JP4013552B2 - 密閉形圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍サイクルの冷媒として炭化水素系の冷媒を使用可能な密閉形圧縮機及びこれを有する冷凍サイクルを備えた冷蔵庫、空気調和機等の冷凍装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の、密閉容器内にローリングピストンを備えた圧縮機では、シリンダ室内を冷媒ガスを吸入する低圧室と圧縮する高圧室とに区分けするため、ローラ(ローリングピストン)の外周にベーンを当接させつつローラを回転させており、ベーンはローラに当接しながら往復運動を繰り返す。このような圧縮機では、密閉容器内の空間に、圧縮した冷媒ガスが一旦吐出される。この冷媒ガスは冷凍サイクルの凝縮温度における飽和圧力、すなわち吐出ガスの圧力に近い圧力に設定されている。
【0003】
一方、近年、地球温暖化を抑制することを目指し、分解され難くオゾン層を破壊することが指摘されているフロンを有する冷媒を使用しない冷凍サイクルおよびこれを用いた冷凍、冷蔵装置の開発が行われている。このような脱フロン化の候補として上げられている冷媒としては、プロパン(R290)やイソブタン(R600a)等の炭化水素系冷媒が挙げられている。
【0004】
これらの場合はその性質として可燃性を有しているので、多量の冷媒を使用すると暴発、爆発の危険性が高く、これを抑えるために機器の冷媒使用量をできるだけ小さくすることが望ましい。さらに、これらの冷媒は潤滑油の雰囲気圧力が高いほど油中に溶解する冷媒量も増加する性質を有していることから、潤滑油を貯溜する圧縮機の密閉容器内の圧力が一般的に高い(例えば、圧縮機の吐出ガス圧力と同程度の)圧力に設定される、ローラとベーンが別体となったローリングピストン型ロータリ圧縮機では、多くの冷媒を必要とすることになり、このような種類の冷媒を使用することに問題があった。
【0005】
このような圧縮機では、ベーンをローラに押し付けるためにベーンをローラ方向に付勢するバネのバネ力と、ベーンを収容する室に供給される容器内の高い圧力が掛かった潤滑油の圧力によって、圧縮機が高速回転してベーンの慣性力が大きくなった場合でも、シリンダ側からみてベーンの背面側に常に高圧が掛かっているため、ベーン先端がローラから離れるのを防止している。また、このような圧縮機では、ローラ内側が密閉容器内圧力と同程度の圧力となっている。この場合、冷媒を吸入して圧縮するローラ及びシリンダ内壁で吸入室と圧縮室とを形成する空間(作動室)の外からその作動室内への給油は、ローラ内側に供給された潤滑油(冷凍機油)がローラ内側と作動室との差圧により、ローラとその軸受部材の摺動部との隙間を通って漏れ込むことにより行われている。高い圧力が掛かっている密閉容器に貯留された潤滑油には、ベーン、シリンダ等の圧縮機構部を構成する部品の微小隙間から潤滑油がシリンダ内に流入し、シリンダ内の各部のシール及び潤滑を行う。
【0006】
もし、潤滑油への冷媒の溶解量を低減しようとして密閉容器内を低圧(圧縮機の吸入ガス圧力と同程度の圧力)とした場合には、ローラ内側が低圧となり、ローラ内側圧力がローラ外側である圧縮室内の圧力より低く(吸入室とほぼ同じに)なる。したがってこのような構成では、ローラ内側から圧縮室、吸入室への差圧によって油を十分に供給することが困難となる。
【0007】
密閉容器内の空間の圧力が冷媒の吐出圧力よりも小さい圧力に設定されたローリングピストン型ロータリ圧縮機の吸入室への給油の技術は、例えば、特開平6−213183号公報(従来技術)に記載されている。これは、片端が圧縮要素の吸入部分の内部に開口し、他端が密閉容器の底部に貯溜した油中に開口したオイルキャピラリチューブを設けている。本構成により、圧縮機の駆動に伴って吸入部分のキャピラリチューブ端部付近に発生する負圧によって、密閉容器内との圧力差が生じ、この差圧によりキャピラリチューブを通して吸入部分に油が供給されるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、冷凍負荷に対応して、圧縮機の回転数を変化させるシステムに適用することについては考慮されていなかった。以下にその理由を述べる。
【0009】
すなわち、圧縮機の回転数を変化させると、単位時間当たりの押しのけ量が変化し、吸入ガス冷媒の流速が変化する。この時、上記従来技術で利用する負圧は、吸入ガス冷媒の流速の2乗にほぼ比例すると考えられる。そして、キャピラリチューブを通して吸入部分に供給される油量も、吸入ガス冷媒の流速の2乗にほぼ比例することになる。
一方、圧力条件が同じなら、圧縮機の回転数に関わらず、次に挙げる単位時間当たりの圧力差、作動室からの漏れに関係する吸入室と圧縮室との圧力差、吸入室と密閉容器との圧力差および圧縮室と密閉容器との圧力差、は同じであるから、作動室の摺動部隙間をシールするための潤滑油の単位時間当りの供給量は、圧縮機の回転数に関わらずほぼ一定で十分である。
【0010】
また、圧縮機が用いられる実際の冷凍サイクルを考慮すると、圧縮機の回転数の増加に伴って冷凍サイクルの冷凍能力が増加するので、凝縮温度と蒸発温度の温度差が増加する。このことから、圧縮機の吐出圧力と吸入圧力の圧力差も増加するので、作動室の圧力と密閉容器内の空間の圧力との差による漏れ量は増大する方向にあるが、圧縮機の回転数の増加に伴う冷媒循環量の増加により絶対的な漏れ量は小さく、冷媒循環量に対する相対的な漏れ量の影響は小さい。
つまり、実際の冷凍サイクルに適用する場合を考慮しても、圧縮機の回転数の変動に対して作動室の摺動部分をシールするために必要な潤滑油の単位時間当たりの供給量は、大きく変化しないと考えられる。
【0011】
したがって、上記従来技術では、圧縮機の回転数の増減に伴って供給される潤滑油の量の変動が大きくなり、圧縮機の性能や信頼性を損なっていたという問題については、考慮されていなかった。このため、上記従来技術では、圧縮室内側への給油を回転数に応じて適切に調節する点については考慮されていない。
例えば、給油量を圧縮機のある回転数に合わせると、それよりも低速の回転時は給油量の不足、高速の回転時は給油量の過大となる。低速の回転数側に合わせて潤滑油の供給量が設定されると、回転数が増大するつれて潤滑油の供給量が多くなり過ぎてしまう。高速の回転数側に合わせて潤滑有の供給量が設定された場合には、低速の回転域での供給量が低くなりすぎてしまう。
給油量の不足は作動室がシール不足となりガス冷媒の漏れ量を増大させ、圧縮機の体積効率を低下させるとともに、摺動部の直接接触による摩擦、摩耗が生じ圧縮機の信頼性を低下させてしまう。給油量の過大は吸入ガスより温度の高い油により、吸入ガスが加熱され比容積が増大し、体積効率を低下させることになる。
【0012】
また、上記のように、密閉容器内が高圧に保たれた圧縮機でのシリンダ内壁とローラ及びベーンとで構成される作動室への給油は、ローラ内側の油がローラ内側と作動室との差圧により、ローラ摺動部の隙間を通って漏れ込むことで行われている。このため、作動室への給油量は運転条件により決定される高圧と作動室圧力との差圧、または摺動部の隙間寸法により変化する。さらに、摺動部の隙間寸法の下限が部品の表面粗さや機械加工精度等の制約により規制されることから、性能上最適となる必要最小限の油量に制御することは不可能であった。
【0013】
そのために、上記の部材の摩擦、摩耗を防止しようとすると圧縮室内を密封するのに必要な油量より過度に多量の油が供給されることになり、作動室内に漏れ込んだ多量の油量により吸入ガスが加熱され比容積が増大し、体積効率を低下させたり、多量の高温の油により圧縮過程のガス冷媒が加熱され、全断熱効率を低下させたりするという問題があった。
【0014】
