JP4005333B2 - 中空糸型膜モジュールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空糸型膜モジュールの製造方法に関する。さらに詳しくは、複数の扇型単位ろ過エレメントを結合することにより、容易に形成でき、優れた中空糸膜束充填率を有する中空糸型膜モジュールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に中空糸型膜モジュールは一定容積内のろ過膜面積が大きくとれ、装置を小型化できるため、種々の膜分離用の用途に利用されている。中空糸型膜モジュールは通常複数の中空糸膜から成る中空糸膜束を中空糸膜相互間とケースハウジングとを樹脂などにより接着封止させ、中空糸膜の少なくとも片端端部面を開口した状態で構成させている。これらの中空糸型膜モジュールは、大量処理を必要とする用途には2本以上の中空糸型膜モジュールを並列に配管し、大きなろ過膜面積を有するようにして対応するか、あるいは1本の中空糸型膜モジュールを単に大型化することにより対応している。また、プラスチックネットなどの流路材で中空糸膜束を保護し、中空糸膜束の両端部を流路材と共に接着封止したカートリッジを多数本ケースハウジングに納めたカートリッジ型の中空糸型膜大型モジュールなどが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カートリッッジ型の中空糸型膜大型モジュールには次のような問題がある。すなわち、これら中空糸型膜大型モジュールにおいては、ハンドリングの都合上、最大でも直径15cm程度の中空糸膜束を1ユニットとして集合させ、これら中空糸膜束を円筒状のケースハウジングに複数本収納し使用している。この場合、複数本集合した円筒状中空糸膜束は、ケースハウジング内で必然的に円筒相互間に間隙を形成する。この間隙、すなわち、空間は、中空糸膜を洗浄あるいは殺菌する際に、薬剤などのモジュール内への充填あるいは逆に薬剤を完全に除去するのに長い時間を必要とするデットスペースになる。このような問題を解決するため、例えば特開昭62−1409号公報では、ケースハウジングを変形させた中空糸型膜大型モジュールが提案されている。しかしこのようなケースハウジングは製作ならびに使用上複雑であり、コストも高価となる。また、特開昭62−163709号公報あるいは特開平2−6825号公報のように多角形状のモジュールあるいはカートリッジエレメントが提案されているが、これらもモジュール構造が複雑であり、耐圧構造が困難になることからコストも高額となる。従って、本発明の目的は容易に形成でき、かつ円筒状ケースハウジング内の無駄な空間を無くした中空糸型膜モジュールの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記目的を達成させるため鋭意検討の結果、ケースハウジングに収納する中空糸型膜モジュールを複数の単位ろ過エレメントから構成することとし、該単位ろ過エレメントを保護する液体透過性を有する保護筒の形状を工夫し、かつ、液体透過性を有する保護筒の端部とケースハウジングの端部とを接着剤で接着した後、中空糸端部を開口させることによりケース内の空間を抑え、かつ、優れた中空糸膜束充填率を有する中空糸型膜大型モジュールを容易に製造できることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1は、液体透過性を有する保護筒内の少なくとも片端で樹脂により封止された中空糸膜束からなり、かつ、その横断面が扇型である扇型単位ろ過エレメントの端部封止部の中空糸膜を開口する前に、円筒状を形成するように該ろ過エレメントを2本以上集合させ、少なくとも1個のポートを有するケースハウジング内に挿入し、該ろ過エレメント封止部相互間及びケースハウジング端部と該ろ過エレメント封止部相互間を接着、封止した後、該ろ過エレメントの端部を切断して中空糸膜束を開口させることを特徴とする中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
また本発明の第2は、中空糸膜束の両端が樹脂で封止されている、本発明第1記載の中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
また本発明の第3は、扇型単位ろ過エレメントが互いに接触している本発明の第1または2記載の中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
