JP4005440B2 - レーザ加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被覆層を有する加工対象物にレーザビームを照射し、被覆層に穴を開けるレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属層上に形成された樹脂層に、紫外線の波長領域のパルスレーザビームを集光し、穴を開ける方法が知られている。この方法によると、紫外レーザビームのエネルギによって樹脂層がアブレーションされることにより穴あけ加工が行われる。アブレーションにより所望の深さの穴あけを行うためには、一箇所に複数ショットのパルスレーザビームを照射しなければならない。また、樹脂層の下の金属層も紫外領域の光をある程度吸収するため、パルスレーザビームを過剰に照射すると、金属層の一部が溶融したり、樹脂の残滓やフィラーを巻き込む場合がある。樹脂層がアブレーションされ金属層がアブレーションされない大きさに、レーザビームのフルエンスを設定しておくと、下地の金属層にほとんどダメージを与えることなく、樹脂層に貫通孔を形成することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アブレーション加工で大面積の穴を開けようとすると、厚さ50μmの樹脂層に直径50μm程度の穴を開けるのでも100ショット前後のパルスレーザビームが必要となり、加工速度が遅くなる。また、紫外パルスレーザビームを用いたアブレーション加工で大きな穴を形成したい場合には、大きなパルスエネルギを取ることができないため、小さなビームをらせん状に振り(トレパニング)、穴開け加工を行う。この場合、1つの穴開けに、非常に多くのショット数のパルスレーザビームが必要となる。
【0004】
本発明の目的は、加工対象物の下地部材表面に形成された被覆層に、短時間で、下地部材にほとんど影響を与えることなく、所望の位置に、穴を開けることのできるレーザ加工方法を提供することである。
【0005】
また、被覆層に穴が形成されたか否かを判定することのできるレーザ加工方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、第1の材料からなる表層部を有する下地部材と、該下地部材の表面上に形成され、該第1の材料とは異なる第2の材料で形成された被覆層とを含む加工対象物を準備する工程と、前記被覆層を透過し、該被覆層と前記下地部材との界面で反射し、反射位置の該被覆層を該下地部材から剥離させる性質を有するレーザビームを、該被覆層の表面から前記加工対象物に入射させる工程と、前記レーザビームの入射した位置の前記被覆層が前記下地部材から剥離し、該被覆層に穴が形成されたか否かを判定する工程とを有し、前記第1の材料は、銅、アルミニウム、金、銀、パラジューム、ニッケル、チタン、タングステン、プラチナ、モリブデンからなる群より選ばれた1つの金属、または、前記群より選ばれた金属の合金であり、前記第2の材料は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、または、ベンゾシクロブテンであるレーザ加工方法が提供される。
【0007】
被覆層の表面に入射したレーザビームは、被覆層と下地部材との界面において、被覆層の熱分解を誘起し、高圧力状態を作り出す。この圧力によって、被覆層の剥離が誘起され、剥離部分が形成されて被覆層に穴が開く。この穴は、従来のアブレーション加工で形成する穴に比べ、大面積を有する。しかも上記のレーザ加工方法によれば、この穴開け加工を、下地部材にほとんど影響を与えずに行うことができる。
【0008】
また、レーザビーム照射後、被覆層の剥離部分は、ある程度の速度をもって加工対象物の外部に飛び出すため、加工対象物には反作用として、運動量が与えられる。この運動量による圧力を検出することにより、剥離部分が形成され、その剥離部分が加工対象物から分離されたか否か(被覆層に穴が開いたか否か)を判定することができる。また、このとき、加工対象物に発生する振動を検出することによっても、剥離部分の形成、分離を判定することができる。更に、レーザビーム照射後、加工対象物から発生する蛍光を分光測定することで、同様の判定を行うことも可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施例によるレーザ加工方法に用いるレーザ加工装置の概略図である。