JP4013311B2 - 光学的情報の記録媒体と記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光線等の光学的手段を用いて情報を高速かつ高密度に記録・再生する光ディスクの構造とその記録方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光線を利用して高密度な情報の再生あるいは記録を行う技術は公知であり、おもに光ディスクとして実用化されている。
【0003】
光ディスクは、再生専用型、追記型、書き換え型に大別することができる。
再生専用型は、例えばコンパクトディスクやレーザディスクとして、また追記型や書き換え型は文書ファイル、データファイル等として実用化されている。
【0004】
また、書き換え型光ディスクの中には、おもに光磁気と相変化型がある。
相変化光ディスクは、記録層がレーザ光線等の照射によって、例えばアモルファスと結晶間、あるいは結晶とさらに異なる構造の結晶間の何れか等で、可逆的に状態変化を起こすことを利用する。これは、レーザ光照射により、薄膜の屈折率あるいは消衰係数のうち少なくとも何れか一つが変化して記録を行い、この部分で透過光あるいは反射光の振幅が変化し、その結果検出系に至る透過光量あるいは反射光量が変化することを検出して信号を再生する。なお、アモルファスと結晶間で状態変化を起こす代表的な材料としては、Te、Se、In、Sb等の合金が主に用いられている。
【0005】
記録変調方式には、マーク間(マークポジションとも称される)変調とマーク長(マークエッジとも称される)変調の2種類がある。
【0006】
マーク間変調記録は、マーク間隔を変化させて記録し、再生時にはマークの位置を検出して信号検出するものである。
【0007】
マーク長変調記録は、種々の長さのマークを種々のマーク間隔で記録し、再生時にはマークの両端の位置を検出して信号を検出するものである。
【0008】
マーク長変調記録におけるジッタの測定法の一つに、連続する2つの記録マークの前端部と前端部、後端部と後端部のそれぞれの位置を検出し、前端間位置、後端間位置のジッタをそれぞれ求める片エッジ検出法がある。記録されるマークの長さは記録パワーの変化によって変わるが、前端間の距離、後端間の距離はそれぞれマークの長さが変化しても変化量は小さいため、片エッジ検出はパワー変動に対して有効な信号検出方法である。
【0009】
また、DVD−RAM規格で採用されている信号の変調方式8/16、RLL(2、10)はマーク長が3T〜11T(Tはデータクロック。データクロックとは入力信号のビット間隔のことを意味する。)の範囲で記録するものである。この信号変調方式を用いて記録した場合の信号の再生ジッタ値は、3T〜11Tの各信号マークのジッタ値の標準偏差σの和σsumのウィンドウ幅Twに対する割合(σsum/Tw)で表す。
【0010】
相変化光ディスク上へのレーザ記録は、原理的にはヒートモードによるものであり、従って長いマークを記録する場合には、蓄熱効果によってマークの先端より終端が太くなってマークが涙状に歪み、結果として再生波形も歪みマークの両端の位置がずれてしまう。
【0011】
そこで、マーク長変調方式においては、一つの記録マークを形成するための記録波形を、複数のパルスからなる記録パルス列で構成(マルチパルス記録とも称される)する記録方法が提案されている(例えば、特開平3ー185628号公報)。これにより、1つのマークを形成するのに、パルス列化しないで単パルスにより記録する方法に比べて記録膜が受ける熱が制御でき、マーク形状が単パルスの場合のようにマークの始終端で非対称にならず良好なマーク形状となる。
【0012】
また、相変化光ディスクでは、記録マークの書き換えに1ビームオーバーライトを用いることができる。1ビームオーバーライトとは、記録信号によりレーザパワーを記録パワーと、この記録パワーよりも低いパワーの消去パワー(バイアスパワーとも称される)の間で変調して信号トラック上に照射することにより、既に記録されている古い信号を消去しながら新しい信号を記録する方法である。オーバーライト自体では記録パワーレベルと消去パワーレベルの2レベルで済むが、記録・消去・再生を考慮すると、記録パワーレベル、消去パワーレベル及び再生パワーレベルの3レベルが必要である。例えば結晶・アモルファス間の相変化光ディスクでは、記録パワーレベルで照射された領域は、元の状態がアモルファスか結晶かに関わらず、溶融後急速に冷却されるためアモルファスとなり、消去パワーレベルで照射された領域は、結晶化温度以上に昇温するため、元の状態に関わらず結晶化して、新しい信号がオーバーライトされる。
【0013】
また、1ビームオーバーライトにおいて記録パルスを記録パワー、消去パワー、および記録パワーの直後に設けた消去パワーより低いパワーの3段階に変調する記録方法が提案されている(例えば、特開昭63−113938号公報)。
【0014】
さらに、マルチパルス記録方式に消去パワーより低いパワーでのレーザ光照射を付加した記録方法も提案されている(例えば、特開平6−295440号公報)。
【0015】
光記録媒体の構成は、例えば図2に示すような多層膜構成のものが通常である。すなわち、ポリカーボネートやPMMAの樹脂、ガラス板等の基板1上に、ZnSとSiO2との混合物からなる誘電体材料からなる第1の誘電体層2、第2の誘電体層4で挟みこまれた相変化材料等からなる記録層3、さらに記録層3での光吸収効率を向上させたり、熱拡散層としての働きをする金属反射層5をスパッタリングや蒸着等の方法で積層する構成がとられる。ただし、レーザ光線は基板1側から入射させる。
【0016】
