JP4010061B2 - ステージ装置及びそれを用いた光学装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動可能なステージを備え、このステージに対して流体の供給、回収を行うステージ装置及びそれを用いた光学装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種光線又は電子ビーム等を利用して、半導体ウェハ等の基板を処理するフォトリソグラフィ工程や検査工程を実施する光学装置においては、一般に、当該工程を精度よく行うことを可能とするため各種の支援装置が備えられている。それらのうち、前記半導体ウェハを載置したステージを高精度に動作させるステージ装置はその代表的なものの一つである。このステージ装置は、例えば、電子ビームを利用する場合等、真空雰囲気の作業環境内、すなわち真空容器内で動作するよう想定されるものもある。
【0003】
従来のステージ装置としては、例えば図9に示すようなものが使用されていた。これは、真空容器1内に、不図示の直進ガイドにより案内されるステージ2、当該ステージ2に接続部7を介して連結される伝達部3、またステージ2に対する空気供給路となる伸縮スパイラル4及びこの供給された空気を回収する回収路となる伸縮ベローズ5、6等を備えたものとなっている。
【0004】
ステージ2は、真空容器1外に設置された駆動源から、伝達部3を介して伝達される駆動力により移動することが可能となっている。図9においては、図中上下方向に移動されることになる。また、この例によるステージ2は、前記直進ガイド部との対向面に不図示のエアパッドを備えたものとなっており、当該エアパッドに対して、外部より空気を供給すると共にこれをガイド部との間に噴出することによって、浮遊した状態となることが可能となっている。これによって、ステージ2の移動はスムースなものとなる。伸縮スパイラル4及び伸縮ベローズ5、6は、この空気の供給及び供給された空気の回収に使用するために備えられているものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のステージ装置においては、以下のような問題があった。ステージ2に空気を供給する場合には、上述したように、伸縮スパイラル4や伸縮ベローズ5、6等からなる供給路及び回収路がそれぞれ必要となる。ところで、これら供給路及び回収路は、ステージ2の移動を妨げるものであってはならず、したがって、図9においてはこの要請に応えるため、それぞれ伸縮自在なスパイラル構造、ベローズ構造を採用している。
【0006】
しかし、一般的にこれらの伸縮に伴う動作抵抗は大きいものであることが知られ、特にベローズにおいてはこれは顕著となる。したがって、ステージ2の移動に伴うベローズの伸縮によって、その伸縮に係る動作抵抗がステージ2に対する外乱として影響を与えることとなってしまう。つまり、ステージ2の移動に際し大きさ、方向が不定な力が働くこととなり、移動精度を高く保つことができなくなる。この結果は、半導体ウェハにおけるフォトリソグラフィティ工程等において一般に極めて高精度なステージ2動作が要求されることを鑑みると好ましい状況であるとはいえない。より言えば、僅かでもステージ2の移動精度を損なうことは、一定の品質を備える製品を製造することが不可能となる場合も考えられる。
【0007】
また近年、生産能率の向上をより図るために、大径ウェハ(300mm)の採用が進行しつつある。大径ウェハが採用されると言うことは、すなわちステージ2の移動距離(ストローク)が大きくなることを意味するから、それに連結される上記伸縮スパイラル4及び伸縮ベローズ5、6等は、より長いものを用意しなければならない。このことはしかし、伸縮に伴う抵抗の増大を意味するから、ステージ2の移動動作にとってはより過酷な状況となり、精度を保つことがさらに困難となる。
【0008】
また図9に示すように、ステージ装置を真空容器1内にて使用する場合には特に、伸縮スパイラル4及び伸縮ベローズ5、6から空気が漏洩した場合問題となる。このことは即、ウェハ周囲の真空度低下やその雰囲気を汚染することとなるから、当該ウェハに余計な不純物を付着させる等、品質上極めて好ましくない。したがって、このような漏洩した気体に対しては、何らかの対策を施すことが必要である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高精度な動作等が可能となるステージを備えるとともに、ステージ周囲の作業環境を汚染させることのないようなステージ装置及びそれを用いた光学装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の手段をとった。
