JP4014862B2 - 蛍光診断用システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体から発せられる自家蛍光に基づき、術者による診断用の情報を取得する蛍光診断用システムに、関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体組織に対して紫外光(励起光)が照射されると、この生体組織は励起されて蛍光(自家蛍光)を発することが、知られている。さらに、腫瘍等の病変が生じた生体組織が発する自家蛍光は、正常な生体組織が発する蛍光とは異なる性質を有することが、知られている。特に、病変が生じた組織からの自家蛍光における緑色帯域の成分の強度は、正常な組織からのものよりも小さくなっている。但し、病変が生じた組織からの自家蛍光における赤色帯域の成分の強度は、正常な組織からのものと、同程度である。従って、病変が生じた組織からの自家蛍光の緑色帯域の強度と赤色帯域の強度との比は、正常な組織のものよりも小さくなっている。
【0003】
そこで、診断のために有用な情報(診断用情報)として、自家蛍光の緑色帯域の強度と赤色帯域の強度との比を測定し、術者に提供する蛍光診断用システムが、開発されてきている。図7は、励起光及び測定対象の光の特性を示すグラフである。この図7のグラフの横軸は光の波長を示し、縦軸はその強度を示している。励起光は、波長λeに強度のピークを有する紫外光である。この波長λeは、例えば、λe=365nmに設定されている。但し、可視帯域における短波長側の光が、励起光として利用されることもある。そして、自家蛍光における波長λ1を中心とする第1の波長帯域,及び,波長λ2を中心とする第2の波長帯域が、夫々測定の対象となる。これら波長λ1及び波長λ2は、例えば、緑色帯域及び赤色帯域中に夫々設定されている。
【0004】
上記の蛍光診断用システムは、励起光を生体へ照射するとともに生体からの光を導くプローブを備えている。このプローブは、励起光を導く多数の照射用光ファイバと、蛍光を導く多数の検出用光ファイバとが、束ねられて構成されている。具体的には、両光ファイバは、その先端側では複合バンドルとして束ねられており、基端側では、照射用光ファイバのみの照射用バンドルと、検出用光ファイバのみの検出用バンドルとして、個別に束ねられている。さらに、この蛍光診断用システムは、照射用バンドルにその基端面から励起光を入射させる励起光源部と、検出用バンドルの基端側に接続されるとともに生体からの光を検出する検出部とを、備えている。
【0005】
通常、このプローブは、その先端側が内視鏡の鉗子チャネル内へ引き通されて、使用される。即ち、術者は、内視鏡の先端からプローブを突出させた状態で、この内視鏡の先端を被検体に対向させる。そして、術者は、プローブの先端を、被検体に当接させる。
【0006】
この状態において、照射用バンドルに導かれた励起光は、複合バンドルを経て、プローブの先端から被検体へ射出される。すると、被検体は、励起光に照射されて、自家蛍光を発する。このため、この自家蛍光が、被検体表面で反射された励起光とともに、プローブにその先端から入射する。このプローブの複合バンドルにおける各検出用光ファイバに入射した光(検出光)は、検出用バンドルの基端面から射出されて、検出部によって検出される。
【0007】
そして、この検出光における第1の波長帯域の強度と第2の波長帯域の強度との比(強度比)が、キャラクタやグラフとしてモニタに表示される。なお、この強度比は、内視鏡により取得された被検体のカラー画像とともに、モニタに表示される。術者は、強度比が大きければ、当該被検体が正常であると判断し、強度比が小さければ、当該被検体に病変が生じていると判断する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、診断の対象となる組織の種類に応じて、その自家蛍光の特性は異なっている。具体的には、ある器官のある部位における健康な組織が発する自家蛍光の強度比と、他の器官のそれとは、同じ値になるとは限らない。このため、術者は、病変が生じた疑いのある組織を診断するために、予め、当該組織の近傍における明らかに健康とみられる組織の強度比を、基準値として測定しておく。そして、術者は、病変が生じた疑いのある組織の強度比を測定して、上記基準値と比較することにより、当該組織に実際に病変が生じているのか否かを、診断する。なお、基準値は、測定の対象となる器官及び該器官内の位置に応じて異なる。従って、術者は、毎回、異なる基準値に基づいて診断しなければならない。
