対するオクトレオチド(Octreotide)及び主鎖環状ソマトスタチン類似体PTR3046の作用の比較を表したグラフである。
図4は、ラットのインシュリン放出に対するオクトレオチド及び主鎖環状ソマトスタチン類似体PTR3046の作用の比較を表したグラフである。
図5は、ボンベシン誘導後の膵臓外分泌放出に対するオクトレオチド及び主鎖環状ソマトスタチン類似体PTR3046の作用の比較を表したグラフである。
図6は、MiaPaca-2細胞に対するPTR3046及びオクトレオチドの抗増殖作用の比較を表したグラフである。
発明の詳細な説明
本明細書中に記載した化合物は不斉中心を持ちうる。すべてのキラル形、ジアステレオマー形、およびラセミ形は本発明に含まれる。本明細書中に記載した化合物には、オレフィン等の多数の幾何学的異性体も存在しうる。そして、このような安定な異性体の全ては本発明に包含される。
「安定な化合物」または「安定な構造」という表現により、本明細書では、反応混合物から有用な程度の純度にまで単離するのに耐え、そして有効な治療剤に製剤化するのに耐える、十分に丈夫な(robust)化合物が意味される。
本明細書および請求の範囲で使用される「アルキル」または「アルキレニル」という用語は、1〜10個の炭素原子を有する分枝および直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする;「アルケニル」という語は、2〜10個の炭素原子を有する直線または分枝配置の炭化水素鎖、および鎖にそった任意の安定した点に存在しうる1つまたはそれ以上の不飽和炭素−炭素結合を含むものとする(例えば、エテニル、プロペニル、等);そして、「アルキニル」という用語は、2〜10個の炭素原子を有する直線または分枝配置の炭化水素鎖、および鎖にそった任意の安定した点に存在しうる1つまたはそれ以上の三重炭素−炭素結合を含むものとする(例えば、エチニル、プロビニル、等)。
本明細書および請求の範囲で使用される「アリール」という用語は、任意の安定な5員から7員の単環または二環の、または7員から14員の二環または三環の炭素環を含むものとし、そのうち任意のものが飽和、部分的に不飽和、または芳香族の環でありうる。例えば、フェニル、ナフチル、インダニル、またはテトラヒドロナフチルテトラリン、等である。
本明細書および請求の範囲で使用される「アルキルハライド」という用語は、1〜10個の炭素原子を有する分枝および直鎖の飽和脂肪族炭化水素であって、1〜3個の水素原子がCl、F、BrおよびI等のハロゲン原子によって置換されているものを含むものとする。
本明細書および請求の範囲で使用される「治療上有効な量」という表現は、本明細書に記載の症候(例えば、炎症、癌、内分泌障害および胃腸障害を含むが、それらだけに限定されない)に関し所望の結果を達成するために宿主に投与すべき、新規な主鎖環化ペプチド類似体またはそれを含む組成物の量を意味する。
本明細書および請求の範囲で使用される「置換された」という用語は、特定の原子上の任意の1つまたはそれ以上の水素原子が、特定の群から選ばれたものによって置換されることを意味する。ただし、上記特定の原子の標準原子価は超過されず、またこの置換は安定な化合物をもたらすものとする。
任意の可変記号(例えば、R、X、Z、等)が任意の構成または本明細書に記載の任意の式に2回以上使用されている場合は、各場合におけるその定義は他の場合における定義から独立している。また、置換基および/または可変記号の組合せは、その組合せが安定な化合物をもたらす場合のみ許容される。
本明細書中に使用される「ペプチド」とは、ペプチド結合により結合されたアミノ酸の配列を指す。本発明のソマトスタチンペプチド類似体は、4〜24個のアミノ酸残基、好ましくは6〜14個の残基からなるアミノ酸配列を含み、各残基はアミノ末端及びカルボキシ末端を有することを特徴とする。
「ビルディング単位」とは、以下の一般式IV:
〔式中、Xはアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、シクロアルキレンおよび置換シクロアルキレンよりなる群から選ばれるスペーサー基であり;R′は特定の保護基と任意に結合していてもよいアミノ酸側鎖であり;及びGはアミン、チオール、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびアルキルハライドよりなる群から選ばれる官能基である。〕
を有し、ペプチド配列中に組み入られ、続いて、官能基Gを介して前記ペプチド配列中のアミノ酸の側鎖の1つとともに、または他のω−官能化アミノ酸誘導体とともに選択的に環化される、Nα誘導体化αアミノ酸を指す。
ビルディング単位を生成する方法は、国際特許出願PCT/IB95/00455号(全て本明細書中に参考として組み込まれる)に記載されている。ビルディング単位は、対応する修飾されたアミノ酸の3文字コードの後に反応基のタイプ(アミンの場合はN、カルボキシルの場合はC)及びスペーサーメチレン基の数の表示を添えて略記される。例えばGly−C2は、1個のカルボキシル反応基及び2個の炭素メチレンスペーサーで修飾されたGly残基を表し、Phe−N3は、1個のアミノ反応基と3個の炭素メチレンスペーサーで修飾されたフェニルアラニン基を示す。
本明細書中で使用される「直鎖状ペプチド」とは、アミノ酸残基からのみ構成されており、あらゆるビルディング単位を欠いたペプチド配列を指す。
本明細書中で使用される「主鎖環化ペプチド」とは、ペプチド主鎖のα窒素を介して他のビルディング単位又はその配列の中の他のアミノ酸に結合して架橋を形成した、少なくとも1つのビルディング単位を含む直鎖状ペプチドの類似体を指す。
本明細書中に使用される「プレ-サイクリックペプチド(pre-cyclic peptide)」とは、生物学的又は他のスクリーニングアッセイの間、環化されない形のままコントロールとして機能する以外は環状類似体と同じである、類似体を指す。「非環状」という用語は、「プレ-サイクリック」と入れ替え可能に使用することができる。この発明並びにその製造及び使用方法を説明するために、本明細書中に一定の略語を使用する。例えば、AcOHは酢酸を、Adaはアダマンタンアセチル(adamantanacetyl)を、Adacはアダマンタンカルボニル(adamantanecarbonyl)を、Allocはアリルオキシカルボニルを、Bocはt-ブチルオキシカルボニル基を、BOPはベンゾトリアゾール-1−イルオキシ-トリス-(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを、BSAはウシ血清アルブミンを、Cbzはカルボベンジルオキシ基を、DCCはジシクロヘキシルカルボジイミドを、DCMはジクロロメタンを、Ddeは1-(4,4-ジメチル2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン-エチル)を、DIEAはジイソプロピル-エチルアミンを、DMFはジメチルホルムアミドを、DPPAはジフェニルホスホリルアジドを、Dtcは5,5−ジメチルチアゾリジン-4−カルボン酸を、EDCはN-エチル-N'(ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドを、EDTはエタンジチオールを、Fmocはフルオレニルメトキシカルボニル基を、GPIはモルモットの回腸を、HATUは[O-(7−アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを、HBTUは1−ヒドロキシベンゾトリアゾリルテトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェートを、HFは弗化水素酸を、HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを、HPLCは高速液体クロマトグラフィーを、MALDI-TOF MSはマトリックス補助レーザー脱離/飛行時間質量分光測定法を、Mtsは4−メトキシ-2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニルを、NBTはニトロブルーテトラゾリウムを、NMMはN−メチルモルホリンを、NMPは1-メチル-2-ピロリドノン(pyrolidonone)を、PBSは燐酸緩衝生理食塩水を、Pmcはペンタメチルクロマン−6−スルホニルを、PNPPはP−ニトロフェニルホスフェートを、PPAは1−プロパンリン酸環状無水物、PyBOPはベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを、PyBrOPはブロモ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを、RTは室温を、SMPSは複数のペプチドの同時合成を、SRIFはソマトスタチン放出阻害因子を、TBTUは2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3−テトラメチルウロニウム四フッ化ホウ酸塩を、t−Buは第三ブチル基を、TFAはトリフルオロ酢酸を、TISはトリイソプロピルシランを、Tprはチアゾリジン-4−カルボン酸を、Trtはトリチルを、Tsはトルエンスルホニルを指す。
本発明に使用されるアミノ酸は、市販されているもの又は通常の合成方法により得られるものである。幾つかの残基はペプチドに組み込むために特別な方法を要する。またペプチド配列に導くための連続式、分岐式、及び収束式合成方法が、本発明において有用である。天然のコードされたアミノ酸及びその誘導体は、IUPAC協定に従って3文字コードで表される。指示が無い場合は、L異性体を使用した。D異性体は、残基の略語の前に“D”で示される。コードされていないアミノ酸のリストは以下の通りである:Abuは2−アミノ酪酸を、Aibは2−アミノ-イソ酪酸を、Chaはシクロヘキシルアラニンを、Hcysはホモシステインを、HypはS-トランス-4−ヒドロキシプロリンを、1Nalは1−ナフチルアラニンを、2Nalは2−ナフチルアラニンを、Nvaはノルバリンを、Oicはオクタヒドロインドールカルボン酸を、Phgはフェニルグリシンを、pClPheはp−クロロ-フェニルアラニンを、pFPheはp−フルオロ-フェニルアラニンを、pNO2Pheはp−ニトロ-フェニルアラニンを、Thiはチエニルアラニンを指す。
