JP4014937B2 - 化学めっき装置とめっき方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき槽内でプリント配線板に銅を析出させるための化学銅めっき作業と、銅析出によりめっき槽内に発生した副生成物を除去する透析作業とを連続的に行う化学めっき装置とめっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板を製造する工程における回路形成前の化学銅めっき作業は、プリント配線板を銅めっき槽に浸漬して行う。プリント配線板に銅を析出させるためには、銅めっき液の主成分である硫酸銅、水酸化ナトリウムおよびホルマリンを銅析出に必要な濃度に調整すると共に、銅めっき液の液温を70℃付近に維持する必要がある。
【0003】
また、銅析出を継続させるためには、銅めっき液の主成分を銅めっき槽内に補給することが必要である。この補給量は銅の析出量よりも多いため、補給を継続すると銅めっき槽からオーバーフローする。
【0004】
オーバーフローした銅めっき液は、受け槽がある場合には、この受け槽に移し透析作業により副生成物を除去して再生利用するが、受け槽がない場合には、河川にそのまま放流できないため、廃液として処理しなければならない。
【0005】
また、めっき作業時には、副生成物である硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウムが発生する。この副生成物の濃度が高くなると、図4に示すように、銅めっき液の比重が増加する。ある比重以上に副生成物が蓄積すると銅析出が停止するため、めっき作業を停止しなければならなくなる。
【0006】
そこで、従来は、銅めっき液の濃度がある値に達する以前にめっき作業を停止した後、銅めっき槽内の銅めっき液を透析することにより副生成物を除去して銅めっき液を再生していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来では銅めっき槽からオーバーフローした銅めっき液は、受け槽がない場合には、廃液として処理しなければならなかった。
【0008】
また、従来では副生成物がある濃度以上に蓄積した後、めっき作業を停止して透析を行うため副生成物の蓄積量が多く、このため副生成物が除去された再生後の銅めっき液と、再生前の銅めっき液とでは、液量が大きく異なって再生後の銅めっき液の減少量が大きいため、再生後の銅めっき液を用いて銅めっき作業を行う場合、液量調整と液濃度の分析・補正作業が必要となり、この作業に時間を要していた。
【0009】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、銅めっき作業と透析作業を連続して行うことにより、銅めっき廃液の低減化および透析開始後におけるめっき槽内での再生液の分析・補正作業を不要にすることが可能な化学めっき装置とめっき方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、めっき槽と、めっき時に前記めっき槽にめっき液の主成分を補給する補給用貯槽と、めっき時に生成された副生成物をめっき液から除去する第1透析装置及び第2透析装置と、めっき時に前記補給用貯槽から前記めっき液の主成分が補給されることにより前記めっき槽から流出するめっき液を、前記第1透析装置又は前記第2透析装置のいずれかに切り替えて移送する第1配管と、前記第1透析装置及び前記第2透析装置で副生成物が除去された再生めっき液を、前記めっき槽に移送する第2配管と、を有し、前記めっき槽にめっき液の主成分を補給しつつめっきを行いながら、前記第1透析装置又は第2透析装置の一方に、前記めっき槽から流出するめっき液を貯め、かつ、前記第1透析装置又は第2透析装置の他方で、貯まっている前記めっき槽から流出しためっき液を、めっき時に生成される副生成物を除去して再生し、該再生液を前記めっき槽に移送することを特徴とする。
【0011】
従って、本発明は、めっき時に、めっき槽から流出するめっき液を連続的に透析して再生するため、めっき廃液の低減化が図れると共に、めっき槽から流出するめっき液は副生成物が除去されてめっき槽に戻されるため、めっき槽内のめっき液の容量にほとんど変化がなく、かつめっき液の透析が連続的に行われるため、めっき槽内における副生成物の蓄積量にもほとんど変動がなく、よって透析開始後におけるめっき槽内での液量調整と濃度補正は不要となる。
【0012】
さらに、本発明は、前記第1配管は、前記めっき槽からオーバーフローするめっき液が流入可能なオーバーフロー配管から構成することが考えられる。
【0013】
従って、本発明は、めっき液の主要成分を補給し続けることでめっき槽からオーバーフローするめっき液を再生利用することができるためめっき廃液を低減することができる。
【0014】