【0009】
そこで、測定の対象となる器官及び組織の特性に関わらず、簡単な操作をするだけで、基準値の相違を意識することなく、術者にとってわかりやすい診断用情報を生成する蛍光診断用システムを提供することを、本発明の課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による蛍光診断用システムは、上記課題を解決するために、以下のような構成を採用した。
【0011】
即ち、この蛍光診断用システムは、生体を励起して自家蛍光を放出させるための励起光を被検体に照射する照射光学系と、前記励起光が照射されることにより前記被検体から発せられた自家蛍光を、取得する検出光学系と、前記検出光学系が取得した自家蛍光における所定の第1の波長帯域の成分の強度,及び所定の第2の波長帯域の成分の強度を夫々検出し、前記第1の波長帯域の成分の強度を示す第1の強度信号,及び前記第2の波長帯域の成分の強度を示す第2の強度信号を出力する強度検出部と、前記強度検出部が検出した第1の強度信号及び第2の強度信号を、夫々取得し、これら両強度信号のうちの少なくとも一方を所望の増幅率で増幅した後、第1の処理済強度信号及び第2の処理済強度信号として出力する可変増幅部と、キャリブレーションの指示がなされた場合に、前記第1の処理済強度信号と第2の処理済強度信号との比が一定値となるように、前記可変増幅部の増幅率を設定するキャリブレーション処理を実行し、以降、設定した増幅率を維持させる制御部と、前記可変増幅部が出力した第1の処理済強度信号と第2の処理済強度信号との比に基づく診断用情報を取得する分析部とを、備えたことを特徴とする。
【0012】
このように構成されると、術者は、病変が生じた疑いがある組織に対する診断のために、当該組織の近傍における明らかに健康な組織を基準としたキャリブレーション処理を、実行することができる。このキャリブレーション処理は、前記の健康な組織が、照射光学系から射出された励起光に照射された状態でなされる。このキャリブレーション処理後、健康な組織に関する第1の処理済強度信号と第2の処理済強度信号との比に基づく診断用情報は、一定値を示す。そして、術者は、照射光学系により射出された励起光が病変が生じた疑いのある組織を照射した状態で得られた診断用情報が示す値を、前記の一定値と比較することにより、当該組織に実際に病変が生じているかどうか、診断する。
【0013】
なお、上記キャリブレーション処理は、健康な組織に関する第1の処理済強度信号と第2の処理済強度信号とが一致するように、可変増幅部の増幅率が設定されることにより、なされてもよい。また、上記の制御部及び分析部は、単一のコントローラから構成されていてもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1は、本実施形態の蛍光診断用システムを模式的に示す概略構成図である。この蛍光診断用システムは、電子内視鏡1,光源プロセッサ装置2,プローブP,診断用補助装置3,及びモニタ4を、備えている。
【0015】
<電子内視鏡>
まず、電子内視鏡(以下、内視鏡と略記)1について、説明する。この内視鏡1は、生体内に挿入される可撓管状の挿入部を、有している。但し、図1には、この内視鏡1の詳細な形状は、図示されていない。この挿入部の先端には湾曲部が組み込まれており、この湾曲部の先端には、硬質部材製の先端部が固定されている。また、挿入部の基端には操作部が連結されている。この操作部には、湾曲部を湾曲操作するためのダイヤル及び各種操作スイッチが、設けられている。
【0016】