更に本発明の第4は、液体透過性を有する保護筒の厚さが0.5〜8mmである本発明の第1から3のいずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明の第5は、保護筒がネット状である、本発明第1から4いずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明の第6は、保護筒の両端部が樹脂により固定されている単位ろ過エレメントを用いる、本発明第1から5のいずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明の第7は、エンドミルを用いて切断する、本発明第1から6のいずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法を提供するものである。
以下、詳細に本発明を説明する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において複数個使用される扇型単位ろ過エレメントとは、中空糸膜束の少なくとも片端が樹脂で封止され、透過性を有する保護筒に収納されたものであり、この保護筒の横断面の形状が扇型であることを特徴とする。また、この扇型単位ろ過エレメントを2本以上集合させたときに、これらを収納するケースハウジングの内径に対応した円筒状になることが必須である。この形状であれば、耐圧構造を必要とするケースハウジングにおいて、円筒状の外面を形成することができ、空間効率も高くなり、製造的にもコストを抑えることができる。また、これら扇型単位ろ過エレメントは、各々独立しているが、できるだけケースハウジング内で空間を少なくするために隣接し、扇型単位ろ過エレメント同士が接触していることがより好ましい。
【0006】
本発明の製造方法において、複数個使用される扇型単位ろ過エレメントは、中空糸膜束の少なくとも片端で中空糸相互が樹脂により封止されていればよい。さらに、中空糸膜束の両端が樹脂により封止されていてもよく、中空糸膜束とともに保護筒の両端部も共に樹脂により固定されているので、全体が強固になる。
【0007】
本発明の製造方法において、中空糸膜束端部の封止に使用する樹脂は通常使用されているものが利用できる。例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド樹脂等が例示できる。これらの内、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂は接着剤として中空糸型膜モジュールに多用されており、最も好ましい。
【0008】
本発明の製造方法に使用する保護筒は原水あるいは透過水等の液体に対する透過性を有することが必要であり、その透過性は使用する中空糸膜束のろ過に影響を与えない程度であることが好ましい。例えば、ネット状のもの、表面に細孔を有する多孔体などを使用することができる。また材質については、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素含有樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ステンレス等の金属、セラミックス等が例示できる。一般的にはポリオレフィン系樹脂が安価で加工性もよく、厚さが0.5〜8mm程度のネット状のものが保護筒としての適度な強度を有するので好ましい。保護筒が液体透過性を有することにより、ケースハウジングに収納された扇型単位ろ過エレメント間で、原水または透過水がケースハウジング内を自由に移動することができる。
【0009】
本発明の製造方法における扇型単位ろ過エレメントに使用する中空糸膜については、通常使用されているものを利用でき、材質にも特に制限はない。例えば、酢酸セルロース系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、フッ素含有樹脂などが例示できる。
【0010】
本発明の製造方法に使用される扇型単位ろ過エレメントの大きさは特に制限はない。一般的には、各中空糸膜の外径にも依存するが、中空糸膜100〜100,000本程度から構成されることが好ましい。また、中空糸膜の長さとしては10〜200cmが好ましい。扇型単位ろ過エレメントの太さに関してはどのような太さでも特に制限はなく、上記中空糸膜の使用量により決定されるが、膜断面積が3〜3000cm2であれば中空糸膜束の封止において操作性が良く、より好ましくは10〜1000cm2の範囲である。
【0011】
本発明の製造方法においては、上記扇型単位ろ過エレメントを2本以上組み合わせることにより円筒状が形成されるように中空糸型膜モジュールを構成する。2本以上の扇型単位ろ過エレメントを円筒状が形成されるように結束するための結束方法としては、例えばウレタン接着剤、エポキシ接着剤、ホットメルト接着剤等で接着する方法やポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素含有樹脂等で溶融し、充填する方法などが使用できる。
