JP4005218B2 - 半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法 - Google Patents

半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法に関する。詳しくは、熱収縮性を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープをシリコンウエハ等の半導体ウエハの集積回路が組み込まれた側の面(以下、ウエハ表面という)に貼着した後、半導体ウエハ裏面研削機へ供給して半導体ウエハの集積回路の組み込まれていない側の面(以下、ウエハ裏面という)を研削した後、加熱により剥離することができる、半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、半導体集積回路(以下、ICという)は、高純度シリコン単結晶等をスライスして半導体ウエハとした後、その表面にエッチング加工等の手段により集積回路を組み込み、さらにウエハの裏面を研削した後、ダイシングしてチップ化する方法で製造されている。
【0003】
近年、半導体チップの小型化が図られるにつれて、ウエハを薄肉化する傾向が進み、従来、裏面研削後のウエハの厚さが200〜400μm程度であったが、チップの種類によっては、50〜150μm程度まで薄くなっている。また、半導体の製造方法が合理化されるのに伴い、ウエハのサイズについても、従来、口径が最大200mm程度であったものが、300mm、400mmへと大型化されることが予想される。
【0004】
ウエハの薄肉化、大口径化は、単にウエハの強度の低下を招くだけでなく、裏面研削中にウエハの破損が生じたり、裏面研削後のウエハの反りが大きくなる問題も生じさせている。ウエハが破損した場合、単にウエハの歩留りが悪くなるだけでなく、ウエハの破片が製造装置の中に入り込み、該装置のメンテナンスが必要になるなど、大幅な生産性の低下につながることもある。
【0005】
通常、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハの表面から剥離する場合は、剥離機と称される装置内において、剥離テープと称する強粘着力の粘着テープを半導体ウエハ表面保護用粘着テープに貼付し、該剥離テープを介して剥離する方法が採用されている。しかし、上記の如きウエハの反りが大きい場合には、剥離テープを半導体ウエハ表面保護用粘着テープに貼付する際に、ウエハの破損が起こったり、剥離テープと表面保護用粘着テープの接着不良による剥がし不良等が生じたりすることがあった。
【0006】
上記の問題を解決する方法として、例えば、特開平8−222535号公報には、表面張力が35dyne/cm未満、ビカット軟化点が100℃以上である剥離フィルムの片面に粘着剤を塗布、乾燥して粘着剤層を設けた後、該粘着剤層の表面に、表面張力が35dyne/cm以上であり、25℃における収縮率が5%未満であり、且つ50〜80℃の温水に浸漬した時の収縮率が5〜50%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体延伸フィルムを押圧して、該粘着剤層を該エチレン−酢酸ビニル共重合体延伸フィルムの片面に転着させて得られた半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを、該粘着剤層を介して半導体ウエハ表面に貼付して、該半導体ウエハ裏面を研削した後、50〜80℃の温水に浸漬し、該半導体ウエハ表面から該半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムの使用方法が開示されている。
当該発明によれば、裏面研削後の厚さが200μm以下で、口径が8インチ程度の半導体ウエハから、半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを剥離する際に、ウエハを破損することなく容易に剥離することができると記載されている。
【0007】
また、特開平7−201787号公報には、熱収縮性のプラスチックフィルムの一面上に、(i)少なくともカルボキシル基の一部が部分中和されたカルボキシル基含有親水性重合体の部分架橋物と、(ii)アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の室温で液状の界面活性剤とを含む粘着剤層が設けられてなるウエハ表面保護シートが開示されている。しかし、上記発明の場合でも、ウエハの口径、裏面研削後の厚み、表面形状によっては粘着フィルムを剥離する際にウエハが破損することがあった。
【0008】
