JP4013751B2 - Dc−dcコンバータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スイッチング方式のDC−DCコンバータに関し、特に通信機器、情報端末、例えば携帯型無線端末(携帯電話)などの無線回路、通信回路に適用されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、通信機器、情報端末などの電源としては、シリーズレギュレータ、トランス及び整流回路で構成される直流電源が用いられていた。
近年、特に通信機器、情報端末においても、システムや各コンポーネントの効率の向上を図るために、ノイズの少ないこれらの電源に替わり、スイッチング方式のDC−DCコンバータが使われはじめている。従来、スイッチング電源が適用されていなかった、例えば携帯型無線端末(携帯電話)などのノイズに敏感な無線回路にもDC−DCコンバータが使われはじめている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−211640号公報 (第5−14頁、図1−図16)
【特許文献2】
特開平10−243554号公報 (第2−6頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スイッチング方式のDC−DCコンバータはスイッチング周波数に起因するスイッチングノイズやリンギングノイズといった比較的高周波のノイズを発生する。そのため、これらのノイズが無線回路に悪影響を与えるという問題が生じている。
このように無線回路や通信回路にDC−DCコンバータを適用するに際し、この高周波のノイズを除去あるいは低減する必要があり、通常、次のようにしてノイズの低減を行っている。第1としては、DC−DCコンバータの出力部に数十μF以上の静電容量の出力キャパシタ(出力コンデンサ)を設け広い周波数にわたってノイズを低減するものである。第2としては、送信回路のパワーアンプの出力部に性能の良いバンドパスフィルタを設け、送信周波数以外の周波数成分を取り除くようにするものである。しかしながら、第1の場合はローパスフィルタによっても、スイッチング周波数の例えば数百倍の高周波のリンギングノイズを取り切れずに発生してしまう問題点がある。第2の場合は部品のコストが高いという問題点がある。
【0005】
この発明の目的は、情報端末、通信機器などの無線回路に影響を及ぼすノイズを低減するDC−DCコンバータを提供する。また、基板の実装面積をほとんど増大させることなく、かつ低コストで実現できるDC−DCコンバータを提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の目的を解決するために、送受信回路に電力を供給するDC−DCコンバータの出力部に、前記回路の受信周波数と送信周波数との差の周波数の周波数域に対応するバンドストップフィルタを備えることとする。また、送信回路のパワーアンプに電力を供給するDC−DCコンバータの出力部に、前記回路の受信周波数と送信周波数との差の周波数の周波数域に対応するバンドストップフィルタを備えることで有効である。また、前記バンドストップフィルタを構成するキャパシタ、インダクタンスの少なくともいずれか一方を、前記DC−DCコンバータを構成するICチップ上に形成することも有効である。さらに、前記バンドストップフィルタは、パラレルLCフィルタ、シリーズLCフィルタのいずれか一方であることでよい。また、前記バンドストップフィルタは、DC−DCコンバータの出力キャパシタ、出力インダクタンスのいずれか一方をその一部として構成することも有効である。さらに、前記バンドストップフィルタは、受信周波数バンドと送信周波数バンドとの差の周波数域を共振周波数として持つ出力キャパシタであるとよい。
【0007】
これにより、送信周波数と受信周波数との差の周波数の周波数域に対応するバンドストップフィルタをDC−DCコンバータの出力部に設けるので、DC−DCコンバータから発生する上記周波数域のノイズを低減することができる。そうすると、送信回路のパワーアンプの送信出力時に発生する受信周波数バンドへのノイズが低減されるため、受信周波数バンドへのノイズによる悪影響を抑制することができる。また、このバンドストップフィルタはストップバンドが通常数十MHz〜数百MHzと比較的高周波であり、小型にできる。よって、バンドストップフィルタを回路基板に実装するに際し、その実装面積をほとんど増大させず、かつ低コストを可能とする。さらに、バンドストップフィルタは少なくともその一部をICチップ上に構成することもでき,この場合、回路基板の実装面積の増加は無視できるほどであり、かつ低コストを可能とする。