JP4012077B2 - 果実・果菜の栽培装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、メロン、イチゴ等の果実やトマト、キュウリ、ナス等の果菜を栽培するのに使用される果実・果菜の栽培装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばメロンは、一般に、温室ハウス内で栽培されている。このようなメロンのハウス栽培では、頻繁に適量の水やりを行って、必要かつ十分な水を与え続けることが大切である。また、トマトなどの栽培では、水やりの手間を省くために、土を使わない水耕栽培も行われており、各種の水耕栽培法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−47334号公報(第2頁、図1−図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
メロンのハウス栽培では、種まきから収穫までの短くても100日前後の期間、例えば1日に5〜6回程度の水やりを怠りなく続けなければならず、相当な手間と労力を必要とする。また、頻繁な水やりのため、ハウス内は、湿度が90%前後となる。この結果、アブラムシ等の害虫が発生しやすくなり、また、雑草も生えやすくなり、そして、病気が発生しやすい環境となる。このため、薬剤を散布してハウス内を消毒する必要があり、例えば1週間に2〜3回程度、温度が40℃〜50℃にもなるハウス内で薬剤散布作業を行う必要があり、農業従事者の健康管理と苦労が大変である。また、薬剤の散布によって土壌が汚染される、といった問題点もある。
【0005】
一方、水耕栽培においては、外部から菌が持ち込まれて養水が汚染されたりすると、全ての作物が収穫不能となってしまう。このため、水質の管理には細心の注意を払う必要があり、水質管理のための手間が大変で、監視機器等の管理のためのコストも高くなる、といった問題点がある。
【0006】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、手間や労力をそれほど必要としなくてもメロン等の果実やトマト等の果菜を良好に栽培することができ、害虫が発生しにくく、雑草も生えにくく、病気の発生を抑えることができ、土壌汚染も防止することができ、特別な水質管理も不要である果実・果菜の栽培装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、果実や果菜を栽培するために使用される果実・果菜の栽培装置において、土壌が入った栽培箱と、少なくとも筒面が素焼きの多孔質セラミックで形成され、閉塞された筒状をなし、注水口および空気抜き孔が形設されて、前記栽培箱内の土壌中に埋設される潅水器具と、この潅水器具の前記注水口に一端部が連通接続された注水チューブと、この注水チューブの他端部が連通接続される水流出口および給水源に流路接続された給水管が連通接続される水導入口を有する貯水容器、この貯水容器内に溜められる水量を一定に調整する貯水量調整手段、ならびに、前記貯水容器内における水面が前記潅水器具より低くなるように、高さ位置が調節可能に固定されて貯水容器を保持する保持手段を有する水位調整器具と、前記潅水器具の空気抜き孔が大気に連通するのを遮断する通気遮断手段と、を備え、前記潅水器具の空気抜き孔に水位確認用チューブを連通接続し、その水位確認用チューブをU字状に折曲させた状態で垂下させ、その下端折曲部を、前記水位調整器具の貯水容器内における水面より下方に配置するとともに、最上部分を、水位調整器具の貯水容器内における水面より上方に配置するように保持具によって保持し、この水位確認用チューブを前記通気遮断手段としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の栽培装置において、前記水位調整器具の貯水容器の底部を貫通するように水導入管部を貯水容器に一体的に固着して、その水導入管部に前記水導入口が形設され、水導入管部の、貯水容器内部に挿入された他端部に、弁体に連接されたフロートが上昇および下降することにより弁座に形成された水流入口が閉塞および開放されるフロート式開閉弁を取着したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2記載の栽培装置において、前記潅水器具の中空部にロックウールが充填されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の栽培装置において、前記栽培箱の底面が金網もしくは多孔板で形成され、その栽培箱の下方の床表面が防水加工されたことを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る発明の果実・果菜の栽培装置においては、給水源から給水管を通って水位調整器具の貯水容器に水が供給され、貯水量調整手段による調整動作によって、貯水容器内には常に一定量の水が溜められる。