また、密閉容器内をより低い圧力にすると、作動室内をシール及び摺動面への給油をするための漏れ経路のシール距離を大きくすることが必要となり、装置の大型化につながるとともに、差圧による潤滑油の隙間からの流入が十分に行われず、シリンダ摺動面の信頼性確保が困難となる問題があった。
【0015】
本発明の目的は、炭化水素系の冷媒を使用可能な信頼性の高い密閉形圧縮機あるいは冷凍装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、
密閉容器と、
この密閉容器内に収納される電動機部及びシリンダと、
前記密閉容器を貫通して前記シリンダに連結され内部を通過する冷媒を前記シリンダに吸入させる吸入管と、
前記シリンダ内に配置され前記冷媒を圧縮するピストンと、
前記シリンダから前記密閉容器を貫通して前記シリンダ内から、圧縮された前記冷媒を吐出させる吐出管と、
前記密閉容器内の圧力を前記吸入管内に逃がして前記密閉容器内の圧力を調整する調節手段であって、ばねの力によって前記吸入管内から前記密閉容器内に向かって閉じる方向に付勢され、前記ばねの力に抗して前記密閉容器内から前記吸入管内に向かって開くことができる調節手段と、を有し、
前記密閉容器内の圧力と前記シリンダと前記ピストンから形成される作動室内の圧力との圧力差により、前記シリンダと前記ピストンとの間を通して前記作動室内に潤滑油を供給する密閉形圧縮機
により達成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1乃至16を参照して説明する。
〔実施例1〕
図1に示すのは、冷凍サイクルに用いられる横置型圧縮機110であり、その密閉容器6内に圧縮機構部と電動機部とを備えている。本実施の例では、圧縮機は1シリンダであり、そのシリンダ1内に回転するピストン8により、冷凍サイクルの作動流体である冷媒を圧縮するものである。
【0019】
この圧縮機の電動機部は、密閉容器6内に焼き嵌め等で固定された固定子7と、駆動軸4に装着されて固定子7の内側を回転する回転子5とを備えている。
【0020】
また、圧縮機構部は、上記の電動機部の駆動軸4と連結されており、この駆動軸4の回転によってシリンダ1内に配置されたピストン(ローラ)8がシリンダ内周面1aに沿って回転、往復駆動される。本実施例では、略円筒形に形成されたシリンダ1の内側のピストン8は、ピストンの略円筒形状のローラ部8aと、そのローラ部8aの円筒面からローラ部8aと一体に形成され延材する板状のピストンのベーン部8bを備えている。ローラ部8aはその内周側が、駆動軸4上のシリンダ1に対応する部分に設けられた偏心部4aに嵌入されている。そして、ローラ部8aが駆動軸4の偏心部4a周りに回転可能に構成されている。
【0021】
図2に示すように、シリンダ1の円筒状の内周面1aの外側には、この円筒の中心軸と略平行な中心軸を持つ円筒状の孔部1bが、一部を連通して設けられている。さらに、孔部1bのシリンダ1の中心軸の反対側(さらに外側)には、同様に孔部1bと連通されて円筒状に設けられた孔部1cがある。ベーン部8bは孔部1bと孔部1cとが連なって形成された空間に挿入され収納されており、孔部1bにはベーン部8bの板状の平面部と孔部1bの内面とに摺動可能に当接する滑動部材9が、ベーン部8bを挟み込んで組み込まれている。
【0022】
シリンダ1の両側には主軸受2、副軸受3といった駆動軸を受ける軸受部材がシリンダ1の外周部材と連結されて配置されており、シリンダ1内を貫通する駆動軸4を軸受部2a,3aとが支持する。このために、駆動軸4の中心軸とシリンダ1の円筒状の内周面1aの中心軸とが一致するように設けられる。
【0023】
以上の構成により、ピストン8は、電動機部の回転子5の回転により駆動軸4の回転に伴ってシリンダ1内を回転駆動され、内周面1aとピストン8とが摺動して(あるいは微小隙間を維持して回転しつつ相対運動する。また、上記のように、べーン部8bは、シリンダ1と連通して設けられた孔部1bと孔部1cの内部に配置されており、駆動軸4の回転に伴うピストン8の運動によって、偏心部4aの中心軸方向に対する往復運動を行う。この往復動の際、滑動部材9はベーン部8bの往復動作とともに回転動作に対してもこれに合わせてベーン部8bを支持する。これらの運動によって、ピストン8はシリンダ1の内周面1a周りの回転運動しつつ往復動する揺動を行うものである。
【0024】
ベーン部8bと孔部1b,1c、すなわちこれらベーン部8bが往復、回転動作する空間であるベーン室との間のシールは、滑動部材9が挿入され、孔部1bとベーン部8bとの間を占有することで保たれる。これにより、シリンダ1、ピストン8、主軸受2、副軸受3、滑動部材9とにより、密閉空間である圧縮室10と冷媒の吸入空間である吸入室11とが形成され、駆動軸4の回転に伴ってこれらの容積の増減が繰り返される。
【0025】
冷凍サイクル内部の冷媒は、密閉容器6を貫通した吸入管12より密閉容器6内に吸い込まれている。この吸入管12は密閉容器6の外から内側の圧縮機構部へ接続され、容器外部の冷媒管を連結されている。吸入通路13を経由して、吸入室11に入った後圧縮される。圧縮された冷媒は、副軸受3に形成された吐出ポート3bからこの軸受に形成された図示していない吐出弁を通り、副軸受3と吐出カバー14によって形成された吐出室3cに吐出される。その後、密閉容器6を貫通した吐出管15から密閉容器6外へ吐出される。
【0026】
そして、これらの冷媒の吸入、吐出は、ピストン8の揺動にともなって行われる。すなわち、冷媒の吸い込みは、ピストン8が駆動軸4の周りに1回転(揺動)して吸入室11の容積が増大しつつ行われる。次に、ピストン8が駆動軸4周りに回転(揺動)することで、ピストン8の外周とシリンダの円筒内周1aと、主軸受2、副軸受3と滑動部材9とで区画される密閉空間は、その容積が減少するので、この空間内の冷媒が圧縮される圧縮室10となる。圧縮室10の容積の減少により、室内の冷媒が圧縮されて吐出ポート3bから吐出される。
【0027】
本実施例では、ピストン8のローラ部8aとベーン部8bとが一体で形成されピストン8が揺動する。ローラ部とベーン部とが別体で形成された場合には、ベーン部を高圧でローラ部に押しつけて圧縮室のシールを確保する必要があるため、容器内の圧力をより高くして潤滑油溜り16内の潤滑油を高圧でベーン室に供給する等が従来より行われてきた。一方、上記のように構成した本実施例ではその必要が無く、圧縮機の密閉容器6内を相対的に低い圧力にすることができる。
【0028】
吐出室3cは流路断面積が変化することにより消音器として働くとともに、流路の方向変換により油とガス冷媒を分離する油分離器としても働く。吐出室に金網またはスチールウール等を入れて油滴をより捕捉しやすくしてもよい。分離され吐出室内の凹部に溜まった油は、キャピラリ60を介して密閉容器底部に戻される。
【0029】
本実施例での潤滑油の給油の構成について説明する。
【0030】
本実施例では、圧縮機構や駆動軸への給油はベーン8bの運動によって、潤滑油に圧力を印加することにより行われている。上記のように、ベーン部8bの先端は孔部1c内で運動し、ピストン8の揺動運動とベーン8bとが干渉しないように構成されている。
【0031】
孔部1cは、密閉容器6内の潤滑油溜り16に浸漬され、孔1cが油面の下に位置している。この孔部1cは、一方が油吸込口17及び吸い込まれた油が孔1c側に向かう油通路に連通している。また、他方側は、油吐出口18及び吐出される油が通る油通路と連通している。ベーン8bの運動により、吸込口17から孔部1cの方向に潤滑油16が吸い込まれる。また、孔部1c内の潤滑油が、油通路を経て吐出口18から給油パイプ19の方向に押し出される。このとき、吸込口17と吐出口18とは、それぞれが、潤滑油溜り16から孔部1cの方向、孔部1cから給油パイプ19の方向に、通路面積が小さくなるように形成され、所謂、流体ダイオードの働きをする。
【0032】