すなわち、請求項1記載のステージ装置は、試料を載置し移動可能なステージと、前記ステージに接続される接続部を介して駆動力を伝達する伝達手段と、前記ステージに流体を供給する供給手段と、前記供給手段から供給された流体を前記ステージから回収する回収手段とを備え、前記回収手段は、前記伝達手段に固定される固定部を有し、少なくとも前記ステージから前記固定部までの間の構造が可撓性構造であることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、固定部により、伝達手段と回収手段とが互いに固定されることになる。このことから、ステージが駆動力を与えられて移動する際には、回収手段がその移動に対して自由に又は不規則に動くようなことがない。換言すれば、ステージの移動に対して外乱を与えるようなことがない。また、ステージから前記固定部までの間の回収手段の構造が可撓性構造となっているから、回収手段からステージに対して働く力は直接的なものではなくなり、これによっても当該回収手段が、ステージの移動に対する外乱要因とはならない。
【0012】
また、請求項2記載のステージ装置は、前記回収手段が、小径管体が挿入された大径管体で構成され、各管体が相対的に移動することで伸縮することを特徴とする。
【0013】
本発明による回収手段は、前記ステージの移動に伴って、小径管体と大径管体の相対的な移動により、伸縮動作をすることが可能である。そして、この伸縮動作は、ステージの移動に関してそのスムースさを保証する。したがって、これによれば、前記にも増してステージの動作に対する外乱を与えるようなことがない。
【0014】
また、請求項3記載のステージ装置は、前記回収手段において、小径管体と大径管体との間の継管部に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、継管部に隙間が形成されていることから、大径管体と小径管体との伸縮動作に伴う摺動抵抗は殆ど無視される程度のものとなる。したがって、ステージの移動は極めてスムースなものとなり、ステージに対して外乱を与えるという事象は殆ど発生しない。
【0016】
また、請求項4記載のステージ装置は、前記供給手段が前記回収手段の内部に配設されていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、供給手段表面から又はその内部から外方へと、放出される又は漏れだそうとする流体がある場合に、その流体は回収手段内に排出されることになる。したがって、その流体は速やかにかつ安全に、別途用意可能な所定の経路に沿って外部へと排出されることから、ステージ周囲の作業環境の雰囲気を汚染するようなことがない。
【0018】
また、請求項5記載のステージ装置は、前記回収手段は、第1回収手段と第2回収手段とで構成され、前記第1回収手段は、前記供給手段を内部に配設し、前記第2回収手段は、前記第1回収手段を内部に配設することを特徴とする。
【0019】
これによれば、供給手段を原因として漏洩する流体は、請求項4に係る前記作用と同様、第1回収手段により外部へと排出される。また、第1回収手段表面から又はその内部から外方へと漏洩する流体がある場合には、その流体は第2回収手段内に排出されることになる。したがって、その流体は速やかにかつ安全に、別途用意可能な所定の経路に沿って外部へと排出されることとなるから、作業環境の雰囲気を汚染するようなことがない。さらに、本発明によれば、供給手段、第1回収手段、及び第2回収手段のそれぞれが、全て同軸上に配されるような形態を想定することが可能であるから、設置場所は最小限用意すればよく、装置のコンパクト化が達成され得る。
【0020】
また、請求項6記載のステージ装置は、前記回収手段が、第1回収手段と第2回収手段とで構成され、前記第1回収手段は、前記供給手段を内部に配設し、前記第2回収手段は、少なくとも前記第1回収手段の前記継管部を囲むように配設されることを特徴とする
【0021】
