JP4017121B2 - 筒内燃料噴射式内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダ孔内に向って直接に燃料噴射弁により燃料を噴射するようにした筒内燃料噴射式内燃機関に関するものである。
上記筒内燃料噴射式内燃機関には、従来、下記特許文献1で示されるものがある。
上記公報のものによれば、内燃機関では、シリンダヘッドの一側部に吸気通路が形成される一方、他側部に排気通路が形成されている。上記シリンダヘッドの上記一側部の端部側から上記シリンダ孔内に向い斜め下方に向って燃料を噴射可能とする燃料噴射弁が設けられ、上記シリンダ孔のほぼ軸心上で上記シリンダ孔内に放電部が臨む点火プラグが設けられている。
上記内燃機関の運転時には、特に、上記公報の図7,8で示されるように、圧縮行程中に燃料噴射弁で噴射された燃料が、ピストンの上面に衝突した後、放電部に向わされるようになっており、つまり、濃い混合気層が上記放電部に向わされて、より確実な点火が得られるようになっており、これは成層燃焼法といわれているものである。
そして、上記成層燃焼法によれば、低負荷時など、シリンダ孔内における混合気の全体の平均空燃比が大きくて、混合気が平均して希薄な場合でも、上記した確実な点火により、燃費が向上させられることとなる。
特開2000−345944公報
ところで、上記従来の技術では、噴射された燃料はシリンダ孔の軸心側(中央側)に向わされることから、その分、このシリンダ孔の内周面近傍域における混合気の空燃比が大きくなって、この混合気は希薄になりがちとなる。このため、上記したシリンダ孔の内周面近傍域での火炎伝播には時間がかかるため、この内周面近傍域ではノッキングが生じ易くなるおそれがある。よって、ノッキングの発生を避ける上で圧縮比を高く設定することはできず、これは燃費を低下させる原因となるものであって好ましくない。
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、内燃機関の低負荷時など、シリンダ孔内における混合気の全体の平均空燃比が大きくて、混合気が平均して希薄な場合でも、圧縮比を高く設定できるようにして、燃費をより確実に向上させるようにすることである。
請求項1の発明は、シリンダ孔4の軸心3を鉛直線に一致させた場合のシリンダ2の側面視(図1)で、上記シリンダ孔4に軸方向摺動自在にピストン8を嵌入し、シリンダヘッド6の一側部に燃焼室11に連通する吸気通路15を形成する一方、他側部に燃焼室11に連通する排気通路19を形成し、上記吸気通路15が上記燃焼室11への左右一対の開口15aを有し、これら各開口15aを開閉する左右一対の吸気弁16と、上記排気通路19を開閉する排気弁20と、上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記吸気通路15の下方に設けられ、上記シリンダヘッド6の上記一側部の端部側における上記開口15aの近傍から上記開口15aの下方域を通り上記シリンダ孔4内に向い斜め下方に向って燃料44を噴射可能とする燃料噴射弁45とを設け、上記シリンダ孔4のほぼ軸心3上で上記シリンダ孔4内に放電部46が臨む点火プラグ47を設けた筒内燃料噴射式内燃機関において、
上記燃料噴射弁45が左右一対の噴射ノズル49を備え、これら各噴射ノズル49のそれぞれが上下に長い長方形状とされ、これら各噴射ノズル49から噴射される左右一対の燃料44が、上記シリンダ2の平面視(図2)で、上記放電部46を挟む八の字形状となるようにし、上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記各噴射ノズル49から噴射される燃料44の形状が扇形状となるようにすると共に、上記シリンダ2の平面視(図2)で、上記各噴射ノズル49からそれぞれ噴射されて拡がる各燃料44の角度が、上記側面視で、上記各噴射ノズル49から噴射されて拡がる各燃料44の角度よりも小さくなるようにし、吸入行程で上記燃料噴射弁45に上記燃料44の噴射をさせるようにしたものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記シリンダ孔4の軸心3に対する上記吸気通路15の傾斜角を、上記軸心3に対する上記燃料噴射弁45のそれよりも小さくしたものである。
