JP2938194B2 - 有機成分蒸気混合ガスの処理方法 - Google Patents

有機成分蒸気混合ガスの処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は空気若しくは窒素等の不
活性ガスと有機成分蒸気との混合ガスをガス分離膜モジ
ュールにより処理して、有機成分を高効率で回収すると
共に当該ガスを低有機成分蒸気濃度にして排出する有機
成分蒸気混合ガスの処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】化学プロセス系においては、空気若しく
は不活性ガスと有機成分蒸気との混合ガスの発生がよく
観られる。例えば、固形分中の有価成分を有機溶剤を用
いて抽出するときに固形分投入口より空気が吸引混入さ
れ、この混合ガスが系外に排出される場合がある。この
混合ガス中の有機成分蒸気は、その成分如何によって
は、大気汚染対策のため、或いは経済的見地から分離回
収することが要請され、この回収にガス分離膜モジュー
ルを使用することが提案されている(例えば、特開昭6
2−279825号)。
【0003】このガス分離膜モジュールを使用する方法
においては、吸収法や吸着法での操作管理維持の困難性
或いは排水等による二次汚染の問題がなく、有利であ
る。図2はガス分離膜モジュールを使用して上記有機成
分蒸気を分離する場合の通常の装置を示し、3’は冷却
器、4’はフィルター、6’は送風機、2’は有機成分
蒸気に対して選択性を有するガス分離膜モジュール、
5’はガス分離膜モジュール2’の非透過ガス排出管、
7’は真空ポンプである。
【0004】この装置を使用して上記空気若しくは窒素
等の不活性ガスとの混合ガスから有機成分蒸気を分離す
るには、送風機6’の駆動によって混合ガス源1’から
の混合ガスをガス分離膜モジュール2’に導入する。こ
の際、混合ガスを送風機6’の手前で冷却機により冷却
し、又、フィルター4’によりダスト等の微小固体等を
除去したうえでガス分離膜モジュール2’に導く。そし
て、真空ポンプ7’の駆動によるガス分離膜モジュール
2’の透過側での減圧下、ガス分離膜モジュールの上記
有機成分蒸気に対する選択透過性によって有機成分蒸気
濃度の高い透過ガスを得、ガス分離膜モジュールの非透
過側においては、混合ガスが膜に接して流動する間での
上記有機成分蒸気の透過分離によって有機成分蒸気が希
釈化され、非透過ガス排出管5’からこの低濃度有機成
分蒸気のガスを排出していく。
【0005】上記ガス分離膜によるガス分離は、気体分
子が膜の界面で膜に溶解し、これによって生じた濃度勾
配を駆動力として膜の分子間隙を拡散していく,所謂溶
解拡散機構に基づいており、上記混合ガスの分離におい
ては、有機成分蒸気に対する透過速度(拡散速度と溶解
速度との積)が空気又は不活性ガスに対する透過速度に
較べて大なる膜、即ち、有機成分蒸気に対して選択透過
性を有する膜を使用している。
【0006】この場合、膜に対する有機成分蒸気の溶解
速度は、温度が低いほど速く、膜の透過速度も速くな
る。例えば、シリコーンゴム系複合膜の場合、n−ブタ
ンガスの透過速度は20℃では25℃の場合の約1.4
倍となる。この温度低下による透過速度の増大は溶解性
の強い有機成分蒸気(例えば、ヘキサン、トルエン等)
ほど顕著である。従って、上記のガス分離膜モジュール
には、低温の混合ガスを供給することが有利であり、上
記において、冷却機3’はガス分離膜モジュール2’の
透過速度の増大に寄与している。
【0007】
【解決しようとする課題】しかしながら、上記のガス分
離においては、ガス分離膜モジュール2’の手前に送風
機6’を設置しており、送風機6’自体の発熱による供
給ガスの昇温が避けられず、この昇温による有機成分蒸
気の透過速度の低下のために上記冷却機3’による冷却
効果が減退されてしまい、全体としての上記透過速度の
効果的な増大を図り難いことがある。たとえ、送風機と
ガス分離膜モジュールとの間に冷却器を設置しても、ガ
ス分離膜モジュールの手前に送風器が存在する以上、送
風機発熱分のエネルギー損失は避けることができない。
【0008】本発明の目的は、ガス分離膜モジュールに
上記混合ガスを導く手段、例えば、送風機自体の発熱に
より有機成分蒸気の透過速度が低下するのを排除して、
混合ガスの有機成分蒸気濃度を省エネルギー化のもとで
環境汚染規制に対処できる有機成分蒸気混合ガスの処理
方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る有機成分蒸
気混合ガスの処理方法は、空気若しくは不活性ガスと有