このため、ベーン8bの運動で孔部1c内の潤滑油は潤滑油溜り16方向に流れにくく形成され、潤滑油が給油パイプ19方向に流れやすく形成されている。潤滑油は、給油パイプ19から駆動軸4の軸端側に流入する。次に、副軸受3により軸支された駆動軸4の部分に形成された螺旋溝20aから、ピストンローラ部8a内の軸受部(偏心部)に流入する。さらに、駆動軸4の表面の主軸受2により軸支された部分に形成された螺旋溝20bに流入する。
【0033】
また、ローラ8bの内側に流入した潤滑油は軸4及びローラ8a内の軸受部の表面を潤滑して電動機部側に流れる。こうして、駆動軸4とピストン8、シリンダ1の回転部分に潤滑油が供給される。次に、螺旋溝20bに供給された潤滑油は、主軸受2側の溝20bの端部から、密閉容器6内に流出して、電動機部の回転子5、固定子7を冷却し潤滑油溜り16に戻る。
【0034】
また、シリンダ1内の冷媒のガスがピストン8とシリンダ1とのすき間からピストンローラ部8aの内側に流入して、ピストンのローラ部8aと偏心部4aとの摺動面に流入する場合が有る。この際、摺動面に気体があるとローラ8aと駆動軸4とのかじりが生じやすくなるので、ガスを逃す必要が生じる。本実施例では、駆動軸4内に偏心部4aから駆動軸4の端部まで連通するガス抜き穴4b、4cを形成した。摺動面上の潤滑油と冷媒ガスとは、駆動軸4の回転の遠心力により、比重が相対的に小さい冷媒ガスと大きな潤滑油とに分離され、冷媒ガスが駆動軸4の内部側に流入し、ガス抜き穴を通って密閉容器6内に流出される。
【0035】
また、上記ガス抜き穴からの冷媒ガスの他に、圧縮室を構成する部品間の隙間を通って漏れ出たガス冷媒により、密閉容器6内の圧力は吸入管12内の圧力より上昇する。
【0036】
次に、本実施例における作動室内への給油について説明する。本実施例では、吸入管12内の圧力と密閉容器6内の圧力とに所定の大きさの差を生じさせる手段を設けている。すなわち、本実施例では、シリンダ内側壁とピストン(ローラ及びベーン)とで構成される作動室の吸込圧力と容器内の空間の圧力とに差を生じさせる手段を備えている。
【0037】
図3は、本発明に係る吸入管内圧力と密閉容器内圧力の間に差を生じさせる手段としての差圧弁の構造図である。この図において、バルブ51は吐出カバー14に設けられた開口を閉塞するように配置されたバルブである。このバルブ51は、副軸受3内に設けられ、上記開口部と連通したバルブ室50内に設けられている。また、バルブ51は、バルブ室50内のリテーナ54で位置決めされたコイルばね52により開口を閉塞する方向に押圧力が印加されている。
【0038】
また、バルブ室50と吸入管12内とを連通するように連通路53が形成されている。バルブ室50は連通路よりも冷媒流れ方向についての断面積が大きくなるように設けられており、吸入管12内の冷媒の流れ速度の影響を低減するように構成されている。
コイルばね52による押圧力は図に示すようにFk+Fs(Fk:ばね力、Fs:バルブ室50内のガスによりバルブ51にかかる力)の大きさであり、吐出カバー14とバルブ室50とを連通する通路の開口部(面積A)に密閉容器6内の圧力Piにより作用する力Fgが、Fk+Fsより大きくならないとバルブ51は閉じられたままである。Fg>Fk+Fsとなると、バルブ51が押し開かれ、密閉容器6内とバルブ室50内とが連通し、よって吸入管12と密閉容器6内とが連通する。
【0039】
密閉容器6内の圧力が所定の値Piを越えようとすると、バルブ51が開き圧力の低い吸入管12内と連通し、容器内の圧力を再度Piとすることができる。このようにして、本実施例の圧縮機は、密閉容器6内の圧力と吸入管12内の圧力との間に圧力の差を設定し、密閉容器内の圧力を吸入管内の圧力(吸入ガスの圧力)よりも高く吐出管内の圧力(吐出ガスの圧力)よりも低い圧力に調節するものである。
【0040】
図4は差圧弁の別の構造を示す断面図である。この図は、図3に示した圧力差を形成するための手段の変形例であり、図3に示す例が、コイルバネ52とバルブ51とを用いたものであるのに対し、図4に示す例は、板バネ51’を用いたものである。図4の例でも、板バネにより、板バネ51’にはFk+Fsの押圧力が印加されており、容器6内の圧力Piによる力Fg>Fk+Fsとなった際に、板バネがバルブ室50側に押し開けられ、密閉容器6内とバルブ室50、及び連通路53を介して吸入管12内とが連通する。
【0041】
このように、本実施例では、密閉容器内圧力は上記弁手段の作用により、吸入管内圧力から所定の値だけ高い中間の圧力になっている。
【0042】
上記の実施例では、バルブ室50と容器6内とを連結して通路を形成し、バルブ室50内と容器内との間のガスの流れを調節する手段を設けている。これらの手段として、バルブ室50内で動作するバルブ51,51’を設けたものである。また、圧力の差の大きさは、例えばバルブを付勢するバネ52や板バネ51’の強さ、剛性や、吐出カバー14に形成されたバルブ室50内と容器6内の空間とを連通する上記通路の面積Aによって任意の大きさに調節することができる。また、容器内の空間から吸入管に至るガス冷媒が流れる経路の形状も、経路上にガスを貯められる中間の室を設ける、流れ方向について断面積を変化させる等、適宜選択することにより、装置に求められる仕様、圧力等に応じることができる。
【0043】
図5にローラ内側の油がローラ摺動部の隙間を通って作動室に漏れ込むときの、その供給量に関わる密閉容器圧力と作動室との圧力差を示す。ロータリ圧縮機は、ある瞬間に吸入されるガスに注目すると、クランク1回転で吸入行程を行ない、残りの1回転で圧縮行程及び吐出行程を行なう。クランクの回転角360°を圧縮行程開始(吸入行程完了)のクランク回転角度とすると、回転角0°は吸入行程開始、回転角720°は吐出行程完了を示す。
【0044】
実線は吸入室及び圧縮室の圧力、破線は密閉容器圧力、斜線部はその圧力差を示す。ここでの条件は、冷媒R134a、吸入圧力101kPa、吐出圧力837kPaの冷蔵庫用圧縮機の条件である。本実施例の図5(a)では例えば、中間圧となる密閉容器圧力は吸入圧力に対して約100kPa高い差圧を形成するように差圧弁が設定されている。高圧密閉容器となる従来例の図5(b)は、図5(a)に比べて差圧を示す斜線部の面積が大きくなる。高圧密閉容器では過度に多量の油が供給されて、圧縮機性能(体積効率,全断熱効率)を低下させていた。本実施例では差圧を適正に設定することにより、性能上好適な油量に調節することが可能である。
【0045】
上記の通り、吸入圧力と密閉容器内圧力とを装置の仕様に応じて設定される任意の差に保ち、圧縮機の回転数の変動による、作動室への給油量の変化を低減し、ガス冷媒とともに圧縮室から吐出される油量も、圧縮機回転数の変化による変動も押さえられる。したがって、油分離器として働く吐出室3cで分離すべき油も、圧縮機回転数によらず、単位時間当たりほぼ一定となる。
【0046】
ところで、実際の冷蔵庫は、一般に庫内温度をできるだけ一定に保つように運転され、周囲温度も室温であることから、運転中の圧縮機の圧力条件が大きく変わることは少ない。よって、吐出室3cで分離された油を密閉容器6底部に戻すキャピラリ60両端の吐出室3c内と密閉容器6内の圧力差も大きく変化することもないことから、本実施例のキャピラリ60の絞り量を適正に設定することにより、圧縮機の回転数等の運転条件によらず、作動室へ供給された油量とほぼ同等の油量を密閉容器6底部に戻すことが可能となる。したがって、作動室への油の供給量と密閉容器の底部への油の戻り量とのアンバランスにより、密閉容器の底部に貯溜する油が不足してしまい、摺動部の給油量不足によるかじり、損傷等に起因して圧縮機、冷蔵庫の信頼性が損なわれてしまうことが低減される。
【0047】
