JP4005447B2 - 重金属類固定化材ならびに汚染土壌の処理工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属類の固定化材と汚染された土壌の処理工法に関し;より詳細には、固定化材(S)がシラノール基を有する活性シリカ(SS)、反応性アルミナ(SA)、水酸化ナトリウム(SN)およびカルシヤ組成物(SC)、さらに必要に応じて粉末付加補助組成物(ST)が均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成されている固定化材(S)であり、汚染土壌に固定化材(S)と水を加えて混和可能な装置により混和物とし、次いで反応・養生条件を与える固定化処理工程により含有重金属類をpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性化合物で固定化して変形性を示す処理土壌として変質している汚染土壌の処理工法に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、環境を保全して健康で快適に過ごせる生活環境を確保するために、人の健康に悪影響を及ぼす鉛等の重金属類、さらにダイオキシンや環境ホルモン等の有害物質が土壌ならびに水系、さらに大気を汚染している現況を解消して、自然な環境への修復・再生・保全が強く求められている。こうした状況から、有害物質で汚染されている土壌を修復・再生・保全させる技術の確立は、環境問題の解消のみならず土地を有効活用の立場からも重要である。
【0003】
土壌を汚染している有害な重金属類(鉛、クロム、カドミ、ヒ素、水銀等)は、水、特に酸性サイドにあるに溶液に溶解性が高く、雨、特に酸性雨により溶解・溶出し、有害な重金属類が地下水脈や河川・海域に流失し、広域な生活環境への汚染拡散を起こしている。この有害物質による生物生態系への影響が避けられず、生活環境に多くの弊害を発現しており早急な対策が求められている。
【0004】
このような有害物質の汚染拡散を防止するため、汚染土壌の改善・修復策を促進せしめる一方法として、土壌汚染対策法が成立(平成14年5月22日)している。したがって、今後工場跡地等にマンション等を建てるときには、土壌を調査し、もし土壌が有害物質で汚染されているときは、土地所有者が有害汚染物質の除去・改善や拡散防止策を行うよう求められている。
【0005】
法規制もある汚染土壌の解消対策は、土地評価ならびに土地活用の面から重要である。しかるに汚染土壌の修復・再生処理には、膨大な量の処理を必要とすることから、低コストでできる修復・再生工法でなければ土地活用の立場から経済的意味がなく、経済性があり安全な修復・再生工法の技術確立が求められている。
【0006】
しかし、現状では、汚染土壌地域を修復・再生するために、汚染土壌を新鮮な土壌と交換する方法が一部で施工されている。しかし、この方法では、持ち出された汚染土壌は汚染廃棄物であり、特別に管理されない限り持ち出された汚染土壌が持ち込まれた先で新たに汚染拡散を起こす危険性がある。したがってこの方法では、総合的な環境問題の解消にならず、むしろ非汚染区域に新たに重金属類による汚染の危険性を持ち込む弊害がある。
【0007】
さらにまた、汚染土壌を水で洗浄して修復・再生せしめる方法も提案されている。しかるに、膨大な量の処理であることから、洗浄処理に要する作業量ならびに必要とする処理設備の現場への持ち込み、さらに必要とする水の量から洗浄処理に伴う経費の膨大さに経済性がない。
【0008】
しかも、この場合も、洗浄処理に要した水に移行した有害重金属類を排水として処理せねばならず、さらに膨大な処理費が必要となる。また、そのまま河川・海域等に処理水を放流することは、汚染物質の拡散になり、総合的環境問題の解消にはなんら貢献していない。
【0009】
さらにまた、含有している重金属類を水不溶性にする技術として、アルカリ成分(石灰やセメント)や硫化物を加えて水溶出するイオン性重金属類を難溶性の水酸化物や硫化物に変質せしめる技術もある。しかし、重金属類を水酸化物や硫化物として水に対して難溶性としても、少々の酸性条件、例えばpH4の酸性雨では溶解してしまい、現在の天然現象である酸性雨にも安全に安定した不溶性化合物として重金属類を固定化せしめる技術としての完成度はない。
【0010】
また、重金属類を包んで被覆する材料として、ポルトランドセメント等を選択することも考えられる。しかし、所詮ポルトランドセメントで重金属類を包んでも、包んだポルトランドセメントに耐酸性がなく[実施例参照」、しかもポルトランドセメント自身が有害な重金属であるクロムを含有している事実から、土壌中にさらに有害重金属クロムを増加せしめる方向にあり環境上思わしくない。
【0011】
しかも、セメント類で処理された土壌は、処理後硬化・固化してしまい、処理された土地を有効活用しようとするときコンクリート化した地盤を一般的土壌地盤として扱うことは難しく、その地盤で行う土木作業や建築作業を困難にし、処理土壌地盤の活用を抑制する傾向にある。
【0012】
また、重金属類を固定化する材料として、キレート化せしめて封じ込め材料もある。しかし、キレート化材による処理で生成したキレート化合物は、天然の光、熱、酸性雨等の条件に長期に亘りさらされる時に分解されやすく安定性がなく、重金属類をキレート化して長期に安全な化合物として確保することは難しい。
【0013】
さらにまた、還元性機能を有する鉄粉を汚染土壌に混和して、含有する有機物類の還元分解効果を期待すると共に有害重金属類の還元作用により、含有有害重金属類を水不溶性化合物に変質せしめる技術も開示されている。しかし、鉄粉処理法による重金属類の固定化では、酸性雨を想定するpH4の酸性サイドにある溶液に対して安定した安定性を示すことはない。
【0014】
さらに、産業廃棄物の焼却灰やスラッジ等が含有する重金属類を固定化処理する材料として、セメントを主成分にしてリン酸水素塩化合物やフライアッシュ、石膏、ベントナイト、アロフェン等を加えた処理材が提案(特開平5−309354、特開平6−328063、特開平7−39847、特開平7−60221、特開平7−185499等)されている。然るにこれらの提案処理材で処理された焼却灰やスラッジ等の重金属類が固定化されているが、環境庁46号による溶出試験で、例えば鉛が少なくても0.1mg/lであり、環境基準である0.01mg/lをクリヤーしていない。
【0015】
しかも、セメントを主成分にしてリン酸水素塩化合物等で構成される処理材を採択して、焼却灰やスラッジ等が含有する重金属類を処理して、酸性雨を想定するpH4の溶液に対して不溶性化合物となる条件は開示されていない。ましてや、
セメントを主成分にしてリン酸水素塩化合物等からゼオライト類が形成されて重金属類が固定化される条件や具体的例について、全く開示されていない。
【0016】
さらにまた、平成14年6月26日から開かれた「地下水・土壌汚染と、その防止対策に関する研究集会」において、汚染土壌を修復・再生せしめる防止策としては、特別シンポジュウムにおいても、また講演・研究発表等においても、汚染土壌を低価格で酸性雨を想定したpH4の溶液に対して安定して固定され技術の開示は全くなされていない。
【0017】
本発明者らは、シリカ、アルミナ、アルカリ、カルシヤ等を主成分とする複合組成物を焼却灰やフライアッシュ等の重金属類含有素材に加えて常温の条件下で反応・養生せしめる時、重金属類含有素材が硬化・固化体を形成しつつ、含有重金属類が水不溶性に固定化される例を出願特許(特開平11−246261、特願2000−351931、特願2001−083816、特願2001−234183等)に開示している。
【0018】
しかし、これらの発明技術では、シラノール基含有のシリカを主成分とする複合組成物が有する主たる機能が、強度を有する固化体を形成せしめる機能にあり、この硬化・固化体形成機能に付随して重金属類の固定化機能を開示している。しかるに、汚染土壌の重金属類を固定化処理する時に、処理された土壌が硬化・固化してしまいコンクリート化することは、処理土壌を土地・地盤として活用しようとする立場からは好ましくない。
【0019】
上記の本発明者らが開示している出願特許には、シリカ等を主成分とする複合組成物を重金属類等で汚染されているケイ酸塩素材に加えて、ケイ酸塩素材を硬化・固化させることなく含有重金属類を固定化して変形性であるケイ酸塩系処理土壌とする具体的な内容・条件・方法・工法等については開示されていない。
【0020】
ましてや、イオン性重金属類が単なる吸着でなく、ゼオライト類結晶として固定化されて、その固定化された化合物がpH4の酸性雨にも耐えて重金属類の固定化がなされ、固定化された化合物が安定にして安全に長期確保できる機能を発揮させる具体的な条件・方法・工法等についても開示されていない。
【0021】
従来技術において、土壌に固化体等の機能性材料の粉体もしくはスラリーを接触せしめて土壌地盤を改良する技術としては、軟弱地盤等の土壌地盤を改良する工法として種々なる技術が開示され、実施されている。中でも物理的改良に対応して、化学的工法(固結工法)として生石灰パイル工法、深層混合工法、薬液注入工法、粉体噴射撹拌工法等が実施されている。
【0022】
しかるに従来技術において、汚染土壌や地盤に特定される固定化材を加えて、汚染土壌を環境に安全な変形性処理土壌とするために可塑性もしくは流動性混和物として重金属類を固定化すための適切な装置の選択、処理条件、変質されて処理土壌の重金属類の固定化状況等を具体的に示して、含有重金属類をpH4ないし9の水系溶媒に不溶性とする技術の開示はなされていない。
【0023】
しかも、有害な重金属類で汚染されている土壌地盤を有効に活用するためには、ボリュームの大きい汚染土壌地盤を常温現場において、特別な高価な装置を採択することなく簡単な工法で安価に修復・再生する技術が求められている。しかるに以上の条件を満足させる技術の開示は未だなされていない。ましてや、pH4の酸性雨が降り注ぐ現実の気象条件下において、含有重金属を地下水脈や河川・海域等に拡散させることなく、固定化する技術の開示はない。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、工場跡地等において、人為的に重金属類で汚染された土壌に酸性雨を含めたpH4ないし9を示す溶液が降り注ぐと、重金属類が溶解して地下水脈や河川・海域等に二次的に溶出して、広域な環境へ有害重金属類類が拡散し、生物生態系ならびに人の健康に著しく影響与えている点にある。
【0025】
これらの課題に対して、生物生態系ならびに人類の健康に影響与えているイオン性重金属類を、常温の現場で酸性雨が想定されるpH4、ないし9を示す溶液に接しても長期に安定して溶出しない固定化された化合物に変質せしめる技術は未だ確立されていない。
【0026】
ましてや、含有重金属類を少なくとも水に不溶性な化合物もしくは被覆処理等により固定化しても、この処理土壌を再利用が容易な取り扱い易い土壌地盤としての修復・再生を可能としておらず、コンクリート化された軽い外圧に変形性を示す処理土壌への変質は試みられていない。
【0027】
しかも、汚染土壌を安全に修復・再生・改質させる現状の処理工法では、膨大な経費を要している。例えば、新鮮で無公害な土壌との交換にしても汚染土壌の交換・後管理には莫大な経費を要し、また汚染土壌を洗浄しても汚染土壌の洗浄で排出した処理水の無公害化処理には莫大な経費を要する。
【0028】
従って、確立された技術が、高価な材料・装置・工程を採択することなく、またエネルギーを多消費することなく、簡単にして安価な施工・工法により、汚染土壌が修復・再生される技術であることが重要である。特に、汚染土壌を有効再利用する立場から、汚染土壌をムダな横移動させることなく、汚染発生現場において経済的に修復・再生せしめる処理工法であることが重要である。
【0029】
しかも、処理土壌が、コンクリート化せず外圧に対して容易な変形性を可能とする一般的な土壌地盤に変質していることが、処理土壌再利用の立場から重要である。仮にセメント等の固化材を用いて汚染土壌を処理する時、処理土壌が硬化・固化して処理土壌地盤の有効利用を阻害する方向にあることは思わしく、変形性を有する利用価値の高い処理土壌として修復・再生されることが大切である。
【0030】
【発明の目的】
本発明の目的は、有害な重金属類を含有する汚染土壌に対して、酸性雨で想定されるpH4ないし9を示す溶液にさらされても安定して固定化されている処理同情に変質せしめる固定化材(S)により、しかも処理された土壌が硬化・固化することない変形性を示す処理土壌であり、汚染土壌を修復・再生して、有害重金属類の環境への二次的拡散汚染を阻止し、土地の有効活用を可能とする重金属の固定化材(S)ならびに汚染土壌の処理工法技術を提供することにある。
【0031】
【課題を解消するための手段】
本発明によれば、重金属類含有汚染土壌を固定化処理工程に付して、処理された土壌の重金属類がpH4ないし9範囲にある水系溶媒に対して溶出しない不溶性化合物として固定化しており、処理土壌が外圧に対して変形性を示す土壌とする重金属類固定化材(S)において;
【0032】
上記の固定化材(S)が、シラノール基を有する活性シリカ(SS)100質量部に対して、反応性アルミナ(SA)を50ないし200質量部、水酸化ナトリウム(SN)を15ないし80質量部およびカルシヤ組成物(SC)を20ないし300質量部の量で加えた必須四成分が均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)であり;
【0033】
上記の固定化処理工程が、乾燥物基準換算で汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を10ないしは140質量部の量割合で均質混和して形成される可塑性ないしは流動性の混和物とし、ついで該混和物を2ないし40℃に少なくとも24時間放置して処理土壌とする工程であり;
【0034】
以上の固定化処理工程により、汚染土壌の含有重金属類がアルミノケイ酸の塩基性塩化合物であるゼオライト類として固定化せしめてpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に溶出しない処理土壌に変質せしめ、このときの処理土壌が外圧により変形性を示す土壌とする固定化材(S)である重金属類固定化材が提供される。