請求項3の発明は、請求項1、もしくは2の発明に加えて、上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記シリンダ孔4の軸心3に対する上記吸気通路15の上流側の傾斜角を上記軸心3に対する上記排気通路19の下流側のそれよりも小さくし、上記吸気通路15の上流側から上記左右一対の開口15a,15aに至るこの吸気通路15の下流端側の内周面のうちの下面を上方に凸であってなだらかに変化する円弧状に形成し、この下流端側の下面に対し、これよりも上流側の上記吸気通路15の内周面のうちの下面を連続的に連ねると共に上流に向かって直線的に延在させたものである。
請求項4の発明は、請求項1から3のうちいずれか1つの発明に加えて、上記各噴射ノズル49のそれぞれが、100−200μmの幅寸法を有したものである。
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
本発明による効果は、次の如くである。
請求項1の発明は、シリンダ孔の軸心を鉛直線に一致させた場合のシリンダの側面視で、上記シリンダ孔に軸方向摺動自在にピストンを嵌入し、シリンダヘッドの一側部に燃焼室に連通する吸気通路を形成する一方、他側部に燃焼室に連通する排気通路を形成し、上記吸気通路が上記燃焼室への左右一対の開口を有し、これら各開口を開閉する左右一対の吸気弁と、上記排気通路を開閉する排気弁と、上記シリンダの側面視で、上記吸気通路の下方に設けられ、上記シリンダヘッドの上記一側部の端部側における上記開口の近傍から上記開口の下方域を通り上記シリンダ孔内に向い斜め下方に向って燃料を噴射可能とする燃料噴射弁とを設け、上記シリンダ孔のほぼ軸心上で上記シリンダ孔内に放電部が臨む点火プラグを設けた筒内燃料噴射式内燃機関において、
上記燃料噴射弁が左右一対の噴射ノズルを備え、これら各噴射ノズルのそれぞれが上下に長い長方形状とされ、これら各噴射ノズルから噴射される左右一対の燃料が、上記シリンダの平面視で、上記放電部を挟む八の字形状となるようにし、上記シリンダの側面視で、上記各噴射ノズルから噴射される燃料の形状が扇形状となるようにすると共に、上記シリンダの平面視で、上記各噴射ノズルからそれぞれ噴射されて拡がる各燃料の角度が、上記側面視で、上記各噴射ノズルから噴射されて拡がる各燃料の角度よりも小さくなるようにし、吸入行程で上記燃料噴射弁に上記燃料の噴射をさせるようにしている。
ここで、上記したように、燃料噴射弁から噴射される燃料は、上記吸気通路の下方、かつ、この吸気通路の開口の近傍から上記シリンダ孔内に向い斜め下方に向うこととされ、上記平面視で、放電部を挟む八の字形状、上記側面視で、扇形状であり、かつ、内燃機関の吸入行程では上記ピストンは上死点から下降するのであって、その方向と、上記燃料噴射弁による燃料の噴射の方向とはいずれも下方であって同じ方向である。
このため、上記燃料噴射弁から噴射された燃料は上記放電部の各外側方を進行し、また、この際、上記ピストンの上面と勢いよく衝突するということが防止されて、噴射された方向に向って円滑に進行する。
そして、上記噴射された左右各燃料のそれぞれ先端部が上記シリンダ孔の内周面やピストンの上面に達すると、これら各面に案内されて上記各燃料のそれぞれ一部分同士が上記シリンダ孔の周方向で互いに接近させられ、その一方、上記各燃料のそれぞれ他部分は上記シリンダ孔の周方向で互いに離反させられる。
すると、吸入行程とこれに続く圧縮行程とで、上記シリンダ孔内に噴射された燃料の多くがこのシリンダ孔の内周面近傍域に集められて、ここに濃い混合気層が成形される一方、上記放電部の近傍には薄い混合気層が成形される。
次に、上記薄い混合気層が上記点火プラグの放電部によって点火させられるが、上記薄い混合気層は吸入行程と圧縮行程とに跨って大きいクランク角の間で生成されるものであることから、この薄い混合気層における空燃比が上記濃い混合気層に比べて一方的に大きくなる、ということは防止される。
よって、上記薄い混合気層にはある程度小さい値の空燃比が確保されて、この薄い混合気層での点火はより確実に行われる。また、この薄い混合気層が点火させられると、この薄い混合気層の隣りにはこの薄い混合気層よりも空燃比が小さい濃い混合気層が存在しており、このため、この濃い混合気層は速い火炎伝播により急速に燃焼させられる。