このように、吸入圧力と密閉容器内の圧力とを所定の値の差に保つことにより、圧縮機回転数の変化に伴う、作動室に供給される単位時間当たりの給油の量の変動を好適な状態にでき、さらには、給油量を低減し必要最小に近づけることができるので、従来は過度に潤滑油が供給されていたにことより生じていた性能や信頼性の低下を抑制できる。
【0048】
また、作動室への給油量の変動を抑えることにより、ガス冷媒とともに圧縮室から吐出される油の単位時間あたりの変動も低減される。そのため、油分離器からの単位時間当たりの油戻し量の変動も低減され、油戻しのための絞りの設計が容易となる。
【0049】
また、密閉容器内圧力を吸入圧力に所定の差圧を加えた圧力としたため、潤滑油への冷媒の溶解量を低減することができるため、炭化水素系冷媒を使用した冷凍サイクルにおいて好適となる。
〔実施例 2〕
次に、本発明のさらに別の実施例について、図6、図7を用いて説明する。本実施例は、冷凍サイクルの情報に基づいて差圧弁の調節を行ない、冷凍サイクルの運転条件に最適な密閉容器内圧力を形成することを目的としている。圧縮機の基本的な構造は第1の実施例に示した図1、図2と同じため、同等部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0050】
図6において、圧縮機110aは吸入管12内と密閉容器6内の圧力差を調節するための圧力調整弁70及び圧力調整管71を備え、圧力調整弁70が開く時は吸入管12と密閉容器6を連通させ、弁70が閉じる時は吸入管12と密閉容器6を閉塞する。
【0051】
圧縮され吐出したガス冷媒に含まれる油の分離は、実施例1と異なり、油分離器73で行われる。油分離器73は、流入管73a、ガス流出管73b、油流出管73cとが取り付けられた容器を有し、流入管73aより流入したガス冷媒を容器内に旋回させ、密度差により油をガスから分離する。ガス冷媒はガス流出管73bより流出し、油は容器内に所定量溜まるとフロート75の作用によりニードル弁74が開き、油流出口73cより流出し、圧縮機の密閉容器6に取り付けられた油戻り管72を介して、密閉容器6内に戻る。
【0052】
冷房と暖房運転を切替える四方弁76、室外熱交換器77、室内熱交換器78、膨張弁79及び、接続配管80a、80bは、冷房及び暖房運転の冷凍サイクルを構成するように接続されている。ファン81、82はそれぞれ室外及び室内ファンである。
【0053】
図7は図6の冷凍サイクルを用いた空調機の概略を示す図である。建物150の内側に室内ユニット112が設置され、外側に室外ユニット113が設置されている。室内ユニット112には、熱交換器78、ファン82等が内蔵されている。また、室外ユニット113には、圧縮機110a、熱交換器77、ファン81等が内蔵されている。
【0054】
室温センサ120、室内熱交換器温度センサ121、外気温センサ122、室外熱交換器温度センサ123、圧縮機表面温度センサ124及び、密閉容器内圧力センサ125は、各部の温度、圧力を検知する。また、室内側制御装置130a、室外側制御装置130b及び、ファン及び圧縮機の回転数を制御して駆動する回転数制御装置であるインバータ131、132,133は、それぞれ対応する各部の制御を行う。
【0055】
制御装置130a、130bはリモコン140からの設定室温、設定風量の指令を検知し、室温センサ120との偏差等に基づいて、弁76、79、インバータ131〜133に指令を与える。
【0056】
圧縮機運転時の吸入圧力は熱交換器77、78のうち、蒸発器となる熱交換器の温度センサの温度を冷媒の飽和温度と仮定し、それに対応する飽和圧力を求め、そこから熱交換器から圧縮機吸入管までの配管の圧力損失を差し引くことにより求まる。また、吐出圧力は熱交換器77、78のうち、凝縮器となる熱交換器の温度センサを冷媒の飽和温度と仮定し、それに対応する飽和圧力を求め、そこに圧縮機吐出管から熱交換器までの配管の圧力損失を加えることにより求まる。配管の圧力損失は、ガス密度、流速等に関係するため、飽和圧力、圧縮機回転数等の関数としてもよい。これらの計算は制御装置にて行なわれる。
【0057】
ところで、インバータ駆動式の空調機は室内外の空気の温度差に関係する熱負荷に対応して運転されるため、庫内温度と周囲温度との変動が小さい冷蔵庫の場合と比較して、圧縮機の吐出圧力と吸入圧力は大きく変化する。したがって、吐出圧力と吸入圧力の圧力差に関係する作動室の漏れを封じるための必要な油量は運転条件により大きく変動する。作動室の密封保持のための油は、ローラ内側が密閉容器内圧力とほぼ等しいため、ローラ内側の油がローラ内側と作動室との差圧により、ローラ摺動部の隙間を通って漏れ込むことにより行われている。
【0058】
本実施例では、よって、運転条件に対応して密閉容器内圧力を適切に調節することにより、性能上好ましい量の給油を行うことが可能である。また、あらかじめ、例えば、設定すべき「密閉容器内圧力と吸入圧力との圧力差」を「吐出圧力と吸入圧力との圧力差」及び「圧縮機回転数」の関数あるいはデータとして記憶しておき、制御装置130a、130bは、前述のように熱交換器温度センサ121、123の検出値等から算出された吸入圧力、吐出圧力及び圧縮機の回転数に基づいて、圧力調節手段である圧力調整弁70に指令を発して動作を調節し、所望の密閉容器内の圧力(圧力センサ125で検知)になるようにする。
【0059】
これらの記憶手段は制御装置130a,130b内に取り付け、取り外し、交換可能に設けられて、異なる条件、機種に対応した記憶手段、制御装置を用いることができるようにしても良い。また、記憶させるデータは各データの組合せとして記憶させても、上記関数として記憶させ、検出した所定のデータを用いて制御装置内で圧力調整手段の動作量を演算してこれを指令しても良い。
【0060】
以上の構成、作用により、運転条件により異なる作動室への給油量を適切に調節して供給することができ、圧縮機の回転数の変動による給油量の変動を低減し、過度の給油による性能の低下や給油量の不足による信頼性の低下が抑制される。
〔実施例 3〕
次に、本発明の別の実施例を図8、図9、図10及び図1,2を参照して説明する。
【0061】
本実施例は、第1の実施例の図3、図4に示す差圧弁に代えて、圧縮機の1回転中の一定区間に圧縮要素の圧縮室と密閉容器内とを連通する孔を設けたことを特徴とする。圧縮機の基本的な構造は第1の実施例に示した図1、図2と同じため、その説明は省略する。
【0062】
スクロール圧縮機では、圧縮機部と密閉容器内を通じる開孔を設けることにより、密閉容器内を吸入圧力と吐出圧力の中間圧力とする例が、特開昭55−107093号公報に開示されているが、本実施例のロータリ圧縮機とは目的及び作用が異なる。前記公報のスクロール圧縮機では、密閉容器内圧力を中間圧力にすることにより、旋回スクロール部材に作用する軸方向力と逆向きの押し付け力を作用させている。また、前記公報のスクロール圧縮機では、密閉容器の底部と吸入管を毛細管で接続し、密閉容器内圧力(中間圧力)と吸入圧力との差圧により、吸入管から圧縮機部に給油する。一方、本実施例のロータリ圧縮機では、ローラ摺動部隙間を通って作動室に給油が行なわれる。
【0063】
図8において、孔100は圧縮要素の主軸受側の端板に開けられ、密閉容器内空間と連通する孔である。孔100は回転角540°(180°)とその近傍の回転角にて圧縮室と連通し、その他の区間ではローラ端面により塞がれ閉塞される。この孔100は冷媒ガスの吐出ポートとは別に設けられ、圧縮行程の任意のタイミング、時間だけシリンダ内の作動室内と密閉容器内の空間とを連通することができるものである。
【0064】
圧縮室圧力Pcは吸入圧力Psの(Vc/Vs)κ倍(Vs:押除容積、Vs:圧縮室容積、κ:断熱指数)となり、例えばR134aの場合、冷蔵庫の圧縮機吸入圧力を101kPaとすると、回転角540°の圧縮室圧力は約230kPaとなる(図5参照)。したがって、回転角540°とその近傍の回転角のみで、圧縮室内と密閉容器内空間を連通させることにより、回転角540°とその近傍の回転角での圧縮室圧力と密閉容器内圧力に差圧が生じた場合には、連通孔100を介してガスが行き来し、定常状態では密閉容器内圧力を吸入圧力より約130kPa高い圧力に保持できる。これにより、実施例1と同様、差圧による作動室内への給油が可能となる。