これによれば、供給手段を原因として漏洩する流体は、請求項4と同様、第1回収手段により排出される。また、第1回収手段の継管部が第2回収手段に囲まれているから、当該継管部から漏洩するおそれのある流体も、第2回収手段により速やかにかつ安全に、別途用意可能な所定の経路に沿って外部へと排出されることになる。
【0022】
また、請求項7記載の光学装置は、処理対象の試料を載置して移動するステージ装置と、前記ステージに載置された前記試料に光線又は荷電粒子を照射する照射系とを備えた光学装置において、前記ステージ装置は、請求項1乃至6のいずれか一つに記載のステージ装置であることを特徴とするものである。
【0023】
この光学装置は、ここまでに記した各種特徴をもつステージ装置を備えていることから、それぞれに対応した各種作用の発揮が期待できる光学装置であるということが言える。すなわち、この光学装置においては、ステージへ外乱が与えられるようなことがなく、またその作業環境が汚染されるようなことがない。一般に精密なステージ動作が要求されると共に、清浄な環境をも必要とされる光学装置においては、これら作用がもつ意味合いは大きい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の第一の実施形態について、図1を参照して説明する。この図1は、第一実施形態に係るステージ装置の概要を示す平面図である。なお、以下参照する図面においては、従来の技術の説明等で参照した図9に使用した符号であって、同一の対象を指すものは同一の符号を使用して説明することとする。
【0025】
このステージ装置は、真空容器1内に、ステージ2、当該ステージ2に連結される伝達部(伝達手段)3、またステージ2に対する空気(流体)の供給路となる伸縮スパイラル4及びこの供給された空気を回収する回収路となる伸縮ベローズ5、6等を備えたものとなっている。なお、真空容器1には、その内部を所望の真空度とする図示しない真空排気系が接続されている。
【0026】
ステージ2は、一般には略長方形状又は略正方形状のものが使用され、この上面に半導体ウェハや液晶板の原料となるガラス板等の試料が載置されるようになっている。この試料をステージ2上面に固着する。ステージ2は、真空容器1外に設置された駆動源30と、伝達部3及び接続部7を介して接続されている。駆動源30としては、例えばリニアモータ式駆動源等を採用すればよい。ステージ2の移動は、これらを通じて駆動力が伝達されることにより実現される。また、このステージ2の移動は不図示の直進ガイドを案内とすることにより行われる。図1においてステージ2は、図面中、上下方向に移動することが可能となっている。ただし、図1におけるステージ2が、図面中上下方向のみに移動するようになっていることは、特にこだわるべき事項ではなく、図面中横方向に同様に移動可能とされていてもよい。この場合、横方向においても伝達部3等の機構が備えられることになる。
【0027】
伝達部3は、上述したように、真空容器1外に設置された駆動源30から発生した動力を接続部7を介してステージ2に伝達するための部材である。したがって、これはステージ2のストローク(移動距離)に相応した長さを備えたものとなっており、これが押し出されることでステージ2を図中上方向に、引き込まれることで図中下方向に、それぞれ移動可能とするものである。また、前記接続部7は、図1に示すように、伝達部3とステージ2とが進行方向以外の自由度をもって連結されるような構造となっている。
【0028】
伸縮スパイラル4と伸縮ベローズ5、6(以下配管類と略すことがある)は、それぞれ前記ステージ2に空気を供給するため、またその供給された空気を回収するために設けられている。なお、伸縮スパイラル4は樹脂等、伸縮ベローズ5、6は鋼等を材質として構成されたものとなっている。真空容器1外における伸縮スパイラル4の延長端には図示しないエアコンプレッサ、また、伸縮ベローズ5、6の延長端にはそれぞれに独立の図示しない真空排気系が接続されている。したがって、伸縮ベローズ5、6には、異なる吸引能力を与えて排気作業を分担させることが可能となっている。本第一実施形態では、伸縮ベローズ5の方を低真空用、伸縮ベローズ6の方を高真空用と定めることとする。ただし、この逆であっても本質的には相違ないことは言うまでもない。なお、ここでいう二系統の真空排気系は、前記した真空容器1内を排気する真空排気系とは異なるものである。つまり、互いに独立である。ただし、共用を可能とするような構成とするならばこの限りでない。