よって、上記濃い混合気層はエンドガス部に相当するが、この濃い混合気層にノッキングが生じるということは防止されるのであり、このため、内燃機関の低負荷時など、シリンダ孔内における混合気の全体の平均空燃比が大きくて、混合気が平均して希薄な場合でも、上記エンドガス部に濃い混合気を確保でき、ノッキングを発生させることなく圧縮比を高め燃費をより確実に向上させることができる。
また、上記シリンダの側面視で、上記燃料噴射弁を上記吸気通路の下方に設け、上記燃料噴射弁が、上記吸気通路の開口の近傍から上記シリンダ孔内に向かって斜め下方に燃料を噴射するようにしており、これにより、次の効果が生じる。
即ち、上記したように、吸入行程で上記燃料噴射弁が燃料を噴射すると、この噴射された燃料は、上記吸気通路を通りその開口からシリンダ孔内に流入する空気と混ざり合いながら、この空気の流れに対し大きくは逆らうことなく、共にシリンダ孔内に向かって流入する。つまり、噴射された燃料は、上記空気の流れに逆らって大きく乱れる、ということが防止され、所定形状を保ちながら進行する。このため、上記シリンダ孔の内周面近傍域に濃い混合気層がより確実に成形される。
よって、上記エンドガス部である上記濃い混合気層の燃焼が急速に進行させられて、ノッキングの発生がより確実に防止され、燃費の向上がより確実に達成される。
請求項2の発明は、上記シリンダ孔の軸心に対する上記吸気通路の傾斜角を、上記軸心に対する上記燃料噴射弁のそれよりも小さくしている。
また、請求項3の発明は、上記シリンダの側面視で、上記シリンダ孔の軸心に対する上記吸気通路の上流側の傾斜角を上記軸心に対する上記排気通路の下流側のそれよりも小さくし、上記吸気通路の上流側から上記左右一対の開口に至るこの吸気通路の下流端側の内周面のうちの下面を上方に凸であってなだらかに変化する円弧状に形成し、この下流端側の下面に対し、これよりも上流側の上記吸気通路の内周面のうちの下面を連続的に連ねると共に上流に向かって直線的に延在させている。
このため、上記請求項2,3の発明によれば、上記吸気通路は、より急勾配の起立姿勢になると共に、その上流側から下流端に向かって滑らかに延びることとなる。
よって、上記したように、吸入行程で上記吸気通路を通りその下流端からシリンダ孔内に流入する空気は、スワールのように急速旋回させられることなく、より直線的に円滑に上記ピストンの上面側に向かうよう下方に流動させられる。この結果、上記燃料噴射弁により噴射された燃料の形状が上記空気の流れによって大きく乱される、ということが防止されて、所定形状を保ちながら進行し、このため、上記シリンダ孔の内周面近傍域に上記濃い混合気層がより確実に成形され、もって、上記効果が助長される。
本発明の筒内燃料噴射式内燃機関に関し、内燃機関の低負荷時など、シリンダ孔内における混合気の全体の平均空燃比が大きくて、混合気が平均して希薄な場合でも、圧縮比を高く設定できるようにして、燃費をより確実に向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
即ち、シリンダ孔の軸心を鉛直線に一致させた場合のシリンダの側面視で、上記シリンダ孔に軸方向摺動自在にピストンが嵌入され、シリンダヘッドの一側部に燃焼室に連通する吸気通路を形成する一方、他側部に燃焼室に連通する排気通路が形成される。上記吸気通路は上記燃焼室への左右一対の開口を有し、これら各開口を開閉する左右一対の吸気弁と、上記排気通路を開閉する排気弁と、上記シリンダの側面視で、上記吸気通路の下方に設けられ、上記シリンダヘッドの上記一側部の端部側における上記開口の近傍から上記開口の下方域を通り上記シリンダ孔内に向い斜め下方に向って燃料を噴射可能とする燃料噴射弁とが設けられる。上記シリンダ孔のほぼ軸心上で上記シリンダ孔内に放電部が臨む点火プラグが設けられる。
上記燃料噴射弁が左右一対の噴射ノズルを備え、これら各噴射ノズルのそれぞれが上下に長い長方形状とされ、これら各噴射ノズルから噴射される左右一対の燃料が、上記シリンダの平面視で、上記放電部を挟む八の字形状となるようにし、上記シリンダの側面視で、上記各噴射ノズルから噴射される燃料の形状が扇形状となるようにすると共に、上記シリンダの平面視で、上記各噴射ノズルからそれぞれ噴射されて拡がる各燃料の角度が、上記側面視で、上記各噴射ノズルから噴射されて拡がる各燃料の角度よりも小さくなるようにし、吸入行程で上記燃料噴射弁に上記燃料の噴射をさせるようにしている。
