JP4016104B2 - 新規セレニルリンカー及びその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なセレニルリンカー、並びに該リンカーを用いたデヒドロアミノ酸及びデヒドロペプチドの製造方法に関する。また本発明は、上記リンカーを用いた二重結合を有する化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
デヒドロペプチド類は、αβ間に二重結合を有するアミノ酸を構成要素として含む異常ペプチドの総称である。デヒドロペプチドは、ペプチド結合と二重結合に共役した剛直かつ反応性の高いπ電子系を有する、最も簡単なペプチドのアナログである。構造化学的には、高い平面性に由来するβターン構造の誘導因子として知られており、長鎖のペプチドの配座を固定する性質がある。また有機化学的には強く分極したαβ不飽和アミドであり、生体内のアミノ基・チオール基などに対する高い反応性を有している。一方、合成化学的見地からはアシル化されたエナミンであり、酸及びアルカリに対して不安定である。
【0003】
デヒドロペプチドは生理活性天然物として数多く見出されている。こうした天然物では、植物毒性・抗腫瘍性・抗カビ活性など多彩な生理活性が認められているが、これは前述の化学的性質に由来するものと考えられる。例えば、このような化合物としては、AM−toxin、kahalalide F及びSch20561が知られている。なおこれら天然物は、リン酸化又はグリコシル化されたセリンないしトレオニンから生合成されると考えられている。
【0004】
このように多彩な生理活性を有するデヒドロペプチドは、その反応性の高さ故に有機合成化学的に調製することは困難とされてきた。これは、通常のペプチド固相合成法で用いる酸や塩基による脱保護条件に対しデヒドロアミノ酸が不安定であるために、最終段階での二重結合の導入が要求されることや、前駆体においてすらも不安定であって種々の化学処理に制約を受けるためである。
【0005】
上記の問題を解決するため、デヒドロペプチドの1種であるAM−toxinを合成するためのリンカーが開発されている(非特許文献1参照)。このリンカーを用いることにより、C末端におけるペプチド鎖の伸長を行い、環状デヒドロペプチドを合成することが可能である。しかしこの方法では、ニトロ基からカルボキシル基を誘導するのに複数のステップが必要であり、またカルボキシル基の活性化時に副反応して環状イミドが形成されることもあり、簡便性及び効率の点でさらに改良の余地がある。
以上のように、当該技術分野では、デヒドロペプチドなどの不安定な物質を簡便かつ高効率に合成するための手段及び方法が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】
Horikawa, E. et al., Tetrahedron Letters(英国),第42巻,p. 8337-8339,2001年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、デヒドロアミノ酸及びデヒドロペプチドのように不安定な化合物を簡便かつ高効率に合成するための手段及び方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために、第4周期16族のカルコゲン元素であるセレン(Se)を含むリンカーを開発することを目的として鋭意検討を行った結果、保護されたカルボン酸とセレノシアナート基を分子内に有するリンカーを合成することに成功し、またこのリンカーを利用することにより二重結合を有する不安定な化合物を簡便にかつ効率よく固相合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(I)で表されるリンカーである。
【0009】
【化7】
Figure 0004016104
(式中、R1は、複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R2は、OR3又はNHR3を表し、R3は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表す)。
上記リンカーとしては、例えば下記式(II)で表されるリンカーが挙げられ、特に下記式(III)で表されるリンカーが好ましい。
【0010】
【化8】
Figure 0004016104
(R2は、OR3又はNHR3を表し、R3は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表す)。
【0011】
また本発明は、上記リンカーを用いることを特徴とする、二重結合を有する化合物の合成方法である。上記合成方法において、二重結合を有する化合物は、例えば下記式(IV)で表すことができ、下記式(V)で表される中間体を経て該二重結合を有する化合物が合成されることが好ましい。
【0012】
【化9】
Figure 0004016104
(式中、R1は、複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R2は、OR3又はNHR3を表し、R3は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表し、R4及びR5は、それぞれ独立して複素原子を有していてもよい二価の有機基を表す)。
【0013】
また上記合成方法においては、上記リンカーを下記式(VI)で表される出発物質と反応させることを含んでいてもよいが、出発物質はこれに限定されるものではない。
【0014】
【化10】
Figure 0004016104
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立して複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R6は、水酸基、水素原子又はハロゲン原子を表す)。
上記合成方法において、式(IV)で表される化合物としては例えばデヒドロアミノ酸が挙げられる。
【0015】
さらに本発明は、上記リンカーを用いることを特徴とするデヒドロアミノ酸の合成方法であって、例えば以下のステップを含むものである:
(a)上記リンカーのセレノエート基と保護アミノ酸とを連結するステップ;
(b)上記リンカー固相支持体に固定するステップ;及び
(c)上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸を酸化反応に付すことにより該固定化リンカーを除去するステップ。
【0016】
またさらに本発明は、上記リンカーを用いることを特徴とするデヒドロペプチドの合成方法である。ここで、該合成方法は、例えば以下のステップを含むものである:
(a)上記リンカーのセレノエート基と保護アミノ酸とを連結するステップ;
(b)上記リンカーを固相支持体に固定するステップ;
(c)以下のステップ(c−1)及び/又は(c−2)を行うステップ;
(c−1)上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のカルボキシル基を脱保護し、該カルボキシル基に所望のアミノ酸又はペプチドを導入するステップ;