合成方法
本発明によれば、ペプチド類似体は新規な非ペプチド結合を生じるアミノ酸のα窒素に結合された架橋基によって環化される。一般に、このようなペプチド類似体をビルディング単位から構築するために用いられる手順は、公知のペプチド合成の原則に依存する。最も有利には、この手順は固相ペプチド合成の公知原理に従って行うことができる。本発明の工夫は、ペプチド配列中の1個以上のアミノ酸を下記の一般式で表される新規なビルディング単位で置換することを要する:
式中、Rはアミノ酸の側鎖、Xはスペーサー基、およびGはこれによって環化が行なわれる末端官能基である。側鎖Rは、選択したペプチド配列中に組み込むべく選択された任意の天然または合成アミノ酸の側鎖である。Xは、ペプチド類似体の適切なコンフォメーション固定化(conformational constraints)を達成するために、より大きいまたは小さい程度のフレキシビリティーをもたらすために選択されるスペーサー基である。このようなスペーサー基は、アルキレン鎖、置換、分枝または不飽和アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、並びに不飽和および置換シクロアルキレンを含む。さらに、XおよびRを組み合わせて複素環構造を形成することができる。
本発明の好ましい実施態様は、2〜10個の炭素原子を含有するアルキレン鎖を使用する。
ペプチド類似体の環化に用いるべき末端(ω)官能基は以下のものを含むがそれらだけに限定されない。すなわち:
a.活性化カルボキシル基、アルデヒドおよびケトン(引き続く還元を伴う、または伴わない)、およびアルキルまたは置換アルキルハライド等の求電子剤と反応させるためのアミン類。
b.活性化カルボキシル基等の求電子剤と反応させるためのアルコール類。
c.ジスルフィド結合を形成させ、また活性化カルボキシル基、およびアルキルまたは置換ハロゲン化アルキル等の求電子剤と反応させるためのチオール類。
d.アセタールおよびケタールを形成させるための1,2および1,3ジオール類。
e.アミン、チオールまたはカルバニオン等の求核剤;遊離基;アルデヒドおよびケトン等の求電子剤及びアルキルハライド又は置換アルキルハライド;または有機金属錯体、と反応させるためのアルキン類または置換アルキン類。
f.アミン、アルコール、およびチオール等の求核剤(まえもって活性化して、または活性化せずに)と反応させるためのカルボン酸およびそのエステル。
g.アミン、アルコール、チオールおよびカルバニオン(アセト酢酸またはマロン酸等の活性メチレン基に由来する)等の求核剤と反応させるため;およびアルケンまたは置換アルケン、およびアルキンまたは置換アルキンとの次なる反応のために遊離基を形成するための、アルキルまたは置換アルキルハライドまたはそのエステル類。
h.アミン(引き続く還元を伴う、または伴わない)、カルバニオン(アセト酢酸またはマロン酸等の活性メチレン基に由来する)、ジオール(アセタールおよびケタールの形成のため)等の求核剤と反応させるためのアルキルまたはアリールアルデヒド類およびケトン類。
i.アミン、チオール、カルバニオン、遊離基または有機金属錯体と反応させるためのアルケン類または置換アルケン類。
j.アルデヒドおよびケトン、およびアルキルまたは置換アルキルハライド等の求電子剤と反応させるための、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、等の活性メチレン基。
ペプチド合成の間、これらの反応性末端基および任意の反応性側鎖が適切な保護基によって保護されなければならないことが理解されるであろう。
アミンの適切な保護基は、アルキルオキシ、置換アルキルオキシ、およびアリールオキシカルボニル、例えば第三級ブチルオキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、アリルオキシカルボニル(Alloc)およびベンジルオキシカルボニル(Z)を含むがそれらだけに限定されない。
環化のためのカルボン酸末端基は、それらのアルキルまたは置換アルキルエステルまたはチオエステルまたはアリールまたは置換アリールエステルまたはチオエステルとして保護することができる。このような基の例は、第三級ブチルエステル、アリルエステル、ベンジルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステルおよび9-メチルフルオレニルを含むが、それらだけに限定されない。
環化のためのチオール基は、それらのアルキルまたは置換アルキルチオエーテルまたはジスルフィドまたはアリールまたは置換アリールチオエーテルまたはジスルフィドとして保護することができる。このような基の例は、第三級ブチル、トリチル(トリフェニルメチル)、ベンジル、2-(トリメチルシリル)エチル、ピクシル(9-フェニルキサンテン-9-イル)、アセトアミドメチル、カルボキシ-メチル、2-チオ-4-ニトロピリジルを含むが、それらだけに限定されない。
当業者には、種々の反応性部分がそれらの選択的除去を可能とする異なる保護基によって保護されることが、さらに理解されるであろう。したがって、Nαが例えば保護基Aによって保護される場合、特定のアミノ酸がペプチド配列中の隣接アミノ酸に結合されるであろう。反応スキームにおいて環化のための末端基としてアミンが用いられる場合は、Nωは保護基Bによって保護されるか、または配列中の任意のリシンのεアミノ基は保護基Cによって保護されるであろう、等である。
アミノ酸を相互に結合させることは、ペプチド合成技術で公知の一連の反応として実施される。本発明の新規なビルディング単位、すなわちNα-ω官能化アミノ酸誘導体はペプチド配列に組み込まれて、アミノ酸の1個以上と置き代わる。このようなNα-ω官能化アミノ酸誘導体が1つだけ選択される場合は、配列中の別なアミノ酸の側鎖に環化されるであろう。例えば、(a)Nα-(ω-アミノアルキレン)アミノ酸をアスパラギン酸またはグルタミン酸残基のカルボキシル基に結合させることができる;(b)Nα-(ω-カルボン酸アルキレン)アミノ酸をリシン残基のε-アミノ基に結合させることができる;(c)Nα-(ω-チオアルキレン)アミノ酸をシステイン残基のチオール基に結合させることができる;等である。本発明のより好ましい実施態様は、相互に結合されてN-主鎖−N-主鎖環化ペプチド類似体を形成することができる2個のこのようなNα-ω官能化アミノ酸誘導体を組み込む。3個以上のこのようなビルディング単位をペプチド配列に組み込んで、以下に詳述する二環式ペプチド類似体を創出することができる。このように、ペプチド類似体はN-主鎖−N-主鎖環化、主鎖−側鎖環化または他の任意のペプチド環化を含む2つ以上の環化によって構築することができる。
上記のように、新規のビルディング単位から本発明のソマトスタチン類似体を構築するために用いる手順は、公知のペプチド合成の原則に依存している。しかし、本発明のより嵩の大きいビルディング単位に合わせて手順を適合させる必要があることが理解されるであろう。固相ペプチド化学におけるアミノ酸の結合は、以下のものを含むがそれらだけに限定されない結合剤を手段として達成することができる。すなわち、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物(BOP-Cl)、ベンゾトリアゾリル-N-オキシトリスジメチル-アミノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1-オキソ-1-クロロホスホラン(Cpt-Cl)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、またはこれらの混合物である。
本発明の嵩の大きいビルディング単位への次のアミノ酸の結合には、以下のものを含むがそれらだけに限定されない付加的結合剤の使用を要する場合があることが判明した。すなわち、PyBOPTM(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリスピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、PyBrOPTM(ブロモトリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)等の結合剤である。
前もって形成された、ウレタンで保護したN-カルボキシ無水物(UNCA' s)および前もって形成されたアシルハロゲン化物、最も好ましくは塩化アシル等の新規な結合化学を用いることができる。このような結合は、室温でも、またはそれ以上の温度でも、トルエン、DCM(ジクロロメタン)DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチルピロリジノン)またはそれらの混合物、等の溶剤中で起こりうる。
本発明の1つの目的は、下記の工程を含んでなる一般式(I)で表される主鎖環化ソマトスタチン類似体の調製方法である:
[式中、置換基は上に定義した通りである。]
すなわち、少なくとも2個の、式(III)で表されるNα-ω-官能化アミノ酸誘導体:
〔式中、Xはアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、シクロアルキレおよび置換シクロアルキレンからなる群より選択されたスペーサー基であり;R’は場合により特定の保護基を用いて結合させたH、CH3等のアミノ酸側鎖であり;Bはアルキルオキシ、置換アルキルオキシまたはアリールオキシカルボニルからなる群より選択された保護基であり;そしてGはアミン、チオール、アルコール、カルボン酸およびそのエステル、アルデヒド、アルコールおよびアルキルハライドからなる群より選択された官能基であり;そしてAはGの特異的保護基である。〕
