JP4015824B2 - 誘電体共振器フィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信基地局において受信フィルタ,送信フィルタ,アンテナ共用器等として用いられる誘電体共振器フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、携帯電話などの移動体通信の基地局においては、特定の周波数帯域の信号のみを通過させるための帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ)が用いられている。たとえば、受信系においては他の周波数帯域を使用する通信システムの信号を除去するために受信フィルタが用いられ、送信系においては他の周波数帯域を使用するシステムに不要な電波を送信しないために送信フィルタが用いられる。こうした基地局用のフィルタは、基地局としての受信感度や電力効率を確保しうる程度に低損失であること、隣接する通信システムの周波数帯域との間隔の狭小化に対応するために急峻なフィルタ特性を有すること、また、塔頂部への設置を容易にするために小型・軽量であることなどが要求される。こうした要求を満たすフィルタとして、複数個の誘電体共振器を結合して構成される誘電体共振器フィルタがあり、種々の形状のものが提案されている。
【0003】
図21は、従来の6段式誘電体共振器フィルタの例を概略的に示す斜視図である。図21に示すように、従来の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された6個の円柱状の誘電体共振器511a〜511fを備えている。各誘電体共振器511a〜511fの共振周波数は、円柱形状の高さ及び直径により決定される。この例では、6個の誘電体共振器511a〜511fが6段の帯域通過フィルタとして動作する。誘電体共振器フィルタの筐体520は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体521と、筐体蓋522と、筐体本体521によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁523a〜523gとによって構成されている。そして、各誘電体共振器511a〜511fは、筐体520の隔壁523a〜523gによって仕切られた各小部屋に1つづつ配設されている。また、7つの隔壁523a〜523gのうち5つの隔壁523a〜523eと筐体本体521の側壁との間には、各共振器問の電磁界結合をとるための段間結合調整窓524a〜524eが設けられている。各段間結合調整窓524a〜524eには、共振器間の電磁界結合の結合の強さを調整するための段間結合調整ボルト531a〜531eが配設されている。また、筐体本体521には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入出力端子541,542が配設されており、入出力端子541,542の中心導体には入出力結合プローブ551,552が接続されている。
【0004】
さらに、筐体蓋521には、各誘電体共振器511a〜511fの共振周波数を調整するための,円板及びボルトが一体となった共振周波数調整部材561a〜561fが取り付けられている。この共振周波数調整部材561a〜561fは、各々の中心軸が誘電体共振器511a〜511fの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されている。
【0005】
一般に、誘電体共振器フィルタでは、通過帯域幅、減衰特性などの周波数特性は各共振器の共振周波数,Q値,各誘電体共振器間の結合量等により決まるため、設計の際には、フィルタの周波数特性の仕様から各誘電体共振器の形状等が算出される。しかし、現実には、誘電体共振器や筐体の形状誤差や取り付け誤差のために設計通りのフィルタ特性が得られない。そこで、上記従来の誘電体共振器フィルタには、共振周波数調整部材561a〜561fが設けられて、各誘電体共振器511a〜511fの共振周波数が可変となっている。また、段間結合調整ボルト531a〜531eが設けられて段間結合強度が可変になっている。これらの調整により、所望のフィルタ特性の実現が図られている。
【0006】
また、共振周波数調整部材561a〜561fの構造としては、図21に示すごとく、誘電体共振器511a〜511fに対向する導体板と、導体板と誘電体共振器511a〜511fとの間の距離をボルトによって調整することにより、誘電体共振器511a〜511fの周波数特性を可変にする構造が多く採用されている。
【0007】
このような構造を有する誘電体共振器フィルタは、以下のように動作する。例えば信号源やアンテナから伝送されてきた高周波信号が入出力端子541から筐体520内に入力されると、高周波信号がフィルタの通過帯域内の周波数の信号の場合、入出力結合プローブ551の作用により、入力段の誘電体共振器511aの電磁界モードと結合し、基本共振モードであるTE01δが励起される。この共振モードは段間結合調整窓524a,524b,…を通じて次段の誘電体共振器511b,511c,…へと次々と結合してゆき、誘電体共振器511fに励起された電磁界モードは出力側の入出力プローブ552と結合し、高周波信号が入出力端子542から出力される。一方、フィルタの通過帯域外の高周波信号は誘電体共振器の共振モードと結合することはできずに反射され、入出力端子541から送り返される。
【0008】
図24は、従来の4段式の誘電体共振器フィルタの例を概略的に示す斜視図である。図24に示すように、この従来の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された4個の円柱状の誘電体共振器611a〜611dを備えている。この例では、4個の誘電体共振器611a〜611dが4段の帯域通過フィルタとして動作する。誘電体共振器フィルタの筐体620は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体621と、筐体蓋622と、筐体本体621によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁623a〜623dとによって構成されている。そして、各誘電体共振器611a〜611dは、筐体620の隔壁623a〜623dによって仕切られた各小部屋に1つづつ配設されている。また、4つの隔壁623a〜623dのうち3つの隔壁623a〜623cと筐体本体621の側壁との間には、各共振器問の電磁界結合をとるための段間結合調整窓624a〜624cが設けられている。各段間結合調整窓624a〜624cには、共振器間の電磁界結合の結合の強さを調整するための段間結合調整ボルト631a〜631cが配設されている。また、筐体本体621には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入出力端子641,642が配設されており、入出力端子641,642の中心導体には入出力結合プローブ651,652が接続されている。
【0009】
さらに、筐体蓋621には、各誘電体共振器611a〜611dの共振周波数を調整するための,円板及びボルトが一体となった共振周波数調整部材661a〜661dが取り付けられている。この共振周波数調整部材661a〜661dは、それぞれその中心軸が誘電体共振器611a〜611dの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の誘電体共振器フィルタにおいては、以下のような不具合があった。
【0011】
図23は、図21に示す誘電体共振器フィルタの周波数特性の例を示す図である。同図において、横軸は周波数(GHz)を表し、縦軸は通過特性(S21)(dB)を表している。同図に示すように、通過帯域中に減衰極P1(谷)が発生しており、フィルタ特性が劣化していることがわかる。このようなフィルタ特性が劣化する原因について、発明者達は以下のように考えている。
【0012】
図22は、図21に示す誘電体共振器フィルタの共振周波数調整部材561の導体板付近の電磁界モードを示す図である。同図は、FDTD法を使った電磁界シミュレーションによる,共振周波数調整部材の軸を通る断面における電界分布の解析結果を示している。同図に示すように、共振周波数調整部材561の導体板と、筐体蓋522とによって挟まれた空間部において、不要な電磁界モードが発生している。
【0013】