この内視鏡1の先端部には、少なくとも3つの貫通孔が穿たれており、そのうちの一対の貫通孔は、配光レンズ11及び対物レンズ12が夫々填め込まれることにより、封止されている。他の1つの貫通孔は、鉗子孔13として利用される。具体的には、この鉗子孔13と操作部に開けられた開口(基端側の鉗子孔14)とを結ぶ細管が、内視鏡1内を引き通されており、この細管が鉗子チャネルとして利用される。
【0017】
さらに、内視鏡1は、ライトガイド15を、有している。このライトガイド15は、光ファイバが多数束ねられてなるファイババンドルである。そして、このライトガイド15は、その先端面が配光レンズ11に対向した状態で、内視鏡1内を引き通され、その基端が、光源プロセッサ装置2内に引き通されている。
【0018】
さらに、内視鏡1は、CCDエリアセンサである撮像素子16を、有している。この撮像素子16の撮像面は、内視鏡1の先端部が被検体に対向配置されたときに対物レンズ12が当該被検体像を結ぶ位置の近傍に、配置されている。なお、対物レンズ12は、対物光学系に相当する。そして、撮像素子16は、被検体像に基づく画像データを取得して、信号線17へ出力する。なお、対物レンズ12及び撮像素子16間の光路中に、紫外光を遮断して可視光を透過させる励起光カットフィルタが、挿入されていてもよい。
【0019】
<光源プロセッサ装置>
次に、光源プロセッサ装置2について説明する。この光源プロセッサ装置2は、互いに接続されたシステムコントローラ21及びタイミングジェネレータ22を、備えている。システムコントローラ21は、ROM及びRAMからなる記憶部21aを有しており、その記憶部21aに格納されたプログラムに従って、光源プロセッサ装置2全体を制御する。このシステムコントローラは、制御部に相当する。タイミングジェネレータ22は、各種基準信号を生成する回路であり、光源プロセッサ装置2における各種処理は、この基準信号に従って進行する。
【0020】
なお、システムコントローラ21には、キャリブレーション・ボタンCBが接続されている。術者は、このボタンCBを押下することにより、図5を参照して後述するキャリブレーション処理を、実行することができる。このボタンCBは、内視鏡1の操作部に設けられた操作ボタンであってもよく、フットスイッチ,又は,光源プロセッサ装置2のフロントパネルに設けられたフロントパネルボタンであってもよい。
【0021】
さらに、光源プロセッサ装置2は、白色光源23,及び集光レンズ24を、備えている。白色光源23は、白色光を平行光として射出する。集光レンズ24は、白色光源23により射出された白色光の光路上に配置されており、この白色光をライトガイド15の基端面上に収束させる。
【0022】
これら集光レンズ24及びライトガイド15間の光路上には、ホイール25が、挿入されている。このホイール25は、円板状の外形を有し、その外周に沿ったリング状の領域に3つの開口が設けられている。これら各開口には、入射した光のうちの青色帯域のみを透過させるBフィルタ,緑色帯域のみを透過させるGフィルタ,及び赤色帯域のみを透過させるRフィルタが、夫々嵌め込まれている。
【0023】
このホイール25の中心は、モータ25Mの出力軸に対して固定されている。このモータ25Mは、タイミングジェネレータ22に接続されている。そして、モータ25Mは、タイミングジェネレータ22からの基準信号に従って、ホイール25のBフィルタ,Gフィルタ,及びRフィルタを、集光レンズ24及びライトガイド15間の光路中に、順次、繰り返して挿入させるように、当該ホイール25を回転させる。
【0024】
すると、ライトガイド15の基端面には、青色光(B光),緑色光(G光),及び赤色光(R光)が、順次繰り返して入射する。入射したB光,G光,及びR光は、ライトガイド15に導かれ、配光レンズ11により拡散されて、内視鏡1の先端に対向した被検体を照射する。すると、撮像素子16の撮像面には、被検体のB光による像,G光による像,及びR光による像が、順次形成される。そして、この撮像素子16は、被検体のB光による像,G光による像,及びR光による像を、B画像信号,G画像信号,及びR画像信号に夫々変換し、信号線17へ順次出力する。
【0025】
