JP4008164B2 - 蛍光判別方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光判別方法および装置に関し、詳しくは励起光を照射することにより生体組織から発せられた自家蛍光に基づき、生体組織の判別を行なう蛍光判別方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、癌の治療手法として、内視鏡下において、早期癌と診断された粘膜上皮層の病変部位を切除する粘膜切除処置(以下EMRと呼ぶ)が行われており、手術による処置に比べて非侵襲的であり有効な治療方式として広く用いられている。この治療手法は生体組織の粘膜層に生じた癌が粘膜上皮層内に留まり粘膜下層にまでは進行していない早期に発見された癌を治療するもので、この早期癌となった粘膜上皮層を内視鏡によって導かれた粘膜切除用の処置具によって切除するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、早期癌と診断された粘膜上皮層の治療範囲をEMRの処置によって切除しても、粘膜上皮層を完全には除去しきれないことがあり、切除処置後に治療範囲に残った粘膜上皮層に癌の病変が残存することがある(以下、遺残発生と呼ぶ)。この遺残発生は、治療範囲が狭く1回の切除処置で粘膜上皮層の病変組織を除去できる場合にはその発生率は低いが、治療範囲が広く複数回に分割して切除処置が行なわれる場合にはその分割切除回数の増加に伴って遺残発生の発生率も高くなる。また、EMRの処置が施された治療範囲に粘膜上皮層が残っているか否かは治療範囲から採取した生体組織の組織性状を検査することにより確認されるが、組織検査を行うので結果が得られるまでには時間を要し、再度内視鏡治療を必要とする。このようにEMRの処置は非侵襲的で有効な治療手法であるが、EMRの処置後に、この処置が正しく行なわれたか否かを短時間で確認することが難しいという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、生体組織の粘膜下層と粘膜上皮層とを短時間にかつ容易に判別することができる蛍光判別方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の蛍光判別方法は、生体組織に励起光を照射することにより、生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、生体組織の粘膜下層と粘膜上皮層との判別を行なう蛍光判別方法であって、この判別を、粘膜下層の自家蛍光スペクトルと粘膜上皮層の自家蛍光スペクトルとが異なることを利用して、生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度に基づいて行なうことを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の蛍光判別方法は、被判別領域の生体組織に励起光を照射することにより、生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、被判別領域に粘膜下層と粘膜上皮層とが混在しているか否かの判別を行なう蛍光判別方法であって、前記判別を、粘膜下層の自家蛍光の規格化強度および/または粘膜上皮層の自家蛍光の規格化強度に基づいて作成された判別基準値を前記生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度と比較することにより行なうことを特徴とする。
【0007】
本発明の第3の蛍光判別方法は、生体組織に励起光を照射することにより、生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、生体組織が粘膜下層であるか粘膜上皮層であるかの判別を行なう蛍光判別方法であって、前記判別を、粘膜下層の自家蛍光の規格化強度および/または粘膜上皮層の自家蛍光の規格化強度に基づいて作成された判別基準値を前記生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度と比較することにより行なうことを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の蛍光判別装置は、生体組織に励起光を照射することにより、生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、生体組織の粘膜下層と粘膜上皮層との判別を行なう判別手段を備えた蛍光判別装置であって、この判別手段が、粘膜下層の自家蛍光スペクトルと粘膜上皮層の自家蛍光スペクトルとが異なることを利用して、生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度に基づいて行なわれるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の蛍光判別装