JP4005733B2 - ガス濃縮装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に半導体製造設備等から排出されるガス中に含まれる低濃度のフロン類などの被濃縮ガスを、膜分離を利用して濃縮するガス濃縮装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体製造設備等においては、エッチング剤や洗浄用ガス等としてヘキサフルオロエタン等のパーフルオロカーボンやその他のパーフルオロ化合物が使用されている。これらは地球温暖化ガスであり、また価格もそれ程安価なものでないため、リサイクルの要請が高まっている。しかし、半導体製造設備等から排出されるガス中のフロン類は低濃度のため、再利用可能なレベルまで濃縮する必要があった。フロン類の濃縮には、膜分離法、吸着法、蒸留法、又はそれらの組み合わせなどが利用されるが、設備コストやエネルギー効率を考慮すると、通常、膜分離法を利用するのが有利である。このため、膜分離法を利用した種々のフロン類濃縮装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開平9−103633号公報には、図3に示すように、昇圧機1の後に直列に二段の分離膜モジュールM1,M2を設けてフロンを未透過側に濃縮する際、前段モジュールM1の透過ガスを廃棄しつつ、後段モジュールM2の透過ガスと未透過ガスの一部(弁V7により流量調節可能)とを昇圧機1の入口側へ循環させるフロン類濃縮装置が開示されている。この装置において、後段モジュールM2の透過ガスをフィードバックするのは、フロンの回収率を高めるためであり、また、未透過ガスの一部をフィードバックするのは、循環ガス中のフロン濃度の低下を防いでフロンの回収濃度を高めるためであると考えられる。
【0004】
また、特開平10−128034号公報には、図3に示すものと同様の装置の各分離膜モジュールの入口側に加熱手段を設けて、膜分離の透過性や選択性を更に改善したフロン類濃縮装置が開示されている。
【0005】
そして、上記のようなフロン類濃縮装置において、後段モジュールM2からの回収経路に設けた弁V6の流量を調節することにより、モジュールM1,M2での滞留時間が変化するなどのため、フロン類の回収濃度を変化させることができる。従って、回収濃度を計測して弁V1の開度を調節することにより、フロン濃度が制御できると考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように弁V1による回収流量の調節のみで回収濃度を制御する方法では、供給ガスのフロン濃度が変化するような場合(現実には、その可能性が高い)、回収濃度を一定に保とうと制御する際、回収率が低下する場合が生じる。逆に回収率を一定以上に保とうとすると、回収濃度が低下する場合が生じる。つまり、上記の制御方法では、供給ガスのフロン濃度が変化するような条件下では、フロン類の回収濃度と回収率とを両立できるような制御が困難であった。
【0007】
そして、このような課題は、上記の如きフロン類に限らず、高い回収濃度と高い回収率が要求される種々のガスに対して共通する事項である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決すべく、供給ガス中の被濃縮ガスの濃度が変化する場合でも、被濃縮ガスの回収濃度と回収率とを高く維持することができるガス濃縮装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、本発明により達成できるが、本発明は次の如き第1発明と第2発明よりなる。
【0010】
即ち、第1発明のガス濃縮装置は、分離するガス中の被濃縮ガスを未透過側に濃縮する分離膜を備える膜モジュールを昇圧機の出口側に直列に二段に設けると共に、前段膜モジュールの透過ガスを廃棄しつつ、後段膜モジュールの透過ガスと未透過ガスの一部とを前記昇圧機の入口側へ循環させるガス濃縮装置において、前記後段膜モジュールの未透過ガスの経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する回収濃度検出部を設けると共に、その出力情報に基づき回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁を、前記未透過ガスの回収経路に設け、前記前段膜モジュールの透過ガスの廃棄経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する廃棄濃度検出部を設けると共に、その出力情報に基づき廃棄濃度の上昇に応じて開度が小さくなるよう制御する循環流量制御弁を前記後段膜モジュールの未透過ガスの循環経路に設けてあることを特徴とする。
【0011】