そして、最初に、栽培箱内に入った土壌中に埋設された潅水器具内および注水チューブ内に水が充満した状態にする。これには、水が溜まった貯水容器を潅水器具より高い位置まで持ち上げることにより、貯水容器内から注水チューブを通って潅水器具内へ水が注入されるようにする。このとき、潅水器具内に存在する空気は、潅水器具内へ流入する水により空気抜き孔を通って外部へ押し出される。そして、潅水器具内に存在する空気が空気抜き孔を通って外部へ全て排出された後にも、さらに、潅水器具内から空気抜き孔を通して水位確認用チューブ内へ水を注入し、水位確認用チューブ内に水を充填する。このように、水位確認用チューブ内に水が充填されることにより、水位確認用チューブ内の水によって潅水器具の空気抜き孔と大気との連通が遮断されることになる。そして、水が充填されU字状に折曲された状態で垂下された水位確認用チューブの下端折曲部を、水位調整器具の貯水容器内における水面より下方に配置するとともに、水位確認用チューブの最上部分、例えば上部先端口を、水位調整器具の貯水容器内における水面より上方に配置することにより、水位確認用チューブ内に充填された水の液面高さによって水位調整器具の貯水容器内における水位を確認することが可能になる。潅水器具内および注水チューブ内に水が満たされると、保持手段によって貯水容器を、その貯水容器内における水面が潅水器具より低くなるように保持する。
【0013】
このように、貯水容器内における水面が潅水器具より低くされた状態では、潅水器具内の水に対しては貯水容器内における水面と潅水器具との高さ位置の差によるヘッド圧が作用しないので、ヘッド(落差)により潅水器具から土壌中に水が滲出することはない。したがって、潅水器具から土壌中へ必要以上の水が供給されることはない。一方、潅水器具内および注水チューブ内には水が満たされるとともに、潅水器具の空気抜き孔は大気との連通が遮断されているので、潅水器具内および注水チューブ内に水が密封された状態に維持され、潅水器具内から貯水容器の方へ水が逆流することはない。この状態では、土壌の水分吸引力により潅水器具内の水が、その筒面をなす素焼きの多孔質セラミックの微細孔を通って土壌中へ滲出し、土壌が必要とするだけの水分が供給されることとなる。そして、潅水器具から土壌中へ供給された水を補充するように、貯水容器内から注水チューブを通って潅水器具内へ水が注水され、貯水容器内には、給水源から給水管を通って水が補充され、貯水量調整手段によって貯水容器内に常に一定量の水が溜まるように調整される。
【0014】
請求項2に係る発明の栽培装置では、水導入管部を通って導入される水が、水導入管部の端部に設けられた弁座に形成された水流入口から貯水容器内へ流入する。そして、貯水容器内に水が溜まっていって水面位置が上昇することにより、フロートが浮力によって浮き上がる。このフロートの上昇に伴い、フロートに連接された弁体が上方へ移動して弁座に密接し、弁座に形成された水流入口が弁体によって閉塞される。これにより、貯水容器内への水の供給が止まる。一方、貯水容器内から注水チューブ内へ水が流出して貯水容器内における水面位置が下降すると、水面上に浮いているフロートも下降する。このフロートの下降に伴い、フロートに連接された弁体が下方へ移動して弁座から離間し、弁座に形成された水流入口が開放される。これにより、水導入管部を通り水流入口を通って貯水容器内へ水が流入し、上記したように再びフロートが上昇して、弁座に形成された水流入口が弁体によって閉塞されると、貯水容器内への水の供給が止まる。以上のような動作により、貯水容器内に常に一定量の水が溜まるように調整される。
【0015】
