JP4007463B2 - 船外機用エンジンの吸気通路構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型船舶の船外機に搭載されている多気筒エンジンに関し、特に、そのような船外機用エンジンにおけるサージタンクから吸気管に続く部分の吸気通路構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
小型船舶の船外機に搭載されている多気筒エンジンについては、通常、クランクケース側が前となりシリンダヘッド側が後となるように、各気筒のシリンダの軸線方向を機体の前後方向とし、各気筒に共通するクランク軸を機体の上下方向として、エンジン本体の各気筒を縦方向に配列させた縦置きの状態で、船外機上部のトップカウリング内に設置されており、エンジン本体の前部側方に配置された縦長のサージタンクからは、上下方向に間隔を置いて配置された各気筒の吸気管が、その途中にキャブレターが設置されるように、エンジン本体後部のシリンダヘッドに向かってそれぞれ略水平方向に延ばされている。
【0003】
そして、そのような船外機用エンジンでは、エンジン運転時のキャブレターからの吹き返しにより各吸気管を通して戻された燃料(ガソリン)は、従来は、大気中に開放されるか、或いは、サージタンクの底部に溜まるようになっており、サージタンクの底部に溜まるような場合には、サージタンクの下部から最下位置の吸気管に続く吸気通路の底面にドレーン孔を形成することで、そのように戻されて溜まった燃料を該ドレーン孔からドレーンホースを通して機外に排出するということが行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の船外機用エンジンでは、エンジン運転時の吹き返しにより戻されて溜まった燃料について、大気中に放出するか、或いは、ドレーン孔からドレーンホースを通して機外に排出しているため、燃料を無駄に消費するだけでなく、燃料を船外機の周辺に散らすことで環境汚染の問題が生じることとなる。
【0005】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、船外機用エンジンの吸気通路構造について、エンジン運転時の吹き返しにより戻される燃料を、大気中に放出したりサージタンクに溜めるようなことなく、再びエンジン本体に送り込むことで、燃料を無駄なく効果的に利用することができると共に、燃料を機外に排出しないようにして環境汚染の防止を図ることができるようにするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、上記の請求項1に記載したように、クランク軸線が機体の上下方向となりシリンダ軸線が機体の前後方向となるように各気筒を縦方向に配列したエンジン本体に対し、その前方に配置された縦長のサージタンクから、上下方向に間隔を置いて配置された各気筒の吸気管が、エンジン本体後部のシリンダヘッドに向かってそれぞれ延ばされているような船外機用のエンジンにおいて、サージタンクの底部よりも上方で側方に吸気口が開口され、サージタンクから延びる各吸気管の吸気下流側の端部が、それぞれキャブレターの吸気上流側に接続され、各キャブレターの吸気下流側が、キャブレターからシリンダヘッドの吸気ポートに至るインテークマニホールドにより、シリンダヘッドの各吸気ポートに接続されていると共に、サージタンクの底部と最下位置の吸気管の底部が、ドレーン孔を有することなく滑らかに続くように、サージタンクから各吸気管の上流部分までが、吸気通路の上方から見た幅方向の中心線に沿って左右に分割された二つの部材を結合することにより形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の船外機用エンジンの吸気通路構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は、本発明の吸気通路構造を備えたエンジンが搭載されている船外機を示すもので、船外機1には、トップカウリング2とアッパーケース3とロアーケース4を連結した機体のハウジングに対して、アッパーカウル2aとボトムカウル2bとエアダクトカバー2cとからなるトップカウリング2内に、クランク軸6の軸線が機体の上下方向となるように、縦方向に各気筒が配列された多気筒のエンジン5が設置されている。
【0009】