【0035】
本発明によれば、前記の固定化材(S)の構成成分であるシラノール基を有する活性シリカ(SS)において;
上記の活性シリカ(SS)が、シリカ(SiO2)を主成分とする非晶質ケイ酸(SS1)、ケイ酸アルカリ(SS2)、ケイ酸アルミニウムを主骨格とするフェロケイ酸塩の層状粘土鉱物(SS3)ならびにケイ酸やケイ酸塩に水酸化ナトリウムを反応せしめてシラノール基を保有せしめたアルカリ変性ケイ酸塩(SS4)群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される重金属類固定化材が提供される。
【0036】
本発明によれば、前記の固定化材(S)の構成成分であるシラノール基を有する活性シリカ(SS)において;
上記の反応性アルミナ(SA)が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムならびにアルミン酸アルカリ土類金属塩群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される重金属類固定化材が提供される。
【0037】
本発明によれば、前記の固定化材(S)の構成成分であるカルシヤ組成物(SC))において;
上記のカルシヤ組成物(SC)が、カルシヤ標準組成物(SC1)、オキシ酸塩組成物(SC2)、ハロゲン塩組成物(SC3)、廃棄物粉体組成物(SC4)、セメント粉体組成物(SC5)、アルカリ変性組成物(SC6)ならびに炭カル酸変性組成物(SC7)群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される重金属類固定化材が提供される。
【0038】
本発明によれば、前記の固定化材(S)が必須四成分で均質混合されている複合組成物(PS)に対して、さらに付加補助組成物(ST)を加えた五成分で均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)において;
【0039】
上記の粉末付加補助組成物(ST)が、結晶タネ組成物(ST1)、硫酸根組成物(ST2)、燐酸根組成物(ST3),バリウム塩組成物(ST4)、鉄塩補充組成物(ST5)、担持補助組成物(ST6)ならびに分散媒質組成物(ST7)群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される付加されて補助的機能を発揮する粉末組成物であり;
【0040】
上記の固定化材(S)が、必須四成分で均質混合される複合組成物(PS)100質量部に対して、付加補助組成物(ST)を1ないし200質量部の量割合で加えて均質混合されている五成分の粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成される重金属類固定化材が提供される。
【0041】
本発明によれば、前記の固定化材(S)が必須四成分と付加補助組成物(ST)五成分で均質混合されているワンパック複合組成物(PS)において;
上記の粉末状ワンパック複合組成物(PS)が、各粉末のケイ酸ナトリウムである活性シリカ(SS)100質量部に対して、アルミン酸ナトリウムである反応性アルミナ(SA)を50ないし100質量部、ケイ酸カルシウムであるカルシヤ組成物(SC)を20ないし80質量部および天然ゼオライトである結晶タネ組成物(ST1)を25ないし75質量部の量で均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成される重金属類固定化材が提供される。
【0042】
本発明によれば、前記の固定化材(S)が必須四成分と付加補助組成物(ST)五成分で均質混合されているワンパック複合組成物(PS)において;
上記の粉末状ワンパック複合組成物(PS)が、各粉末の酸性白土である活性シリカ(SS)100質量部に対して、水酸化アルミニウムである反応性アルミナ(SA)を50ないし100質量部、水酸化ナトリウム(SN)を15ないし80質量部、高炉スラッグであるカルシヤ組成物(SC)を20ないし80質量部および天然ゼオライトである結晶タネ組成物(ST1)を25ないし75質量部の量で均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成される重金属類固定化材が提供される。
【0043】
本発明によれば、前記の重金属類固定化材(S)が、必須四成分ないしは五成分の粉末状複合組成物(PS)に対して水が加わって均質スラリー状に予め調製されているスラリー状複合組成物(LS)において;
前記の必須四成分ないしは五成分の粉末状複合組成物(PS)100質量部に対して、水を60ないし120質量部の量で加えて予め均質なスラリー状に調製されているスラリー状複合組成物(LS)で構成される重金属類固定化材が提供される。
【0044】
本発明によれば、前記の重金属類固定化材(S)が水を介して汚染土壌に均質接触せしめる混和装置に付して可塑性ないしは流動性混和物として、次いで反応・養生する固定化処理工程により、含有重金属類を不溶性な化合物に固定化せしめ、変形性を示す処理土壌とする汚染土壌の処理工法において;
【0045】
上記の混和装置が、撹拌羽根を有した回転駆動体を具備している容器を主体とする事前混和方式の混和装置であり;
上記の事前混和方式が、採掘された汚染土壌を混和装置に移動投入し、さらに固定化材(S)と必要に応じて水の3者を所定量投入して撹拌混合することにより可塑性ないしは流動性混和物を形成する方式であり;
【0046】
上記の汚染土壌の処理工法が、含有重金属類をアルミノケイ酸の塩基性塩化合物であるゼオライト類として固定化し、pH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性な化合物に固定化して変形性を示す処理土壌とする工法である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0047】
本発明によれば、前記の事前混合方式の混和装置により汚染土壌と固定化材(S)と水の3者を撹拌混合して形成される可塑性混和物において、
上記の可塑性混和物が、乾燥物基準換算で重金属類含有汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を60質量部未満の量割合で撹拌混合され、ついで0.5ないしは35mmφの顆粒状に造粒され、必要に応じて乾燥されて変形性処理土壌に変質されている処理工法である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0048】
本発明によれば、前記の事前混合方式の混和装置で汚染土壌と固定化材(S)と水の3者が撹拌混合されて形成される流動性混和物において;
上記の流動性混和物が、乾燥物基準換算で重金属類含有汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を60ないしは140質量部の量割合で撹拌混合され、ついで採掘した原位置もしくは他所に流動性を利用して移動されて変形性処理土壌に変質している汚染土壌の処理工法が提供される。
【0049】
本発明によれば、前記の混和装置が、対象地盤を移動可能な掘削撹拌方式の装置であり;
上記の掘削撹拌方式が、地盤表面より1m未満にある原位置表層部の汚染土壌に対して、所定量の固定化材(S)と必要に応じて水を加えて土壌を掘削しながら撹拌混合して可塑性ないしは流動性混和物を形成せしめる方式であり;
上記の可塑性ないしは流動性混和物が、変形性処理土壌に変質している処理工法である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0050】
本発明によれば、前記の混和装置が、対象地盤の深層部を中心とする機械撹拌方式の装置であり;
上記の機械撹拌方式が、地盤表面より深さ1m以上の深層部汚染土壌にスラリー状固定化材(S)を貫入せしめて機械的に撹拌混合することにより、可塑性ないしは流動性混和物を形成する方式であり;
上記の可塑性ないしは流動性混和物が、変形性処理土壌に変質している処理工法である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0051】
本発明によれば、前記の混和装置が、対象地盤の深層部を中心とする高圧噴射方式の装置であり;
上記の高圧噴射方式が、地盤表面より深さ1m以上の深層部汚染土壌にスラリー状固定化材(S)を高圧注入して撹拌混合することにより、可塑性ないしは流動性混和物を形成する方式であり;
上記の可塑性ないしは流動性混和物が、変形性処理土壌に変質している処理工法である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0052】
本発明によれば、前記の高圧噴射方式の装置が、地盤表面より深さ1m以上の深層部汚染土壌に向かって圧縮空気を移動媒体として粉末状固定化材(S)を注入して撹拌混合すると共に、深層部に送り込まれた空気を地上に排出せしめる装置である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0053】
本発明によれば、前記の汚染土壌が、重金属類に加えて有機質物質でも汚染されている複合汚染土壌において;
上記の複合汚染土壌が、含有する有機質物質を加熱により予め分解除去する前処理の施された汚染土壌である汚染土壌の処理工法が提供される。
【0054】
本発明によれば、前記の処理土壌が、含有重金属類をゼオライト類として固定化してpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性化合物に変質している変形性処理土壌において;
上記の変形性処理土壌が、簡易型変形性測定試験に付して、強度値が80N/cm2以下である外圧による変形性を示す処理土壌に変質されている汚染土壌の処理工法が提供される。
【0055】
【発明の実施の形態】
[対照とする汚染土壌]
本発明で対照とする汚染土壌は、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素ならびに総水銀の5種類の重金属類で環境基準を超えて汚染されている土壌をいう。なお、環境基準の対象となる元素成分は、他に銅、セレン、フッ素、ホウ素が挙げられているが、本発明においては一応対象外としている。しかし、本発明の固定化材(S)ならびに処理工法によって、これら元素成分に対しても不溶性な化合物を形成し、これら元素類に対する固定化効果は、本発明同様に発揮されると判断される。
【0056】
土壌の汚染に係る環境基準としては、公害対策基本法第9条に土壌汚染に係る環境基準が告示されており、環境基本法第16条に『土壌の汚染に係る環境上の条件につき、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準(以下「環境基準」という)並びにその達成期間等は、次のとおりとする』とあり、別表[関連事項抜粋を下記表1に示す]に示されている。
【0057】
【0058】
汚染土壌に関しては、「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針運用基準」の中で環境基準にある重金属等(シアン、PCB、農薬を含む)と揮発性有機化合物の2種類に分類されている。したがって、一部例外的ではあるが、不揮発性ならびに揮発性を軸に分類され、調査や対策において区別されている。
【0059】
本発明においては、重金属類で汚染されている地盤や土壌を対象としている。しかし、本発明の技術は、ケイ酸塩を主成分として重金属類で汚染されている素材である廃棄物類の焼却灰、火力発電所から排出されるフライアッシュ、海・河川・沼・湖・ダム等に堆積しているヘドロ等を対象として重金属類の固定化ならびに不溶性化を行うこともできる。
【0060】
[固定化材(S)]
本発明で採択される固定化材(S)は、シラノール基を有する活性シリカ(SS)、反応性アルミナ(SA)、水酸化ナトリウム(SN)ならびにカルシヤ組成物(SC)の基礎的な必須四成分構成の粉末状複合組成物(PS)、さらに付加補助組成物(ST)WP加えた五成分構成の粉末状複合組成物(PS)として調製されている。さらに固定化材(S)は、必須四成分構成および五成分構成の粉末状複合組成物(PS)に水が加わってスラリー状に予め調製されているスラリー状複合組成物(LS)として調製されている。
【0061】
本発明のシラノール基を有する活性シリカ(SS)としては、シリカ(SiO2)を主成分とする非晶質ケイ酸(SS1)、ケイ酸アルカリ(SS2)、さらにケイ酸アルミニウムを主骨格とするフェロケイ酸塩の層状粘土鉱物(SS3)等、またシリカとアルミナを複合主成分とするスラッジケーキ等のシリカ−アルミナ複合組成物(SS4)、さらにまた、ケイ酸ならびにケイ酸塩に水酸化ナトリウム等のアルカリを反応せしめてシラノール基を保有させたアルカリ変性ケイ酸塩(SS5)を挙げることができる。
【0062】
活性シリカ(SS)の非晶質ケイ酸としては、ヒドロゲル状で非晶質のケイ酸を好適に挙げることができる。一般に非晶質ケイ酸は、ケイ酸アルカリ等を酸中和して脱アルカリすることで調製される。また、熔融シリカをメカノケミカル的に部粉砕する工程で調製される非晶質のケイ酸も本発明では採択することができる。
【0063】
また、活性シリカ(SS)のケイ酸アルカリとしては、下記組成式(1)
M1 2O・aSiO2・wH2O ……… (1)
(式中:M1はアルカリ金属元素、aは零を含む20以下の数、wは1,6ないしは50.0以下の数)で表される粉状ないしは液状のケイ酸アルカリの群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成されるケイ酸アルカリを好適に挙げることができる。
【0064】
ケイ酸アルカリにおけるアルカリ金属Mは、一般に入手が容易であり安価であることからナトリウム(Na)が好適である。しかし、固定化材(S)の使用目的・用途ならびに作業性から、アルカリ金属にカリウムやリチウムを単独にもしくはナトリウムと複合せしめた複合ケイ酸塩を採択することもできる。中でもケイ酸ナトリウムは、水ガラスとしてJIS化されて工業的に大量生産されて安価であり好適に採択することができる。