粘着テープを剥離する際に半導体ウエハが破損する問題は、半導体ウエハの口径が大きくなる程、また、裏面研削後のウエハの厚みが薄くなる程、ウエハ裏面の研削方法、研削後の歪みの有無、歪みの程度、等に影響される。また、ウエハの口径が同じであり、且つ、裏面研削後の厚みが同じであっても、スクライブライン(ストリートともいう。ウエハ上のチップをダイシングすることによって分割する際、回転丸刃が通る道)の幅、深さ等、半導体ウエハの表面形状によって、破損し易いウエハがある。スクライブラインの深さ等、ウエハ表面の凹凸が大きい程、破損が生じ易くなる傾向にある。また、上記発明の場合は、熱収縮性の基材を使用していることから、経時による寸法変化が発生し、研削終了後のウエハの反り変形が大きくなり、より破損が生じ易い傾向にあった。
【0009】
近年、半導体ウエハの大口径化、薄肉化およびICの高性能化が進むのに伴い、ウエハ表面への汚染が少なく、且つ、ウエハ裏面の研削時、粘着テープの剥離時およびウエハの搬送時にウエハを破損せず、経時による寸法変化が少なく、研削終了後のウエハの反り変形が小さい、また、作業時間が短縮できる半導体ウエハ表面保護粘着テープが望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、半導体ウエハの裏面研削時、ケミカルエッチング時、半導体ウエハの搬送時、及び半導体ウエハ表面保護用粘着テープの剥離時等におけるウエハの割れを防止し、且つ、研削終了後の反り変形が少ない半導体ウエハ表面保護粘着テープの使用方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、支持体を積層構造にして、粘着剤層を形成しない側の層に熱収縮性を付与した半導体ウエハ表面保護用粘着テープを採用し、それをウエハ表面に貼着した後、半導体ウエハ裏面研削機内で裏面研削を実施し、必要に応じてウエハ裏面を酸でエッチング後、例えば、スピンナー装置を設置しているようなバックグラインド装置、スピンエッチング装置、ダイシング装置などで、ウエハ表面保護用粘着テープに温水を放射することにより加熱して、収縮剥離することにより、半導体ウエハを破損することなく該表面保護用粘着テープを容易に剥離することができ、且つ、該表面保護用粘着テープの剥離工程が省略できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープをその粘着剤層をして半導体ウエハの表面に粘着して、該半導体ウエハの裏面を研削し、研削終了後に剥離する半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法であって、該粘着テープに、ショアD硬度が40以下の基材フィルム(A)の片表面に粘着剤層が設けられ、他の片表面にショアD硬度が40超の補助フィルム(B)が積層され、95℃において60秒間加熱したときの(A)の熱収縮率が5%以下、(B)の該熱収縮率が1〜40%である粘着テープを用い、該粘着テープ剥離時に該粘着テープに70〜95℃の温水を放射して剥離することを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法である。
【0013】
半導体ウエハ表面保護用粘着テープの好ましい態様として、前記補助フィルム(B)が少なくとも1方向に1.5〜8倍延伸された樹脂フィルムである前記の半導体ウエハ表面保護用粘着テープが挙げられる。また、前記基材フィルム(A)の厚み(TA)が30〜300μm、補助フィルム(B)の厚み(TB)が35〜350μmであり、且つ、両者が〔TA<TB〕の関係にある前記半導体ウエハ表面保護用粘着テープが挙げられる。そして、前記基材フィルム(A)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び低密度ポリエチレンから選ばれた樹脂フィルムが挙げられ、前記補助フィルム(B)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれた樹脂フィルムが挙げられる。
【0014】
また半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、半導体ウエハの裏面研削時、または、半導体ウエハの裏面研削時及びケミカルエッチング時の表面保護用として好適に使用される。
【0015】
さらにまた、温水の放射を、半導体ウエハの表面と半導体ウエハ表面保護用粘着テープの粘着剤層との界面に放射することが好ましい態様である。
【0016】
半導体ウエハ表面保護用粘着テープの他の使用方法として、半導体ウエハの裏面研削終了後、ケミカルエッチングを実施し、その後、剥離する半導体ウエハ表面保護用粘着テープの前記使用方法が挙げられる。また、半導体ウエハの裏面研削終了後、ケミカルエッチングを実施し、次いで、半導体ウエハの表面にダイシング用粘着テープを貼着し、その後剥離する前記半導体ウエハ表面保護用粘着テープの前記使用方法が挙げられる。
【0017】
本発明によれば、口径が100〜300mmである半導体ウエハの裏面を厚み50〜200μm程度まで薄く研削する場合であっても、基材フィルム(A)が柔軟性を有するために、半導体ウエハが破損することがない。
【0018】