上記において、前記回収濃度制御弁や前記循環流量制御弁の制御形態としては、後述のような種々の形態が考えれるが、前記回収濃度制御弁が、前記回収濃度検出部の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように弁の開度が制御されると共に、前記循環流量制御弁は、前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように弁の開度が制御されるものが好ましい。
【0012】
一方、第2発明のガス濃縮装置は、分離するガス中の被濃縮ガスを未透過側に濃縮する分離膜を備える膜モジュールを昇圧機の出口側に直列に二段に設けると共に、前段膜モジュールの透過ガスを廃棄しつつ、後段膜モジュールの透過ガスを前記昇圧機の入口側へ循環させるガス濃縮装置において、前記後段膜モジュールの未透過ガスの経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する回収濃度検出部を設けると共に、その出力情報に基づき回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁を、前記未透過ガスの回収経路に設け、前記前段膜モジュールの透過ガスの廃棄経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する廃棄濃度検出部を設けると共に、前記後段膜モジュールの未透過ガスの一部をその入口側へ循環させるための後段循環経路を設け、その後段循環経路に前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき廃棄濃度の上昇に応じて循環流量が小さくなるよう制御する循環流量制御手段を設けてあることを特徴とする。
【0013】
上記において、前記回収濃度制御弁や前記循環流量制御手段の制御形態としては、後述のような種々の形態が考えれるが、前記回収濃度制御弁が、前記回収濃度検出部の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように弁の開度が制御されると共に、前記循環流量制御手段は、前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように循環流量が制御されるものが好ましい。
【0014】
また、前記回収濃度制御弁より上流側に圧力検出部を設けると共に、その出力情報に基づき圧力の低下に応じて開度が小さくなるような制御情報を前記回収濃度制御弁に対して付与することが好ましい。
【0015】
[作用効果]
上記の第1発明によると、回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁を回収経路に設けてあるため、被濃縮ガスの回収濃度を一定以上に維持できると共に、前段膜モジュールからの廃棄濃度の上昇に応じて開度が小さくなるよう制御する循環流量制御弁を後段膜モジュールからの循環経路に設けてあるため、廃棄濃度を一定以下に維持でき、被濃縮ガスの回収率を高く維持することができる。
【0016】
また、前記回収濃度制御弁は、前記回収濃度検出部の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように弁の開度が制御されると共に、前記循環流量制御弁は、前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように弁の開度が制御されるものである場合、
回収濃度と廃棄濃度の両者の目標値を設定して制御するため、一方の濃度に変化が生じて、その変化が他方の制御に影響を与えることにより、制御が困難になるのを防止することができ、より確実に、回収濃度と回収率の両者を略一定に維持できる。
【0017】
上記の第2発明によると、回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁を回収経路に設けてあるため、被濃縮ガスの回収濃度を一定以上に維持できると共に、後段膜モジュールの未透過ガスの一部をその入口側へ循環させるための後段循環経路を設けて、そこに廃棄濃度の上昇に応じて循環流量が小さくなるよう制御する循環流量制御手段を設けてあるため、廃棄濃度を一定以下に維持でき、被濃縮ガスの回収率を高く維持することができる。
【0018】
また、前記回収濃度制御弁は、前記回収濃度検出部の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように弁の開度が制御されると共に、前記循環流量制御手段は、前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように循環流量が制御されるものである場合、
回収濃度と廃棄濃度の両者の目標値を設定して制御するため、一方の濃度に変化が生じて、その変化が他方の制御に影響を与えることにより、制御が困難になるのを防止することができ、より確実に、回収濃度と回収率の両者を略一定に維持できる。