(c−2)上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のアミノ基を脱保護し、該アミノ基に所望の保護アミノ酸を導入して固定化リンカーに結合したペプチドを生成するステップであって、任意によりさらに該ペプチドのアミノ基を脱保護して該アミノ基に第2の保護アミノ酸を導入し、任意により上記脱保護及び保護アミノ酸の導入の工程を繰り返し行う、上記ステップ;並びに
(d)ステップ(c)により生成された、固定化リンカーに結合したペプチドを酸化反応に付すことにより上記固定化リンカーを除去するステップ。
【0017】
本明細書において用いる略語を以下に記載する:
Ac2O:無水酢酸
Alloc:アリルオキシカルボニル
Allyl:アリル
Boc:tert−ブトキシカルボニル
BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
Bu3P又はPBu3:トリブチルホスフィン
CBz:ベンジルオキシカルボニル
2−ClZ:2−クロロベンジルオキシカルボニル
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIC:1,3−ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EtOAc:酢酸エチル
Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾリル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HBTU:O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオローホスフェート
22:過酸化水素
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
Me:メチル
Pbf:2,2,4,6,7−ペンタメチル−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
Pd(PPh34:テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)
TBTU:2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート
tBu:tert−ブチル
TFA:トリフルオロ酢酸
TFMSA:トリフルオロメチルスルホン酸
THF:テトラヒドロフラン
TMSOTf:トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート
その他、原子及びアミノ酸記号は、化学分野で一般的に用いられている略字を使用する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.リンカーの合成
本発明のリンカーは、保護カルボン酸とセレノシアナートが適当な基により連結されたものであって、下記式(I)により表されるものである:
【0019】
【化11】
Figure 0004016104
(式中、R1は、複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R2は、OR3又はNHR3を表し、R3は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表す)。
【0020】
本発明において「リンカー」とは、固相から目的とする反応を伴いながら合成生成物の穏和な切断を可能とする化学的部分を指す。
本発明において、R1は、その化学的構造が特に限定されるものではなく、複素原子を有していてもよい二価の有機基を示す。ここで複素原子としては、N、O及びSなどが挙げられる。有機基としては、例えば置換基を有していてもよい脂肪族基、芳香族基若しくは複素芳香族基、又はこれらの組合せが挙げられる。具体的には、R1としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8の置換基を有していてもよい直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、アリーレン基、ベンジリデン基などが挙げられる。
【0021】
アルキレン基としては、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C20−アルキレン基、例えばメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、ジメチルメチレン、エチルメチルメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどが挙げられる。
アルケニレン基としては、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C20−アルケニレン連鎖、例えばプロペニレンなどが挙げられる。
【0022】
シクロアルキレン基としては、複素原子、例えばS、N又はOを有していてもよい環中に炭素数1〜20の直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C20−シクロアルキレン、例えば1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどが挙げられる。
【0023】
シクロアルキリデン基としては、複素原子、例えばS、N又はOを有していてもよい環中に炭素数1〜20の直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C20−シクロアルキリデン、例えばシクロプロピレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデンなどが挙げられる。
アリーレン基としては、複素原子、例えばS、N又はOを有していてもよい芳香族環又は環系、例えばフェニレンなどが挙げられる。
【0024】
ここで、置換基としては、特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、ビニル基、スチリル基、ホルミル基、イミド基、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられる。
1としては、限定するものではないが、1,2−(o−)フェニレン基、1,3−(m−)フェニレン基、及び1,4−(p−)フェニレン基が好ましい。
【0025】