表面保護用粘着テープの支持体が、柔軟性を有する基材フィルム(A)と熱収縮性を有する補助フィルム(B)との2層構造となっているため、研削終了後の半導体ウエハの反り変形が小さい。特に、半導体ウエハの裏面研削を終了した後、該ウエハの表面に表面保護用粘着テープを貼着した状態で、ケミカルエッチングを実施すると、半導体ウエハの反り変形が小さい。そのため、研削終了後の半導体ウエハをキャリアケースに収納する際、搬送する際、および表面保護用粘着テープを剥離する際に、半導体ウエハが破損することがない。
【0019】
また、半導体ウエハの裏面研削、又は、裏面研削及びケミカルエッチングを終了した後、該ウエハの表面に表面保護用粘着テープを貼着した状態で、ダイシング工程へ搬送し、該ウエハの裏面にダイシング用粘着テープを貼着した後、表面保護用粘着テープを剥離する方法を採用することにより、バックグラインド工程からダイシング工程までの搬送中、カセットなどに接触すること等によってウエハが飛び散って割れることがない。さらに、ダイシング装置内で表面保護用粘着テープの加熱媒体として温水(純水)を用いて収縮剥離を実施すれば、洗浄工程を省略することができる。よって、本発明の好ましい態様を採用することにより、半導体ウエハの裏面研削からウエハ表面の洗浄に至る一連の工程を短時間で実施することができ、作業時間の短縮が可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明で使用する半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、柔軟性を有する基材フィルム(A)と、熱収縮性を有する補助フィルム(B)とを積層し、該積層体の基材フィルム(A)側の表面に粘着剤層を形成することにより製造される。基材フィルム(A)側の表面に粘着剤層を形成する方法として、例えば、剥離フィルムの片表面に粘着剤を塗布、乾燥して粘着剤層を形成した後、得られた粘着剤層を上記積層体の基材フィルム(A)側の表面に転着する方法が挙げられる。半導体ウエハ表面保護用粘着テープを保存、輸送等する間、粘着剤層を保護するため、該粘着剤層の表面に、通常、セパレーターと称する剥離フィルムが貼着されているものが好ましい。
【0021】
基材フィルム(A)、及び補助フィルム(B)の材質としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等を主体とする重合体、又はそれらの共重合体であるポリオレフィン樹脂フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムが挙げれる。これらの内、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の各フィルムが好ましい。基材フィルム(A)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び低密度ポリエチレンの各フィルムがより好ましい。また、補助フィルム(B)としては、剛性と耐衝撃性のバランスに優れる、プロピレン−エチレンランダム共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の各フィルムがより好ましい。
【0022】
半導体ウエハの裏面を研削する際、ウエハの破損を防止することを考慮すると、基材フィルム(A)は柔軟性を有することが好ましい。具体的には、ショアD硬度が40以下であることが好ましい。熱収縮性は小さい方がよい。具体的には、95℃において60秒間加熱したときの熱収縮率が5%以下であることが好ましい。熱収縮率が5%を超えると、半導体ウエハの裏面を研削した後のウエハの厚み精度が低下したり、ウエハの反りが大きくなる傾向にあるので好ましくない。
【0023】
基材フィルム(A)の厚みは、保護する半導体ウエハの形状、表面状態、研削の方法、研削条件、又は、表面保護用粘着テープの切断、貼付等の作業性により適宜決められるが、通常、30〜300μmである。好ましくは40〜200μmである。
【0024】
補助フィルム(B)は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるものが好ましい。かかる点を考慮すると、補助フィルム(B)のショアD硬度が40を超えるものが好ましい。ショアD硬度が40以下であると、半導体ウエハ表面保護用粘着テープをウエハ表面に貼着する際、シワや気泡が発生しハンドリング性が低下する。
【0025】
補助フィルム(B)としては、95℃において60秒間加熱したとき、少なくとも1方向の熱収縮率が1〜40%であるものが用いられる。好ましくは15〜35%である。上記条件の熱収縮率が10%未満である場合は、半導体ウエハ表面から加熱による収縮剥離において、充分な剥離がなされない場合ある。又、40%を超える場合には、フィルムの経時変化が大きく、粘着テープとして機能しない場合がある。
【0026】
補助フィルム(B)の厚みは、基材フィルム(A)と同様、保護する半導体ウエハの形状、表面状態、研削の方法、研削条件、又は表面保護用粘着テープの切断、貼付等の作業性により適宜決められる。通常、35〜350μmである。好ましくは45〜250μmである。
【0027】