その結果、不要な電磁界モードが高周波信号と結合して共振状態が生じ、図23に示すように、周波数特性において不要な減衰極P1(谷部)が現れるものと思われる。そして、この不要モードは、共振周波数調整部材の動きに対して、フィルタ特性の実現のために必要な基本モードの共振周波数よりも敏感に反応し、大きく変化する。したがって、フィルタ特性調整のために共振周波数調整部材の縦方向位置を変化させる際に、通過帯域付近を不要モードによる減衰極が頻繁に通過しフィルタ特性の波形を乱すことになるため、調整作業の大きな障害となる。また、最悪の場合、共振周波数調整作業の終了後においても、フィルタの通過帯域内に不要モードが入り、図23に示すようにフィルタ特性が悪化してしまうのである。
【0014】
本発明の第1の目的は、上記従来の誘電体共振器フィルタにおける特性劣化の原因が、フィルタ特性の調整機構である共振周波数調整部材と筐体の壁面との間に発生する不要モードにある点に着目し、不要モードを解消する手段を講ずることにより、誘電体共振器フィルタの調整作業を平易にするとともに周波数特性の優れた誘電体共振器フィルタを実現することにある。
【0015】
また、上記従来の誘電体共振器フィルタにおいては、誘電体共振器の基本共振モードと異なる高次モード同士の結合により、フィルタの通過帯域よりも周波数が高い帯域に不要な高調波成分が発生するという問題がある。本来、通過帯域よりも周波数の高い成分はローパスフィルタによって除去されるのであるが、ローパスフィルタによって除去しうる信号のレベルには上限がある。したがって、携帯電話の基地局用フィルタ等では、通過帯域の仕様以外にも、この高調波成分に関して厳しく仕様が定められており、高調波成分のレベルを抑制しなければならない。
【0016】
図25は、従来の4段式の誘電体共振器フィルタの周波数特性の一例を示す図である。同図に示すように、上記従来の誘電体共振器フィルタにおいては、ローパスフィルタによっても除去しきれないレベル(例えば−40dB以上)の高周波成分が発生するおそれがあった。本発明者達は、その原因が段間結合の調整機能の不足にあると考えている。
【0017】
本発明の第2の目的は、フィルタ特性における高調波成分のレベルを抑制する手段を講ずることにより、周波数特性が優れ、かつ、調整範囲が広い誘電体共振器フィルタを実現することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の誘電体共振器フィルタは、複数の誘電体共振器と、上記複数の誘電体共振器の周囲を覆い、電磁界シールドとして機能する筐体と、上記複数の誘電体共振器の各誘電体共振器ごとに設けられ、上記筐体に囲まれる空間内に配置されて上記誘電体共振器の1つの面に対向する第1面と上記筐体の内表面に対向する第2面とを有する導体板を含み、かつ、上記導体板と上記誘電体共振器との距離を変化させることが可能に構成された複数の共振周波数調整手段とを備え、上記共振周波数調整手段の導体板は、円板形状であり、上記複数の共振周波数調整手段の各導体板のうち少なくとも1つの導体板のが他の共振周波数調整手段の導体板のとは異なっている。
【0019】
一部の誘電体共振器に付設される共振周波数調整手段の導体板の径を大きくするなどの調整を行なうと、導体板の大きさに応じて不要モードの周波数が変わる。したがって、これを利用して、不要モードに起因する特性の乱れを通過帯域(又は阻止帯域)から他の周波数領域に移動させることが可能となり、通過帯域(又は阻止帯域)における特性の乱れの発生を抑制することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1の参考形態)
図1は、本発明の第1の参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図1に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された6個の円柱状の誘電体共振器11a〜11fを備えている。各誘電体共振器11a〜11fの共振周波数は、円柱形状の高さ及び直径により決定される。この例では、6個の誘電体共振器11a〜11fが6段の帯域通過フィルタとして動作する。誘電体共振器フィルタの筐体20は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体21と、筐体蓋22と、筐体本体21によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁23a〜23gとによって構成されている。そして、各誘電体共振器11a〜11fは、筐体20の隔壁23a〜23gによって仕切られた各小部屋に1つづつ配設されている。また、7つの隔壁23a〜23gのうち5つの隔壁23a〜23eと筐体本体21の側壁との間には、各共振器問の電磁界結合をとるための段間結合調整窓24a〜24eが設けられている。各段間結合調整窓24a〜24eには、共振器間の電磁界結合の結合の強さを調整するための段間結合調整ボルト31a〜31eが配設されている。また、筐体本体21には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入力端子41及び出力端子42が配設されており、入力端子41及び出力端子42の中心導体には、それぞれ入力結合プローブ51及び出力結合プローブ52が接続されている。
【0022】
さらに、筐体蓋21には、各誘電体共振器11a〜11fの共振周波数を調整するための,円形の導体板及びこれに連結されたボルトが一体となった共振周波数調整部材61a〜61f(共振周波数調整手段)が取り付けられている。この共振周波数調整部材61a〜61fは、それぞれその中心軸が誘電体共振器11a〜11fの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されている。つまり、筐体蓋22は、円柱状の誘電体共振器11a〜11fとほぼ同心位置にネジ穴が設けられていて、各共振周波数調整部材61a〜61fのボルトが筐体蓋22のネジ穴に係合している。そして、共振周波数調整部材61a〜61fを軸回りに回転させることにより、その導体板と誘電体共振器11a〜11fとの間隙を変化させて、共振周波数を調整することが可能に構成されている。
【0023】
一般に、誘電体共振器フィルタでは、通過帯域幅、減衰特性などの周波数特性は各共振器の共振周波数,Q値,各誘電体共振器間の結合量等により決まるため、設計の際には、フィルタの周波数特性の仕様から各誘電体共振器の形状等が算出される。しかし、現実には、誘電体共振器や筐体の形状誤差や取り付け誤差のために設計通りのフィルタ特性が得られない。そこで、上記従来の誘電体共振器フィルタには、共振周波数調整部材61a〜61fが設けられて、各誘電体共振器11a〜11fの共振周波数を可変にし、かつ、段間結合調整ボルト31a〜31eを設けて段間結合強度を可変にするなどの調整により、所望のフィルタ特性の実現が図られている。
【0024】
ここで、本参考形態の特徴は、入出力段の共振周波数調整部材61a,61fのボルトには、このボルトに係合するネジ穴を有する,導体からなる不要モード抑制用リング71,72(不要モード抑制手段)が取り付けられている点である。
【0025】
この不要モード抑制用リング71,72を設けたことによる効果を説明するために、まず、本参考形態の誘電体共振器フィルタの動作について説明する。
【0026】
例えば信号源やアンテナ(図1には図示せず)から伝送されてきた高周波信号は、入力端子41から筐体20内に入力されるが、高周波信号がフィルタの通過帯域内の周波数の信号の場合、入力結合プローブ51の作用により、高周波信号が入力段の誘電体共振器11aの電磁界モードと結合して、基本共振モードであるTE01δが励起される。この基本共振モードは、段間結合調整窓24a,24b,…を通じて次段の誘電体共振器11b,11c,…へと次々と結合してゆき、誘電体共振器11fに励起された電磁界モードは出力側の出力結合プローブ52と結合し、高周波信号が出力端子42から出力される。一方、フィルタの通過帯域外の高周波信号は誘電体共振器の基本共振モードと結合することはできずに反射され、入力端子41から送り返されるはずである。
【0027】