【0065】
しかも、ケイ酸ナトリウムは、本発明固定化材(S)の必須構成成分であるナトリウム成分を共存しており、本発明の固定化材(S)用活性シリカ(SS)として好適である。また、本発明の固定化材(S)が粉末状のワンパック複合組成物(PS)であるときは、粉末状のケイ酸アルカリを選択すればよく、スラリー状のワンパック複合組成物(SS))であるときは、液状のケイ酸アルカリを選択すればよい。
【0066】
また、活性シリカ(SS)のケイ酸アルミニウムを主骨格とするフェロケイ酸塩の層状粘土鉱物としては、一般に非晶質のアロフェンやヒシンゲル石ならびに結晶性フェロケイ酸塩(2:1層型のパイロフェライト、タルク、雲母群、モンモリロナイト石群、バーミキュル石;2:2層型のリョクデイ石群;1:1層型のカオリナイト)とイノケイ酸塩(パルゴルスカイト群)等を挙げることができる。
【0067】
本発明においては、上記いずれの層状粘土鉱物も採択できるが、入手の容易さ等から、含水のフェロケイ酸塩鉱物である2:1層型で2八面体型もしくは3八面体型のスメクタイ族の含水フェロケイ酸塩鉱物である層状粘土鉱物(A1)を好適に選ぶことができる。含水フェロケイ酸塩鉱物の層状粘土鉱物は、ケイ酸アルミニウムを中心とするポリシロキサン結合中に豊富なシラノール基を確保している粘土類であり、本発明における固定化材(S)用活性シリカ(SS)として好適である。
【0068】
特にスメクタイト族に分類されるモンモリロナイトは、反応性に富んでおり、日本における入手が容易であることから好適である。モンモリロナイトとは、(Na,Ca1/2)0.33(Al1.67Mg0.33)Si4O(OH)2の組成構造式(但し、層間水は省略)で示される。モンモリロナイトは、正負の電荷間の距離は大で、相互作用の力は弱く容易に陽イオン交換を起こし、シラノール基を豊富に保有することから好ましい。
【0069】
しかし、含水のフェロケイ酸塩鉱物は天然の鉱物であることから、各種不純物が共存している。したがって、不純物を共存している含水の層状粘土鉱物の場合、層状粘土鉱物、例えばモンモリロナイトを有効成分として少なくとも50質量%以上含有している粘土鉱物であれば、本発明の目的を損なうことなく層状粘土鉱物として採択することができる。
【0070】
一般にフェロケイ酸塩鉱物からなる層状粘土鉱物(は、水分20ないしは35質量%含有している。しかし、層状粘土鉱物(A1)は、乾燥粉末であることが好ましい。したがって含有水分量が25質量%以下、好ましく20質量%以下の量で粉末状態にあることが好ましい。この時の粉末度は、実質的に65メッシュ篩を少なくとも80質量%以上通過する粉末に粉砕・分級されていることが反応性ならびに作業性等から好ましい。
【0071】
また、活性シリカ(SS)のシリカ−アルミナ複合組成物(SS4)としては、上水処理場で河川等の水を上水用に浄水処理した際に排出するスラッジケーキ[主成分の例(質量%):水分63、SiO227、Al2O328、Fe2O35.5、CaO 0.74、Mgo 1.1、C8.2]、さらには窯業製品生産現場より排出される窯業製品のクズ等を挙げることができる。
【0072】
これらのシリカ−アルミナ複合組成物(SS4)は、水酸化ナトリウム等のアルカリと容易に反応して、シリカ−アルミナ複合組成物に本発明の活性シリカにとして有効なシラノール基を保有せしめることができ、しかも産業廃棄物の再利用を可能にする面からも有効である。
【0073】
さらにまた、活性シリカ(SS)のアルカリ変性ケイ酸塩(SS5)としては、ケイ酸ならびにケイ酸塩に予め水酸化ナトリウム等のアルカリを反応せしめて本発明の活性シリカに有効なシラノール基を保有せしめたアルカリ変性ケイ酸塩(SS5)を挙げることができる。
【0074】
このときのケイ酸ならびにケイ酸塩としては、火山灰、粘土鉱物、含水泥土、ヘドロならびに各種の廃棄物類等を好適に挙げることができる。これらのケイ酸ならびにケイ酸塩をアルカリ変性ケイ酸塩(SS5)に調製するためには、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリと水を介して均質混和して、常温もしくは加熱下に反応せしめることによって、容易に原料のケイ酸もしくはケイ酸塩にシラノール基を確保することができる。
【0075】
本発明における反応性アルミナ(SA)としては、下記組成式(2)
bMI 2O・cMIIO・Al2O3・wH2O ……… (2)
(式中:MIはアルカリ金属元素族、MIIはカルシウム、マグネシウム、ないしは亜鉛元素群の単独ないしは2種以上の組み合わせ元素、bは零を含む10以下の数、cは零を含む10以下の数、wは零を含む9.0以下の数)で表されるアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアルミン酸塩またはアルミナの水和物群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせのアルミニウム化合物で構成される反応性アルミナ(SA)として好適に挙げることができる。
【0076】
本発明で採択する反応性アルミナ(SA)とは、アルミナ成分を少なくとも1/10規定の水酸化ナトリウム溶液により常温で反応当量以下の濃度で分散せしめた時アルミン酸イオンを形成するアルミニウム成分をいう。
本発明で採択される反応性アルミナ(SA)の具体例としては、イオン性アルカリに可溶なアルミナ含有化合物が好適であり、工業薬品である水酸化アルミニウムを好適に挙げることができる。さらにイオン性アルカリに可溶なボーキサイトや石炭灰等のアルミニウム含有各種化合物や鉱物類を選ぶこともできる。
【0077】
本発明において水酸化ナトリウム(SN)は、重金属類を水不溶性化合物として固定化するアルミノケイ酸のナトリウム塩であるゼオライト類の構成成分として重要である。水酸化ナトリウム(SN)としては、工業薬品として汎用されている苛性ソーダを好適に選ぶことができる。勿論、スラリー状の固定化材(S)を選択するときは、予め必要な水が加えられた溶液状態の苛性ソーダで複合組成物(LS)を調製することもできる。
【0078】
本発明におけるカルシヤ組成物(SC)としては、基本的に乾燥物基準換算で、カルシヤをCaOで表して少なくとも25質量%含有しているカルシヤもしくはカルシウム塩化合物であることが好ましい。本発明の固定化材(S)において、カルシヤ組成物(SC)を複合共存せしめる理由は、共存カルシウムイオンが触媒的役割を果たして活性シリカを刺激し、アルミノケイ酸のナトリウム塩であるゼオライト構造形成を支援して、効果的にゼオライト類構造を形成せしめところにある。
【0079】
本発明で採択されるカルシヤ組成物(SC)は、下記に示す7種類が好適である。
▲1▼ カルシウムの酸化物や水酸化物であるカルシヤ標準組成物(SC1)
▲2▼ カルシウムのオキシ酸塩化合物類であるオキシ酸塩組成物(SC2)
▲3▼ カルシウムのハロゲン塩化合物類であるハロゲン塩組成物(SC3)
▲4▼ 高炉スラグ、焼却灰等の廃棄物類である廃棄物粉体組成物(SC4)
▲5▼ アルミナセメント・セメント類であるセメント粉体組成物(SC5)
▲6▼ ケイ酸カルシムをアルカリで変性したアルカリ変性組成物(SC6)
▲7▼ 石灰岩や貝殻等の炭酸塩を脱炭酸した炭カル酸変性組成物(SC7)
【0080】
本発明におけるカルシヤ組成物(SC)は、固定化材(S)による重金属類固定化機能を発揮させる目的・作業性等に応じて、天然鉱物資源、工業薬品、石灰岩や貝殻等の炭酸カルシウムを脱炭酸させたカルシヤ類、セメント類、さらにカルシウム塩化合物を含有する廃棄物類等、さらにこれらカルシウム原料を加工変性処理した組成物の中から適宜選択して採択することができる。
【0081】
本発明で採択されるカルシヤ組成物(SC)としては、カルシヤ成分をCaOで表して25質量%以上、好適には35質量%以上、さらに好適には50質量%含有している反応活性の高いカルシヤを主成分とする粉末状の酸化カルシウムや水酸化カルシウムが好適である。但し、カルシヤ(生石灰)は、水と激しく反応して多量の熱量(1モルで15540cal.)を発生するので取扱いに注意を要する。
【0082】
カルシヤ組成物(SC)を構成するカルシウム化合物は、天然または合成のカルシウムの酸化物や水酸化物であることが好ましい。しかし、これらのカルシウム化合物は、空気中に存在する炭酸や水との反応に敏感で、一般に一部が炭酸塩に変質しており、また天然品では各種不純物を含有している。したがって、固定化材(S)に採択する時、その施工仕様等により適宜選択して必要に応じて予め精製処理して採択することが望ましい。
【0083】
勿論、本発明で採択されるカルシヤ組成物(SC)は、カルシウム元素と周期律表上同族元素であるアルカリ土類金属のマグネシウム、亜鉛、ストロンチウムならびにバリリウム元素等が混在共存している場合があるが、10質量%以下の量で混在する限り、カルシヤ組成物(SC)として本発明の基本的化学反応ならびに特定される効果を損なうものではない。
【0084】
カルシヤ組成物(SC)の代表的な組成物として、下記組成物式(3)
CaO・wH2O ……………… (3)
(式中;wは零を含む2以下の数)で表される酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成されるカルシヤ成分をCaOで表して50質量%以上含有している粉末状カルシヤを主成分とするカルシヤをカルシヤ標準組成物(SC1)として好適に挙げることができる。
【0085】
カルシヤ標準組成物(SC1)を構成する酸化カルシウム(別名:カルシヤ、生石灰)は、天然の石灰岩、霞石、方解石、大理石等さらには貝殻等の炭酸カルシウム(CaCO3)を約900℃以上の熱雰囲気下で脱炭酸して生石灰として大量に生産されており、鉄鋼、化学工業、紙、建材、肥料、農薬、土壌改良等の広い分野で使用されており、安価で入手が容易である。
【0086】
特に、ホタテや牡蠣等の貝殻は、カルシウム成分原料として宝庫である。しかし、貝殻の主成分が安定した炭酸カルシウムであることから有効利用されずに放置され処分に窮している。処理処分に窮している貝殻を本発明のカルシヤ組成物(SC)原料として採択することは、貝殻の再利用につながり有効である。しかも、貝殻を原料として海底汚染土壌であるヘドロ等の固定化固化再利用に応用することは、海からの産物により海の環境を改善できることから好ましい。
【0087】
また、水酸化カルシウム(消石灰)は、生石灰として調製された酸化カルシウムに水を加えて消化させることにより生産されており、化学工業(砂糖、皮革、晒粉)、建築・建材、肥料、農薬、土壌安定処理等の広い分野で大量に使用されており、安価で入手が容易であり、本発明の標準的カルシヤ組成物(SC)として好適に採択することができる。
【0088】
本発明の固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、下記組成(4)
CanTOm・wH2O ……………… (4)
(式中;Tはアルミニウム、ケイ素、硫黄、窒素元素の群の単独ないしは2種以上の組み合わせ元素、nは1.0ないしは6.0の数、mは0.5ないしは6.0の数、wは零を含む28,0以下の数)で表されるカルシウムの各元素の正塩または塩基性塩のオキシ酸塩化合物群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成され、カルシウムをCaOの酸化物基準で少なくとも25質量%を含有するカルシヤの各元素のオキシ酸塩化合物の粉末をオキシ酸塩組成物(SC2)として好適に挙げることができる。
【0089】
本発明におけるオキシ酸塩組成物(SC2)の具体的な例は、アルミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の各元素のオキシ酸塩化合物類の正塩もしくは塩基性塩、さらに結晶水を伴ったカルシウムのオキシ酸塩化合物を天然鉱物類ならびに工業薬品等の中から適宜選んで好適に採択することができる。
【0090】
本発明のオキシ酸塩組成物(SC2)としてアルミン酸カルシウムを採択する時は、水硬性硬化固定組成物(W)により形成される結着体(H)に生成するゼオライトのアルミナ成分の補給原料としても好適である。しかもアルミン酸カルシウムは水和力を有する化合物である。したがって、本発明の固定化材(S)を採択して重金属類の固定化と同時に硬化体を形成せしめようとするときは有利である。
【0091】
本発明固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、下記組成式(5)
CaZ・wH2O ……………… (5)
[式中:Zはハロゲン元素、wは6以下の数]で表されるカルシウムのハロゲン塩群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成されるカルシウムのハロゲン塩をハロゲン塩組成物(SC3)として好適に挙げることができる。
【0092】
カルシウムのハロゲン塩化合物である粉末ハロゲン塩酸塩組成物(SC3)が活性ケイ酸組成物(B)と共存する時、ハロゲン塩酸塩組成物(SC3)のハロゲンイオンが活性ケイ酸組成物(B)に対して、アルカリ反応の触媒的役割を果たすことから、本発明のカルシヤ組成物(SC)として好適に採択することができる。しかも、カルシウムのハロゲン塩化合物は、工業薬品として安価であり、入手が容易であり、本発明の固定化材(S)の構成原料として好適である。
【0093】
本発明におけるハロゲン塩酸塩組成物(SC3)の具体的な例は、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム等の無水物、結晶水を伴った化合物を試薬ならびに工業薬品から挙げることができる。一般には塩化カルシウムが工業的に大量に生産されて安価であり好適である。
【0094】
本発明の固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、廃棄物粉体組成物(SC4)を挙げることができる。特に産業廃棄物の中には、活性なカルシウム成分を多量含有している粉体廃棄物がある。また、これらカルシウム成分を含有する粉体廃棄物は、一般に固定化材(S)の必須成分である活性アルミナも含んでいることから好適である。