さらに、光源プロセッサ装置2は、タイミングジェネレータ22に夫々接続された1つの前段処理部26,3つのメモリ27R,27G,27B,及び3つの後段処理部28R,28G,28Bを、備えている。なお、これら前段処理部26,各メモリ27R,27G,27B,及び各後段処理部28R,28G,28Bは、映像処理部に相当する。
【0026】
前段処理部26は、信号線17に接続され、撮像素子16から出力されたB画像信号,G画像信号,及びR画像信号を順次取得して保持し、信号処理及びA/D変換することにより、B画像データ,G画像データ,及びR画像データを、順次出力する。この前段処理部26には、各メモリ27B,27G,27Rが、夫々接続されている。そして、前段処理部26から出力されたB画像データ,G画像データ,及びR画像データは、各メモリ27B,27G,27Rに、夫々格納される。
【0027】
これら各メモリ27R,27G,27Bには、各後段処理部28R,28G,28Bが、夫々接続されている。そして、各後段処理部28R,28G,28Bは、夫々、各メモリ27R,27G,27Bに格納されたR画像データ,G画像データ,及びB画像データを読み出して、信号処理及びD/A変換することにより、R画像信号,G画像信号,及びB画像信号を、出力する。出力されたR画像信号,G画像信号,及びB画像信号は、タイミングジェネレータ22から出力された同期信号(Sync)とともに、一組の映像信号として、図示せぬ映像出力端子へ出力される。
【0028】
モニタ4は、この映像出力端子に接続されており、出力された映像信号を取得して、画面表示する。即ち、モニタ4には、被検体のカラー画像が動画として表示される。なお、システムコントローラ21は、各後段処理部28R,28G,28Bに夫々接続されており、後述の如く診断用補助装置3から出力された診断用情報を、映像信号に含ませる。このため、モニタ4には、診断用情報がスーパーインポーズされた状態の動画が、表示される。この診断用情報については、後において詳述する。
【0029】
なお、モニタ4は、表示装置に相当する。また、上記光源プロセッサ装置2の白色光源23及び集光レンズ24,並びに内視鏡1のライトガイド15及び配光レンズ11は、照明光学系に相当する。
【0030】
<プローブ>
次に、プローブPについて説明する。図2は、プローブPの構成を示す模式図である。このプローブPは、生体組織を励起して自家蛍光を放出させるための励起光を導く第1の光ファイバF1,及び,生体組織からの光を導くための第2の光ファイバF2を、いずれも多数備えている。そして、両光ファイバF1,F2はその先端から過半の領域において、複合バンドルとして束ねられている。この複合バンドル及びそれを被覆するチューブが、複合部P0を構成している。
【0031】
図3は、複合部P0の横断面図である。チューブTは、可撓性を有する細管状の部材であり、内視鏡1の鉗子チャネルに挿通可能な外径を、有している。そして、このチューブT内に、両光ファイバF1,F2が充填されている。具体的には、チューブTの中心軸周辺の領域に、第2の光ファイバF2が充填され、その外側に第1の光ファイバF1が充填されている。
【0032】
図2に示されるように、第1の光ファイバF1は、その基端側において、第1の分岐バンドルとして束ねられている。この第1の分岐バンドルは、可撓性を有する管状部材である第1の分岐チューブ(図示せず)に被覆されている。これら第1の分岐バンドル及び第1の分岐チューブが、第1の分岐部P1を構成している。
【0033】
同様に、第2の光ファイバF2は、その基端側において、第2の分岐バンドルとして束ねられている。この第2の分岐バンドルは、可撓性を有する管状部材である第2の分岐チューブ(図示せず)に被覆されている。これら第2の分岐バンドル及び第2の分岐チューブが、第2の分岐部P2を構成している。
【0034】
そして、このプローブPは、その複合部P0が鉗子チャネルに挿通されるとともに、その先端が鉗子孔13から突出した状態で、使用される。なお、このプローブPにおける両分岐部P1,P2の基端側は、夫々、診断用補助装置3内に引き通されている。