上述のようなフィルタとしての正確な動作を実現するためには、各誘電体共振器11a〜11fの共振周波数や、段間結合調整窓24a,24b,…による段間結合の強さが正確に実現されなければならない。しかし、誘電体共振器11a〜11fや筐体20の形状誤差や取り付け誤差のために設計通りのフィルタ特性が得られない。そこで、共振周波数調整部材61a〜61fが設けられており、この共振周波数調整部材61a〜61fのボルトを回転させることで、導体板が上下する。その結果、共振周波数調整部材61a〜61fの導体板と下方の誘電体共振器11a〜11fとの距離が変化するので、各誘電体共振器11a〜11fの共振周波数が変化する。また、段間結合調整ボルト31a〜31eが設けられており、段間結合強度が可変になっている。これらの調整により、所望のフィルタ特性の実現が図られている。
【0028】
たとえば、段間結合調整ボルト31a〜31eの挿入量を大きくして、その先端部とこれに対向する隔壁との距離を小さくすると、段間結合調整窓(例えば24b)を挟んで相隣接する誘電体共振器(例えば11b,11c)の電磁界結合が強くなるように作用する。共振周波数調整部材61a〜61fを下げ、誘電体共振器と導体板の距離を小さくすれば誘電体共振器の共振周波数が高くなる。以上の機能は、上記従来の誘電体共振器フィルタと同じである。
【0029】
ここで、本参考形態においては、不要モード抑制手段である不要モード抑制用リング71,72が、共振周波数調部材61a,61fと筐体蓋22との間の領域である不要モード励起空間(図22に示す空間R1)に配設されている。つまり、共振周波数調整部材61a,61fの導体板の誘電体共振器11a,11fに対向する面(下面)を第1面とし、導体板の筐体蓋22の内表面に対向する面(上面)を第2面とすると、導体板の第2面と筐体の内表面との間の空間R1に不要モード抑制用リング71,71が配置されていることになる。
【0030】
これにより、図22に示す不要モードの発生を阻害するよう作用する。電磁界的には、不要モード抑制用リング71,72が配設され、不要モード励起空間R1の高さ方向の寸法が低減されることにより、励起される不要モードの管内波長が短くなるので、フィルタ特性が高周波側ヘシフトすることになる。さらに、不要モード励起空間R1(図22参照)から誘電体共振器11a,11fが配設された空間R2(図22参照)に通じる狭い部分R3(図22参照)の距離が増大するため電磁波が通過しにくくなり、不要モードと誘電体共振器11a,11fのモードの結合が弱くなる。その結果、6つの誘電体共振器11a〜11fによって構成される誘電体共振器フィルタの通過帯域における不要な減衰極P1(図23参照)などの特性の乱れの発生を抑制することができる。
【0031】
図2は、1段フィルタ(単体共振器)の場合について不要モード抑制用リングの効果をみるために測定した共振周波数調整部材の位置と基本モード及び不要モードの周波数との関係を示す特性図である。図2のデータを得るために用いた1段フィルタは、比誘電率41の誘電体材料によって構成された,直径27mm、高さ12mmの円柱形状の誘電体共振器と、内寸が1辺40mmの立方体形状の筐体と、直径25mmで厚み1mmの導体板と規格M6のボルトとを有する共振周波数調整部材と、高さ4mm又は8mm,外径20mmで中心軸部に規格M6のネジ穴が形成された円筒形状の,銀メッキ処理された銅製の不要モード抑制用リング(不要モード抑制手段)とを備えている。
【0032】
図2に示すように、不要モード抑制用リングを配設することにより不要モードが高周波側にシフトすることがわかる。例えば、同図における共振周波数調整部材位置が12mmの場合、不要モード抑制用リングがない場合(■印参照)の不要モードの周波数が約1.8GHzであるのに対し、外径20mm,高さ4mmの不要モード抑制用リングを取り付けた場合(○印参照)の不要モードの周波数は約1.95GHzであり、外径20mm,高さ8mmの不要モード抑制用リングを取り付けた場合(△印参照)の不要モードの周波数が約2.3GHzである。
【0033】
図3は、不要モード抑制用リングを備えた誘電体共振器フィルタの周波数特性を示す図である。同図において、横軸は周波数(GHz)を表し、縦軸は通過特性(dB)を表している。図3のデータを得るために用いた誘電体共振器フィルタは、比誘電率41の誘電体材料によって構成された,直径27mm、高さ12mmの円柱形状の誘電体共振器と、内寸が1辺40mmの立方体形状の小部屋を有し,表面が銀メッキされたアルミニウム製の筐体と、直径25mmの導体板と規格M6のボルトとを有する共振周波数調整部材と、高さ8mm,外径20mmで中心軸部に規格M6のネジ穴が形成された円筒形状の,銀メッキされた銅材からなる不要モード抑制用リング(不要モード抑制手段)と、市販のSMAコネクターからなる入出力端子41,42と、表面が銀メッキ処理された直径1mmの銅線からなる入出力結合プローブ51,52とを備えている。
【0034】
図3に示すように、誘電体共振器にTEO1δモードの電磁界が励起されて、通過帯域における周波数特性がほぼフラットな周波数特性が得られた。このように、誘電体共振器フィルタに不要モード抑制用リングを設けることにより、不要モードの振幅レベルが弱められ、不要モードが通過帯域から十分離れた高周波側に追いやられ、周波数調整時に不要モードが障害になることもなく、図3に示す低損失で急峻なフィルタ特性が達成できた。
【0035】
なお、本参考形態においては、不要モード抑制手段である不要モード抑制用リング71,72は入出力段の2カ所のみに配設する構造となっているが、これに限られるわけではなく、不要モード抑制手段を配設する箇所および個数は、フィルタの仕様に応じて適宜選択することができる。
【0036】
ただし、多段フィルタの入出力段の小部屋において発生する不要モードは、他の小部屋で発生する不要モードよりも入出力結合プローブに近いために、フィルタ特性にその不要モードの影響が現れやすい。実際に、多段フィルタの特性劣化の原因のほとんどは、入出力段の小部屋において発生した不要モードである。したがって、入出力段の小部屋に不要モード抑制用リングなどの不要モード抑制部材が配置されていることにより、顕著な不要モード抑制機能が得られることになる。
【0037】
また、本参考形態においては、不要モード抑制手段である不要モード抑制用リング71,72を共振周波数調整部材61a,61bに固定しているが、不要モード抑制手段を筐体蓋に共振周波数調整部材と同軸位置で固定しても同様の効果が得られる。
【0038】
また、本参考形態においては、不要モード抑制手段として、独立したリング構造を有する不要モード抑制用リングを用い、これを共振周波数調整部材にはめ込むという構造を採用しているが、例えば、不要モード抑制手段及び共振周波数調整部材の導体板として機能する段付き円板を共振周波数調整部材のボルトに取り付けるなど、不要モード抑制手段と共振周波数調整部材とを一体化した構造を採用してもよい。また、共振周波数調整部材の導体板の厚みを3〜10mm程度に厚くしても、本参考形態と同様の効果が得られる。ただし、実際には個々の誘電体共振器フィルタによってフィルタ特性が異なるので、リングのような脱着可能な部材を設けることが好ましい。
【0039】
また、本参考形態においては、不要モード抑制手段である不要モード抑制用リング71,72の外周形状を円形としたが、不要モード抑制用リングの外周形状はこれに限られるわけではなく、三角形やその他の多角形であっても同様の効果がある。以下、不要モード抑制用リングの構造に関する変形例について説明する。
【0040】
−第1の変形例−
図4は、第1の参考形態における第1の変形例に係る共振周波数調整部材及び不要モード抑制用リングの構造を示す斜視図である。同図に示すように、第1の変形例に係る不要モード抑制用リング73は、六角形ナット形状を有している。この変形例によると、市販規格品のナットを使用することが可能であり、コストの低減と製造工程の簡素化とを図ることができる。
【0041】
−第2の変形例−
図5は、第1の参考形態における第2の変形例に係る共振周波数調整部材及び不要モード抑制用リングの構造を示す斜視図である。同図に示すように、第2の変形例に係る不要モード抑制用リング74は、導体板を曲げ加工した板バネ構造を有している。この変形例によると、不要モード抑制用リング74の不要モードを阻害する機能が共振周波数調整部材61の降下量によってほとんど影響を受けないという効果が得られる。
【0042】
−第3の変形例−
図6は、第1の参考形態における第3の変形例に係る共振周波数調整部材及び不要モード抑制用リングの構造を示す斜視図である。同図に示すように、第2の変形例に係る不要モード抑制用リング75は、リング構造を分割した構造を有している。この変形例によると、共振周波数調整部材61を筐体蓋22から取り外すことなく、不要モード抑制用リング75を脱着することが可能となるので、フィルタ特性の調整作業の容易化を図ることができる。