【0095】
たとえば、製鉄所から排出される高炉スラッグ、製紙業界から排出される石灰中和スラッジ、建築業界から排出される廃石こうボード、各種の廃棄物類を焼却して排出される焼却灰類、石炭火力の電力業界から排出されるフライアッシュ、断熱・保温材の廃材として排出されるケイ酸カルシウム粉体、上水用浄水処理所から排出される処理スラッジ、また産業工場の廃水処理や石油を燃料としたときに排出される排煙から脱硫処理で副生回収された石こう等のカルシウム成分を主成分とする粉末状の廃棄物類を好適に挙げることができる。
【0096】
本発明のカルシヤ組成物(SC)の廃棄物粉体組成物(SC4)として採択される粉末のケイ酸カルシウムは、調製される固定化材(S)のシリカ濃度を落とすことなく調製できることから好適である。具体的には結晶性ウオラストナイトやゾーノトライト等、非晶質のケイ酸カルシウムとして保温・断熱材として使用された廃材のケイ酸カルシウムが好適である。
【0097】
さらにまた、本発明における廃棄物粉体組成物(SC4)として、有機質含有廃棄物類(間伐材、剪定廃材、農業・畜産・水産における廃棄物類、各種発酵残渣、食品加工残渣、残飯、ペーパースラッジ等)を焼却処理した灰もしくは乾留処理した炭含有灰類をも好適に挙げることができる。
【0098】
本発明の固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、セメント粉体組成物(SC5)を挙げることができる。本発明のセメント粉体組成物(SC5)としては、工業的に大量生産されており、安価に汎用されているポルトランドセメントが入手容易であり好適である。
【0099】
ポルトランドセメントは、JIS R 5200に規定されており、普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸等に分類されている。さらに、混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等がある。さらにまた、各種の特殊セメント(白色セメント、アルミナセメント,超速硬性セメント、コロイド状セメント、油井セメント、地熱セメント、膨潤セメント、その他の特殊セメント等)の水硬性セメント鉱物類の粉体を好適に挙げることができる。
【0100】
本発明のセメント粉体組成物(SC5)は、それ自体が水硬性機能を有するセメント鉱物であることから、水との混和で水和物を生成して固化体を形成する。しかし、セメント粉体組成物(SC5)に対する期待は、セメント自体の固化体形成機能でなく、活性ケイ酸組成物(B)が有するシラノール基によるポリマー化反応を促進せしめ、固定化材(S)としての機能を発揮させるところにある。
【0101】
本発明の固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、アルカリ変性組成物(SC6)を挙げることができる。アルカリ変性組成物(SC6)としては、ケイ酸塩含有カルシヤ化合物類(例えば、ケイ酸カルシウム、高炉スラッグ、フライアッシュ、焼却灰、セメント類等)100質量部に対して、アルカリ金属の水酸化物(MOH、Mはアルカリ金属)を1ないしは30質量部、さらに水を50質量部以下の量で加えて反応せしめたアルカリシラノール基を持つケイ酸塩含有のカルシヤ化合物類を挙げることができる。
【0102】
本発明のカルシヤ組成物(SC)として、ケイ酸塩含有カルシヤ化合物類、例えば断熱・保温材等で使用されるケイ酸カルシウム等にアルカリ金属の水酸化物を加えて処理変性せしめて、固定化材(S)の必須四成分であるアルカリ金属成分をシラノール基含有のシリカやカルシヤ、さらに選択される原料によってはアルミナに加えて構成させ、固定化材(S)の構成成分としてアルカリ変性組成物(SC6)とすることは大変好ましい。
【0103】
アルカリ変性組成物(SC6)の原料とするケイ酸塩含有カルシヤ化合物類としては、廃棄物粉体組成物(SC4)でもあって、カルシヤと共に活性シリカならびに反応性アルミナをも含んである製鉄所から排出される高炉スラッグ、火力発電所から排出されるフライアッシュならびに浄水処理場から排出される上水処理スラッジ等が、廃棄物類を有効利用できることから好適に挙げることができる。
【0104】
ここで予め調製されるアルカリ変性組成物(SC6)は、粉状ワンパック複合組成物である固定化材(S)の構成成分とするため、粉状体であることが必須である。ケイ酸塩含有カルシヤ化合物類に反応せしめて回収した反応物がペースト状ないしは可塑状であるときは、乾燥等により予め脱水処理を行ってから粉状ワンパック複合組成物とする必要がある。
【0105】
本発明の固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、炭カル酸変性組成物(SC7)を挙げることができる。カルシヤ標準組成物(SC1)の場合のように炭酸カルシウムは約900℃で加熱脱炭酸されてカルシヤとして回収されている。しかし、活性化処理された活性ケイ酸組成物(B)は、遊離の硫酸を残した酸性サイドにある。この硫酸等により、炭酸カルシウムを分解せしめてカルシウム原料とする場合も、本発明の固定化材(S)の原料として活用できることから好ましい。
【0106】
本発明の固定化材(S)に採択されるカルシヤ組成物(SC)の他の態様として、以上カルシヤ組成物(SC)類であるカルシヤ標準組成物(SC1)、オキシ酸塩組成物(SC2)、ハロゲン塩組成物(SC3)、廃棄物粉体組成物(SC4)、セメント粉体組成物(SC5)、アルカリ変性組成物(SC6)、ならびに酸変性組成物(SC7)群の2種以上の組み合わせで構成される粉末状のカルシヤを主成分とする複合せしめた粉末状のカルシヤ複合組成物(SC8)が、各カルシヤ組成物が有する多機能性をそれぞれ複合的に発揮させることができることから好適に挙げることができる。
【0107】
本発明の汚染土壌の処理工法において、処理された処理土壌に求められる目的・用途・現場状況、作業性・物性・性能等に応じて、汚染土壌中の重金属の固定化と合わせて各種機能性を付与した処理工程が要求される。この時、本発明の固化材固定化材(S)の必須四成分[活性シリカ、反応性アルミナ、水酸化ナトリウム、カルシヤ組成物]に各種の付加補助組成物(ST)を付加配合せしめて多機能性を有する複合組成物(PS&LS)として固定化材(S)を調製とすることができる。
【0108】
本発明の固定化材(S)に附加配合さて多機能性を発揮する好適な付加補助組成物(ST)としては、ゼオライト形成の核となる結晶タネ、硫酸根ならびに燐酸根からなる配合カルシヤ組成物(SC)の調整剤、バリウム塩からなる反応調整剤、鉄塩からなる砒素やクロム等の捕捉補助剤、吸着性を有する担持補助剤ならびに固定化材(S)の汚染土壌への分散を助ける機能性能を発揮する付加配合材料類を挙げることができる。
【0109】
したがって、本発明における付加補助組成物(ST)としては、次に示す7種類を好適に挙げることができる。
▲1▼ ゼオライト類の結晶を成長させるタネである結晶タネ組成物(ST1)
▲2▼ カルシウム組成物(SC)の活性力等を調節させる硫酸根組成物(ST2)
▲3▼ カルシウム組成物(SC)の活性力等を調節させる燐酸根組成物(ST3)
▲4▼ 混和処理工程における作業性等を調節するバリウム塩組成物(ST4)
▲5▼ 砒素やクロム等重金属類の固定化を補助する鉄塩補充組成物(ST5)
▲6▼ イオン性重金属を担持捕捉して固定化助ける担持補助組成物(ST6)
▲7▼ 固定化材の土壌への接触効果を向上せしめる分散媒質組成物(ST7)
【0110】
本発明における付加補助組成物(ST)は、本発明の必須四成分構成[活性シリカ(SS)、反応性アルミナ(SA)、水酸化ナトリウム(SN)、カルシヤ組成物(SC)]に予め混合させて粉末状の複合組成物としてワンパックさせておくことが取り扱い上ならびに作業性から好適である。そのためにも、本発明で採択される付加補助組成物(ST)は、浹雑物を取り除き予め粉末状に精製・調製されていることが好ましい。
【0111】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な結晶タネ組成物(ST1)は、本発明の固定化材(S)から形成されるアルミノケイ酸塩であるゼオライト類の結晶を生成させる核として存在し、ゼオライト類を速やかに成長させるタネとして固定化材(S)に共存せしめておくことは好ましい。
【0112】
本発明の固定化材(S)に添加配合される結晶タネ組成物(ST1)としては、下記に示す単位格子の化学組成式(6)
Mx/n・[(AlO2)x・(SiO2)y]・wH2O………(6)
[式中:Mは原子価n:の金属陽イオン、X+Yは単位格子当りの四面体数]で表されるアルミノケイ酸の金属塩[Mは、ナトリウムならびにカルシウムが一般的]のゼオライト構造を有するゼオライトを結晶成長用タネとして好適である。
【0113】
特に本発明における結晶タネ組成物(ST1)としては、天然品を選ぶこともできるが、工業的に生産される結晶型の定まっているゼオライト、例えば4Aタイプの合成ゼオライト等が好適である。これらのタネとなるゼオライトは、粒径が10μ以下、好むらくは6μ以下の微細粒子であることがタネとして好ましい。
【0114】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な硫酸根組成物(ST2)は、本発明の固定化材(S)を構成しているカルシヤ組成物(SC)を中和して、処理土壌のpH値をいたずらに向上させないpH調整剤として重要である。特に、本発明においては、固定化材(S)によりアルミのケイ酸塩のナトリウム塩が形成され、含有ナトリウム元素がイオンとならず、固定化される。
【0115】
しかし、このアルミのケイ酸塩のナトリウム塩の形成に配合されているカルシウム組成物(SC)のカルシウムイオンが果たす触媒的役割は重要でるが、硫酸根組成物(ST2)が共存することは、アルミのケイ酸塩のナトリウム塩であるゼオライト類が形成された後は、カルシウムイオンによる処理土壌が示すアルカリ性を回避することができることから、硫酸根組成物(ST2により)硫酸カルシウムの結晶形成は有効である。
【0116】
本発明の固定化材(S)に付加配合される硫酸根組成物(ST2)は、下記組成式(7)
aMI 2O・bMIIO・cMIII 2O3・SOn・wH2O………(7)
[式中:MIはアルカリ金属元素、MIIはアルカリ土類金属元素、MIIIは3価のアルミニウムないしは鉄、a、bおよびcは零を含む20以下の数、wは零を含む25以下の数]で表される塩基性塩や正塩のアルカリ金属を含むアルミニウムもしくは鉄の硫黄のオキシ酸塩化合物群より選ばれた単独ないし2種以上の組み合わせで構成される硫酸根組成物(ST2)を挙げることができる。
【0117】
本発明に好適な硫酸根組成物(ST2)としては、硫酸アルミニウムを主成分とする明礬型組成物(ST2−a)ならびに硫酸ナトリウムを主成分とする芒硝型組成物(ST2−b)、さらにこれらの硫酸塩類を複合させた複合型組成物(ST2−c)に分類して挙げることができる。
【0118】
硫酸根組成物(ST2)である明礬型組成物(ST2−a)としては、下記組成式(7−a)
aMI 2O・cMIII 2O3・SOn−wH2O………(7−a)
[式中:MIはアルカリ金属元素、MIIIは3価のアルミニウムないしは鉄、aは0.2ないしは20の数、cは1ないしは20の数、wは零を含む25以下の数、nは2または3の数]で表される塩基性塩もしくは正塩のアルカリ金属を含むアルミニウムまたは鉄の硫黄のオキシ酸塩化合物群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される明礬型組成物(ST2−a)を挙げることができる。
【0119】
明礬型組成物(ST2−a)であるアルカリ金属のアルミニウムまたは鉄の硫黄のオキシ酸塩としては、硫酸アルミニウムと硫酸カリウム等との混合溶液から生成する正八面体のK2SO4・Al2(SO4)3・24H2Oの複塩結晶が代表的である。なお、本発明における硫酸根組成物(ST2)として、(7−a)式におけるaが零の場合の硫酸アルミニウムならびに硫酸鉄も有効に採択することができる。
【0120】
さらに本発明の固定化材(S)においては、ゼオライト類の生成を期待することから、ゼオライト類の構成成分であるアルミニウム成分の共存は有効である。四成分構成の複合組成物(PS&LS)にはアルミニウムを含有しているが、明礬型組成物(ST2−a)である硫酸アルミニウムのアルミニウム成分はゼオライト類のアルミニウム成分としても有効である。
【0121】
さらにまた、本発明の固定化材(S)によりゼオライト類が形成されて汚染土壌含有の重金属類は固定化されるが、このとき、重金属類である砒素やクロムは、鉄イオンが共存していることにより有効に固定化されることが知られており、明礬型組成物(ST4−a)が鉄イオンを含有していることは有効である。
【0122】
硫酸根組成物(ST2)である芒硝型組成物(ST2−b)としては、下記組成式(7−b)
aMI 2O・SOn・wH2O ……… (7−b)
[式中:MIはアルカリ金属元素、aは1ないしは20の数、wは零を含む20以下の数、nは2または3の数]で表される塩基性塩もしくは正塩のリチウム、ナトリウムもしくはカリウムであるアルカリ金属の硫黄のオキシ酸塩化合物群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される芒硝型組成物(ST2−b)を好適に挙げることがきる。
【0123】
芒硝型組成物(ST2−b)であるリチウム、ナトリウムもしくはカリウムであるアルカリ金属の硫黄のオキシ酸塩化合物の代表化合物は、芒硝(Na2SO4・10H2Oもしくは無水塩)として天然に産し、また石灰芒硝である石こうとの複塩として岩塩産地で産する。工業的には廃液処理時の副生芒硝等として副生されている。
【0124】
本発明においては、不純物を含む天然ならびに合成・副生のいずれの芒硝も好適に採択することができる。またカリウムを含む複塩や塩基性塩、アルカリ土類金属の塩類化合物、炭酸塩が共存している混合複合塩等の化合物類も、芒本発明の硝型組成物(ST2−b)として好適に採択することができる。