をアミノ酸配列に組み込んで下記の一般式で表される化合物を生成し:
(ii)保護基AおよびA’を選択的に除去し、末端基GおよびG'を反応させて下記の式で表される化合物を形成し:
〔式中、d、eおよびfはそれぞれ独立して1から10の整数を表し:(AA)はアミノ酸残基であり、ここで各鎖のアミノ酸残基は同一でも異なっていてもよく;Eはヒドロキシル基、カルボキシル保護基、またはアミノ基であり;RおよびR'はそれぞれ独立してH、CH3等のアミノ酸側鎖であり;そして線は式-X-M-Y-W-Z-で表される架橋基であり、
ここで、MおよびWはジスルフィド、アミド、チオエーテル、イミン、エーテルおよびアルケンからなる群よりそれぞれ独立して選択され;X、YおよびZはアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、シクロアルキレンおよび置換シクロアルキレンからなる群よりそれぞれ独立して選択される〕
(iii)残存するすべての保護基を除去し、式(Ia)の化合物を得る、工程である。
二環式類似体は同じ方法で調製される。すなわち、工程(ii)および(iii)の繰り返しにより調製される。どの残基を他のどの残基と環化するかという決定は、遮断基(blocking group)の選択により行なわれる。種々の遮断基を選択的に除去することが可能であり、これによって環化のために選択された反応性の基が露出される。
好ましいのは、Gがアミン、チオールまたはカルボキシル基であり;RおよびR1がそれぞれH以外の、例えばCH3、(CH3)2CH-、(CH3)2CHCH2-、CH3CH2CH(CH3)-、CH3S(CH2)2-、HOCH2-、CH3CH(OH)-、HSCH2-、NH2C(=O)CH2-、NH2C(=O(CH2)2-、HOC(=O)CH2-、HOC(=O)(CH2)2-、NH2(CH2)4-、C(NH2)2NH(CH2)3-、HO-フェニル-CH2-、ベンジル、メチルインドールおよびメチルイミダゾールであり;そしてEが不溶性のポリマー支持体に共有結合している、式(I)の主鎖環化ペプチド類似体の製造方法である。
本発明の別の目的は、下記の工程を含んでなる式(II)で表される主鎖環化ペプチド類似体の製造方法である:
〔式中、置換基は上に定義した通りである〕
すなわち、少なくとも1個の、式(III)で表されるω-官能化アミノ酸誘導体:
〔式中、Xはアルキレン、置換アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、および置換シクロアルキレンからなる群より選択されたスペーサー基であり;RはH、CH3等のアミノ酸側鎖であり;Bはアルキルオキシ、置換アルキルオキシまたはアリールオキシカルボニルからなる群より選択された保護基であり;そしてGはアミン、チオール、アルコール、カルボン酸およびそのエステル、またはアルキルハライドからなる群より選択された官能基であり、そしてAはその保護基である〕
をペプチド配列に組み込み、そして次に上記官能基を上記ペプチド配列中のアミノ酸側鎖の1つと選択的に環化させる工程である。
好ましいのは、Gがカルボキシル基またはチオール基であり;RがCH3、(CH3)2CH-、(CH3)2CHCH2-、CH3CH2CH(CH3)-、CH3S(CH2)2-、HOCH2-、CH3CH(OH)-、HSCH2-、NH2C(=O)CH2-、NH2C(=O)(CH2)2-、HOC(=O)CH2-、HOC(=O)(CH2)2-、NH2(CH2)4-、C(NH2)2NH(CH2)3-、HO-フェニル-CH2-、ベンジル、メチルインドールおよびメチルイミダゾールであり;そしてEが不溶性のポリマー支持体に共有結合している、式(II)の主鎖環化ペプチド類似体の製造方法である。
主鎖−側鎖還化を有するペプチドの製造
所望の主鎖環化ペプチドを製造するための好ましい手順は、固相支持体上に直鎖状ペプチドを逐次的に合成し、そして固相支持体上で、または支持体から分離した後にペプチドを主鎖環化することを含む。C-末端アミノ酸はカルボン酸エステルまたは他の結合(アミド等)により不溶性ポリマー支持体に共有結合している。このような支持体の1例は、ポリスチレン-コ-ジビニルベンゼン樹脂である。使用されるポリマー支持体はFmocおよびBoc等の化学基と適合するものであって、例えばPAM樹脂、HMP樹脂、およびクロロメチル化樹脂を含む。樹脂に結合したアミノ酸は例えばTFAを用いて脱保護されて、これにBOP等の結合剤を用いて例えばFmocによってNαを保護された第2のアミノ酸を結合させる。第2のアミノ酸は、例えばDMFに溶解したピペリジン20%を用いて脱保護される。次に、常温で次なる保護されたアミノ酸を結合し、脱保護することができる。ペプチドをもたらす結合および脱保護を数サイクル実施した後、例えばカルボキシ側鎖を有するアミノ酸を所望のペプチドに結合させる。このようなアミノ酸の1例は、Fmoc-アスパラギン酸t-ブチルエステルである。NαFmoc保護基の脱保護の後、当業者に周知の方法により再度ペプチドを伸長する。脱保護の後、主鎖環化のためのビルディング単位を例えば結合剤BOPを用いてペプチド樹脂に結合する。このようなビルディング単位の1つは、例えばFmoc-Nα(ω-Boc-アミノアルキレン)アミノ酸である。脱保護の後、次に当業者に周知の方法を用いて所望の長さまでペプチドを伸長することができる。ビルディング単位に続く保護されたアミノ酸の結合は、高い収率を確実にするため、PyBrOPによって例示されるような結合剤を用いて実施される。直鎖状の樹脂に結合したペプチドを製造した後、共アルキレン-保護基(例えばBocおよびt-Bu)をTFA等の穏やかな酸により除去する。次に、樹脂に結合したペプチドを幾つかの部分に分割する。一部を、高収率の環化を確実にするため環化剤として例えばDMFに溶解したTBTUを用いた樹脂上の環化に付し、N-主鎖−側鎖環化ペプチド樹脂を生成する。樹脂上の環化後、末端アミノ保護基をピペリジン等の試薬により除去し、そしてHF等の強酸で処理した後、主鎖−側鎖環状ペプチドが得られる。または、主鎖環状ペプチドを樹脂から分離する前に、無水酢酸、無水安息香酸、または結合剤(BOP等)によって活性化したアダマンチルカルボン酸等の任意の他の酸、等の試薬を用いたアシル化により、末端アミノ基をブロックする。
ペプチド-樹脂の他の部分は、環化に使用する側鎖、例えばω-アミノおよびカルボキシ基の保護を受ける。これは、ω-アミノ基を例えばDMF中でAc2OおよびDMAPと反応させ、また遊離のω-カルボキシ基を例えばDICおよびHOBTによって活性化して、活性型エステルを生じさせ、次にそれを例えばCH3NH2と反応させて環状ペプチドの非環状類似体を生成することにより行なわれる。樹脂よりペプチドを分離し、次に側鎖保護基をHF等の強酸で除去すると、主鎖−側鎖環状ペプチドの非環状類似体が得られる。
直鎖状及び/又は非環状類似体は、それらに対応する環状化合物の生物活性に関する参照化合物として用いられる。
主鎖環化ソマトスタチンライブラリーの作製のための合成アプローチ
本発明の環状ペプチドライブラリーの一般的な製造法は、鎖伸長、保護基の選択的除去、保護ペプチドの環化、および樹脂からの切断を伴う又は伴わない全側鎖保護基の除去を可能にする直交保護スキームを用いる固相ペプチド合成を含む。種々のペプチド配列が実質的に等量で該ライブラリー中に存在することが望ましい。
カップリング反応は、アミドまたはエステル結合を生成する方法で行ない、本明細書に記載のとおり、当該技術分野でよく知られた方法で行なう。典型的なカップリング試薬としては、カルボジイミド、活性化無水物およびエステル、ならびにハロゲン化アシルが挙げられる。EDC、DCC、DPPA、PPA、BOP、PyBOP、PyBrop、HATU、HBTU、TBTU、HOBT、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの試薬が代表的である。
固相ペプチド伸長の終了後、任意のスキームにより、ビルディング単位の主鎖アミン結合窒素に結合した架橋基を介して該ペプチドの一部を環化する。一部が、生物学的または他のスクリーニングアッセイにおける対照として機能するように非環化形態で保有されているのが好ましい。主鎖環化ライブラリーと同一のビルディング単位を含有しそのコンホメーションひずみを欠く、該ペプチド類似体ライブラリーのこの部分は、「前環状」と称される。あるいは、該合成スキームのいずれかにおいて主鎖環化工程を行なうことができ、ついでアミノ酸残基の追加的なカップリングサイクルを行なうことができる。
必要に応じて生物活性のアッセイ前に、該ペプチドの一部を樹脂から切断し、保護基を除去することができる。当該技術分野で公知の方法により、該ペプチドを樹脂支持体から切断する(厳密な方法は、該樹脂の特性に左右される)。ある種の保護基の除去は、樹脂からペプチドを切断するのと同時に行なうことができると当業者には理解されるであろう。
典型的には、樹脂と第1アミノ酸とのカップリングは、エステル結合を形成し、ペプチドの切断の際に該ペプチド上にカルボン酸基を生成するであろう。HMPB、Rink、PAM、Hycramおよびヒドロキシメチル樹脂が代表的である。また、カルボキシ末端アミノ酸基をアミド、エステルに変換したり、あるいは末端アルコールに還元することができる。