【0043】
なお、本参考形態においては、不要モード抑制手段として、表面が銀メッキ処理された銅製の不要モード抑制用リングを用いたが、不要モード抑制手段の材料はこれに限られるものではなく、他の導体材料でも効果を発揮することはいうまでもない。
【0044】
さらに、不要モード抑制手段の材料は導体に限られるわけでもなく、高誘電率誘電体など電磁波の伝播に影響を与える素材であれば同様の効果を発揮する。
【0045】
(第2の参考形態)
図7は、本発明の第2の参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図7に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、不要モード抑制手段として、第1の参考形態における不要モード抑制用リング71,72に代えて、不要モード抑制用ボルト81,82を備えている。不要モード抑制用ボルト81,82は、その基端部が筐体蓋22に係合され、その先端部が共振周波数調整部材61a,61fの導体板の上面に近接するように取り付けられている。
【0046】
参考形態における誘電体共振器フィルタの構造は、不要モード抑制用ボルト81,82の構造を除くと、すでに説明した図1に示す第1の参考形態の誘電体共振器フィルタの構造と同じであるので、図7においては第1の参考形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
参考形態の誘電体共振器フィルタの基本的な動作は、上述の第1の参考形態の誘電体共振器フィルタの基本動作と同じである。
【0048】
第2の参考形態の誘電体共振器フィルタによれば、不要モード励起空間R3(図22参照)に不要モード抑制用ボルト81,82が挿入されることにより、不要モード励起空間R3を伝播する不要な電磁界モードが阻害され、不要な電磁界モードの周波数が低周波側にシフトする。その結果、通過帯域における不要な減衰極P1(図23参照)などの特性の乱れの発生を抑制することができる。
【0049】
図8は、1段フィルタ(単体共振器)の場合について不要モード抑制用ボルトの効果をみるために測定した,不要モード励起空間への不要モード抑制用ボルトの挿入量と基本モード及び不要モードの周波数との関係を示す特性図である。図8のデータを得るために用いた1段フィルタは、比誘電率41の誘電体材料によって構成された,直径27mm、高さ12mmの円柱形状の誘電体共振器と、内寸が1辺40mmの立方体形状の筐体と、直径25mmで厚み1mmの導体板と規格M6のボルトとを有する共振周波数調整部材と、規格M3のネジを外周部に有する銀メッキ処理された銅製の不要モード抑制用ボルト(不要モード抑制手段)とを備えている。また、図8のグラフの横軸は、不要モード抑制用ボルトが筐体蓋の表面に接触した状態を0としたときの不要モード励起空間R3への不要モード抑制用ボルトの挿入量を表している。
【0050】
このように、誘電体共振器フィルタに不要モード抑制手段である不要モード抑制用ボルトを設けることにより、不要モードを通過帯域から十分離れた低周波側にシフトさせることができ、特性の優れたフィルタを得ることが可能である。
【0051】
(第の実施形態)
図9は、本発明の第の実施形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図9に示すように、本実施形態の誘電体共振器フィルタは、不要モード抑制手段として、第1の参考形態における不要モード抑制用リング71,72に代えて、大径の導体板を有する不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材61x,61yを備えている。
【0052】
本実施形態における誘電体共振器フィルタの構造は、不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材61x,61yの構造を除くと、すでに説明した図1に示す第1の参考形態の誘電体共振器フィルタの構造と同じであるので、図9においては第1の参考形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
本実施形態の誘電体共振器フィルタの基本的な動作は、上述の第1の参考形態の誘電体共振器フィルタの基本動作と同じである。
【0054】
の実施形態の誘電体共振器フィルタによれば、不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材61x,61yの導体板の径が大きいことにより、これらの導体板に平行な方向の電磁波の管内波長が長くなるので、不要モードは低周波側にシフトすることになる。その結果、通過帯域における不要な減衰極P1(図23参照)などの特性の乱れの発生を抑制することができる。
【0055】
図10は、1段フィルタ(単体共振器)の場合について不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材の効果をみるために測定した,共振周波数調整部材の位置と基本モード及び不要モードの周波数との関係を示す特性図である。図10のデータを得るために用いた1段フィルタは、比誘電率41の誘電体材料によって構成された,直径27mm、高さ12mmの円柱形状の強誘電体共振器と、内寸が1辺40mmの立方体形状の筐体と、直径15mm,25mm又は35mmで厚み1mmの導体板と規格M6のボルトとを有する共振周波数調整部材とを備えている。
【0056】
図10に示すように、導体板の直径により不要モードの周波数は異なる。したがって、複数の誘電体共振器を配置した多段の誘電体共振器フィルタにおいて、不要モードが通過帯域に侵入しフィルタ特性が乱れる場合には、不要モード発生の原因となっている共振周波数調整部材の導体板の径を変えることにより不要モードを帯域外へ追いやることが可能となる。この作用を電磁界的に説明すると、不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材61x,61yの導体板の径が大きくなると、これらの導体板に平行な方向の電磁波の管内波長が長くなるので不要モードは低周波側にシフトすることになる。
【0057】
なお、本実施形態においては、第1段と第6段の誘電体共振器11a,11fに、他の周波数調整部材の導体板よりも大径の導体板を有する不要モード抑制機能付き共振周波数部材61x,61yを付設したが、本発明の誘電体共振器フィルタの構造は本実施形態に限られるわけではなく、不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材を、第2,第3段など他の段の誘電体共振器11に付設してもよい。どの段の共振周波数調整部材の導体板の直径を大きくするかは、誘電体共振器や筐体の構造等に応じて適宜選択することができる。
【0058】
(第参考形態)
図11は、第3参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図11に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、不要モード抑制手段として、第1の参考形態における不要モード抑制用リング71,72に代えて、不要モード減衰シート91a〜91f,92a〜92f,93a〜93fを備えている。不要モード減衰シート91a〜91fは、共振周波数調整部材61a〜61fの導体板の上面(導体板の共振器とは反対側の面)に設けられ、不要モード減衰シート92a〜92gは、筐体20の隔壁23a〜23gの両側面上に設けられ、不要モード減衰シート93a〜93fは、筐体蓋22の各小部屋の天井面に相当する面に設けられている。
【0059】
参考形態における誘電体共振器フィルタの構造は、不要モード減衰シート91a〜91f,92a〜92f,93a〜93fの構造を除くと、すでに説明した図1に示す第1の参考形態の誘電体共振器フィルタの構造と同じであるので、図11においては第1の参考形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
参考形態の誘電体共振器フィルタの基本的な動作は、上述の第1の参考形態の誘電体共振器フィルタの基本動作と同じである。
【0061】