【0019】
また、前記回収濃度制御弁より上流側に圧力検出部を設けると共に、その出力情報に基づき圧力の低下に応じて開度が小さくなるような制御情報を前記回収濃度制御弁に対して付与する場合、
回収濃度のみに基づく制御では、制御に遅れが生じ易いところ、圧力に基づく制御を併用することにより、制御の応答速度を速くすることができる。更に、応答速度の改善によって、より狭い範囲内に回収濃度を維持できるようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら、第1発明、第2発明の順で説明する。これらの実施形態では、フロン類を濃縮の対象とする場合を例示する。
【0021】
(第1発明)
第1発明のガス濃縮装置は、図1に示すように、分離するガス中のフロン類を未透過側に濃縮する分離膜を備える膜モジュールM1,M2を昇圧機1の出口側に直列に二段に設けると共に、前段膜モジュールM1の透過ガスを廃棄しつつ、後段膜モジュールM2の透過ガスと未透過ガスの一部とを昇圧機1の入口側へ循環させるものである。
【0022】
供給ガスとしては、主に半導体製造設備等から排出等されるガスであり、低濃度のフロン類を含有する希釈ガスやキャリアガス等の混合ガスである。膜分離に悪影響を与えるガス成分を含有する場合には、そのガス成分は、スクラバー処理、熱分解、プラズマ分解、触媒反応等の前処理工程によって予め除去される。なお、前処理工程については、特開平9−103633号公報に詳細が開示されており、いずれも採用することができる。
【0023】
前記フロン類としてはヘキサフルオロエタン等のパーフルオロカーボンや、三フッ化窒素等のパーフルオロ化合物が挙げられ、希釈ガス等としては、空気、窒素、希ガス等が挙げられるが、後述の分離膜によってフロン類を濃縮可能なものであれば、いずれの供給ガスでもよい。
【0024】
供給ガスのフロン類の濃度は、0.01体積%〜数十体積%のオーダーの広い範囲に対応できるが、本発明は、0.1〜1体積%の間で濃度が変化するような供給ガスに対して特に有効である。
【0025】
半導体製造設備等から直接、又は前処理手段を介して供給される供給ガスの供給経路には、圧力指示調節計(PIC)4と制御弁V4とが設けられ、これにより、その上流側の圧力が若干負圧にて略一定になるように維持される。これは、供給経路を介して、供給ガスを吸引するためであり、通常、ゲージ圧で−50〜−200mmH2 O程度に維持される。このような供給ガスの供給圧は、正圧でもよく、特に制限されない。
【0026】
前段膜モジュールM1の入口側には、昇圧機1が設けられており、前段膜モジュールM1の入口側が加圧される。その際、昇圧機1のバイパス経路に設けた圧力指示調節計(PIC)5と制御弁V5とにより、昇圧機1の出口側圧力(前段膜モジュールM1の入口側圧力)が略一定に保たれる。昇圧機1の出口側圧力の制御は、昇圧機1の種類に応じた種々の方法が存在するが、上記の如き制御によると、構造の簡易な圧縮機が使用でき、また圧力の安定性や流量変動への対応の面で有利となる。
【0027】
なお、前段膜モジュールM1の入口側圧力は、ゲージ圧で3〜15kg/cm3 程度に維持され、後段膜モジュールM2の入口側圧力は、それよりモジュールM1の圧力損失分程度だけ低い圧力(数%マイナス)に維持される。なお、両モジュールの間に圧力調整弁や昇圧機等を設けて、別個に圧力を設定してもよい。
【0028】
前段膜モジュールM1は、透過側に透過ガスの廃棄経路が設けられ、未透過側には後段膜モジュールM2の入口側に接続する経路が設けられている。一方、後段膜モジュールM2は、透過側に透過ガスを昇圧機1の入口側へ循環させる循環経路が設けられ、未透過側には未透過ガスの回収経路が設けられ、その回収経路から未透過ガスの一部を昇圧機1の入口側へ循環させる循環経路が設けられている。
【0029】
膜モジュールは、分離膜を備えたエレメントが耐圧容器内に組み込まれているもので、分離膜が入口側から未透過側(出口側)への流路と、透過側の流路が隔絶する構造になっている。具体的な膜モジュールの型式としては、中空糸型、スパイラル型など、ガス分離に用いられるモジュール型式がいずれも採用できる。分離膜としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、又はこれらのブレンド体などからなるものが用いられる。分離膜の形状としては、中空糸や平膜等が挙げられ、非対称構造を有するものが好適に使用される。このような分離膜は、各種市販されているものが使用でき、また、前掲の公報が引用した公報等に製造方法の詳細が開示されている。
【0030】