そして、エンジン5のクランク軸6の下端に連結されたドライブシャフト7が、上下方向にアッパーケース3内を通ってロアーケース4にまで延び、ベベルギアによるシフト機構8を介して、スクリュー回転軸9と連係されていることで、ロアーケース4の下部後側に装着されたスクリュー10がエンジン5の駆動によって回転するように構成されている。
【0010】
図2〜図7は、上記のような船外機1のトップカウリング2内に設置されているエンジン5を示すもので、図2は、左側方から見たものであり、図3は、右側方から見たものであり、図4は、前方から見たものであり、図5は、後方から一部を切り欠いて見たものであり、図6は、シリンダ軸心に沿ったエンジン本体の横断面と吸気通路の横断面について上方から見たものであり、図7は、シリンダ隔壁に沿ったエンジン本体の横断面と吸気通路の横断面について上方から見たものである。
【0011】
エンジン5は、縦方向に各気筒が配列されている4サイクル4気筒エンジンであって、ヘッドカバー11とシリンダヘッド12とシリンダブロック13とクランクケース14を順次船体の前後方向に沿って一体的に連結することでその本体部分が構成されており、クランクケース14が前側となりヘッドカバー11が後側となるように配置されている。
【0012】
シリンダヘッド12の左側には、上下方向に間隔をおいて重なるように各気筒の吸気ポート15がそれぞれ形成され、シリンダヘッド12の右側には、上下方向に間隔をおいて重なるように各気筒の排気ポート16がそれぞれ形成されていて、各吸気ポート15に対して吸気バルブ17が、また、各排気ポートに対して排気バルブ18がそれぞれ設置されている。
【0013】
そして、各気筒の吸気バルブ17と排気バルブ18をそれぞれ駆動するための吸気側カム軸19と排気側カム軸20が、ヘッドカバー11で覆われたカム室21内で、シリンダヘッド12とカムキャップ22により挟持された状態で、回転軸線方向が上下方向となるようにそれぞれ軸支されていて、各カム軸19,20の上端部には、カムプーリー23,24がそれぞれ固定されている。
【0014】
シリンダブロック13とクランクケース14によって画成されているクランク室25には、各気筒に共通するクランク軸6が、回転軸線方向が上下方向となるように軸支されており、クランク軸6の上端部にはフライホイール26が固定されていて、クランク軸6のフライホイール26よりも下方に固定されたタイミングプーリー27と各カムプーリー23,24とに渡って、クランク軸6の回転を各カム軸19,20に伝動させるためのタイミングベルト28が掛け渡されている。
【0015】
なお、タイミングベルト28に対しては、図示していないが、常にタイミングベルト28を内側に押圧する方向に付勢することでその弛みを防ぐためのテンショナーが設置されており、フライホイール26や各カムプーリー23,24やタイミングベルト28などを上方から覆うように、トップカウリング2の内側に更にカバー部材29が設けられている。
【0016】
エンジン本体のクランクケース14よりも前方には、吸気通路の空気導入部となるサージタンク31が設置されており、縦長に形成されたサージタンク31には、サージタンク31の底部よりも若干上方の位置で右側方に縦長の吸気口31aが開口されていて、サージタンク31の後部左側からは、エンジン本体の左側を通り、シリンダヘッド12の左側面に開口された各吸気ポート15に向かって、上下方向に間隔を置いて横方向に並列して配置された4本の吸気管32が、上方から見て重なるようにそれぞれ略水平方向に延ばされている。
【0017】
サージタンク31から延びる各吸気管32の吸気下流側の端部は、それぞれキャブレター33の吸気上流側に接続されており、各キャブレター33の吸気下流側は、キャブレター33から吸気ポート15に至る曲がった短い4本の吸気管を上下方向に間隔を置いて並列的に連結したインテークマニホールド34により、シリンダヘッド12の各吸気ポート15とそれぞれ接続されていて、それにより、サージタンク31の吸気口31aから吸気管32,キャブレター33,インテークマニホールド34を通って吸気ポート15から燃焼室35に至る各気筒の吸気通路が形成されている。
【0018】