また、式(I)において、R2は、OR3又はNHR3を表す。ここで、R3は、水素原子又は任意の保護基を表す。すなわち、式(I)に示す化合物の右側の構造は、カルボキシル基(−COOH)若しくはアミノ基(−NH2)、又は保護基を有するカルボキシル基若しくはアミノ基となる。本明細書中、「保護基」とは、特定の部位における化学反応を行う際に、該特定の部位以外の部位が該化学反応による影響を受けないように導入する基を指し、保護基が導入された部位の他の部位に有害な影響を及ぼさない条件下で該保護基を容易に除去することが可能なことが好ましい。また本発明において「保護」とは、上記特性を満たす保護基を有することをいう。従って、本発明において、R3で表される保護基としては、保護された官能基を不活性化させ、他の反応条件下において安定であり、かつ他の官能基又は化合物の構造を変化させない条件下で容易に除去されるものであればよく、当技術分野で公知の保護基であれば特に限定されない。例えば、カルボキシル基の保護基としては、エステルメチル[OH-、H+]、エチル[OH-、H+]、tert−ブチル[TFA]、ベンジル[OH-、H2/Pd/C]、アリル[Pd(0)、モルホリン]が挙げられ、アミノ基の保護基としては、トリフェニルメチル(トリチル)[TFA];tert−ブチルオキシ−カルボニル(Boc)、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、及び4−メトキシベンジルオキシカルボニル[TFA、HCl];ベンジルオキシカルボニル(CBz)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−ClZ)[H2−Pd又はHBr、HF]、シクロアルキルオキシカルボニル、及びイソプロピルオキシカルボニル[HF、HBr];9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)[20%ピペリジン/DMF、ジエチルアミン/THF];並びにアリルオキシカルボニル(Alloc)[Pd(0)、モルホリン、ジメドン、トリブチル水素化スズ、N−メチルアニリン]が挙げられる(四角括弧内にそれぞれの保護基の開裂手段を示すが、開裂手段はこれに限定されることはない)。上記例示した以外にも当技術分野において公知の保護基があり、そのような保護基のなかで同様の反応性を示す保護基も本発明において用いることができる。
【0026】
本発明において、式(I)で表されるリンカーとしては、R1がフェニレンであるものが好ましく、下記式(II)で表される:
【化12】
Figure 0004016104
【0027】
また本発明において、式(I)で表されるリンカーとしては、R1が1,3−(m−)フェニレンであり、R2がOR3であり、R3がtert−ブチル保護基であるものが特に好ましく、下記式(III)で表される:
【0028】
【化13】
Figure 0004016104
【0029】
特に好ましい上記式(III)で表されるリンカー、すなわち3−セレノシアナト安息香酸tert−ブチルは、当業者であれば公知の化学合成法に従って容易に得ることができる。例えば、以下のスキーム1に示す反応により合成することができる。
【0030】
【化14】
Figure 0004016104
【0031】
最初に、ニトロ安息香酸Aを対応するtert−ブチルエステルに誘導する(反応a)。このアリールニトロエステルを還元することにより、アニリンBを得る(反応b)。続いて、水溶液中のセレノシアン酸カリウムを用いるサンドマイヤー反応(反応c)を行って、セレノシアン酸アリールC、すなわち所望のリンカーである3−セレノシアナト安息香酸tert−ブチルが得られる。
上述した3−セレノシアナト安息香酸tert−ブチル以外のリンカーもまた、当業者であれば公知の化学合成法に従って合成することが可能である。
【0032】
2.セレノエーテルから誘導可能な二重結合を有する化合物の合成
本発明のリンカーを利用することにより、セレノエーテルから誘導可能な二重結合を有する化合物を合成することができる。本発明において「二重結合を有する化合物」とは、少なくとも1つの二重結合(例えば共役二重結合など)を有している化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、共役鎖を有するビタミンA、ステロイド骨格を有するコレステロール、不飽和脂肪酸類などが挙げられる。この二重結合を有する化合物は、例えば下記式(IV)で表すことができる。
【0033】
【化15】
Figure 0004016104
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立して二価の有機基を表す)。
【0034】
上記式(IV)において、R4及びR5は、その化学的構造が特に限定されるものではなく、複素原子を有していてもよい二価の有機基を示す。複素原子及び二価の有機基は、上述した通りである。
【0035】
本発明において、式(IV)で表される化合物としては、限定するものではないが、デヒドロアミノ酸(詳細については「3.デヒドロアミノ酸及びデヒドロペプチドの合成」を参照されたい)、Nicolaouらの文献(Nicolaou, K.C. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39(4):734-739)に記載の化合物(例えばセセリン、キサンチレチン、アクロニシン等の2,2−ジメチルベンゾピラン部分を含む化合物)などが挙げられる。
上記のような二重結合を有する化合物の合成方法を以下に記載する。
【0036】
(a)リンカーと出発物質との結合
二重結合を有する化合物の合成において、出発物質は特に限定されない。本発明においては、リンカーと出発物質とが連結し、下記式(V)で表されるセレノエーテル誘導体を得ることが重要である。
【0037】
【化16】
Figure 0004016104
(式中、R1は、複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R2は、OR3又はNHR3を表し、R3は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表し、R4及びR5は、それぞれ独立して複素原子を有していてもよい二価の有機基を表す)。
【0038】
従って、出発物質は、本発明のリンカーと連結した後、種々の化学反応を行って、上記式(V)で表されるセレノエーテル誘導体を生成できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、最も簡単な出発物質としては、リンカーと出発物質を連結することのみにより式(V)のセレノエーテル誘導体を生成可能である、下記式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化17】
Figure 0004016104
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立して複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R6は、水酸基、水素原子又はハロゲン原子を表す)。
【0040】
式(VI)中、R4及びR5は上述した通りであり、目的とする中間体及び最終生成物、すなわち式(IV)及び(V)の化合物に応じて変化する。また、本発明のリンカーと連結した後、種々の化学反応により上述した中間体を生成可能である出発物質の例として、下記式(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化18】
Figure 0004016104
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立して複素原子を有していてもよい二価の有機基を表す)。
【0042】
式(VII)の化合物は、本発明のリンカーと連結した後、適当な化学反応を行って、式(V)の中間体を生成することができる。従って、式(VII)で表される二重結合を有する化合物のR7及びR8の基を直接化学修飾して式(IV)で表される目的の二重結合を有する化合物を合成することが二重結合の不安定性により困難である場合には、本発明のリンカーを利用することが特に好ましい。
