JP4016382B2 - Sc構造体への電設工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複数枚の金属板を連接して構成した金属壁を対向配置し、その金属壁間にコンクリートを打設して得られるSC構造体への電設工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所などのように放射線遮蔽が必要となる建物の壁体は、一般に放射線遮蔽性及び躯体強度の強いRC構造体(鉄筋コンクリート造り)が多く採用されている。
また、上記RC構造体の外に、金属板とコンクリートを複合した所謂SC構造体(スチールーコンクリート構造体)も採用されている。
【0003】
図3はSC構造体の例を示す部分的な横断面図であり、図4はその正面図である。これらの図において、1はSC構造体、2は平行して一対配置された鉄板や鋼板などの金属板、3は金属板2の内面側に溶接されて垂直に延長するスタッド、4は一対の金属板2を互いに連結するタイバー、5は複数の金属板を互いに接続して形成された金属壁、6は金属板2の接続部、7は打設されたコンクリート、8は接続部を構成する鍔体である。
【0004】
このようなSC構造体1を施工するには、予め工場で所定数のスタッド3を溶接した一対の金属板2を対向させ、それらの内面間を複数のタイバー4の両端で溶接固定して金属壁5を製造する。このような金属壁5を多数製造して施工現場に搬入し、複数枚の金属板2をその縁に設けた鍔部8を利用して接続する。
【0005】
最後に金属壁5の内部にコンクリート7を打設し、そのコンクリートが硬化することによってSC構造体が完成する。かかるSC構造体1は主に建物の外壁や仕切壁、床スラブ(基礎スラブ)等として施工されるが、一般に建物における種々の機器類や照明用の電源ケーブル、あるいは制御ケーブルなどの電気ケーブルがこれらSC構造体1に埋設した電線管を利用して布設されることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来から行われているRC構造体への電線管の埋設工法は、先ず鉄筋を組み上げ壁体の骨組みを形成し、ついでその鉄筋に電線管を固定しながら布設し、次に骨組みの両側に合板による型枠を形成し、その型枠内にコンクリートを打設するものである。
【0007】
しかし、SC構造では壁体を工場で製作してそれを現地で組み立て、電線管はその現地で壁体内に固定しながら布設することになる。そのため電線管布設の手間と作業のための多くの時間を要し、作業効率が悪いという問題が発生する。
本発明はこのような従来の電設工法をSC構造に適用する場合における問題を解決することを課題とし、そのための新しいSC構造体への電設工法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数枚の金属板を連接して構成した金属壁を対向配置し、その金属壁間にコンクリートを打設して得られたSC構造体1への電設工法において、
金属板の内側に硬質の電線管を取り付けると共に、その金属板の適宜位置に、接続作業用開口を設け、この接続作業用開口に前記硬質の電線管の一端が位置されるように、前記硬質の電線管を前記金属板に固定配置した金属板ユニットを予め複数枚形成し、
それら金属板ユニットを連接して金属壁を形成すると共に、前記複数の金属板ユニットの各々に取り付けられている前記硬質の電線管の端部間を、前記金属壁の外側から前記接続作業用開口に配置された前記硬質の電線管の一端で、可撓性の電線管を介して接続し且つ、前記接続作業用開口を蓋で閉塞し、
次いでその金属壁の内側にコンクリートを打設することを特徴とするSC構造体への電設工法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は第1の発明に係る工法を説明する図であリ、(A)はその斜視図であり、(B)は(A)のB−B矢視図である。SC構造体1は図3と実質的に同様に構成される。すなわち複数枚の金属板2には図示しないスタッド3が所定間隔で溶接等により取り付けられると共に、それら金属板2、2の間が複数のタイバー4で連結される。そして複数の金属板2がその接続部6で互いに接続されて連続した金属壁が形成され、それら金属壁の間にコンクリート7が打設される。
【0013】
第1の発明では予め工場などにおいて、金属板2の内面に沿って電気配線用のダクト11を取り付けその開口部12を金属板2の表面側に開口した金属板ユニット10を予め少なくとも1枚形成することに特徴がある。ダクト11は鉄板または鋼板を所定寸法に切断や折り曲げ加工をしてユニット化し、そのユニットを金属板2の内面の所定位置に溶接等により固定する。なお図1ではダクト11を垂直に固定しているが、水平に固定する場合もあり、またその形状は直線状に限らず直角状やエルボー状でもよい。
【0014】