本発明で使用する半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、基材フィルム(A)と補助フィルム(B)を積層し、得られた積層体の基材フィルム(A)側の表面に粘着剤層が形成される。かかる構造を考慮したとき、基材フィルム(A)の厚み(TA)と補助フィルム(B)の厚み(TB)とは、〔TA<TB〕の関係にあるものが好ましい。基材フィルム(A)及び補助フィルム(B)の厚みが、それぞれ上記厚みであり、且つ、〔TA<TB〕の関係にあると、半導体ウエハ表面から表面保護用粘着テープを熱剥離する際、補助フィルム(B)が収縮して、補助フィルム(B)を内側にしてカール状を呈するので半導体ウエハ表面から容易に剥離される。両者の関係が上記と逆の関係にあると、半導体ウエハ表面から剥離し難い傾向にあるので好ましくない。
【0028】
本発明で用いる上記(A)、及び(B)の各フィルムには、必要に応じて他の樹脂、例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン等を混合してもよい。他の樹脂を混合する場合は、フィルムのブツ、フィッシュアイ等の発生を考慮すると、上記樹脂100重量部に対し、10重量部以下が好ましい。さらに、上記(A)、及び(B)の各フィルムには、ブロッキング防止剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐候安定剤、耐放射線剤、顔料、染料等の添加剤を添加してもよい。
【0029】
上記基材フィルム(A)及び補助フィルム(B)の製造方法には特に制限はなく、押出成形法、カレンダー成形法等、公知の方法で製造されたものでよい。成形温度は、原料樹脂(ペレット)のガラス転移点、または軟化点以上、分解温度未満の温度で差し支えない。
【0030】
熱収縮性を付与するには、少なくとも1方向に延伸することが好ましい。延伸倍率は、ウエハ裏面研削後、表面保護用粘着テープをウエハ表面から剥離する際の剥離性、作業性等に影響を及ぼす。延伸倍率が低いとウエハ表面から剥離する際に熱をかけた場合、表面保護用粘着テープの熱収縮および/またはカールが充分に起こらず、剥離性が低下する傾向にある。かかる点を考慮すると、延伸倍率は、少なくとも1.5倍、好ましくは2.0倍以上である。延伸方向は、1方向であっても2方向であっても良い。好ましくはフィルムの縦方向の1軸方向である。延伸倍率の上限は、延伸時の破れ等を考慮すると8倍程度である。
【0031】
延伸方法にも特別な制限はなく、ロール圧延法、ロール延伸法等による縦1方向延伸法、テンター機を用いる縦横逐次2方向延伸法、テンター機を用いる縦横同時延伸法等、公知の延伸方法でよい。延伸温度は、40〜150℃、好ましくは70〜120℃である。
【0032】
基材フィルム(A)の少なくとも粘着剤を形成しようとする面の表面張力は、剥離フィルムの粘着剤層が形成される側の面の表面張力より高いことが重要である。基材フィルム(A)は、通常、表面張力の絶対値が如何なる値であっても剥離フィルムの表面張力よりも高い表面張力を有するフィルムであれば用いることができる。剥離フィルムから転着した後の基材フィルム(A)への粘着剤層の密着性等を考慮すると、基材フィルム(A)の表面張力は35dyne/cm以上の表面張力を有するフィルムであることを基準として選定することが好ましい。表面張力が低いと粘着剤層と基材フィルム(A)との密着性が低下し、粘着剤層の剥離フィルムからの転着が良好に行えない。基材フィルム(A)の表面張力を高くする方法としては、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0033】
本発明に係わる基材フィルム(A)と補助フィルム(B)の積層支持体は公知の方法より製造できる。例えば、予め製造された基材フィルム(A)と補助フィルム(B)のいずれか片方に接着剤を塗布して重ねて貼り合わせる方法、予め製造された一方のフィルムに他方の樹脂をTダイ法もしくはカレンダー法により積層する方法、予め製造された基材フィルム(A)の片側と補助フィルム(B)の片側それぞれにコロナ放電処理を施し、それぞれの表面張力を高くして、コロナ放電処理面を重ねて貼り合わせる方法、等の方法が挙げられる。
【0034】
表面保護用粘着テープに用いる剥離フィルムは、本質的には、表面張力の絶対値が如何なる値であっても基材フィルム(A)のそれよりも低い表面張力を有するフィルムであればよい。また、剥離フィルムの耐熱性は、その表面に塗布された粘着剤の乾燥性に影響する。耐熱性が低いと粘着剤の乾燥温度を低温とする必要があり、乾燥に長時問を要し短時間で効率よく乾燥することができない。また、例えば、乾燥炉内で剥離フィルムが熱収縮を起こすことがあり、剥離フィルムに皺が発生する等の不具合が生じ、均一な厚みを有する粘着剤層が形成されないことがある。かかる観点から、剥離フィルムは、所定の耐熱性を有することが好ましい。耐熱性の判断基準として、100℃以上のビカット軟化点を有することが好ましい。上記条件を満たす限り、剥離フィルムの種類には特に制限はない。単層フィルムであっても、また、積層フィルムであってもよく、市販品の中から適宜選択できる。