前段膜モジュールM1と後段膜モジュールM2は、同一のものを使用してもよいが、希釈ガスである窒素ガス等と回収ガスとを効率良く分離するために、前段膜モジュールM1の方が後段膜モジュールM2より、有効膜面積が大きくなるようにするのが好ましい。また、前段と後段で異なる材質の分離膜を使用してもよい。
【0031】
本発明では、上記の如き装置において、以下のような制御を行う手段を設けたことに特徴を有する。即ち、後段膜モジュールM2の未透過ガスの経路に、フロン類の濃度を検出する回収濃度検出部S1を設けると共に、その出力情報に基づき回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁2を、未透過ガスの回収経路に設ける一方、前段膜モジュールM1の透過ガスの廃棄経路に、フロン類の濃度を検出する廃棄濃度検出部S2を設けると共に、その出力情報に基づき廃棄濃度の上昇に応じて開度が小さくなるよう制御する循環流量制御弁3を後段膜モジュールM2の未透過ガスの循環経路に設けてあることを特徴とする。
【0032】
本実施形態では、回収濃度制御弁2が、制御部C1と弁V1とで構成され、回収濃度検出部S1の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように制御部C1にて弁V1の開度が制御される例を示す。
【0033】
回収濃度検出部S1としては、フロン類の濃度を検出して濃度に応じた電気信号等が出力できるものであればよく、例えば非分散型赤外吸収分光計やFT−IRなどを使用できる。弁V1としては開度調節可能な電動弁等が使用され、制御部C1からの出力により開度調節される。回収濃度が略一定になるように制御するには、回収濃度の目標値(設定値)からの偏差に対して、比例制御やPID制御などにより、必要な操作量を制御部C1から弁V1へと出力して制御すればよい。その際、正の偏差に対して、開度が大きくなるような操作量が出力される。
【0034】
また、本実施形態では、循環流量制御弁3が、制御部C2と弁V2とで構成され、廃棄濃度検出部S2の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように制御部C2にて弁V2の開度が制御される例を示す。
【0035】
回収濃度検出部S2としては、フロン類の濃度を検出して濃度に応じた電気信号等が出力できるものであればよく、例えば非分散型赤外吸収分光計やFT−IRなどを使用できる。弁V2としては開度調節可能な電動弁等が使用され、制御部C2からの出力により開度調節される。廃棄濃度が略一定になるように制御するには、廃棄濃度の目標値(設定値)からの偏差に対して、比例制御やPID制御などにより、必要な操作量を制御部C2から弁V2へと出力して制御すればよい。その際、正の偏差に対して、開度が小さくなるような操作量が出力される。
【0036】
上記の装置において、各部のフロン類の濃度を例示すると、次のようになる。例えば供給ガスが0.2〜0.5体積%である場合、前段膜モジュールM1の透過側では0.05体積%未満、未透過側では0.5〜数体積%、後段膜モジュールM2の透過側では3体積%未満、未透過側では数十体積%〜95体積%となる。
【0037】
以上のような制御によって、回収濃度と廃棄濃度の両者が略一定に維持され、しかも、その際、一方の濃度に変化が生じて、その変化が他方の制御に影響を与えることにより、制御のバランスが悪くなるなどの弊害を防止することができる。その結果、分離膜の種類や操作条件(特に供給ガス濃度と供給ガス流量)にもよるが、例えば、回収濃度90体積%以上、回収率95%以上を達成することができる。
【0038】
(第2発明)
第2発明のガス濃縮装置は、図1に示すように、分離するガス中のフロン類を未透過側に濃縮する分離膜を備える膜モジュールM1,M2を昇圧機1の出口側に直列に二段に設けると共に、前段膜モジュールM1の透過ガスを廃棄しつつ、後段膜モジュールM2の透過ガスを昇圧機1の入口側へ循環させるものである。
【0039】
第2発明における供給ガスの種類や濃度、前処理工程、前段膜モジュールM1の入口側の圧力制御、及び各段の膜モジュールについては、第1発明の場合と同様であり、後段膜モジュールM2の未透過ガスの一部を昇圧機1の入口側へ循環させる代わりに、後段膜モジュールM2の入口側へと循環させる点と、制御手段とが主な相違点である。
【0040】
本発明では、このような装置において、以下のような制御を行う手段を設けたことに特徴を有する。即ち、後段膜モジュールM2の未透過ガスの経路に、フロン類の濃度を検出する回収濃度検出部S1を設けると共に、その出力情報に基づき回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁2を、未透過ガスの回収経路に設ける一方、前段膜モジュールM1の透過ガスの廃棄経路に、フロン類の濃度を検出する廃棄濃度検出部S2を設けると共に、後段膜モジュールM2の未透過ガスの一部をその入口側へ循環させるための後段循環経路L1を設け、後段循環経路L1に廃棄濃度検出部S2の出力情報に基づき廃棄濃度の上昇に応じて循環流量が小さくなるよう制御する循環流量制御手段6を設けてあることを特徴とする。