各アミノ酸またはペプチドの側鎖の反応性官能基は、ペプチドの技術分野で公知のとおりに適切に保護する。例えば、アミノ基、特にα-アミノ基の保護には、Boc、CbZまたはFmoc基を使用することができる。AspまたはGluの側鎖カルボキシルの保護には、アルキル(例えば、t-Bu、Me)、cHex、ベンジルまたはアリルエステルを使用することができる。システインまたはその他のチオール含有残基のメルカプト基の保護、またはTry、SerまたはThrのヒドロキシルの保護には、ベンジル、または適切に置換されたベンジル、トリチル、AllocまたはT-Bu基を使用する。Acm基により、あるいはチオアルキル(例えば、エチルメルカプタン)またはチオアリール基とのジスルフィドの形成により、Cysおよびその他の硫黄含有アミノ酸を保護することも可能である。Hisのイミダゾリル基の保護には、ベンジル/ベンジルオキシメチル、または適切に置換されたベンジル/ベンジルオキシメチル、Bocまたはホルミル基を、また、グアニジノ窒素またはArgの保護には、Pmc、ニトロまたは適切に置換されたベンゼン-スルホニル基(例えば、Ts、Mts)を使用することができる。リシンのε-アミノ基の保護には、フタルアミド、Boc、Fmoc、Allocカルボベンジルオキシまたはベンジル基、または適切に置換されたベンジルまたはベンジルオキシ基を使用することができる。カルボベンジルオキシまたはベンジル保護基の適当な置換は、1〜5個のクロロ、ブロモ、ニトロ、メトキシまたはメチル基による通常はオルトおよび/またはパラでの置換であり、該保護基の反応性を修飾するために使用される。これらの保護基は、当該分野で公知のとおり、接触水系化、液体アンモニア中のナトリウム、ヒドラジン、塩基、TFAまたはHF処理などの方法で除去する。側鎖保護基の選択は、カップリング反応において使用する反応性官能基(一般には、α-アミノ基)を脱保護するのに用いる条件下で該側鎖保護基が除去されずに該ペプチド鎖のペプチド主鎖が形成されるように選択する。該反応性官能基の保護基は、各アミノ酸を順次カップリングさせる前に除去する。
ビルディング単位の架橋基(すなわち、式IV中のG)は、本発明に従い直交保護スキームで使用し、この場合、これらの保護基の選択的な除去が、側鎖上の保護基または樹脂からの該ペプチドの切断に影響を及ぼさない条件下で可能となるようにする。これにより、合成的に好ましい樹脂上の主鎖環化が可能となる。あるいは、完全に保護されたペプチドを樹脂から除去し、ビルディング単位の保護基の選択的除去の後に溶液中で環化を行なうことができる。
環化反応は、ビルディング単位の架橋基を別のビルディング単位の架橋基またはアミノ酸側鎖に選択的にカップリングすることにより行なう。例えば、アミド結合の形成の場合には、PyBOPが、カップリング反応を行なうための特に有用な試薬である。ジスルフィド架橋を形成させるためには、酸化条件を用いる。
本発明の最も好ましい実施態様では、アミノ酸配列骨格は、ソマトスタチン活性を有する天然または合成ペプチド由来の公知の活性な配列に基づく。したがって、活性な配座異性体の厳格性(rigidification)に基づき、そのような公知配列の活性を更に改善することが可能であろう。
ある位置のアミノ酸を、主鎖−環化ビルディング単位により、あるいは天然および非天然の三官能性アミノ酸(例えば、Asp、Glu、Cys、Hcys、Lys、OrnおよびそれらのD対応物)により置換する。例えば、環化の位置、主鎖に対する環の結合、環化位置におけるキラリティー、環形成結合、環の大きさ及び環内の結合の厳密な配置を変化させることにより、位置的および構造的な走査(scan)を行なう。また、これらの改変は、該ペプチドのアミノ酸配列の改変と共に行なうことができる。
ソマトスタチン類似体のライブラリーの一般的な合成
最適な化合物を決定するために、拘束性の異なる類似体のライブラリーを得、ついでスクリーニングする。該ライブラリーは、通常の固相ペプチド合成(これは当業者に公知である)を用いて、TentaGelアミド樹脂(0.2〜0.3 mmol/gの置換レベル)上で合成した。溶媒として、ほとんどの場合にはNMPを、少数の場合にはDMFを使用した。合成スケールは、ライブラリーまたはサブライブラリー中の各ペプチドに関して0.2〜2μモルであった。特に示さない限り、すべての反応は室温で行なった。
2以上のアミノ酸をカップリングさせる必要がある各カップリング工程においては、樹脂を適当な数の部分に分割し、異なるアミノ酸を各部分に加えた。カップリングは、各位置について2回、3モル過剰の各アミノ酸、3モル過剰のPyBropおよび6モル過剰のDIEAで1〜16時間かけて行なった。すべてのアミノ酸を、それらのα-アミンにおいてFMOCで保護した。側鎖の保護は以下のとおりであった:His(Trt);Lys(BocまたはDde);Orn(Boc);Ser(tBu);Thr(tBu);Try(tBu)。
二重のカップリングの後、樹脂部分を洗浄し、再び一緒にし、NMP中の20%ピペリジンを用いてFMOC脱保護を合計20〜40分間行なった。追加的な洗浄の後、次のアミノ酸のカップリングのために樹脂を再び分割した(必要に応じて)。
環化の前に、2.5% AcOHおよび5% NMMを含有するクロロホルム中に溶解したPd(PPh3)4を2モル当量(ペプチド中の各アリル/Alloc分子に関して1)の溶液で2〜2.5時間、または1時間で2回処理することにより、ビルディング単位のアミンおよびカルボキシルのアリル/Allocでの保護を除去し、処理の前および後に、パラジウムを含まない前記溶媒で樹脂を洗浄し、除去工程の終了時にNMPでの追加的な洗浄を行なった。
DCMでの洗浄後、TFA 70%、H2O 5%、TIS 1%、EDT 2.5%、DCM(混合物A)またはTFA 70%、H2O 5%、TIS 1%、フェノール5%、DCM(混合物B)または60% TFA、10% H2Oおよび30% DCM(混合物C)での二重処理と原液TFAでの追加的な洗浄とにより、樹脂部分から該ペプチドを切断した。各樹脂部分の3つの該切断溶液を集めて一緒にし、窒素流で蒸発させ、0.5〜1mlのH2Oを各サンプルに加え、ついでこれを凍結乾燥した。ついで、緩衝液AとしてH2O中の0.1%酢酸またはTFAを用い、緩衝液Bとして0.1%酢酸/H2O中の50〜80% CH3CNを用いて、該ペプチド混合物をC-18 SEP-PAK(Millipore Corp.)上で部分精製し、凍結乾燥した。
合成した各サブライブラリーを、マススペクトロメトリー(MALDI-TOF MS)およびアミノ酸分析により特徴づけた。
該ビルディング単位は、対応する修飾アミノ酸の3文字コードおよびそれに続く反応基の型(アミンはN、カルボキシルはC)と介在メチレン基の数の表示とにより略称することにする。例えば、Gly-C2は、カルボキシ反応性基と2個の炭素メチレンスペーサーとを有する修飾されたGly残基を表し、Phe-N3は、アミノ反応性基と3個の炭素メチレンスペーサーとを有する修飾されたフェニルアラニン基を表す。
ソマトスタチン類似体の一般的なスクリーニング
合成したソマトスタチン類似体の試験は、典型的には、天然ペプチド(SRIF-14)がその7回膜貫通受容体に結合するのを該類似体が阻害すること及び第2メッセンジャーおよび細胞増殖に対する該類似体の影響に関してはin vitroで行い、また、ホルモンおよび酵素の分泌の阻害に関してはin vivoで行なう。
該類似体を、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)のレベル、チロシンホスファターゼ活性、成長ホルモンの分泌、および細胞増殖に対するそれらの影響に関して、さらにin vitroで試験する。該ライブラリーを、動物における成長ホルモンの放出ならびにアミラーゼ、胃酸、インスリンおよびグルカゴンの分泌の阻害に関して、さらにin vivoで試験する。
選択に関するパラメーターとしての代謝安定性試験
類似体を、安定性に関して、酵素分解に対するそれらの抵抗性により試験する。これは、血清中または組織ホモジネート中でのインキュベーション、該タンパク質の分離およびインキュベーションの前および後のHPLCによる該ペプチドのピークの記録により行なう。インキューベーション時間を増加させても変化しないペプチドピークが、最も安定である。これらのピークを分離し、マススペクトロメトリー、N末端配列、および精製ペプチドのピークとの比較により特徴づける。このようにして、ライブラリーまたはサブライブラリーからの最も安定なペプチドが迅速に同定される。
部分的に多数の生物学的に活性な公知ペプチドの配列に基づいて、あるいは従前未知の新規配列に基づいて構築した構造的に束縛されたソマトスタチン類似体を、後記実施例で記載する。以下の実施例は、化合物の製造法および使用方法ならびに本発明の方法を例示するものであり、決して限定的なものと解釈されてはならない。
実施例
合成実施例
種々の一連のソマトスタチン類似体を、個々の主鎖環化ペプチドまたはライブラリーのいずれかとして合成した。
本発明の一般式(Va)に対応する3種のオクタペプチドソマトスタチン類似体を、個々に合成し、特徴づけ、生物活性に関して試験した。
1)第一の化合物は、R5が(D)Phe、R7がPhe、R10がThr、R12がThrである一般式(Va)に対応する。したがって、この化合物は、特定の式:
H-(D)Phe-R6-Phe-(D)Trp-Lys-Thr-R11-Thr-NH2
(式中、R6およびR11は、Nαω-官能基化アルキレンアミノ酸ビルディング単位である)で表される化合物を含む。
2)第二の化合物は、R5が(D)Phe、R7がPhe、R10が不存在、R12がThrである一般式(Va)に対応する。したがって、この化合物は、特定の式:
H-(D)Phe-R6-Phe-(D)Trp-Lys-R11-Thr-NH2
(式中、R6およびR11は、Nαω-官能基化アルキレンアミノ酸ビルディング単位である)で表される化合物を含む。
3)第三の化合物は、R5が(D)Phe、R7がPheである一般式(Va)に対応する。したがって、この化合物は、特定の式:
H-(D)Phe-R6-Phe-(D)Trp-Lys-R10-R11-R12-NH2
(式中、R6およびR11は、Nαω-官能基化アルキレンアミノ酸ビルディング単位である)で表される化合物を含む。
Nαω-官能基化アミノ酸ビルディング単位が導入されているこれらの新規合成ペプチド類似体の構造を、表1、2および3にまとめる。これらの3種の化合物では、用いたビルディング単位は、α窒素を介してペプチド主鎖に結合した架橋基が種々変化するグリシンビルディング単位であった。