ここで、本参考形態の誘電体共振器フィルタによれば、不要モード減衰シート91a〜91f,92a〜92f,93a〜93fを設けることにより、金属製の筐体蓋22と共振周波数調部材61a〜61fとの間の領域である不要モード励起空間(図22に示す空間R1)に発生する電磁波により不要モード減衰シート91a〜91f,92a〜92f,93a〜93fの表面に流れる電流が減衰され、電磁波も減衰する。一方、誘電体共振器11a〜11fは不要モード励起空間R1から隔離されているので、不要モード減衰シート91a〜91f,92a〜92f,93a〜93fが誘電体共振器11a〜11fの電磁界モードには影響を与えず、誘電体共振器フィルタの通過帯域の特性にも影響を与えない。したがって、不要モードの発生が抑制され、特性の優れたフィルタを得ることが可能である。例えば、不要モード減衰シートとして抵抗体であるニクロム(ニッケルクロム合金)箔を使用したところ不要モードが減衰され、図3に示す特性と同様の低損失で急峻なフィルタ特性が達成できた。
【0062】
なお、本参考形態では、不要モード減衰手段として不要モード減衰シートを配設する構造としたが、不要モード減衰手段の構造は、シート構造に限られるわけではなく、抵抗体を含有したペーストあるいは溶剤を塗布し硬化させて得られる導体膜であってもよい。あるいは、筐体の隔壁、筐体蓋および共振周波数調整部材を原則として導体メッキが施された抵抗体により構成しておいて、この抵抗体のうち,筐体蓋と共振周波数調整部材の導体板との間の領域の空間R1を囲む内壁面となる部分の上には導体メッキを施さず、抵抗体の表面を空間R1に露出させるようにしても、本参考形態と同じ効果を発揮することができる。
【0063】
また、本参考形態では不要モード減衰シートの具体例として抵抗体であるニクロム箔を使用したが、本発明はこれに限られるわけではなく、他の材料からなる抵抗体、例えば、銅ニッケル合金、フェライトなどでも効果を発揮することはいうまでもない。
【0064】
ただし、共振周波数調整部材61a〜61fの導体板の縦方向位置は共振周波数の調整に応じて変化するので、上記各不要モード減衰手段の構成において、空間R1の内壁面全体が不要モード減衰機能を有する部材で構成されている必要はない。
【0065】
なお、第1の実施形態及び第1〜第参考形態においては、本発明が適用される誘電体共振器フィルタとして、6段の誘電体共振器を用いた多段フィルタを例に採っているが、本発明の誘電体共振器フィルタの構造は上記第1の実施形態及び第1〜第3の参考形態に限られるわけではなく、4段など6段以外の段数を有する誘電体共振器フィルタについても本発明の効果を発揮することができる。
【0066】
また、第1の実施形態及び第1〜第参考形態においては、本発明が適用される誘電体共振器フィルタとして、帯域通過フィルタを例に採っているが、本発明の誘電体共振器フィルタの構造は上記第1の実施形態及び第1〜第3の参考形態に限られるわけではなく、他の例えば帯域阻止フィルタについても本発明の効果を発揮することができる。
【0067】
また、図2,図8,図10の測定結果は、効果を実験で明確に示すために単体共振器を用い測定した結果を示しているが、第1の実施形態及び第1〜第3の参考形態の構造を採用することにより、段数に関係なく他の多段フィルタでも同様に効果を発揮することはいうまでもない。
【0068】
上記第1の実施形態及び第1〜第参考形態においては、誘電体共振器が筐体本体が囲む空間の下部に配置され、誘電体共振器の上方に共振周波数調整部材の導体板を設置しているが、誘電体共振器を筐体本体が囲む空間の上部に配置して、共振周波数調整部材の導体板を誘電体共振器の下方に配置してもよい。その場合、不要モード抑制部材を共振周波数調整部材の導体板と筐体本体の底面との間に配置することにより、本発明の効果を発揮することができる。
【0069】
(第参考形態)
図12は、本発明の第4参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図12に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された4個の円柱状の誘電体共振器111a〜111dを備えている。各誘電体共振器111a〜111dの共振周波数は、円柱形状の高さ及び直径により決定される。この例では、4個の誘電体共振器111a〜111dが4段の帯域通過フィルタとして動作する。強誘電体フィルタの筐体120は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体121と、筐体蓋122と、筐体本体121によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁123a〜123dとによって構成されている。そして、各誘電体共振器111a〜111dは、筐体120の隔壁123a〜123dによって仕切られた各小部屋に1つづつ配設されている。また、筐体本体121には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入力端子141及び出力端子142が配設されており、入力端子141及び出力端子142の中心導体には、それぞれ入力結合プローブ151及び出力結合プローブ152が接続されている。
【0070】
さらに、筐体蓋122には、各誘電体共振器111a〜111dの共振周波数を調整するための,円形の導体板及びこれに連結されたボルトが一体となった共振周波数調整部材161a〜161dが取り付けられている。この共振周波数調整部材161a〜161dは、それぞれその中心軸が誘電体共振器111a〜111dの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されている。つまり、筐体蓋122は、円柱状の誘電体共振器111a〜111dとほぼ同心位置にネジ穴が設けられていて、各共振周波数調整部材161a〜161dのボルトが筐体蓋122のネジ穴に係合している。そして、共振周波数調整部材161a〜161dを軸回りに回転させることにより、その導体板と誘電体共振器111a〜111dとの間隙を変化させて、共振周波数を調整することが可能に構成されている。
【0071】
一般に、誘電体共振器フィルタでは、通過帯域幅、減衰特性などの周波数特性は各共振器の共振周波数,Q値,各誘電体共振器間の結合量等により決まるため、設計の際には、フィルタの周波数特性の仕様から各誘電体共振器の形状等が算出される。しかし、現実には、誘電体共振器や筐体の形状誤差や取り付け誤差のために設計通りのフィルタ特性が得られない。そこで、上記従来の誘電体共振器フィルタには、共振周波数調整部材161a〜161dが設けられて、各誘電体共振器111a〜111dの共振周波数を可変にすることにより、所望のフィルタ特性の実現が図られている。
【0072】
ここで、本参考形態の特徴は、4つの隔壁123a〜123dのうち3つの隔壁123a〜123cに、それぞれ各誘電体共振器111a〜111d問の電磁界結合をとるための段間結合調整窓124a〜124cが設けられている点である。段間結合調整窓124a〜124cは、隔壁123a〜123cが筐体本体121の内側面に接する部分(つまり外側面)において、それぞれ隔壁123a〜123cの外側面から横方向に切り込みを設けることにより形成されている。言い換えると、4つの隔壁123a〜123dのうち3つの隔壁123a〜123cは、段間結合調整板として機能することになる。
【0073】
そして、隔壁123a〜123cの切り込み部によって構成される段間結合調整窓124a〜124cには、それぞれ共振器間の電磁界結合の結合の強さを微調整するための段間結合調整ボルト131a〜131cが配設されている。この段間結合調整ボルト131a〜131cは、それぞれ隔壁123a〜123cの切り込み部の内側へと突き出すように配設されている。
【0074】
次に、構成の誘電体共振器フィルタの動作について説明する。例えば信号源やアンテナ(図12には図示せず)から伝送されてきた高周波信号は、入力端子141から筐体120内に入力されるが、高周波信号がフィルタの通過帯域内の周波数の信号の場合、入力結合プローブ151の作用により、高周波信号が入力段の誘電体共振器111aの電磁界モードと結合して、基本共振モードであるTE01δが励起される。この共振モードは、段間結合調整窓124a,124b,…を通じて次段の誘電体共振器111b,111c,…へと次々と結合してゆき、誘電体共振器111fに励起された電磁界モードは出力側の出力結合プローブ152と結合し、高周波信号が出力端子142から出力される。一方、フィルタの通過帯域外の高周波信号は誘電体共振器の共振モードと結合することはできずに反射され、入力端子141から送り返される。