開口部12はダクト11の内部に電気ケーブルを布設する際に使用され、通常、ダクト11の両端部を含めて2箇所以上に設けられる。そしてそれら開口部12は全て金属板2の外側に開口することが望ましい。さらにその開口部12に連通するようにして開閉蓋付きの接続ボックス13(一般にプルボックスと呼ばれている。以下同じ)を予め工場で金属板2の内側または外側に設けておくことができる。なお、金属板の外側に取り付ける場合には、接続ボックス13を設置現場で金属板ユニット10に後から取り付けてもよい。この接続ボックス13は、SC構造体1に埋設されるダクト11内の電気ケーブルをSC構造体1の外側へ延線する際の、中継作業点として使用される。
【0015】
図1に示す例では金属板2の内側に垂直に取り付けたダクト11の上端部と下端部にそれぞれ開口部12が設けられ、それら開口部12は金属板2の表面側に開口すると共に、下端部の開口部12には外側から接続ボックス13が取り付けられ、その接続ボックス13にはSC構造体1の外側に布設した2本の電線管14(その一方は地上露出、他方は地中埋設)が接続される。
【0016】
次に図1を例にして第1の発明に係る電設工法の手順を説明する。先ず工場等においてSC構造体を構成するために必要な枚数の金属板2を加工し、さらにその中からダクト11を設けた金属板ユニット10を必要枚数(図1の例では1枚)製作する。次にそれら金属板2および金属板ユニット10を設置現場に搬入して金属壁を構成し、その金属壁間にコンクリートを打設する。そして打設したコンクリートが硬化するとSC構造体1が完成する。
【0017】
次に、SC構造体1内に埋設されたダクト11を利用し、SC構造体1の外側上部に沿って設置したトレイ15の電気ケーブルとSC構造体1の外側下部に布設した電線管14の電気ケーブルを接続する電気配線工事を行う。それには先ず図1のようにダクト11の下端部の開口部12に接続ボックス13を取り付け、その接続ボックス13に外部からの電線管14を接続する。そして、一例としてその電線管14にケーブルを挿通して、そのケーブルの中間部から先を接続ボックス13から一旦ケーブルを外部に取り出す。次いで、そのケーブルの先端を接続ボックス13より下端の開口部12およびダクト11、上端の開口部12を介して、トレイ15に導くものである。なお、ケーブルは前記と逆方向に延線することもできる。さらには、ケーブルの端部どうしを接続ボックス13で接続してもよい。
【0018】
図2は第2の発明に係る電設工法を説明する図である。この実施の形態においてもSC構造体1は図3と実質的に同様に構成される。なお図2(A)はSC構造体1を構成する金属壁5を内側から見た図であり、(B)はその接続作業用開口19の拡大図であって、電線管の接続作業終了後のものである。
【0019】
図2の実施の形態はSC構造体1の内側に水平方向の電気配線を行う例であり、金属板2の内側に金属製またはプラスチック製の硬質の電線管16を固定した金属板ユニット10を複数枚連接する。この例では、硬質の電線管16の少なくとも一方の端部に接続作業用開口19が予め設けられている。一例として、その接続作業用開口19の直径は30cmとすることができる。これは、壁体の外面側から内部の電線管どうしを接続するためのものであり、その形状および大きさは作業の内容により適宜設計すればよい。好ましくは、作業者の頭部が挿入可能な大きさとする。その接続作業用開口19の周縁には複数のボルト孔が設けられ、その裏面側に袋ナット19bが溶接固定されている。
【0020】
また、その接続作業用開口19を閉塞するための蓋19aが予め用意されている。その蓋19aの直径は接続作業用開口19の直径より一回り大きく、周縁に複数のボルト孔が設けられている。そのボルト孔は接続作業用開口19のボルト孔の位置に整合する。
そして各金属板ユニット10の内側に設けた硬質の電線管16の端部間は、その接続作業用開口19で、接続部材17を介して可撓性の電線管18により接続される(なお可撓性電線管18の作用は後述する)。
【0021】
可撓性の電線管18として、例えば蛇腹状に形成した軟質プラスチックに螺旋状の金属線を埋設した本体の両端部に接続部を設けたものが一般に市販されているので、それを使用することができる。
また接続部材は金属製またはプラスチック製の管接続具として一般に市販されているナット締付型、ボルト締付型、接着型など種々のものから電線管端部形態に合わせて選択することができる。
【0022】
左端の金属板ユニット10には、硬質の電線管16と共に開閉蓋付きの接続ボックス13が設けられる。また各金属板ユニット10における硬質の電線管16の少なくとも一箇所に接続作業用開口19が設けられる。接続ボックス13は硬質の電線管16へ挿通する電気ケーブルの外部への延線作業に使用される。接続作業用開口19は硬質の電線管16と可撓性の電線管18とを壁体内で接続する作業のために使用される。その接続作業用開口19は金属板2の外側に開口し、硬質の電線管16と可撓性の電線管18との接続作業の終了後に蓋19aで図2(B)の如く、その外面側から図示しないボルトを介して閉塞される。
【0023】
予め工場等において金属板2に硬質の電線管16、接続ボックス13および接続作業用開口19を設けた金属板ユニット10が製作される。そして金属板ユニット10の製作過程において、SC構造体1の施工現場で可撓性の電線管18をワンタッチで接続できる接続部材17を硬質の電線管16の端部に取り付けておくことが望ましい。