【0043】
以上のような出発物質は、当技術分野で公知の化学合成法により合成してもよいし、又は市販品を利用することも可能である。さらに出発物質は、その構造式が知られている場合には、天然から単離されたものであってもよい。
【0044】
出発物質と本発明のリンカーとの連結は、当業者に公知の化学的方法に従って行うことができる。出発物質中に、リンカーと反応する基以外の官能基が存在する場合には、その官能基を保護基で保護してもよい。
【0045】
リンカーと連結させた後、目的とする最終生成物に導くことが可能な、式(V)のセレノエーテル誘導体を中間体として生成するために、種々の化学反応を行ってもよい。そのような化学反応は、当業者であれば容易に理解することができる。
以上の反応により、式(V)で表されるセレノエーテル誘導体が中間体として得られる。
【0046】
(b)リンカーの固定化
本発明のリンカーを固相支持体に固定する。ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)の前に行ってもよいし、ステップ(a)の後に行ってもよい。好ましくは、ステップ(a)の反応を液相において行った後、ステップ(b)の固定化を行う。ステップ(a)の反応を液相で行う場合には、化学反応の種類の制限がなく、多種多様な反応を行うことができるという利点があり、その結果、種々の化学構造をもつ二重結合を有する化合物を生成することが可能となる。
【0047】
最初に、リンカー中の固定化反応に使用される基が保護されている場合には、リンカーの保護基を脱保護する。脱保護は、保護基の種類によって異なり、当業者であれば保護基の種類に応じて適当な脱保護反応を行うことができる。例えば、上記「1.リンカーの合成」の項目に記載した保護基に関しては、脱保護のための開裂手段を記載している。
【0048】
リンカーを脱保護した後、該リンカーのカルボキシル基又はアミノ基と固相支持体とを連結させ、リンカーを固相支持体に固定する。本発明において「固相支持体」とは、酸、塩基又は他の試薬の存在下において安定な材料から作製され、化学合成の操作を行いやすくし、かつ目的の生成物の収量を高めるために化学分野で一般的に用いられている任意の形態のビーズ又は樹脂を指し、「固相支持体」及び「樹脂」という用語は互換的に用いられる。固相支持体としては、限定されるものではないが、架橋ポリスチロール、架橋ポリアクリルアミド及びその他の樹脂;セラミック;ガラス;ラテックス;天然ポリマー;金及びコロイド金属粒子;シリカゲルなどが挙げられる。架橋ポリスチロール、架橋ポリアクリルアミド及びその他の樹脂としては、例えばポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアミドなどが含まれる。また、天然ポリマーとしては、例えばアガロース、セルロース、ペクチン、アルギン酸塩などが含まれる。また「固定」又は「固定化」とは、固相支持体と結合させることを指す。
【0049】
リンカーは、固相支持体の種類に応じて、エステル結合、アミド結合、ホスファート結合などを介して固相支持体に結合させる。固相支持体への結合は、当技術分野で公知の方法で行われる。
【0050】
具体的には、溶剤中で例えばジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いてリンカーのカルボキシル基をアミド結合により固相支持体に結合させることができる。溶剤としては、非極性又は極性の溶剤、例えばDMF、塩化メチレン、DMSO、THFなどが適している。また、DICの代わりに、HATU、DIEA、TBTU、HBTS、BOP又はPYBOPなどのカップリング試薬を用いることも可能である。
以上の反応から、固定されたセレノエーテル誘導体が生成される。
【0051】
(c)固定化リンカーの除去
固定されたセレノエーテル誘導体の固定化リンカー部分を除去し、目的とする二重結合を有する化合物を生成する。固定化リンカーの除去は、固定化されたセレノエーテル誘導体を穏和な酸化反応に付すことにより簡便に行うことができる。例えば、酸化反応は、適当な有機溶媒又は水中で酸化剤を作用させることにより行うことができる。有機溶媒としては、例えば限定されるものではないが、ジエチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;DMF、DMSOなどの極性溶媒;メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒;酢酸などの低級カルボン酸;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒などが挙げられ、溶解させる目的物が良好に溶解する溶媒を選択することが好ましい。また酸化剤としては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸などの過酸化物;金属触媒と酵素;過ヨウ素酸及びその金属塩などから自由に選択可能であるが、特にその穏和な酸化作用の点から過酸化水素(H22)が好ましい。
【0052】
以上の反応により、固定化リンカーが除去され、二重結合を有する化合物が得られる。本発明は特定の機構に限定するものではないが、このリンカーの除去(酸化反応)により、光延反応による反応機構を経て二重結合を有する化合物が生成されると推測される。
【0053】
3.デヒドロアミノ酸及びデヒドロペプチドの合成
本発明のリンカーを利用することにより、デヒドロアミノ酸、さらにはデヒドロペプチドを合成することができる。
【0054】
(a)リンカーと保護アミノ酸との結合
本発明においては、リンカーのセレノエート基と保護アミノ酸とを連結させる。ここで、保護アミノ酸は、セレノエート基との反応のために、アミノ酸内又は側鎖に水酸基(OH)又はハロゲン原子が存在することが好ましい。
【0055】
本発明において「アミノ酸」とは、D−又はL−立体異性体の天然又は非天然アミノ酸を指し、天然アミノ酸としては、例えばアラニン(Ala)、アルギニン(Arg)などが含まれ、非天然アミノ酸としては、例えばアゼチジンカルボン酸、2−若しくは3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−若しくは4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−若しくは3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、ノルバリン、オルニチンなどが含まれるがこれに限定されない。また本発明において、「アミノ酸」には、アミノ酸類似体などのアミノ酸と同様にペプチド結合によって連結可能な分子も含まれる。「アミノ酸類似体」とは、N末端アミノ基若しくは側鎖基が化学的にブロッキングされた又は修飾された天然及び非天然アミノ酸を指し、例えば、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、S−(カルボキシメチル)−システイン、5−(カルボキシメチル)−システインスルホキシド、アスパラギン酸−(βメチルエステル)、N−エチルグリシン、アラニンカルボキサミドなどが含まれるがこれに限定されない。
【0056】