置は、被判別領域の生体組織に励起光を照射することにより、生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、被判別領域に粘膜下層と粘膜上皮層とが混在しているか否かの判別を行なう判別手段を備えた蛍光判別装置であって、前記判別手段が、粘膜下層の自家蛍光の規格化強度および/または粘膜上皮層の自家蛍光の規格化強度に基づいて作成された判別基準値を前記生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度と比較することにより前記判別を行なうことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の蛍光判別装置は、生体組織に励起光を照射することにより、生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、生体組織が粘膜下層であるか粘膜上皮層であるかの判別を行なう判別手段を備えた蛍光判別装置であって、前記判別手段が、粘膜下層の自家蛍光の規格化強度および/または粘膜上皮層の自家蛍光の規格化強度に基づいて作成された判別基準値を前記生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度と比較することにより前記判別を行なうことを特徴とする。
【0011】
前記判別は、波長480nm近傍の前記規格化強度によって行なうことが好ましい。
【0012】
前記蛍光判別装置は、その一端から入射させた自家蛍光を判別手段まで伝搬する光ファイバを備え、この光ファイバが内視鏡の操作部から先端部まで貫通した管路に挿入されているものとすることができる。
【0013】
前記光ファイバは、内視鏡の処置具の内部を通して前記管路に挿入されているものとすることができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明者は、蛍光判別について種々検討した結果、粘膜下層と粘膜上皮層とでは、励起光の照射により発生する蛍光のスペクトル強度分布が異なるので、このことを利用すれば粘膜下層と粘膜上皮層との識別を行なうことができるとの知見を得、かかる知見に基づいて本発明に至ったものである。
【0015】
本発明の蛍光判別方法および装置によれば、粘膜下層の自家蛍光スペクトルと粘膜上皮層の自家蛍光スペクトルとが異なることを利用して、生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度に基づいて粘膜下層と粘膜上皮層との判別を行ない(第1の蛍光判別方法および装置)、治療範囲に粘膜下層と粘膜上皮層とが混在しているか否かの判別を、前記生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度を粘膜下層の自家蛍光の規格化強度および/または粘膜上皮層の自家蛍光の規格化強度に基づいて作成された判別基準値と比較することにより行ない(第2の蛍光判別方法および装置)、あるいは粘膜下層と粘膜上皮層との判別を、前記生体組織から発せられた自家蛍光の規格化強度を粘膜下層の自家蛍光の規格化強度および/または粘膜上皮層の自家蛍光の規格化強度に基づいて作成された判別基準値と比較することにより行なう(第3の蛍光判別方法および装置)ので、自家蛍光の規格化強度に基づいて簡単に生体組織の粘膜下層と粘膜上皮層との判別を行なうことができる。従って、例えば従来のようにEMRの処置後に、治療範囲の生体組織を採取し病変組織が残っているか否かを組織検査によって確認することなく、治療範囲の粘膜上皮層がすべて除去され正しく粘膜下層に至っているか否かを確かめることにとができ、その結果直ちにEMRの処置が正しく行われたか否かを確認することができるので、上記確認に要する時間が大幅に短縮され、さらに治療範囲に粘膜上皮層が存在する場合には処置を継続することにより治療範囲に対する処置をより完全に行なうことができる。
【0016】
また、この判別を波長480nm近傍の規格化強度によって行なえば、判別の精度をさらに向上させることができる。
【0017】
また、この蛍光判別装置に、その一端から入射させた自家蛍光を判別手段まで伝搬する光ファイバをさらに備え、この光ファイバが内視鏡の操作部から先端部まで貫通した管路に挿入されるものとすれば判別をより容易に実施することができ、さらにこの光ファイバを、内視鏡の処置具の内部を通して前記管路に挿入されるものとすることもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用した実施の形態による内視鏡装置の概略構成を示す図である。
【0020】
本実施の形態による内視鏡装置400は、波長410nmのパルス状の励起光Leを射出し、この励起光Leの照射により生体組織50から発生した自家蛍光Keを入射して測定を行なう蛍光測定ユニット100と、蛍光測定ユニット100から射出された励起光Leを生体組織50の近傍に導き射出し、かつ生体組織50から発生した自家蛍光を蛍光測定ユニット100に導くケーブル状の光ファイバプローブ40と、ケーブル状の光ファイバプローブ40を内部に貫通させる管路を備えた鉗子ユニット200と、鉗子ユニット200の先端を生体組織50の近傍に導く内視鏡本体300とから構成されている。