【0035】
具体的な剥離フィルムの例としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系樹脂等、またはそれらの混合物から製造されたフィルムが挙げられる。好ましくは、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムおよぴポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。これらのフィルムの製造方法には特に制限はなく、押出成形法、カレンダー成形法等公知の方法で製造されたもので差支えなく、また、成形温度は、原料樹脂のガラス転移点または軟化点以上、分解温度未満の温度であれば差支えない。
【0036】
また、粘着剤層の剥離フィルムからの剥離応力を小さくする目的で、剥離フィルムの粘着剤を塗布する表面に粘着剤層を汚染しない範囲において、シリコン系等の剥離剤を塗布しても差し支えない。剥離フィルムの厚さは、乾燥条件、粘着剤層の種類および厚さ、または半導体ウエハ表面保護粘着テープの加工条件、加工方法等により異なるが、通常、10〜1000μmである。好ましくは20〜100μmである。粘着剤層の表面から剥離フィルムを剥離するのは、表面保護用粘着テープとして使用する直前が好ましい。
【0037】
表面保護用粘着テープに用いられる粘着剤層としては、研削するウエハ表面形状、口径、表面保護膜の種類、裏面研削量等の条件に合わせて設計されたものであれば、いずれでも用いることができ、粘着ポリマー、架橋剤、添加剤等を含有する塗工液(溶液または、エマルジョン液)を基材フィルム(A)または剥離フィルムに塗工することにより形成される。
【0038】
粘着剤ポリマーとしては、特に制限はなく、市販品等の中から適宜選択できるが、粘着性、塗布性、ウエハ表面の非汚染性等の点からアクリル系粘着剤が好ましい。このようなアクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルモノマー、およびカルボキシル基、水酸基等の官能基を有するモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られる。更に、必要に応じてそれらと共重合可能なビニルモノマー、多官能性モノマー、内部架橋性モノマー等を共重合することができる。
また、粘着剤ポリマーとしてエマルジョン系のものを用いれば、後述する温水による加熱剥離工程において、ウエハ表面が洗浄される効果がある。
【0039】
アクリル酸アルキルエステルモノマーとして、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、へキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート等が挙げられる。これらのモノマーの側鎖アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。また、上記のアクリル酸アルキルエステルモノマーは目的に応じて2種以上併用しても良い。
【0040】
官能基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するモノマー、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基を有するモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノアクリレート、ジメチルアミノメタクリレート等が挙げられ、その他共重合可能なモノマーとして酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0041】
粘着剤ポリマーの重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられるが、粘着剤の製造コスト、モノマーの官能基の影響および半導体ウエハ表面へのイオンの影響、等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジターシャルブチルパーオキサイド、ジターシャルアミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0042】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。半導体ウエハ表面へのイオンの影響を考慮すれば、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物がさらに好ましい。
【0043】
上記のようにして得られた粘着剤ポリマーは、官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤によって架橋されることが好ましい。この架橋剤は、粘着剤ポリマーが有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス−アジリジンカルボキシアミド、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。