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
図において、符号1は自動二輪車や自動車等車両搭載の内燃機関であり、この内燃機関1は並列多気筒の4サイクル内燃機関とされている。
上記内燃機関1は、車体など静止側部材に支持され不図示のクランク軸を支承するクランクケースと、このクランクケースから上方に向って突出するシリンダ2とを備えている。
上記シリンダ2は、上記クランクケースから上方に向って突出して軸心3が鉛直線と一致するシリンダ孔4を有するシリンダ本体5と、このシリンダ本体5の上端部に着脱自在に締結されて上記シリンダ孔4の上端開口を閉じるシリンダヘッド6と、このシリンダヘッド6の上面側に締結されるシリンダヘッドカバー7と、上記シリンダ孔4にその軸方向に摺動自在となるよう嵌入されるピストン8と、このピストン8と上記クランク軸とを互いに連動連結させる連接棒9とを備え、上記シリンダ孔4の内周面、上記シリンダヘッド6の下面、上死点近傍の上記ピストン8の上面10とで囲まれた空間が燃焼室11とされている。
ここで、上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記軸心3と直交して水平な一方向に延びる方向を前方(矢印Fr)とし、下記する左右とは上記前方に向っての方向とする。
上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記シリンダヘッド6の一側部(後側部)には、その外部から上記燃焼室11に連通する吸気通路15が形成されている。上記シリンダヘッド6に支承され上記吸気通路15の上記燃焼室11への左右一対の開口15aを開閉自在とする左右一対の吸気弁16が設けられ、また、上記各開口15aを上記燃焼室11側から上記各吸気弁16が閉じるようこれら各吸気弁16を弾性的に付勢するばね17が設けられている。
上記シリンダヘッド6の他側部(前側部)には、上記燃焼室11から上記シリンダヘッド6の外部にまで連通する排気通路19が形成されている。上記シリンダヘッド6に支承され上記排気通路19の上記燃焼室11への左右一対の開口19aを開閉自在とする左右一対の排気弁20が設けられ、また、上記各開口19aを上記燃焼室11側から上記各排気弁20が閉じるようこれら各排気弁20を弾性的に付勢するばね21が設けられている。
上記クランク軸に連動して上記吸気弁16と排気弁20とを所定のクランク角で開閉弁動作させる動弁機構23が設けられている。
上記動弁機構23は、前後に並設されて左右に延びる軸心24,25を有する吸、排気カム軸26,27と、これら各カム軸26,27をそれぞれその軸心24,25回りに回転自在となるよう上記シリンダヘッド6に支承させる軸受28,29と、上記各カム軸26,27を上記クランク軸に連動連結させるチェーン巻掛式の動力伝達手段30と、上記吸気弁16と排気弁20とをそれぞれ上記吸気カム軸26と排気カム軸27とにカム係合させるロッカアーム31,32とを備えている。
上記クランク軸が駆動するとき、これに上記動力伝達手段30を介し上記各カム軸26,27が連動して回転し、これら各カム軸26,27にロッカアーム31,32を介しカム係合する吸、排気弁16,20が所定のクランク角で開閉弁動作させられる。
上記内燃機関1における圧縮比を向上させるため、上記シリンダヘッド6の下面と、上死点のピストン8の上面10との間の容量が小さくされており、これにより、上記シリンダヘッド6の下面と、上死点のピストン8の上面10とが互いに接近することとなっている。この場合、上死点近傍のピストン8の上面10と、上記開閉弁動作する吸、排気弁16,20の各下端部(弁体部)とが互いに接触しないよう、上記ピストン8の上面10には、上記各弁16,20の下端部に対応する部分にのみ、これら下端部を嵌入可能とさせる浅い凹部33が形成されている。
上記動弁機構23は、上記吸気弁16の開閉弁動作のタイミング(クランク角)を可変とする公知の可変バルブタイミング装置36を備えている。この可変バルブタイミング装置36は、上記吸気カム軸26と動力伝達手段30との間に介設される油圧式の可変機構37と、この可変機構37を電子的に制御する制御手段38とを備えている。この制御手段38による制御により上記可変機構37を作動させると、上記吸気カム軸26とカム係合する上記吸気弁16の開、閉弁のそれぞれの動作のタイミングが進角、もしくは遅角するよう調整される。