単純化のために、本発明では、これらの一連の化合物を、それぞれ、SST Gly6,Gly11、SST Gly6,Gly10およびSST Gly6 Gly11 R10 R12と称することにする。
それぞれの化合物では、環化点の位置を一定とし、第一および第二の化合物では、架橋の長さおよび方向を種々変化させ、第三の化合物では、架橋を一定にし、10位および12位の残基を種々変化させた。したがって、C2、N2は、カルボニル基が、該ペプチドのアミノ末端に、より接近したアミド結合よりなる架橋を意味し、これは、該架橋アミドと該架橋に含まれる主鎖窒素のそれぞれとの間に炭素数2のメチレン基を含有する。
ペプチドの構築は、手動または自動ペプチド合成装置(Applied Biosystems Mode 1433A)で行なった。ペプチドの構築の後、環化アームを形成する架橋基の脱保護を、アリル/Alloc保護基の場合にはPd(PPh3)4(パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン)で、tBu/Boc保護基の場合にはTFAで行なった。非環状類似体を得るためには、この段階でペプチドを樹脂から切断した。ペプチドの環化は、PyBOPで行なった。高分子支持体からペプチドを切断するのは、使用した樹脂の型に応じた適当な試薬、例えば、Rinkアミド型樹脂にはTFA、mBHA(パラ-メチルベンズヒドリルアミン)型樹脂にはHFを用いて行なった。粗製生成物を、分析用HPLCにより特徴づけた。該ペプチドを、分取逆相HPLCにより精製した。精製した生成物を、分析用HPLC、質量分析およびアミノ酸分析により特徴づけた。
実施例41
SST Gly6,Gly10 N3,C2類似体の詳細な合成
5グラムのRinkアミド樹脂(NOVA)(0.49mmol/g)を、半融ガラス底を備えた反応容器中、N-メチルピロリドン(NMP)中で膨潤させ、振とう機上に配置した。Fmoc保護基を、NMP中の20%ピペリジンとの反応(2回、それぞれ10分間、25ml)により該樹脂から除去した。Fmocの除去を、290nmにおける紫外線吸収測定によりモニターした。NMP(20ml)中、Fmoc-Thr(OtBu)-OH(3当量)PyBrop(3当量)DIEA(6当量)により室温で2時間、カップリングサイクルを行なった。定量的ニンヒドリン試験(Kaiser試験)により、反応の終了をモニターした。カップリングの後、該ペプチド-樹脂をNMPで洗浄した(25ml NMPで7回、それぞれ2分間)。該ペプチド−樹脂を無水酢酸(キャッピング混合物:HOBt 400mg,NMP 20ml,無水酢酸10ml,DIEA 4.4ml)と室温で0.5時間反応させることにより、キャッピングを行なった。キャッピング後、NMPでの洗浄を前記のとおりに行なった(7回、それぞれ2分間)。Fmocの除去を前記のとおりに行なった。Fmoc-Phe-OHを同様にしてカップリングさせ、該Fmoc基を前記のとおりに除去した。該ペプチド樹脂をFmoc-GIy-C2(アリル)ビルディング単位と反応させた(カップリング条件は、前記のとおりであった)。Fmocの除去を前記のとおりに行なった。HATU(3当量)およびDIEA(6当量)と室温で一晩、ついで50Eで1時間反応させることにより、Fmoc-Lys(Boc)-OHを該ペプチド樹脂にカップリングさせた。塩基性の媒体(pH試験紙での測定で約9)を維持するために、反応中に更にDIEAを加えた。このカップリングを繰返した。カップリングの終了を、Fmoc試験によりモニターした(該ペプチド樹脂のサンプルを採取し、秤量し、該Fmocを前記のとおりに除去し、紫外線吸収を測定した)。前記のとおり、PyBropで該ペプチド樹脂にFmoc-D-Trp-OHをカップリングさせた。Fmocの除去の後、同様にしてFmoc-Phe-OHをカップリングさせた。該ペプチド樹脂の5分の1で合成を継続した。
Fmocの除去の後、第2のビルディング単位Fmoc-Gly-N3(Alloc)-OHをPyBroPとの反応により前記のとおり導入した。キャッピングを前記のとおりに行なった。Fmocの除去の後、該ペプチド−樹脂を2つの等しい部分に分割した。これら部分の一方で合成を継続した。Fmoc-Lys(Boc)-OHに関して前記したのと同様にHATUと反応させることにより、Boc-D-Phe-OHをカップリングさせた。キャッピングを前記のとおりに行なった。
該アリルおよびAlloc保護基を、Pd(PPh3)4および酢酸5%、モルホリン2.5%(クロロホルム中)とアルゴン下、室温で2時間反応させることにより除去した。該ペプチド樹脂を、前記のとおりにNMPで洗浄した。該樹脂の3分の2を環化のために確保した。環化は、NMP中、PyBOP 3当量、DIEA 6当量で、室温で一晩行なった。該ペプチド樹脂を洗浄し、乾燥した。TFA 81.5%、フェノール5%、水5%、EDT 2.5%、TIS(トリ-イソプロピル-シラン)1%および5%塩化メチレンと0 ECで15分間、室温で2時間(アルゴン下)反応させることにより、該ペプチドを該樹脂から切断した。該混合物を冷エーテル(30ml,0 EC)中に濾過し、該樹脂を少量のTFAで洗浄した。該濾液をロータリーエバポレーター中に配置し、すべての揮発性成分を除去した。油性生成物を得た。それをエーテルで粉砕し、該エーテルをデカントした(3回)。白色の粉末を得た。この粗製生成物を乾燥した。該粗製生成物の重量は、93mgであった。
以下のものを含む式Vbで表される別の新規主鎖環化ソマトスタチン類似体を、個々に合成した:
1)ヘプタペプチド:
NPhe-Tyr-(D)Trp-Lys-Val-NPhe-Thr-NH2
2)ヘプタペプチド:
NPhe-Phe-(D)Trp-Lys-R10-NPhe-R12-NH2
3)ヘプタペプチド:
NPhe-Phe-Trp-Lys-Gly-NPhe-R12-NH2
第一の化合物(表4)では、架橋の長さおよび方向を種々変化させ、第二(表5)および第三(表6)の化合物では、10位および/または12位の残基を種々変化させた。
実施例61 PTR 3046の合成の詳細
lgのRink Amide MBHA樹脂(NOVA)(0.55mmol/g)を、焼成ガラス底を備えた反応槽内のNMP中で1.5h膨潤させ、シェーカー上に置いた。NMP中の20%ピペリジンと反応させることにより(各々5ml、15分2回)、樹脂からFmoc保護基を除去した。Fmocの除去はニンヒドリン試験によりモニターした。カップリングサイクルは、NMP(5ml)中のFmoc-Thr(OtBu)-OH(4当量)、PyBrop(4当量)、DIEA(12当量)を用い、室温にて0.5時間行った。反応の完了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によりモニターした。カップリングに続き、このペプチド-樹脂をNMP(5ml NMP、5ml DCMおよび5ml NMPで2分間3回)で洗浄した。キャッピングを、ペプチド-樹脂と無水酢酸との反応(キャッピング混合物:HOAt 40mg、NMP 5ml、無水酢酸1ml、DIEA 0.5mlおよびDMAP(cat))により室温にて0.5時間行った。キャッピング後、NMP洗浄を前記と同様に行った。Fmoc除去も前記と同様に行った。Fmoc-Phe(C3)-アリルBUをカップリングした(BU 2当量、PyBrop 2当量、DIEA 6当量、NMP 5ml、0.5時間)。Fmocの除去は前記と同様に行った。ペプチド樹脂も前記と同様に洗浄した。このペプチド樹脂を二重カップリングにより、Fmoc-Val-Clと反応させた(4当量、コリジン12当量、1時間、38℃)。カップリングの完了はジペプチドのトリペプチドへの変換によりモニターした(ペプチド樹脂サンプルを切断し、次いで粗トリペプチドをHPLC(0.1%水/アセトニトリル)に注入した)。Fmocの除去は前記と同様に行った。Fmoc-Thr(OtBu)-OHについてと同様の反応条件により(前記を参照)、Fmoc-Lys(Boc)-OHとペプチド樹脂とをカップリングした。カップリングの完了はニンヒドリン試験によりモニターした。Fmoc-D-Trp-OHも前記と同様にPyBropを用いてこのペプチド樹脂とカップリングした。Fmocの除去の後、Fmoc-Tyr(tBu)-OHも同様にしてカップリングした。Fmocの除去に続き、第二のビルディング単位を導入した:Fmoc-Phe(C3)-アリル Bについての記載と同様の、PyBrOPとの反応によるFmoc-Phe-N2(アロック)-OH。アリルおよびアロック保護基は、アルゴン下、室温にて1.5時間、クロロホルム中のPd(PPh3)4および酢酸5%、N-メチルモルホリン2.5%を用いた反応により除去した。このペプチド樹脂を前記と同様に洗浄した。NMP中のPyBOP 3当量、DIEA 6当量を用い、室温にて0.5時間、環化を行った。このペプチド樹脂を前記と同様に洗浄した。Fmocの除去に続き、このペプチド樹脂を洗浄し(DCM 3 x 5ml)、乾燥させ、次いで0℃にて15分間さらに室温にて1.5時間、TFA 94%、水 2.5%、EDT 2.5%、TIS(トリ-イソプロピル-シラン)1%を用いる反応により、この樹脂から切断した。この混合物を濾過し、樹脂を少量のTFAで洗浄した。濾液をロータリーエバポレーター中に入れ、すべての揮発性成分を除去した。油性生成物が得られた。これをエーテルでトリチュレートし(triturate)、エーテルをデカントした。黄色の粉末が得られた。この粗生成物を乾燥させた。粗生成物の質量は290mgであった。
その他の個々のスマトスタチン類似体の例
本発明により製造された他の新規ソマトスタチン類似体の個々の例を表7に要約する。
ソマトスタチン類似体ライブラリー
ソマトスタチン配列中のアミノ酸の位置番号は天然のソマトスタチンペプチドに基づくものである(SRIF-14, Raynorら、前掲)。
実施例68:VH-SST1ライブラリー