【0044】
これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記架橋剤の中で、エポキシ系架橋剤は架橋反応の速度が遅く、反応が十分に進行しない場合には粘着剤層の凝集力が低くなり、半導体ウエハ表面の凹凸によっては粘着剤層に起因する汚染が生じることがある。したがって、適宜、アミン等の触媒を添加するか、もしくは触媒作用のあるアミン系官能基をもつモノマーを粘着剤ポリマ一に共重合するか、架橋剤を使用する際にアミンとしての性質を有するアジリジン系架橋剤を併用することが好ましい。
【0045】
架橋剤の添加量は、通常、架橋剤中の官能基数が粘着剤ポリマー中の官能基数よりも多くならない程度の範囲で添加するのが好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合、架橋反応が遅い場合、等には必要に応じて過剰に添加してもよい。通常、ウエハ裏面研削時にウエハ表面に貼着する表面保護用粘着テープの粘着力は、ウエハ裏面の研削条件、ウエハの口径、研削後のウエハの厚み等を勘案して適宜設定されるが、通常、JIS−Z0237に規定される方法に準拠して、被着体としてSUS−BA板を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件下で測定した粘着力が10〜1000g/25mm、好ましくは30〜600g/25mm程度である。
目安としては、粘看剤ポリマー100重量部に対し、架橋剤0.1〜30重量部を添加して調整する。好ましくは0.3〜15重量部である。
【0046】
また、粘着剤には必要に応じて、ウエハ表面を汚染しない程度に、界面活性剤等の添加剤を含有させてもよい。特に界面活性剤を含有することにより、後述する温水による加熱剥離工程において、ウエハ表面が洗浄される効果がある。界面活性剤は、ウエハ表面を汚染しないものであれば、ノニオン性でもアニオン性でも使用することができる。ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、アルキルジフェニールエーテルジスルフォネートおよびその塩、ビスナフタレンスルフォネートおよびその塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸エステルおよびその塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルおよびその塩等が挙げられる。
【0047】
上記例示した界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の添加量は、粘着剤ポリマーと架橋剤の合計重量、すなわち、架橋した粘着剤ポリマー100重量部に対して0.05〜5重量部が好ましい。より好ましくは0.05〜3重量部である。
【0048】
基材フィルム(A)または剥離フィルムの片表面に粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えばロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において10秒〜10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80〜170℃において15秒〜5分間乾燥する。粘着剤層の厚みは、半導体ウエハの表面状態、形状、裏面の研削方法等により適宜決められるが、半導体ウエハの裏面を研削している時の粘着力、研削が完了した後の剥離性等を勘案すると、通常、2〜100μm程度である。好ましくは5〜70μm程度である。
【0049】
上記のようにして剥離フィルムの表面に粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の表面に上記基材フィルム(A)を積層し、押圧して粘着剤層を基材フィルム(A)の表面に転着する。転着する方法は、公知の方法で差しつかえない。例えば、剥離フィルムの表面に形成された粘着剤層の表面に基材フィルムAを重ねて、それらをニップロールに通引して押圧する方法等が挙げられる。こうして得られる半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、ロール状とするか、または、所定の形状に切断した後、保管、輸送等に供される。
【0050】
次に、半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法について説明する。
半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、その粘着剤層を介して半導体ウエハの表面に貼着される。そして、半導体ウエハは、表面保護用粘着テープの積層支持体を介してウエハ裏面研削機のチャックテーブル等に固定される。次いで、研削機によりウエハ裏面が所定の厚さまで研削される。研削の際に、研削面に冷却水が注水されることが一般的である。