【0065】
図9、図10を参照して、連通孔100の配置位置について説明する。ここでは、回転角495°〜585°の範囲で圧縮室と密閉容器内空間を連通する場合について述べる。図9(a)における斜線部は、回転角0°〜360°の範囲で形成される吸入室(吸入行程)、及び回転角360°〜495°の範囲で形成される圧縮室(圧縮、吐出行程)の領域を示す。この領域は、シリンダ内周、(ピストンローラ部外半径−偏心量)を半径とする円(破線で示す円周部分)、回転角495°でのピストンローラ部外周、及びピストンのその他の軌跡で囲まれた領域からなる。図9(b)における斜線部は、回転角495°〜585°の範囲で形成される圧縮室の領域を示す。この領域は、シリンダ内周、回転角495°でのピストンローラ部外周、(ピストンローラ部外半径−偏心量)を半径とする円(破線で示す円周部分)、及び、ベーン部等で囲まれた領域からなる。また、図9(c)における斜線部は、回転角585°〜720°(0°)の範囲で形成される圧縮室の領域を示す。この領域は、シリンダ内周、回転角585°でのピストンローラ部外周、ベーン部等で囲まれた領域からなる。
【0066】
回転角495°〜585°の区間のみで、圧縮室と密閉容器内空間を連通するには、図9(b)の斜線部のうち、(a)及び(c)の斜線部と交わらない部分の主軸受側端板部に連通孔を設ければ良い。その領域を図10に斜線で示す。
【0067】
この領域は、(ピストンローラ部外半径−偏心量)を半径とする円(破線で示す円周部分)、回転角495°〜540°のローラ・ベーン接続部の軌跡、回転角495°でのピストンローラ部外周等で囲まれた領域からなる。(ピストンローラ部外半径−偏心量)を半径とする円の内側に相当する主軸受側端板部は常に圧縮室とは連通しないので、この部分を含む斜線部に連通孔100を図に示すように設けてもよい。また、孔100の形状は、図3,4と同様に、求められる仕様、圧力の大きさに対応できるように任意に長さ、断面積等の形状を持たせるようにする。
【0068】
本実施例では、圧縮行程で圧力が上昇する圧縮行程の側で、所定の時間、回転角の間のみ圧縮室と容器内とを連通する通路の開口をシリンダの内側の壁面上に設けることで、容器内圧力を任意の大きさだけ吸入圧力よりも高く、あるいは吐出圧力よりも低く設定することができる。同様な構成により、冷媒の吸入から圧縮、吐出に至るまでの行程での、ピストンローラの任意の位置、間隔において、作動室内と密閉容器内の空間とを連通して冷媒ガスを通流させることで、吸入から吐出までの任意の圧力に密閉容器内を設定することができる。これにより、吸入圧力、吐出圧力から所望の圧力差を生じさせて、作動室内へ潤滑油を供給する量を適切に調節することが可能となる。
【0069】
本実施例では、圧縮機の密閉容器内圧力を中間の圧力に保つための機構として、主軸受端板に連通孔を設けたため、実施例1の差圧弁に比べ、低コスト化が図れる。
〔実施例 4〕
次に、本発明のさらに別の実施例について、図11を参照して説明する。
【0070】
図11は本発明の第4の実施例に係る圧縮機の縦断面図であり、圧縮機はローリングピストン型2シリンダロータリ圧縮機である。実施例3までの実施例では、ローリングピストンを使用した圧縮機はローラ部とベーン部とが一体である構成であったが、これらの実施例と本実施例との相違は、シリンダ内のピストンをローラ部とベーン部とが別の部品で構成された点である。
【0071】
図11に示すのは、冷凍サイクルに用いられる横置型圧縮機110bであり、その密閉容器6内に圧縮機構部と電動機部とを備えている。本実施の例では、圧縮機は2シリンダであり、そのシリンダ22a,22b内に回転するローラピストン27a,bにより、冷凍サイクルの冷媒を圧縮するものである。圧縮機構部は、電動機部の駆動軸4と連結されており、この駆動軸4の回転によってシリンダ内に配置されたピストン(ローラ)27a,bがシリンダ内周面22c,dに沿って回転、往復駆動される点は、上記実施例と同様である。
【0072】
また、本実施例でも、ローラ部27a,bはその内周側が、駆動軸4上のシリンダに対応する部分に設けられた偏心部26a,bに嵌入されている。そして、ローラ部27a,bが駆動軸4の偏心部4a周りに回転可能に構成されている。
【0073】
図11に示すように、ベーン部28a,bはシリンダ22a,bの外側にこれと連通して設けられたベーン室に収納されて組み込まれ、ローラピストン27a,bとは反対の側から各々バネ29a,bにより付勢されてローラに押しつけられている。また、上記実施例と同様に、シリンダの両側には主軸受24、および副軸受25といった駆動軸を受ける軸受部材がシリンダの外周部材と連結されて配置されており、シリンダ22a,b内を貫通する駆動軸26を軸受部24a,25aとが支持する。このために、駆動軸26の中心軸とシリンダ22a,bの円筒状の内周面22c,dの中心軸とが一致するように設けられ、駆動軸4の回転に伴ってシリンダ1内を回転駆動されるピストン27a,bが内周面と摺動して(あるいは微小隙間を維持して)回転しつつ相対運動するとともに、べーン部28a,bはシリンダと連通して設けられたローラの半径方向(駆動軸26方向)にローラに押しつけられた状態を維持して往復運動を行う。この往復動の際にベーンはローラに押しつけられている接触面でローラの半径方向の移動に対して摺動する。これらの構成により、密閉空間である圧縮室と冷媒の吸入空間である吸入室とが形成され、駆動軸の回転に伴ってこれらの容積の増減が繰り返される。
【0074】
本実施例の構成において、圧縮機を備えた冷凍サイクルを循環する冷媒は、密閉容器6を貫通した吸入管12より密閉容器6内に吸い込まれ、吸入通路を経由してシリンダ22a,22bの吸入室に入った後に圧縮される。圧縮された冷媒は、副軸受25に形成された吐出ポート30a,bからこの軸受に形成された吐出弁を通り、副軸受25と吐出カバー31a,bによって形成された吐出室32a,bに吐出される。吐出室32aに吐出された冷媒ガスは32a,bを連通する通路を通って吐出室32bに流出して、その後、密閉容器6を貫通した吐出管15から密閉容器6外へ吐出される。吐出室32bの吐出管15の下方には、吐出冷媒ガス中に含まれた潤滑油が溜る空間が設けられており、この空間に溜った潤滑油は吐出室32bの下部に設けられた開口と連通したキャピラリ60を介して、潤滑油溜り16に流出される。
【0075】
本実施例での潤滑油の給油の構成についても上記実施例と同様に行われ、ベーン28a,bの往復動作によってベーン室内に油吸込口33から吸い込まれた潤滑油に圧力を印加して、通路19を介し駆動軸26の先端に供給される。このとき、吸込口33は、孔部1cから給油パイプ19の方向に、通路面積が小さくなるように形成され、所謂、流体ダイオードの働きをする。また、駆動軸26の部分に形成された螺旋溝20により、ピストンローラ部内の軸受部(偏心部)及び副軸受24,25の軸受部に潤滑油を供給するとともに、軸内に設けられた通路により偏心部の軸受部に生じたガスを電動機部側に流出させる点も上記の実施例と同様である。
【0076】
また、上記ガス抜き穴からの冷媒ガスの他に、圧縮室を構成する部品間の隙間を通って漏れ出たガス冷媒により、密閉容器6内の圧力は吸入管12内の圧力より上昇する。本実施例も、吸入管12内の圧力と密閉容器6内の圧力とに所定の大きさの差を生じさせる手段を設けている。上記の実施例にて説明した、吸入管38内圧力(吸込室内圧力)と容器6内圧力との差を任意に生じさせる手段を備えることによる作用効果は、本実施例においても同様に奏することができる。
【0077】