【0035】
<診断用補助装置>
次に、図4を参照して、診断用補助装置3について説明する。この診断用補助装置3は、励起光源E,及び励起光用の集光レンズL1を、備えている。励起光源Eは、波長λe(図7)に強度のピークを有する所定帯域の紫外光である励起光を、平行光として射出する。集光レンズL1は、励起光源Eから射出された励起光の光路上に配置されており、この励起光を、第1の分岐部P1における分岐バンドルの基端面上に収束させる。収束した励起光は、第1の分岐部P1における各光ファイバF1内に入射する。入射した励起光は、これら各光ファイバF1に導かれて、複合部P0の先端面から射出される。
【0036】
この複合部P0の先端面が、生体組織等の被検体に対向した状態において、この被検体は、複合部P0の先端面から射出された励起光を照射される。すると、被検体は励起されて、自家蛍光を発する。なお、励起光の一部は、被検体表面で反射される。このため、反射された励起光及び発せられた自家蛍光の一部が、複合部P0の先端面へ向かう。そして、これら励起光及び自家蛍光のうち、第2の光ファイバF2に入射したものは、これら第2の光ファイバF2に導かれて、第2の分岐バンドルの基端面から射出される。
【0037】
さらに、診断用補助装置3は、コリメータレンズL2,励起光カットフィルタ31,ビームスプリッタBS,ミラーM,バンドパスフィルタ32a,32b,及び検出器Da,Dbを、備えている。
【0038】
コリメータレンズL2は、第2の分岐部P2における分岐バンドルの基端面から射出された光(検出光)の光路上に配置されており、この検出光を平行光に変換する。このコリメータレンズL2から射出された平行光の光路上には、励起光カットフィルタ31及びビームスプリッタBSが、順に配置されている。励起光カットフィルタ31は、入射した検出光のうちの励起光の成分を遮断するとともに自家蛍光の成分を透過させる。従って、励起光カットフィルタ31からは、自家蛍光のみが射出される。そして、ビームスプリッタBSは、この自家蛍光の一部を透過させるとともに一部を反射させる。
【0039】
ビームスプリッタBSを透過した自家蛍光は、ミラーMにより反射される。反射された自家蛍光の光路上には、第1のフィルタ32a,及び第1の検出器Daが、順に配置されている。第1のフィルタ32aは、入射した光のうち、波長λ1(図7)を中心とする第1の波長帯域の成分のみを透過させるとともに他の成分を遮断する。従って、入射した自家蛍光のうち、第1の波長帯域の成分のみが抽出される。そして、第1の検出器Daは、抽出された第1の波長帯域の成分の強度を示す電気信号を出力する。
【0040】
一方、ビームスプリッタBSにより反射された自家蛍光の光路上には、第2のフィルタ32b,及び第2の検出器Dbが、順に配置されている。第2のフィルタ32bは、入射した光のうち、波長λ2(図7)を中心とする第2の波長帯域の成分のみを透過させるとともに他の成分を遮断する。従って、入射した自家蛍光のうち、第2の波長帯域の成分のみが抽出される。そして、第2の検出器Dbは、抽出された第2の波長帯域の成分の強度を示す電気信号を出力する。
【0041】
さらに、診断用補助装置3は、増幅器33a,33b,及びフィルタ回路34a,34bを、備えている。第1の増幅器33aは、第1の検出器Daに接続されており、該検出器Daから出力された信号を、所定の増幅率で増幅して出力する。第1のフィルタ回路34aは、第1の増幅器33aに接続されており、該増幅器33aから出力された信号を取得し、ノイズの成分を除去して出力する。
【0042】
一方、第2の増幅器33bは、第2の検出器Dbに接続されており、該検出器Dbから出力された信号を、所定の増幅率で増幅して出力する。なお、第2の増幅器33bにおける増幅率は、例えば、第1の増幅器33aの増幅率と同一に設定されている。第2のフィルタ回路34bは、第2の増幅器33bに接続されており、該増幅器33bから出力された信号を取得し、ノイズの成分を除去して出力する。
【0043】