波長変換ユニットを含む全固体レーザ発振器1、たとえばNd:YLFレーザから、レーザビームが出射される。波長変換ユニットにより全固体レーザ発振器1は、基本波と2倍高調波のいずれかを出射することができるが、まずNd:YLFレーザの基本波(波長1047nm)をパルス幅15ns、パルスエネルギ3mJで出射する。レーザビームは、ビーム断面の形状を整形するためのマスク2、必要に応じて配置される反射ミラー3、加工対象物である基板5上にレーザビームを集束させる集束レンズ4を経て、基板5に入射する。基板5に入射するレーザビームのパルスエネルギは、200〜500μJである。基板5は基板ホルダー6に保持されている。基板5と基板ホルダー6との間には、基板5に接する検出面を有し、基板5から加えられる圧力を検出する圧力検出器7、及び基板5の振動を検出する振動検出器8が備えられている。基板ホルダー6は、ステージ9上に載置されている。ステージ9は可動ステージであり、ステージ9上の基板ホルダー6を移動させることにより、基板5に入射するパルスレーザビームの入射位置を変えることができる。石英ファイバ10は、基板5から発せられる蛍光を取り込む。取り込まれた蛍光は、分光器11によって分光測定される。また、照射位置検出器12は、基板5の画像を撮影するためのものである。圧力検出器7、振動検出器8、分光器11及び照射位置検出器12による検出または測定結果は、コントローラ13に送られる。
【0010】
図2(A)は基板5の断面を示す概略図である。
【0011】
たとえばガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂で形成された支持基板23、金属材料たとえば銅で形成された金属層22、誘電体材料たとえばエポキシ樹脂で形成された被覆層21、がこの順に下から積層されている。被覆層21の厚みは、たとえば30〜60μm、金属層22の厚みは、たとえば10〜20μmである。被覆層21が金属層22の上面に密着している。
【0012】
被覆層21は、エポキシ樹脂の他、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、BTレジン(商標)、BCB(ベンゾシクロブテン)等で形成される。
【0013】
金属層22は、銅の他、アルミニウム、金、銀、パラジューム、ニッケル、チタン、タングステン、プラチナ、モリブデン、及びこれらの金属の合金等で形成される。
【0014】
支持基板23は、支持材料(補強材料)で強化された誘電体材料で形成される。支持材料(補強材料)の例としては、ガラス繊維の他、アルミナ繊維、アラミド繊維、ケプラーなどがある。
【0015】
被覆層21の上面から、基板5に、パルスレーザビーム30が入射する。パルスレーザビーム30は、被覆層21を、多くは吸収されることなく透過し、金属層22で大部分反射される性質をもつ。パルスレーザビーム30は、被覆層21と金属層22との界面において、被覆層21の熱分解を誘起し高圧力状態を作り出す。この圧力によって、金属層22上面におけるパルスレーザビーム30の反射位置付近の被覆層21の一部が金属層22から剥離する。この現象を「リフティング現象」と呼び、「リフティング現象」を利用した加工を「リフティング加工」と呼ぶこととする。
【0016】
図2(B)は、基板5の被覆層21の上面から入射した1ショットのパルスレーザビームによって、被覆層21に穴21aが形成された基板5の概略的な断面図である。穴21aは、被覆層21の一部が金属層22から剥離し、剥離部分が基板5から分離する(飛び出す)ことによって、形成される。基板5から飛び出す剥離部分の速さは、最速のもので300m/sに達する。穴21aの底面を仮に円とすると、その直径はたとえば90μm以上である。リフティング加工はアブレーション加工に比べ、少ないショット数で、大面積の穴開け加工を可能にする。加工時間も短縮することができる。なお、リフティング加工では、加工する基板によっては、形成された穴の底面に、被覆層の皮膜が薄く残存する場合がある。たとえば、基板5においては、銅層表面に約1μmのエポキシ被覆層の皮膜21dが薄く残存する。
【0017】