【0051】
研削が終了した後、研削面に純水を注水する等して研削屑等を除去した後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、フッ化水素酸や硝酸、硫酸、酢酸等の単独もしくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着フィルムを貼着した状態で半導体ウエハを浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、半導体ウエハ裏面に生じた歪みの除去、ウエハのさらなる薄肉化、酸化膜の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は上記の目的に応じて適宜選択される。
【0052】
裏面研削、または、裏面研削及びケミカルエッチング終了後、表面保護用粘着テープを貼着したままダイシング工程、若しくは剥離工程ヘと搬送する。ダイシング工程内で剥離する場合には、半導体ウエハ裏面をチャックテーブルに固定した如く、ダイシング用テープを貼付けて固定する。この時、ダイシング用テープを貼付ける方法として、予め、リング状のフレームにダイシング用テープをセットとしておいてから、表面保護用粘着テープを貼着したままの半導体ウエハをマウントとしてもよい。また、リング状のフレームと表面保護用粘着テープを貼着したままの半導体ウエハを同時にダイシング用テープに貼着してもよい。
【0053】
リング状のフレームにマウントする方法は特に制限はない。マウントする装置としては、例えば、(株)タカトリ製、形式:ATM−8100、日東電工(株)製、形式:MA−1508N、古河電気工業(株)製、形式:UCTM−03−8等が挙げられる。ダイシング用テープとしては、例えば、日東電工(株)製、商品名:UE−2092J、古河電気工業(株)製、商品名:UCシリーズ、CDシリーズ、リンテック(株)製、商品名:Dシリーズ等が挙げられる。
【0054】
ダイシング用テープがリング状フレームに弛みなく貼り付けられることにより、リング状フレームの中央部分に貼付けられた半導体ウエハを補強する効果がある。さらには、表面保護用粘着テープを加熱、収縮により剥離した後には、そのままダイサー機に移行することもできる。
【0055】
表面保護用粘着テープを加熱、収縮させて剥離する方法として、温水を放射して加熱する方法が挙げられる。温水放射の方法は、表面保護用粘着テープの粘着剤層と半導体ウエハの表面の界面付近に温水を供給することが好ましい。該界面付近に積極的に温水を供給すれば、表面保護用粘着テープの熱収縮性補助フィルム(B)の収縮を端面から比較的選択的に発生させることができ、且つ、収縮速度に毛管現象を追従させることができ、界面粘着力を低下せしめる効果が増大する。
【0056】
温水は、半導体ウエハ表面を汚染させないものを用いることが好ましい。さらに、表面保護用粘着テープの剥離時に温水を放射することで、同時にウエハ表面が洗浄される効果もある。このような洗浄効果を考慮した場合においても、温水放射方法として、表面保護用粘着テープの粘着剤層とウエハ表面の界面付近に温水を供給することが好ましい。
【0057】
さらに、表面保護用粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤ポリマーとして、エマルジョン系粘着剤ポリマーを用いたり、粘着剤層に界面活性剤を含有させることにより、上記の洗浄効果を一層高めることができ、専用の洗浄工程を省略することもできる。
【0058】
温水の温度は、表面保護用粘着テープの積層支持体フィルム(基材フィルムAと補助フィルムBを積層したフィルム)の延伸倍率、半導体ウエハの表面形状等に応じて、70℃〜95℃の範囲で適宜選択し得る。温水放射時間も半導体ウエハ表面からの剥離性に影響を及ぼす。温水放射時間は、表面保護用粘着テープの粘着力、半導体ウエハの口径等によって異なるが、作業性等を考慮すると、通常、1〜60秒間、好ましくは10〜30秒間である。洗浄工程を削減する場合においては、0.5〜10分間、好ましくは1〜5分間である。
【0059】
表面保護用粘着テープを剥離した後、収縮した表面保護用粘着テープが半導体ウエハ上に残存することがあるが、これは、マウントを回転させたり、温水をさらに供給することにより容易に除去することができる。表面保護用粘着テープを収縮剥離する際に、マウントを回転させたり、温水の放射量を多くすれば、剥離と同時に表面保護用粘着テープを除去することも可能となるため、さらに工程を簡略化することができる。表面保護用粘着テープの除去終了後、ダイシング装置へ搬送し、半導体ウエハはチップ毎に切断される。
【0060】
なお、本発明においては、表面保護用粘着テープの剥離が簡便な為、剥離工程をバックグラインド装置内、エッチング装置内、およびダイシング装置内などで行なうことができる。この際、従来の装置に温水放射装置を取り付けるだけでよい。
【0061】