このライブラリーは、各々8個の異なるペプチドを含有する最終的な5つのサブライブラリーに40個の主鎖環状ペプチドを含むように設計された。
最後のカップリング工程(R5)の前に、樹脂を5つに分配し、各々の部分に関して異なるアミノ酸でカップリングを行い、以降の工程ための別個のサブライブラリーとして残した。これら5部分は表8に記載したようなサブライブラリーであり、40種の類似体を生じるために各位置で用いた残基をすべて示している。
実施例69:IG-SST1ライブラリー
このライブラリーでは、架橋はGly-C2を有する6位とGly-N2を有する10位との間で一定していた。このライブラリーは4つのサブライブラリーにそれらのR5残基が異なる36個のペプチドを含む。このライブラリーの組成は表9に示されている。
実施例70:YS-SST1ライブラリー
このライブラリーは表10に示すように、4つのサブライブラリーに16個の類似体を示す。このサブライブラリーは4個の異なる架橋基により定義され(R6とR11またはR10位の間)、各ライブラリーは4個の類似体を含む。
実施例71:YS-SST2ライブラリー
このライブラリーは4つのサブライブラリーに48個のペプチドを含む。このサブライブラリーはそれらのR7残基が異なり、各々12個のペプチドを含む。このライブラリーの組成は表11に示されている。
実施例72:YS-SST3ライブラリー
このライブラリーは2つのサブライブラリーに12個のペプチドを含む。このサブライブラリーはそれらのR6構成単位において異なり、各々6個のペプチドを含む。このライブラリーの組成は表12に示されている。
実施例73:YS-SST4ライブラリー
このライブラリーは2つのサブライブラリーに48個のペプチドを含む。表13に記載したように、サブライブラリーBは、R5位におけるThrの存在によりAとは異なっている。
実施例74:YS-SST5AおよびBライブラリー
これらのライブラリーは、5位における種々のナフチルアラニン残基の影響の同時決定とともに、架橋サイズの最適化および6位と11位間の方向のために設計した。YS-SST-5Aライブラリーは各々16個のペプチドを有する4つのサブライブラリーからなる。YS-SST-5Bライブラリーは、各々4個のペプチドの8つのサブライブラリーからなる、サブライブラリーCおよびDの簡略化した合成スキームを示す。ライブラリー合成を以下のスキームに示す。
実施例75:VH-SST6ライブラリー
このライブラリーは24個のヘキサペプチドを含み、表14に記載されている。2つの異なるPhe-ビルディング単位は、R7、R8およびR9位におけるさらなる多様性を伴って、R6位に組み込まれていた。5位および12位におけるアミノ酸は削除されていた。
実施例76:VH-SST7およびVH-SST7Aライブラリー
これらのライブラリーは45つのサブライブラリーに各々290304個の主鎖環状ペプチドを含む。このペプチドを非切断性樹脂(TentaGel-NH2)で合成し、固相アッセイでのスクリーニング用のビーズ結合ペプチドを得る。これらのライブラリーの組成は表VIIIに記載されている。これらのライブラリーは、VH-SST7は8位にTrpを含み、VH-SST7Aは同位にD-Trpを含む点においてのみ互いに異なっている。
サブライブラリーは定義されたそれらの位置に関してA1、A2、・・An、B1、・・Bn、・・H1・・Hnと命名されている。各群について、定義した以外の位置はアミノ酸混合物を含む。各カップリング工程において、定義されていない各位置には、この位置に存在するであろうアミノ酸の混合物を加える(各工程において総量1モル当量のアミノ酸を加え、各アミノ酸のカップリングを完了させ、かつ、反応の影響を無くし、ペプチドを非当量表示させる)。固相アッセイによるAないしH群のそれぞれで最も活性あるサブライブラリーを同定することにより、このライブラリーで提示された290304個のペプチドから最も活性ある主鎖環状外プチド組成が分かる。実
実施例77:YS-SST6ライブラリー
このライブラリーは表16に記載した8つのサブライブラリーに128個の主鎖環化ソマトスタチン類似体を含む。2種の基本的な環化が使用された:3位から7位、および2位から6位。各サブライブラリーは架橋の位置、架橋の型および方向、あるいは1位におけるアミノ酸(AlaまたはD2Nal)で異なっている。
実施例78:IG-SST9ライブラリー
類似体の生物学的活性に関するSRIF配列における所与のフレームのいずれの必要性をより系統的に試験するために、並行して、SRIF構造の異なる部分にわたることで互いに異なるオクタペプチド類似体のライブラリーを合成した。各オクタペプチドサブライブラリーは隣接するサブライブラリーと一残基だけシフトされる。このように、第一のサブライブラリーはSRIFの残基7から14にわたり、第二のサブライブラリーはSRIFの残基6から13にわたるなどしている。このライブラリーは各サブライブラリー間の一残基のシフトを伴う総計14の重複主鎖環化オクタペプチドを含む。
合成は異なる開始点からの類似体の同時合成で、すべてのサブライブラリーについてビルディング単位のカップリングを同時に行うことにより達成される。これらすべてのサブライブラリーにおいて主鎖の環化は、ペプチド配列のN末端から遠位の1つのグリシン-C2単位とペプチド配列のN末端から近位の1つのグリシンN3単位の間でなされる。
ライブラリーIG-SST9は以下のスキーム中に示される:
実施例79:SST14ライブラリー
このライブラリーでは、SRIF配列4-11の主鎖環化類似体の生成のための架橋アームとして、異なるフェニルアラニンビルディング単位(PheBU: Phe-N2、Phe-N3、Phe-C2、Phe-C3)を用いている(IG-SST9ライブラリーにおけるサブライブラリーD)。さらに非架橋Phe残基(6または7位)は、種々のPheおよびNal誘導体:DPhe、pNO2Phe、pClPhe、pFPhe、フェニルグリシン(Phg)、DPhg、L2Nal、D2Nalで置換されている。以下の表に示したように、これは18の群のライブラリーと各群につき16個の類似体を提供する。
実施例80:YS-SST7ライブラリー
このライブラリーは以下の組成を有する48個の類似体を含む:
実施例81:YS-SST10ライブラリー
このライブラリーは、以下のスキームに示されるように、各々24個のペプチドを有する5つのサブライブラリーを含む。
実施例82:YSS-SST12
表19に記載したライブラリーは、ソマトスタチンのレトロ-主鎖環化類似体を示し、各々18個の類似体を有する6つのサブライブラリーからなる。異なるサブライブラリーは、架橋の型(Phe-C211からGly-N36、またはPhe-N311からGly-C26)およびR10位における残基により定義される。
実施例83:YS-SST15ライブラリー
このヘプタペプチドライブラリーは、R6およびR7位における残基によって定義される8つのサブライブラリーに含まれる96個の類似体からなる。
生理学的実施例
本発明のソマトスタチン類似体を、以下と比較して、in vitroおよびin vivo生活性アッセイにおけるそれらの活性に関して試験した:天然ソマトスタチンペプチド、すなわちSRIF;公知のソマトスタチン類似体オクトレオチド;非環化ソマトスタチン誘導体、および/または陰性対照としての無関係なペプチド。
実施例84:ソコトスタチンに関するin vitro放射性リガンド結合アッセイ
ソマトスタチン類似体を、それらの125I-Try11-SRIFの、膜貫通性ソマトスタチン受容体(SSTR-1、2、3、4、または5)を発現する膜調製物への結合の阻害における効力に関して試験した(Raynorら,Molecular Pharmacology 43, 838-844, 1993によって記載された方法に基づく)。これらの試験に用いた受容体調製物は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞内で安定かつ選択的に発現するクローン化された受容体由来であるか、または自然にSSTRを発現する細胞系由来であるかのいずれかであった。典型的には、細胞膜をプロテアーゼ阻害剤の存在下、トリス緩衝液中でホモジナイズし、次いで種々の濃度の試験サンプルとともに125I-Try11-SRIFを用いて30〜40分間インキュベートした。結合反応物を濾過し、フィルターを洗浄し、次いで結合した放射活性をガンマカウンターで測定した。非特異的結合は、1μMの非標識SRIF-14の存在下で結合を維持した放射活性として定義した。結合試験の陽性シグナルを批准し、かつ非特異的シグナルを消去するために、同様の方法を用いて合成および操作した、GnRHなどの無関係のペプチドサンプルを陰性対照サンプルとして同アッセイで試験した。これらのサンプルはいずれのアッセイにおいても結合活性は全く認められなかった。
実施例85:環状ペプチド類似体の受容体結合の特異性
種々のソマトスタチン受容体サブタイプは、異なるシグナル伝達経路に関与すると考えられる。このことは治療されるべき疾病に関連する受容体サブタイプに対して特異的かつ選択的結合を示すソマトスタチン類似体を選択する点で含蓄を持つであろう。ReisineおよびBell(Endocrine Rev. 16, 427-442, 1995)により概説されたように、いくつかの受容体サブタイプの活性は以下のように考えられている:
SSTR-1およびSSTR-2:EGF受容体の自己リン酸化の阻害を導き得るチロシンホスファターゼの活性化、即ちSSTの増殖阻害作用に関するプロセス。
SSTR-2:成長ホルモンおよびガストリン放出の阻害、即ち成長因子を介する先端巨大症および増殖阻害の治療に関するプロセス。
SSTR-5:インスリン、リパーゼ、アミラーゼ放出の阻害、即ちカルシウム流入の阻害およびSSTの増殖阻害作用に関する活性。
SSTR-3:脈管形成に関与。