レーザビームが基板5に入射した場合、大別すると、▲1▼被覆層21は金属層22から剥離しない、▲2▼被覆層21は金属層22から剥離するが、剥離した部分の被覆層21は、基板5から分離しない(飛び出さない)、▲3▼被覆層21が金属層22から剥離し、かつ剥離部分は基板5から分離される(飛び出す)、の3通りの現象が生じる。▲1▼の現象は、たとえば入射レーザビームのフルエンスが小さいなどの理由により生ずる。▲3▼の現象により、前述の通り、穴21aが形成される。▲2▼の現象については、図2(C)を参照しながら説明を行う。
【0018】
図2(C)は、基板5の被覆層21の上面から入射した1ショットのパルスレーザビームによって、被覆層21に亀裂21bが形成された基板5の概略的な断面図である。亀裂21bは、被覆層21と金属層22との界面上に画定された仮想的な閉じた曲線に沿って発生し、被覆層21の厚さ方向にのび、被覆層21上面に画定された仮想的な閉じた曲線まで到達している。被覆層21のうちレーザビームの入射点近傍の剥離部分21cが、金属層22から剥離されてはいるが、基板5から分離されず、基板5内に留まっている。これは、たとえば入射レーザビームのフルエンスが、剥離部分21cを基板5から分離させる(飛び出させる)には、わずかに不足していた等の理由から生じる。なお、図2(C)に示すのは、亀裂21bが、被覆層21上面まで到達した場合であるが、被覆層21の中途まで亀裂21bが発生する場合もある。上記▲2▼の現象は、これらの場合をともに含む。
【0019】
基板5にレーザビームが照射されると、上記▲1▼〜▲3▼のいずれかの現象が生じ、圧力検出器7の検出面には、基板5から圧力が与えられる。▲3▼の場合、すなわち基板5から被覆層21の剥離部分が分離する(飛び出す)場合には、基板5には反作用として運動量が与えられ、圧力検出器7の検出面には、この運動量による圧力が検出される。この圧力は、▲1▼または▲2▼の現象が起こった場合には、剥離部分が飛び出さないため、大きな差がある。
【0020】
コントローラ13は、圧力検出器7から送信された圧力値に基いて、上記▲3▼の現象が生じたか否か、すなわち基板5の被覆層21に剥離部分が形成され、その剥離部分が基板5から分離されたか否かを判定する。この判定は、たとえば送信された圧力値を、コントローラ13にあらかじめ入力してある基準値と比較することにより行う。基準値は、▲3▼の現象を、▲1▼及び▲2▼の現象から区別できる値であり、実験データから決定される。検出された圧力値が、基準値を超えた場合、被覆層21に穴が開いたと判定される。
【0021】
また、振動検出器8の検出結果からも、上記▲3▼の現象が生じたか否かが判定される。これは振動検出器8の検出したデータのみに基く判定であり、たとえば圧力検出器7から送信された検出結果に基く判定とは独立に行われる。▲1▼及び▲2▼の現象が生じた場合と、▲3▼の現象が生じた場合とでは、発生する振動に差異が存する。基板5の振動に基く判定も、▲1▼及び▲2▼の現象から▲3▼の現象を区別するために、あらかじめ実験データから決定され、入力してあるパラメータの基準値、たとえば振幅や減衰率等の基準値と、レーザビーム照射時に生じる振動におけるそれらを比較することにより行われる。
【0022】
また、上記▲3▼の現象が生じた場合、すなわち被覆層21に剥離部分が形成され、基板5から分離した場合には、基板5の加工点から、特徴的な発光が生じる。これを利用することによっても、被覆層21に穴21aが形成されたか否かを判定することができる。
【0023】
前述のように、石英ファイバ10は、基板5からの光を取り込み、取り込まれた光は、分光器11により、分光測定される。その結果はコントローラ13に送信される。リフティング加工によって、被覆層21に穴が形成された場合に生じる蛍光を分光測定すると、従来のアブレーション加工とは異なる傾向を示すことがある。
【0024】
図3(A)は、紫外領域のレーザビームを用いて、アブレーション加工を行った場合に生じる蛍光を分光測定したグラフである。横軸は、波長を単位「nm」で表し、縦軸は、強度を「任意単位」で表す。加工対象物は黒鉛で、使用したレーザビームはNd:YLFレーザの4倍高調波(波長262nm)であった。380nmに生じている強度ピークは、炭素(C0)の蛍光である。なお、使用した分光器の検出限界により、およそ550nmまでは分光測定することができているが、それより長い波長についてはできていない。この点は、図3(B)についても同様である。