【0021】
蛍光測定ユニット100には、励起光Leを射出する光路と自家蛍光Keを測定する光路とが形成されており、半導体レーザ10から射出された励起光Leは、コリメートレンズ11によって平行光束とされ、さらにダイクロイックビームスプリッタ12によってその光路がほぼ直角に曲げられ、集光レンズ13によって集光されて蛍光測定ユニット100の側面に接続された光ファイバプローブ40の端面Aに入射し、光ファイバプローブ40の内部を伝搬して端面Bから射出される。
【0022】
一方、励起光Leの照射により生体組織50から発生した、励起光Leの波長より長波長側の波長領域を持った自家蛍光Keは、光ファイバプローブ40の端面Bから入射し、光ファイバ内を伝搬し光ファイバプローブ40の他方の端面Aから射出され、集光レンズ13によって平行光とされてダイクロイックビームスプリッタ12を透過して蛍光集光レンズ14によって集光され、集光途中でさらにダイクロイックミラー15により光路が分離されて中間波長領域の光が中間波長用フォトダイオード16に、中間波長領域以外(両端波長領域)の光が両端波長用フォトダイオード17にそれぞれ入射する。
【0023】
なお、励起光Leを蛍光測定ユニット100から内視鏡先端部33に導く光路およびこの励起光Leの照射により生体組織から発生した自家蛍光Keを内視鏡先端部33から蛍光測定ユニット100に導く光路は、光ファイバプローブ40が形成する1つの光路を兼用している。
【0024】
また、ダイクロイックビームスプリッタ12は、410nm以下の波長の光を反射し410nmを越える長波長側の波長領域の光を透過する特性を備えており、励起光Leを反射し自家蛍光Keを透過させる。また、ダイクロイックミラー15は480nm±20nmの中間波長領域の光を透過し、この中間波長領域以外の460nmより短い波長領域および500nmより長い波長領域(両端波長領域)の光を反射する特性を備えている。
【0025】
鉗子ユニット200の操作部20の先端には、鉗子チューブ22が接続され、鉗子チューブ22の先端には、生体組織を摘んで持ち上げる把持鉗子21が配設されている。把持鉗子21は鉗子チューブ22の内部を通るワイヤで操作部20のリンクレバー25と接続されており、リンクレバー25の操作によって把持鉗子21が開閉される。そして、蛍光測定ユニット100にその一端の端面Aが接続されている光ファイバプローブ40の他方の端面Bは、操作部20から鉗子チューブ22の内部に挿入され鉗子チューブ22先端の把持鉗子21の中央部から突出されている。
【0026】
なお、把持鉗子21は、生体組織50を摘むことにより、内視鏡先端部と生体組織とを適切な位置関係に保つことができ、EMRの処置に際して、治療部位と内視鏡先端部33との位置決めの補助機能を果たすこともできる。
【0027】
内視鏡本体300には、鉗子チューブ22を内視鏡操作端部30から内視鏡先端部33に導く鉗子管路34が配設され、その入口となる鉗子入口31および出口となる鉗子出口32がそれぞれ配されている。鉗子チューブ22は、鉗子入口31から挿入され鉗子管路34を通って内視鏡先端部33の鉗子出口32から送出され測定対象となる生体組織50の近傍に導かれる。この鉗子チューブ22は内視鏡本体300から抜き差し可能であり、把持鉗子21を備えた処置具ユニット以外の他の処置具ユニット等と交換することが可能である。
【0028】
また、内視鏡本体300の先端部33の鉗子管路34内は、図2に示すように鉗子管路32、鉗子チューブ22、光ファイバプローブ40がこの順にそれぞれの管路内に挿入されている。
【0029】
また、内視鏡先端部33にはEMRの処置用の他の管路等が形成され、さらに生体組織を観察するためのパルス状の白色光を発生する光源、結像光学系および撮像素子等からなる通常像撮像ユニット60が組み込まれており、通常像撮像ユニット60によって撮像された通常画像はTVモニタ70に出力され表示される。なお、パルス状の白色光はパルス状の励起光と互いに異なるタイミングで生体組織に照射され、通常像撮像ユニット60はパルス状の白色光が照射されるタイミングに合わせて撮像を行なうので通常像撮像ユニット60には白色光で照明された生体組織の像しか撮像されない。
【0030】
次に、上記実施の形態における作用について説明する。予め早期癌と診断された粘膜層の治療範囲は、内視鏡本体300の処置具用の管路から挿入された処置具によってEMRの処置が施され粘膜上皮層が切除された状態となっており、内視鏡先端部33は治療範囲の近傍に位置している。この状態で、光ファイバプローブ40を内部に備えた鉗子ユニット200の鉗子チューブ22は、鉗子入口31から挿入され鉗子管路34を経由して内視鏡先端部33の鉗子出口32から送出される。