請求項3に係る発明の栽培装置では、潅水器具の中空部にロックウールが充填されていることにより、潅水器具内へ注入される水に含まれている鉄分や水あかなどがロックウールに吸着保持される。このため、鉄分や水あかなどが除かれた水が潅水器具の筒面をなす素焼きの多孔質セラミックの微細孔を通過して土壌中へ滲出することになるので、鉄分や水あかなどによって多孔質セラミックの微細孔が目詰りを起こすことが防止される。
【0017】
請求項4に係る発明の栽培装置では、栽培箱の底面が金網もしくは多孔板で形成されているので、何らかの原因で土壌への給水量が多くなり過ぎると、栽培箱の底面から水滴が滴下するといったことが起こるため、それを観察して、給水量が多くなり過ぎないように調節することが可能になる。そして、栽培箱の下方の床表面は防水加工されているので、栽培箱の底面から水滴が滴下しても特に問題が無い。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1ないし図3は、この発明の実施形態の1例を示し、図1は、果実・果菜の栽培装置の正面図であり、図2は、その平面図であり、図3は、その側面図である。なお、潅水器具は、土壌中に埋設された状態で使用されるが(図4参照)、図1ないし図3においては、理解しやすくするため、土壌の図示を省略して潅水器具を露呈させた状態で描いている。
【0020】
この果実・果菜の栽培装置は、土壌が入った栽培箱10、この栽培箱10の内部に配置され土壌中に水を滲出させて供給する潅水器具12、この潅水器具12へ注水するとともに水位を一定に保つ水位調整器具14などを備えて構成されている。栽培箱10は、ブロック16上に置かれて固設されており、図1に示すように、必要により複数の栽培箱10が並列して設置される。栽培箱10は、その底面が細かい網目の金網で形成されている。金網の代わりに、多数の小孔が形成された多孔板によって栽培箱10の底面を形成するようにしてもよい。そして、栽培箱10の下方の床表面が防水加工されている。
【0021】
潅水器具12は、図4に縦断面図を示すように、栽培箱10内に入った土壌17中に埋設される。この潅水器具12は、図5に縦断面図を示すように、一端が閉塞され他端が開口した円筒状をなし素焼きの多孔質セラミックで形成されたセラミックカップ18と、プラスチックで形成されセラミックカップ18の開口側に嵌着されてその開口面を閉塞する覆蓋部20とから構成されている。覆蓋部20には、注水口22および空気抜き孔24がそれぞれ形設されており、注水口22および空気抜き孔24にそれぞれ連通する接続用管部26、28が一体的に設けられている。また、セラミックカップ18の内部にはロックウール30が充填されている。このようにセラミックカップ18の内部にロックウール30を充填しておくと、潅水器具12内へ注入される水に含まれている鉄分や水あかなどがロックウール30に吸着保持されるため、潅水器具12内の水がセラミックカップ18の壁面の微細孔を通過して土壌中へ滲出するときに、その水には鉄分や水あかなどが含まれなくなって、鉄分や水あかなどでセラミックカップ18の壁面の微細孔が目詰りを起こすことが防止されるので、好ましい。
【0022】
水位調整器具14は、潅水器具12へ注入する水が貯留される貯水容器32、この貯水容器32を支持する支持皿34、固定部に固定されて垂設され鉛直姿勢に支持桿38が取着された支柱36、この支柱36の支持桿38に摺動自在に挿通される貫通孔が形設されるとともに、支持桿38に固定するための止め具42を有し、支持皿34に一体的に連接されて支持皿34を片持ち式に保持する保持部材40、および、貯水容器32内に溜められる水量を一定に調整する貯水量調整機構を備えて構成されている。そして、支柱36の支持桿38に沿って保持部材40を支持皿34と一体に上下方向へ移動させ、適当な高さ位置において止め具42で保持部材40を支持桿38に固定することにより、貯水容器32の高さ位置を調節することができるようになっている。
【0023】
貯水容器32は、図6に縦断面図を示すように、円筒部44、この円筒部44に一体的に固着され円筒部44の底部を閉塞する底板46、および、円筒部44の上端部に着脱可能に嵌合され上面開口を閉塞する蓋部48から形成されている。底板46には、水流出口50が形設されており、その水流出口50に連通する接続用管部52が一体的に設けられている。また、底板46の中心部には、底板46を貫通するように水導入管部54が一体的に固着されており、その水導入管部54に水導入口56が形設され、その水導入口56に連通する接続用管部58が水導入管部54に接続されている。水流出口50に連通する接続用管部52には、注水チューブ60の一端部が接続され、注水チューブ60の他端部は、潅水器具12の注水口22に連通する接続用管部26接続されている。また、水導入口56に連通する接続用管部58には、給水管62の一端部が接続され、給水管の他端部は、給水タンク64に流路接続された給水用配管66に連通接続されている。給水用配管66は、地面近くに敷設されている。