【0025】
図3(B)は、Nd:YLFの基本波(波長1047nm)をプリント基板に照射し、リフティング加工で穴を形成した際に生じる蛍光を、分光測定したグラフである。縦軸、横軸の意味するところは、図3(A)と同じである。レーザビームのパルス幅は15ns、プリント基板に入射するレーザビームのフルエンスは8.6J/cm2であった。380nmに生じている強度ピークは、炭素(C0)の蛍光であり、398nmに生じているそれは、アルミニウムの蛍光である。レーザビームを強いフルエンスで照射しているため、被覆層で原子、分子レベルでの分解が起こっている。したがって、強度のピーク部分を与える波長には、黒鉛にビームを照射した図3(A)のグラフにおいて、ピーク部分を与えた波長とほぼ同じ波長が含まれている。図3(B)に示すような強度分布を有する蛍光が、基板5から発せられる場合、ビームのフルエンスは過剰である。照射されるビームのフルエンスが強すぎると、形成される穴21aの周囲の被覆層21と金属層22との界面でも、被覆層21の剥離が生じることがある。また、被覆層21に形成された剥離部分21cが複数個に割れ、その一部が基板5に残ることもある。
【0026】
図3(C)は、適正なフルエンスによるリフティング加工で、被覆層に穴が形成された場合に、基板から発生する蛍光を、分光測定したグラフである。縦軸、横軸の意味するところは、図3(A)と同じである。加工対象物は、図2(A)に断面を示した、基板5である。ガラス繊維で強化された、エポキシ樹脂で形成された支持基板23、銅で形成された厚さ18μmの金属層22、エポキシ樹脂で形成された厚さ50μmの被覆層21、がこの順に下から積層されていた。この基板5の被覆層21上面から、Nd:YLFの基本波(波長1047nm)を入射させた。パルス幅15ns、被覆層21に入射するビームのフルエンスは1.2J/cm2であった。
【0027】
適正なフルエンスによるリフティング加工で、基板5の被覆層21に穴21aが形成される場合、基板5から生じる蛍光は、図3(C)に示すように、波長に対して幅の広い強度分布を有する。これは、図3(A)に示した、アブレーション加工の場合、図3(B)に示した、過剰なフルエンスによるリフティング加工の場合とは明らかに異なる。なお、図3(C)においては、およそ550nmまでは分光測定の結果が示されているが、それを超える波長領域についても測定を行った。ただし、グレーティングの最適波長と異なり、回折する割合が小さくなり、正確な値はわからないが、550nmを超える波長域でも、幅の広いピークが続いていると考えられる。
【0028】
リフティング加工による穿孔時、発生する蛍光が、図3(C)に示すような強度分布を有する理由は定かではないが、基板5に入射したレーザビームが金属層22上面で反射する際、高温ガスまたはプラズマが、被覆層21と金属層22との界面において発生し、その高温ガスまたはプラズマの発する蛍光が、検出されているのではないかと思われる。
【0029】
また、レーザビームを照射したが、被覆層21に穴21aが形成されなかった場合、すなわち上記▲1▼または▲2▼の現象が生じた場合には、400nmより長い波長領域の蛍光は、ほとんど検出されない。
【0030】
蛍光に関する上述の特徴を利用して、リフティング加工のモニタリングを行う。400nmより長い波長領域における蛍光の強度を測定することで、被覆層21に穴21aが形成されたか否かを判定することができる。
【0031】
被覆層21に穴21aが形成されたか否かの判定については、たとえば以下のように行う。まず、観察する複数の波長ポイント(この波長ポイントは、400nmより長い波長領域から選択される。)について、強度の基準値をあらかじめ定めておく。この基準値は、穴21aが形成されない場合の強度よりも大きく、穴21aが形成される場合の強度よりも小さい値である。そして、レーザビームを照射し、発生した蛍光を分光測定し、すべての波長ポイントにおける強度が基準値を超えていた場合に、穴21aが形成されたと判定する。
【0032】
なお、蛍光を分析して判定を行う際、観察する波長ポイントを決定するに当たっては、基板5を構成する成分元素に固有な波長、及び使用するレーザ(ここではNd:YLFレーザ)の波長(高調波の波長位置も含む。)の近傍を避けることが好ましい。
【0033】