保護アミノ酸の保護基は、保護された側鎖官能基を不活性にさせ、アミノ末端又はカルボキシル末端保護基の除去において安定であり、ペプチド鎖の構造を変化させずに容易に除去することが可能なものとする。例えば、アミノ基の保護基は、「1.リンカーの合成」の項に記載した通りである。また、グアニジノ基の保護基としては、ニトロ[H2/Pd/C、HF]、及びCBz[HF、TFMSA、TMSOTf、H2/Pd/C]、Boc[TFA]などが挙げられる。水酸基の保護基としては、例えば、トリチル[TFA]、tert−ブチル[TFA]、ベンジル及び置換ベンジル基[HF、TFMSA、H2/Pd/C]などが挙げられる。フェノール基の保護基としては、tert−ブチル[TFA]、トリチル[TFA]、ベンジル[HF、TFMSA、H2/Pd/C]などが挙げられる。側鎖カルボキシ基の保護基としては、メチル[OH-、H+]、エチル[OH-、H+]、tert−ブチル[TFA]、アリル[Pd(0)、モルホリン]、シクロヘキシル[Hf、TMSOTf]、ベンジル[HF、TFMSA、H2/Pd/C]などが挙げられる。アスパラギン及びグルタミン側鎖の保護基としては、トリチル[TFA]、キサンチル[TFA]などが挙げられる。イミダゾール基の保護基としては、2,4−ジニトロフェニル(Dnp)[チオフェノール]、トリチル[TFA]、ベンジルオキシメチル(Bom)[HF、TFMSA、TMSOTf、H2/Pd/C]、p−トルエンスルホニル(Tos)[HF、TFMSA]、Cbz[HF、H2/Pd/C]が挙げられる。スルフヒドリル基の保護基としては、トリチル[TFA]、4−メチルベンジル[HF、TFMSA]などが挙げられる。インドール基の保護基としては、ホルミル[DMF中10%ピペリジン、その後HF]、Boc[TFA]などが挙げられる。四角括弧内にそれぞれの保護基の開裂手段を記載したが、開裂手段はこれに限定されることはない。また、上記例示した以外にも当技術分野において公知の保護基があり、そのような保護基のなかで同様の反応性を示す保護基も本発明において用いることができる。
【0057】
リンカーのセレノエート基と保護アミノ酸との連結は、当業者に公知の化学的方法に従って行うことができる。
特に好ましい実施形態として、上記式(II)で表されるリンカーと保護アミノ酸との反応を以下のスキーム2に示す:
【0058】
【化19】
Figure 0004016104
【0059】
リンカーAと、N末端及びC末端をそれぞれFmoc及びAllylで保護したアミノ酸Bを、CH2Cl2中でトリブチルホスフィンと共に約0℃にて約0.5〜2時間にわたり反応させることにより、リンカーと保護アミノ酸が連結したセレノエーテル誘導体Cが得られる。
【0060】
(b)固相支持体への固定化
本発明のリンカーを固相支持体に固定する。ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)の前に行ってもよいし、ステップ(a)の後に行ってもよい。好ましくは、ステップ(a)の反応を液相において行った後、ステップ(b)の固定化を行う。
【0061】
リンカーにおける固相支持体に結合する基が保護されている場合には、その保護基を脱保護する。脱保護は、保護基の種類によって異なり、当業者であれば保護基の種類に応じて適当な脱保護反応を行うことができる。例えば、上記「1.リンカーの合成」の項目に記載した保護基に関しては、脱保護のための開裂手段を記載している。
【0062】
リンカーを脱保護した後、該リンカーのカルボキシル基又はアミノ基と固相支持体とを連結させ、リンカーを固相支持体に固定する。固相支持体としては、上記「2.セレノエーテルから誘導可能な二重結合を有する化合物の合成」の項に記載したものが挙げられる。デヒドロアミノ酸又はデヒドロペプチドの合成においては、ペプチドの固相合成に用いられる固相支持体が特に好ましく、例えば、Novasyn(登録商標)TGアミノ樹脂(Novabiochem)、クロロベンジル樹脂、Rink−Harz樹脂(Navabiochem)、Sieber−Harz樹脂(Navabiochem)、Wang−Harz樹脂(Navabiochem)などが挙げられる。
【0063】
リンカーは、固相支持体の種類に応じて、エステル結合、アミド結合、ホスファート結合などを介して固相に結合させる。固相への結合は、当技術分野で公知の方法で行われる(例えば、「2.セレノエーテルから誘導可能な二重結合を有する化合物の合成」の項目を参照されたい)。
【0064】
(c)ペプチドの生成
(c−1)カルボキシル基側のペプチド伸長
デヒドロペプチドを合成する場合、合成されるペプチドにおいて、デヒドロアミノ酸のカルボキシル末端側にアミノ酸又はペプチドが付加されているペプチドを合成する場合には、上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のカルボキシル基を脱保護し、所望のアミノ酸又はペプチドを導入する。
【0065】
カルボキシル基の脱保護に関しては、上述した通りである。固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のカルボキシル基と所望のアミノ酸又はペプチドのアミノ基とをアミド結合(ペプチド)により結合させる。導入されるアミノ酸又はペプチドは特に限定されるものではないが、反応させる基以外の基は保護しておくことが好ましい。アミド結合反応は当技術分野で周知であり、当業者であれば適切な手段及び方法を採用して行うことができる。
上記ステップ(c−1)は、合成されるペプチドにおいて、デヒドロアミノ酸がカルボキシル末端に存在するペプチドを合成する場合には行わなくてよい。
【0066】
(c−2)アミノ基側へのペプチド伸長
合成されるペプチドにおいて、デヒドロアミノ酸のアミノ末端側にアミノ酸が付加されているペプチドを合成する場合には、上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のアミノ基を脱保護し、所望の保護アミノ酸を導入する。
【0067】
アミノ基の脱保護と所望の保護アミノ酸の導入は、通常のペプチド固相合成法と同様に行うことができる。これにより、固定化リンカーに結合したペプチドが生成される。
【0068】
続いて、合成されるペプチドにおいて、デヒドロアミノ酸のアミノ末端側にペプチドが付加されているペプチドを合成する場合には、上記の保護アミノ酸の導入後、固定化リンカーに結合している合成中のペプチドのアミノ末端を脱保護し、第2のアミノ酸を導入する。合成中のペプチドのアミノ末端の脱保護及びアミノ酸の導入を繰り返し行うことによって、固定化リンカーに結合したペプチドが伸長され、所望の長さを有する所望の配列のペプチドを合成することができる。
【0069】
このステップ(c−2)は、合成されるペプチドにおいて、デヒドロアミノ酸がアミノ末端に存在するペプチドを合成する場合には行わなくてよい。しかし、ペプチド合成において、ステップ(c−1)及び(c−2)のいずれかのステップは必須に行うものとする。
【0070】
以上のアミノ基の脱保護及び保護アミノ酸の導入は、ペプチド固相合成法において般的に用いられているペプチド合成機を利用して行うことも可能である。そのようなペプチド合成機としては、限定するものではないが、PioneerTMペプチド合成装置、ペプチド合成装置PSSM−8(SHIMADZU)、ペプチドシンセサイザモデル433A(Applied Biosystems)などが挙げられる。