【0024】
貯水量調整機構は、図6に示すように、水導入管部54の、貯水容器32内部に挿入された上端部に取着されたフロート式開閉弁68で構成されている。フロート式開閉弁68は、貯水容器32内に収容されたフロート70、中心部に水流入口76が形成された弁座74を上端部に有し、水導入管部54の上端部に螺着された管状部材72、フロート70の下端部中心に固着され、弁座74の水流入口76を貫通して管状部材72内に挿入された連接軸78、および、連接軸78の下端部に垂直に固着された小円板状の弁体80から構成されている。そして、弁座74に形成された水流入口76は、弁体80に連接されたフロート70が上昇および下降することにより、弁体80によって閉塞および開放されるようになっている。このフロート式開閉弁68の動作を、貯水容器32の一部を拡大した図7および図8に基づいて説明する。
【0025】
図7に示すように、貯水容器32内にフロート70を浮上させる量の水82が溜まっていない状態では、弁体80が弁座74から離間しており、水流入口76は開放されている。このため、給水タンク64から給水用配管66および給水管62を通って水導入管部54内へ供給される水は、水導入管部54から管状部材72を通って水流入口76から貯水容器32内へ流入する。貯水容器32内に水82が溜まっていって水面位置が上昇すると、フロート70が浮力によって次第に浮き上がる。そして、図8に示すように、貯水容器32内に十分な量の水82が溜まって、フロート70が上昇すると、フロート70に連接された弁体80も上方へ移動して弁座74に密接し、弁座74に形成された水流入口76が弁体80によって閉塞される。これにより、貯水容器32内への水の供給が止まる。
【0026】
一方、貯水容器32内の水82が水流出口50から注水チューブ60内へ流出して、貯水容器32内における水面位置が下降すると、水面上に浮いているフロート70も下降する。このフロート70の下降に伴い、フロート70に連接された弁体80も下方へ移動して弁座74から離間し、弁座74に形成された水流入口76が開放される。これにより、水導入管部54から管状部材72を通り水流入口76を通って貯水容器32内へ水が流入する。そして、図8に示したように再びフロート70が上昇して、弁座74に形成された水流入口76が弁体80によって閉塞されると、貯水容器32内への水の供給が止まる。以上のような動作を繰り返すことにより、貯水容器32内に常に一定量の水が溜まるように調整される。
【0027】
貯水容器32は、その内部に一定量の水が溜まった状態において、貯水容器32内における水面が栽培箱10内の潅水器具12の下端位置より低くなるように設置される。この貯水容器32の高さ位置の調節は、予め、上述したように支柱36の支持桿38に沿って保持部材40を上下方向へ移動させ、支持皿34が適当な高さ位置に配置されたときに止め具42によって保持部材40を支持桿38に固定することにより行っておく。
【0028】
潅水器具12の空気抜き孔24に連通する接続用管部28には、図9に示すように、水位確認用チューブ84が接続される。水位確認用チューブ84は、U字状に折曲された状態で垂下される。そして、水位確認用チューブ84は、その下端折曲部86が、水位調整器具14の貯水容器32内における水面より下方に配置されるとともに、上部先端口88(二点鎖線で示すように、水位確認用チューブ84の先端部が逆U字状に折曲されているようなときには、上端折曲部90)が、水位調整器具14の貯水容器32内における水面より上方に配置されるように、適当な保持具(図示せず)によって保持されるようにする。この水位確認用チューブ84は、後述するように、水位調整器具14の貯水容器32内における水位を確認することができるほか、潅水器具12の空気抜き孔24が大気に連通するのを遮断する機能を併せ持つ。
【0029】