リフティング加工時における上述の判定、すなわち圧力に基く穿孔判定、振動に基く穿孔判定、及び蛍光分析に基く穿孔判定は、コントローラ13で、それぞれ独立に行われる。最終的な穿孔判定は、たとえば、蛍光分析による判定をメインに据え、残る2つの判定に補完的な役割を与えてなされる。
【0034】
被覆層21に穴21aが形成されたという最終的な判定がなされた場合には、ステージ9により基板5が移動され、加工が続けられる。ビームが照射されたにもかかわらず、穴21aが形成されていないと判定された場合は、ビーム照射位置が記憶され、適当なタイミングで再度その位置にレーザビームを照射するか、または、たとえばその位置に粘着テープを貼り、剥離部分とともにテープを剥がしたり、掃除機のような吸引機等で吸い取ったりして、被覆層21に穴を形成することができる。また、次のショットから、レーザビームのパルスエネルギを増大させる。
【0035】
テープにより穴を形成することは、前記▲2▼の現象が生じた場合に効果的である。被覆層21の上面まで亀裂21bが到達している場合はもとより、亀裂21bが被覆層21の中途まで発生している場合も、貼ったテープを引き剥がすことにより、剥離部分21cが基板5から機械的に分離される。なお、亀裂21bは、被覆層21の上面まで、または上面近くまで入っていることが望ましい。
【0036】
また、蛍光の分析結果に基いて、基板5に照射するレーザビームを適正なフルエンスに調整することができる。これは、たとえば、図3(B)と(C)とを差異化することにより行う。蛍光分析に基く穿孔判定と同様に、観察する複数の波長ポイントについて、強度の基準値をあらかじめ定めておき、この基準値を超える強度の蛍光が検出された場合、過剰なフルエンスのビームが照射されていると判定し、次のショットから、レーザビームのパルスエネルギを減少させる。
【0037】
ただし、ある程度強いフルエンスのビームを照射し、加工を行うこともある。その場合は、基板5から、図3(B)に示すような蛍光が発せられる。したがって、蛍光の強度は、加工条件にあったものが観察されることが望ましい。
【0038】
以上のようにして、リフティング加工により被覆層21に穴21aを形成した後、穴21aの底面に残存する被覆層21の皮膜21dを除去し、金属層22の表面を露出させる。皮膜21dの除去は、リフティング加工を行った際とは異なる波長のレーザビームを、穴底に照射することによって行う。
【0039】
波長変換ユニットを含む全固体レーザ発振器14から、たとえばNd:YLFレーザの波長を変換し、波長523nm、パルス幅10ps、パルスエネルギ20〜500μJのNd:YLFレーザの2倍高調波を1〜10ショット照射することにより、皮膜21dを除去し、基板5の金属層22の表面を露出させることができる。このとき、残存皮膜には約0.5J/cm2以上のフルエンスで、ビームが照射される。
【0040】
照射位置検出センサ12は、たとえばCCDカメラを含んで構成され、前述のように、基板5の画像を撮影し、撮影した画像をコントローラ13に送る。コントローラ13は画像を分析し、基板5の金属層22表面が露出されたか否かを判定する。金属層22表面の露出が確認された場合、ステージ9により基板5が移動し、リフティング加工された別の穴の底に残存する皮膜21dを除去する。金属層22の露出が確認されない場合は、再び穴底に2倍高調波を入射させ、金属層22を露出させる。この2倍高調波の再入射においては、たとえば1ショット毎に皮膜の除去状態が判定される。
【0041】
以上、実施例においては、リフティング加工の際、基板5に照射するレーザビームとして、Nd:YLFレーザの基本波(波長1047nm)を用いた。しかし、波長が500〜600nmであり、パルス幅が10〜30nsであり、パルスエネルギが50μJ/パルス以上であるレーザビームを用いても、同様のリフティング加工を行うことができる。また、波長が800〜3000nmであるレーザビームを用いても、同様のリフティング加工を行うことができる。
【0042】
更に、実施例においては加工対象物として3層からなる基板5を考えたが、金属層表面に、被覆層が形成されたものであればよい。