誘電体材料からなる第1の誘電体層2、第2の誘電体層4の働きは、例えば、
(1)記録層を外部からの機械的ダメージから保護する、
(2)繰り返し記録の場合に起こる記録層の破れ等の熱的ダメージを低減し繰り返し回数を高める、
(3)多重反射による干渉効果を利用して光学的変化を高める、
(4)外気からの影響を遮断し、化学的な変化を防止する
等がある。
【0017】
従来より、上記目的のために、SiO2等の酸化物、Si3N4やAlN等の窒化物、SiON等の窒酸化物(例えば特開平3−104038号公報)、ZnS等の硫化物、SiC等の炭化物あるいはこれらの混合物としてZnS−SiO2(特開昭3−103453号公報)等の誘電体材料が用いられてきている。
【0018】
また、特開平4−219650号公報は、光磁気記録媒体の例ではあるが、基板を通じての水分が記録へ侵入し、磁気記録膜の腐食を防止する役割としてSn−N、In−N、Zr−N、Cr−N、Al−N、Si−N等の系の誘電体層が開示されている。
【0019】
しかし、図2の構造で、第1の誘電体層2および第2の誘電体層4にZnS−SiO2を使った記録媒体では、記録消去を繰り返すと信号振幅が低下し、繰り返し記録後の再生ジッタが悪化するという課題があった。この課題に対して、誘電体層としてSi3N4やAlNに代表される窒化物薄膜を用いた場合に、多少改善される傾向がみられるものの、このような窒化物は記録層との接着性が低く、例えば、高温高湿の環境下において剥離が生じるという別の課題が生じる。
【0020】
この課題に対して、図9に示すように、記録層3に接して記録層を構成する成分のGe−Nを主成分とする窒化物層、あるいはGe−O−Nを主成分とする窒酸化物層6、7を形成した特願平8−52772号に示した構成もある。
【0021】
また、図9の構成のGe−Nを主成分とする窒化物層、あるいはGe−O−Nを主成分とする窒酸化物層6、7にTi、V、Cr等の材料成分を混合させることにより、耐候性を向上させた特願平9−79477号に示すような構成もある。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9のように記録層の両側をGe−Nを主成分とする窒化物、あるいはGe−O−Nを主成分とする窒酸化物で挟んだり、その窒化物、あるいは窒酸化物層にTi、V、Cr等の材料成分を添加した構成では、前端間ジッタと後端間ジッタ間にアンバランスを生じる。例えば、(前端間ジッタ)≧(後端間ジッタ)のような差が生じる。以下、前端間ジッタと後端間ジッタの2乗平均値を再生ジッタとすると、この再生ジッタが悪化するという新たな課題があることがわかった。特に、Ge−NやGe−O−Nに添加するTi、V、Cr等の材料成分の添加量を多くすると、前端間ジッタと後端間ジッタとのアンバランスがよりおおきくなることがわかった。
【0023】
前端間ジッタ・後端間ジッタにアンバランスが生じる原因として以下のことが考えられる。
【0024】
すなわち、相変化記録媒体では、記録マークを形成する場合、記録層をレーザ光等の手段を用いて溶融しアモルファス化するのだが、溶融部の場所により冷却スピードが異なるため、溶融した部分が総てアモルファスに変化するのではなく、溶融部の一部は再結晶化する。この再結晶化により、記録マーク形状が決まってくる。また、1つの記録マークを形成するための記録波形によって、マークの前端部あるいは後端部で記録層に与えられるレーザ光による熱量が異なる。一方、溶融部の冷え方によりアモルファス部(記録マーク)形状が異なる。溶融部の冷え方は、記録媒体を構成する各層の膜厚や材料そのものの冷却能で決まり、記録マークの前後端形状に影響を与える。例えば、記録層に接する層の冷却能が大きい場合、記録層に接する層の冷却能が大きいため、マーク前端では昇温しにくく溶融領域がせまくなり、その結果アモルファス(記録マーク)領域が狭くなる。この記録マークの前端部形状の歪みが片エッジ検出では大きく、ジッタ値として影響を与える。一方、マーク後端では、マークの前方から伝導熱とレーザ照射による熱により充分に昇温し、そのあと急冷されるため、アモルファス(記録マーク)がしっかりと形成され、ジッタ値としても良好なものが得られる。
【0025】
このように前端間と後端間ジッタにアンバランスが生じた場合について、消去パワーを一定とし、記録パワーを変化させた時のジッタ値依存性を図8に示す。例えば、記録層に与えられる熱量がマーク前端部で小さく、後端部で大きく、記録層に接する層の冷却能が大きい場合を考える。図8に示すように、前端間ジッタが後端間ジッタに比べて悪く、記録パワーが低いほど前後端ジッタ差が大きくなる。以上のように、記録マークのジッタは、光記録媒体の構成を制御しなけれ良好なものは得られないことがわかった。
【0026】
このような前端間ジッタ・後端間ジッタのアンバランスは、ZnS−SiO2を誘電体層としてもちいていた場合にはこのような問題は生じなかった。ところがGe−NあるいはGe−O−N誘電体層をもちいた場合には、これらの層自身の冷却能が大きすぎるため昇温が不充分で、記録マーク形状がバラツキやすくなってしまう。また、Ge−NあるいはGe−O−N何れかにTi、V、Cr等の材料成分を多く添加した場合にも同様の理由で、記録マーク形状がバラツクと考えられる。
【0027】
その上、ディスクへの記録パワーの設定は、前端間ジッタと後端間ジッタの2乗平均値から算出するため(例えば、ドライブのデフォーカスやディスクのチルトを考慮して、前端間ジッタと後端間ジッタの2乗平均値が13%未満となる記録パワーのA倍を実際にディスクに記録する場合の記録パワーとする)、前端間ジッタと後端間ジッタのどちらか一方でも大きくなると、記録感度が悪くなり、記録パワーの設定値が高くなる。そのため高い記録パワーで繰り返し記録を行うこととなり、膜劣化が生じ、繰り返し記録後のジッタ値が悪い光記録媒体となってしまう。