【0125】
硫酸根組成物(ST2)である複合型組成物(ST2−c)として、明礬型組成物(ST2−a)および芒硝型組成物(ST2−b)群の2種以上の組み合わせで構成される複合された硫酸根組成物(ST2)を挙げることができる。複合型組成物(ST2−c)は、本発明の固定化材(S)の用途・目的等や作業性等により選択して採択することができる。
【0126】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な燐酸根組成物(ST3)は、本発明の固定化材(S)を構成しているカルシヤ組成物(SC)を中和して、処理土壌のpH値をいたずらに向上させない調整剤として硫酸根組成物(ST2)の場合と同様な理由により重要である。
【0127】
特に、アルミのケイ酸塩のナトリウム塩であるゼオライト類が形成された後は、遊離しているカルシヤ組成物(SC)により処理土壌が高いアルカリ性を示し、二次公害を発せ留真φがあるが、燐酸カルシウム結晶の形成により、その心配が回避することができることから有効である。
【0128】
本発明の固定化材(S)である燐酸根組成物(ST3)としては、下記組成式(8)
hGOt・P2O5・wH2O ……… (8)
[式中:Gはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、チタン、ケイ素ならびに鉄の群の単独ないしは2種以上の組み合わせ元素、hは1.0ないしは8.0の数、tはG元素原子価÷2の数、wは零を含む10以下の数]で表される各金属元素のリンのオキシ酸塩化合物群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成されるホウ素のオキシ酸塩化合物類を好適に挙げることができる。
【0129】
本発明で採択される燐酸根組成物(ST3)の具体的な例としては、試薬もしくは工業薬品の中から、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ケイ素、リン酸鉄等の中から適宜選択することができる。
【0130】
さらに、本発明の燐酸根組成物(ST3)においては、金属製品(自動車、車輌、建材、家電等)の表面処理剤(パーカーライジング処理剤)として汎用されているリン酸系薬品による処理後、産業廃棄物として排出されるリン酸塩を多量に含んだスラッジを有効に利用することができる。
【0131】
さらにまた、本発明の燐酸根組成物(ST3)として、アルカリ性条件の中でリン酸分の徐放性を示す粉末状のリン酸ケイ素を好適に挙げることができる。
リン酸ケイ素は、下記組成式(8−a)
jSiO2・P2O5 ……… (8−a)
[式中:jは1.0ないしは8.0の数]で表される燐酸ケイ素群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成されるケイ素のリンであり、下記に示す「リン酸分の徐放性」を有するオキシ酸塩化合物を好適に挙げることができる。
【0132】
リン酸ケイ素における「リン酸分の徐放性」は、下記する試験方法により評価することができ、下記式(T−1)
Y=aX+b ……… (T−1)
[式中:Xはリン酸ケイ素1gを4N(規定)苛性ソーダ溶液100ml中に撹拌分散せしめて経過した時間(分)、Yは4N(規定)苛性ソーダ溶液中に溶出したリン酸(P2O5)量(mg/100ml)]で表されるリン酸ケイ素のリン酸分がアルカリ性溶液中に溶出する初期溶出量(b)が200以下であり、式中のaに相当する平均加水分解速度定数(a)が0.2以上の範囲にあるリン酸分の溶出状態をいう。
【0133】
本発明におけるリン酸ケイ素は、強いアルカリサイドの条件下においても簡単に加水分解することなくゼオライト類の形成に当たりリン酸分を徐放させる安定な化合物であることが好ましい。したがって、リン酸ケイ素は、組成式(8−a)のjが1.0ないしは8.0の数の範囲にあって500ないしは1100℃の温度範囲で加熱合成されていることが、リン酸分の徐放性を可能にして好適である。
【0134】
組成式(8−a)のjが1.0より小さくて700℃以下で加熱合成されるときは、未反応の潮解性リン酸ケイ素しか合成されずアルカリ調整を期待することはできない。また、jが8.0より大きくて1100℃以上で加熱合成されるときは、含有リン酸が揮散してしまいリン酸ケイ素としての効果を期待することはできない。
【0135】
本発明のリン酸ケイ素は、保存中の安定性ならびにリン酸分の徐放性を確保するために当業界で公知・公用のコーティング剤で表面処理が施されていることが好ましい。この場合、コーティング剤としては、アルカリ性溶液中で可溶性の脂肪酸(ステアリン酸等)や脂肪酸塩(ステアリン酸カルシウム等)、さらにはカップリング剤(オルガノシロキサン、チタンカップリング剤等)が常法により0.01ないしは6.0質量%でコーティング処理されていることが好ましい。
【0136】
本発明の固定化材(S)に添加配合されるバリウム塩組成物(ST4)としては、下記組成式(9)
BaO・fSiO2・wH2O ……… (9)
[式中:fは4.0以下の数、wは零を含む10以下の数]で表されるアルカリ溶液に可溶なバリウム塩化合物群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される粉末状のバリウム塩化合物を好適に挙げることができる。
【0137】
本発明において、バリウム塩組成物(ST4)として採択される粉末状のバリウム塩化合物における作業性等の整機能は、「バリウムイオンのアルカリ溶液への可溶分」によって推定することができる。「バリウムイオンのアルカリ溶液への可溶分」は、下記する試験方法により評価することができる。
【0138】
「バリウムイオンのアルカリ溶液への可溶分」は、バリウム塩化合物10gを25℃の1N(規定)苛性ソーダ溶液100ml中に10分間撹拌分散せしめた試料溶液を濾別した採取溶液中のバリウムイオン量をBaOとして測定し、試料バリウム塩化合物中の全バリウム元素をBaOで換算した量に対する%で表示して、アルカリ溶液への可溶するバリウム量を求めることによって評価できる。
【0139】
本発明の固定化材(S)により調整したゼオライト類の形成を管理するために、バリウム塩組成物(ST4)であるバリウム塩化合物の「アルカリ溶液への可溶分」は、10%以上であることが好適である。「アルカリ溶液への可溶分」が10%以下であるときは、固定化材(S)の施工作業性管理が困難となり好ましくない。
【0140】
一般に上記の「アルカリ溶液への可溶分」を満足し、安価で入手容易なバリウム塩化合物としては、工業薬品の水酸化バリウム[Ba(OH)・8H2O]もしくは酸化バリウム[BaO]が好適である。しかし、形成されるゼオライト類に悪影響を与えず、ゼオライト類の形成に充分な作業可使時間を確保できるバリウム塩組成物(ST4)としてのバリウム塩化合物としては、ケイ酸バリウムが好適である。
【0141】
バリウム塩補6組成物(ST4)としてのケイ酸バリウムは、組成式(10)のkが4.0以下の数であることが良く、4.0以上の数ではバリウムイオンの活性を有効に利用することができない。ま,た、組成式(10)のwの数が9.0以下であることが良く、9.0以上の数ではバリウム塩化合物の保存安定性が確保されず、本発明の国定を達成することができない。
【0142】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な鉄塩補充組成物(ST5)は、汚染土壌に含有される重金属類を水不溶性に固定化せしめるに際し、特に砒素やクロムに対しては、鉄塩を共存せしめておくことは固定化を有効に発揮し、本発明の固定化を効果的に達成する上で好ましい。
【0143】
本発明で採択される鉄塩補充組成物(ST5)としては、2価もしくは3価の水酸化鉄化合物が特に有効である。しかし、工業薬品もしくは廃棄物類として入手容易な面から、2価もしくは3価の塩化鉄や硫酸鉄、さらに金属鉄分を好適に挙げることができる。
【0144】
これらの金属鉄分ならびに塩化鉄や硫酸鉄も固定化材(S)中に配合されているカルシヤ組成物(SC)との反応、さらに大気中の酸素ならびに水分との反応により容易に2価もしくは3価の水酸化鉄化合物を生成し、重金属類の固定化の補助的効果を充分に発揮することができる。
【0145】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な担持補助組成物(ST6)は、本発明の固定化材(S)に配合されている可溶性材料である水酸化ナトリウム(SN)等を充分に担持もしくは吸着により捕捉していて、汚染土壌中に本発明の固定化材(S)を混和せしめたときに、配合されている可溶性材料を反応系外に放出させることなく、効果的にゼオライト類を形成せしめる上で重要である。
【0146】
本発明における好適な担持補助組成物(ST6)としては、各種の有機化合物や有機質素材を含有している動物・植物類、ならびに農業・畜産・水産の各分野で回収・生産・加工される天然品やその廃棄物、また各種天然品素材の発酵による製品や発酵残渣、紙・パルプ・繊維布類の製造・加工メーカーから排出される廃棄物類、さらにまた、各種プラスチックやその加工現場から排出される有機質素材等を4000ないしは1000℃で乾留処理して回収される炭を主成分とする炭類、また場合によりシリカやアルミナを含有している炭−ケイ酸塩の複合品を挙げることができる。
【0147】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な分散媒質組成物(ST7)は、汚染土壌に本発明の固定化材(S)を効果的に均質接触せしめるために分散せしめておく媒質として重要である。本発明の固定化材(S)に効果的な媒質としては、100μ以下の粉末、好むらくは10μ以下の微粉末の無機系化合物が有効であり、特にケイ酸塩系素材は、本発明の固定化材(S)と相溶性が良く好適である。
【0148】
具体的な分散媒質組成物(ST7)としては、工業的に大量に生産され安価である材料が本発明の分散媒質組成物(ST7)として好適である。例えば、天然産物では、カオリン、酸性白土、ベントナイト、ボーキサイト、ケイソー土、タルク、ゼオライト、石灰粉、ボーキサイト、パーライト、石膏、火山灰等を挙げることができる。
【0149】
さらにまた、大量に排出されている工業会からの廃棄性副産物屋は器物類を上げることができる。例えば、火力発電所から排出されるフライアッシュ、鉄鋼業界等から排出されるスラッグ類、排煙脱硫ならびにチタン工業等より副生する石膏類、ホタテやかきの貝殻の粉砕品等が大量に安価に入手用意であることから好ましい。
【0150】
本発明の付加補助組成物(ST)として好適な複合補助組成物(ST7)は、本発明の固定化材(S)にそれぞれの付加補助組成物(ST)が有する機能性を複合せしめて固定化材(S)として複数の機能性を複合して発揮させる上で重要である。これら複合させる種類・配合等の条件は、本発明の固定化材(S)が採択される用途、効果、現地状況、作業性等により異なるので、それぞれの目的に応じて予め行う予備実験により決定する必要がある。
【0151】
本発明の複合補助組成物(ST7)としては、前記した結晶タネ組成物(ST1)、硫酸根組成物(ST2)、燐酸根組成物(ST3)、バリウム塩組成物(ST4)、鉄塩補充組成物(ST5)、担持補助組成物(ST6)ならびに分散媒質組成物(ST7)郡より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される複合補助組成物が好適であり、配合種ならびに配合量は目的・用途に応じて予め行う予備実験により決定される。
【0152】
本発明の複合補助組成物(ST7)は、形成されゼオライト類により重金属類固定化求められる目的・用途・現地状況ならびに作業性等に応じて複合され、補助効果における相乗性が期待される。したがって、本発明の複合補助組成物(ST7)に選択される種類ならびに配合量等は、目的・用途・現地状況ならびに作業性等に応じて予め行われる予備的実験により確認して採択決定することが好ましい。
【0153】
本発明における汚染土壌の処理工法では、水を介して固定化材(S)を汚染土壌に混和し、含有重金属類を固定化せしめると共に、処理された土壌が硬化・固化することなく、外圧に対して変形性を有する処理土壌に変質せしめることが重要である。このときの固定化材の種類ならびに配合割合は、目的・用途・現地状況ならびに作業性等に応じて選択される。
【0154】
本発明の固定化材(S)で必須四成分構成の粉末状複合組成物(PS)における配合割合は、シラノール基を有する活性シリカ(SS)100質量部に対して、反応性アルミナ(SA)を50ないし200質量部、水酸化ナトリウム(SN)を15ないし80質量部およびカルシヤ組成物(SC):を20ないし300質量部で均質混合されてワンパック化されていることが、ゼオライト類の形成に効果的で好ましい。
【0155】
本発明の必須四成分構成の粉末状複合組成物(PS)において、活性シリカ(SS)100質量部に対して、反応性アルミナ(SA)が50質量部より少ないときは、ゼオライト類の形成率が低下する。反応性アルミナ(SA)が200質量部以上の場合には未反応アルミナが残り、効果的なゼオライト類の生成が期待できない。
【0156】
水酸化ナトリウム(SN)が15質量部より少ないときもゼオライト類の形成率が低下し本発明の効果機能が期待できない。また、水酸化ナトリウム(SN)が80質量部より多い場合は、処理された土壌にアルカリ成分が遊離して残り、処理土壌をアルカリ性とすることから好ましくない。
【0157】
さらに、カルシヤ組成物(SC):が20質量部より少ないときは、常温におけるゼオライト類の形成に及ぼすカルシウムイオンの触媒効率が低下し、ゼオライト類の形成を低下させる。また、カルシヤ組成物(SC):が300質量部より多い時は、固定化材(S)の増量になるのみで本発明の重金属類の固定化に特段の向上した効果を見ることはできない。
【0158】
さらに、本発明固定化材(S)で五成分構成の粉末状複合組成物(PS)における配合割合は、必須四成分構成の複合組成物(PS)100質量部に対して、付加補助組成物(ST)を1ないし200質量部で均質混合されてワンパック化されていることが、目的・用途に応じて多機能性の付加されたゼオライト類の形成に特長ある効果を発揮して好ましい。