【0041】
本実施形態では、回収濃度制御弁2が、制御部C1と弁V1とで構成され、回収濃度検出部S1の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように制御部C1にて弁V1の開度が制御される例を示す。回収濃度検出部S1、弁V1、制御部C1による制御は、第1発明の場合と同様である。
【0042】
また、本実施形態では、循環流量制御手段6が、制御部C3と昇圧機P1とで構成され、廃棄濃度検出部S2の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように制御部C3にて昇圧機P1の循環流量が制御される例を示す。
【0043】
回収濃度検出部S2としては、第1発明と同様のものが使用できる。昇圧機P1としては流量調節可能なものであればよく、制御部C3からの出力により流量調節される。好ましくは制御部C3による流量調節が容易なダイヤフラム式容量可変昇圧機等が使用される。廃棄濃度が略一定になるように制御するには、廃棄濃度の目標値(設定値)からの偏差に対して、比例制御やPID制御などにより、必要な操作量を制御部C3から昇圧機P1へと出力して制御すればよい。その際、正の偏差に対して、流量が小さくなるような操作量が出力される。
【0044】
以上のような制御によって、回収濃度と廃棄濃度の両者が略一定に維持され、しかも、その際、一方の濃度に変化が生じて、その変化が他方の制御に影響を与えることにより、制御のバランスが悪くなるなどの弊害を防止することができる。その結果、分離膜の種類や操作条件(特に供給ガス濃度と供給ガス流量)にもよるが、例えば、回収濃度90体積%以上、回収率95%以上を達成することができる。
【0045】
なお、以上のような第2発明のガス濃縮装置に対して、後段膜モジュールの未透過ガスの一部を昇圧機の入口側へ循環流量制御弁を介して循環させる循環経路を更に設けて、第1発明と同様の循環流量制御弁による制御を併用するようにしてもよい。
【0046】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0047】
(1)前述の実施形態では、回収濃度制御弁2が、制御部C1と弁V1とで構成される例を示したが、回収濃度検出部S1からの出力情報が、制御信号に相当するものであれば、制御部C1を介さずに直接、弁V1を制御してもよい。この点については、循環流量制御弁3及び循環流量制御手段6についても同様である。つまり、制御部の機能を検出部側に有する場合には、別途制御部を設ける必要はない。
【0048】
(2)前述の実施形態では、回収濃度及び廃棄濃度が略一定になるように制御する例を示したが、回収濃度を一定値以上に、廃棄濃度を一定値以下に制御するようにしてもよく、また、回収濃度及び廃棄濃度が予め設定した範囲内に維持されるように制御してもよい。このような制御は、制御部における演算やアルゴリズムを変更することにより、容易に行うことができる。
【0049】
(3)第2発明にかかる前述の実施形態では、昇圧機P1自体が流量調節機能を有する場合の例を示したが、開度調節弁との組み合わせにより、流量調節を行ってもよい。
【0050】
(4)前述の実施形態では、2つの膜モジュールからなる装置の例を示したが、2つの膜モジュールから構成されるものには限られない。つまり、前段と後段の各モジュールを複数に並列接続した膜モジュールで構成して、処理能力を増大させてもよい。
【0051】
また、各モジュールを複数に分割して直列接続した膜モジュールで構成して、濃縮の程度に応じた条件設定を行え易いようにしてもよい。その場合、見かけの段数は2段以上になる。
【0052】
(5)前述の実施形態では、制御部がそれぞれ独立して設けられている例を示したが、1つの制御部で各部の制御を行うようにしてもよい。その際、各部の制御は無関係(独立)に行ってもよいが、各部の制御を関連付けた制御を行ってもよい。例えば回収濃度検出部と廃棄濃度検出部との両者の出力情報に基づいて、回収濃度制御弁又は循環流量制御弁を制御する等である。
【0053】
(6)前述の実施形態では、フロン類を濃縮の対象とする場合の例を示したが、本発明における被濃縮ガスとしては、分離膜を用いて、供給ガス中の被濃縮ガスを未透過側に濃縮できるものであれば、いずれのガスでもよい。但し、本発明は、地球環境やコスト面等の理由から、大気への放出をできるだけ回避したいようなガスに対し特に有効である。例えば、前述のフロン類の他、半導体製造プロセス等で使用されるシラン等の薄膜形成用ガスなどの各種ガスが挙げられる。
【0054】
