JP4016488B2 - ズームトラッキング制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば撮像装置を一体に有するディジタルVCR等に使用されるズームトラッキング制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば撮像装置を一体に有するディジタルVCR等に使用されるマニュアルズームリング付きのインナーフォーカスレンズ等では、ズームトラッキングを極力素早く行う必要がある。ここで、ズームトラッキングとは、ズームすなわちピントが合った状態を維持したまま画の倍率を変化させることを実現するために、ズームレンズ(バリエータとも称される)およびフォーカスレンズを電子カム等のレンズ変位機構によって所定の軌跡に沿って移動させる操作である。この所定の軌跡をズームトラッキング曲線(またはカムカーブ)と称する。ズームトラッキング曲線は、ズームレンズ、フォーカスレンズ等の光学系の構成要素の特性に関連して設計時に決められる。
【0003】
ズームトラッキングを素早く行うためには、ズームトラッキング曲線の傾きをできるだけ小さくする必要がある。そのために、光学系内に補正用レンズを設置し、電子カム等の動作と共に、補正用レンズをカム筒等を用いた機械補正によって動かす方法が用いられる。
【0004】
このような方法でなされる実際のズームトラッキングでは、ある特定の被写体距離においてズーム位置に関わらずフォーカレンズ位置が一定となるようなズームトラッキング曲線が使用されるのが一般的である。この場合、ピント位置が補正用レンズの位置に依存することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような制御においては、補正用レンズ等の各レンズの製造ばらつきやカム筒等の機構部の加工ばらつき等の要因でピント位置に誤差が発生するという問題があった。
【0006】
さらに、近年、CCD(Charge Coupled Dervice)の小型化に伴って焦点深度も次第に小さくなってきている。このため、量産性を考慮した加工精度の下でピント位置の誤差を焦点深度内に抑え、ピント位置を確実に保証することが困難となってきている。
【0007】
従って、この発明の目的は、レンズ等に製造上のばらつきがあっても、ピント位置を確実に保証することが可能なズームトラッキング制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、マニュアルズームリング付きのインナーフォーカスレンズにおけるズームトラッキング制御方法であって、
ズームレンズとフォーカスレンズとを、予め規定された位置関係を満たすようにそれぞれ変位させる第1のレンズ変位ステップと、
補正用レンズを変位させる第2のレンズ変位ステップとを有し、
ズームトラッキングの際にピント位置が正しくなるように第1のレンズ変位ステップによってなされるフォーカスレンズの変位を補償する補償ステップとを有し、
特定の被写体距離では、ズーム位置にかかわらず、所定のフォーカス位置で合焦するように構成されており、
補償ステップは、
特定の被写体距離にある被写体を撮影する撮影ステップと、
複数のズーム位置のそれぞれにおいてフォーカスが合焦するフォーカス位置を求めるフォーカス位置検出ステップと、
フォーカス位置検出ステップで求められたフォーカス位置のそれぞれと、所定のフォーカス位置との第1の差を求める演算ステップと、
複数のズーム位置以外のズーム位置において、求められた第1の差を補間することで第2の差を求め、第1および第2の差を補償用データとして記憶する記憶ステップと、
記憶されている補償用デーを参照して、第1のレンズ変位ステップにおけるフォーカスレンズの変位を調整するレンズ変位調整ステップとからなるズームトラッキング制御方法において、
第1のレンズ変位ステップは、電子カムであって、
第2のレンズ変位ステップは、機械補正機構であり、
電子カムによるズームレンズの変位に連動して、機械補正機構による機械補正により補正用レンズの変位がなされるとともに、
補正用レンズを動作させることによって、マニュアルズームリングによるズーミング操作に対して、フォーカス制御が追いつかなくなることを防止し、ピント位置がずれるのを防いだことを特徴とするズームトラッキング制御方法である。
【0009】
以上のような発明によれば、レンズ等に製造上のばらつきがあっても、ピント位置を確実に保証することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態について説明するに先立ち、理解を容易とするために、この発明を適用することができる、撮像装置を一体に有するディジタルVCRの一例の全体的な構成の概要を説明する。レンズブロック30は、前玉レンズ11、ズームレンズ12、補正用レンズ13、固定レンズ14およびフォーカスレンズ15等からなる光学系と、ズームレンズ12、およびフォーカスレンズ15を変位させるための構成である電子カム37とを有する。