【0071】
(d)固定化リンカーの除去
以上のようにして、ステップ(b)で得られる固定化リンカーに結合した保護アミノ酸、又はステップ(c)で得られる固定化リンカーに結合したペプチドは、酸化反応に付すことにより固定化リンカーを除去し、目的とするデヒドロアミノ酸又はデヒドロペプチドを生成することができる。
【0072】
固定化リンカーの除去は、固定化リンカーが結合した保護アミノ酸又はペプチドを穏和な酸化反応に付すことにより簡便に行うことができる。例えば、酸化反応は、適当な有機溶媒又は水中で酸化剤を作用させることにより行うことができる。有機溶媒としては、例えば限定されるものではないが、ジエチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;DMF、DMSOなどの極性溶媒;メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒;酢酸などの低級カルボン酸;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒などが挙げられ、溶解させる目的物が良好に溶解する溶媒を選択することが好ましい。また酸化剤としては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸などの過酸化物;金属触媒と酵素;過ヨウ素酸及びその金属塩などから自由に選択可能であるが、特にその穏和な酸化作用の点から過酸化水素(H22)が好ましい。
【0073】
以上の反応により、固定化リンカーが除去され、所望のデヒドロアミノ酸又はデヒドロペプチドが得られる。また、得られるデヒドロアミノ酸又はデヒドロペプチドが保護基を有する場合には、適当な脱保護反応を行ってもよい。
【0074】
本発明のリンカーは、第1の特長として、通常の固相合成で用いられるリンカーとは異なり、最初の反応において固相支持体に結合させる必要がなく、最初に液相において出発物質と結合させ、さらに種々の化学反応を適用した後、固相支持体に結合させることが可能である。このため、出発物質に結合させる反応を有機化学的に許容される範囲で自由に選択することができ、豊富な知見がある液相反応で官能基の変換や保護基の脱着が可能である。しかる後に、活性化反応によって固相支持体と結合させる官能基を再生し、固相合成では周知の簡便な固相導入反応(アミド化反応など)で固定することが可能である。このとき、使用する固相支持体は、デヒドロペプチドなどの特殊な目的物質に合わせて新たに調製する必要はなく、市販の反応性既知な固相支持体から自由に選択することができる。
【0075】
本発明のリンカーは、その第2の特長として、デヒドロアミノ酸などに含まれる二重結合という不安定な官能基を、合成の最終段階である固相からの切出し反応により調製できる。しかもこの切出し反応は従来の酸による切出し反応とは異なり、穏和な酸化反応によるものであり、目的とする最終生成物のみならず他の不安定な官能基を損なうことがない。
【0076】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕リンカーの合成
本実施例においては、上記スキーム1に示す反応に従ってリンカーを合成した。
(1)3−アミノ安息香酸tert−ブチルの生成
3−ニトロ安息香酸(2.50g,15mmol)のtert−ブタノール(27.5ml)溶液にジメチルアミノピリジン(549mg,4.5mmol)と二炭酸tert−ブチル(7.0ml,30mmol)を加え、室温で2時間反応させた。反応液を減圧で濃縮して、得られた残渣をシリカゲル(10g)を重積したカラムを通じて濾過し、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で洗浄した。濾液を濃縮し、3−ニトロ安息香酸tert−ブチルを約3.4g得た。得られた化合物の性質を以下に示す:
IR(film):1720, 1599, 1533 1369, 1352, 1300, 1271, 1171, 1136, 846, 719 cm-1.
1H-NMR(CDCl3)δ 8.79 (1H, s), 8.38 (1H, d, J=8.0 Hz), 8.32 (1H, d, J=8.0 Hz), 7.63 (1H, t, J=8.0 Hz), 1.63 (9H, s).
【0078】
得られたtert−ブチル3−ニトロ安息香酸(約3.4g)をエタノール(80ml)に溶解し、5%パラジウム炭素(500mg)を加えて、水素気流下、室温で2時間反応させた。不溶物を濾別し、濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5〜20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、得られた固形物をヘキサン−酢酸エチルから再結晶し、3−アミノ安息香酸tert−ブチルを2.6g(90%,2ステップ)得た。得られた化合物の性質を以下に示す:
融点82.5〜83.0℃(ヘキサン−EtOAc)
IR(film):1694, 1606, 1460, 1368, 1320, 1245, 1161, 1108, 757 cm-1.
1H-NMR(CDCl3)δ 7.37 (1H, d, J=8.0, 1.0 Hz), 7.30 (1H, s), 7.18 (1H, t, J=8.0 Hz), 6.82 (1H, dd, J=8.0, 1.5 Hz), 3.77 (2H, br s), 1.58 (9H, s).
【0079】
(2)3−セレノシアナト 安息香酸tert−ブチル
3−アミノ安息香酸tert−ブチル(2.0g,10.3mmol)を希塩酸(3M,3.5ml)とジオキサン(10ml)の混合溶媒に溶解し、0℃で亜硝酸ナトリウム(725mg,10.5mmol)の水(2ml)溶液を滴下した。0℃で10分間撹拌した後、酢酸ナトリウム(1.45g)の水(3ml)溶液を加えて、pHがおよそ6になるように調整した。セレノシアン酸カリウム(2.25g,15.6mmol)の水(6ml)溶液を0℃で滴下し、さらに1時間反応させた。得られた反応液を、酢酸エチルと炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で希釈し、セライトの層を通して濾過した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンの後、5% EtOAc/ヘキサン)で精製し、3−セレノシアナト 安息香酸tert−ブチル(図1中(a)の化合物)を褐色油状物質として1.46g(50%)得た。分析用サンプルを沸点(bp)180〜200℃(0.5torr)の画分から蒸留して精製したところ固化した。得られた化合物の性質を以下に示す:
融点37〜38℃
IR(film):1714, 1569, 1369, 1302, 1163, 1127, 1012, 848, 748 cm-1.
1H-NMR(CDCl3)δ 8.23 (1H, s), 8.05 (1H, d, J=8.0 Hz), 7.82 (1H, d, J=8.0 Hz), 7.48 (1H, t, J=8.0 Hz), 1.61 (9H, s).