本実施例では、従来の技術のように、容器6内の圧力を吐出管内の圧力と同じにするものより容器内圧力は低く設定される。このことから、従来は潤滑油に相対的に高い圧力を印加してベーン室に送りベーンをローラに押し付けるため、ローラとベーン部との間に局所的な大きな面圧が生じてかじり、摩耗、損傷が生じることを抑えるため作動室に多量の潤滑油を供給することが必要であったのに対し、本実施例では、ローラにベーンが押しつけられる力は相対的に低いことから供給する潤滑油の量も少なくすることができる。
【0078】
作動室のシール及びローラ/ベーン潤滑に必要な潤滑油の供給量は、前述の通り、例えば、バルブを付勢するバネの強さや連通路の面積、形状等により適切に調節することが可能である。また、容器内の圧力は従来技術による圧縮機の場合より低くできるので、炭化水素系の冷媒を使用した場合にも溶け込む量を少なくでき、冷媒量を低く抑えることができるので、冷凍サイクル及びこれを備えた冷凍、空調装置の安全性、信頼性が向上する。
〔実施例 5〕
次に、本発明のさらに別の実施例について、図12乃至13を参照して説明する。
【0079】
図12の圧縮機は、揺動ピストンを用いた2つの圧縮要素を有する圧縮機であり、一方の圧縮要素で圧縮された冷媒が他方の圧縮要素に供給されて再度圧縮される、いわゆる2段圧縮機に関するものである。図13は、ピストンの回転位置の変化に伴う密閉容器内の空間と作動室内の圧力との差を示すグラフである。密閉容器内の圧力を調節する手段としては図3、図4の弁手段、図8の連通孔等を用いることができる。
【0080】
本実施例の圧縮機110cは、概略、低圧(低段吸入圧力)低圧よりも高い中間圧(低段吐出圧力、高段吸入圧力)、中間圧よりも高い高圧(高段吐出圧力)の三つの圧力の段階を有している。本実施例では、圧縮機密閉容器内圧力をこれら三つの圧力の大きさのうちのひとつを採用するのではなく、性能上好適となるように任意に密閉容器内の圧力を設定することができるものである。
【0081】
図12において、冷凍サイクル内のガス冷媒は、密閉容器6を貫通した第1の吸入パイプ(吸入管)36より密閉容器6内に吸込まれ、第1の圧縮要素を構成する第1のシリンダ1’内で1回目の圧縮が行われる。圧縮されたガス冷媒は吐出ポート30bから吐出室32bを通り第1の吐出パイプ(吐出管)37に流出する。すなわち、第1の圧縮要素で第1段の圧縮が行われる。冷媒は、その後、密閉容器6を貫通した第1の吐出パイプ37から密閉容器6外へ出る。
【0082】
一旦、密閉容器6外に出たガス冷媒は、中間冷却器38を介して周囲空気により冷却され、次に密閉容器6を貫通した第2の吸入パイプ39により、再度、密閉容器6内に吸込まれる。吸入パイプ39に吸込まれたガス冷媒は、第2段の圧縮要素を構成する第2のシリンダ1’’内部で2回目の圧縮が行なわれ、吐出ポート30aから吐出室32aを介して、第2の吐出パイプ40に流出する。すなわち、第2段の圧縮が行われる。冷媒は、その後吐出パイプ40から密閉容器6の外へ出る。
【0083】
この時、密閉容器内圧力は、実施例1、3で詳細に述べた密閉容器内圧力を設定する手段により、第1段シリンダ1’の吸込圧よりも高く冷媒の吐出圧力よりも低い圧力に保持されている。図3、図4に示した弁手段の場合には、第1の吸入パイプ36内と密閉容器6内が弁を介して接続されている。また、図8に示した連通孔の場合には、第1のシリンダ1’等により形成される低段側(1段目)の圧縮要素の作動室と密閉容器内を所定の区間連通するように設けられている。
【0084】
本実施例では、高性能化を図るため、低段側と高段側の圧縮仕事が同等となるように、所定の圧力条件で低段側の圧縮比と高段側の圧縮比がほぼ同等となるように低段圧縮要素と高段圧縮要素の押除量が設定されている。
【0085】
図13に2段圧縮機の第1段(低段)の圧縮要素と第2段(高段)の圧縮要素のクランク回転角の変化に対する作動室内圧力及び密閉容器内圧力を示す。実線は吸入室及び圧縮室の圧力、破線は密閉容器圧力、斜線はその圧力差を示す。ここでの条件は、冷媒134a、低段側吸入圧力101kPa,高段側吐出圧力837kPaの冷蔵庫用圧縮機の条件である。このとき、低段側と高段側の圧力比がほぼ同等となる、低段側吐出圧力及び高段側吸入圧力は291kPaとなる。
【0086】
従来の技術のように、図13(b)に示す密閉容器の圧力として、高段吸入圧力を用いる場合、低段の圧縮要素では、高段吸入圧力291kPaと作動室(吸入室、圧縮室)圧力との圧力差(斜線部)が駆動力となり、ローラ内側の油がローラ摺動部の隙間を通ってとなる第1のシリンダ1'に供給され、この作動室のシールを行なう。高段圧縮要素の作動室のシールのための油は、低段圧縮要素からガス冷媒と共に吐出された油が、高段圧縮要素の吸入管を通って作動室に供給される。
【0087】
このとき図13(b)で最小限必要な油より過度の油が供給され、多量の高温の油により冷媒が加熱され、圧縮機の体積効率、全断熱効率が低下している場合には、本実施例では図13(a)に示すように密閉容器内圧力を高段吸入圧力より低い値に設定することにより、給油量を最適化し、性能向上を図ることが可能である。この場合も、圧縮機の回転数の増減に対しても、第1のシリンダ1'内に供給される潤滑油の量の変動が低く抑えられ、潤滑油が過度に供給されたことによる圧縮機の効率の低下を抑制し、性能を向上することができる。また、第2のシリンダへの潤滑油は、第1のシリンダに供給され冷媒ガス中に含まれて通流する潤滑油によって行われる。この第2シリンダへ供給されるべき量も考慮して、第1シリンダ1'への吸入管36内の圧力と容器6内の圧力との差を調節して設定することができる。
【0088】
また、逆に図13(b)の場合で、作動室への給油が不足している場合には、密閉容器内圧力を高段吸入圧力より高く設定すればよい。
〔実施例 6〕
次に、本発明のさらに別の実施例について、図14乃至15を参照して説明する。
【0089】
図14に示す圧縮機は上記揺動ピストンを用いたロータリ圧縮機である。但し、本実施例では、サイクルの途中に弁の切替え手段を備えて、一つの圧縮室による圧縮と、2つの圧縮室による圧縮とを切替えることが可能となっている。本実施例の圧縮機も、密閉容器内の圧力を調節する手段を備え、作動室の吸入管内の圧力と容器内の空間の圧力との間に任意の値の圧力差を生じさせる構成を備えている。この圧力の調節手段としては上記実施例に説明したいずれの手段も用いることができる。
【0090】
図14において、本実施例の冷凍サイクルは、その構成の概略は、2つのシリンダを備えた圧縮機110dと、凝縮器62、冷凍室蒸発器64a、冷蔵室用蒸発器64bと、これらを連結しその内部を冷媒が通流する冷媒管とを備えたものとなっている。また、凝縮器62、蒸発器64のそれぞれには、これらに送風するための送風ファン66、67、68が配置されている。このようにして、本実施例では、圧縮機110dで圧縮された冷媒は、吐出管40から流出して凝縮器62に送られて後、冷凍室用蒸発器64a,冷蔵室用蒸発器64bに分岐して流れる。これらの蒸発器から流出した冷媒は冷媒管を介して再度圧縮機に流入して圧縮されるサイクルを構成している。
【0091】
本実施例の圧縮機110dは、2つのシリンダ1’、1″を有し、これらの各々に冷媒ガスを吸入、吐出する管36,39及び37、40とを備えている。これらのシリンダにより第1のシリンダ1’により圧縮された冷媒ガスを第2のシリンダ1″に送って再度圧縮する、いわゆる2段の圧縮が可能な構成となっている。
【0092】
このために、第1のシリンダ1'の吐出管37と接続された冷媒管による冷媒の流れは2つに分岐され、一方は第2のシリンダの吐出管40と凝縮器62とを連結する冷媒経路と逆止弁61bを介して冷媒管により連結され、他方は冷蔵室用の蒸発器64bと第2のシリンダ1″の吸入管39とを接続する冷媒経路に、中間冷却器38を介して冷媒管により接続されている。さらに、この分岐部と中間冷却器38との間には冷媒の流れを調節する電磁弁65bが配置されている。