【0028】
記録感度が悪いと、記録パワーを高く設定する必要があり、その場合、レーザを高出力にせねばならず、コスト面やレーザの寿命の面で問題となる。例えばDVD−RAM規格によれば、板面でのレーザパワーの上限は14mWと規定されている。
【0029】
また、ジッタ値については、再生ジッタが13%以下であれば、実用上問題なく使用できる。
【0030】
また、繰り返し記録は50万回以上可能であれば、いかなる用途に採用しても何ら問題を生じない。
【0031】
以上より、記録感度が良好で、記録パワーが14mW以下であり、繰り返し初期から50万回繰り返し記録後までの再生ジッタが、13%以下である光記録媒体を開発することが望まれる。
【0032】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の光記録媒体は、
透明基板上に形成された第1の誘電体層と、前記第1の誘電体層の上面に形成された第2の誘電体層と、前記第2の誘電体層の上面に形成されたエネルギービームの照射によって光学的に検出可能な可逆的変化を生ずる記録層と、前記記録層の上面に形成された第3の誘電体層と、前記第3の誘電体層の上面に形成された反射層とを備える、または反射層の上面に第4の誘電体層を備える何れかの光記録媒体であって、前記第2の誘電体層と前記第3の誘電体層がGe−NあるいはGe−O−Nの何れかを含み、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内である。
【0033】
上記構成の光記録媒体に対して、
記録層の膜厚が14nm以上26nm以下の範囲、
第1の誘電体層の膜厚が70nm以上130nm以下の範囲、
第2の誘電体層の膜厚が4nm以上40nm以下の範囲、
第1の誘電体層がZnSとSiO2の混合体、
第2の誘電体層あるいは、第3の誘電体層の少なくとも一方に、材料成分XとしてTi、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Cのうち少なくとも1つの元素を含む、
第2の誘電体層あるいは第3の誘電体層の少なくとも一方に、含まれる材料成分XとGeの原子数比(X/Ge)をbとしたとき、b≦1.0、
であることが好ましい。
【0034】
また、第4の誘電体層がZnSとSiO2との混合体、
第4の誘電体層の膜厚が20nm以上にすることが好ましい。
【0035】
なお、上記光記録媒体にGe、Sb、Teを主成分とする記録層を適用、
反射層がAlを主成分とすることが好ましい。
【0036】
また、本発明による上記の光記録媒体への記録方法は、1つの記録マークを形成するための記録波形が、レーザ光を前記記録媒体中の記録層が光学的に検出可能な可逆的変化を生ずるレーザ光パワー以上のパワーに予め設定した第1のパワーと、前記第1のパワーよりも低いパワーに予め設定した第2のパワーとの間で変調した複数のパルスからなる記録パルス列で構成された記録波形でレーザ光照射することにより記録マークを形成する。
【0037】
上記記録パルス列後に、レーザ光パワーが第1のパワー未満である消去パワーよりもさらに低いパワーの冷却パワーでレーザ光照射する冷却パルスとを含み構成された記録波形で記録、
上記何れかの記録パルス列の始端部分と終端部分とは、一定の前記第1のパワーを照射し、記録パルス列の始端・終端パルス間は前記第1のパワーと前記第2のパワーのレーザ光を、データクロックの1周期以下の周期で交互に切り換えて照射する記録パルス列で記録、
上記記録パルス列の始端及び終端部分の長さを、データクロックの1周期とする記録パルス列で記録、
上記記録パルス列後の冷却パワーでのレーザ光照射時間を1周期とする、
ことが好ましい。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の光学的情報記録媒体および記録方法によれば、記録感度が向上し、初期から50万回繰り返し記録後の再生ジッタも良好なものが得られる。
【0039】
以下、図面を用いて本発明の具体的実施の形態を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
図9及び図10において、基板1の材質は、ガラス、石英、ポリカーボネート、あるいは、ポリメチルメタクリレートを使用できる。また、基板は平滑な平板でも表面にトラッキングガイド用の溝状の凸凹があってもよい。
【0041】
記録層3に用いる記録層材料としては、アモルファス・結晶間の相変化をするカルコゲン合金がよく知られており、例えばSbTe系、GeSbTe系、GeSbTeSe系、GeSbTePd系、TeGeSnAu系、AgSbTe系、GeTe系、GaSb系、InSe系、InSb系、InSbTe系、InSbSe系、InSbTeAg系等、例えば上記系統の合金の相変化特性または光学特性に影響を及ぼさない範囲で他の元素を含む合金等が使える。
【0042】
第1の誘電体層2、反射層上に設ける保護層8としてはSiO2、SiO、TiO2、MgO、Ta2O5、Al2O3、GeO2、Si3N4、BN、AlN、SiC、ZnS、ZnSe、ZnTe、PbS等あるいはこれらの混合物が使える。また、これらの成分からなる層を複数積層した構造も使える。
【0043】
記録層3を挟み込んだ第2の誘電体層6、第3の誘電体層7に供される窒化物または窒酸化物層としては、Ge−NあるいはGe−O−Nを主成分とし、これら窒化物または窒酸化物にTi、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Cのうち少なくとも1つの元素を含んだものが使える。
