JP4014488B2 - エポキシ系樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温リフロー時のワイア断線及び成形性に優れ、特に半導体封止用として好適なエポキシ系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置などの電子回路部品の封止方法として、従来より金属やセラミックスによるハーメッチックシールと共にフェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などによる樹脂封止が提案されており、一般にこのような封止に使用される樹脂を封止材樹脂と呼んでいる。その中でも、経済性、生産性、物性のバランスの点からエポキシ樹脂による樹脂封止が最も盛んに行われている。そして、エポキシ樹脂による封止方法は、エポキシ樹脂に硬化剤、充填材などを添加した組成物を用い、半導体素子を金型にセットしてトランスファー成形法などにより封止する方法が一般的に行われている。
【0003】
最近はプリント基板への半導体装置パッケージの実装において高密度化、自動化が進められており、従来のリードピンを基板の穴に挿入する“挿入実装方式”に代わり、基板表面に半導体装置パッケージを半田付けする“表面実装方式”が盛んになってきた。
【0004】
表面実装方式においては、通常半田リフローによる実装が行われる。この方法では、基板の上に半導体装置パッケージを乗せ、これらを200℃以上の高温にさらし、基板にあらかじめつけられた半田を溶融させて半導体装置パッケージを基板表面に接着させる。このような実装方法では半導体装置パッケージ全体が高温にさらされるため、半導体装置中のリードや、半導体素子とリードを結ぶ金線に応力がかかり、リードと金線のボンディング部分にクラックが生じ、半導体装置の電気特性に悪影響を及ぼす。また、チップやリードフレームと封止材との界面に剥離が生じ、半導体装置の信頼性を低下させる恐れがある。更に、近年では環境保護の点から鉛を含んでいない鉛フリー半田の使用が進んでいるが、鉛フリー半田は融点が高く、そのためリフロー温度も上がることになりこれまで以上の耐リフロー信頼性が求められている。
【0005】
一般的に耐リフロー信頼性を向上させるには封止樹脂組成物中の充填材の割合を上げることが有効であることが知られていた。封止樹脂組成物中の樹脂成分を減らすことにより吸湿性が低下するからである。しかしながら、単純に封止樹脂組成物中の充填材の割合を大きくするだけだと流動性が悪化し、パッケージ未充填やステージシフト、ワイアフローなどの問題が起こる。
【0006】
そのため、耐リフロー信頼性の一つである密着性を向上するため、メルカプトシランの添加(例えば特許文献1)や、2官能エポキシ、低粘度フェノール、メルカプトシランアミノシラン処理シリカを用いたもの(例えば特許文献2)などが提案されている。また、成形性を向上させる方法としてエポキシ樹脂としてテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂の配合(例えば特許文献3)やさらに硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂を配合するエポキシ系樹脂組成物(例えば特許文献3)が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−11289号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平9−165499号公報(請求項1)
【特許文献3】
特許第3192953号公報(請求項1)
【特許文献4】
特開平6−345850号公報(請求項1)
【特許文献5】
特開平8−134183号公報(請求項1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1,2の方法は密着性の向上効果はそれなりに奏するものの、耐ワイア断線性、成形性は十分ではない。また、特許文献3,4の方法は、成形性の向上効果はそれなりに奏するものの未だ十分ではない。
【0009】
本発明の課題は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、より高温のリフロー温度において、耐ワイア断線、流動性に優れるエポキシ系樹脂組成物、及び該エポキシ系樹脂組成物で封止してなる半導体装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、充填材(C)、アミノ基含有シランカップリング剤(D)、メルカプト基含有シランカップリング剤(E)を必須成分として含有するエポキシ系樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が下記一般式(I)で表されるビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)(以下、単にビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)と称する)を含有し、前記硬化剤(B)がフェノールアラルキル樹脂を50重量%以上含有し、かつブロム化合物の含有量が組成物全体の0.3重量%以下であり、かつアンチモン化合物の含有量が組成物全体の0.3重量%以下であり、充填材(C)を全エポキシ系樹脂組成物中に88〜95重量%配合することを特徴とするエポキシ系樹脂組成物である。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1〜R4は水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基、フェニル基またはハロゲン原子のいずれかを示し、各々が同一であっても異なっていてもよく、R1〜R4の少なくとも1つの基は炭素数1〜4の低級アルキル基である。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ系樹脂組成物は必須成分として、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)充填材(C)、アミノ基含有シランカップリング剤(D)、メルカプト基含有シランカップリング剤(E)を含有する。
【0014】
本発明のエポキシ系樹脂組成物においては 、エポキシ樹脂(A)がビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)を必須成分として含有することを特徴の1つとする。