実施例1-50の代表的なペプチドの、異なるスマトスタチン受容体に対する結合を、種々の受容体を発現するチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞においてin vitroで測定した。環状ペプチドで得られた選択性の例は表21に提示されている。提示されたIC50値は、放射活性を持つヨウ素で処理したソマトスタチン(SRIF-14)の結合を50%阻害するのに要した濃度である。
IC50値は、実施例84に記載した放射リガンド結合アッセイにて10-6、10-7、10-8Mの濃度で類似体を試験することにより算出した。
クローンSSTRに対するPTR 3046(合成例no.42)の親和性は図1に示されている。他のソマトスタチン類似体を上回るPTR 3046の予期しなかった優利点は、その選択性にある。この類似体は高い親和性でヒトSSTR-5に結合し、他のSSTRに対してはずっと低い親和性である。
さらに、ラットおよびヒトSSTR5に対する親和性は、PTR 3046についても同様であり、かくして、ラットモデルで投与した薬剤用量はヒトにおいても効力があると推測される。PTR 3046の親和性を公知のSST類似体について得られたそれと比較する目的で表22に示している。
もう1つの環状ペプチド類似体であるPTR 3040は、選択性について興味深いプロフィールを示した。この類似体は、受容体サブタイプSSTR-1に対して比較的高い親和性を示し、他の受容体サブタイプに対しては非常に低い親和性を示す。PTR 3040はラットSSTR-5と高い結合を示す一方で、クローン化ヒト受容体に対するその親和性は著しく低かった。
125I-SRIFとマウス脳下垂体AtT20細胞との結合の阻害についてもまた、種々の類似体に対して試験した。PTR 3046およびPTR 3040について得られた結果を、図2にSRIF-14と比較して示す。結果は、各々の化合物の特異的濃度当たりの阻害のパーセントを表す。
実施例86:環状ペプチド類似体ライブラリーの受容体結合特異性
異なるソマトスタチン受容体に対する実施例68−83のペプチドの代表的なサブライブラリーの結合を、in vitroにおいて種々の受容体を発現するチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞で測定した。環状ペプチドライブラリーを用いて得られた選択性の例を表23に示す。示された値は、放射性ヨウ素で処理したソマトスタチン(SRIF-14)結合の%阻害である。
概算IC50を、各々のサブライブラリー混合物中の全ペプチドの濃度に基づいて計算する。しかしなから、各サブライブラリーは、異なる活性を有し得る異なるペプチドからなっている。得られた任意のサブライブラリーの中で最良のペプチドの活性は、それゆえサブライブラリー当たりのペプチド数で割って得られた値の程度まで高くなっている可能性がある(すなわちIC50値はより低い)。さらに、濃度の計算に使用したサブライブラリーの総重量中に塩および不純物が存在することにより、精製した個々のペプチドの活性値の方が、優れているかもしれない。
in vivoの例:
選択した類似体を、in vivoで、動物における成長ホルモンの放出、アミラーゼ、リパーゼ、ガストリン、インスリン、コレシストキニン(CCK)、VIPおよびグルカゴンの分泌の阻害に関して試験した。成長ホルモン(GH)の放出は先端巨大症に関連している。ガストリンの分泌はガストリノーマ(ゾリンジャー-エリソン症候群)および潰瘍に関連している。インスリンの放出は、インスリノーマ、ハイパーインスリノーマ、肥満およびNIDDMに関連している。グルカゴンの放出は、高血糖症、NIDDMおよびグルカゴン血症に関連している。アミラーゼおよびリパーゼの放出は、急性および慢性の膵臓炎、腸皮膚および膵臓フィステルならびに膵臓手術に関連している。VIPの放出は、VIPオーマおよび分泌性の下痢に関連している。さらに、ソマトスタチンの抗増殖作用は、GH-IGFまたはCCKの放出を通して直接的または間接的であり得る。
実施例87:ソマトスタチンの生物学的活性アッセイ(In vivoアッセイ)
成長ホルモン、インスリンおよびグルカゴン放出へのSST類似体のin vivoでの生物学的作用を、市販のRIAテストキットを用いてこれらのホルモンのレベルを測定することにより試験する。腸の神経内分泌腫瘍を有する患者におけるSSTの薬理学的効果は、(類癌腫に対する)5-ヒドロキシインドール酢酸および(VIPオーマに対する)VIPの定量を必要とする。SST受容体陽性腫瘍のin vivoでの視認化は、放射性ヨウ素で処理したSST類似体の静脈内投与の後に、Lambertら(New Enland J. Med., 323:1246-1249 1990)によって記載されたとおりに行う。
実施例88:SST類似体の生分解耐性
SST環状ペプチド類似体であるPTR 3002のin vitroでの生体安定性をヒト血清において測定し、非環状ペプチド類似体(PTR 3001)中の同一配列、オクトレオチド(サンドスタチン(Sandostatin)、登録商標)、また天然ソマトスタチン(SRIF)とそれぞれ比較した。このアッセイにおいて、本発明の環状ペプチドはオクトレオチドと同等に安定であり、対応する非環状構造よりも安定であり、さらにSRIFよりもはるかに安定である。このアッセイは、37℃血清中での時間の関数としてのペプチド分解のHPLC測定に基づいたものである。
実施例89:SST類似体による成長ホルモン放出の阻害
in vivoでの環状ペプチドSST類似体の薬動態特性の測定は、公知の方法に従いラットにおいて行った。ペプチド投与の結果としての成長ホルモン(GH)放出の阻害を、オスのSprague-Dawleyラットにおいて測定した。この実験では、SST環状ペプチド類似体活性を、各群4匹のラットを用いてSRIFまたはオクトレオチドと比較した。一定の実験条件下でGH放出に対する経時プロフィールを測定した。
方法
体重200−350gの特殊病原非感染(SPF)成体オスSprague-Dawleyラットを、一定の明暗サイクル(8:00から20:00時まで照明)、温度(21±3℃)、および相対湿度(55±10%)に維持した。実験室の食物および水道水は、適宜得られるようにした。実験当日、ペントバルビトン(50mg/kg)でラットに麻酔をかけた。ペントバルビトンで麻酔をかけたラットは、門脈血管において低ソマトスタチンレベル(low somatostatis level)を示す(Plotsky, P.M., Science, 230, 461-463, 1985)。基礎GHレベル(-15分間)を求めるために、露出させカニューレを挿入した頸静脈から一回、血液サンプル(0.6ml)を採取した。その後直ちに適切なペプチド処置を投じた。この動物は、天然ソマトスタチン(SRIF)、合成類似体オクトレオチド(サンドスタチン)、または環状ペプチド類似体のいずれかを10mg/kgを受容した。生理食塩水溶液(0.9% NaCl)を対照として投与した。すべてのペプチドを最終容量0.2mlとして皮下に投与した。さらなるサンプリングを、ペプチド投与後15、30、60、および90分に行った。血液サンプルをヘパリン(血液1ml当たり15単位)を含有する試験管中に採取し、直ちに遠心分離した。血漿を分離してアッセイするまで−20℃で凍結保存した。
ラット成長ホルモン(rGH)[125I]レベルを、ラジオイムノアッセイキット(Amersham)によって測定した。このキットにおける標準は、the National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseasesから入手した参照標準製剤(NIH-RP2)に対して較正した。すべてのサンプルについて2同ずつ測定した。
これらの実験の結果は、オクトレオチドは成長ホルモンの放出を著しく阻害するが、SSTR-2と結合しない環状類似体PTR 3046は、SSTR-5受容体サブタイプに対して選択性があるソマトスタチン類似体に期待されたほどにはこの試験においては生理食塩水と有意に差がないことを示す。
これらの実験のデータを図3に要約する。
実施例90:環化ペプチド類似体の無毒性
PTR 3007は1.5mg/kgの用量で、1度腹腔内に投与した後には十分な耐性を示した。PTR 3013はラットに対して4mg/kgの用量でさえも毒性はなかった。これら2種の用量は、所望の内分泌効果を誘引するために必要な量よりも数桁高い。生理食塩水に溶解させたペプチドは、動物の中枢神経系、心臓血管系、体温、または末梢においても都合の悪い副作用を引き起こさなかった。ペプチドの投与後4時間の間ラットを観察した。呼吸器障害を起こさなかったPTR 3007および3013は、紋切り型挙動が出現したり、また筋肉の緊張にいずれかの変化を生じたりすることはなかった。3時間後の検死解剖で、肝臓、腎臓、動脈および静脈、胃腸管、肺、生殖器系、または脾臓において何の異常も検出されなかった。
実施例91.ラットおけるin vivoでのグルコース誘導性のインスリン放出に対するソマトスタチン類似体の作用
インスリン放出阻害剤としての天然ソマトスタチンの公知の生理学に基づき、この実験の目的は、インスリンの食後分泌における主鎖環状類似体PTR 3046の作用を評価することである。
実験:
体重200−220gの特殊病原体非感染(SPF)成体オスWisterラットを用いた。この動物を一定の明暗サイクル(8:00から20:00時まで照明)、温度(21℃)、および湿度(55%)に維持した。動物には実験前18−20時間まで食物および水に自由に近づけるようにし、実験の際には(水以外の)すべての食物を回収した。さらに食糞(排泄物を餌にすること)を防ぐため、動物を広い網目の金網底を備えたプラスチックケージに収容した。実験当日、ラットにペントバルビトン(60mg/kg IP)で麻酔をかけた。ペントバルビトン投与後15分に、カテーテルを右外頸静脈に挿入して血液のサンプリングを行った。直腸温デジタル体温計を用いて体温をモニターし、50cmの距離から手術台を照らす100Wの電球2個の他、ラットの下に加温毛布を敷くことによって一定レベル(37−37.5℃)に保った。カニューレ挿入後、0.7mlの血液サンプルを頸静脈から抜き取り、予め20 IUヘパリン溶液5000IU/mlを調製しておいた試験管に移した。この血液サンプルは基礎(basal)インスリンレベルを求めるために採取した。その後直ちに適切なペプチド前処置を投じた。