さらに、診断用補助装置3は、VCA35,A/D変換器36a,36b,及び,分析部としての演算器37を、備えている。VCA(Voltage Controlled Amplifier)35は、第1のフィルタ回路34a,及び光源プロセッサ装置2のシステムコントローラ21に、夫々接続されている。このVCA35は、可変増幅部に相当し、システムコントローラ21からの制御電圧に基づいて決定した増幅率で、フィルタ回路34aから出力された信号を、増幅して出力する。なお、制御電圧は、システムコントローラ21の記憶部21aに記憶された値(制御用設定値)に、比例している。この制御用設定値は、図5を用いて後述するキャリブレーション処理により、設定される。
【0044】
第1のA/D変換器36aは、VCA35に接続されており、該VCA35から出力されたアナログ信号を、デジタル信号に変換して出力する。第2のA/D変換器36bは、第2のフィルタ回路34bに接続されており、該フィルタ回路34bから出力されたアナログ信号を、デジタル信号に変換して出力する。
【0045】
演算器37は、両A/D変換器36a,36bに夫々接続されており、これらA/D変換器36a,36bから夫々出力された値の比を算出して、診断用情報として出力する。なお、この演算器37は、光源プロセッサ装置2のシステムコントローラ21に接続されている。そして、システムコントローラ21は、演算器37から出力された診断用情報を、取得する。
【0046】
さらに、診断用補助装置3は、加算器38,レベルシフト回路LS,及び,第3のA/D変換器39を、備えている。加算器38は、VCA35及び第2のフィルタ回路34bに夫々接続されており、VCA35からの出力信号と第2のフィルタ回路34bからの出力信号との差分信号を、出力する。
【0047】
レベルシフト回路LSは、加算器38に接続されており、該加算器38から出力された信号のレベルを所定の値だけ嵩上げして出力する。第3のA/D変換器39は、レベルシフト回路LSから出力されたアナログ信号を、デジタル信号に変換して出力する。具体的には、このA/D変換器39からは、0乃至1023の値が出力される。仮に、VCA35からの出力信号と第2のフィルタ回路34bからの出力信号とが一致していたとすると、加算器38からの出力値は、0Vとなる。この場合に、第3のA/D変換器39での変換後の出力値が511となる信号を出力するように、上記レベルシフト回路LSの特性が、設定されている。
【0048】
なお、第3のA/D変換器39は、光源プロセッサ装置2のシステムコントローラ21に接続されている。そして、システムコントローラ21は、A/D変換器39から出力された信号を取得し、この信号に基づいてVCA35を制御することにより、図5を参照して後述するキャリブレーション処理を、実行することができる。
【0049】
なお、診断用補助装置3の励起光源E及び集光レンズL1,並びに,プローブPの第1の光ファイバF1は、照射光学系に相当する。また、プローブPの第2の光ファイバF2,並びに,診断用補助装置3のコリメータレンズL2,励起光カットフィルタ31,ビームスプリッタBS,ミラーM,及び両バンドパスフィルタ32a,32bは、検出光学系に相当する。さらに、両検出器Da,Dbは、強度検出部に相当し、これら両検出器Da,Dbから夫々出力された信号は、第1の強度信号及び第2の強度信号に、相当する。また、VCA35から出力された信号,及び第2のフィルタ回路34bから出力された信号は、夫々、第1の処理済強度信号及び第2の処理済強度信号に、相当する。
【0050】
<実施形態の動作>
上記構成の蛍光診断用システムを用いて、術者が、その内視鏡1の挿入部を生体内に挿入すると、モニタ4には、内視鏡1の先端部に対向した領域の映像が、表示される。この映像を見ることにより、術者は、生体内を観察することができる。
【0051】
そして、術者は、病変が生じた疑いのある組織を発見した場合に、当該組織を診断するために、まず、キャリブレーションを実行しておく。具体的には、術者は、当該組織の近傍における明らかに健康な組織に、プローブPの先端を当接させて、キャリブレーション・ボタンCBを押下する。すると、光源プロセッサ装置2のシステムコントローラ21は、図5のフローチャートに示されたキャリブレーション処理を、開始する。なお、初期状態において、システムコントローラ21の記憶部21aには、制御用設定値として所定の初期値が設定されている。