【0031】
粘膜下層と粘膜上皮層との判別を行うには、まず内視鏡先端部33の通常像撮像ユニット60によって撮像された治療範囲の画像をTVモニタ70で観察しながら、半導体レーザ10から射出された励起光Leを光ファイバプローブ40の端面Bから治療範囲に向けて照射する。励起光Leが照射された治療範囲からは自家蛍光Keが発生し、この自家蛍光Keは光ファイバプローブ40の端面Bに入射し光ファイバプローブ40の他方の端面Aから射出され集光レンズ13、ダイクロイックビームスプリッタ12、蛍光集光レンズ14を経由して集光途中でダイクロイックミラー15によって前記中間波長領域と両端波長領域との光に分離されて中間波長用フォトダイオード16と両端波長用フォトダイオード17とにそれぞれ受光される。受光されたそれぞれの自家蛍光の強度は電気的な信号に変換され、さらにA/D変換器18aとA/D変換器18bとにより数値化されて中間波長領域の強度データDcと両端波長領域の強度データDrとして判別器19に入力され中間波長領域の規格化強度Kkが、
Kk=Dc/(Dc+Dr)
の式により求められる。この規格化強度Kkの値は、予め判別器19に記憶されている粘膜下層と粘膜上皮層とを判別する判別基準値である閾値Qと比較され、この自家蛍光Keを発生した部位が粘膜下層であるか粘膜上皮層であるかが判別される。なお、この閾値Qは予め別の方式により粘膜下層と判別された生体の部位に関して上記と同様な手法により求めた規格化強度の値と、予め別の方式により粘膜上皮層と判別された生体の部位に関して上記と同様な手法により求めた規格化強度の値との中間値として求められた値である。
【0032】
そして、閾値Qにより判別された結果は判別器19から出力され、通常像撮像ユニット60によって撮像された治療範囲の画像と共にTVモニタ70によって表示される。
【0033】
この判別結果は即座に得ることができるので、TVモニタ70で治療範囲の通常画像を観察しながら上記判別の操作を治療範囲の全ての領域に対して実施することにより、治療範囲の粘膜上皮層が全て除去されて均一に粘膜下層に達しているか否かをEMRの処置の直後に確認することができる。
【0034】
ここで、粘膜下層と粘膜上皮層とを判別する作用の詳細を説明する。EMRの処置が行なわれた治療範囲の断面は図3に示すように治療範囲BJに存在した粘膜上皮層NJが切除され粘膜下層NKが露出しているが、治療範囲BJに粘膜上皮層NJの断片Dpが残っている場合があり、この断片Dpは正常組織である場合もあるが病変組織である場合もある。従って、励起光Leの照射により治療範囲BJから発せられる自家蛍光は、粘膜下層NK、粘膜上皮層NJの正常組織および粘膜上皮層NJの病変組織の3種類の異なる性質を備えた組織から発せられる可能性がある。これらの性質の異なる組織から発せられる自家蛍光の強度は測定条件(例えば、光ファイバプローブ40の端面Bと組織との距離あるいは角度等)により大きく変化するので強度だけを比較して上記3種類の異なる性質を持った生体の組織を判別することはできない。しかし、これらの自家蛍光のスペクトル強度分布を、それぞれ全波長領域に亘って積分した強度で規格化すると、図4に示すように測定条件に影響されにくいそれぞれのスペクトル強度分布のプロファイルの特徴が現れる。すなわち、3種類の異なる性質を備えた生体組織から発生する規格化強度の480nm±20nmの波長領域の強度を比較すると、粘膜下層NK>粘膜上皮層の正常組織NJ、および粘膜上皮層の正常組織NJ−s>粘膜上皮層の病変組織NJ−bという順に強度の違いが現れるのでこの強度を閾値Qと比較することにより治療範囲BJの粘膜上皮層NJが全て除去されたか否かを判別することができる。
【0035】
なお、上記全波長領域に亘って自家蛍光のスペクトル強度を積分した値はDc+Drの値に対応し、480nm±20nmの波長領域の自家蛍光のスペクトル強度を積分した値はDcの値に対応する。
【0036】
また、EMRは治療範囲BJから粘膜上皮層NJをすべて除去する処置であり治療範囲BJに粘膜上皮層NJが有るか無いかを判別することによりEMRの処置が正確に行なわれたか否かが判別されるが、遺残発生の観点では、治療範囲BJに粘膜上皮層NJの病変組織が残っているか否かを判別することが重要である。 すなわち、図4に示すように規格化された自家蛍光の480nm±20nmの波長領域の比較において、粘膜下層NKと粘膜上皮層の正常組織NJ−sとの強度差ksに比して粘膜下層NKと粘膜上皮層の病変組織NJ−bとの強度差kbの方が大きいので、粘膜上皮層の病変組織NJ−bを粘膜下層NKと誤って判別する可能性は、粘膜上皮層の正常組織NJ−sを粘膜下層NKと誤って判別する可能性に比して非常に少なく、この判別方式は遺残発生を防止する観点ではさらに有利となる。
【0037】
上記判別は治療範囲BJの全ての領域に関して行なわれ、粘膜上皮層と判定された場所については再びEMRの処置が施され、治療範囲BJに粘膜上皮層NJが無くなったことが確認されるとEMRの処置、および粘膜下層NKと粘膜上皮層NJとを判別する操作は終了される。