この動物は、以下のペプチドを受容した:合成類似体オクトレオチドを10μg/kg(n=15)、主鎖環状ペプチドPTR 3046を7μg/kg(n=18)。生理食塩水(0.9% NaCl)0.2mlを対照として投与した(n=16)。すべてのペプチドは最終容量0.2mlとして皮下に投与した。薬剤投与後10分に次の血液サンプルを抜き取り、その後直ちにグルコース溶液を最終用量0.5g/kgで静脈内(IV)投与した。さらなるサンプリングをグルコース投与後2分および5分に行った。
各血液サンプルの採取後直ちに、適切な容量(0.7ml)の生理食塩水を静脈内(IV)投与した。血液サンプルをヘパリン(血液1ml当たり15単位)を含有する試験管に採取して直ちに遠心分離(1500g)し、血漿を分離して(アッセイまで)−20℃で凍結保存した。
ラットインスリンRIAキットにより、ラットインスリン(rIns)[125I]レベルを求めた。このキットは、ラットインスリンに対して特異的に作製された抗体(Linco)を利用している。キットの感度は0.1ng/mlであった。すべてのサンプルについて2回ずつ測定した。
結果:
PTR 3046を7μg/kg投与は、未処置の対照ラットと比較してインスリンの放出において有意な(p<0.05)低下(43%)をもたらした。オクトレオチドで前処置したラットにおけるインスリンレベルの低下は、この実験では統計的には有意でなかった。
これらの結果は、主鎖環状ペプチドPTR 3046がin vivoで食後のインスリン放出の効力ある阻害剤であることが実証した。本研究およびオクトレオチドに関して報告された製造業者のデータ(26μg/kgのインスリン放出に対するED 50)に基づき、in vivoにおけるPTR 3046はインスリン放出に対してオクトレオチドよりも4倍効力が高いと結論づけられる。
高インスリン血症は、肥満症状および非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)の初期段階を伴う病因の1つである。従って、インスリン放出に対する抗分泌促進薬としてのPTR 3046の潜在的使用は、この新規なSST類似体を用いればインスリン分泌が高度に抑制されることを考慮すべきである。
これらの実験のデータを、図4に要約する。
実施例92:ボンベシンにより刺激される血漿アミラーゼおよびリパーゼの放出におけるソマトスタチン類似体の作用
下垂体成長ホルモン(GH)の放出、膵臓グルカゴン、および胃酸の分泌の阻害には、SSTR-2が仲介したが、インスリンまたはアミラーゼいずれかの放出阻害(ResineおよびBell、同文献)が、SST受容体サブタイプSSTR-5に対する親和性と高い相関性を有することを報告している。前記に示した結合親和性のデータ(実施例85)は、SSTR-1、2、3および4に対するその低親和性(>1000nM)と比較した場合の、環状ヘプタペプチドPTR 3046のhSSTR-5に対する選択性(親和性20nM)を証明するものである。これらの結果に基づいて、PTR 3046の生理学的活性の予備評価が、ボンベシンにより刺激されるリパーゼおよびアミラーゼの放出のin vivoモデルを用いて行われた。3種の異なる用量、すなわち3μg/kg、12.5μg/kgおよび25μg/kgにおけるペプチド類似体の投与の後、ラットでのアミラーゼおよびリパーゼの放出阻害に関するPTR 3046の用量応答を測定した。これらの用量を10μg/kgの用量で投与される合成類似体SMS-201 995と比較した。
方法
オスのWisterラット(体重200g−220g)を腹腔内(IP)経路により、ペントバルビタール(60mg/kg)にて麻酔をかけた。この動物は、すべての食物(水以外)を回収する実験前8時間までは、自由に食物および水に近づけるようにした。さらに食糞(排泄物を餌にすること)を防ぐため、この動物を広い網目の金網底を備えたケージに入れた。
サンプルの採取
カニューレ挿入後、0.7mlの血液サンプルを頚静脈から抜き、20IUヘパリン溶液500IU/mlを含有するエッペンドルフ管に移した。1分後、このペプチドを皮下投与(0.9%NaCl 0.2ml中のSC)した。対照ラットは0.2mlの0.9%NaClで前処理した。0時間(ベースラインの血液サンブル-1の採取後5分)において、ボンベシン注入(50nmol/kg/時)をすべての動物で開始した。ボンベシン注入中、さらなる血液サンプルを60、90および120分の一定の時間間隔で採取した。
サンプルの処理
血液サンプルをヘパリン(20IU/ml)を含有する氷冷管に採取し、遠心分離した(1500g×10分間)。血漿サンプルは冷凍し、アミラーゼおよびリパーゼに関するアッセイまで、-20℃にて保存した。
分析アッセイ
アミラーゼレベルは市販の(Raichem、登録商標)アミラーゼ試薬を用い、血漿中で測定した。
リパーゼレベルは市販のキット(Randox、登録商標)を用い、血漿中で測定した。
結果
SST類似体によるボンベシン刺激性のアミラーゼ分泌の阻害:
対照(生理食塩水前処理):
50nmol/kg/時の用量のボンベシンI.V.の注入により、血漿アミラーゼ(60および90分において、基準量の10倍)、およびリパーゼ(60および90分において、基準量の14倍)の、時間依存的増加が生じた。
PTR 3046:
PTR 3046を用いた前処理により、対照ラットに比べて、血漿アミラーゼのボンベシン誘導性放出の有意な用量依存阻害が起こった。阻害は3μg/kgに対しては、90分で31%、そして120分で23%、また25μg/kgの用量に対しては、90分で60%、そして120分で52%であった。オクトレオチド10μg/kgを用いた前処理により、これらの時点において23%の有意な阻害が起こった。
SST類似体によるボンベシン刺激性のリパーゼ分泌の阻害:
PTR 3046:
PTR 3046を用いた前処理により、対照ラットに比べて、血漿アミラーゼのボンベシン誘導性の放出の有意な用量依存阻害が起こった。阻害は3μg/kgに対しては、90分で33%、そして120分で26%、また12.5μg/kgに対しては、90分で30%、そして120分で25%、さらに25μg/kgの用量に対しては、90分で51%、そして120分で35%であった。SMS 10μg/kgを用いた前処理により、90および120分のそれぞれにおいて、27%および30%の有意な阻害が起こった。
類似した結果が、PTR 3010を用いて得られた(データは示さず)。
これらの結果は、予備結合アッセイならびに酵素および内分泌の生理学的モデルにおいて示したように、PTR 3046はSSTR-5に対する選択的類似体であることを証明する。
ボンベシン誘導性の膵臓のあるいは胃の分泌作用は、ボンベシンアンタゴニスト、ボンベシン抗体、およびソマトスタチン類似体の分泌阻害効果の評価のための共通のin vivoモデルである。
ヒトの数種の肺および消化管疾患におけるボンベシンの推定される役割は、PTR 3010やPTR 3046のようなボンベシンの分泌作用を阻害する薬剤が、膵臓炎、鼻炎およびガストリノーマなどの分泌疾患;気管支肺形成異常症、嚢胞性繊維症、および慢性気管支炎や肺気腫などの神経分泌細胞過形成疾患;前立腺肥大、前立腺癌、膵臓癌および胃癌などの増殖性疾患をはじめとする、ボンベシンが関与する種々の治療標的に対する薬物療法として利用できることを示すものである。
さらに門脈高血圧症、胃腸(GI)出血、および直腸結腸癌にも適用できる。
実施例93.十二指腸−膵臓灌流
ボンベシンまたセルレイン(Caerulein)モデルでの制限は、両試験が血清における酵素レベルの間接的な検出に基づいているということであった。アミラーゼは、唾液や胃腸管における他の部位から放出され得るので、酵素の膵臓放出における影響の直接的な測定の必要性があった。このため、ラットで灌流モデルを開発した。その結果(図5)は、十二指腸の灌流物において直接検出されたように、PTR 3046およびサンドスタチン(静脈内注入により投与)が双方ともに酵素の膵臓放出を阻害することを示している。
膵臓放出を排液する十二指腸のセグメントを、胃から近位部また空腸から遠位部から切除した。このセグメントは生理食塩水で灌流し、15分間隔で灌流物を採取した。膵臓放出の刺激はボンベシンまたセルレイン、それぞれ1ナノモル/kg/時また4ナノモル/kg/時の静脈注入により行った。灌流の間(酵素レベルが定常(即ちプラトー)レベルに達した後)、さらに2時間、薬剤を静脈内注入した。灌流物サンプルにおいて、膵臓酵素レベルを測定した。データは、ボンベシンにより誘導された定常レベルからの平均酵素レベルのパーセンテージとして表示する。
実施例94.抗増殖活性
セルレイン(CCK類似体)により誘導される外分泌放出の阻害に基づき、またCCKが胃腸管における効力ある成長因子であるため、胃腸癌由来の癌細胞系におけるPTR 3046の潜在的な抗増殖活性を試験することは合理的なことである。
PTR 3046の有意な抗増殖効果はヒト膵臓細胞系であるMiaPaca-2において認められた(図6)。
細胞は10% FCSを補足したDMEM培養培地で増殖させた。24時間後に細胞をプレートに付着させた。薬剤は10-5M〜10-11Mの濃度範囲で培養培地に加えた。薬剤の添加後24、48および72時間でMTTアッセイにより細胞の増殖を評価した。
Claims (4)
- 請求項1または2に記載のソマトスタチン類似体および製剤学的に許容される担体または希釈剤を含んでなる医薬組成物。
- 内分泌障害、新生物または代謝異常を治療するための薬剤の製造における、請求項1または2に記載のソマトスタチン類似体の使用。
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