また、出力キャパシタ、出力インダクタンスをバンドストップフィルタの一部として構成することもでき、回路基板の実装面積をほとんど増大させず、かつ低コストを可能とする。さらに、バンドストップフィルタの特性を持つ出力キャパシタを用いれば回路基板の実装面積を増加を無視できるほどであり、かつ低コストを可能とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本願発明者は、無線回路(送受信回路)、特に送信回路のパワーアンプに注目し、送信回路のパワーアンプに供給する電力源としてスイッチング方式のDC−DCコンバータを用い、どのようなノイズがどの部分に発生しているかを検討している。ここで、DC−DCコンバータはよく知られているものでよく例えば制御回路を含むICなどで構成され、これに出力インダクタンス(コイル)および出力キャパシタ(コンデンサ)など(ローパスフィルタを構成している)が接続される。
【0009】
図1はDC−DCコンバータを送信回路のパワーアンプに用いる場合の概念図である。図1は、スイッチング方式のDC−DCコンバータ1から送信回路のパワーアンプ2に電源ラインを介して電力を供給し、パワーアンプ2の入力部に入力信号として2GHzのサイン波(シングルトーン)Aを入力した場合において、パワーアンプ2の出力信号C及び電源ラインBのそれぞれの周波数スペクトラムを示す。DC−DCコンバータ1の電源ラインの周波数スペクトラムBはDC〜200MHzの帯域にわたってノイズを含んでいる。出力信号Cは入力信号A(パワーアンプのゲイン倍)に加えその両側に電源ラインに発生しているノイズ波形に対応するノイズが発生する。これは、パワーアンプ2のゲインが電源ラインに供給される供給電圧に依存する供給電圧依存性を持っているためにアップコンバートされ、入力信号Aは単一のサイン波(シングルトーン)にもかかわらず、出力信号Cには入力信号Aに加えその両側に電源ラインのノイズ波形に対応するノイズが発生するものと考えられる。例えばWCDMA方式で、送信バンドを1.97〜2.03GHz、受信バンドを2.12〜2.18GHzとすると、受信回路の受信信号を妨害するノイズは、送信回路のパワーアンプ2の送信出力から発生しているノイズであり、その発生元は電源ラインからのノイズであるとの知見を得た。
【0010】
そこで、本願本発明者は次のようにノイズの低減を図ることを見出している。図2は本発明の実施の形態を示すDC−DCコンバータを送信回路のパワーアンプに用いる場合の概念図である。図2において図1と同一のものには同一の符号を附す。図2は送信周波数バンドと受信周波数バンドとの差の周波数域のバンドストップフィルタ3を、DC−DCコンバータ1の出力部に接続する。この点が図1と相違する点である。バンドストップフィルタ3は特定の周波数を通過させない特性を持つものである。DC−DCコンバータ1からバンドストップフィルタ3を介して送信回路のパワーアンプ2に電力を供給し、このパワーアンプ2に入力信号Aとして2GHzのサイン波を入力する。バンドストップフィルタ3の入力部の周波数スペクトラムBは図1に示されたものと同じである。ここで、バンドストップフィルタ3について検討する。例えばWCDMA方式で、送信バンドを1.97〜2.03GHz、受信バンドを2.12〜2.18GHzとすると、受信周波数と送信周波数との差の周波数の周波数域は、2.12−2.03=0.09、あるいは2.18−1.97=0.21から、90MHz〜210MHzの周波数域である。この周波数域の中心とする周波数は150MHzとなる。そこで、この150MHzを中心とする周波数域のバンドストップフィルタ3をDC−DCコンバータ1の出力部に設けることによって、この周波数域のノイズを低減する。バンドストップフィルタ3の出力の周波数スペクトラムDはこの状態を示しており、周波数150MHzを中心とする周波数域のノイズは低減されている。そうすると、送信回路のパワーアンプ2の送信出力の周波数スペクトラムCにおいては、送信周波数±150MHz(この場合例えば2.15GHz)周辺の周波数のノイズが低減される。よって、送信出力による受信周波数バンドへのノイズの影響を抑制することができるのである。次に、本発明のバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータについて説明する。
【0011】
図3ないし図6は、本発明の実施形態の回路基板上に設置するDC−DCコンバータの出力部にバンドストップフィルタを設ける例を示す図である。
図3は本発明の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図であり、バンドストップフィルタ3としてのパラレルフィルタ31をDC−DCコンバータ1の出力部にシリーズ設ける例を示す。DC−DCコンバータ1の出力部にシリーズにパラレルフィルタ31を接続し、このパラレルフィルタ31を通してパワーアンプ2に電力を供給する。パラレルフィルタ31はチップキャパシタ(チップコンデンサ)C1と銅などの配線材6により回路基板1上に形成されるインダクタンスL1とがパラレルに接続されている。