【0044】
反射層5としてはAu、Al、Cu、Cr、Ni、Ti等の金属材料を主成分とした材料、あるいはこれらの混合物、さらには所定の波長における反射率の大きな誘電体多層膜等が使える。
【0045】
(実施の形態1)
上記光学的情報記録媒体の材料の内、本実施の形態で用いたディスクは、φ120mm、厚さ6mm、グルーブ間隔が1.48μm(グルーブとその間のランドに記録するためのトラックピッチは0.74μm)のポリカーボネート製信号記録用トラックを持つ基板を用い、スパッタリングにより基板1上に第1の誘電体層2としてZnS−SiO2混合膜を膜厚110nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚20nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。
【0046】
また、記録層組成はGe18Sb24Te58とし、記録層を22nm形成し、その上にスパッタによりGe−Cr−N膜を膜厚10〜60nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。反射層5はAl−Cr膜を膜厚30〜220nmスパッタリングにより成膜を行った。そしてその上にポリカーボネートの保護板を設けた。
【0047】
次に本実施の形態で用いた光ディスク装置について、図3を用いて説明する。光ディスク11は、スピンドルモータ12取り付けられ回転している。光学ヘッド13は半導体レーザを光源とし、コリメータレンズ、対物レンズ等により光ディスク上にレーザスポットを形成する。半導体レーザはレーザ駆動回路14により駆動され入力される。
【0048】
次に光記録媒体への信号の記録再生方法について説明する。記録特性の評価には、波長650nmの半導体レーザ光源と、開口数0.6の対物レンズとを搭載した光ヘッドを用いた。信号方式は8/16、RLL(2、10)変調、最短ビット長0.41μm、線速度6.1m/sで溝トラックにランダム信号のオーバーライトを行い、ジッタ値を調べた。
【0049】
本実施の形態で用いた具体的な記録パルス列の一形状を図4に示す。但し、図4の記録パルス列はマーク長変調記録において、6Tマークを記録する場合の代表的な記録パルス列パターンを示す。記録パルス列の始端部、終端部は長さ1Tで、記録パワー(本実施の形態では前述の第1のパワーに相当)を照射し、始端及び終端間は1Tの周期で、0.5Tの長さずつ交互に記録パワー(第1のパワー)と再生パワー(本実施の形態では前述の第2のパワーに相当)を照射した。また、パルス列後に、冷却パワー(ここでは、再生パワーレベル)でのレーザ光照射を1Tの長さで行い、その後は消去パワーでのレーザ光照射を行った。
【0050】
次に、マークを記録消去するための記録パワー(第1のパワー)と消去パワーとの決定方法は、
(1)消去パワーを5mWと一定とし、記録パワーのみを変化させ、10回オーバーライトした時の再生ジッタが13%以下となる記録パワーの1.2倍の記録パワー(以下Pp1とする)を求め、
(2)記録パワーをPp1と一定とし、消去パワーのみを変化させ、10回オーバーライトした時の再生ジッタが13%以下となる消去パワーマージンの中央値の消去パワー(以下Pb1とする)を求め、
(3)消去パワーをPb1と一定とし、記録パワーのみを変化させ、10回オーバーライトした時の再生ジッタが13%以下となる記録パワーの1.2倍の記録パワー(以下Pp2とする)を求め、
(4)先ほど求めたPp2を記録パワー、Pb1を消去パワーとした。
【0051】
評価項目としては、(1)記録パワー、(2)10回繰り返し記録後の再生ジッタ、(3)50万回繰り返し記録後の再生ジッタの3つを種々の膜厚のディスクについて検討した。
【0052】
評価項目(1)の記録パワーについては、ランド、グルーブの両方で記録パワーが12mW以下のものを○、12〜14mW程度のものを△、14mW以上のものを×とした。
【0053】
評価項目(2)、(3)の10回繰り返し記録後の再生ジッタ、50万回繰り返し記録後の再生ジッタについては、ランド、グルーブの両方で再生ジッタが13%以下のものを○、それ以上のものを×とした。
【0054】
評価項目(1)、(2)及び(3)を総合的に判断して、評価項目(1)で記録パワーが12mW以下かつ、評価項目(2)、(3)で10回および50万回繰り返し記録後の再生ジッタが13%以下を満たすものを○とし、それ以外のものを×とした。
【0055】
本実施の形態では、記録層上に形成した窒化物または窒酸化物層の膜厚を10〜60nm、反射層の膜厚を30〜220nm変化させた場合について、評価項目(1)、(2)、(3)について検討した。
【0056】
(表1)及び(表2)にその結果を示す。また、評価項目(1)の記録パワーの結果は図5に、評価項目(2)の10回繰り返しジッタ結果を図6に、評価項目(3)の50万回ジッタ結果は図7に、評価項目(1)、(2)、(3)の総合評価結果を図1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
反射層膜厚が30nmでは、反射層をレーザ光が透過してしまい、光学設計的に異なる光記録媒体となり、前端間ジッタ、後端間ジッタともに繰り返し初期から悪く、そのため記録パワーも高くなっている。
【0060】
反射層厚が50〜80nmの範囲においては、第3の誘電体層の膜厚を薄くすると、繰り返し初期の前端間ジッタ、後端間ジッタにアンバランスが生じる(前端ジッタが悪化する)が、本実施の形態での膜厚範囲では再生ジッタは13%以下であった。