【0011】
電子カム37は、ズームレンズ12およびフォーカスレンズ15をそれぞれ変位させるための動力を発生させるモータ33および34と、これらのモータによる動力をズームレンズ12およびフォーカスレンズ15にそれぞれ伝達する伝達部、並びにこれらのモータを駆動するモータドライバ35を有する。なお、補正用レンズ13は、電子カム37によってなされるズームレンズ12の変位に連動して変位させられる。
【0012】
また、CPU36は、ユーザーの操作等に関連して電子カム37内のモータドライバ35に指令を送る。ズーム時には、ROM等に記憶しているズームトラッキング曲線データに基づいてズームレンズ12およびフォーカスレンズ15を変位させるべき位置を計算し、計算結果に基づいてモータドライバ35に指令を送る。
【0013】
さらに、撮像素子としてのCCD100は、レンズブロック30を通って入射する光を電気信号に変換し、この電気信号をカメラ信号処理系101に供給する。カメラ信号処理系101は、供給される電気信号に基づいて所定の信号処理を施し、記録系102に出力する。記録系102は、記録用の信号フォーマットに変換し、例えば磁気ヘッド等の書き込み手段によって、例えば磁気テープ等の記録媒体に対して記録を行なう。
【0014】
次に、図2および図3を参照してレンズブロック30内の光学系として一般的に使用されている4群インナーフォーカス式のレンズシステムについてより詳細に説明する。実際には1枚のレンズによってズームレンズやフォーカスレンズによって所望の光学的特性を得ることは難しく、コストアップの要因ともなるため、図2および図3に示すように、複数個のレンズを組合わせてなるレンズ群によって所望の特性を得るようになされる。但し、以下の説明においては、複数個のレンズから構成される前玉レンズ群、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群を総括的に、それぞれ前玉レンズ11、ズームレンズ12およびフォーカスレンズ15と表記する(図1中の記載についても同様)。
【0015】
図2は、補正用レンズ(図1中の13)を用いずに、電子カム37の動作によるズームレンズおよびフォーカスレンズの変位のみによってズームトラッキングを行う場合の光学系を図示したものである。図2AにWIDE端、図2BにTELE端の場合のレンズの配置をそれぞれ示す。上述した前玉レンズ11、ズームレンズ12およびフォーカスレンズ15の他に、絞り機構13、マスターレンズ14を有し、CCD100上にピント面16を結像するようになされる。
【0016】
ここで、前玉レンズ11およびマスターレンズ14は固定されている。そして、ズームレンズ12およびフォーカスレンズ15を、電子カム37によってそれぞれ曲線PおよびQに沿って変位させることにより、ズームトラッキングが行われる。
【0017】
この場合、ズームトラッキング曲線がTELE端付近で大きな傾きを有する。例えば、図3に示すように、被写体距離が0.8m,2mおよび無限大のそれぞれの場合におけるズームトラッキング曲線C1,C2,C3は何れも、TELE端付近で大きな傾きを有する。このため、マニュアルズームリング等によって素早くズームする時には、フォーカスの制御が追いつかなくなり、その結果としてピント位置がずれるおそれがある。
【0018】
そこで、補正用レンズを用い、電子カム37によるレンズ位置制御と共に機械補正を併用する方法によって、ズームトラッキング曲線の傾きが大きくなることを回避する方法が用いられる。図4は、このような方法によってズームトラッキングを行う場合の光学系を図示したものである。図4AにWIDE端、図4BにTELE端の場合の場合のレンズの配置をそれぞれ示す。前玉レンズ21、ズームレンズ22、補正用レンズ23、絞り機構24、マスターレンズ25、フォーカスレンズ26を有し、CCD100上にピント面27を結像するようになされる。
【0019】
ここで、前玉レンズ21およびマスターレンズ25は固定されている。そして、ズームレンズ22、補正用レンズ23およびフォーカスレンズ26を、電子カム37によってそれぞれ曲線P’,RおよびQ’に沿って変位させることにより、ズームトラッキングが行われる。ここで、ズームレンズ22と補正用レンズ23との変位は互いに連動したものとされる。すなわち、電子カム37によるズームレンズ22の変位に連動して、機械補正による補正用レンズ23の変位がなされる。