【0080】
〔実施例2〕デヒドロアミノ酸前駆体(セレノエーテル誘導体)の合成
本実施例においては、上記スキーム2の反応に従ってリンカーと保護アミノ酸とを反応させてセレノエーテルを合成した。使用したリンカーは、図2に示す実施例1で得られた3−セレノシアナト 安息香酸tert−ブチル、4−セレノシアナト 安息香酸tert−ブチル、及び4−セレノシアナトフェノキシ酢酸tert−ブチルである。4−セレノシアナト 安息香酸tert−ブチル、及び4−セレノシアナトフェノキシ酢酸tert−ブチルは、実施例1と同様に対応するカルボン酸を分子内に有するニトロベンゼン誘導体を保護及び還元して得られる、アニリン誘導体に対するサンドマイヤー反応によって合成した。
【0081】
N,C−保護セリン又はトレオニンを、塩化メチレン中0℃にてリンカー及びトリブチルホスフィンと反応させ、対応するセレノエーテル誘導体を得た。使用したリンカーと導入した保護アミノ酸、及び得られたセレノエーテル誘導体の収率を図2に示す。
【0082】
〔実施例3〕保護アミノ酸へのリンカーへの導入
本実施例では、図1に示すリンカーの導入反応を行った。
(1)Nα−Fmoc−(m−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルセレニル)アラニン アリルエステルの合成(反応A)
実施例1で得られた3−セレノシアナト 安息香酸tert−ブチル(a:345mg,1.23mmol)を塩化メチレン(2.5ml)に溶解し、0℃でトリブチルホスフィン(294μl,1.23mmol)を加えて10分間反応させた。得られた淡黄色の溶液にFmocセリンアリルエステル(b:300mg,0.82mmol)の塩化メチレン(2.5ml)溶液を滴下し、30分間反応させた。反応液を酢酸エチル−10%硫酸水素カリウムで分配した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し乾燥後、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル4:1)で精製し、Nα−Fmoc−(m−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルセレニル)アラニンアリルエステル(c)を淡黄色油状物質として368mg(74%)得た。得られた化合物(c)の性質を以下に示す:
[α]D 23 25.2°(c=1.00, CHCl3
IR(film):3342, 1713br, 1507, 1450, 1413, 1368, 1300, 1126, 989, 936, 848, 743 cm-1.
1H-NMR(CDCl3)δ 1.57 (9H, s), 3.40 (1H, dd, J= 4.9, 13.6 Hz), 3.47 (1H, dd, J= 4.6, 13.6 Hz), 4.20 (1H, t, J= 7.0 Hz), 4.33 (3H, complex), 4.53 (1H, dd, J= 5.5, 12.8 Hz), 4.77 (1H, dist. dt, J= 4.6, 7.9 Hz), 5.22 (1H, br. d, J= 10.3 Hz), 5.27 (1H, br. d, J= 19.0 Hz), 5.63 (1H, br. d, J= 7.9 Hz), 5.80 (1H, complex), 7.25-7.35 (3H, arom.), 7.40 (2H, arom.), 7.56 (2H arom.), 7.70 (1H. arom.), 7.70 (2H, arom.), 7.86 (1H, arom.), 8.17 (1H, s, arom.).
【0083】
(2)Nα−Fmoc−(m−カルボキシフェニルセレニル)アラニン アリルエステルの合成(反応B)
上記(1)で得られたNα−Fmoc−(m−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルセレニル)アラニン アリルエステル(c:331mg,0.545mmol)を95% TFAに溶解し、室温で1時間反応させた。得られた反応液をトルエンで希釈し濃縮して得られた残渣を酢酸エチルに溶解して、10%硫酸水素カリウム、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を減圧濃縮し、セレノエーテルカルボン酸(d)を298mg(99%)得た。
【0084】
〔実施例3〕ペプチドの合成
本実施例では、リンカーの固定化とペプチド合成を行った。
(1)アミノ酸の固定化(反応C)
実施例2で得られたNα−Fmoc−(m−カルボキシフェニルセレニル)アラニン アリルエステル(d:289mg,524mmol)とアミノエチル化樹脂(スイスCalbiochem−Novabiochem社製NovaSynTMTGアミノ樹脂:0.29mmol/g、904mg、262mmol)をDMF(6ml)に懸濁・膨潤させた。ついでHATU(199mg,0.524mmol)及びDIEA(182μl,0.524mmol)を加え、室温で振盪下一晩反応させた。得られた樹脂を濾別し、DMF・メタノール・ジエチルエーテルで順次洗浄し真空乾燥させ、アミノ酸固定化樹脂(e)977mgを得た。この樹脂は、ニンヒドリン反応に陰性だった。
【0085】
このようにして得られた樹脂(6.3mg)をピペリジン(0.4ml)と塩化メチレン(0.4ml)の混合液中、室温・振盪下で30分反応後、メタノール(1.6ml)と塩化メチレン(7.6ml)で希釈し、301nmでの吸光度を測定したところ、0.690であった。ジベンゾフルベンのピペリジン付加物の301nmの分子吸光係数(ε=7800)より計算される、Fmocアミノ酸の導入率は0.14mmol/gであった。
【0086】
(2)C−末端脱保護(反応D)
上記(1)で得られたC−末端にアリル基を有するアミノ酸固定化樹脂(e:214mg,0.03mmol)を無水脱酸素THF(5ml)に懸濁し、アルゴン気流下、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(12mg,0.01mmol)とジメドン(126mg,0.9mmol)を加え、室温で3時間振盪して反応させた。樹脂を濾別し、THF・メタノール・ジエチルエーテルで順次洗浄した後、真空乾燥させ、カルボン酸樹脂(f)を214mg得た。
【0087】
(3)C−末端縮合によるC末端へのペプチド付加(反応E)
C−末端を脱保護したアミノ酸固定化樹脂(f:214mg,0.03mmol)をDMF(5ml)に懸濁・膨潤し、HATU(34mg,0.09mmol)とDIEA(31μl,0.18mmol)及びフェニルアラニル アラニンメチルエステル塩酸塩(HCl・Phe−Ala−Ome:21mg,0.09mmol)を加えて、室温で1晩振盪して反応させた。樹脂を濾別し、DMF・メタノール・ジエチルエーテルで順次洗浄した後、真空乾燥させ、トリペプチド樹脂(g)を218mg得た。
【0088】
(4)N−末端順次伸長(反応F)
上記(3)で得られたトリペプチド樹脂(g:218mmol,0.03mmol)をPioneerTMペプチド合成装置(モデル9030)にセットし、HATU法(Carpino, L.A. et al., J. Am. Chem. Soc. 115:4397, 1993)に従ってGly−OH(59mg,0.2mmol)、及びFmoc−Arg(Pbf)−OH(130mg,0.2mmol)を用いて内蔵Extended Cycleプログラム(脱保護時間5分、カップリング時間60分)により反応させた。最終段階は無水酢酸によるアセチルキャッピング反応を施した。プログラム終了後、反応器から樹脂を回収しメタノール・エーテルで順次洗浄した後、真空乾燥してヘキサペプチド樹脂(h)を229mg得た。
【0089】
(5)切出し反応(反応G)
ヘキサペプチド樹脂固定化樹脂(h:229mg,0.03mmol)をTHF(5ml)に懸濁し、30%過酸化水素水(0.20ml)を加え、室温で1晩振盪して反応させた。樹脂を濾別し、濾液を半量まで濃縮した後、酢酸エチル−希亜硫酸水素ナトリウム水溶液で分配し、有機層を飽和食塩水で洗浄・乾燥後、濃縮して得られた残渣をBiobeadsTM SX−3(米国Biorad社製)を充填したカラム(移動相トルエン−酢酸エチル1:1)で精製し、Ac−Arg(Pbf)−Gly−Asp(tBu)−ΔAla−Phe−Ala−Ome(i)を23mg(77%)得た。得られた化合物(i)の性質を以下に示す:
[α]D 22 -14.3°(c=1.00, CHCl3)
1H-NMR(CDCl3, selected) δ(H, s), 1.41 (3H, d, overlapped), 1.41 (3H, s), 1.42 (3H, s), 1.45 (9H, s), 2.08 (3H, s), 2.49 (3H, s), 2.56 (3H, s), 2.94 (3H, s), 3.69 (3H, s), 5.24 (1H, br.s), 6.33 (1H, br.s), 7.15-7.25 (5H, arom.).