【0075】
上述のようなフィルタとしての正確な動作を実現するためには、各誘電体共振器111a〜111dの共振周波数や、段間結合調整窓124a〜124cによる段間結合の強さが正確に実現されなければならない。しかし、誘電体共振器111a〜111dや筐体120の形状誤差や取り付け誤差のために設計通りのフィルタ特性が得られない。そこで、共振周波数調整部材161a〜161dが設けられており、この共振周波数調整部材161a〜161dのボルトを回転させることで、導体板が上下する。その結果、共振周波数調整部材161a〜161dの導体板と下方の誘電体共振器111a〜111dとの距離が変化するので、各誘電体共振器111a〜111dの共振周波数が変化する。
【0076】
また、段間結合調整板として機能する隔壁123a〜123cに設けられた段間結合調整窓124a〜124cと段間結合調整ボルト131a〜131cが、誘電体共振器111a〜111d間の電磁界結合の強さを調整するのに使用される。まず、隔壁123a〜123cの切り込み部により形成される段間結合調整窓124a〜124cの面積によって大まかな段間結合強度が決まり、段間結合調整ボルト131a〜131cの挿入量により段間結合強度の微調整が可能である。これらの調整機構を調整することにより、誘電体共振器フィルタの通過帯域の周波数、帯域幅などが決定される。
【0077】
図13は、本参考形態の誘電体共振器フィルタの周波数特性を示す図である。誘電体共振器フィルタの通過帯域外の高周波信号の場合、基本的には誘電体共振器の基本共振モードを励起することはできず反射し、入力端子141から送り返される。したがって、誘電体共振器フィルタの周波数特性は、基本的には図13に示すように帯域通過特性となる。しかし、誘電体共振器には基本共振モードであるTE01δモード以外にも高次モードであるHE11δモードやEH11δモードが存在し、これらの共振モードによる結合でも高周波信号がフィルタを通過するため通過帯域の高域側に不要な高調波のピークが現れる可能性がある。
【0078】
図26は、図24に示す従来の誘電体共振器フィルタの2.14GHz(通過帯域)における電界分布のFDTD法による解析結果を示す図であり、筐体の底面に平行で、かつ、共振器の高さ方向の中央部を通る断面内(以後の解析結果の表示もすべて同様の断面内)での電界分布を示している。図中の矢印はその位置での電界ベクトルを示している。図26のデータを得るために用いた誘電体共振器フィルタは、図24に示す構造において、比誘電率41の誘電体材料によって構成された,直径25mm、高さ11mmの円柱形状の強誘電体共振器と、内寸が1辺40mmの立方体形状の4つの小部屋を有する筐体とを有する共振周波数調整部材とを備えている。そして、筐体本体の底面から14.5mmの位置に誘電体共振器の下面が位置するように配置されている。
【0079】
図26に示す電界分布の誘電体共振器中の電界パターンから明確なように、従来の誘電体共振器フィルタにおいては、通過帯域の周波数帯では基本モードであるTE01δモードが励振される。
【0080】
図27は、図24に示す従来の誘電体共振器フィルタの2.82GHz(高調波)における電界分布のFDTD法による解析結果を示す図である。図27に示す電界パターンでは、HE11δモードやEH11δモードなどの誘電体共振器の高次モードが見られ、誘電体共振器フィルタの高調波が誘電体共振器の高次モードにより発生していることが分かる。
【0081】
図28は、図24に示す従来の誘電体共振器フィルタの2.82GHz(高調波)においてHE11δモードにより隔壁(段間結合調整板)623bの誘電体共振器611c側の表面を流れる電流のFDTD法による解析結果を示す図であり、図24に示す矢印Xの方向から見た図である。図28から分かるように、誘電体共振器に近接する隔壁(段間結合調整板)623cの高さ方向の中央部付近の電流が比較的大きくなっている。
【0082】
それに対し、本参考形態の隔壁(段間結合調整板)123a〜123cの場合、図28において比較的大きな電流が流れる領域に段間結合調整用窓124a〜124cが設けられていて、この領域には導体が存在しないため、HE11δモードの発生が抑制されフィルタの高調波も抑制されるのではないかと推測される。
【0083】
図16は、図12に示す本参考形態の誘電体共振器フィルタの2.14GHz(通過帯域)における電界分布の解析結果を示す図である。図16のデータが得られた誘電体共振器フィルタは、段間結合調整窓の形状を横25mm×縦16mmの長方形とし、段間結合調整窓の下辺が筐体本体の底面から12mmに位置するとして計算を行なっている。他のファクタは上記従来例の解析モデルと同様にしている。
【0084】
図16に示されるように、本参考形態においても、図26と同様に基本モードのTE01δモードが励振されており、本参考形態にかかる誘電体共振器フィルタの通過帯域の特性は、従来例と同等のものであると推測される。
【0085】
図17は、図12に示す本参考形態の誘電体共振器フィルタの2.82GHz(高調波)における電界分布の解析結果を示す図である。図17のデータが得られた誘電体共振器フィルタは、図16のデータが得られたものと同じである。同図に示す誘電体共振器111aの電界パターンを見れば分かるように、HE11δモードは不明確になっており、抑制されると推測される。
【0086】
図14(a)〜(c)は、図12に示す誘電体共振器フィルタの段間結合調整窓の形状を種々変えたときの周波数特性を窓形状と共に示す図である。同図に示すデータを得るために用いた誘電体共振器フィルタは、比誘電率41の誘電体材料によって構成された,直径25mm、高さ11mmの円柱形状の強誘電体共振器と、内寸が1辺40mmの立方体形状の4つの小部屋を有し,表面が銀メッキされたアルミニウム製の筐体と、直径25mmの導体板と規格M6のボルトとを有する表面が銀メッキされた銅製の共振周波数調整部材と、市販のSMAコネクターからなる入出力端子と、表面が銀メッキ処理された直径1mmの銅線からなる入出力結合プローブとを備えている。このとき、隔壁123a〜123cの切り込み部である段間結合調整窓124a〜124cの横方向の中心軸を筐体本体の底面から20mmの高さに固定して、段間結合強度が同程度となる段間結合調整窓123a〜123cの四角形状を、横15mm×縦27mm,横20mm×縦20mおよび横25mm×縦16mmの3通りとした。
【0087】
図14(a)〜(c)に示す特性のいずれにおいても、2.7GHz〜3GHzの高調波帯域における高調波のレベルは、従来構造の高調波のレベル(図25参照)にくらべて抑制されている。
【0088】
また、図14(a)〜(c)を比較すると、切り込み部の四角形状の縦横の辺長さの比率に関しては、図14(c)に示す構造が、最も高調波のレベルが低く、段間結合調整窓における筐体の底面に平行な辺を長くする方がより高調波抑制効果が高いことが確認できた。
【0089】
図15(a)〜(c)は、図12に示す誘電体共振器フィルタの段間結合調整窓の隔壁123a〜123cにおける上下方向の位置を種々変えたときの周波数特性を窓位置と共に示す図である。段間結合調整窓124a〜124cの形状を横20mm×縦20mmに固定し、窓の下辺が筐体本体の底面から0mm,10mm及び20mmに位置する3通りの場合について示している。図15(a)〜(c)を比較すると、段間結合調整窓124a〜124cの上下方向位置に関しては、図15(b)に示す位置に段間結合調整窓を設けることにより、最も低い高調波レベルが得られる。つまり、段間結合調整窓と誘電体共振器とがより近接するように、段間結合調整窓を中央部に位置することにより、より高い高調波抑制効果が得られることがわかる。
【0090】
以上のように、本参考形態の誘電体共振器フィルタによれば、段間結合調整板として機能する隔壁123a〜123cに切り込み部を設けて段間結合調整窓124a〜124cを形成することにより、通過帯域の特性に影響を与えることなく、高調波のレベルを抑制することができる。
【0091】
特に、段間結合調整窓124a〜124cの形状は、横方向の辺を縦方向の辺よりも長くする方が高調波レベルの抑制効果が高いこともわかった。さらに、段間結合調整窓124a〜124cの横方向の辺が長いことにより、従来の誘電体共振器フィルタに比べて段間結合調整ボルト131a〜131cの可動範囲を大きくすることができ、段間結合の調整範囲をより大きく確保することができる。その場合、段間結合調整ボルト131a〜131cの先端と段間結合調整窓124a〜124cの縦方向の辺との間隙も広くとることができるので、大電力に対する耐電力性も向上できる。