機成分蒸気との混合ガスを冷却し、この冷却混合ガス
有機成分蒸気に対して選択透過性を有するガス分離膜モ
ジュールに、該ガス分離膜モジュールの非透過ガス排出
配管中に設けた吸引手段の駆動によって導入し、該ガス
分離膜モジュールの透過側を減圧しつつ有機成分蒸気を
選択的に分離する方法であり、モジュ−ルの非透過側室
が吸引手段よりも上流側に在ることによる前記導入ガス
の昇温抑制に基づく透過速度の増加分を、同じく非透過
側室が吸引手段よりも上流側に在ることによる非透過側
室の圧力低下による透過速度の減少分よりも大とするこ
とを特徴とする構成である。
【0010】
【作用】ガス分離膜モジュールの非透過ガス排出管に設
けた吸引手段の駆動によって混合ガス源からの混合ガス
がガス分離膜モジュール内に吸引手段を通過することな
しに導入されるから、吸引手段の発熱に関係なく混合ガ
スを冷却器による冷却温度のもとでガス分離膜モジュー
ルに導入できる。従って、混合ガスが送風機の発熱で加
熱されてガス分離膜モジュールに導入される場合での昇
温による透過流速の低下を回避し得、全体として透過速
度を大きくできる。
【0011】
【実施例の説明】以下、図面により本発明の実施例を説
明する。図1は本発明において使用する混合ガスの処理
装置の一例を示している。図1において、1は空気若し
くは不活性ガスと有機成分蒸気との混合ガスのガス源で
ある。2はガス分離膜モジュールであり、有機成分蒸気
に対して選択透過性を有する。21は非透過側室を、2
2は透過側室をそれぞれ示している。このモジュ−ルに
は、スパイラル型、中空糸型、管状型、プレート型等を
使用できる。3はガス分離膜モジュール2の手前に設け
た冷却器、4はフィルターである。5はガス分離膜モジ
ュールの非透過ガス排出管、6は該非透過ガス排出管5
に設けた送風機である。7は真空ポンプ、8は透過ガス
排出管である。
【0012】本発明によって上記空気等と有機成分蒸気
との混合ガスを処理するには、送風機6並びに真空ポン
プ7を駆動し、送風機6の吸引作用でガス源1からの混
合ガスを冷却器3に導いて冷却し、更に、フィルター4
でダスト等の微小固体及びミスト等の微小液体を除去し
ながら、当該混合ガスをガス分離膜モジュール2の非透
過側室21に導く。この場合、フィルター4によってガ
ス分離膜モジュール1の膜面、膜内への微粒子の付着、
吸着を防止し得、ガス分離膜モジュール2の初期透過速
度をよく保持できる。なお、混合ガスを冷却器3により
有機成分蒸気の飽和蒸気圧以上に冷却して、冷却器3で
有機成分蒸気の一部を凝縮により回収することもでき、
この場合、凝縮ミスト類を除去するために、デミスター
をフィルター4に付加することが望ましい。
【0013】上記のようにしてガス分離膜モジュール2
の非透過側室21に導入した混合ガスを、冷却器4によ
り冷却された温度並びに真空ポンプ7の駆動による所定
の膜間差圧のもとで透過処理する。この際、膜の選択透
過性により、透過ガスは有機成分蒸気が濃縮されたもの
となる。他方、ガス分離膜モジュール2の非透過側室2
1のガスにおいては、膜と接触して流動する間に有機成
分蒸気が上記のように膜を透過し、有機成分蒸気が希釈
され、この有機成分蒸気希釈ガスが非透過ガス排出管5
から排出されていく。
【0014】上記において、非透過側のガス流に対して
送風機6がガス分離膜モジュール2よりも後方側に存在
しているから、送風機6本体の発熱にもかかわらず、冷
却器4からの冷却ガスを昇温させることなく、ガス分離
膜モジュール2で透過処理できる。従って、従来例、即
ち混合ガスが送風機の発熱で昇温されてガス分離膜モジ
ュールで透過処理される場合に較べて、透過速度を大き
くできる。
【0015】上記において、ガス分離膜モジュール2の
非透過側室21が送風機6の吸込口よりも上流側にある
ために、従来の下流側にある場合に較べてガス分離膜モ
ジュール2の非透過側室21が減圧され、この減圧に基
づく膜間差圧の低下により透過速度が減少するが、この
減少は僅かであって全体としての透過速度を大きくでき
る。
【0016】具体的には、ガス分離膜モジュールの非透
過側排出管に送風機を設けた場合のガス分離膜モジュー
ルの非透過側室圧力は、通常、常圧よりも200mmH2O
減圧の0.981kg/cm2abs程度であり、ガス分離膜モ
ジュールの手前に送風機を設けた場合のガス分離膜モジ
ュールの非透過側室圧力は、通常、常圧よりも200mm
H2O増圧の1.019kg/cm2abs程度であり、ガス分離膜
モジュール透過側の真空度80Torrabs(0.105kg/c
m2abs)のもとでの膜間差圧は前者の場合で0.876k