以上のような構成を備えた果実・果菜の栽培装置においては、上記したように、給水タンク64から給水用配管66および給水管62を通って水位調整器具14の貯水容器32内へ水が供給され、貯水容器32内に常に一定量の水が溜められる。そして、水が溜まった貯水容器32を潅水器具12より高い位置まで持ち上げることにより、貯水容器32内から注水チューブ60を通って潅水器具12内へ水を注入する。このとき、潅水器具12内に存在する空気は、潅水器具12内へ流入する水により空気抜き孔24を通って潅水器具12から押し出される。
【0030】
潅水器具12内に存在する空気が潅水器具12から全て排出され、潅水器具12内に水が充満した後にも、引き続いて潅水器具12内へ注水する。これにより、潅水器具12内から空気抜き孔24を通って水位確認用チューブ84内へ水が注入される。このようにして水位確認用チューブ84内に水が充填されると、水位確認用チューブ84内の水によって潅水器具12の空気抜き孔24と大気との連通が遮断されることになり、潅水器具12内への空気の流入が阻止される。
【0031】
潅水器具12内および注水チューブ60内ならびに水位確認用チューブ84内に水が満たされると、上記したように高さ位置が調節された支持皿34上に貯水容器32を載置して、貯水容器32を、その貯水容器32内における水面が潅水器具12より低くなるように保持する。また、このとき、水が充填されU字状に折曲された状態で垂下された水位確認用チューブ84の下端折曲部86が、水位調整器具14の貯水容器32内における水面より下方に配置されるとともに、水位確認用チューブ84の上部先端口88が、水位調整器具14の貯水容器32内における水面より上方に配置されることにより、水位確認用チューブ84内に充填された水の液面92の高さによって水位調整器具14の貯水容器32内における水位を確認することができるようになっている。
【0032】
上記したように貯水容器32内における水面が潅水器具12より低くされた状態においては、潅水器具12内の水に対して貯水容器32内における水面と潅水器具12との高さ位置の差によるヘッド圧が作用しない。このため、ヘッド圧の作用で潅水器具12から土壌中に水が滲出することはないので、潅水器具12から土壌中へ必要以上の水が供給されることがない。一方、潅水器具12内および注水チューブ60内には水が満たされるとともに、潅水器具12の空気抜き孔24は、水位確認用チューブ84内の水によって大気との連通が遮断されているので、潅水器具12内および注水チューブ60内に水が密封された状態に維持される。したがって、潅水器具12内から貯水容器32の方へ水が逆流することはない。この状態においては、土壌の水分吸引力により潅水器具12内の水が、その壁面をなす素焼きの多孔質セラミックの微細孔を通って土壌中へ滲出し、土壌が必要とするだけの水分が供給されることとなる。そして、潅水器具12から土壌中へ供給された水を補充するように、貯水容器32内から注水チューブ60を通って潅水器具12内へ水が注水される。また、貯水容器32内には、給水タンク64から給水用配管66および給水管62を通って水が補充され、貯水容器32内に常に一定量の水が溜まった状態に維持される。
【0033】
また、栽培箱10の底面が金網で形成されているので、何らかの原因で土壌へ供給される水分が多くなり過ぎると、栽培箱10の底面から水滴が滴下するといったことが起こる。このため、そのような事態が観察されたときは、給水量が多くなり過ぎないように調節する。そして、栽培箱10の下方の床表面は防水加工されているので、栽培箱10の底面から水漏れしても特に問題が無い。
【0034】
なお、貯水容器32の保持機構は、上記した実施形態のものに限らないし、貯水容器32内に溜められる水量を一定に調整する貯水量調整機構についても、フロート式開閉弁以外の機構のものを採用しても構わない。
【0035】
【発明の効果】
請求項1に係る発明の果実・果菜の栽培装置を使用すると、手間や労力をそれほど掛けなくてもメロン等の果実やトマト等の果菜を栽培することができ、給水が理想的に行われるため、栽培期間が短縮されるとともに味が良好で大きく生育した果実や果菜が得られる。また、害虫が発生しにくく、雑草も生えにくく、病気の発生を抑えることができ、特別な水質管理も不要になる。さらに、この栽培装置では、簡易な構成により、潅水器具の空気抜き孔と大気との連通を確実に遮断することができ、また、水位調整器具の貯水容器内における水位を確認することができる。