【0061】
また、第3の誘電体層の膜厚を薄くした場合、前端間ジッタが悪化した分、記録感度が低下し、記録パワーが高くなっている。また、50万回繰り返し後は、第3の誘電体膜厚が厚すぎると、繰り返し記録時の放熱が充分ではなく、記録層の熱的ダメージにより膜劣化が生じるため、再生ジッタが悪化している。
【0062】
反射層厚が100〜200nmでは、第3の誘電体層の膜厚が薄くかつ反射層の膜厚が厚い場合、繰り返し初期から、前端間ジッタ、後端間ジッタにアンバランスが生じ(前端間ジッタが13%を越す)ている。この前端間ジッタ、後端間ジッタのアンバランスにより、記録感度が低下し記録パワーが高くなっている。また、50万回繰り返し後の再生ジッタは、第3の誘電体層を厚すぎると、繰り返し記録時の放熱が充分でなく、記録層の熱的ダメージにより膜劣化が生じ悪化している。
【0063】
反射層厚が220nmでは、繰り返し初期から、前端間ジッタ、後端間ジッタにアンバランスが生じ(前端間ジッタが13%を越す)ている。記録パワー、繰り返し初期、50万回繰り返し記録後のジッタも悪い結果であった。
【0064】
以上の結果から、記録感度が12mW以下かつ初期から50万回繰り返し記録後までの再生ジッタが13%以下を満たす反射層厚と第3の誘電体層厚の組み合わせは、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内である。
【0065】
なお、反射層の上面に形成された第4の誘電体保護層を膜厚20nm以上形成した光記録媒体でも、記録感度、初期から50万回繰り返し記録後までの再生ジッタが13%以下を満たす第3の誘電体層の膜厚および反射層膜厚の範囲は同じ結果が得られた。これは、熱せられた記録層の冷却能は、第3の誘電体層厚と反射層厚およびその冷却能に依存している。そのため、反射層の上に形成した熱伝導率の悪い第4の誘電体保護層を形成することや、その膜厚には依存しないためであると考えられる。
【0066】
ただし、第4の誘電体保護層を設けた場合は、記録領域の始端劣化及び終端劣化が大きく改善された。この記録領域の始端劣化及び終端劣化とは、データ領域の記録開始点と記録終了点で繰り返し記録後に反射率が大きく変動するという現象である。これは、記録消去を繰り返し行うことにより、基板上に形成した各層の熱収縮により記録層が流動し、記録層膜厚の薄い部分が生じ、再生信号品質が低下するものである。これを、反射層上に例えばアモルファスZnS保護層を設けることで各層の熱収縮を抑え込み、記録層の流動を抑制できる。例えば、実施の形態1の記録媒体で、反射層の膜厚が100nm、第3の誘電体層の膜厚が40nmの場合、反射層の上に第4の誘電体層がない場合は、始端劣化長は30μm及び終端劣化長は25μmであったのに対して、第4の誘電体層を50nm設けた場合には、始端劣化長は5μm及び終端劣化長は5μmとなった。
【0067】
(実施の形態2)
次に、記録層の膜厚を13〜28nmまで変化させた記録媒体について、その記録パワーと10回繰り返し記録後、50万回繰り返し記録後の再生ジッタ特性を検討した結果について述べる。
【0068】
本実施の形態で用いたディスクは、φ120mm、厚さ6mmの案内溝の間隔が0.74μmのポリカーボネート製信号記録用トラックを持つ基板を用い、スパッタリングにより基板1上に第1の誘電体層2としてZnS−SiO2混合膜を膜厚110nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚20nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。
【0069】
また、記録層組成はGe18Sb24Te58とし、記録層の厚みを13〜28nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚30nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。反射層5はAl−Cr膜を膜厚100nmスパッタリングにより成膜を行った。そしてその上にポリカーボネートの保護板を設けた。
【0070】
本実施の形態で用いた光ディスク装置、記録パルス列、光記録媒体への信号の記録再生方法、記録パワー、消去パワーの決定法及び光記録媒体の評価項目については、実施の形態1と同じである。
【0071】
記録層の膜厚を13〜28nmまで変化させた場合の、記録パワーと初期から10回繰り返し記録後の再生ジッタ及び50万回繰り返し記録後の再生ジッタの結果を(表3)に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
なお、記録層膜厚が14〜26nmの範囲では、記録パワーが12mW以下と良好であった。
【0074】
また、記録層膜厚が13nmの場合は、膜厚が薄すぎて繰り返し記録による少しの信号振幅低下でも再生ジッタが悪化してしまったため、50万回繰り返し記録後の再生ジッタが悪化している。また、記録層膜厚が28nmでは、前端間ジッタと後端間ジッタが繰り返し記録の初期から50万回繰り返し記録後までアンバランス(後端間ジッタが悪化)を生じていた。しかし、記録層膜厚が14〜26nmの場合には、初期から50万回繰り返し記録後までの再生ジッタが13%以下と良好であった。
【0075】
以上の結果から、記録感度が12mW以下で、10回繰り返し記録後および50万回繰り返し記録後再生ジッタが13%以下を満たす記録層膜厚は、14〜26nmの範囲である。
【0076】