【0043】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加工対象物の下地部材表面に形成された被覆層にレーザビームを照射し、短時間で、下地部材にほとんど影響を与えることなく、被覆層に穴を開けることができる。また、被覆層に穴が形成されたか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるレーザ加工方法で用いられるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】(A)は、実施例によるレーザ加工方法で加工される基板の概略的な断面図であり、(B)及び(C)は、実施例によるレーザ加工方法で加工された基板の概略的な断面図である。
【図3】(A)は、紫外領域のレーザビームを用いて、黒鉛をアブレーション加工した場合に発生する蛍光を分光測定したグラフであり、(B)は、過剰なフルエンスのレーザビームを用いて、プリント基板をリフティング加工した場合に発生する蛍光を分光測定したグラフであり、(C)は、適正なフルエンスでリフティング加工がなされた場合に、発生する蛍光を分光測定したグラフである。
【符号の説明】
1 (波長変換ユニットを含む)全固体レーザ発振器
2 マスク
3 反射ミラー
4 集束レンズ
5 基板
6 基板ホルダー
7 圧力検出器
8 振動検出器
9 ステージ
10 石英ファイバ
11 分光器
12 照射位置検出器
13 コントローラ
14 (波長変換ユニットを含む)全固体レーザ発振器
15 集束レンズ
21 被覆層
21a 穴
21b 亀裂
21c 剥離部分
21d 皮膜
22 金属層
23 支持基板
30 パルスレーザビーム
Claims (5)
- 第1の材料からなる表層部を有する下地部材と、該下地部材の表面上に形成され、該第1の材料とは異なる第2の材料で形成された被覆層とを含む加工対象物を準備する工程と、
前記被覆層を透過し、該被覆層と前記下地部材との界面で反射し、反射位置の該被覆層を該下地部材から剥離させる性質を有するレーザビームを、該被覆層の表面から前記加工対象物に入射させる工程と、
前記レーザビームの入射した位置の前記被覆層が前記下地部材から剥離し、該被覆層に穴が形成されたか否かを判定する工程と
を有し、
前記第1の材料は、銅、アルミニウム、金、銀、パラジューム、ニッケル、チタン、タングステン、プラチナ、モリブデンからなる群より選ばれた1つの金属、または、前記群より選ばれた金属の合金であり、
前記第2の材料は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、または、ベンゾシクロブテンであるレーザ加工方法。 - 前記加工対象物は、圧力測定面に接して保持され、前記判定する工程が、前記レーザビームが前記加工対象物に入射した時に、前記加工対象物が該加工対象物に接している前記圧力測定面に対して及ぼす圧力を検出する工程を含み、更に、該圧力の検出結果に基いて穴が形成されたか否かを判定する請求項1に記載のレーザ加工方法。
- 前記判定する工程が、前記レーザビームが前記加工対象物に入射した時に、前記加工対象物の振動を検出する工程を含み、更に、該振動の検出結果に基いて穴が形成されたか否かを判定する請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
- 前記判定する工程が、前記レーザビームが前記加工対象物に入射した時に、前記加工対象物から発生する蛍光を測定する工程を含み、更に、該蛍光の測定結果に基いて穴が形成されたか否かを判定する請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
- 前記レーザビームが、波長が500〜600nmであり、パルス幅が10〜30nsであり、パルスエネルギが50μJ/パルス以上であるパルスレーザビーム、または波長が800〜3000nmであるパルスレーザビームである請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
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KR101094381B1 (ko) | 2009-11-17 | 2011-12-15 | 한국기계연구원 | 이종 박막층을 갖는 롤러를 이용한 인쇄롤 패터닝 방법 |
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