【0052】
開始後最初のS001では、システムコントローラ21は、第3のA/D変換器39からの出力値を、取得する。
【0053】
次のS002では、システムコントローラ21は、S001で取得したA/D変換器39からの出力値が511である場合に、処理を終了させ、それ以外の場合には、処理をS003へ進める。
【0054】
次のS003では、システムコントローラ21は、S001で取得したA/D変換器39からの出力値に基づいて、処理を分岐させる。具体的には、この出力値が511未満であると、処理はS004へ進み、この出力値が511を超えていると、処理はS005へ進む。
【0055】
S004では、システムコントローラ21は、その記憶部21aに記憶した制御用設定値をインクリメントさせる。すると、VCA35への制御電圧は、インクリメントされた制御用設定値に対応して増加する。このS004の完了後、処理はS001へ戻る。
【0056】
S005では、システムコントローラ21は、その記憶部21aに記憶した制御用設定値をデクリメントさせる。すると、VCA35への制御電圧は、デクリメントされた制御用設定値に対応して減少する。このS005の完了後、処理はS001へ戻る。
【0057】
上記図5のフローチャートが終了した状態において、記憶部21aに記憶された制御用設定値は、ボタンCBが新たに押下されない限り、保存される。従って、VCA35への制御電圧は、この制御用設定値に基づいた一定の値となる故に、該VCA35の増幅率は、一定に保たれる。この状態において、VCA35からの出力信号と第2のフィルタ回路34bからの出力信号とは、一致しており、演算器37からは、基準として用いられる診断用情報が、出力される。
【0058】
そして、システムコントローラ21は、この診断用情報が示す値を百分率で示したキャラクタデータ及びそのグラフ(イメージデータ)を作成する。さらに、システムコントローラ21は、図1に示された各後段信号処理部28R,28G,28Bを制御して、各メモリ27R,27G,27Bから読み出された画像データに診断用データをスーパーインポーズさせた画像データを、出力させる。
【0059】
すると、図6に示されるように、モニタ4には、被検体のカラー画像40とともにキャラクタデータ41及びグラフ42が、表示される。これらキャラクタデータ41及びグラフ42は、基準を意味する「100%」になっている。
【0060】
そのうえで、術者は、プローブPの先端を、病変が生じた疑いのある組織に対向させることにより、診断を開始する。仮に、病変が生じた疑いのある組織が、健康な組織と略同じ状態であるならば、キャラクタデータ41及びグラフ42は、約100%を示すことになる。しかしながら、組織に実際に病変が生じていたならば、キャラクタデータ41及びグラフ42は、100%を下回った値を示すことになる。これらキャラクタデータ41及びグラフ42を見て、術者は、病変が生じた疑いのある組織に、実際に病変が生じているのかどうかを、診断する。
【0061】
さらに、術者は、当該組織に対する診断を終えた後、引き続き、他の部分に対する診断を実行することができる。具体的には、術者は、モニタ4を見ながら内視鏡1の先端を移動させてゆくことにより、生体内を観察する。そして、術者は、新たに、病変が生じた疑いのある組織を見つけた場合に、当該組織の近傍における明らかに健康な組織にプローブPの先端を当接させて、上記のキャリブレーションを実行する。このキャリブレーション実行後、術者は、病変が生じた疑いのある組織にプローブPを当接させ、モニタ4に表示されたキャラクタデータ41及びグラフ42を見て、当該組織に対する診断を下す。
【0062】
上記のキャリブレーション処理がなされることにより、測定の対象となる器官及び組織の特性に関わらず、当該組織が健康である場合には、キャラクタデータ41及びグラフ42は、基準を示す100%の値を示す。従って、術者は、常に、この100%を基準として、病変が生じた疑いのある組織に対するキャラクタデータ41及びグラフ42を監視することにより、当該組織に対する診断を下すことができる。