上述したように、本発明のリンカーを用いてデヒドロペプチドを合成することができた。
【0090】
【発明の効果】
本発明により、二重結合を有する化合物などの不安定な化合物を合成するためのリンカー及び該化合物の合成方法が提供される。本発明のリンカーは、特にデヒドロアミノ酸及びデヒドロペプチドの合成に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリンカーを用いた保護アミノ酸へのリンカー導入とペプチド合成の反応を示す図である。球はアミノエチル化樹脂を表す。
【図2】本発明のリンカーと保護アミノ酸との反応により得られるセレノエーテル及びデヒドロアミノ酸の収率を示す図である。

Claims (7)

  1. 以下のステップ:
    (a)リンカーのセレノエート基と下記式(VI):
    Figure 0004016104
    (式中、R 及びR は、それぞれ独立して複素原子を有していてもよい二価の有機基を表し、R は、水酸基、水素原子又はハロゲン原子を表す。)
    で表される出発物質を反応させるステップであって、
    ここでリンカーは、
    下記式(II):
    Figure 0004016104
    (式中、R は、OR 又はNHR を表し、R は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表す。)
    で表されるリンカーである、上記ステップ;
    (b)(a)に続いて、(a)における反応により得られた下記式:
    Figure 0004016104
    (式中、R 、R 及びR は、上記のとおりである)
    で表される中間体の上記リンカー部分を固相支持体に固定するステップ;及び
    (c)上記中間体を酸化反応に付すことにより該固定化リンカーを除去するステップ;
    を含む、下記式(IV):
    Figure 0004016104
    (式中、R 及びR は、上記のとおりである)
    で表される二重結合を有する化合物の合成方法。
  2. リンカーが下記式(III):
    Figure 0004016104
    であり、かつステップ(a)における反応により得られる中間体が下記式:
    Figure 0004016104
    (式中、R 及びR は、請求項1に記載のとおりである)
    で表される、請求項1記載の合成方法。
  3. 以下のステップ:
    (a)リンカーのセレノエート基と保護アミノ酸とを連結するステップであって、
    ここでリンカーは、
    下記式(II):
    Figure 0004016104
    (式中、R は、OR 又はNHR を表し、R は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表す。)
    で表されるリンカーである、上記ステップ;
    (b)(a)に続いて、(a)により得られた生成物の上記リンカー部分を固相支持体に固定するステップ;及び
    (c)(b)に続いて、上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸を酸化反応に付すことにより該固定化リンカーを除去するステップ;
    を含む、二重結合を有する化合物の合成方法。
  4. リンカーが下記式(III):
    Figure 0004016104
    表される、請求項3記載の合成方法。
  5. 二重結合を有する化合物がデヒドロアミノ酸である、請求項3または4記載の合成方法。
  6. 以下のステップ:
    (a)リンカーのセレノエート基と保護アミノ酸とを連結するステップであって、
    ここでリンカーは、
    下記式(II):
    Figure 0004016104
    (式中、R は、OR 又はNHR を表し、R は、水素原子、又はtert−ブチル、エステルメチル、エチル、ベンジル、アリル、トリフェニルメチル、tert−ブチルオキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及びその他の保護基からなる群より選択される保護基を表す。)
    で表されるリンカーである、上記ステップ、
    (b)(a)に続いて、(a)により得られた生成物の上記リンカー部分を固相支持体に固定するステップ;
    (c)(b)に続いて、以下のステップ(c−1)及び/又は(c−2)を行うステップ;
    (c−1)上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のカルボキシル基を脱保護し、該 カルボキシル基に所望のアミノ酸又はペプチドを導入するステップ;
    (c−2)上記固定化リンカーに結合した保護アミノ酸のアミノ基を脱保護し、該アミノ基に所望の保護アミノ酸を導入して固定化リンカーに結合したペプチドを生成するステップであって、任意によりさらに該ペプチドのアミノ基を脱保護して該アミノ基に第2の保護アミノ酸を導入し、任意により上記脱保護及び保護アミノ酸の導入の工程を繰り返し行う、上記ステップ;並びに
    (d)(c)に続いて、(c)により生成された、固定化リンカーに結合したペプチドを酸化反応に付すことにより上記固定化リンカーを除去するステップ;
    を含む、デヒドロペプチドの合成方法。
  7. リンカーが下記式(III):
    Figure 0004016104
    で表される、請求項6に記載の合成方法。
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