なお、記録層の膜厚が14〜26nmの範囲で、かつ反射層厚と第3の誘電体層厚の組み合わせが、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内である場合には、同じ結果が得られた。
【0077】
なお、反射層の上面に形成された第4の誘電体保護層を膜厚20nm以上形成した光記録媒体でも、同じ結果が得られた。
【0078】
(実施の形態3)
次に、第1の誘電体層の膜厚を50〜150nmまで変化させた記録媒体について、その記録パワーと10回繰り返し記録後および50万回繰り返し記録後の再生ジッタ特性を検討した結果について述べる。
【0079】
本実施の形態で用いたディスクは、φ120mm、厚さ6mmの案内溝の間隔が0.74μmのポリカーボネート製信号記録用トラックを持つ基板を用い、スパッタリングにより基板1上に第1の誘電体層2としてZnS−SiO2混合膜を膜厚50〜150nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚20nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。
【0080】
また、記録層組成はGe18Sb24Te58とし、記録層を22nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚30nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。反射層5はAl−Cr膜を膜厚100nmスパッタリングにより成膜を行った。そしてその上にポリカーボネートの保護板を設けた。
【0081】
本実施の形態で用いた光ディスク装置、記録パルス列、光記録媒体への信号の記録再生方法、記録パワー、消去パワーの決定法及び光記録媒体の評価項目については、実施の形態1と同じである。
【0082】
第1の誘電体層の膜厚を50〜150nmまで変化させた場合の、記録パワーと10回繰り返し記録後の再生ジッタおよび50万回繰り返し記録後の再生ジッタの結果を(表4)に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
第1の誘電体層膜厚が50〜150nmの範囲では、記録パワーが12mW以下と良好であった。また、10回繰り返し記録後の再生ジッタも13%以下と良好であった。
【0085】
第1の誘電体層膜厚が50nmでは繰り返し初期からアンバランスを生じていた(後端間ジッタが少し悪い)が、再生ジッタは13%以下であった。しかし、50万回繰り返し記録後に後端間ジッタがさらに悪化し、再生ジッタが13%を越した。また、第1の誘電体層の膜厚150nmでは繰り返し初期からアンバランスを生じていた(前端間ジッタが少し悪い)が、再生ジッタは13%以下であった。しかし、50万回繰り返し記録後に前端間ジッタがさらに悪化し、再生ジッタが13%を越した。
【0086】
以上の結果から、記録感度が12mW以下で、10回繰り返し記録および50万回繰り返し記録後再生ジッタが13%以下を満たす第1の誘電体層膜厚は、70〜130nmの範囲である。
【0087】
なお、第1の誘電体層の膜厚が70〜130nmの範囲で、反射層厚と第3の誘電体層厚の組み合わせが、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内である場合には、同じ結果が得られた。
【0088】
なお、反射層の上面に形成された第4の誘電体保護層を膜厚20nm以上形成した光記録媒体でも、同じ結果が得られた。
【0089】
(実施の形態4)
次に、第2の誘電体層の膜厚を1〜50nmまで変化させた記録媒体について、その記録パワーと10回繰り返し記録後および50万回繰り返し記録後の再生ジッタ特性を検討した結果について述べる。
【0090】
本実施の形態で用いたディスクは、φ120mm、厚さ6mmの案内溝の間隔が0.74μmのポリカーボネート製信号記録用トラックを持つ基板を用い、スパッタリングにより基板1上に第1の誘電体層2としてZnS−SiO2混合膜を膜厚110nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚1〜50nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。
【0091】
また、記録層組成はGe18Sb24Te58とし、記録層を22nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚30nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0.1とした。反射層5はAl−Cr膜を膜厚100nmスパッタリングにより成膜を行った。そしてその上にポリカーボネートの保護板を設けた。
【0092】
本実施の形態で用いた光ディスク装置、記録パルス列、光記録媒体への信号の記録再生方法、記録パワー、消去パワーの決定法及び光記録媒体の評価項目については、実施の形態1と同じである。
【0093】
第2の誘電体層の膜厚を1〜50nmまで変化させた場合の、記録パワーと10回繰り返し記録後の再生ジッタおよび50万回繰り返し記録後の再生ジッタの結果を(表5)に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
第2の誘電体層膜厚が1〜50nmの範囲では、記録パワーが12mW以下と良好であった。また、繰り返し初期再生ジッタも13%以下と良好であった。
【0096】
しかし、第2の誘電体層膜厚が3nm以下では、50万回繰り返し記録後、第2の誘電体層膜厚が薄すぎて、繰り返し記録による第1の誘電体層から記録層へのS成分やO成分の相互拡散が抑えくれないため、ジッタ値が悪化している。