【0029】
本第一実施形態においては、上記空気は、ステージ2の浮遊状態を現出させるために用いられる。すなわち、空気は、ステージ2が前記不図示の直進ガイドに対向する面に設けられるエアパッド(不図示)に対して供給されるようになっている。この空気は、当該エアパッドから直進ガイドに対して噴出することにより、その反力としてステージ2を浮遊状態とするものである。このことにより、ステージ2が移動する際には、当該ステージ2と直接的に接触する部材がないことになるから、スムースな移動を実現することが可能となる。そして、エアパッドから噴出された空気は、その周囲を囲む排気口から伸縮ベローズ5、6を介して外部に排気されることになる。なお、空気の用途はこれに限られるものではないことは言うまでもなく、上記したものはあくまでも一例である。
【0030】
これら伸縮スパイラル4及び伸縮ベローズ5、6はそれぞれ固定部4f、5f、6fを有している。そしてこれら固定部4f、5f、6fは、前記伝達部3に備えられた被固定部10に接続され、当該伝達部3と配管類4、5、6とを一体的に固定している。また、この被固定部10とステージ2との間には、前記伸縮スパイラル4及び伸縮ベローズ5、6のステージ2側延長部に該当する部分に、それぞれに対応して可撓性構造となる管体4a、5a、6aが接続されている。なお、被固定部10は、伸縮スパイラル4、伸縮ベローズ5、6と、これらに対応して接続される管体4a、5a、6aとを、それぞれ連通させるような構造となっている。より具体的に言えば、被固定部10には管路4h、5h、6hがそれぞれ貫通するように形成されており、前記配管類4、5、6及び管体4a、5a、6aは、それら管路4h、5h、6hの両端に接続されるようになっている。
【0031】
また、管体5a、6aは、伸縮ベローズ5、6と同様、ベローズと同形態となるものであるが、これらは伸縮ベローズ5、6に比べて軽量なものであり、また、柔軟性に富んだもの、すなわち低剛性なものを使用する。なお、管体4aに関しても同様にして、伸縮スパイラル4本体よりも柔軟性のあるものを使用する方が好ましい。
【0032】
なお、本発明でいうところの「供給手段」とは、本第一実施形態において、前記伸縮スパイラル4、エアコンプレッサ、管路4a等からなる空気の供給路全体の構成を指すものとし、また「回収手段」とは、前記伸縮ベローズ5、6、これらそれぞれに接続される真空排気系、そして管路5a、6a等からなる空気の回収路全体の構成を指すものとする。
【0033】
以下では、上記構成となるステージ装置における作用及び効果について説明する。まず、このステージ装置においては、真空容器1外の駆動源30から、伝達部3及び接続部7を介して、ステージ2に対する駆動力伝達が行われることは先述した。この駆動力伝達は、より詳細には次のような態様により行われる。例えば、図1中上方向にステージ2を移動させる場合を考えると、伝達部3が図中上方向に移動することによって伝達部3の一部である被固定部10はもとより、接続部7も上方向に移動し、この力が直接的にステージ2に伝達することになる。
【0034】
このとき、被固定部10とステージ2とは接続部7により一定間隔に保たれることから、これらの間に設けられている管体4a、5a、6aは、ステージ2に対して直接的な力、言い換えれば移動以外に係る余計な外力をステージ2に対して及ぼすようなことがない。なぜならば、これらすべては可撓可能であると共に、柔軟性に富み、低剛性なものであるからである。また、これらに比べて比較的剛性の高い配管類4、5、6、特に伸縮ベローズ5、6は、それぞれの固定部4f、5f、6f及び被固定部10によって伝達部3に一体的に固定されているから、これらがステージ2の移動に伴い、自由に又は不規則に動作するようなことがなく、また仮にこれらから力が発生しても、その力がステージ2に到達するような事態も回避することが可能となっている。さらにいえば、接続部7が、上述したようにステージ2の進行方向以外の自由度をもつ構造となっているから、ヨーイング、ピッチング、ローリング等の力がステージ2に伝達されるようなことがない。
【0035】