【0012】
本発明の中空糸型膜モジュールの製造方法においては、個々の扇型単位ろ過エレメントの端部を接着・封止後、端部を接着・封止された複数個の扇型単位ろ過エレメントをまとめて円筒状を形成させ、ケースハウジング内に挿入してケースハウジングごと端部を再度接着・封止し、次いで、端部を切断して中空糸束を開口させる。なお、開口のための切断方法はスライサーのような刃物、エンドミルによる削り取り、回転盤による切断などが例示される。前記スライサーによれば、削りかすが端面に残ることなく切断できる。またエンドミルや回転盤では切断スピードが速いという利点がある。従って、これらを組み合わせる方法が好ましい。
【0013】
本発明の中空糸型膜モジュールの製造方法においては、前記集合エレメントを少なくとも1つのポートを有するケースハウジングに収納することにより中空糸型膜モジュールが作成できる。これらの集合エレメントのケースハウジングへの装着方法としては、例えば前記のようにこれら集合エレメントをケースハウジングに収納した後、これら集合エレメントとケースハウジングとを樹脂により接着封止により固定させる。なお、ケースハウジングのポートとは、原水の供給あるいは透過水の回収を目的とする出入口である。
【0014】
本発明の中空糸型膜モジュールの製造方法において用いるケースハウジングの材質としては特に制限はなく、例えばポリスルホン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、AS樹脂、4−フッ化エチレンやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂、鉄、ステンレルスチール、セラミックス、ガラスなどを例示することができ、またその構成は多層であってもよく、供給原水などの処理対象液や設置環境などにより適宜選択することができる。
【0015】
本発明の製造方法により製造された中空糸膜モジュールは、どのような分野の用途にも適用することができる。例えば、河川水、湖水のろ過や原子力発電、火力発電用水のろ過、復水のろ過、水の除菌、廃液のろ過回収、食品のろ過、有機溶剤のろ過や分離、液体の脱ガス、液液抽出など種々の用途に利用できる。これらの内では、膜の洗浄や、殺菌を定期的に行う必要のある用途、例えば河川水や湖水のろ過、クラッド類のろ過、水の除菌などに特に適している。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、図を参照しながら本発明の中空糸型膜モジュールの製造方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
内径800μm、外径1300μmの酢酸セルロース製中空糸膜6400本からなる中空糸膜束を、中心角約72゜で半径方向17cm、厚さ4mm、長さ100cmのポリエチレン製ネットからなる扇型保護筒に挿入し、ウレタン接着剤を用いて、中空糸膜束の有効長さが95cmになる様に保護筒の両端部を含んで中空糸膜束の両端部を遠心接着し、扇型単位ろ過エレメントである扇型筒カートリッジ(図1)を得た。このような扇型筒カートリッジをさらに4本作成し、これら5本を直径34cmの円筒状に、カートリッジが互いに隣接するように束ねて、外径37cm、内径34.8cm、長さ105cmの塩化ビニル樹脂製のケースハウジングに収納した。ケースハウジングの両端部が液漏れを生じないように、ウレタン接着剤でカートリッジ相互間及びケースハウジングとを接着封止し、次いで、端部を切断することにより中空糸を開口させ、中空糸型膜大型モジュール(図2、図3)を得た。得られたモジュールの膜面積は中空糸内径換算で76m2であった。さらにこの中空糸型膜モジュールに水を満たし、ケースハウジング内で中空糸膜の外側にある空間の水のみを取り出して、この空間の容積を測定したところ約46リットルであった。保護筒内の中空糸膜束の充填率は53%であった。
【0018】
(実施例2)
実施例1と同様にして、中空糸膜5800本からなる中空糸膜束を、中心角約90゜で半径方向14.6cmで厚さ4mm、長さ100cmのポリエチレン製ネットからなる扇型保護筒に挿入し、エポキシ接着剤を用いて、扇型筒カートリッジを得た。このような扇型筒カートリッジをさらに3本作成し、これら4本を直径29.2cmの円筒状(図4)に、実施例1と同様に束ねて、外径31.8cm、内径29.8cm、長さ105cmの塩化ビニル樹脂製のケースハウジングに収納し、エポキシ接着剤で実施例1と同様にしてケースハウジングの両端部を接着封止し、次いで、端部を切断することにより中空糸を開口させた。得られたモジュールの膜面積は中空糸内径換算で55m2であった。さらに実施例1と同様にしてケースハウジング内で中空糸膜の外側にある空間の容積を測定したところ、約33リットルであった。保護筒内の中空糸膜束の充填率は53%であった。