【0097】
また、第2の誘電体層膜厚が50nmでは50万回繰り返し記録後では、局所的な膜破壊と考えられるバーストエラーが発生し、再生ジッタが悪化している。これは、元々、反射層側に比べて、基板側は放熱しにくいのだが、基板側の誘電体層膜厚(第1の誘電体層の膜厚+第2の誘電体層の膜厚)が厚い場合、ますます放熱しにくくなり、熱ストレスがかかるためではないかと考えらる。
【0098】
しかし、第2の誘電体層膜厚が4〜40nmの場合には、50万回繰り返し記録後の再生ジッタが13%以下と良好であった。
【0099】
以上の結果から、記録パワーが12mW以下で、10回繰り返し記録および50万回繰り返し記録後再生ジッタが13%以下を満たす第2の誘電体層膜厚は、4〜40nmの範囲である。
【0100】
なお、第1の誘電体層の膜厚が4〜40nmの範囲で、かつ反射層厚と第3の誘電体層厚の組み合わせが、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内である場合には、同じ結果が得られた。
【0101】
なお、反射層の上面に形成された第4の誘電体保護層を膜厚20nm以上形成した光記録媒体でも、同じ結果が得られた。
【0102】
(実施の形態5)
次に、第2の誘電体層および第3の誘電体層に添加するCr量を変化した記録媒体について、その記録パワーと10回繰り返し記録後および50万回繰り返し記録後の再生ジッタ特性を検討した結果について述べる。
【0103】
本実施の形態で用いたディスクは、φ120mm、厚さ6mmの案内溝の間隔が0.74μmのポリカーボネート製信号記録用トラックを持つ基板を用い、スパッタリングにより基板1上に第1の誘電体層2としてZnS−SiO2混合膜を膜厚110nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚20nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0〜1.3とした。
【0104】
また、記録層組成はGe18Sb24Te58とし、記録層を22nm形成し、その上にスパッタリングによりGe−Cr−N膜を膜厚30nm形成した。この時のCr/Ge組成比は0〜1.3とした。本実施の形態では、第2と第3の誘電体層のCr/Ge組成比は一致させながら、Cr/Ge組成比を0〜1.3まで変化させた。反射層5はAl−Cr膜を膜厚100nmスパッタリングにより成膜を行った。そしてその上にポリカーボネートの保護板を設けた。
【0105】
本実施の形態で用いた光ディスク装置、記録パルス列、光記録媒体への信号の記録再生方法、記録パワー、消去パワーの決定法及び光記録媒体の評価項目については、実施の形態1と同じである。
【0106】
第2と第3の誘電体層のCr/Ge組成比を0〜1.3まで変化させた際の、記録パワーと10回繰り返し記録後の再生ジッタおよび50万回繰り返し記録後の再生ジッタの結果を(表6)に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
Cr/Geの組成比が1.0以下の範囲では、記録パワーが12mW以下と良好であった。また、繰り返し初期、50万回繰り返し記録後の再生ジッタも13%以下と良好であった。
【0109】
しかし、Cr/Ge組成比が1.3では、繰り返し初期記録後で前端間ジッタと後端間ジッタにアンバランスが生じ(前端間ジッタが悪化)、再生ジッタが悪化している。
【0110】
以上の結果から、記録パワーが12mW以下で、10回繰り返し記録および50万回繰り返し記録後再生ジッタが13%以下を満たすCr/Geの組成比は、1.0以下の範囲である。
【0111】
本実施の形態では、第2、第3の誘電体層のCr/Ge組成比を同じとし変化させたが、Cr/Ge比を1.0以下の範囲で第2、第3の誘電体層で独立に変化させた場合にも同様の結果が得られた。
【0112】
なお、第2、第3の誘電体層に材料成分XとしてTi、V、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Cを混合し、その材料成分XとGeの原子数比(X/Ge)をbとしたとき、b≦1.0の範囲の記録媒体の場合にも同様の結果が得られた。
【0113】
なお、第2、第3の誘電体層のCr/Ge組成比が1.0以下の範囲で、かつ反射層厚と第3の誘電体層厚の組み合わせが、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内である場合には、同じ結果が得られた。
【0114】
なお、反射層の上面に形成された第4の誘電体保護層を膜厚20nm以上形成した光記録媒体でも、同じ結果が得られた。
【0115】
【発明の効果】
以上のように、第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内では、良好な記録感度と10回繰り返し記録後および50万回繰り返し記録後再生ジッタが得られる記録媒体がえられた。
【0116】
また、上記の構成の光記録媒体に対して、記録層の膜厚が14〜26nmの範囲である、第1の誘電体層の膜厚が70〜130nmの範囲である、第2の誘電体層の膜厚が4〜40nmの範囲である、第2、第3の誘電体層のCr/Ge比を1.0以下とした場合、良好な記録感度と50万回繰り返し記録後再生ジッタが得られる記録媒体がえられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の記録パワー、10回繰り返し記録後および50万回繰り返し記録後再生ジッタの総合評価結果の図