さらにまた、本発明は、前記第1配管は、前記めっき槽からめっき液を強制抜き取り可能な強制抜き取り配管から構成することが考えられる。
【0015】
従って、本発明は、めっき時に、めっき槽からめっき液を強制抜き取りして透析するため、めっき作業を透析のために停止することなく連続して行うことができる。
【0016】
さらにまた、本発明は、前記第1配管は、前記めっき槽からオーバーフローするめっき液が流入可能なオーバーフロー配管と、前記めっき槽からめっき液を強制抜き取り可能な強制抜き取り配管との合流配管から構成することが考えられる。
【0017】
従って、本発明は、めっき槽からオーバーフローするめっき液を再生利用することができると共に、めっき液の強制抜き取り透析によりめっき液の濃度を一定範囲内におさめることができる。
【0018】
さらにまた、本発明は、めっき槽にめっき液の主成分を補給しつつめっきを行いながら、第1透析装置又は第2透析装置の一方に、当該めっき液の主成分が補給されることにより前記めっき槽から流出するめっき液を貯め、かつ、前記第1透析装置又は第2透析装置の他方で、貯まっている前記めっき槽から流出しためっき液を、めっき時に生成される副生成物を除去して再生した後、該再生液を前記めっき槽に移送することを特徴とする。
【0019】
従って、本発明は、めっき時に、めっき槽から流出するめっき液を連続的に透析して再生するため、めっき廃液の低減化が図れると共に、めっき槽から流出するめっき液は副生成物が除去されてめっき槽に戻されるため、めっき槽内のめっき液の容量にほとんど変化がなく、かつめっき液の透析が連続的に行われるため、めっき槽内における副生成物の蓄積量にもほとんど変動がなく、よって透析開始後におけるめっき槽内での液量調整と濃度補正は不要となる。また、めっき作業と透析作業とを同時かつ連続に行うためめっき作業の効率が向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る化学めっき装置とめっき方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明に係る化学めっき装置は、銅めっき槽1と、銅めっき槽に銅めっき液の主成分を補給する補給用貯槽9、10、11と、銅めっき液から副生成物を除去する透析装置30と、銅めっき槽1から流出する銅めっき液を透析装置30に移送する第1配管15と、透析装置30で副生成物が除去された再生銅めっき液を銅めっき槽1に移送する第2配管20とを主たる構成要素とする。
【0022】
図1に示すように、銅めっき槽1の外部には、銅めっき液2を循環させる循環用配管3が設けられている。この循環用配管3には、銅めっき液2を強制循環させるポンプ4と、銅めっき液2の温度を一定の温度に維持する温調用熱交換器5とが設けられている。
【0023】
銅めっき槽1の上方にはプリント配線板6を吊り下げて銅めっき液2に浸漬させる吊下げ手段7が設置されている。銅めっき液2の比重は比重計8で計測する。なお、比重計の代わりに導電率計を用いてもよいことは以下においても同様である。
【0024】
また、銅めっき槽1には、銅めっき液2の主成分が貯留された硫酸銅補給用の貯槽9、水酸化ナトリウム補給用の貯槽10およびホルマリン補給用の貯槽11からの各液が、それぞれポンプを介して配管9a、10a、11aから吐出されるようになっている。
【0025】
一方、銅めっき槽1には、第1配管15と第2配管20とを介して2式の同一構成の透析装置30が連結されている。第1配管15および第2配管20については後述することとして、まず一方の第1透析装置30について説明する。
【0026】
第1透析装置30は、透析開始用の電源31aを備えた第1透析装置本体31と、第1透析装置本体31によって透析された透析液が貯留される第1透析液貯槽32とを有する。
【0027】
第1透析装置本体31と第1透析液貯槽32とは、ポンプが設けられた第1循環用配管33を介して連結されている。第1透析液貯槽32には第1配管15から第1開閉バルブ15aを介して分岐する第1分岐管15bから吐出する銅めっき液が流入可能になっている。
【0028】
第1透析液貯槽32に一定量の銅めっき液が貯留されると、第1開閉バルブ15aが閉じるため、第1透析液貯槽32にはそれ以上の量の銅めっき液が流入することがない。
【0029】
このように第1透析液貯槽32に一定量の銅めっき液が貯留された後、電源31aを投入して第1透析装置本体31を通電させることにより透析を開始する。すると透析後の透析液は第1循環用配管33を介して第1透析液貯槽32に吐出すると共に、第1透析液貯槽32内の透析液が第1透析装置本体31に吸い込まれる。
【0030】
これを繰り返すことで透析液に含まれる副生成物である硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウムが除去され、硫酸銅、水酸化ナトリウムおよびホルマリンのみの銅めっき液に再生される。