つまり、本第一実施形態におけるステージ装置においては、ステージ2の移動に伴って、配管類4、5、6から当該ステージ2に対して外乱が与えられるようなことがない。すなわち、駆動源30から伝達された駆動力は、正しくステージ2に対して伝達されると共に、位置決め後においても不要な外乱を受けることがない。したがって、このステージ2においては、高精度な動作又は位置決め等を実現することができる。
【0036】
以下では本発明の第二の実施形態について、図2から図4を参照して説明する。なお、この実施形態においては、真空容器1、ステージ2、伝達部3等の構成、また可撓性構造となる管体4a、5a、6a等の構成は、前記第一実施形態と同様であるのでその説明を省略する。また、「供給手段」、「回収手段」に係る定義等も同様である。
【0037】
図2においては、真空容器1内に設置される回収手段が、小径管体51、61及びこれらを挿入する大径管体52、62により構成されている。すなわち、前記した伸縮ベローズ5、6が、小径管体51、61及び大径管体52、62に置換された形態となっているといってもよい。これらのうち小径管体51、61は、真空容器1の壁1aにフランジ等周知の手段で固定されており、不動のものとなっている。また、大径管体52、62は、その固定部52f、62fが前記第一実施形態にて説明した被固定部10に固定されている。したがって、伝達部3が図面中、上下方向に動作するときには、大径管体52、62が被固定部10と共に動作することになる。例えば、ステージ2が図面中下方向へ移動するときは、大径管体52、62が小径管体51、61を次第に覆うような動作をすることとなる。
【0038】
図3は、小径管体51、61及び大径管体52、62の継管部5c、6cを示す拡大図である。この図に示すように、継管部5c、6cにおいてはOリングパッキン5o、6oが取り付けられている。このOリングパッキン5o、6oによって、継管部5c、6cにおけるリークを防止することが可能となっている。
【0039】
このような構成となるステージ装置においては、ステージ2が移動する際に、小径管体51、61と大径管体52、62とが相対的に移動し、伸縮動作を実現する。したがって、ステージ2の移動はそのスムースさが保証されるとともに、前記第一実施形態にも増して当該ステージ2の動作に対して外乱を与えるようなことがない。つまり、本実施形態におけるステージ装置は、より高精度なステージ2に関する動作及び位置決め等を実現することができる。
【0040】
ところで、上記に示したようないわば二重管構造となる回収手段においては、図4に示すように、上記継管部5c、6cにおいて、隙間5v、6vを形成することとしてよい。これは、小径管体51、61及び大径管体52、62内外の真空度の差が小さい場合に有効である。このようにすれば、小径管体51、61と大径管体52、62との伸縮動作に伴う摺動抵抗は殆ど無視される程度のものとなる。したがって、ステージ2の移動は極めてスムースなものとなり、またステージ2に対して外乱が与えられるという事態を殆ど心配する必要がなくなる。なおこのことは、ステージ2のさらに高精度な動作及び位置決め等を実現することに対して、大きく貢献することになることは言うまでもない。
【0041】
以下では本発明の第三の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、この場合においても、真空容器1、ステージ2等の構成は前記同様であるので、それら同様部分に関する説明は省略することとする。
【0042】
図5において、真空容器1内に設置される供給手段、すなわち伸縮スパイラル4は、前記小径管体51及び大径管体52の内部に配設されている。このことに伴い、当該伸縮スパイラル4を固定する被固定部10aも、大径管体52内部に配設されている。また、可撓性構造となる管体4aも、大径管体52に被固定部10を介して接続される管体5a内部に配設されている。
【0043】
このような構成となるステージ装置においては、伸縮スパイラル4の外表面又はその内部から外方へと、放出される又は漏れだそうとする空気がある場合には、その空気は大径管体52又は小径管体51内部に排出されることになる。なお、伸縮スパイラル4を原因として漏洩する空気は、より具体的には、前記被固定部10aと当該伸縮スパイラル4との接続部等の部位で特に発生しやすいと考えられる。また、伸縮スパイラル4は前記したように樹脂製であることから、これが高真空雰囲気中におかれると、その外表面からガス放出される現象が生じやすい。本実施形態においては、これら空気やガスが、上述したように回収手段内に排出されることになる。