【図2】従来の光ディスクの構造図
【図3】本発明の実施の形態に用いた光ディスクの記録装置の図
【図4】本発明の実施の形態に用いた記録波形の図
【図5】本発明の実施の形態の記録パワーの結果の図
【図6】本発明の実施の形態の10回繰り返し記録後再生ジッタの結果の図
【図7】本発明の実施の形態の50万回繰り返し記録後再生ジッタの結果の図
【図8】前後端ジッタのアンバランス状態を説明するための図
【図9】本発明の一態様の光ディスクの断面構成図
【図10】本発明の他の態様の光ディスクの断面構成図
【符号の説明】
1 基板
2 第1の誘電体層
3 記録層
4 第2の誘電体層
5 反射層
6 第2の誘電体層
7 第3の誘電体層
8 誘電体保護層
11 光ディスク
12 スピンドルモータ
13 光学ヘッド
14 レーザー駆動回路
Claims (17)
- 透明基板上に形成された第1の誘電体層と、前記第1の誘電体層の上面に形成された第2の誘電体層と、前記第2の誘電体層の上面に形成されたエネルギービームの照射によって光学的に検出可能な可逆的変化を生ずる記録層と、前記記録層の上面に形成された第3の誘電体層と、前記第3の誘電体層の上面に形成された反射層とを有する光記録媒体であって、前記第2の誘電体層と前記第3の誘電体層がGe−NあるいはGe−O−Nの何れかを含み、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内であることを特徴とする光学的情報の記録媒体。
- 透明基板上に形成された第1の誘電体層と、前記第1の誘電体層の上面に形成された第2の誘電体層と、前記第2の誘電体層の上面に形成されたエネルギービームの照射によって光学的に検出可能な可逆的変化を生ずる記録層と、前記記録層の上面に形成された第3の誘電体層と、前記第3の誘電体層の上面に形成された反射層と、前記反射層の上面に形成された第4の誘電体層とを有する光記録媒体であって、前記第2の誘電体層と前記第3の誘電体層がGe−NあるいはGe−O−Nの何れかを含み、前記第3の誘電体層の膜厚をα、前記反射層の膜厚をβとし、膜厚単位をnmとした時、αとβが、β≧50、15≦α≦50、β≦2α+100、β≧2αで囲まれた範囲内であることを特徴とする光学的情報の記録媒体。
- 記録層の膜厚が14nm以上26nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 第1の誘電体層の膜厚が70nm以上130nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 第2の誘電体層の膜厚が4nm以上40nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 第1の誘電体層がZnSとSiO2の混合体であることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 第2の誘電体層と第3の誘電体層の少なくとも一方に、材料成分XとしてTi、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Cのうち少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 第2の誘電体層と第3の誘電体層の少なくとも一方に添加する材料成分XとGeの原子数比(X/Ge)をbとしたとき、bの範囲が1.0以下であることを特徴とする請求項7記載の光学的情報の記録媒体。
- 記録層がGe、Sb、Teを主成分とすることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 反射層がAlを主成分とすることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 第4の誘電体層がZnSとSiO2の混合体であることを特徴とする請求項2記載の光学的情報の記録媒体。
- 第4の誘電体層の膜厚が20nm以上であることを特徴とする請求項2または11何れかに記載の光学的情報の記録媒体。
- 請求項1〜12記載の記録媒体へ、複数パワーのレーザ光を切り換えて照射し、パルス幅変調されたデジタル信号を、光ビームを用いてオーバーライトする記録方法であって、1つの記録マークを形成するための記録波形が、前記レーザ光を、前記記録媒体が光学的に検出可能な可逆的変化を生ずるレーザ光パワー以上のパワーに予め設定した第1のパワーと、前記第1のパワーよりも低いパワーに予め設定した第2のパワーとの間で変調した複数のパルスからなる記録パルス列で構成されていることを特徴とする光学的情報の記録方法。
- 記録パルス列後に、レーザ光パワーが第1のパワー未満である消去パワーよりもさらに低いパワーである冷却パワーでレーザ光照射する冷却パルスを含み構成された記録波形であることを特徴とする請求項13記載の光学的情報の記録方法。
- 記録パルス列の始端部分と終端部分は一定の第1のパワーを照射し、記録パルス列の始端・終端パルス間は前記第1のパワーと第2のパワーのレーザ光を、データクロックの1周期以下の周期で交互に切り換えて照射する記録パルス列であることを特徴とする請求項13または14何れかに記載の光学的情報の記録方法。
- 記録パルス列の始端、終端部分の長さがデータクロックの1周期であることを特徴とする請求項15記載の光学的情報の記録方法。
- 記録パルス列後の冷却パルスでのレーザ照射時間が1周期であることを特徴とする請求項14記載の光学的情報の記録方法
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