(7)前述の実施形態では、回収濃度のみに基づいて回収濃度制御弁を制御する例を示したが、回収濃度制御弁より上流側に圧力検出部を設けると共に、その出力情報に基づき圧力の低下に応じて開度が小さくなるような制御情報を前記回収濃度制御弁に対して付与してもよい。この構成においては、昇圧機1のPIC5が、吸入側の圧力を制御するようにしてもよく、これにより吸入側の圧力を一定に保ちながら、回収濃度の制御を好適に行うことができる。
【0055】
上記の場合、圧力検出部は後段膜モジュールの入口側に設けるのが好ましいが、例えば、圧力指示調節計(PIC)が利用できる。その際、一次調節計となるPICからの操作信号を、回収濃度制御弁の制御部に入力するカスケード制御とするのが好ましい。なお、当該操作信号と回収濃度検出部からの出力情報とのバランスは、制御の応答速度と制御の安定性とを考慮して適当な範囲で設定することができる。
【0056】
上記構成によると、比較的簡易な装置を付加するだけで、制御の応答速度を速くすることができ、更に、より狭い範囲内に回収濃度を維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明のガス濃縮装置の一例を示す概略構成図
【図2】第2発明のガス濃縮装置の一例を示す概略構成図
【図3】従来のガス濃縮装置の一例を示す概略構成図
【符号の説明】
1 昇圧機
2 回収濃度制御弁
3 循環流量制御弁
6 循環流量制御手段
M1,M2 膜モジュール
S1 回収濃度検出部
S2 廃棄濃度検出部

Claims (5)

  1. 分離するガス中の被濃縮ガスを未透過側に濃縮する分離膜を備える膜モジュールを昇圧機の出口側に直列に二段に設けると共に、前段膜モジュールの透過ガスを廃棄しつつ、後段膜モジュールの透過ガスと未透過ガスの一部とを前記昇圧機の入口側へ循環させるガス濃縮装置において、
    前記後段膜モジュールの未透過ガスの経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する回収濃度検出部を設けると共に、その出力情報に基づき回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁を、前記未透過ガスの回収経路に設け、
    前記前段膜モジュールの透過ガスの廃棄経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する廃棄濃度検出部を設けると共に、その出力情報に基づき廃棄濃度の上昇に応じて開度が小さくなるよう制御する循環流量制御弁を前記後段膜モジュールの未透過ガスの循環経路に設けてあることを特徴とするガス濃縮装置。
  2. 前記回収濃度制御弁は、前記回収濃度検出部の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように弁の開度が制御されると共に、
    前記循環流量制御弁は、前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように弁の開度が制御されるものである請求項1記載のガス濃縮装置。
  3. 分離するガス中の被濃縮ガスを未透過側に濃縮する分離膜を備える膜モジュールを昇圧機の出口側に直列に二段に設けると共に、前段膜モジュールの透過ガスを廃棄しつつ、後段膜モジュールの透過ガスを前記昇圧機の入口側へ循環させるガス濃縮装置において、
    前記後段膜モジュールの未透過ガスの経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する回収濃度検出部を設けると共に、その出力情報に基づき回収濃度の低下に応じて開度が小さくなるよう制御する回収濃度制御弁を、前記未透過ガスの回収経路に設け、
    前記前段膜モジュールの透過ガスの廃棄経路に、被濃縮ガスの濃度を検出する廃棄濃度検出部を設けると共に、前記後段膜モジュールの未透過ガスの一部をその入口側へ循環させるための後段循環経路を設け、その後段循環経路に前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき廃棄濃度の上昇に応じて循環流量が小さくなるよう制御する循環流量制御手段を設けてあることを特徴とするガス濃縮装置。
  4. 前記回収濃度制御弁は、前記回収濃度検出部の出力情報に基づき、回収濃度が略一定になるように弁の開度が制御されると共に、
    前記循環流量制御手段は、前記廃棄濃度検出部の出力情報に基づき、廃棄濃度が略一定になるように循環流量が制御されるものである請求項3記載のガス濃縮装置。
  5. 前記回収濃度制御弁より上流側に圧力検出部を設けると共に、その出力情報に基づき圧力の低下に応じて開度が小さくなるような制御情報を前記回収濃度制御弁に対して付与する請求項1〜4いずれか記載のガス濃縮装置。
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