【0031】
再生完了は第1透析液貯槽32に設けられた比重計34で判定する。一方、第1透析装置本体31で除去された副生成物である硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウムは、第1透析装置本体31から排出管35を介して排出される。
【0032】
他方の第2透析装置30は、第1透析装置30よりも下流側に位置し、かつ第2開閉バルブ15cを介して第1配管15の下流端から分岐する第2分岐管15dから第2透析液貯槽32に銅めっき液が吐出可能になっている。
【0033】
その他の構成については第2透析装置30は第1透析装置30と同一であるから同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
次に、第1配管15について説明すると、第1配管15は、銅めっき槽1からオーバーフローする銅めっき液が流入可能なオーバーフロー配管16と、銅めっき槽1の下端部に連結された強制抜き取り配管17との合流配管から形成されている。
【0035】
オーバーフロー配管16と強制抜き取り配管17との両配管には、開閉バルブが設けられており、また、強制抜き取り配管17には銅めっき槽内の銅めっき液を強制抜き取りするポンプ17aが設けられている。
【0036】
さらに、オーバーフロー配管16と強制抜き取り配管17との合流点よりも下流側の配管部分には冷却用の熱交換器18が設けられている。この熱交換器18よりも下流側の配管部分には前述のように第1および第2分岐管15b、15dが設けられている。
【0037】
次に第2配管20について説明すると、第2配管20は、第1透析液貯槽32に第1開閉バルブ32aを介して連結された第1移送管21と、第2透析液貯槽32に第2開閉バルブ32bを介して連結された第2移送管22との合流配管から形成されている。
【0038】
これら第1および第2移送管21、22の合流点よりも下流側の配管部分には透析液を強制移送させるポンプ23と加熱用の熱交換器24とが設けられている。
【0039】
次に、上記構成に係る化学めっき装置を使用しためっき方法について説明する。まず、硫酸銅補給用の貯槽9、水酸化ナトリウム補給用の貯槽10およびホルマリン補給用の貯槽11のそれぞれから硫酸銅、水酸化ナトリウムおよびホルマリンを銅めっき槽1内に吐出して銅めっき槽1内を充填させる。
【0040】
比重計8を利用して銅めっき槽1内の硫酸銅、水酸化ナトリウムおよびホルマリンを銅析出に必要な濃度に調整した後、ポンプ4を作動させることにより銅めっき液を循環させて熱交換器5で液温を70℃付近まで加温する。
【0041】
次いで、プリント配線板6を銅めっき槽1内に投入して、プリント配線板6に銅を析出させる。同時に貯槽9、10、11から硫酸銅、水酸化ナトリウムおよびホルマリンを補給する。補給を継続すると、銅めっき槽1内の銅めっき液が増加してオーバーフローする。
【0042】
オーバーフローした銅めっき液は、オーバーフロー配管16に流入し、熱交換器18で40℃以下に冷却された後、第1透析装置30の第1透析液貯槽32に貯留される。熱交換器18で銅めっき液を冷却する理由は銅析出を防止するためである。
【0043】
一方、ポンプ17aを作動させて銅めっき槽1内の銅めっき液を強制的に抜き取る。抜き取り量は、プリント配線板6が銅めっき液2の液面から露出しない程度に設定する。強制的に抜き取られた銅めっき液も同様に冷却された後、第1透析装置30の第1透析液貯槽32に貯留される。
【0044】
第1透析液貯槽32に一定量の銅めっき液が貯留したら、第1開閉バルブ15aを閉じて、第2開閉バルブ15cを開くことにより第2の透析装置30の第2透析貯槽32に銅めっき液を貯留させる。これと同時に、第1透析装置30の電源31aを投入して銅めっき液から副生成物を除去する。
【0045】
第1透析装置30で透析液の再生が完了すると、第1開閉バルブ32aが開き、再生液は移送管21からポンプ23および熱交換器24を経て銅めっき槽1に補給される。再生液は熱交換器24で70℃まで加熱される。
【0046】
第1開閉バルブ15aが閉じて、第1透析装置30で透析が行われている間、第1配管15からの銅めっき液は第2透析装置30の第2透析液貯槽32に貯留される。
【0047】
第2透析液貯槽30に一定量の銅めっき液が貯留されると、第2開閉バルブ15cが閉じて、第1透析装置30の場合と同様に透析が開始される。再生が完了すると、第2開閉バルブ32bが開き、再生液は移送管22からポンプ23および熱交換器24を経て銅めっき槽1に補給される。
【0048】