【0092】
つまり、図24に示す従来の誘電体共振器フィルタにおいては、段間結合調整ボルト631a〜631cの可動量が小さく、段間結合調整ボルト631a〜631cによる段間結合の調整幅が狭い。さらに、誘電体共振器フィルタの調整状態によっては、段間結合調整ボルト631aの先端と隔壁623a〜623cとの間隙が狭いので、誘電体共振器フィルタに高電力信号が投入されると、放電が発生し、誘電体共振器フィルタが破損するおそれもある。それに対し、本参考形態の誘電体共振器フィルタにより、これらの不具合の発生を有効に抑制することができる。
【0093】
(第参考形態)
図18は、第5参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図18に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された4個の円柱状の誘電体共振器211a〜211dを備えている。各誘電体共振器211a〜211dの共振周波数は、円柱形状の高さ及び直径により決定される。この例では、4個の誘電体共振器211a〜211dが4段の帯域通過フィルタとして動作する。強誘電体フィルタの筐体220は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体221と、筐体蓋222と、筐体本体221によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁223a〜223cとによって構成されている。
【0094】
参考形態においては、筐体本体221は、平面形状が長方形であり、誘電体共振器211a〜211dは直線状に配設されている。また、隔壁(段間結合調整板)223a〜223cの切り込み部である段間結合調整窓224a〜224cは、相隣り合う隔壁の間で互い違いになるように形成されている。そして、各誘電体共振器211a〜211dは、筐体220の隔壁223a〜223cによって仕切られた4つの小部屋に1つづつ配設されている。また、筐体本体221には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入力端子241及び出力端子242が配設されており、入力端子241及び出力端子242の中心導体には、それぞれ入力結合プローブ251及び出力結合プローブ252が接続されている。
【0095】
さらに、筐体蓋222には、各誘電体共振器211a〜211dの共振周波数を調整するための,円形の導体板及びこれに連結されたボルトが一体となった共振周波数調整部材261a〜261dが取り付けられている。この共振周波数調整部材261a〜261dは、それぞれその中心軸が誘電体共振器211a〜211dの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されており、共振周波数調整部材261a〜261dの構造や機能は、上記第参考形態と同様である。
【0096】
参考形態の誘電体共振器フィルタによっても、第参考形態と同様に、通過帯域の高域側に現れる不要な高調波のレベルが低く、段間結合の調整範囲が大きく、しかも、耐電力性の高い帯域通過フィルタとして動作する誘電体共振器フィルタを実現することが可能である。
【0097】
(第参考形態)
図19は、第6参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図19に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された4個の円柱状の誘電体共振器311a〜311dを備えている。各誘電体共振器311a〜311dの共振周波数は、円柱形状の高さ及び直径により決定される。この例では、4個の誘電体共振器311a〜311dが4段の帯域通過フィルタとして動作する。強誘電体フィルタの筐体320は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体321と、筐体蓋322と、筐体本体321によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁323a〜323dとによって構成されている。
【0098】
参考形態においては、段間結合調整窓324a〜324cは、隔壁323a〜323cが直接切り込まれて形成されたものではなく、隔壁323a〜323cによって支持される上下2つの梁によって形成されている。しかし、上下2つの梁も隔壁(段間結合調整板)の一部として機能するので、本参考形態の段間結合調整窓324a〜324cも、上記第,第参考形態と同様に、隔壁に形成された切り込み部と捉えることができる。
【0099】
そして、各誘電体共振器311a〜311dは、筐体320の隔壁323a〜323dによって仕切られた4つの小部屋に1つづつ配設されている。また、筐体本体321には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入力端子341及び出力端子342が配設されており、入力端子341及び出力端子342の中心導体には、それぞれ入力結合プローブ351及び出力結合プローブ352が接続されている。
【0100】
さらに、筐体蓋322には、各誘電体共振器311a〜311dの共振周波数を調整するための,円形の導体板及びこれに連結されたボルトが一体となった共振周波数調整部材361a〜361dが取り付けられている。この共振周波数調整部材361a〜361dは、それぞれその中心軸が誘電体共振器311a〜311dの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されており、共振周波数調整部材361a〜361dの構造や機能は、上記第参考形態と同様である。
【0101】
参考形態の誘電体共振器フィルタは、例えば、筐体本体321の隔壁323a〜323dを筐体本体全体と一体的に切削加工により形成し、上側梁および下側梁を導体板により形成し隔壁323a〜323cに接合することで実現される。例えば上側梁および下側梁を銅薄板により形成し、各梁を例えば鉛はんだにより、隔壁(段間結合調整板)に電気的に接合する形成方法を採れば、上側梁および下側梁を異なる寸法のものに容易に交換可能となり、また、例えばリュータ等の切削工具で容易に形状変更が可能となる。したがって、図12に示す構成においては、段間結合調整ボルト151a〜151cによる段間結合の調整範囲を越えるような場合でも、本参考形態により、段間結合調整窓324a〜324cの面積を容易に変更することができる。
【0102】
すなわち、本参考形態の誘電体共振器フィルタによれば、第参考形態の効果に加えて、段間結合調整ボルト331a〜331cによる段間結合の調整範囲の拡大を図ることができる。
【0103】
(第参考形態)
図20は、第7参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。図20に示すように、本参考形態の誘電体共振器フィルタは、誘電体粉末を焼結することにより成形された4個の円柱状の誘電体共振器411a〜411dを備えている。各誘電体共振器411a〜411dの共振周波数は、円柱形状の高さ及び直径により決定される。この例では、4個の誘電体共振器411a〜411dが4段の帯域通過フィルタとして動作する。強誘電体フィルタの筐体420は、底壁と側壁とによって構成される筐体本体421と、筐体蓋422と、筐体本体421によって囲まれる空間を小部屋に仕切る互いに連結された隔壁423a〜423dとによって構成されている。
【0104】
参考形態においては、隔壁423a〜423dのうち段間結合調整板として機能する3つの隔壁423a〜423cは、筐体本体421の内側面には接触しておらず、両者間には間隙が設けられている。そして、誘電体共振器411a〜411d間の電磁界結合は主にこの間隙を通じて行われる。また、隔壁423a〜423cには、段間結合調整ボルト431a〜431cの可動範囲を拡大するための切り込み部が設けられている。隔壁423a〜423cと筐体本体421の内側面との間隙及び切り込み部により、段間結合調整窓424a〜424cが構成されている。ただし、本参考形態においても、隔壁423a〜423cの切り込み部の両側が削除されただけで、実質的には切り込み部によって段間結合の調整機能が高められている。
【0105】