【0038】
なお、上記判別の手法は自家蛍光の480nm±20nmの波長領域の強度を全波長領域の強度で除算した値を用いて比較する手法に限定されるものではなく、波長領域の範囲および中心波長の値は粘膜下層と粘膜上皮層とから発せられる自家蛍光を規格化したときに明確な差が現れる領域を用いればよい。また、規格化するために除算を行なう値も全波長領域の強度に限らず、全波長領域の強度から480nm±20nmの波長領域の強度を減算した値等を用いることもできる。
【0039】
また、粘膜下層を判別する判別基準値として、予め正常組織と判別された粘膜上皮層から求めた中間波長領域の規格化強度の値を用い、例えば生体組織から発生した自家蛍光の中間波長領域の規格化強度が前記判別基準値の120%以上の値であれば、その組織を粘膜下層として判別することもできる。
【0040】
その他、上記判別基準値として用いられる値は、粘膜下層と粘膜上皮層とを判別し得る基準となる値であればどのような値を用いてもかまわない。
【0041】
なお、光ファイバプローブ40は必ずしも鉗子ユニット200との組み合わせで構成する必要はなく、他の処置具ユニット、例えば図5に示すような先端に生体組織の被測定部位を引き寄せるための脚を備えた三脚型の把持鉗子等の処置具ユニット、あるいは図6に示すような先端に被測定部位との距離を一定に保つキャップとの組み合わせによって構成することもできる。
【0042】
また、本発明の判別手法は潰瘍等の粘膜上皮層が剥がれてしまう病変組織の診断にも適用することができる。
【0043】
上記のように、本発明による蛍光判別方法および装置は、生体組織の粘膜下層と粘膜上皮層とを短時間に容易に判別することができるので、例えばEMRの処置後、直ちにこの処置が正確に行なわれたか否かを確認することができ、再処置に伴う患者の負担を軽減し遺残発生を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による内視鏡装置の概略構成図
【図2】内視鏡先端部の鉗子管路、鉗子チューブ、光ファイバプローブを示す図
【図3】治療範囲を示す図
【図4】3つの異なる組織性状の生体組織から発せられた自家蛍光を規格化した強度を示す図
【図5】他の把持鉗子と光ファイバプローブとを組み合わせた例を示す図
【図6】内視鏡先端部にキャップを取り付けた図
【符号の説明】
40 光ファイバプローブ
50 生体組織
100 蛍光測定ユニット
200 鉗子ユニット
300 内視鏡本体
400 内視鏡装置
Le 励起光Le
Ke 自家蛍光Ke

Claims (6)

  1. 生体組織に励起光を照射することにより該生体組織から発せられた自家蛍光に基づいて、前記生体組織における正常組織の粘膜上皮層と、病変組織の粘膜上皮層と、前記粘膜上皮層を除去して現われた粘膜下層とを判別する判別手段を備えた蛍光判別装置であって、
    前記判別手段が、互に異なる正常組織の粘膜上皮層における自家蛍光スペクトルの強度分布、病変組織の粘膜上皮層における自家蛍光スペクトルの強度分布、および粘膜上皮層を除去して現われた粘膜下層における自家蛍光スペクトルの強度分布のそれぞれについて、前記生体組織から発せられた自家蛍光の全波長領域から両端波長領域を除いた中間波長領域における該自家蛍光スペクトルの強度をこの自家蛍光スペクトルの全波長領域における強度で除して得られてなる規格化強度の値を所定の判別基準値と比較することにより前記判別を行なうものであることを特徴とする蛍光判別装置。
  2. 前記判別基準値が、正常組織の粘膜上皮層における自家蛍光の規格化強度の値、病変組織の粘膜上皮層における自家蛍光の規格化強度の値、および粘膜上皮層を除去して現われた粘膜下層における自家蛍光の規格化強度の値に基づいて作成されたものであることを特徴とする請求項1記載の蛍光判別装置。
  3. 前記判別が、正常組織または病変組織の粘膜上皮層と該粘膜上皮層を除去して現われた粘膜下層とが被判別領域内に混在しているか否かの判別であることを特徴とする請求項1または2記載の蛍光判別装置。
  4. 前記規格化強度は、該規格化強度における中間波長領域が波長500nm以下、460nm以上の範囲に定められたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の蛍光判別装置。
  5. 一端から入射させた前記自家蛍光を前記判別手段まで伝搬する光ファイバを備え、該光ファイバが内視鏡の操作部から先端部まで貫通した管路に挿入されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の蛍光判別装置。
  6. 前記光ファイバが、内視鏡の処置具の内部を通して前記管路に挿入されていることを特徴とする請求項記載の蛍光判別装置。
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