図4は本発明の他の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図であり、バンドストップフィルタ3としてのシリーズフィルタ32をDC−DCコンバータ1の出力部と接地(GND)間に設ける例を示す。DC−DCコンバータ1の出力部と接地(GND)間にシリーズフィルタ32を接続し、出力部よりパワーアンプ2に電力を供給する。シリーズフィルタ32はチップキャパシタC2と銅などからなる配線材6により回路基板1上に形成されるインダクタンスL2とがシリーズに接続されている。
【0012】
図3、図4に示すバンドストップフィルタ3において、バンドストップフィルタ3の周波数域は送信周波数と受信周波数との差の周波数域の値に相当するものである。通信システム(例えばPDCシステム、GSMシステム、CDMAシステム、WCDMAシステム等)によっても、その差の周波数域は相違すると思われるが、おおよそ50〜500MHz程度と考えられるであろう。このような周波数であると、バンドストップフィルタ3はサイズも小さく作製することが可能であり、コストも安価にできる。例えば、この場合のインダクタンスLとキャパシタンスCとから成るバンドストップフィルタ3において、共振周波数を150MHzとすると、一例としてインダクタンスL=5nH,キャパシタンスC=225pFで構成することができる。従って、この程度のものであれば、回路基板上にインダクタンスのパターンを例えば銅などの配線材で形成し、回路基板上にチップキャパシタを追加するだけで容易に構成することが可能である。
図5は本発明のさらに他の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図である。出力インダクタンス4を利用してこの出力インダクタンス4にパラレルにチップキャパシタC3を接続してバンドストップフィルタ33を構成する。
【0013】
図6は本発明のまたさらに他の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図である。出力キャパシタ5を利用し、この出力キャパシタ5にシリーズに回路基板1上にインダクタンスL4のパターンを銅などの配線材で形成してバンドストップフィルタ34を構成する。
図7、図8はDC−DCコンバータを構成する半導体ICチップ上にバンドストップフィルタを形成するオンチップフィルタとして構成する回路例である。
図7は本発明の別の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの回路図であり、バンドストップフィルタとしてのパラレルフィルタ35を半導体ICチップ上に形成し、パラレルフィルタ35から出力インダクタンス4に接続するものである。
図8は本発明のさらに別の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの回路図であり、バンドストップフィルタ3としてのシリーズフィルタ36を半導体ICチップ上に形成し、シリーズフィルタ36の両端からローパスフィルタに接続するものである。前述したようにストップバンドフィルタの周波数域は数十MHz〜数百MHzと比較的高周波であるため、通常の半導体プロセスを用いてバンドストップフィルタ3のインダクタンスL、キャパシタCを共に半導体ICチップ上に作り込むことができる。また、これらのいずれか一方を半導体ICチップ上に形成し、他方を回路基板上に形成することもできる。例えば、キャパシタC7を半導体ICチップ上に形成し、インダクタンスLは回路基板上に例えば銅などの配線材を用いて形成することでもよく、ボンドワイヤの寄生インダクタンスを利用することでもよい。図9はこの場合の実施の形態を示す回路図であり、DC−DCコンバータ1を構成する半導体ICチップ上に形成したキャパシタC7を出力インダクタンス4(回路基板10上に形成)に接続するものである。
【0014】