上記動弁機構23は、上記吸気弁16のリフトを可変とする公知の可変バルブリフト装置40を備えている。この可変バルブリフト装置40は、上記吸気弁16と吸気カム軸26とのカム係合の状態を可変とさせる可変機構41と、この可変機構41を電子的に制御する制御手段42とを備えている。この制御手段42による制御により上記可変機構41を作動させると、上記吸気カム軸26とカム係合する上記吸気弁16のリフトが大、小調整される。
上記シリンダヘッド6の上記一側部(後部)の端部側から上記シリンダ孔4内に向い斜め下方に向って燃料44を噴射可能とする燃料噴射弁45が設けられ、この燃料噴射弁45は上記シリンダヘッド6に支持されている。また、上記シリンダ孔4のほぼ軸心3上で上記シリンダ孔4内の燃焼室11に放電部46が臨む点火プラグ47が設けられ、この点火プラグ47も上記シリンダヘッド6に支持されている。上記各制御手段38,42、燃料噴射弁45、および点火プラグ47を電子的に自動制御する不図示のエンジン制御装置が設けられている。
上記燃料噴射弁45において、燃料44を噴射する噴射ノズル49は左右一対設けられ、それぞれ上下に長い長方形状とされ、これら噴射ノズル49により噴射される燃料44は、上記シリンダ2の平面視(図2)で、上記放電部46を挟む八の字形状とされている。この場合、各噴射ノズル49の幅寸法Wは100〜200μmが好ましい。また、上記両噴射燃料44の中心線同士の交角αはほぼ35゜とされているが、好ましい範囲は30〜50゜である。
上記したように、各噴射ノズル49の幅寸法Wは100〜200μmと極めて狭いため、上記各噴射ノズル49を通り噴射された燃料44は、その噴射速度が大きくなる。また、この際、後述するように、上記噴射された燃料44は扇形状をなしている。よって、その分、燃料44がより微粒子化し、かつ、周囲の空気との混合も良好で、点火性能が向上し、また、上記噴射された燃料44がシリンダ孔4内の所望位置に向う、という指向性が向上すると共に、上記噴射された燃料44は所望位置へより確実に到達する。
また、上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記燃料噴射弁45で噴射される燃料44の形状は扇形状とされている。この場合の噴射燃料44の拡がり角βはほぼ75゜とされているが、好ましい範囲は60〜80゜である。
上記内燃機関1の運転時、上記クランク軸の駆動に上記動弁機構23を介し連動して上記吸、排気弁16,20が開閉弁動作し、その吸入行程で上記吸気通路15を通し大気側の空気50がシリンダ孔4内に吸入されると共に、上記燃料噴射弁45の噴射により燃料44が供給されて混合気が生成され、この混合気は次の圧縮行程で圧縮される。
次に、上記圧縮された混合気が、上記点火プラグ47の放電部46により点火させられ、燃焼室11で燃焼させられる。この燃焼により生じた燃焼ガスは排気51として上記排気通路19を通し外部に排出される。上記燃焼室11での燃焼により生じた内燃機関1の駆動力は上記クランク軸を介し車両の走行用に供される。
上記内燃機関1の運転において、その出力向上を図るため、高速である場合には、上記可変バルブタイミング装置36により、吸気弁16の開閉弁動作のタイミング(クランク角)が進角させられる。また、上記可変バルブリフト装置40により、吸気弁16のリフトがより大きくされて、上記シリンダ孔4内への空気50の流入量がより多くされる。なお、上記吸気弁16に代えて、もしくは、これと共に排気弁20に対し可変バルブタイミング装置36や可変バルブリフト装置40を設けてもよい。
上記した内燃機関1の運転につき、より詳しく説明すると、吸入行程で、上記ピストン8が上死点近傍にあるとき、もしくは上死点から下降し始めた直後のときに、上記シリンダ孔4内の燃焼室11に向って上記燃料噴射弁45から燃料44が噴射され始める(図1,2中実線)。この燃料噴射弁45による燃料44の噴射は、上記ピストン8が上死点から下死点に向う下降の途中まで連続的に続けられる。
ここで、上記したように、シリンダ2の側面視(図1)で、上記燃料噴射弁45は、空気50をシリンダ孔4内に流入させる吸気通路15の下方に設けられ、上記吸気通路15の開口15aの近傍から上記シリンダ孔4内に向って斜め下方に燃料44を噴射するようになっており、このため、上記燃料噴射弁45により噴射された燃料44は、上記吸気通路15を通りシリンダ孔4内に流入させられる空気50に逆らって乱れる、ということが防止され、噴射された方向に向って所定形状を保ちながら進行する。