サージタンク31と各吸気管32の部分は、本実施形態では、図8に示すように、サージタンク31から各吸気管32の一部(上流部分)までが、吸気通路の中心線(上方から見た幅方向の中心線)に沿って左右に分割された状態となるように、合成樹脂により二つの部材をそれぞれ別個に一体成形してから、それらの部材同士を合わせて結合することにより形成されているもので、サージタンク31の底部と最下位置の吸気管32の底部とは、図9に示すように、ドレーン孔を有することなく滑らかに続くように形成されていて、一方の部材で一体成形された円筒部となっている各吸気管32の下流部分は、その端部で上下方向に間隔をおいて一体的に連結されている。
【0019】
上記のように一体的に結合されたサージタンク31と各吸気管32に対して、図9に示すように、更に各キャブレター33とインテークマニホールド34を一体的に連結することで、サージタンク31からインテークマニホールド34までの各気筒の吸気通路は一つのユニットとして予め一体的に組付けられ、そのようなユニットがエンジン本体の左側面に取り付けられることとなる。
【0020】
その際のユニットの取り付け手順については、先ず、最上位置の吸気管32に一体成形されたハンガー部分32aによってユニットを吊り下げた状態で移動させてエンジン本体に近接させ、次いで、インテークマニホールド34の基部の上端付近と下端付近の各位置に固定された位置決め用のピン51(および、それに対応してシリンダヘッド12の各位置に形成されたピン孔と)によりエンジン本体に対して位置決めしてから、更に、インテークマニホールド34の基部に位置する取付部でボルト52により、また、サージタンク31の近傍で各吸気管32の間に位置する取付部でボルト53により、それぞれエンジン本体に対して固着することとなる。
【0021】
なお、図8および図9に示すように、最上位置の吸気管32には、ハンガー部分32a以外にも、コード案内用の孔部を設けたコード案内部分32b,32cがそれぞれ一体的に形成されており、ハンガー部分32aは、ユニット全体の重心位置の上方近傍に位置し、一方のコード案内部分32bと一体化されていて、ユニットをエンジン本体に取り付けた後には、ハンガー部分32a自体もコードの案内部として使用できるものとなっている。
【0022】
一方、シリンダヘッド12の右側には、各気筒の燃焼室35にそれぞれ一端が開口するように、各気筒の排気ポート16が上下方向で間隔を置いてそれぞれ形成されており、各排気ポート16の他端の開口部に対して、それらを一本に集合させてエンジン本体の下方に排気ガスを排出するための排気通路36が、各シリンダ孔37の右側でシリンダブロック13に一体的に形成されていて、シリンダブロック13内で上下方向に延びる排気通路36は、その下端がエキゾーストガイド41の排気通路に接続されている。
【0023】
また、排気通路36とは反対側のエンジン本体左側(吸気側)には、上下方向で隣合う各気筒の隔壁の位置において、図7に示すように、シリンダブロック13からシリンダヘッド12に渡って、クランク室25とカム室21を連通するようにブローバイガス通路38,39が形成されている。
【0024】
そして、ヘッドカバー11の排気側でカム室21と連通するように設けられたブローバイ室42からは、ブローバイガスを吸気通路に戻すためのブローバイホース43が、エンジン本体の右側でタイミングベルト28の外側に沿うようにサージタンク31に向かって延ばされ、ブローバイホース43の末端は、サージタンク31の側方に開口された縦長の吸気口31aの上端部に上方から接続されている。
【0025】
それにより、燃焼室35からクランク室25側に漏れたブローバイガスは、エンジン本体のシリンダブロック13とシリンダヘッド12の吸気側にそれぞれ形成されたブローバイガス通路38,39を通り、カム室21内を吸気側から排気側に流れてから、ブローバイ室42からブローバイホース43を通ってサージタンク31の吸気口31aの上端部に上方から戻されることとなる。
【0026】
なお、エンジン5には、吸気側のヘッドカバー11の部分に、各キャブレター33に対して燃料を圧送するための2個の燃料ポンプ44が上下方向に並設されており、クランクケース14の前面に、その前側(サージタンク31との間)をカバー部材45で覆った状態で、コントロールユニット46やレクチファイヤーレギュレーター47が設置されており、吸気管32やキャブレター33が設置された側とは反対側(右側面)に、スターターモーター48やオイルフィルター49が設置されている。
【0027】
