JP4015833B2 - エンドミル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Oリングが装着されるOリング装着構造の加工に好適なエンドミルに関する。
【0002】
【従来の技術】
Oリング溝としては、一般的に、図7に示すように、溝開口15cから溝底14cまでの溝幅が同じストレート型Oリング溝10cや、図8に示すように、溝開口15dから溝底14dに向かって溝幅が次第に広がる逆テーパ型Oリング溝10d等がある。
【0003】
ストレート型Oリング溝10cを加工する場合には、図9に示すようなストレート捩れ刃エンドミル28が用いられる。また、Oリング溝としての逆テーパ溝10dを加工する場合には、一度、ストレート捩れ刃エンドミルで溝加工した後、図10に示すような逆テーパ直刃エンドミル29で、先に加工した溝をさらに加工している。
【0004】
また、以上の一般的なOリング溝の他、例えば、特開平11−037297号公報に記載されたものもある。このOリング溝は、環状の溝の外周側側壁の開口縁部に、内周側側壁側に突出した突起部が形成されているものである。このOリング溝をどのように加工するかについて、上記公報には開示されていないため、具体的な加工方法が不明であるが、おそらく、ストレートエンドミルで溝加工した後、この溝の外周側側壁に突起部を形成したと思われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術のうち、ストレート型のOリング溝は、加工が簡単であるものの、Oリングが外れ易いという問題点がある。一方、逆テーパ型のOリング溝や特開平11−037297号公報に記載のOリング溝は、Oリングが外れ難いものの、加工が面倒であるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目し、加工が簡単で、しかもOリングが外れ難いOリング装着構造の加工に好適なエンドミルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためのエンドミルは、
工具先端から工具軸方向に所定距離の位置まで形成されているストレート捩れ刃と、
前記工具先端から工具軸方向に前記所定距離の位置のみに、工具軸に近づく向きに凹むよう形成された切欠きと、を有することを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記エンドミルにおいて、前記切欠きは、工具先端側辺と、該工具先端側辺と対向する対向辺とを有し、前記工具先端側辺は、工具軸に近づくに連れて次第に工具先端から遠ざかる方向に向っており、前記対向辺は、工具軸に近づくに連れて次第に工具先端に近づく方向に向っていることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るOリング装着構造の各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
まず、図1〜図4を用いて、Oリング装着構造の第1の実施形態について説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態のOリング装着構造を成すOリング溝10は、ストレート型溝の内周側側壁11iの開口縁部及び外周側側壁11oの開口縁部に、それぞれ、向かい合っている側壁側へ突出した突起部12i,12oが形成されているものである。
【0014】
この突起部12i,12oの溝底14と対向する面13i,13oは、突起部12i,12oが形成されている側壁11i,11oから遠ざかるに連れて次第に溝底14から遠ざかる方向に逃げている。また、互いに向かい合っている突起部12i,12oは、一方の突起部に対して他方の突起部が対称な形状である。
【0015】
以上の突起部付きのOリング溝10は、図4に示すエンドミル20を用いて加工される。このエンドミル20は、図9を用いて前述したストレート捩れ刃エンドミル28の先端から、工具軸C方向に所定距離の位置に、工具軸Cに近づく向きに凹んだ切欠き21が形成されているものである。ここで、所定距離とは、Oリング溝10の溝底14から突起部12i,12oの形成予定位置までの距離である。また、ストレート捩れ刃エンドミル28に形成する切欠き21は、上述した突起部12i,12oの形状に併せて、その工具先端側辺22が、工具軸Cに近づくに連れて次第に工具先端から遠ざかる方向に向かっている。
【0016】
以上の切欠付きストレート捩れ刃エンドミル20を用いて、突起部付きOリング溝10を加工する場合、図1に示すように、溝加工予定線上の一箇所Sに、このエンドミル20を回転させつつ押し当てて、そこに、目的の溝深さの穴を開け、その後、回転しているエンドミル20を溝加工予定線に沿って移動させる。このように加工すると、被加工物9にエンドミル20が最初に当たった部分Sは、図3に示すように、突起部のないストレート型溝10aになるが、その他の部分は、図2に示すように、突起部12i,12oを有する溝10となる。
【0017】
以上のように、本実施形態では、一つの加工工具20を移動させるだけで、突起部付きOリング溝10を形成することができるので、非常に容易に加工することができ、しかも、溝の開口縁部に突起部12i,12oが形成されているので、Oリング1を外れ難くすることができる。さらに、本実施形態では、内周側側壁11iと外周側側壁11oとの両方に、突起部12i,12oを形成しているので、特開平11−037297号公報に記載されたOリング溝のように、外周側側壁にのみ突起部があるものより、Oリング1の外周側及び内周側の変形がほぼ均等になり、極端に歪んだ形状にならないために、Oリング1の寿命を長くすることができる。また、突起部12i,12oの溝底側の面13i,13oは、溝底14から遠ざかる方向に逃げているため、Oリング1との接触角が小さくなり、Oリング1を傷付けないので、この観点からも、Oリング1の寿命を長くすることができる。