【0020】
この場合のズームトラッキング曲線の例を図5に示す。ここでは、被写体距離が0.8m,2mおよび無限大のそれぞれの場合におけるズームトラッキング曲線の一例をそれぞれ曲線D1,D2,D3として示した。但し、曲線D1,D2,D3は、各レンズや各機構部における製造上のばらつき等を考慮しない設計上のズームトラッキング曲線の例である。これに対して、実際のズームトラッキング曲線の例を点線で示した。実際のズームトラッキング曲線は、曲線D1,D2,D3から少しずれたものとなることがわかる。
【0021】
このような電子カム37による位置制御と機械補正とを併用する制御においては、ある特定の被写体距離においてズーム位置に関わらずフォーカス位置が一定となるようにするのが一般的である。図5においては、被写体距離が2mである場合(曲線D2で示した)に、実線で示すようにズーム位置に関わらずフォーカス位置が一定とされる例を示した。
【0022】
このような被写体距離については、製造上のばらつき等が無く、従って実際のズームトラッキング曲線が設計通りのもの(すなわち曲線D2)とされる場合には電子カム37の動作が不要となり、機械補正によって補正用レンズ23が変位することによってピント位置が適正なものとされることになる。
【0023】
但し、上述したように、実際には、ズームトラッキング曲線は点線に示すようなものとなるので、曲線D2と点線で示すズームトラッキング曲線との差に起因して生じるピント面16のずれがCCD100の焦点深度を越えると、ピント位置が保証されないという問題が生じる。
【0024】
そこで、この発明の一実施形態では、例えばフランジバック調整時において、ズーム位置に関わらずフォーカス位置が一定となるようになされている特定の被写体距離(図5に示した例においては2m)について、ピント位置を確実に保証するように電子カム37によるズームトラッキング動作を補償する。図6のフローチャートを参照して、かかる補償を行うために必要なデータを得るための手順の一例について説明する。ステップS1として、上述した特定の被写体距離に位置する被写体を撮影する。この際に、被写体は実被写体でもあっても良いし、コリメータ等を使用した虚像であっても良い。
【0025】
ステップS2として、あるズーム位置において、ベストピントとなる時のフォーカスレンズ位置を求める。ステップS3として、ステップS2において求めたフォーカスレンズ位置と設計上のフォーカスレンズ位置との差を求め、求めた差を記憶する。このようにして、複数のズーム位置において補償を行うために必要なデータとしての、実際のフォーカスレンズ位置と設計上のフォーカスレンズ位置との差が得られることになる。
【0026】
ステップS4ではズーム位置を変化させ、さらに、ステップS5に移行する。ステップS5では、ステップS1〜ステップS4がWIDE端からTELE端までに渡って行われたか否かを判定する。WIDE端からTELE端までに渡って行われたと判定される場合には処理を終了し、それ以外の場合にはステップS2に移行する。
【0027】
上述したような手順によって得られるデータを参照して、各ズーム位置に対応する補償値分だけ電子カム37の動作が補償される。この際に、補償を行うために必要なデータが得られていないズーム位置等については、例えば補間等の方法によって補償値を計算するようにすれば良い。
【0028】
上述したこの発明の一実施形態は、ズーム位置に関わらずフォーカスレンズ位置が一定となるようになされている特定の被写体距離について、製造上の誤差等に起因して機械補正によるピント位置の保証が不充分となるおそれを回避するものである。これに対して、かかる特定の被写体距離以外の被写体距離においても、この発明を適用することができる。
【0029】
この場合には電子カム37の動作と機械補正とによってピント位置の保証がなされるが、その際にも製造上のばらつき等に起因してピント位置の保証が不充分となるおそれがある。かかる状況においても、上述したこの発明の一実施形態と同様の方法で2種類以上の被写体距離について電子カム37の動作を補償することにより、ピント位置の保証を確実なものとすることができる。
【0030】
また、以上のような処理は、例えばCPU36によって行うようにしても良いし、また、専用のプロセッサによって行うようにしても良い。さらに、補償を行うために必要なデータは、CPU36内のROM等、装置内に設けられる記憶回路に記憶しても良いし、EEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等、記憶内容を容易に変更できる記憶手段に記憶するようにしても良い。後者においては、例えば性能を変更する等の理由でレンズ等の光学系内の構成要素を替える場合等に、この発明に係る補償を行うために必要なデータを変更することが容易となる。