ところで、上記のような船外機用エンジン5における吸気通路については、既に述べたように、吸気通路の空気導入部となる吸気口31aを備えたサージタンク31が、エンジン本体のクランクケース14よりも前方に設置されており、それによって、サージタンクがクランクケースの前部側方に配置されているようなものと比べて、吸気管32が比較的長いものとなっている。
【0028】
また、縦長に形成されたサージタンク31には、その底部よりも上方で側方に吸気口31aが開口されており、サージタンク31の底部と最下位置の吸気管32の底部とは、燃料の溜まり部やドレーン孔などが設けられることなく、滑らかに続くように形成されている。
【0029】
上記のような吸気通路構造を備えた本実施形態の船外機用エンジン5によれば、エンジン運転時にキャブレター33からの燃料(ガソリン)の吹き返しがあっても、サージタンク31が前方に配置されて各吸気管32が比較的長いものとなっているため、燃料がサージタンク31にまで戻されるようなことが少ないものとなっている。
【0030】
そして、各吸気管32から燃料がサージタンク31にまで戻されたとしても、サージタンク31の吸気口31aから大気中に直接漏れるようなことが少なく、サージタンク31の前壁から底部に沿い、更に滑らかな状態で続く最下位置の吸気管32の底部に沿って、最下位置の吸気管32に殆どが吸われてしまうことで、最下気筒の燃焼室35に送られて燃焼されることとなり、サージタンク31の底部に溜まってドレーン孔から機外に排出されるようなこともない。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の船外機用エンジンの吸気通路構造によれば、エンジン運転時の吹き返しにより戻される燃料を、大気中に放出したりサージタンクに溜めることなく、再びエンジン本体に効果的に送り込むことができて、燃料を無駄なく効果的に利用することができると共に、燃料を機外に排出しないようにして環境汚染の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸気通路構造を備えたエンジンが搭載されている船外機の概略を示す左側から見た側面図。
【図2】図1に示した船外機のトップカウリング内に収納されているエンジンを示す左側から見た側面図。
【図3】図2に示したエンジンの右側から見た側面図。
【図4】図2に示したエンジンの前方から見た前面図。
【図5】図2に示したエンジンの後方から見た一部切り欠き後面図。
【図6】図2に示したエンジンのシリンダ軸心に沿ったエンジン本体の横断面と吸気通路の横断面を示す部分断面上面図。
【図7】図2に示したエンジンのシリンダ隔壁に沿ったエンジン本体の横断面と吸気通路の横断面を示す部分断面上面図。
【図8】図2に示したエンジンに取り付けられる吸気通路のユニットを示す一部切欠き上面図。
【図9】図8に示した吸気通路のユニットの一部切欠き側面図。
【符号の説明】
1 船外機
5 エンジン
6 クランク軸
11 ヘッドカバー(エンジン本体)
12 シリンダヘッド(エンジン本体)
13 シリンダブロック(エンジン本体)
14 クランクケース(エンジン本体)
31 サージタンク
31a 吸気口
32 吸気管
Claims (1)
- クランク軸線が機体の上下方向となりシリンダ軸線が機体の前後方向となるように各気筒を縦方向に配列したエンジン本体に対し、その前方に配置された縦長のサージタンクから、上下方向に間隔を置いて配置された各気筒の吸気管が、エンジン本体後部のシリンダヘッドに向かってそれぞれ延ばされているような船外機用のエンジンにおいて、サージタンクの底部よりも上方で側方に吸気口が開口され、サージタンクから延びる各吸気管の吸気下流側の端部が、それぞれキャブレターの吸気上流側に接続され、各キャブレターの吸気下流側が、キャブレターからシリンダヘッドの吸気ポートに至るインテークマニホールドにより、シリンダヘッドの各吸気ポートに接続されていると共に、サージタンクの底部と最下位置の吸気管の底部が、ドレーン孔を有することなく滑らかに続くように、サージタンクから各吸気管の上流部分までが、吸気通路の上方から見た幅方向の中心線に沿って左右に分割された二つの部材を結合することにより形成されていることを特徴とする船外機用エンジンの吸気通路構造。
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