しかも、上記燃料噴射弁45から噴射される燃料44は、平面視(図2)で、放電部46を挟む八の字形状、側面視(図1)で、扇形状であり、かつ、内燃機関1の吸入行程では上記ピストン8は上死点から下降するのであって、その方向と、上記燃料噴射弁45による燃料44の噴射の方向とはいずれも下方であって同じ方向である。
このため、上記燃料噴射弁45から噴射された燃料44は上記放電部46の各外側方を進行し、また、この際、上記ピストン8の上面10と勢いよく衝突するということが防止されて、噴射された方向に向って円滑に進行する(図1,2中一点鎖線)。
そして、上記噴射された左右各燃料44のそれぞれ先端部が上記シリンダ孔4の内周面やピストン8の上面10に達すると、これら各面に案内されて上記各燃料44のそれぞれ一部分同士が上記シリンダ孔4の周方向で互いに接近させられ(図2中二点鎖線)、その一方、上記各燃料44のそれぞれ他部分は上記シリンダ孔4の周方向で互いに離反させられる。
すると、吸入行程とこれに続く圧縮行程とで、上記シリンダ孔4内に噴射された燃料44の多くがこのシリンダ孔4の内周面近傍域に集められ、かつ、その周方向で濃度がほぼ均一となるよう集められ、つまり、このシリンダ孔4内では、シリンダ2の平面視(図2)で、シリンダ孔4の軸心3をほぼ中心とするドーナツ形状の濃い混合気層52と、この濃い混合気層52で囲まれて上記放電部46の近傍に位置する薄い混合気層53とが成形されることとなる。
次に、上記圧縮行程の終段で、上記薄い混合気層53が上記点火プラグ47の放電部46によって点火させられるが、上記薄い混合気層53は吸入行程と圧縮行程とに跨って大きいクランク角の間で生成されるものであることから、この薄い混合気層53における空燃比が上記濃い混合気層52に比べて一方的に大きくなる、ということは防止される。
よって、上記薄い混合気層53にはある程度小さい値の空燃比が確保されて、この薄い混合気層53での点火はより確実に行われる。また、この薄い混合気層53が点火させられると、この薄い混合気層53の回りにはこの薄い混合気層53よりも空燃比が小さい濃い混合気層52が存在しており、このため、この濃い混合気層52は速い火炎伝播により急速に燃焼させられる。
よって、上記濃い混合気層52はエンドガス部に相当するが、この濃い混合気層52にノッキングが生じるということは防止されるのであり、このため、内燃機関1の低負荷時など、シリンダ孔4内における混合気の全体の平均空燃比が大きくて、混合気が平均して希薄な場合でも、上記エンドガス部に濃い混合気を確保でき、ノッキングを発生させることなく圧縮比を高め燃費をより確実に向上させることができる。
また、前記したように、吸気弁16と排気弁20のうちの少なくともいずれか一方の弁の開閉弁動作のタイミングを可変とする可変バルブタイミング装置36、および上記吸気弁16と排気弁20のうちの少なくともいずれか一方の弁のリフトを可変とする可変バルブリフト装置40を備えている。なお、上記内燃機関1は、上記両装置36,40のうちのいずれか一方の装置のみを備えるものであってもよい。
このため、内燃機関1の運転時において、上死点近傍のピストン8の上面10に対し、開閉弁動作する吸気弁16と排気弁20の各下端部が接触しないようこれら各弁16,20の各動作を上記可変バルブタイミング装置36や可変バルブリフト装置40によって制御してやれば、その分、上記ピストン8の上面10に成形される凹部33の深さ寸法をより小さくさせることができるなど、上記ピストン8の上面10をより平坦で単純な形状にさせることができる。
よって、上記燃料噴射弁45で噴射された燃料44を上記ピストン8の上面10で案内させてドーナツ形状の濃い混合気層52を成形しようとするとき、上記ピストン8の上面10をより平坦で単純にできる分、この上面10による上記燃料44の案内がより正確になされて、上記濃い混合気層52を所望のドーナツ形状にできるのであり、このため、前記したノッキングの発生がより確実に防止されて、その分、圧縮比を高く設定できることから、燃費の向上がより確実に達成される。