【0031】
上述したこの発明の一実施形態は、撮像装置を一体に有するディジタルVCRにこの発明を適用したものであるが、この発明は、フォーカスレンズおよびズームレンズを有するレンズシステムを使用するあらゆる撮像装置におけるズームトラッキング方法に対して適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
上述したように、この発明は、電子カム等により、ズームレンズとフォーカスレンズとを予め規定された位置関係を満たすようにそれぞれ変位させると共に、例えばカム筒等の機械補正機構によって補正用レンズを変位させることによってズームトラッキングを行うに際し、ピント位置が正しくなるように電子カム等の動作を補償してズームレンズおよび/またはフォーカスレンズの変位を補償するようにしたものである。
【0033】
このため、レンズ等に製造上のばらつきがあっても、ピント位置を確実に保証することができる。従って、ズームトラッキング精度を向上させることが可能となるので、CCDの小型化、多画素化等の技術進歩に対応する、ズームトラッキング性能の向上を実現することができる。
【0034】
また、マニュアルズームリング等を行う場合等、ズームトラッキングを素早く行う場合にもピント位置の保証が充分なものとすることができる。このため、市場からの要望の有る、マニュアルズームリング等の機能を有するビデオカメラ等の開発を可能とし、ビデオカメラ等の製品における多機能化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を適用することができる撮像装置を一体に有するディジタルVCRの一例について説明するためのブロック図である。
【図2】電子カムの動作のみによってズームトラッキングを行う方法について説明するための略線図である。
【図3】電子カムの動作のみによってズームトラッキングを行う方法におけるズームトラッキング曲線の一例を示す略線図である。
【図4】電子カムの動作と、機械補正とによってズームトラッキングを行う方法について説明するための略線図である。
【図5】電子カムの動作と、機械補正とによってズームトラッキングを行う方法におけるズームトラッキング曲線の一例を示す略線図である。
【図6】この発明の一実施形態において、電子カムの動作を補償するために必要なデータを得る方法について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
37・・・電子カム、12・・・ズームレンズ(バリエータ)、13・・・補正用レンズ、15・・・フォーカスレンズ
Claims (1)
- マニュアルズームリング付きのインナーフォーカスレンズにおけるズームトラッキング制御方法であって、
ズームレンズとフォーカスレンズとを、予め規定された位置関係を満たすようにそれぞれ変位させる第1のレンズ変位ステップと、
補正用レンズを変位させる第2のレンズ変位ステップとを有し、
ズームトラッキングの際にピント位置が正しくなるように上記第1のレンズ変位ステップによってなされるフォーカスレンズの変位を補償する補償ステップとを有し、
特定の被写体距離では、ズーム位置にかかわらず、所定のフォーカス位置で合焦するように構成されており、
上記補償ステップは、
上記特定の被写体距離にある被写体を撮影する撮影ステップと、
複数の上記ズーム位置のそれぞれにおいてフォーカスが合焦するフォーカス位置を求めるフォーカス位置検出ステップと、
上記フォーカス位置検出ステップで求められた上記フォーカス位置のそれぞれと、上記所定のフォーカス位置との第1の差を求める演算ステップと、
上記複数のズーム位置以外のズーム位置において、求められた上記第1の差を補間することで第2の差を求め、上記第1および第2の差を補償用データとして記憶する記憶ステップと、
上記記憶されている上記補償用デーを参照して、上記第1のレンズ変位ステップにおけるフォーカスレンズの変位を調整するレンズ変位調整ステップとからなるズームトラッキング制御方法において、
上記第1のレンズ変位ステップは、電子カムであって、
上記第2のレンズ変位ステップは、機械補正機構であり、
上記電子カムによる上記ズームレンズの変位に連動して、上記機械補正機構による機械補正により上記補正用レンズの変位がなされるとともに、
上記補正用レンズを動作させることによって、マニュアルズームリングによるズーミング操作に対して、フォーカス制御が追いつかなくなることを防止し、ピント位置がずれるのを防いだことを特徴とするズームトラッキング制御方法。
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