【0019】
(比較例1)
実施例1と同様の中空糸膜3460本からなる中空糸膜束を実施例1および実施例2で使用した保護筒と同じ素材のメッシュのネットを用いて内径10.5cm、外径11.3cmの円筒状保護筒内に収納し、実施例1と同様にして7本の円筒状カートリッジ(円筒状単位ろ過エレメント)を得た。これらを実施例1と同様のケースハウジングに収納し、同様に封止し、中空糸型膜モジュール(図6、図7)を得た。得られた中空糸型膜大型モジュールの膜面積は中空糸内径換算で58m2であった。さらに実施例1と同様にして、ケースハウジング内で中空糸膜の外側にある空間の容積を測定したところ約55リットルであった。保護筒内の中空糸膜束の充填率は53%であった。
【0020】
(結果)
実施例1と比較例1から、同じケースハウジングを使用しても、扇型筒カートリッジ(扇型単位ろ過エレメント)を使用した方が円筒状カートリッジ(円筒状単位ろ過エレメント)を使用するよりも中空糸膜の膜面積が大きく、空間部分の容積が小さいことから容積効率が優れていた。また、比較例1と同様の膜面積を有する実施例1の中空糸型膜大型モジュールでは、使用するケースハウジングがより小さくても同様の効果を発揮できた。
【0021】
【発明の効果】
本発明の製造方法においては、複数の扇型単位ろ過エレメントを使用することにより大量処理を目的とした大型の中空糸型膜モジュールを容易に構成することができる。しかも、この場合、複数の扇型単位ろ過エレメントが円柱状を形成することにより、ケースハウジング内の空間部分の容積を小さくでき、ケースハウジング当たりの中空糸膜の膜面積を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】扇型単位ろ過エレメント
【図2】5本の扇型単位ろ過エレメントからなる中空糸型膜モジュールの横断面図
【図3】5個の扇型単位ろ過エレメントからなる中空糸型膜モジュールの全体図
【図4】4本の扇型単位ろ過エレメントからなる中空糸型膜モジュールの横断面図
【図5】6本の扇型単位ろ過エレメントからなる中空糸型膜モジュールの横断面図
【図6】従来の中空糸型膜大型モジュール
【図7】従来の中空糸型膜大型モジュールの横断面図
【符号の説明】
1−1 扇型単位ろ過エレメント
1−2 中空糸膜
1−3 封止樹脂
2−1 扇型単位ろ過エレメント
2−2 中空糸膜
2−3 ケースハウジング
3−1 扇型単位ろ過エレメント
3−2 中空糸膜
3−3 封止樹脂
3−4 ケースハウジング
3−5 側面ポート
4−1 扇型単位ろ過エレメント
4−2 中空糸膜
4−3 ケースハウジング
5−1 扇型単位ろ過エレメント
5−2 中空糸膜
5−3 ケースハウジング
6−1 円筒状単位ろ過エレメント
6−2 中空糸膜
6−3 封止樹脂
6−4 ケースハウジング
6−5 側面ポート
7−1 円筒状単位ろ過エレメント
7−2 中空糸膜
7−3 ケースハウジング
Claims (7)
- 液体透過性を有する保護筒内の少なくとも片端で樹脂により封止された中空糸膜束からなり、かつ、その横断面が扇型である扇型単位ろ過エレメントの端部封止部の中空糸膜を開口する前に、円筒状を形成するように該ろ過エレメントを2本以上集合させ、少なくとも1個のポートを有するケースハウジング内に挿入し、該ろ過エレメント封止部相互間及びケースハウジング端部と該ろ過エレメント封止部相互間を接着、封止した後、該ろ過エレメントの端部を切断して中空糸膜束を開口させることを特徴とする中空糸型膜モジュールの製造方法。
- 中空糸膜束の両端が樹脂で封止されている、請求項1記載の中空糸型膜モジュールの製造方法。
- 扇型単位ろ過エレメントが互いに接触している請求項1または2記載の中空糸型膜モジュールの製造方法。
- 液体透過性を有する保護筒の厚さが0.5〜8mmである請求項1から3のいずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法。
- 保護筒がネット状である、請求項1から4いずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法。
- 保護筒の両端部が樹脂により固定されている単位ろ過エレメントを用いる、請求項1から5いずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法。
- エンドミルを用いて切断する、請求項1から6いずれかに記載の中空糸型膜モジュールの製造方法。
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