【0015】
エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)を含有させることにより粘度を下げ成形性を向上する効果が得られる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)としては、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく使用される。
【0016】
用途によってはエポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)以外のエポキシ樹脂を併用しても良い。
【0017】
その他のエポキシ樹脂としては1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般である。例えばアルキル置換基を持たないビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、 4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニル、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラエチルビフェニル、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラブチルビフェニルなどのビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。その他のエポキシ樹脂として2種以上用いても良い。
【0018】
2種以上のエポキシ樹脂を併用する場合、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)の他のエポキシ樹脂として特に好ましいものとしては例えば4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニル、アルキル置換基を持たないビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)の含有量はエポキシ樹脂(A)全量に対して10重量%以上が好ましい。10%以下であると流動性が低下する。また、より流動性を向上させるため20重量%以上がより好ましい。勿論全量であっても構わない。
【0020】
エポキシ樹脂(A)の配合量はエポキシ系樹脂組成物全体に対して通常0.5〜12重量%、特に1〜7重量%が好ましい。
【0021】
本発明における硬化剤(B)は、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、それらの具体例としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラックなどのノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノール樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物およびメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンなどがあげられこれらを単独で用いても、2種以上の硬化剤を併用しても良い。硬化剤(B)の溶融粘度はICI(150℃)粘度で0.4Pa・s以下、さらには0.2Pa・s以下のものが特に好ましく使用される。
【0022】
硬化剤(B)の配合量はエポキシ系樹脂組成物全体に対して通常0.5〜12重量%、特に1〜7重量%が好ましい。さらにはエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の配合比は、機械的性質、及び耐湿性の点からエポキシ樹脂(A)に対する硬化剤(B)の化学当量比が0.5〜1.5、特に0.6〜1.2の範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明においてエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の硬化反応を促進するため硬化促進剤を用いても良い。硬化促進剤は硬化を促進する物なら特に限定されず、たとえば2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン化合物、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、トリ(アセチルアセトナト)アルミニウムなどの有機金属化合物およびトリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン化合物があげられる。なかでも信頼性および成形性の点から有機ホスフィン化合物が好ましく、トリフェニルホスフィンが特に好ましく用いられる。また、これらの硬化促進剤は用途によっては2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の添加量はエポキシ樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0024】
本発明における充填材(C)としては、無機充填材が好ましく、具体的には非晶性シリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレー、タルク、ケイ酸カルシウム、酸化チタンや酸化アンチモンなどの金属酸化物、アスベスト、ガラス繊維およびガラス球などが挙げられるが、中でも非晶性シリカは線膨脹係数を低下させる効果が大きく、低応力化に有効なため好ましく用いられる。形状としては、破砕状のものや球状のものが用いられ、流動性の点から球状のものが好ましく使用される。非晶性シリカのなかでも石英を溶融して製造される球状溶融シリカが特に好ましく使用される。
【0025】
ここでいう非晶性シリカは、一般的には真比重が2.3以下のものを意味する。この非晶性シリカの製造においては石英を溶融して製造される(溶融シリカ)のが一般的であるが必ずしも溶融状態を経る必要はなく、公知の任意の製造方法を用いることができ、例えば結晶性シリカを溶融する方法および金属ケイ素の酸化による方法、アルコキシシランの加水分解など、各種原料からの合成方法が使用できる。
【0026】