【0159】
本発明の五成分構成の粉末状複合組成物(PS)における配合割合において、その配合割合は、目的・用途・作業性等ならびに求められる機能性に応じて、必須四成分構成複合組成物(PS)100質量部に対して付加補助組成物(ST)を200質量部以内の範囲で付加配合すればよく、付加補助組成物(ST)を200質量部以上配合してもゼオライト類を形成させて、さらに特段の機能性向上を期待することはできない。
【0160】
さらにまた、本発明の固定化材(S)で必須四成分ないしは五成分構成のスラリー状複合組成物(PS)100質量部に対して、水を60ないし120質量部の範囲で加えて予め均質なスラリー状の複合組成物(SS)に調製しておくことが、汚染土壌と固定化材(S)との混和による混和処理工程における特定される混和装置において、本発明の複合組成物(SS)を汚染土壌に均質接触ける作業性を効果的に向上せしめる上で好ましい。
【0161】
なお、本発明の固定化材(S)である複合組成物(PS)は、水の共存により反応を開始することから、固定化材(S)の保存中は、水との接触は極力避ける方向であることが好ましく。また、固定化材(S)は反応性のカルシヤを含んでいることから、炭酸ガス等との接触も極力避ける方向で保管管理されることが好ましい。
【0162】
[固定化処理工程]
本発明においては、含有重金属類を効率よく不溶性に固定化し、しかも固定化された処理土壌を硬化・固化させることなく変形性処理土壌とすることを目的としている。その目的を達成するためには、汚染土壌に対して水を介して固定化材(S)を均質に接触せしめて混和物を形成させる必要がある。このとき、処理される土壌の使用目的・用途、現場状況、経済性を含めた作業性等に応じて、形成される混和物を可塑性ないし流動性混和物に調製する工程が重要である。
【0163】
当然、汚染土壌における重金属類の固定化と並行して処理された土壌の地盤に一定の硬さ・強度が確保された地力を要求される場合は、本発明者らの出願特許(特開平11−246261、特願2000−351931、特願2001−083816、特願2001−234183等)に開示されている技術と公知・公用の地盤改良、もしくは本発明技術と組み合わせて実行することにより目的を達成することができる。
【0164】
また、本発明の汚染土壌処理工法によれば、固定化材(S)により汚染土壌を一旦採掘移動するか、もしくは表層部もしくは深層部の原位置で含有重金属類が水不溶性に固定化された処理土壌に変質せしめることができる。このとき固定化処理された処理土壌を土地活用地盤として再利用することもできるが、処理土壌を他の用途に利用活用することもできる。
【0165】
本発明による処理土壌を他の用途に活用するに際して、処理土壌を取り扱い易い顆粒状に予め造粒しておくことは有効である。前述した本発明者らの出願特許では、重金属類の固定化機能と共に、含水土壌を硬化・固化させる機能を併せ発揮させる技術が開示されている。具体的には、固化機能と並行して重金属類固定化機能を有する固化材を汚染土壌に加えて可塑性ないし流動性混和物に処理し、次いで当業界で土壌やケイ酸塩系粉体等を造粒・顆粒化する装置を用いて、混和物を粒径が0.5ないしは35mmφの希望形態の顆粒状に造粒し、必要に応じて大気中または加熱で乾燥して顆粒品とすることで有効に利用することができる。
【0166】
さらにまた、処理対象とする汚染土壌が有機質物質、例えばダイオキシン類や有機質環境ホルモン等を重金属類と併せて含有していて複合汚染されている汚染土壌もある。この場合、含有するが有機質物質が重金属類を固定化するゼオライト類の形成を妨げるものでない。しかし、本発明の工法により重金属類を処理するに先立って有機質物質を公知・公用の分解除去方法、例えば加熱処理等により有機質物質を分解除去してから、引き続き本発明の処理工法に付することにより複合汚染の土壌を完全に修復・再生できることから有効である。
【0167】
本発明において、形成される混和物が可塑性であることは、流れ性のない混和物に外圧を加えて弾性限界を超えて変形を与えるとき、外圧を取り去っても歪がそのまま残る状態をいう。このときの可塑性混和物の形状は、大きい塊の集合である場合もあれば、整粒された細かい砂粒である場合もあり、またさまざまな形状・大きさが混在している混和物である場合もある。
【0168】
また、本発明において、形成される混和物が流動性であることは、混和物を傾斜のあるに滑り性の良い板上にセットしたときに、下方に向かって流れ移動する状態にあることをいう。したがって、この時の流動性混和物は、保有する流れ性を利用して、形成された流動性混和物を例えば狭い箇所に注入することもできる。また、流れ性を利用して、汚染土壌を採掘した場所やその他の場所に流しながら移動せしめて重金属類を固定化することができる。
【0169】
実際の土壌においては、土壌に水分が含まれている場合が多い。したがって、混和物の調製に際しては、対象土壌に含まれている水分を測定し、このときの水分量を換算し、しかも処理された変形性処理土壌の使用目的・用途、現場状況等を勘案して、本発明の混和物とするときの配合量を決定する必要がある。
【0170】
本発明の可塑性混和物は、乾燥物基準換算で含有汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を60質量部未満の量割合で均質混和することによって達成される。この時、固定化材(S)の量割合が5質量部より少ないときは、固定化材(S)としての機能性を発揮することができず、また30質量部より多くの固定化材(S)を加えても格別な効果の向上は見られず経済性がない。
【0171】
水を少なめに介在せしめて可塑性混和物を形成せしめたときは、汚染土壌の原位置での固定化処理に有効であり、簡易な混和処理装置を現地に運び込み作業をすることができることから、汚染土壌の固定化処理のみを目的として経済性のある工法を選択できることから有利である。もちろん汚染土壌を一旦採掘して、採掘汚染土壌を可塑性混和物形成可能な混和装置に移動せしめ、均質に接触混和して汚染土壌の固定化処理を施すこともできる。
【0172】
本発明の流動性混和物は、乾燥物基準換算で重金属類含有汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を60ないしは140質量部の量割合で均質混和することによって達成される。水の量割合が、60質量部よりも少ないときは、混和物は流動性を失う。また水の量割合が、140質量部よりも多いときは、混和物はしゃぶしゃぶ状態となり土壌としての性質を失う。
【0173】
本発明の汚染土壌に対して、水を介して固定化材(S)を接触せしめて均質に混和せしめる方式を可能とする混和装置としては、一般に土木工事における地盤改良工法において、地盤土壌とセメントや生石灰、さらに固化薬剤等の固化材等を接触混合せしめる各種の方式・工法、さらにはそれら方式・工法の改良方式・工法において採択されている混和装置類が、本発明の固定化処理工程における接触混合を可能にする混和装置としても好適に採択することができる。
【0174】
汚染土壌と固定化材(S)との混和処理工程を可能とする接触混合方式としては、可塑性もしくは流動性混和物のいずれを混和物を選ぶかにより異なるが、下記の4種類の方式をそれぞれ代表的に好適方式として挙げることができる。
▲1▼ 汚染土壌を撹拌混合可能な容器に移動して混合す事前混合方式
▲2▼ 地盤表面より1m未満の原位置表層部で混合する掘削撹拌方式
▲3▼ 地盤表面より1m以下の原位置深層部で混合する機械撹拌方式
▲4▼ 地盤表面より1m以下の原位置深層部で混合する高圧噴射方式
【0175】
混和処理工程における事前混合方式では、撹拌機を具備した容器に汚染土壌が存在する地盤より採掘した土壌を移動搬入せしめ、本発明の固定化材(S)を所定量、さらに必要に応じて水を加えて混合撹拌し、汚染土壌と固定化材(S)を均質に接触混合せしめることにより達成される。このとき、採掘土壌の含有水分量が10質量%以下の乾燥されている場合は、少なくとも15ないしは50質量%の範囲で水を追加して加えてから、混合撹拌せしめることが、均質接触せしめるための撹拌効率を向上させ、ゼオライト類形成のために好適である。
【0176】
本発明の混和処理工程における掘削撹拌方式では、汚染土壌の地盤表面より1m未満の原位置表層部において、汚染土壌と固定化材(S)を現地で混和接触せしめることを可能とする混和装置が必要である。この混和装置としては、土木工事における地盤改良工法で採択されている掘削撹拌を可能とする混和装置すべてを本発明の掘削撹拌方式で採択することができる。
【0177】
本発明の掘削撹拌方式で採択される具体的な混和装置の例としては、スタビライザー式のかき混ぜ工法、バックホウ式の掻き上げ混合工法、撹拌機能具備したバックホウ工法等を挙げることができる。これら混和装置は現場への持込が容易であり、操作が簡易で経済性があり、地盤表層部において粉末状ないしはスラリー状の固定化材(S)を接触混合せしめることが可能であり、好適である。
【0178】
本発明混和処理工程における機械撹拌方式では、汚染土壌の地盤表面より1m以下の原位置深層部において、汚染土壌と固定化材(S)を現地で混和接触せしめることを可能とする混和装置が必要である。この混和装置としては、土木工事における深層部の地盤改良工法で採択されている機械撹拌を可能とする混和装置すべてを本発明の掘削撹拌方式で採択することができる。
【0179】
本発明の機械撹拌方式で採択される具体的な混和装置の例としては、三点式パイルドライバー(杭打機)等を使用したスパイラル挿入式のアースオーガ工法、ケーシングパイプ強制昇降式の回転圧入工法等を挙げることができる。これら工法に必要な装置は、現地土壌地盤の深層部に固定化材(S)を送り込み土壌と接触せしめる機械撹拌方式であり、大掛かりであるが、深層部までの大量土壌を処理することが可能であり、それぞれの混和装置に応じて粉末状ないしはスラリー状の固定化材(S)を接触混合せしめことが可能であり、好適である。
【0180】
本発明混和処理工程における高圧噴射方式では、機械撹拌方式と同様に汚染土壌の地盤表面より1m以下の原位置深層部において、汚染土壌と固定化材(S)を現地で混和接触せしめることを可能とする混和装置が必要である。混和装置としては、土木工事における深層部の地盤改良工法で採択される高圧噴射で土壌と固定化材(S)の接触混合を可能とする混和装置すべてを本発明の掘削撹拌方式で採択することができる。
【0181】
本発明の高圧噴射方式で採択される具体的な混和装置の例としては、粉体噴射撹拌式もしくはスラリー噴射撹拌式の高圧噴射撹拌工法等を挙げることができる。これら工法は、地中に粉末状ないしはスラリー状の固定化材(S)を回転ノズルにより高圧噴射し、パイル状もしくは噴射したパイル周辺の土壌粒子と固定化材(S)を接触混合せしめ、本発明の目的を達成させる工法・装置である。
【0182】
これら工法に必要な混和装置は、現地土壌地盤の深層部に固定化材(S)を送り込み土壌と接触せしめる高圧噴射撹拌拌方式であることから、混和装置も大掛かりであるが、深層部までの大量土壌を処理することが可能であり、それぞれの高圧噴射撹拌拌方式の混和装置に応じて粉末状ないしはスラリー状の固定化材(S)を汚染土壌に接触混合せしめことが可能であり好適である。
【0183】
本発明の混和処理工程において、本発明の固定化材(S)を汚染土壌に均質に接触せしめる工程・方法は、上記した工程・方法に限定されるものでない。実際には、汚染土壌の汚染状況、例えば、有機質汚染物との併汚染、汚染重金属の種類、汚染濃度、ばらつき、汚染箇所の深さ等に応じて、工程・方法はそれぞれに適応した方式・工法が選択されるべきである。
【0184】
本発明における特徴は、本発明技術により改質された処理土壌が、汚染土壌に水を介して固定化材(S)を加えて可塑性ないしは流動性のある混和物として、固定化処理工程に付することによって、含有重金属類がゼオライト類として固定化され、しかも固定化されたゼオライト類がpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に接触しても分解することなく安定しており、固定化した重金属類を系外に溶出せしめない点にある。
【0185】
この時のpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に接触しても分解しない状態を評価するために、下記に示す3種類の重金属類溶出試験方法により評価した。
▲1▼ 環境庁告示第46号溶出試験法[略記:pH7溶出試験法:]
▲2▼ オランダNEN7341溶出試験法[略記:pH4溶出試験法:]
▲3▼ アルカリ溶液による溶出試験法[略記:pH9溶出試験法:]
【0186】
さらに、本発明における特徴は、汚染土壌に水を介して固定化材(S)を加えて可塑性ないしは流動性のある混和物として、固定化処理工程に付することによって、硬化・固化してない外圧により変形性を示す処理土壌とするところにある。このときの変形性を有する処理土壌を評価する手段として、土木・地盤業界において実施されている『標準貫入試験』が標準的である。
【0187】
しかるに、「標準貫入試験」は、土木業界におけるにおいて、土壌の相対的硬軟および締まり具合を知る指針であるN値を求める試験方法であり、JIS A1219 1995に規定されており、ボウリング孔を利用して、ロッドの先端に直径5.1cm、長さ81cmの標準試験用サンプラーを付けたものを、質量63.5kgのハンマーで75cmの高さから自由落下させ、サンプラーを30cm貫入させるのに要する打撃回数N(N値)を測定する試験方法である。
【0188】
したがって、「標準貫入試験」は、地盤原位置におけるボウリング孔を利用して測定する方法であり、実用には即している。しかるに、試験的に行う小規模の処理土壌に関して評価するには適さないことから、本発明においては、「標準貫入試験」に匹敵して替わる評価方法として、簡易型の下記の物性評価試験方法の項に示す「変形性測定試験」を採択した。
【0189】