さらに、図10は出力キャパシタの等価回路である。ここに示すように、DC−DCコンバータの出力部に設けられる出力キャパシタは、キャパシタンスCaに直列に等価直列抵抗Raが接続され、寄生インダクタンスからなる等価直列インダクタンスLaが直列に接続される。出力キャパシタはローパスフィルタの一部として、DC−DCコンバータの出力部と接地(GND)間に設けられるので、これらの値がバンドストップフィルタ3の性能、送信周波数バンドと受信周波数バンドとの差の周波数域、例えば上述した場合の共振周波数150MHzに合致していれば、そのままでもバンドストップフィルタとして適用することが可能である。実際にはそうなっていないであろうから、キャパシタの選定もしくは製造において、この等価直列インダクタンスLaをバンドストップフィルタ3の性能に合致するよう調整して製造したものを用いればよいことになる。この場合はバンドストップフィルタの電子部品を追加する必要がないので、基板の面積も増えず、コストもほとんど増えず有効である。また、この出力キャパシタの直列等価インダクタンスの値が小さい場合には、銅などの基板配線材でインダクタンスを回路基板上に追加し形成することでバンドストップフィルタを構成することが可能である。また、インダクタンスLはICのパッケージングで使用されるボンドワイヤで構成することも可能である。
以上において、DC−DCコンバータの出力部に設けるバンドストップフィルタを、インダクタンスLとキャパシタンスCとで構成する回路のものについて述べているが、バンドストップフィルタの回路構成はこれに限定されるものではなく、各種のものを用いることができる。
【0015】
【発明の効果】
この発明によれば、DC−DCコンバータの出力部に送受信回路の送信周波数バンドと受信周波数バンドの差の周波数域に対応するバンドストップフィルタを設けるので、DC−DCコンバータから発生する上記差の周波数域のノイズを低減することができる。これにより、送信回路のパワーアンプの送信出力による受信周波数バンドへのノイズの影響を抑制することができる。また、回路基板の実装面積をほとんど増大させず、低コストでDC−DCコンバータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DC−DCコンバータを送信回路のパワーアンプに用いる場合の概念図
【図2】本発明のDC−DCコンバータを送信回路のパワーアンプに用いる場合の概念図
【図3】本発明の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図
【図4】本発明の他の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図
【図5】本発明のさらに他の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図
【図6】本発明のまたさらに他の実施の形態を示すバンドストップフィルタを備えるDC−DCコンバータの模式図
【図7】本発明の別の実施の形態を示すDC−DCコンバータの回路図
【図8】本発明のさらに別の実施の形態を示すDC−DCコンバータの回路図
【図9】本発明のさらにさらに別の実施の形態を示すDC−DCコンバータの回路図
【図10】出力キャパシタンスの等価回路
【符号の説明】
1 DC−DCコンバータ
2 パワーアンプ
3,31,32,33,34,35,36,37 バンドストップフィルタ
4 出力インダクタンス
5 出力キャパシタ(出力コンデンサ)

Claims (6)

  1. 送受信回路に電力を供給するDC−DCコンバータの出力部に、前記回路の受信周波数と送信周波数との差の周波数の周波数域に対応するバンドストップフィルタを備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
  2. 送信回路のパワーアンプに電力を供給するDC−DCコンバータの出力部に、前記回路の受信周波数と送信周波数との差の周波数の周波数域に対応するバンドストップフィルタを備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
  3. 前記バンドストップフィルタを構成するキャパシタ、インダクタンスの少なくともいずれか一方を、前記DC−DCコンバータを構成するICチップ上に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のDC−DCコンバータ。
  4. 前記バンドストップフィルタは、パラレルLCフィルタ、シリーズLCフィルタのいずれか一方であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のDC−DCコンバータ。
  5. 前記バンドストップフィルタは、DC−DCコンバータの出力キャパシタ、出力インダクタンスのいずれか一方をその一部として構成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のDC−DCコンバータ。
  6. 前記バンドストップフィルタは、受信周波数バンドと送信周波数バンドとの差の周波数域を共振周波数として持つ出力キャパシタであることを特徴とする請求項1又は2に記載のDC−DCコンバータ。
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