g/cm2abs、後者の場合で、0.914kg/cm2absであ
り、その差は僅か4%であって、これを上記の温度効果
(送風機をガス分離膜モジュールの非透過ガス排出管に
設けた場合とガス分離膜モジュールの手前に設けた場合
とのガス分離膜モジュールの非透過側室でのガス温度
差)に換算すると、1℃以内となり、通常の温度効果
(約4℃)に較べて小さく、全体として約4℃の温度効
果を達成できる。この効果は次ぎの実施例と比較例との
対比からも確認できる。
【0017】実施例1 図1の処理装置において、ガス分離膜モジュール2に有
効膜面積14m2のシリコーンゴム系ポリイミド複合膜
を用いたスパイラル型ガス分離膜モジュールを使用し、
冷却器3の出口のガス温度を32℃とするように冷却器
3による冷却を行い、ガス分離膜モジュールの透過側真
空圧力を80Torrとして、濃度20VoL%のn−ブタン混
合空気を供給ガス量200NL/minで供給して処理した。
【0018】比較例1 図2の処理装置を使用し、ガス分離膜モジュール、冷却
器の冷却条件、送風機、ガス分離膜モジュールの透過側
真空圧力、混合ガス、混合ガスの供給量を総て実施例1
と同じとした。
【0019】この比較例1でのガス分離膜モジュールの
非透過室側のガス温度は35℃であり、同室のガス圧は
常圧よりも150mmH2O増しであってn−ブタン透過率
〔(1−(非透過ガス中有機成分蒸気量)/(供給ガス
中有機成分蒸気量))×100%〕は93%であった
が、実施例1においては、ガス分離膜モジュールの非透
過室側のガス温度は32℃であり、同室のガス圧は常圧
よりも200mmH2O減であったが、n−ブタン透過率は
97%にも達した。
【0020】実施例2 図1の処理装置において、ガス分離膜モジュール2に有
効膜面積14m2のシリコーンゴム系ポリイミド複合膜
を用いたスパイラル型ガス分離膜モジュールを使用し、
冷却器3の出口のガス温度を20℃とするように冷却器
3による冷却を行い、ガス分離膜モジュールの透過側真
空圧力を80Torrとして、濃度10VoL%のn−ヘキサン
混合空気を供給ガス量300NL/minで供給して処理し
た。
【0021】比較例2 図2の処理装置を使用し、ガス分離膜モジュール、冷却
器の冷却条件、送風機、ガス分離膜モジュールの透過側
真空圧力、混合ガス、混合ガスの供給量を総て実施例2
と同じとした。
【0022】この比較例2でのガス分離膜モジュールの
非透過室側のガス温度は25℃であり、同室のガス圧は
常圧よりも250mmH2O増しであってn−ブタン透過率
は90%であったが、実施例2においては、ガス分離膜
モジュールの非透過室側のガス温度は20℃であり、同
室のガス圧は常圧よりも250mmH2O減であったが、n
−ブタン透過率は95%にも達した。
【0023】
【発明の効果】本発明の有機成分蒸気混合ガスの処理方
法は上述した通りの構成であり、従来例に較べ、混合ガ
スをガス分離膜モジュールに導く送風機の配設位置を変
えるだけで有機成分蒸気に対する透過速度を増大し得、
従来例に較べ、同一運転エネルギー量のもとでは有機成
分蒸気の分離回収量をアップしてより厳しい大気汚染規
制に対処でき、同一有機成分蒸気回収量のもとではより
一層の省エネルギー化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において使用する処理装置の一例を示す
説明図である。
【図2】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 混合ガス源 2 ガス分離膜モジュール 3 冷却器 6 吸引手段 7 真空ポンプ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】空気若しくは不活性ガスと有機成分蒸気と
    の混合ガスを冷却し、この冷却混合ガスを有機成分蒸気
    に対して選択透過性を有するガス分離膜モジュールに、
    該ガス分離膜モジュールの非透過ガス排出配管中に設け
    た吸引手段の駆動によって導入し、該ガス分離膜モジュ
    ールの透過側を減圧しつつ有機成分蒸気を選択的に分離
    する方法であり、モジュ−ルの非透過側室が吸引手段よ
    りも上流側に在ることによる前記導入ガスの昇温抑制に
    基づく透過速度の増加分を、同じく非透過側室が吸引手
    段よりも上流側に在ることによる非透過側室の圧力低下
    による透過速度の減少分よりも大とすることを特徴とす
    る有機成分蒸気混合ガスの処理方法。
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