なお、本発明により処理した処理土壌を変形性測定試験方法により測定した強度が80N/cm2以下、好ましくは50N/cm2以下である場合の処理土壌が変形性を示しており、一般的な土壌と同様に硬化・固化してない利用しやすい土壌とした。因みに、「標準貫入試験」により測定され土壌地盤における上限N値50は、本変形性測定試験で示すと約80N/cm2に相当する。
【0190】
[本発明の物性評価試験方法]
本発明で採択した土壌中の主たる組成分析は、土壌分析法における底質調査方法IIに準拠して、主成分の分析は蛍光X線分析法により分析した。また、微量重金属類は、底質調査方法に示されている分析方法に準拠した。さらに重金属類溶出試験は、下記に示す各pH域での溶出試験方法にしたがった。
【0191】
採取土壌の取扱い[共通]
採取した土壌は、ガラス容器または測定の対象となる物質が吸着しない容器に収める。試験は、土壌採取後直ちに行う。試験を直ちに行えない場合は、暗所に保管し、できるだけ速やかに試験を行う。
【0192】
▲1▼ 環境庁告示第46号溶出試験法(抜粋)[略記:pH7溶出試験法:]
1−1試料の作成
採取した土壌を風乾し、中小礫、木片等を取り除き、土塊、団粒を粗砕した後、非金属製の2mmの目のふるいを通過させて得た土壌を十分混合する。
1−2試料液の調製
試料(単位g)と溶媒(純粋に塩酸を加え、水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるようにしたもの)(単位)とを重量体積比10%の割合で混合し、かつ、その混合液が500mL以上となるようにする。
【0193】
1−3溶 出
調製した試料液を常温(おおむね20℃)常圧(おおむね1気圧)で振とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整したもの)を用いて、6分間連続して振とうする。
1−4検液の作成
以上の操作を行って得られた試料液を10分から30分程度静置後、毎分約3,000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブランスフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とする。
【0194】
▲2▼ オランダNEN7341溶出試験法(抜粋)[略記:pH4溶出試験法:]2−1試料の作成
採取した土壌を風乾し、中小礫、木片等を取り除き、土塊、団粒を粗砕した後、非金属製の2mmの目のふるいを通過させて得た土壌を十分混合する。
【0195】
2−2試料液の調製
試料16gに蒸留水800gを加え、1mol/lの硝酸でpH7に調製しながら維持して3時間撹拌する。次いで、孔径0.45μmのメンブランスフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取って、これをpH7溶出液とする。さらに、pH7溶出のろ過残渣に蒸留水800gを加え、今度は1mol/lの硝酸でpH4に調製しながら維持して3時間撹拌する。次いで、孔径0.45μmのメンブランスフィルターでろ過してろ液を取り、これをpH4溶出液とする。
2−3検液の作成
以上の操作を行って得られたpH7溶出液とpH4溶出液とを加え混合して、定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とする。
【0196】
▲3▼ アルカリ溶液による溶出試験法[略記:pH9溶出試験法:]
3−1試料の作成
採取した土壌を風乾し、中小礫、木片等を取り除き、土塊、団粒を粗砕した後、非金属製の2mmの目のふるいを通過させて得た土壌を十分混合する。
3−2試料液の調製
試料16gに蒸留水800gを加え、1mol/lの水酸化ナトリウム溶液でpH9に調製しながら維持して3時間撹拌する。次いで、孔径0.45μmのメンブランスフィルターでろ過してろ液を取り、これをpH9溶出液とする。
2−3検液の作成
以上の操作を行って得られたpH9溶出液を定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とする。
【0197】
各重金属の検出測定方法:
Cd JIS K 0102・1998 55.3 ICP発光分光分析法
Pb JIS K 0102・1998 54.3 ICP発光分光分析法
Cr JIS K 0102・1998 65.2.1 ICPジフェニルカルバジド吸光光度法
As JIS K 0102・1998 61.2 ICP水素化物発生原子吸光光度法
Hg 昭和46年12月環境庁告示第59号付表1に掲げる方法
【0198】
簡易型の変形性測定試験方法:
本発明による処理土壌が有する変形性を評価するために、「標準貫入試験」に替えて、簡易型の変形性測定試験を採択した。本試験は、基本的にモルタル試験で採択されているJSCE F 506ならびにJSCE G 505の記載に準拠して、本発明の混和物を円柱状試験体(φ5×10cm:n=3)に作成し、密閉状態で7日間常温に放置後、一軸方向の圧縮破壊強度試験で測定し、この時の圧縮破壊強度をN/cm2単位で測定して表示した。
【0199】
【実施例】
本実施例において、重金属類で汚染された土壌に固定化材(S)を加えて混和物とし、汚染土壌が含有する重金属類を固定化してpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性化合物に変質せしめて変形性処理土壌とする重金属類固定化材(S)と汚染土壌の処理工法に関して具体的例を以って説明する。本発明は、本実施例に限定されるものでない。
【0200】
[実施例1]
本実施例において、複合組成物(PS)を構成する各成分[活性シリカ(SS)、反応性アルミナ(SA)、水酸化ナトリウム(SN)、カルシヤ組成物(SC)、付加補充組成物(ST)]、ならびに各成分で調製される固定化材(S)、さらに調製した固定化材(S)による汚染土壌含有重金属類の固定化ならびに処理土壌の状態を示す変形性について説明する。
【0201】
複合組成物(PS&LS)の調製原料となる活性シリカ(SS)としては、ケイ酸ソーダから製造される微粉末非晶質シリカ[水澤化学工業(株)製:「ミズカシル」]、天然の粘土鉱物であって層状構造のフェロケイ酸塩であるスメクタイト系粘土鉱物で2−八面体型モンモリロナイト族の酸性白土およびJIS規格品の水ガラス3号[ケイ酸ナトリウム]の3種類を選び、主たる組成成分を表2に併せて表示する。
【0202】
【0203】
反応性アルミナ(SA)としては、工業薬品として汎用されている水酸化アルミニウム(Al2O3:SA−1).を選んだ。
また、水酸化ナトリウム(SN)苛性ソーダ(NaOH:SN−1)を選んだカルシヤ組成物(SC)としては、市販の試薬、工業薬品、廃棄物類の処理品等の粉末よりを選び、主たる組成成分を表2に併せて表示する。
【0204】
【0205】
複合組成物(PS&LS)の配合原料となる付加補助組成物(ST)としては、下記に示す市販の試薬、工業薬品、廃棄物類、合成品の粉末より選んだ。
結晶タネ組成物(ST1)としては、工業薬品のアルミノケイ酸塩でAl/Si原子比が4.2で環員数8で2次粒径が20μ以下の4A型粉末を選んだ。
【0206】
硫酸根組成物(ST2)としては、市販の試薬ならびに工業薬品より硫酸ナトリウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウムならびにカリ明礬を選んだ。燐酸根組成物(ST3)としてリン酸ケイ素 [SiO2::P2O5モル比=3.0:1.0950℃焼成・粉砕品]、リン酸ソーダ、リン酸亜鉛ならびにリン酸塩スラッジ[主成分(質量%):リン酸鉄25.0リン酸亜鉛7.5シリカ10.5アルミナ8.4水分35.0]を選んだ。
バリウム塩組成物(ST4)としては、簡易反応型で調製したケイ酸バリウム[BaO:SiO2:モル比=1.0:1.0 250℃反応・粉砕品]、ならびに水酸化バリウムを選んだ。
【0207】
鉄塩補充組成物(ST5)としては酸化鉄(II)を選んだ。担持補助組成物(ST6)としては、吸着性を有するシリカゲル、アルミゲルならびに炭−ケイ酸アルミニウム複合物[主成分(質量%):C:25.5 SiO235.6 Al2O327.5 CaO 11.4]を選んだ。
選んだ付加補助組成物(ST)の主たる化学組成を表4に併せ表示する。
【0208】
【0209】
本実施例固定化材(S)は、上記の活性シリカ(SS)、反応性アルミナ(SA)、水酸化ナトリウム(SN)、カルシヤ組成物(SC)および付加補助組成物(ST)の中から表5に示す種類ならびに量割合で均質混和し、必須四成分ないしは五成分でワンパック粉末状複合組成物(PS)を調製して供試料とした。
【0210】
【0211】
本実施例で採択した汚染土壌は、工場跡地にあった土壌Aならびに土壌Bの2種類を選んだ。土壌Aならびに土壌Bの含有水分と主成分(乾燥物基準)、ならびに汚染重金属類の含有量を表6に示す。なお、本実施例では、汚染土壌に共存している浹雑物(木切れ、草木、砂、礫等)は分級除去した精製汚染土壌を供試料とした。
【0212】
【0213】
本発明の固定化処理工程において、混和物の調製に採択する混和装置としては、事前混和方式であるビーター型撹拌機(回転数:205r.p.m.)が具備されたステンレス製20l容器を本体とするモルタルミキサー[愛工舎製作所製:マイティ30(形式MT−30/20)]を選んだ。
【0214】
本実施例における混和物は、モルタルミキサー容器に汚染土壌4kgを移動投入し、次いで汚染土壌を投入したモルタルミキサー容器に表5に示す粉末固定化材(S)の中から試料番号S−1の固定化材(S)1kgと水1kgを2段階で加える場合と、試料番号S−1の固定化材(S)1kgと水1kgで予めスラリー状に調製して1段で加える場合の二方式でそれぞれ添加配合し、60秒間撹拌して表7に示す可塑性混和物を調製した。
【0215】
ここで調製した可塑性混和物を密封した容器に採り、24時間常温にてそれぞれ放置養生して表7に示す4種類の処理土壌とする。
調製した4種類の処理土壌をpH4溶出試験、pH7溶出試験ならびにpH9溶出試験に付して含有重金属類の固定化状況を評価した。また、簡易型変形性測定試験に付して、処理土壌の外圧に対する変形性を評価した。その結果を表8に併せ表示する。
【0216】
【0217】
本発明の比較例として、本発明固定化材(S)に替えて汎用されているポルトランドセメントを表7に示す処理条件と同じ条件で処理土壌とした場合を比較例とした。また、本発明固定化材(S)を加えない無処理の汚染土壌土も比較例とした。各比較例の土壌を各溶出試験に付して、本発明との比較評価を行った。その結果を表8に併せ表示する。
【0218】
【0219】
なお、参考までに、本実施例で実施した重金属類[カドミ(Cd)、鉛(Pb)、六価クロム(Cr)、砒素(As)、総水銀(T−Hg)]の溶出試験における分析定量下限界値ならびに環境省より示されている環境基準値を参考までに表9に併せて示す。
【0220】
【0221】
以上の結果、無処理の土壌ならびにセメントを固定化材とした処理土壌と比較して、本発明による固定化材(S)により汚染土壌を固定化処理した処理土壌は、硝酸で調製されたpH4の溶液での溶出試験でも、中性pH7水での溶出試験でも、またアルカリの溶出試験でも、含有重金属類、特にクロムも固定化されて溶出せず、しかも処理土壌が外圧に対して変形性を有していることが良く理解される。
【0222】
[実施例2]
本実施例において、実施例1の表5に示した固定化材(S)を採択して、事前混和方式による混和装置により、汚染土壌を含有重金属類の固定化処理に付した時の重金属類の固定化状況と処理土壌の変形性について説明する。
【0223】
固定化処理工程は、実施例1に示した事前混和方式であるモルタルミキサー混和装置[マイティ30(形式MT−30/20)]を選んだ。
本実施例における混和物は、モルタルミキサー容器に実施例1に示した汚染土壌である土壌Aもしくは土壌Bと実施例1の表5に示した固定化材(S)と水を表10に示す量割合で移動投入し、次いで60秒間撹拌して可塑性混和物を調製した。
【0224】
【0225】
ここで調製した可塑性混和物を密封した容器に採り、24時間常温にてそれぞれ放置養生して処理土壌とする。
調製した処理土壌をpH4溶出試験、pH7溶出試験ならびにpH9溶出試験に付して含有重金属類の固定化状況を評価した。また、簡易型変形性測定試験に付して、処理土壌の外圧に対する変形性を評価した。その結果を表10に併せ表示する。
【0226】
以上の結果、本実施例に示した各種の固定化材(S)を用いて、事前混和方式による混和装置により本発明の固定化処理を施した処理土壌は、pH4、pH7、pH9の各溶出試験において含有重金属類を不溶出化合物として固定化されており、また処理土壌が外圧に対して変形性を有している土壌に変質されていることがよく理解される。
【0227】
[実施例3]
本実施例において、実施例1の表5に示した各種固定化材(S)を採択して、事前混和方式による混和装置により固定化処理工程に付し、含有重金属類を固定化した処理土壌との処理土壌の変形性について説明する。
【0228】
固定化処理工程は、実施例1に示した事前混和方式であるモルタルミキサー混和装置[マイティ30(形式MT−30/20)]を選んだ。
本実施例における混和物は、モルタルミキサー容器に実施例1に示した汚染土壌である土壌Bと実施例1の表5に示した固定化材(S)と水を表11に示す量割合で移動投入し、次いで60秒間撹拌して各可塑性混和物を調製した。
【0229】
ここで調製した可塑性混和物を密封した容器に採り、24時間常温にてそれぞれ放置養生して処理土壌とする。調製した処理土壌をpH4溶出試験、pH7溶出試験ならびにpH9溶出試験に付して含有重金属類の固定化状況を評価した。また、簡易型変形性測定試験に付して、処理土壌の外圧に対する変形性を評価した。その結果を表11に併せ表示する。
【0230】
【0231】
【0232】
以上の結果、本実施例に示した各種の固定化材(S)を用いて、事前混和方式による混和装置により本発明の固定化処理を施した処理土壌は、pH4、pH7、pH9の各溶出試験において含有重金属類を不溶出化合物として固定化されており、また処理土壌が外圧に対して変形性を有している土壌に変質されていることがよく理解される。
【0233】
[実施例4]