【0063】
なお、上記説明において、基準となる診断用情報は、100%であった。しかし、診断用情報は、百分率表示に限定されるものではない。即ち、診断用情報は、千分率で表示されてもよく、単なる数値として表示されてもよい。さらに、基準となる診断用情報が0であって、この状態よりも、第1の波長帯域の成分の強度と第2の波長帯域の成分の強度との比が小さくなった場合に、診断用情報が負の値をとるように、設定されていてもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明の蛍光診断用システムは、測定の対象となる器官及び組織に応じたキャリブレーション処理を実行することにより、常に、一定の基準に基づいて作成された診断用情報を、提供することができる。従って、術者は、対象となる器官や組織の特性に関わらず、上記診断用情報に基づいて、被検体の状態を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の蛍光診断用システムを模式的に示す概略構成図
【図2】 プローブの構成を示す模式図
【図3】 プローブにおける複合部の横断面図
【図4】 診断用補助装置を模式的に示す構成図
【図5】 キャリブレーション処理を示すフローチャート
【図6】 被検体像及び診断用情報を含んだ表示例を示す模式図
【図7】 励起光及び測定対象の光の特性を示すグラフ
【符号の説明】
1 電子内視鏡
11 配光レンズ
12 対物レンズ
15 ライトガイド
16 撮像素子
2 光源プロセッサ装置
21 システムコントローラ
21a 記憶部
22 タイミングジェネレータ
23 白色光源
26 前段処理部
27R,27G,27B メモリ
28R,28G,28B 後段処理部
3 診断用補助装置
33a,33b 増幅器
34a,34b フィルタ回路
35 VCA
37 演算器
38 加算器
E 励起光源
Da,Db 検出器
P プローブ
F1 第1の光ファイバ
F2 第2の光ファイバ
4 モニタ
Claims (2)
- 生体を励起して自家蛍光を放出させるための励起光をプローブを通じて被検体に照射する照射光学系と、
前記励起光が照射されることにより前記被検体から発せられた自家蛍光を、前記プローブを通じて取得する検出光学系と、
前記検出光学系が取得した自家蛍光における所定の第1の波長帯域の成分の強度,及び所定の第2の波長帯域の成分の強度を夫々検出し、前記第1の波長帯域の成分の強度を示す第1の強度信号,及び前記第2の波長帯域の成分の強度を示す第2の強度信号を出力する強度検出部と、
前記強度検出部が出力した第1の強度信号を、設定された増幅率で増幅する可変増幅部と、
キャリブレーションの指示がなされた場合に、前記第1の強度信号と第2の強度信号とが一致するように、前記可変増幅部の増幅率を設定するキャリブレーション処理を実行し、以降、設定した増幅率を維持させる制御部と、
前記可変増幅部が出力した第1の強度信号と前記強度検出部が出力した第2の強度信号との比を算出する分析部と、
前記分析部が算出した比を表示する表示装置とを
備えたことを特徴とする蛍光診断用システム。 - 可視光により前記被検体を照明する照明光学系と、
前記照明光学系により照明された前記被検体の像を形成する対物光学系と、
前記対物光学系によって形成された被検体の像を撮像して画像信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子が変換した画像信号に基づき、前記被検体の映像データを生成する映像処理部とを更に備え、
前記表示装置が、前記映像処理部が生成した映像データ,及び前記分析部が算出した比を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光診断用システム。
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