【0093】
また、凝縮器62と接続され凝縮器からの冷媒が流れる冷媒管は、2つに分岐され、一方は冷凍室用の蒸発器64aに、他方は冷蔵室用の蒸発器64bに、それぞれキャピラリ63a,bを介して接続される。つまり、冷凍室用キャピラリ63a、冷蔵室用キャピラリ63bは、冷媒管の分岐部と各蒸発器との間に配置され、蒸発器から流出する冷媒が流れる冷媒管と熱交換するように、例えば相互に接触して設けられている。また、上記分岐部と冷蔵室用キャピラリ63bとの間には、冷媒の流れを調節できる電磁弁65aが設けられている。
【0094】
さらに、冷凍室用蒸発器64aから流出した冷媒は第1のシリンダ1'の吸入管36に流入するように冷媒管により冷媒経路が設けられているとともに、冷蔵室用蒸発器64bから流出した冷媒が第2のシリンダの吸入管39に流入する冷媒経路に逆止弁61aを介して流入するように分岐して冷媒管が設けられている。
【0095】
このような構成では、逆止弁61a,b、電磁弁65a,bの動作により冷媒の流れを調節して、圧縮機の第1、第2シリンダ1’,1″を用いた冷媒の圧縮を、上記2段の圧縮動作と、2つのシリンダで並列に冷媒を圧縮する並列圧縮とで切替えることができる。すなわち、凝縮器62から分岐して流れ冷凍室用蒸発器64aで蒸発した冷媒が吸入管36に流入するとともに冷蔵室用蒸発器65aで蒸発した冷媒が第1シリンダで圧縮され吐出管37から流出した冷媒と合流して第2シリンダの吸入管39に流入して圧縮された後に吐出管40から流出する冷媒の流れと、凝縮器62から流出して冷凍室用蒸発器64aで蒸発した冷媒が第1、第2シリンダの吸入管36,39に各々分岐して流入して圧縮された後に吐出管37,40から流出する冷媒の流れとに切替えられる。
【0096】
図15において、本実施例の冷蔵庫は、図14に示した冷凍サイクルを備え、これに適合する構成を備えたものである。冷蔵庫本体200は、その内部に複数の貯蔵室が設けられ、上から冷蔵室203A、野菜室203B、上下2段の冷凍室202A,202Bとを備えている。冷蔵庫200庫内には、複数の蒸発器が設けられ、上段冷凍室202A後部に冷凍室用蒸発器64aが、野菜室203B後部に冷蔵室用蒸発器64bが配置されており、これらの蒸発器の上方には蒸発器に空気流れを供給するファン67,68が配置されている。
【0097】
ファンの回転によってこれらの蒸発器で冷却された空気は、異なる経路で貯蔵室に供給され貯蔵室から流出して蒸発器に戻る循環経路を備えている。つまり、冷凍室用蒸発器64aで冷却されファン67を介して冷凍室202A,B内に流出されたのち、下段冷凍室202B後部から蒸発器64aに戻る冷気の流れとなる循環経路と、蒸発器64bで冷却されファン68を介して冷蔵室203Aに供給され、冷蔵室203Aを冷却した後野菜室203Bに流入して、野菜室内の容器後方から蒸発器64bに戻る冷気の流れとなる循環経路とを備えている。これらの冷気流れを分離するために、冷凍室202Aと野菜室203Bとの間には段熱材を備えた仕切壁が配置されている。
【0098】
また、冷蔵庫200の背面側の底部の冷凍室の後方には、圧縮機110d、凝縮器62、凝縮器用ファン66及び電磁弁65a,bとが配置されている。また、本実施例の冷蔵庫は、図14に示した冷凍サイクルの動作を調節するための制御装置231を備えている。この制御装置は、冷凍室内の温度を検知する温度センサ218及び冷蔵室、野菜室の温度を検知する温度センサ219、さらには、蒸発器の温度を検知する温度センサ220,221からの出力を受け、圧縮機110dの電動機、凝縮器用ファン66、蒸発器用ファン67,68の回転数を可変に調節するインバータ232,233,234,235に指令を発信して、庫内の冷凍能力を調節する。また、電磁弁65a,bにその動作を調節する指令を発信して、冷媒の流れを切替えて圧縮機110dの2段圧縮、並列圧縮の運転を切替える。さらには、各蒸発器用の除霜ヒータ216,217の運転を指令して、蒸発器を加熱して除霜を行う。
【0099】
本実施例では、冷蔵室203Aの扉上に、冷蔵庫200の運転を使用者が任意に調節可能なように操作パネル236が設けられており、このパネル236の操作により制御装置231に運転を指令することが可能となっている。また、冷蔵庫200の各貯蔵室内の冷却運転と、切替えられる冷媒の流れ、圧縮機110dの運転とは対応しており、これらは電磁弁65a,65bの動作により行われる。
【0100】
例えば、冷凍室、冷蔵室内の温度が、ともに、予め設定された冷却運転を開始する温度よりも高い場合には、両方の貯蔵室の冷却が必要であると制御装置231により判断され、電磁弁65a,bともに開の位置に動作するよう指令される。この場合、凝縮機62からの冷媒は、分岐してそれぞれ冷凍室用蒸発器64a、冷蔵室用蒸発器64bに流入して、冷凍室、冷蔵室が冷却される。冷凍室用蒸発器64aからの冷媒は、吸入管36から第1のシリンダ1’に流入して圧縮されて吐出管37から吐出される。
【0101】
冷蔵室用蒸発器64bからの冷媒は、吐出管37からの冷媒と合流後、吸入管39から第2のシリンダ1″に流入して圧縮される。つまり、冷凍室用蒸発器64aを通った冷媒は、第1シリンダ1’および第2シリンダ1″により複数回圧縮される。
【0102】
冷凍室のみが、予め設定された冷却開始温度より高い場合、あるいは操作パネル236からの指令により強制的に冷凍室の冷却運転が指令された場合には、冷凍室のみを単独で冷却する運転を行う。この場合、電磁弁65aは閉じられ、電磁弁65bが開く動作を行うよう、制御装置から指令が発信される。すると、凝縮器62からの冷媒は冷凍室用蒸発器64aのみに流れ、蒸発器64aから流出した冷媒は、第1、第2のシリンダ1’,1″に分岐して吸入管36,39から流入して並列に圧縮される。すなわち、冷凍室用蒸発器64aからの冷媒は、各シリンダで並列に圧縮されて各々吐出されて合流して凝縮器62に流入する、並列に圧縮が行われる運転が行われる。
【0103】
本実施例においても、密閉容器6内の圧力は、実施例1、3で詳細に述べた密閉容器内の圧力を設定する手段により、第1シリンダの吸入管内の圧力より高く吐出管内の圧力よりも低い圧力に調節されている。吐出管内の圧力は、第1のシリンダの場合でも、第2のシリンダの場合でもよく、第2のシリンダの場合は、凝縮器入口の冷媒の飽和圧力にほぼ等しくなる。これらの圧力の中間の値に、密閉容器内の圧力を設定する手段を本実施例は備えたものである。
【0104】
図3、図4に示した差圧弁の場合には、第1の吸入パイプ36内と密閉容器6内が差圧弁を介して接続されている。また、図8に示した連通孔の場合には、第1のシリンダ1’等により形成される圧縮室と密閉容器内を所定区間連通するように設けられている。これにより、密閉容器6内の圧力は、上記の2段の圧縮及び並列の圧縮時ともに、第1の吸入パイプ36の吸入圧力より所定の圧力高く保持されている。
【0105】
2段の圧縮を行う場合、第1のシリンダ1’側の吐出室32bで分離された油は、吐出室32bに配置された吐出管37の開口の下方に設けられ、吐出室32b内に設けられた開口と連通したキャピラリ60aの両端の圧力差、つまり吐出室32b内と容器6内との圧力の差が小さいため、密閉容器6内に容易に戻らず、吐出室32b内に貯溜し、過度に溜まると冷媒ガスに伴って第1の吐出管37を通って流出する。
【0106】
低段の圧縮要素(冷凍室用蒸発器64aからの冷媒が第1段圧縮される)第1のシリンダ1’側から流出した油は、高段圧縮要素(冷凍室用蒸発器64aからの冷媒について第2段目の圧縮をする第2のシリンダ1″)にガス冷媒とともに供給され、作動室のシール作用を行なう。この高段圧縮要素から吐出した油は、吐出室32a内で容器下方に貯められて冷媒ガスと分離され、より高い圧力となる高段の吐出圧力と密閉容器6内の圧力との差圧でキャピラリ60bを介して、密閉容器6内底部に戻される。