本実施例において、汚染土壌原位置において、掘削撹拌方式、機械撹拌方式ならびに高圧噴射方式による混和装置により、汚染土壌に対して実施例1で示した固定化材(S)を加えて本発明の混和処理工程に付し、重金属類の固定化状況と処理土壌の変形性について説明する。
【0234】
本実施例における掘削撹拌方式、機械撹拌方式ならびに高圧噴射方式により重金属類の固定化処理した原位置(深度約2m)における汚染土壌Cの含有重金属類を表12に示す。
【0235】
掘削撹拌方式装置としては、スタビライザー式の採掘型で撹拌可能な装置[東洋スタビ工事(株)製:TOYO SRABI]により、汚染土壌C原位置において深さ約1mの深さまでを掘削撹拌式にて土粒子と表13に示すスラルー状の固定化材(S)を原位置において撹拌混合して、ついで24時間放置養生した後、混和処理された混和処理物をボーリング方式により採取したし試験体として密封した容器に採り処理土壌の試料とした。
【0236】
機械撹拌方式装置としては、三点式パイルドライバーで定格出力180ps/2100rpm、オーガのモータ出力が75kwクラスであるNAS100形式のオーガパイルドライバーにより、汚染土壌C原位置において深さ約1m以上の原位置土壌に機械撹拌式にて土粒子と表13に示すスラルー状の固定化材(S)を撹拌混合して、ついで原位置において24時間放置養生した後、混和処理された混和処理物をボーリング方式により採取したし試験体として密封した容器に採り処理土壌の試料とする。
【0237】
高圧噴射方式装置としては、CCP−L工法として汎用されている回転ノズルより高圧噴射し、地盤深層部の有効径φ300ないしは500の範囲で均質接触せしめる高圧プランジャー一式で馬力7.5KWを有するグラフト噴射方式により、汚染土壌C原位置において深さ約1m以上の原位置土壌に高圧噴射式にて土粒子と表13に示すスラルー状の固定化材(S)を撹拌混合して、ついで原位置において24時間放置養生した後、混和処理された混和処理物をボーリング方式により採取したし試験体として密封した容器に採り処理土壌の試料とする。
【0238】
さらに、粉体噴射撹拌工法を可能とする高圧噴射方式装置としては、DJM工法として汎用されている固定化材(S)を空気流により地盤深層部への搬送を可能とする、撹拌軸数2本、標準撹拌翼径1,000mm、原動機出力90kw×2台仕様を有する粉体高圧噴射式により、汚染土壌C原位置において深さ約1m以上の原位置土壌に高圧噴射式にて土粒子と表13に示す粉末状の固定化材(S)を撹拌混合して、ついで原位置において24時間放置養生した後、混和処理された混和処理物をボーリング方式により採取したし試験体として密封した容器に採り処理土壌の試料とする。
【0239】
本実施例により、それぞれ掘削撹拌方式、機械撹拌方式ならびに高圧噴射方式による混和装置により処理された処理土壌をそれぞれボーリング採取して試験体とし、pH4溶出試験、pH7溶出試験ならびにpH9溶出試験に付して含有重金属類の固定化状況を評価した。また、簡易型変形性測定試験に付して、外圧に対する変形性を評価した。その結果を表13に併せ表示する
【0240】
【0241】
以上の結果、本発明の固定化材(S)をスラリー状ないしは粉末状で原位置の汚染土壌に対して、それぞれ掘削撹拌方式、機械撹拌方式ならびに高圧噴射方式による混和装置により混和処理された処理土壌はpH4溶出試験、pH7溶出試験ならびにpH9溶出試験において含有重金属類を不溶出化合物として固定化されており、また処理土壌が外圧に対して変形性を有している土壌に変質されていることがよく理解される。
【0242】
【発明の効果】
本発明の効果は、汚染土壌が含有する有害な重金属類をpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性化合物にして固定化し、しかも変形性を示す処理土壌として変質せしめることにより、生物生態系や人の健康に影響を及ぼす有害重金属類が地下水脈や河川・海域に流失し、広域な生活環境に二次汚染している実態を防止して環境問題を解消できるのみならず、土地の有効活用に貢献することができる。
Claims (16)
- 重金属類含有汚染土壌を固定化処理工程に付して、処理された土壌の重金属類がpH4ないし9範囲にある水系溶媒に対して溶出しない不溶性化合物として固定化しており、処理土壌が外圧に対して変形性を示す土壌とする重金属類固定化材(S)において;
上記の固定化材(S)が、シラノール基を有する活性シリカ(SS)100質量部に対して、反応性アルミナ(SA)を50ないし200質量部、水酸化ナトリウム(SN)を15ないし80質量部およびカルシヤ組成物(SC)を20ないし300質量部の量で加えた必須四成分が均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)であり;
上記のカルシヤ組成物(SC)が、カルシヤ標準組成物(SC1)、オキシ酸塩組成物(SC2)、ハロゲン塩組成物(SC3)、廃棄物粉体組成物(SC4)、セメント粉体組成物(SC5)、アルカリ変性組成物(SC6)ならびに炭カル酸変性組成物(SC7)群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成され、
上記の固定化処理工程が、乾燥物基準換算で汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を10ないしは140質量部の量割合で均質混和して形成される可塑性ないしは流動性の混和物とし、ついで該混和物を2ないし40℃に少なくとも24時間放置して処理土壌とする工程であり;
以上の固定化処理工程により、汚染土壌の含有重金属類がアルミノケイ酸の塩基性塩化合物であるゼオライト類として固定化せしめてpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に溶出しない処理土壌に変質せしめ、このときの処理土壌が外圧により変形性を示す土壌とする固定化材(S)であることを特徴とする重金属類固定化材。 - 前記の固定化材(S)の構成成分であるシラノール基を有する活性シリカ(SS)において;
上記の活性シリカ(SS)が、シリカ(SiO2)を主成分とする非晶質ケイ酸(SS1)、ケイ酸アルカリ(SS2)、ケイ酸アルミニウムを主骨格とするフェロケイ酸塩の層状粘土鉱物(SS3)ならびにケイ酸やケイ酸塩に水酸化ナトリウムを反応せしめてシラノール基を保有せしめたアルカリ変性ケイ酸塩(SS4)群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される請求項1記載の重金属類固定化材。 - 前記の固定化材(S)の構成成分であるシラノール基を有する活性シリカ(SS)において;
上記の反応性アルミナ(SA)が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムならびにアルミン酸アルカリ土類金属塩群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される請求項1または2記載の重金属類固定化材。 - 前記の固定化材(S)が必須四成分で均質混合されている複合組成物(PS)に対して、さらに付加補助組成物(ST)を加えた五成分で均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)において;
上記の粉末付加補助組成物(ST)が、結晶タネ組成物(ST1)、硫酸根組成物(ST2)、燐酸根組成物(ST3),バリウム塩組成物(ST4)、鉄塩補充組成物(ST5)、担持補助組成物(ST6)ならびに分散媒質組成物(ST7)群より選ばれた単独ないしは2種以上の組み合わせで構成される付加されて補助的機能を発挿する粉末組成物であり;
上記の固定化材(S)が、必須四成分で均質混合される複合組成物(PS)100質量部に対して、付加補助組成物(ST)を1ないし200質量部の量割合で加えて均質混合されている五成分の粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成される請求項1ないしは3のいずれか1項記載の重金属類固定化材。 - 前記の固定化材(S)が必須四成分と付加補助組成物(ST)五成分で均質混合されているワンパック複合組成物(PS)において;
上記の粉末状ワンパック複合組成物(PS)が、各粉末のケイ酸ナトリウムである活性シリカ(SS)100質量部に対して、アルミン酸ナトリウムである反応性アルミナ(SA)を50ないし100質量部、ケイ酸カルシウムであるカルシヤ組成物(SC)を20ないし80質量部および天然ゼオライトである結晶タネ組成物(ST1)を25ないし75質量部の量で均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成される請求項4記載の重金属類固定化材。 - 前記の固定化材(S)が必須四成分と付加補助組成物(ST)五成分で均質混合されているワンパック複合組成物(PS)において;
上記の粉末状ワンパック複合組成物(PS)が、各粉末の酸性白土である活性シリカ(SS)100質量部に対して、水酸化アルミニウムである反応性アルミナ(SA)を50ないし100質量部、水酸化ナトリウム(SN)を15ないし80質量部、高炉スラッグであるカルシヤ組成物(SC)を20ないし80質量部および天然ゼオライトである結晶タネ組成物(ST1)を25ないし75質量部の量で均質混合されている粉末状ワンパック複合組成物(PS)で構成される請求項1または4記載の重金属類固定化材。 - 前記の重金属類固定化材(S)が、必須四成分ないしは五成分の粉末状複合組成物(PS)に対して水が加わって均質スラリー状に予め調製されているスラリー状複合組成物(LS)において;
前記の必須四成分ないしは五成分の粉末状複合組成物(PS)100質量部に対して、水を60ないし120質量部の量で加えて予め均質なスラリー状に調製されているスラリー状複合組成物(LS)で構成される請求項1ないしは6のいずれか1項記載の重金属類固定化材。 - 前記の請求項1ないしは7のいずれか1項記載の重金属類固定化材(S)が水を介して汚染土壌に均質接触せしめる混和装置に付して可塑性ないしは流動性混和物として、次いで反応・養生する固定化処理工程により、含有重金属類を不溶性な化合物に固定化せしめ、変形性を示す処理土壌とする汚染土壌の処理工法において;
上記の混和装置が、撹拌羽根を有した回転駆動体を具備している容器を主体とする事前混和方式の混和装置であり;
上記の事前混和方式が、採掘された汚染土壌を混和装置に移動投入し、さらに固定化材(S)と必要に応じて水の3者を所定量投入して撹拌混合することにより可塑性ないしは流動性混和物を形成する方式であり;
上記の汚染土壌の処理工法が、含有重金属類をアルミノケイ酸の塩基性塩化合物であるゼオライト類として固定化し、pH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性な化合物に固定化して変形性を示す処理土壌とする工法であることを特徴とする汚染土壌の処理工法。 - 前記の事前混合方式の混和装置により汚染土壌と固定化材(S)と水の3者を撹拌混合して形成される可塑性混和物において、
上記の可塑性混和物が、乾燥物基準換算で重金属類含有汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を60質量部未満の量割合で撹拌混合され、ついで0.5ないしは35mmφの顆粒状に造粒され、必要に応じて乾燥されて変形性処理土壌に変質されている処理工法である請求項8の汚染土壌の処理工法。 - 前記の事前混合方式の混和装置で汚染土壌と固定化材(S)と水の3者が撹拌混合されて形成される流動性混和物において;
上記の流動性混和物が、乾燥物基準換算で重金属類含有汚染土壌100質量部に対して、固定化材(S)を5ないし30質量部および水を60ないしは140質量部の量割合で撹拌混合され、ついで採掘した原位置もしくは他所に流動性を利用して移動されて変形性処理土壌に変質している請求項8の汚染土壌の処理工法。 - 前記の混和装置が、対象地盤を移動可能な掘削撹拌方式の装置であり;
上記の掘削撹拌方式が、地盤表面1m未満の原位置表層部の汚染土壌に対し所定量固定化材(S)と必要に応じて水を加えて土壌を掘削しながら撹拌混合して可塑性ないし流動性混和物を形成せしめる方式であり;
上記の可塑性ないしは流動性混和物が、変形性処理土壌に変質している処理工法である請求項8の汚染土壌の処理工法。 - 前記の混和装置が、対象地盤の深層部を中心とする機械撹拌方式の装置であり;
上記の機械撹拌方式が、地盤表面より深さ1m以上の深層部汚染土壌にスラリー状固定化材(S)を貫入せしめて機械的に撹拌混合することにより、可塑性ないしは流動性混和物を形成する方式であり;
上記の可塑性ないしは流動性混和物が、変形性処理土壌に変質している処理工法である請求項8の汚染土壌の処理工法。 - 前記の混和装置が、対象地盤の深層部を中心とする高圧噴射方式の装置であり;
上記の高圧噴射方式が、地盤表面より深さ1m以上の深層部汚染土壌にスラリー状固定化材(S)を高圧注入して撹拌混合することにより、可塑性ないしは流動性混和物を形成する方式であり;
上記の可塑性ないしは流動性混和物が、変形性処理土壌に変質している処理工法である請求項8の汚染土壌の処理工法。 - 前記の高圧噴射方式の装置が、地盤表面より深さ1m以上の深層部汚染土壌に向かって圧縮空気を移動媒体として粉末状固定化材(S)を注入して撹拌混合すると共に、深層部に送り込まれた空気を地上に排出せしめる装置である請求項13記載の汚染土壌の処理工法。
- 前記の汚染土壌が、重金属類に加えて有機質物質でも汚染されている複合汚染土壌において;
上記の複合汚染土壌が、含有する有機質物質を加熱により予め分解除去する前処理の施された汚染土壌である請求項8ないし14のいずれか1項記載の汚染土壌の処理工法。 - 前記の処理土壌が、含有重金属類をゼオライト類として固定化してpH4ないし9の範囲にある水系溶媒に対して不溶性化合物に変質している変形性処理土壌において;
上記の変形性処理土壌が、簡易型変形性測定試験に付して、強度値が80N/cm2以下である外圧による変形性を示す処理土壌に変質されている請求項8ないし15のいずれか1項記載の汚染土壌の処理工法。
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