本発明において、充填材(C)の割合は、全樹脂組成物に対して88重量%〜95重量%であることを特徴とする。充填材(C)の含有量が88重量%以上であると封止樹脂の低熱線膨張化、低吸湿化が達成でき、厳しい要求レベルにおける十分な耐リフロー信頼性、特に耐ワイア断線特性が得られる。また、充填材(C)の含有量を多くすることにより、難燃性の効果をあわせて得ることができる。
【0027】
充填材の粒径および粒度分布については、特に限定はないが、流動性、成形時のバリ低減の点から、平均粒径(メディアン径を意味する。以下同じ。)が5〜30μmの範囲にあることが特に好ましい。また、平均粒径または粒度分布の異なる充填材を2種以上組み合わせることもできる。
【0028】
また得られる半導体装置のソフトエラーの問題を回避するために、エポキシ系樹脂組成物中のウラン、トリウムなどα線放出物質の濃度を、極めて少なく、具体的にはそれぞれ10ppb以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明では、アミノ基含有シランカップリング剤(D)、メルカプト基含有シランカップリング剤(E)を必須成分として含有することを特徴の一つとする。これらのシランカップリング剤で充填材を、他の構成成分と、同時にブレンドしても、ブレンドする以前にあらかじめ処理しておいてもよい。アミノ基含有シランカップリング剤としては、アミノ基および有機基がケイ素原子に直結したもの、およびその部分加水分解縮合物が一般的に用いられる。アミノ基含有シランカップリング剤の例としては、γ−(N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N−フェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチルアミノプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−(N−エチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチルアミノ)プロピルメチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエチルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、メルカプト基および有機基がケイ素原子に直結したもの、およびその部分加水分解縮合物が一般的に用いられる。メルカプト基含有シランカップリング剤の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤中の有機基としては、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子、硫黄原子などによって置換された炭化水素基のものが使用される。
また、用途によってはアミノ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で併用しても良い。併用できるシランカップリング剤の具体的な例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、γ−(2,3−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
カップリング剤の配合割合としてはエポキシ系樹脂組成物全量に対して0.1〜2重量%添加することが流動性及び充填性の点で好ましい。
【0031】
本発明のエポキシ系樹脂組成物では、耐ワイア断線を向上させるために、ブロム化合物およびアンチモン化合物の含有量を0にするか、存在したとしてもブロム化合物の含有量を組成物全体の0.3重量%以下とし、かつアンチモン化合物の含有量を組成物全体の0.3重量%以下とすることが必要である。ここで存在が許されるアンチモン化合物としては、例えば三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンがあげられる。また、ブロム化合物としては、例えば、、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのブロム化エポキシ樹脂、ブロム化ポリカーボネート樹脂、ブロム化ポリスチレン樹脂、ブロム化ポリフェニレンオキサイド樹脂、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテルなどがあげられ、なかでも、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのブロム化エポキシ樹脂の共存の許容が、成形性の点から特に好ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に存在するブロム化合物の量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.3重量%以下であることが、難燃性および密着性の点からも必要であるが、好ましくは0.1重量%以下である。ブロム原子に換算すると、ブロム原子が全体の0.2重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.07重量%以下である。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に存在するアンチモン化合物の量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.3重量%以下であることが、難燃性および高温信頼性の点からも必要であるが、好ましくは0.1重量%以下である。
【0034】
また、これら難燃剤、難燃助剤の共存を許容する場合、エポキシ系樹脂組成物から発生する不要物の廃棄の容易さ、および半導体装置の長期信頼性の観点からもハロゲン原子およびアンチモン原子それぞれが、エポキシ系樹脂組成物に対して0.3重量%以下であることが必須であり、特に好ましくは0.1%以下である。
【0035】
本発明のエポキシ系樹脂組成物は、さらに次に挙げる各種添加剤を任意に含有することができる。カーボンブラックおよび酸化鉄などの各種着色剤や各種顔料、シリコーンゴム、オレフィン系共重合体、変性ニトリルゴム、変性ポリブタジエンゴムなどの各種エラストマー、シリコーンオイルなどの各種熱可塑性樹脂、フッ素系、シリコーン系などの界面活性剤、カルナウバワックスなどの天然植物性ワックス、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の金属塩、モンタン酸エステルなどの長鎖脂肪酸のエステル、長鎖脂肪酸のアミドおよびポリエチレンワックスなどのパラフィンワックス、その他各種離型剤、およびハイドロタルサイト類などのイオン捕捉剤、有機過酸化物などの架橋剤。