【0018】
ここで、従来技術の欄で述べた逆テーパ型Oリング溝の加工に二つの加工工具が必要で、本実施形態の突起部付きOリング溝10の加工には一つの加工工具20で済む理由について説明する。
【0019】
図8に示す逆テーパ型Oリング溝10dは、図10に示す逆テーパ直刃エンドミル29一つで加工することも可能である。しかしながら、このエンドミル29では、刃が伸びている方向が直線状でしかもエンドミル29の進行方向に対してほぼ垂直であるため、刃にかかる抗力f0が大きくなってしまう。また、この抗力f0は、工具軸Cに対してほぼ垂直に作用し、この抗力f0がほぼそのままエンドミル29の曲げ応力M0として作用するため、応力集中が起こる刃基部29aで折れる可能性が極めて高い。このため、逆テーパ型Oリング溝10dを形成する場合には、従来技術の欄で述べたように、一度、図9に示すストレート捩れ刃エンドミル28で溝加工した後、図10に示す逆テーパ直刃エンドミル29で、先に加工した溝をさらに加工することで、逆テーパ直刃エンドミル29にかかる抵抗を減らしている。
【0020】
一方、本実施形態のエンドミル20は、図4に示すように、ストレート捩れ刃エンドミルに切欠きを形成したものであるため、刃が伸びている方向は、エンドミル20の進行方向に対して鈍角をなす。このため、溝加工中に刃にかかる抗力f1は、先に述べた直刃エンドミル29よりも、小さくなる。さらに、この抗力f1は、工具軸Cに対して一定の角度をなして作用するため、このエンドミル10に対して曲げ応力M1として作用する工具軸Cに対して垂直な力は、刃にかかる抗力f1の分力fbとなり、このエンドミル20に作用する曲げ応力M1が小さくなる。この結果として、前加工することなく、このエンドミル20で、一度に、突起付きOリング溝10を加工しても、このエンドミル20が折れる虞は極めて小さい。また、このエンドミル20が折れ難い理由として、曲面を成している刃のすくい面に沿って、切り屑が排出されるため、切り屑が排出され易く、切り屑による抵抗が少ないことも一因として考えられる。なお、以上の結果から、逆テーパ型Oリング溝を一度に加工するために、逆テーパ捩れ刃エンドミルを用いるとよさそうであるが、逆テーパで且つ捩れ刃のエンドミルは、現状では製作が極めて困難であるため、事実上、存在しない。
【0021】
次に、図5及び図6を用いて、本発明に係るOリング装着構造の第2の実施形態について説明する。
【0022】
図5に示すように、本実施形態のOリング装着構造を成すOリング溝10bは、突起部12ib,12obの先端部を曲面にしたもので、その他の構成に関しては、第1の実施形態と同様である。なお、この突起部12ib,12obの溝底側の面13ib,13obも、溝底14から遠ざかる方向に逃げている。
【0023】
このOリング溝10bは、図6に示すエンドミル20bを用いて加工される。このエンドミル20bは、切欠き21bの形状が突起部12ib,12obの形状に併せて、曲線を描いており、その他の形状に関しては、第1の実施形態のエンドミル20と同様である。
【0024】
以上のように、本実施形態も、基本的な構成は第1の実施形態と同じなので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、突起部12ib,12obの先端部を曲面にしたので、Oリング1の装着時にOリング1が傷付くのを防ぐことができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、溝の開口縁部に突起部が形成されているので、Oリングが溝から外れるのを防ぐことができる。しかも、溝の両側壁に突起部が形成されているため、一方の側壁にのみ突起部が形成されているものよりも、突起部による変形の均等化が図られ、Oリングの寿命を伸ばすことができる。また、本発明のOリング溝は、ストレート捩れ刃エンドミルに切欠きを形成した加工工具で、一度に加工できるため、このOリング溝を少ない加工工程で簡単に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施形態におけるOリング溝の平面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態における加工工具の正面図である。
【図5】本発明に係る第2の実施形態におけるOリング溝の断面図である。
【図6】本発明に係る第2の実施形態における加工工具の正面図である。
【図7】従来のストレート型Oリング溝の断面図である。
【図8】従来の逆テーパ型Oリング溝の断面図である。
【図9】従来のストレート捩れ刃エンドミルの正面図である。
【図10】従来の逆テーパ直刃エンドミルの正面図である。
【符号の説明】
10,10B,10C,10D…Oリング溝、11o,11ob…外周側側壁、11i,11ib…内周側側壁、12o,12ob,12i,12ib…突起部、14,14C,14D…溝底、20,20b…切欠付きストレート捩れ刃エンドミル、21,21b…切欠き。
Claims (2)
- 溝縁に沿って突起部が形成されているOリング溝を加工するエンドミルにおいて、
工具先端から工具軸方向に所定距離の位置まで形成されているストレート捩れ刃と、
前記工具先端から工具軸方向に前記所定距離の位置のみに、工具軸に近づく向きに凹むよう形成された切欠きと、
を有することを特徴とするエンドミル。 - 請求項1に記載のエンドミルにおいて、
前記切欠きは、工具先端側辺と、該工具先端側辺と対向する対向辺とを有し、
前記工具先端側辺は、工具軸に近づくに連れて次第に工具先端から遠ざかる方向に向っており、
前記対向辺は、工具軸に近づくに連れて次第に工具先端に近づく方向に向っている、
ことを特徴とするエンドミル。
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