そして、各誘電体共振器411a〜411dは、筐体420の隔壁423a〜423cによって仕切られた4つの小部屋に1つづつ配設されている。また、筐体本体421には、外部からの高周波信号を入出力するための同軸コネクターによる入力端子441及び出力端子442が配設されており、入力端子441及び出力端子442の中心導体には、それぞれ入力結合プローブ451及び出力結合プローブ452が接続されている。
【0106】
さらに、筐体蓋422には、各誘電体共振器411a〜411dの共振周波数を調整するための,円形の導体板及びこれに連結されたボルトが一体となった共振周波数調整部材461a〜461dが取り付けられている。この共振周波数調整部材461a〜461dは、それぞれその中心軸が誘電体共振器411a〜411dの中心軸と同じ平面位置にあるように(つまり同心位置に)配設されており、共振周波数調整部材461a〜461dの構造や機能は、上記第参考形態と同様である。
【0107】
参考形態の誘電体共振器フィルタによれば、段間結合調整ボルト431a〜431cの可動範囲が大きくなるため、第参考形態と同じ効果に加えて、段間結合の調整範囲が大きくできるという効果が得られる。
【0108】
〜第参考形態においては、本発明が適用される誘電体共振器フィルタとして、4段の誘電体共振器を用いた多段フィルタを例に採っているが、本発明の誘電体共振器フィルタの構造は上記第4〜第7の参考形態に限られるわけではなく、6段,8段など4段以外の段数を有する誘電体共振器フィルタについても本発明の効果を発揮することができる。
【0109】
また、第〜第参考形態においては、本発明が適用される誘電体共振器フィルタとして、帯域通過フィルタを例に採っているが、本発明の誘電体共振器フィルタの構造は上記参考形態に限られるわけではなく、他の例えば帯域阻止フィルタについても本発明の効果を発揮することができる。その場合、本発明における通過帯域を阻止帯域に置き換えると、本発明の効果を発揮することは容易に理解することができる。
【0110】
また、第〜第参考形態においては、段間結合調整板として機能する隔壁の切り込み部である段間結合調整窓の形状を、各隔壁についてすべて同じ大きさとしたが、本発明の段間結合調整窓の形状は、これらの参考形態に限られるわけではなく、各隔壁ごとに異なる形状を有している構成を採ることも可能である。
【0111】
さらに、第〜第参考形態においては、段間結合調整板として機能する隔壁の切り込み部を隔壁の外側面に設けたが、本発明の段間結合調整窓の形状はかかる参考形態に限定されるものではなく、図12の破線に示すように、隔壁の内側面に切り込み部を形成し、これを段間結合調整窓としてもよい。
【0112】
また、各参考形態における切り込み部(段間結合調整窓)の大きさや位置は、各参考形態で例示した寸法や位置に限定されるものではなく、必要とされる段間結合強度により決定され、必要とされる段間結合強度は誘電体共振器フィルタの仕様、誘電体共振器の設計、段間結合調整ボルトの可動範囲の設定などに応じて、適宜選択することができる。
【0113】
【発明の効果】
本発明の誘電体共振器フィルタによれば、誘電体共振器に付設される共振周波数調整手段の導体板と筐体との間の空間に不要モード抑制手段を配置し、あるいは、各誘電体共振器同士の段間結合調整板に切り込み部を設けることにより、通過帯域における特性の乱れを抑制することができ、低損失で急峻な通過帯域を有する,特性の優れた誘電体共振器フィルタの提供を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】 1段フィルタの共振周波数調整部材の位置と基本モード及び不要モードの周波数との関係を示す特性図である。
【図3】 不要モード抑制用リングを備えた誘電体共振器フィルタの周波数特性を示す図である。
【図4】 第1の参考形態における第1の変形例に係る共振周波数調整部材及び不要モード抑制用リングの構造を示す斜視図である。
【図5】 第1の参考形態における第2の変形例に係る共振周波数調整部材及び不要モード抑制用リングの構造を示す斜視図である。
【図6】 第1の参考形態における第3の変形例に係る共振周波数調整部材及び不要モード抑制用リングの構造を示す斜視図である。
【図7】 本発明の第2の参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図8】 1段フィルタの不要モード励起空間への不要モード抑制用ボルトの挿入量と基本モード及び不要モードの周波数との関係を示す特性図である。
【図9】 本発明の第の実施形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図10】 不要モード抑制機能付き共振周波数調整部材の効果をみるために測定した,共振周波数調整部材の位置と基本モード及び不要モードの周波数との関係を示す特性図である。
【図11】 本発明の第参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図12】 本発明の第参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図13】 本発明の第参考形態の誘電体共振器フィルタの周波数特性を示す図である。
【図14】 (a)〜(c)は、図12に示す誘電体共振器フィルタの段間結合調整窓の形状を変えたときの周波数特性を窓形状と共に示す図である。
【図15】 (a)〜(c)は、図12に示す誘電体共振器フィルタの段間結合調整窓の隔壁における上下方向の位置を種々変えたときの周波数特性を窓位置と共に示す図である。
【図16】 図12に示す第参考形態の誘電体共振器フィルタの2.14GHz(通過帯域)における電界分布の解析結果を示す図である。
【図17】 図12に示す第参考形態の誘電体共振器フィルタの2.82GHz(高調波)における電界分布の解析結果を示す図である。
【図18】 本発明の第参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図19】 本発明の第参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図20】 本発明の第参考形態における誘電体共振器フィルタの構造を概略的に示す斜視図である。
【図21】 従来の6段式誘電体共振器フィルタの例を概略的に示す斜視図である。
【図22】 図21に示す誘電体共振器フィルタの共振周波数調整部材の導体板付近の電磁界モードを示す図である。
【図23】 図21に示す誘電体共振器フィルタの周波数特性の例を示す図である。
【図24】 従来の4段式の誘電体共振器フィルタの例を概略的に示す斜視図である。
【図25】 従来の4段式の誘電体共振器フィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【図26】 図24に示す従来の誘電体共振器フィルタの2.14GHz(通過帯域)における電界分布のFDTD法による解析結果を示す図である。
【図27】 図24に示す従来の誘電体共振器フィルタの2.82GHz(高調波)における電界分布のFDTD法による解析結果を示す図である。
【図28】 図24に示す従来の誘電体共振器フィルタの2.82GHzにおいてHE11δモードにより段間結合調整板の誘電体共振器側の表面を流れる電流のFDTD法による解析結果を示す図である。
【符号の説明】
11 誘電体共振器
20 筐体
21 筐体本体
22 筐体蓋
23 隔壁(段間結合調整部材)
24 段間結合調整窓
31 段間結合調整ボルト
41 入力端子
42 出力端子
51 入力結合プローブ
61 共振周波数調整部材
71,72 不要モード抑制用リング

Claims (1)

  1. 複数の誘電体共振器と、
    上記複数の誘電体共振器の周囲を覆い、電磁界シールドとして機能する筐体と、
    上記複数の誘電体共振器の各誘電体共振器ごとに設けられ、上記筐体に囲まれる空間内に配置されて上記誘電体共振器の1つの面に対向する第1面と上記筐体の内表面に対向する第2面とを有する導体板を含み、かつ、上記導体板と上記誘電体共振器との距離を変化させることが可能に構成された複数の共振周波数調整手段とを備え、
    上記共振周波数調整手段の導体板は、円板形状であり、
    上記複数の共振周波数調整手段の各導体板のうち少なくとも1つの導体板のが他の共振周波数調整手段の導体板のとは異なっていることを特徴とする誘電体共振器フィルタ。
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