【0036】
本発明のエポキシ系樹脂組成物は上記各成分を溶融混練によって製造することが好ましい。たとえば各種原料をミキサーなどの公知の方法で混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸もしくは二軸の押出機およびコニーダーなどの公知の混練方法を用いて溶融混練することにより製造される。溶融混練時の樹脂温度としては、通常70〜150℃の範囲が使用される。
【0037】
本発明のエポキシ系樹脂組成物は、加熱混練で溶融し、冷却後さらに粉砕した粉末の形状、粉末を打錠して得られるタブレットの形状、加熱混練で溶融し型内で冷却固化したタブレットの形状、加熱混練で溶融し押し出ししてさらに切断したペレットの形状などの状態で使用できる。
【0038】
そしてこれらの形状から半導体素子の封止に供され半導体装置の製造が行われる。半導体を基板に固定した部材に対して、本発明のエポキシ系樹脂組成物を、例えば120〜250℃、好ましくは150〜200℃の温度で、トランスファ成形、インジェクション成形、注型法などの方法で成形して、エポキシ系樹脂組成物の硬化物によって封止された半導体装置が製造される。また必要に応じて追加熱処理(例えば、150〜200℃、2〜16時間)を行うことができる。
【0039】
本発明における260℃リフローとは一般的なリフロー装置において最高温度を260℃に設定し、加熱処理することを言う。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに掲げた実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の%は重量%を示す。
【0041】
[実施例1〜17、参考例1、比較例1〜8]
表1に示した各成分を表2〜3に示す組成比(重量比)で、ミキサーによりドライブレンドした後、ロール表面温度90℃のミキシングロールを用いて5分間加熱混練後、冷却、粉砕して半導体封止用のエポキシ系樹脂組成物を得た。
【0042】
【表1】
【0043】
<ワイア断線特性(耐リフロー信頼性)評価>
得られた各樹脂組成物を用いて208pinQFP(外形:28mm×28mm×3.7mm、フレーム材料:42アロイ)用金型を用いて、低圧トランスファー成形機で金型温度175℃、キュアータイム60秒間の条件でパッケージを成形した。なお評価用のチップとしては表面に窒化珪素膜を被覆したチップサイズ8mm×8mm×0.3mmの模擬素子を搭載した。
【0044】
次に下記の測定法により各樹脂組成物の物性を評価した。結果を表2および表3に示す。
<ワイア断線特性(耐リフロー信頼性)>
上記成形にて得られた208pinQFPを85℃/60%RHで168時間加湿後、最高温度260℃のIRリフロー炉で加熱処理した。なお、リフロー炉の温度プロファイルは、150℃〜200℃の領域を60秒〜100秒、200℃から260℃の昇温速度を1.5〜2.5℃/秒、最高温度である255℃〜265℃の領域で10〜20秒維持し、260℃から200℃の降温速度を1.5〜2.5℃/秒とした。リフロー後のパッケージを開封し、リード部分と接合(セカンドボンディング部分)している金ワイアのクラックをSEMにて観察し、クラックが、ボンディングボールに全く発生していない時を◎、全幅の1/2以下の時を○、1/2以上全幅未満の時△、全幅の時×として評価した。
【0045】
<密着性評価(耐リフロー信頼性)>
上記リフロー後パッケージ内部の銀メッキ部分を超音波探傷機により観察し、剥離が生じている面積を計算し剥離率(%)とした。
【0046】
<パッケージ充填性(成形性)評価>
上記成形により得られた208pinQFPパッケージ10個を成形後に目視および断面切断後、20倍の顕微鏡を用いて観察し、未充填の有無を調べた。未充填が発生した不良パッケージを除く、良好に得られたパッケージ数を求めた。
【0047】
<長期信頼性評価>
16pinDIP(デュアルインラインパッケージ)を成形し、140℃/85%RH、DC20V印加下でPCBTを評価し、累積故障率63%になる時間を求めPCBT特性寿命とした。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
表2、3に評価結果を示す。表に見られるように、アミノ基およびメルカプト基含有シランカップリング剤を用いていない場合や、充填材の割合が88%未満である場合、耐リフロー信頼性が不十分である(比較例1〜3、6)。また、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いていない場合は成形性が不十分である(比較例4〜6)。また、難燃剤である臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の添加量が、0.3%以上であるとPCBT特性寿命が大きく低下する(比較例7)。それに対し、本発明のエポキシ系樹脂組成物はリフロー時のワイア断線特性、成形性およびPCBT特性寿命のいずれも優れている。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によればより高温のリフロー温度において、耐ワイア断線、流動性に優れるエポキシ系樹脂組成物、及び該エポキシ系樹脂組成物で封止してなる半導体装置を得ることができる。
Claims (2)
- エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、充填材(C)、アミノ基含有シランカップリング剤(D)、メルカプト基含有シランカップリング剤(E)を必須成分として含有するエポキシ系樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が下記一般式(I)で表されるビスフェノールF型エポキシ樹脂(a)を含有し、前記硬化剤(B)がフェノールアラルキル樹脂を50重量%以上含有し、かつブロム化合物の含有量が組成物全体の0.3重量%以下であり、かつアンチモン化合物の含有量が組成物全体の0.3重量%以下であり、充填材(C)を全エポキシ系樹脂組成物中に88〜95重量%配合することを特徴とするエポキシ系樹脂組成物。
- 請求項1に記載のエポキシ系樹脂組成物の硬化物によって封止されたことを特徴する半導体装置。
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