【0107】
単段の圧縮を並列しておこなう場合の油の分離は、それぞれの吐出室32a,32bで分離された油が、吐出圧力と密閉容器内の圧力との差圧でキャピラリ60a、60bを介して、密閉容器6内の底部に戻される。
【0108】
このとき、吐出室32aで分離された油は2段の圧縮及び並列の圧縮の両方の場合で、キャピラリ60bを介して、密閉容器6内に戻される。2段圧縮時の吐出室32aの油戻し量に関係する作動室への給油量は図16(a)の低段圧縮要素の斜線部で示される差圧に関係する。また、単段圧縮時の吐出室32aの油戻し量に関係する作動室への給油量は(b)の高段圧縮要素の斜線部で示される差圧に関係する。2段圧縮及び単段圧縮時ともに、密閉容器内圧力は、吸入圧力より所定の圧力高く設定されている。したがって、吐出室32aの油戻り量、キャピラリ両端の差圧は2段圧縮時と単段圧縮時とでほぼ同等であり、一つの絞り量で2段圧縮と単段圧縮に対応可能である。
【0109】
また、2段圧縮と単段圧縮切替え前後で、密閉容器内圧力をほぼ一定圧力に保つことができるため、密閉容器内圧力変化による油に溶解している冷媒の発泡を防止することができる。
【0110】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、炭化水素系冷媒への対応が可能な高性能・高信頼性の密閉形圧縮機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る密閉型回転圧縮機の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すA−A横断面図である。
【図3】図1に示す圧縮機の圧力調節手段の構造を示す縦断面図である。
【図4】図1に示す圧縮機の圧力調節手段の別の例の構成を示す縦断面図である。
【図5】図1に示す圧縮機の、シリンダ回転角の変化に対する容器内の圧力及び圧縮室内の圧力の変化を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施例に係り密閉容器内の圧力を吸込圧力よりも高く吐出圧力よりも低く設定する圧縮機を備えた冷凍サイクルの構成の概略を示す図である。
【図7】図6の冷凍サイクルを用いた空調機の構成の概略を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係る圧縮機の密閉容器内の圧力をに調節する構成を示す断面図である。
【図9】図8に示す連通孔の配置位置を説明する図である。
【図10】図8に示す連通孔の配置位置を説明する図である。
【図11】本発明のさらに別の実施例に係る圧縮機の構造の概略を示す縦断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施例に係る圧縮機の構造の概略を示す縦断面図である。
【図13】図12に示す圧縮機の、シリンダ回転角の変化に対する容器内の圧力及び圧縮室内の圧力の変化を示すグラフである。
【図14】本発明のさらに別の実施例に係る圧縮機の構成の概略を示す縦断面図とこの圧縮機が接続された冷凍サイクルの構成の概略図である。
【図15】図14の冷凍サイクルを用いた冷蔵庫の概略を示す縦断面図である。
【図16】図14に示す圧縮機の、シリンダ回転角の変化に対する容器内の圧力及び圧縮室内の圧力の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1…シリンダ、1a…シリンダ内周面、1b…滑動孔部、1c…孔部、2…主軸受、2a…軸受部、3…副軸受、3a…軸受部、3b…吐出ポート、3c…吐出室、4…駆動軸、4a…偏心部、4b…ガス抜き孔、4c…ガス排出孔、5…回転子、6…密閉容器、7…固定子、8…ピストン、8a…ローラ部、8b…ベーン部、9…滑動部材、10…圧縮室、11…吸入室、12…吸入管(パイプ)、13…吸入通路、14…吐出カバー、15…吐出パイプ、16…潤滑油、17…吸込口、18…吐出口、19…給油パイプ、20…給油溝、22a,22b…シリンダ、22c,22d…シリンダ内周面、22e…空間、23…仕切板、24…主軸受、24a…軸受部、25…副軸受、25a…軸受部、26…駆動軸、26a,26b…偏心部、27a,27b…ローラ、28a,28b…ベーン、29a,29b…ばね、30a,30b…吐出ポート、31a,31b…吐出カバー、32a,32b…吐出室、33…油吸込口、34a,34b…ガス抜き孔、35…圧縮要素、35a…低圧側圧縮要素、35b…高圧側圧縮要素、36…吸入パイプ、37…吐出パイプ、38…中間冷却器、39…吸入パイプ、40…吐出パイプ、45…吐出弁、50…バルブ室、51…バルブ、52…コイルばね、53…連通路、54…リテーナ、51’…板ばね、60…オイルキャピラリ、60a…低段側オイルキャピラリ、60b…高段側オイルキャピラリ、61a…低段側逆止弁、61b…高段側逆止弁、62…凝縮器、63a…冷凍室側キャピラリ、63b…冷蔵室側キャピラリ、64a…冷凍室蒸発器、64b…冷蔵室蒸発器、65a,65b…電磁弁、66…凝縮器ファン、67…冷凍室ファン、68…冷蔵室ファン、70…圧力調整弁、71…圧力調整管、72…油戻り管、73…油分離器、74…ニードル弁、75…フロート、76…四方弁、77…室外熱交換器、78…室内熱交換器、79…膨張弁、80a,80b…接続配管、81…室外ファン、82…室内ファン、100…連通孔、110,110a,110b,110c,110d…圧縮機、112…室内ユニット、113…室外ユニット、120…室温センサ、121…室内熱交換器温度センサ、122…外気温センサ、123…室外熱交換器温度センサ、124…圧縮機表面温度センサ、125…密閉容器内圧力センサ、130a…室内側制御装置、130b…室外側制御装置、131,132,133…インバータ、140…リモコン、150…建物、200…冷蔵庫本体、202A,202B…冷凍室、203A,203B…冷蔵室、216,217…除霜用電気ヒータ、218,219…室温センサ、220,221…蒸発器温度センサ、231…制御装置、232,233,234,235…インバータ、236…操作パネル
Claims (6)
- 密閉容器と、
この密閉容器内に収納される電動機部及びシリンダと、
前記密閉容器を貫通して前記シリンダに連結され内部を通過する冷媒を前記シリンダに吸入させる吸入管と、
前記シリンダ内に配置され前記冷媒を圧縮するピストンと、
前記シリンダから前記密閉容器を貫通して前記シリンダ内から、圧縮された前記冷媒を吐出させる吐出管と、
前記密閉容器内の圧力を前記吸入管内に逃がして前記密閉容器内の圧力を調整する調節手段であって、ばねの力によって前記吸入管内から前記密閉容器内に向かって閉じる方向に付勢され、前記ばねの力に抗して前記密閉容器内から前記吸入管内に向かって開くことができる調節手段と、を有し、
前記密閉容器内の圧力と前記シリンダと前記ピストンから形成される作動室内の圧力との圧力差により、前記シリンダと前記ピストンとの間を通して前記作動室内に潤滑油を供給する密閉形圧縮機。 - 前記調節手段は、前記密閉容器内の空間の圧力を前記吐出管内の圧力と前記吸入管内の圧力との間に調節する請求項1に記載の密閉形圧縮機。
- 請求項1または2において、
前記ばねは、コイルばねであることを特徴とする密閉形圧縮機。 - 請求項1または2において、
前記ばねは、板ばねであることを特徴とする密閉形圧縮機。 - 請求項1または2において、
前記冷媒は、プロパン(R290)やイソブタン(R600a)等の炭化水素系冷媒であることを特徴とする密閉形圧縮機。 - 請求項1または2において、
前記冷媒は、R134aであることを特徴とする密閉形圧縮機。
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