【0044】
上記放出又は漏洩した空気、より一般には気体は、回収手段によって速やかにかつ安全に、真空容器1外部へと排出されることになる。したがって、ステージ2周囲の作業環境雰囲気が汚染されるようなことがない。このことは、ステージ2上に載置される前記試料に露光処理等の何らかの処理を施す場合には、当該試料に不要な不純物を付着させるような事態を発生させることがないことを意味する。よって、このステージ装置においては、高品質な製品を提供することが可能となる。なお、このステージ装置においては、可撓性構造となる管体4a、5a、6aや被固定部10に係る構成は前記と同様であるから、ステージ2の高精度な動作及び位置決め等が可能であることは言うまでもない。また、この点に関しては以下に説明する第四及び第五の実施形態においても同様である。
【0045】
以下では本発明の第四の実施形態について、図6を参照して説明する。図6においては、小径管体51及び大径管体52(以下、両者を同時に指し示すときには第1回収手段50とよぶ)が、小径管体61及び大径管体62(同第2回収手段60)の内部に配設された形態となっている。またこれに伴い、第1回収手段を固定する被固定部10bも、第2回収手段60内部に配設されている。また、可撓性構造となる管体5aも、大径管体62に被固定部10を介して接続される管体6a内部に配設されている。なお、第1回収手段50内部には、前記第三実施形態と同様に、伸縮スパイラル4及び管体4aが配設された形態となっていることに変わりはない。なおこの場合、第1回収手段50は低真排気用、第2回収手段は高真空排気用として用いることとする。
【0046】
このような構成となるステージ装置においては、伸縮スパイラル4を原因として漏洩した気体は第1回収手段50により真空容器1外部へと排出されると共に、第1回収手段50から漏洩した気体も第2回収手段60によって、真空容器1外部へと速やかにかつ安全に排出されることになる。なお、第1回収手段50からの気体漏洩は、例えば、その継管部5cにおいて特に発生しやすいものと考えられる。
【0047】
以上のことから明らかなように、ステージ2周囲の作業環境雰囲気は、前記第三実施形態にも増して清浄に保たれることがわかる。すなわちこの場合においては、ステージ2上に載置される試料等に不純物が付着する可能性はほとんど考えられない。つまり、このステージ装置によれば、より高品質な製品製造を実施することができる。
【0048】
さらに、本実施形態におけるステージ装置においては、図6に示すように、伸縮スパイラル4、第1回収手段50、第2回収手段60の全てが同軸上に配されていることから、装置全体のコンパクト化が成されているものである。すなわち、図6においては、図1、図2、図5に示すものとは異なり、低真空排気用及び高真空排気用の回収手段が並列して設置されておらず、その相応分スペース的に有利なものとなっていることがわかる。
【0049】
最後に、本発明の第五の実施形態について、図7を参照して説明する。これは第1回収手段50において、その継管部5c近傍に高真空室501を設けた構造となっている。この高真空室501とは、大径管体52の管端部分(つまり、継管部5c)に形成される高真空シール部502と、当該管端より内方に位置する部分に形成される低真空シール部503との間に挟まれた領域である。そして、この高真空室501は、連絡路504を介することによって第2回収手段60と連通することとなっている。なお、第1回収手段50が低真空排気用、第2回収手段が高真空排気用として使用されること、また伸縮スパイラル4が第1回収手段50内部に配設されることは、前記第四実施形態と同様である。
【0050】
このような構成となるステージ装置においては、低真空シール部503から漏洩した気体は、高真空室501に流入することになる。なお言うまでもないが、この気体の流入方向は、常に大径管体52から高真空室501へと向かう方向である。なぜならば、第1回収手段50内部は低真空状態となっており、第2回収手段60と連通している高真空室501の方が、常により高真空状態だからである。
【0051】