しかも、上記したように、凹部33の深さ寸法を小さくさせることができる分、この凹部33の容積を小さくさせることができて、ピストン8が上死点に達したときの燃焼室11の容積をより小さくさせることができる。このため、圧縮比を更に高く設定でき、この点でも、燃費の向上が更に確実に達成される。
また、前記したように、上記シリンダ2の側面視(図1)で、上記燃料噴射弁45で噴射される燃料44の形状が扇形状となるようにしてある。
このため、上記燃料噴射弁45から噴射される燃料44は、例えば、これを単に円錐形状にすることに比べて、上記シリンダ孔4の内周面の各部に対しより均一な空燃比で沿いがちとなる。
よって、その分、上記濃い混合気層52を所望のドーナツ形状にさせることがより確実にできるのであり、このため、前記したノッキングの発生が更に確実に防止されて、燃費の向上が更に確実に達成される。
なお、以上は図示の例によるが、シリンダ2の軸心3は鉛直線に対し傾斜していてもよい。
内燃機関の部分側面断面図である。 ピストンの平面図である。 燃料噴射弁の先端正面図である。
符号の説明
1 内燃機関
2 シリンダ
3 軸心
4 シリンダ孔
5 シリンダ本体
6 シリンダヘッド
8 ピストン
9 連接棒
10 上面
11 燃焼室
15 吸気通路
15a 開口
16 吸気弁
19 排気通路
19a 開口
20 排気弁
23 動弁機構
36 可変バルブタイミング装置
40 可変バルブリフト装置
44 燃料
45 燃料噴射弁
46 放電部
47 点火プラグ
49 噴射ノズル
50 空気
51 排気
52 濃い混合気層
53 薄い混合気層
α 交角
β 拡がり角
W 幅寸法

Claims (4)

  1. シリンダ孔の軸心を鉛直線に一致させた場合のシリンダの側面視で、上記シリンダ孔に軸方向摺動自在にピストンを嵌入し、シリンダヘッドの一側部に燃焼室に連通する吸気通路を形成する一方、他側部に燃焼室に連通する排気通路を形成し、上記吸気通路が上記燃焼室への左右一対の開口を有し、これら各開口を開閉する左右一対の吸気弁と、上記排気通路を開閉する排気弁と、上記シリンダの側面視で、上記吸気通路の下方に設けられ、上記シリンダヘッドの上記一側部の端部側における上記開口の近傍から上記開口の下方域を通り上記シリンダ孔内に向い斜め下方に向って燃料を噴射可能とする燃料噴射弁とを設け、上記シリンダ孔のほぼ軸心上で上記シリンダ孔内に放電部が臨む点火プラグを設けた筒内燃料噴射式内燃機関において、
    上記燃料噴射弁が左右一対の噴射ノズルを備え、これら各噴射ノズルのそれぞれが上下に長い長方形状とされ、これら各噴射ノズルから噴射される左右一対の燃料が、上記シリンダの平面視で、上記放電部を挟む八の字形状となるようにし、上記シリンダの側面視で、上記各噴射ノズルから噴射される燃料の形状が扇形状となるようにすると共に、上記シリンダの平面視で、上記各噴射ノズルからそれぞれ噴射されて拡がる各燃料の角度が、上記側面視で、上記各噴射ノズルから噴射されて拡がる各燃料の角度よりも小さくなるようにし、吸入行程で上記燃料噴射弁に上記燃料の噴射をさせるようにしたことを特徴とする筒内燃料噴射式内燃機関。
  2. 上記シリンダ孔の軸心に対する上記吸気通路の傾斜角を、上記軸心に対する上記燃料噴射弁のそれよりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の筒内燃料噴射式内燃機関。
  3. 上記シリンダの側面視で、上記シリンダ孔の軸心に対する上記吸気通路の上流側の傾斜角を上記軸心に対する上記排気通路の下流側のそれよりも小さくし、上記吸気通路の上流側から上記左右一対の開口に至るこの吸気通路の下流端側の内周面のうちの下面を上方に凸であってなだらかに変化する円弧状に形成し、この下流端側の下面に対し、これよりも上流側の上記吸気通路の内周面のうちの下面を連続的に連ねると共に上流に向かって直線的に延在させたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の筒内燃料噴射式内燃機関。
  4. 上記各噴射ノズルのそれぞれが、100−200μmの幅寸法を有していることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の筒内燃料噴射式内燃機関。
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