【0036】
請求項2に係る発明の栽培装置では、貯水容器内に常に一定量の水が溜まるように確実に調整することができる。
【0037】
請求項3に係る発明の栽培装置では、水に含まれている鉄分や水あかなどによって潅水器具の多孔質セラミックの微細孔が目詰りを起こすことを防止することができる。
【0039】
請求項4に係る発明の栽培装置では、土壌への給水量が多くなり過ぎたときに、給水量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態の1例を示す果実・果菜の栽培装置の正面図である。
【図2】図1に示した栽培装置の平面図である。
【図3】図1に示した栽培装置の側面図である。
【図4】図1に示した栽培装置の構成要素である栽培箱の縦断面図である。
【図5】図1に示した栽培装置の構成要素である潅水器具の縦断面図である。
【図6】図1に示した栽培装置の構成要素である貯水容器の縦断面図である。
【図7】図1に示した栽培装置の構成要素であるフロート式開閉弁の動作を説明するための図であって、貯水容器の一部を拡大した縦断面図である。
【図8】同じくフロート式開閉弁の動作を説明するための図であって、貯水容器の一部を拡大した縦断面図である。
【図9】図1に示した栽培装置の構成要素である水位確認用チューブを潅水器具と共に示す正面図である。
【符号の説明】
10 栽培箱
12 潅水器具
14 水位調整器具
17 土壌
18 セラミックカップ
20 覆蓋部
22 注水口
24 空気抜き孔
26、28、52、58 接続用管部
30 ロックウール
32 貯水容器
34 支持皿
36 支柱
38 支持桿
40 保持部材
42 止め具
44 円筒部
46 底板
48 蓋部
50 水流出口
54 水導入管部
56 水導入口
60 注水チューブ
62 給水管
64 給水タンク
66 給水用配管
68 フロート式開閉弁
70 フロート
72 管状部材
74 弁座
76 水流入口
78 連接軸
80 弁体
82 水
84 水位確認用チューブ
86 水位確認用チューブの下端折曲部
88 水位確認用チューブの上部先端口
90 水位確認用チューブの上端折曲部
92 水位確認用チューブ内の水の液面
Claims (4)
- 土壌が入った栽培箱と、
少なくとも筒面が素焼きの多孔質セラミックで形成され、閉塞された筒状をなし、注水口および空気抜き孔が形設されて、前記栽培箱内の土壌中に埋設される潅水器具と、
この潅水器具の前記注水口に一端部が連通接続された注水チューブと、
この注水チューブの他端部が連通接続される水流出口および給水源に流路接続された給水管が連通接続される水導入口を有する貯水容器、この貯水容器内に溜められる水量を一定に調整する貯水量調整手段、ならびに、前記貯水容器内における水面が前記潅水器具より低くなるように、高さ位置が調節可能に固定されて貯水容器を保持する保持手段を有する水位調整器具と、
前記潅水器具の空気抜き孔が大気に連通するのを遮断する通気遮断手段と、
を備え、
前記潅水器具の空気抜き孔に水位確認用チューブを連通接続し、その水位確認用チューブをU字状に折曲させた状態で垂下させ、その下端折曲部を、前記水位調整器具の貯水容器内における水面より下方に配置するとともに、最上部分を、水位調整器具の貯水容器内における水面より上方に配置するように保持具によって保持し、この水位確認用チューブを前記通気遮断手段としたことを特徴とする果実・果菜の栽培装置。 - 前記水位調整器具の貯水容器の底部を貫通するように水導入管部を貯水容器に一体的に固着して、その水導入管部に前記水導入口が形設され、水導入管部の、貯水容器内部に挿入された他端部に、弁体に連接されたフロートが上昇および下降することにより弁座に形成された水流入口が閉塞および開放されるフロート式開閉弁を取着した請求項1記載の果実・果菜の栽培装置。
- 前記潅水器具の中空部にロックウールが充填された請求項1または請求項2記載の果実・果菜の栽培装置。
- 前記栽培箱の底面が金網もしくは多孔板で形成され、その栽培箱の下方の床表面が防水加工された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の果実・果菜の栽培装置。
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