このように高真空室501に流入した気体は、第2回収手段60によって速やかにかつ安全に、真空容器1外部へと排出されることになる。すなわち、第1回収手段の継管部5c、すなわちいまの場合、高真空シール部502から気体が漏洩するような可能性はほとんどない。したがって、このステージ装置によっても、前記第四実施形態において記載した作用及び効果と同様な作用効果が得られることが明らかである。
【0052】
ところで、上記各実施形態において示したステージ装置は、例えば図8に示すような光学装置において使用することが可能である。なお、この図においては、上記第四の実施形態に係るステージ装置を一例として示している。図8において、真空容器1内部かつステージ2上方には、電子ビーム銃Eが備えられている。またその下方には図示しない電子レンズ部が備えられている。さらに、ステージ2上面には、ウェハWが載置、固着されている。したがって、この光学装置は、電子ビーム銃Eから発射される電子ビームを電子レンズ部により収束又は整形してウェハW面上に照射し、当該ウェハW面上に回路パターン等の焼き付けを行うものとなっている。また、これとは別に、図8における電子ビーム銃Eや電子レンズ部に代えて、ArFレーザやKrFレーザ等の適当な光源及び投影光学系を備えた、いわゆる一般に普及している通常の露光装置(光学装置の一種)であっても、上記各実施形態に示すステージ装置を用いることは可能である。なおこの場合、真空容器1内を特に真空とする必要はなく、塵埃などを低減した雰囲気や、特定の気体を充満させた雰囲気としてよく、このようにしても上記と同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0053】
このような場合において、ステージ装置に係る前記作用効果、すなわちステージ2に対して外乱が与えられることがなく高精度な動作及び位置決め等が実現できるということ、ステージ2周囲における真空度低下を防止すること、また、ステージ2周囲における作業環境が汚染されるようなことがないということ、は大きな意味をもつことになる。すなわち、上記のような光学装置において、回路パターンの焼き付けを行うには、nmオーダの極めて高精度なウェハWの位置決めが要求されるとともに、ウェハW面上に不純物等を付着させることは許されない。したがって、前記したような作用効果を発揮できるステージ装置を備えた光学装置は、非常に高品質な製品を確実に供給することができるものであるといえる。
【0054】
なお、上記各実施形態においては、供給手段により供給される流体、また回収手段により回収される流体は「空気」とされていたが、本発明はこのことに限定されるものではない。すなわち例えば、ステージ2の冷却が必要である場合等に、供給手段を介して冷却水をステージ2に供給し、ステージ2内外において適当に巡回させた後に、それを回収手段によって回収するような場合においても、本発明は適用可能である。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載のステージ装置は、回収手段が固定部を有するとともに、当該固定部とステージ間における回収手段が可撓性構造とされていることから、回収手段が自由にかつ不規則に動くようなことがなく、また回収手段からステージに対して直接的な力が働くようなことがなくなる。したがって、ステージに対して外乱が作用するようなことがなく、結果、ステージに関する高精度な動作及び位置決め等が実現できる。
【0056】
また、請求項2記載のステージ装置は、小径管体が大径管体に挿入された構成とされていることから、前記ステージの移動に伴って、これらが伸縮動作することにより、ステージに外乱を与えるようなことがない。したがって、前記にも増してステージの高精度な動作及び位置決め等が実現できる。
【0057】
また、請求項3記載のステージ装置は、前記小径管体と大径管体との継管部には隙間が形成されていることから、前記伸縮動作に伴う摺動抵抗は殆ど無視される程度のものとなる。したがって、ステージに対して作用する外乱はさらに低減し、前記効果をより確実に享受できる。
【0058】
また、請求項4記載のステージ装置は、供給手段が前記回収手段の内部に配設されていることから、供給手段を原因として漏洩する流体は回収手段内に排出されることになる。したがって、その流体は速やかにかつ安全に、外部へと排出されることになるから、ステージ周囲の作業環境雰囲気を汚染するようなことがない。つまり、上記雰囲気を常に清浄に保つことができる。