図2は銅めっき槽1内の銅めっき液の比重と時間の経過との関係を示すもので、比重はある範囲w内で一定であることがわかる。また、図3に示すように、従来では透析作業後の液量調整および液濃度分析・補正に5時間程度を要しているが、本発明では銅めっき槽内の銅めっき液の液量と濃度はほぼ一定であるため、液量調整および液濃度分析・補正は不要である。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、めっき槽と、前記めっき槽にめっき液の主成分を補給する補給用貯槽と、めっき時に生成された副生成物をめっき液から除去する透析装置と、前記めっき槽から流出するめっき液を前記透析装置に移送する第1配管と、前記透析装置で副生成物が除去された再生めっき液を前記めっき槽に移送する第2配管とを有するため、次のような効果を奏する。
【0050】
すなわち、めっき時に、めっき槽から流出するめっき液を連続的に透析して再生するため、めっき廃液の低減化が図れると共に、めっき槽から流出するめっき液は副生成物が除去されてめっき槽に戻されるため、めっき槽内のめっき液の容量にほとんど変化がなく、かつ、めっき液の透析が連続的に行われるため、めっき槽内における副生成物の蓄積量にもほとんど変動がなく、よって透析開始後におけるめっき槽内での液量調整と濃度補正は不要となる。
【0051】
また、本発明は、めっき槽に、めっき液の主成分を補給しつつめっきを行う際に、前記めっき槽から流出するめっき液から、めっき時に生成される副生成物を透析装置で除去して再生した後、該再生液を前記めっき槽に移送するため、次のような効果を奏する。
【0052】
すなわち、めっき時に、めっき槽から流出するめっき液を連続的に透析して再生するため、めっき廃液の低減化が図れると共に、めっき槽から流出するめっき液は副生成物が除去されてめっき槽に戻されるため、めっき槽内のめっき液の容量にほとんど変化がなく、かつめっき液の透析が連続的に行われるため、めっき槽内における副生成物の蓄積量にもほとんど変動がなく、よって透析開始後におけるめっき槽内での液量調整と濃度補正は不要となる。また、めっき作業と透析作業とを同時かつ連続に行うためめっき作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る化学めっき装置のフロー図である。
【図2】同じく、めっき槽内のめっき液の比重の変化を時間の経過とともに示したグラフである。
【図3】本発明と従来の方法とを液量調整および液濃度補正の有無の観点から比較したグラフである。
【図4】従来例のめっき槽内におけるめっき液の比重の変化を時間の経過とともに示したグラフである。
【符号の説明】
1 めっき槽
2 めっき液
9、10、11 補給用貯槽
15 第1配管
20 第2配管
30 透析装置
Claims (5)
- めっき槽と、
めっき時に前記めっき槽にめっき液の主成分を補給する補給用貯槽と、
めっき時に生成された副生成物をめっき液から除去する第1透析装置及び第2透析装置と、
めっき時に前記補給用貯槽から前記めっき液の主成分が補給されることにより前記めっき槽から流出するめっき液を、前記第1透析装置又は前記第2透析装置のいずれかに切り替えて移送する第1配管と、
前記第1透析装置及び前記第2透析装置で副生成物が除去された再生めっき液を、前記めっき槽に移送する第2配管と、を有し、
前記めっき槽にめっき液の主成分を補給しつつめっきを行いながら、前記第1透析装置又は第2透析装置の一方に、前記めっき槽から流出するめっき液を貯め、かつ、前記第1透析装置又は第2透析装置の他方で、貯まっている前記めっき槽から流出しためっき液を、めっき時に生成される副生成物を除去して再生し、該再生液を前記めっき槽に移送することを特徴とする化学めっき装置。 - 前記第1配管は、前記めっき槽からオーバーフローするめっき液が流入可能なオーバーフロー配管から構成されていることを特徴とする請求項1記載の化学めっき装置。
- 前記第1配管は、前記めっき槽からめっき液を強制抜き取り可能な強制抜き取り配管から構成されていることを特徴とする請求項1記載の化学めっき装置。
- 前記第1配管は、前記めっき槽からオーバーフローするめっき液が流入可能なオーバーフロー配管と、前記めっき槽からめっき液を強制抜き取り可能な強制抜き取り配管との合流配管から構成されていることを特徴とする請求項1記載の化学めっき装置。
- めっき槽にめっき液の主成分を補給しつつめっきを行いながら、第1透析装置又は第2透析装置の一方に、当該めっき液の主成分が補給されることにより前記めっき槽から流出するめっき液を貯め、かつ、前記第1透析装置又は第2透析装置の他方で、貯まっている前記めっき槽から流出しためっき液を、めっき時に生成される副生成物を除去して再生した後、該再生液を前記めっき槽に移送することを特徴とする化学めっき方法。
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