【0024】
次に図2を例にして第2の発明に係る電設工法の手順を説明する。先ず工場等においてSC構造体1を構成するために必要な枚数の金属板2を加工し、さらにその中から硬質の電線管16、接続ボックス13および接続作業用開口19等を設けた金属板ユニット10を必要数製作する。次にそれら金属板2および金属板ユニット10を設置現場に搬入し、それらを基礎スラブ20等に対して組み立てることにより金属壁5を構成する。
【0025】
次に、金属板ユニット10の内側に設けた硬質の電線管16の端部間を接続部材17を介して可撓性の電線管18でそれぞれ接続する。その際、硬質の電線管16の端部間の位置ずれは可撓性の電線管18により吸収されるが、この位置ずれの吸収機能を有する点が第2の発明にかかる電設工法の特徴である。次に金属壁5間にコンクリートを打設し、それが硬化することによりSC構造体1が完成する。
【0026】
次に各電線管内へ電気ケーブルを挿通する電気工事を行う。図2の例では先ずSC構造体1の基礎スラブ20側から立ち上げた電線管14の端部を左端の金属板ユニット10に設けた接続ボックス13に金属板2の外側から接続する。それと共に電線管14に挿通した電気ケーブルの端部を接続ボックス13内に露出させる。
【0027】
次に、接続ボックス13をケーブルの延線作業の中継点とし、埋設される硬質の電線管16および可撓性の電線管18へ電気ケーブルを順次挿通し、それを最終機器まで延線する。なお電気ケーブルの挿通工事はコンクリート打設前に行っても、そのコンクリート打設後に行なってもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る電設工法は、金属板の内側に硬質の電線管を取り付けると共に、その金属板の適宜位置に、接続作業用開口を設け、この接続作業用開口に前記硬質の電線管の一端が位置されるように、前記硬質の電線管を前記金属板に固定配置した金属板ユニットを予め複数枚形成し、
それら金属板ユニットを連接して金属壁を形成すると共に、前記複数の金属板ユニットの各々に取り付けられている前記硬質の電線管の端部間を、前記金属壁の外側から前記接続作業用開口に配置された前記硬質の電線管の一端で、可撓性の電線管を介して接続し且つ、前記接続作業用開口を蓋で閉塞し、
次いでその金属壁の内側にコンクリートを打設することを特徴とするSC構造体への電設工法である。
【0032】
この工法によれば、従来のように狭い金属板のスペースを利用して電線管を固定しながら布設する必要がない。
さらに、金属板の内側に硬質の電線管を取り付けた金属板ユニットを予め複数枚形成し、硬質の電線管の端部間を、接続作業用開口19を介して、そこの開口に望む電線管の端で、金属壁の外側から可撓性の電線管を介して接続し、次いでその接続作業用開口19を蓋19aで閉塞し、金属壁の内側にコンクリートを打設することとしたので、金属板の内側に固定された電線管どうしの接続作業の作業性がよい。それと共に、硬質の電線管の端部間に位置ズレを生じた場合においても、それら位置ずれを可撓性の電線管で十分に吸収することができる。そのため電設工事が簡単化され、効率よく施工できるため、工期が短くなると共に施工品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明に係る工法を説明する図。
【図2】第2の発明に係る工法を説明する図。
【図3】SC構造体の例を示す部分的な横断面図。
【図4】図3の正面図。
【符号の説明】
1 SC構造体
2 金属板
3 スタッド
4 タイバー
5 金属壁
6 接続部
7 コンクリート
8 鍔体
10 金属板ユニット
11 ダクト
12 開口部
13 接続ボックス
14 電線管
15 トレイ
16 硬質の電線管
17 接続部材
18 可撓性の電線管
19 接続作業用開口
19a 蓋
19b 袋ナット
20 基礎スラブ
Claims (1)
- 複数枚の金属板(2)を連接して構成した金属壁(5)を対向配置し、その金属壁(5)間にコンクリート(7)を打設して得られたSC構造体(1)への電設工法において、
金属板(2)の内側に硬質の電線管(16)を取り付けると共に、その金属板(2)の適宜位置に、接続作業用開口 (19) を設け、この接続作業用開口 (19) に前記硬質の電線管 (16) の一端が位置されるように、前記硬質の電線管 (16) を前記金属板 (2) に固定配置した金属板ユニット(10)を予め複数枚形成し、
それら金属板ユニット(10)を連接して金属壁(5)を形成すると共に、前記複数の金属板ユニット(10)の各々に取り付けられている前記硬質の電線管(16)の端部間を、前記金属壁(5)の外側から前記接続作業用開口(19)に配置された前記硬質の電線管 (16) の一端で、可撓性の電線管(18)を介して接続し且つ、前記接続作業用開口(19)を蓋(19a)で閉塞し、
次いでその金属壁(5)の内側にコンクリート(7)を打設することを特徴とするSC構造体への電設工法。
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