【0059】
また、請求項5記載のステージ装置は、回収手段を構成する第1回収手段及び第2回収手段において、第1回収手段は第2回収手段内部に配設されている。このことから、第1回収手段を原因として漏洩する流体を、第2回収手段で回収することが可能となる。つまり、前記にも増して、ステージ周囲の作業雰囲気を清浄に保つことができる。
【0060】
また、請求項6記載のステージ装置は、第2回収手段が、少なくとも第1回収手段における継管部を囲むように配設されていることから、当該継管部より漏洩する気体を第2回収手段で回収することが可能となる。したがって、これによっても前記と同様な効果を得ることができる。
【0061】
また、請求項7記載の光学装置は、請求項1乃至6記載のステージ装置を備えていることから、前記各作用効果を享受できるものであるということがいえる。すなわち、この光学装置は、ステージの高精度な動作及び位置決め等を実現することができると共に、ステージ周囲の作業環境雰囲気を清浄に保つことができる。その結果、この光学装置は、非常に高品質な製品を確実に供給することができるものであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施形態に係るステージ装置の構成を示す一部断面視した平面図である。
【図2】 本発明の第二実施形態に係るステージ装置の構成を示す一部断面視した平面図である。
【図3】 図2に示す大径管体及び小径管体の継管部を示す拡大図である。
【図4】 図3に示す継管部とは別形態となるものを示す拡大図である。
【図5】 本発明の第三実施形態に係るステージ装置の構成を示す一部断面視した平面図である。
【図6】 本発明の第四実施形態に係るステージ装置の構成を示す一部断面視した平面図である。
【図7】 本発明の第五実施形態に係るステージ装置の構成を示す一部断面視した平面図である。
【図8】 光学装置の構成を示す平面図である。
【図9】 従来のステージ装置の構成を示す一部断面視した平面図である。
【符号の説明】
2 ステージ
3 伝達部(伝達手段)
4 伸縮スパイラル(「供給手段」の一部)
4a 管体(「供給手段」の一部)
5、6 伸縮ベローズ(「回収手段」の一部)
5a、6a 管体(「回収手段」の一部)
5f、6f 固定部
7 接続部
10 被固定部
50 第1回収手段
60 第2回収手段
51、61 小径管体
52、62 大径管体
5c、6c 継管部
5v、6v 隙間
Claims (7)
- 試料を載置し移動可能なステージと、
前記ステージに接続される接続部を介して駆動力を伝達する伝達手段と、
前記ステージに流体を供給する供給手段と、前記供給手段から供給された流体を前記ステージから回収する回収手段とを備え、
前記回収手段は、前記伝達手段に固定される固定部を有し、少なくとも前記ステージから前記固定部までの間の構造が可撓性構造であることを特徴とするステージ装置。 - 前記回収手段は、小径管体が挿入された大径管体で構成され、各管体が相対的に移動することで伸縮することを特徴とする請求項1記載のステージ装置。
- 前記回収手段は、小径管体と大径管体との間の継管部に隙間が形成されていることを特徴とする請求項2記載のステージ装置。
- 前記供給手段は、前記回収手段の内部に配設されていることを特徴とする請求項1、2、又は3記載のステージ装置。
- 前記回収手段は、第1回収手段と第2回収手段とで構成され、
前記第1回収手段は、前記供給手段を内部に配設し、
前記第2回収手段は、前記第1回収手段を内部に配設することを特徴とする請求項1、2、3、又は4記載のステージ装置。 - 前記回収手段は、第1回収手段と第2回収手段とで構成され、
前記第1回収手段は、前記供給手段を内部に配設し、
前記第2回収手段は、少なくとも前記第1回収手段の前記継管部を囲むように配設されることを特徴とする請求項4記載のステージ装置。 - 処理対象の試料を載置して移動するステージ装置と、前記ステージに載置された前記試料に光線又は荷電粒子を照射する照射系とを備えた光学装置において、
前記ステージ装置は、請求項1乃至6のいずれか一つに記載のステージ装置であることを特徴とする光学装置。
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