本発明が摘要できる半導体ウエハのサイズは、直径が100〜300mmのものである。今後、半導体ウエハのサイズは、直径が400mm程度となることが予想されるが、その場合にも充分に摘要できる。本発明が適用できる半導体ウエハとしては、シリコンウエハ、ゲルマニウム、ガリウム−砒素、ガリウム−砒素−アルミニウム等が挙げられる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例に示した各種特性値は下記の方法で測定した。
(1)基材フィルムAおよび補助フィルムBの収縮率(%)
フィルムの任意の箇所を選択し、縦横それぞれ10cmの正方形の試料片を15枚作成する(この時、予め縦方向に印を付けておく)。95℃に調節された温水中に60秒間浸漬し、取り出した後、24時間常温で放置する。縦方向(機械方向)の試料片の長さを測定して、温水浸漬前後の長さから収縮率を求める。
収縮率(%)={(温水浸漬前の試験片長さ−温水浸漬後の試験片長さ)/温水浸漬前の試験片長さ}×100
【0063】
(2)半導体ウエハの反り変形量(μm)
裏面研削終了後、粘着テープ剥離前のシリコンミラーウエハ(径:200mm)のXY軸の全幅を5mm/秒で移動しながら高さを測定し、最大値と最小値の差を反り変形量とした。測定装置は、シグマ光機(株)製の「かんたん計測システム/EMS97−300X」を用いた。また、付属のセンサーは、(株)キーエンス製のLK−030、LK−2000、LK−C2、RD−50R、KZ−U3を用いた。
(3)ショアD硬度の測定
ASTM−D−2240に準ずる。試験片は、縦150mm×横150mm×厚み6mmのプレス成形品を用いた。
(4)ウエハの破損数(枚)
幅100μm、深さ5μmのスクライブラインが1cm間隔で縦横に端部まで形成されたシリコンミラーウエハを50枚、裏面研削をする際に破損した枚数、裏面研削後にカセットに収納する際に破損した枚数、温水放射により剥離する際に破損した枚数、をそれぞれ示す。
【0064】
実施例1
<粘着剤塗布液の製造>
重合反応機に脱イオン水148重量部、アニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩〔日本乳化剤(株)製、商品名:Newcol−560SF、50重量%水溶液〕2重量部(界面活性剤単体として1重量部)、重合開始剤として4,4’−アゾビス−4一シアノバレリックアシッド〔大塚化学(株)製、商品名:ACVA〕0.5重量部、アクリル酸ブチル74重量部、メタクリル酸メチル14重量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル9重量部、メタクリル酸2重量部、アクリルアミド1重量部を添加し、撹枠下で70℃において9時間乳化重合を実施し、アクリル樹脂系水エマルジョンを得た。これを14重量%アンモニア水で中和し、固形分約40重量%の粘着剤ポリマー(主剤)エマルジョンを得た。得られた粘着剤主剤エマルジョン100重量部(粘着剤ポリマー濃度約40重量%)を採取し、さらに14重量%アンモニア水を加えてpH9.3に調整した。次いで、アジリジン系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、商品名:ケミタイトPZ−33〕2重量部、および造膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル5重量部を添加して粘着剤塗布液を得た。
【0065】
<積層支持体フィルムの製造>
補助フィルムBの製造:Tダイ押出法によりエチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂〔MFI(ASTM−D−1238、230℃、2.16荷重)4g/10min、比重(ASTM−D−792)0.9、エチレン含有量5.5wt%、ショアD硬度98〕フィルムを90℃にてロール延伸法にて縦方向に3倍延伸し、厚さ80μmの一軸延伸フィルムとした。この際、基材フィルムAを積層する片表面にコロナ放電処理を施し、表面張力を50dyne/cmとし、これを補助フィルムBとして用いた。
基材フィルムAの製造:ショアD硬度が38のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をTダイ押出機を用いて、厚さ60μmのフィルムを製膜した。この際、補助フィルムBを積層する面と粘着剤層を形成する両面にコロナ処理を施し、両面の表面張力を50dyne/cmとし、これを基材フィルムAとして用いた。
次に基材フィルムAと補助フィルムBのコロナ放電処理を施した面を2kg/cm2の圧力で押圧し、重ね合わせ、これを積層支持体フィルムとして用いた。補助フィルムBおよび基材フィルムAの熱収縮率を前記の方法にて測定した、結果を〔表1〕に示す。
【0066】
<表面保護用粘着テープの製造>
Tダイ押出法にて製膜された厚さ50μm、ビカット軟化点140℃、片表面の表面張力が30dyne/cmであるポリプロピレンフィルムを剥離フィルムとして用い、ロールコーター法により該剥離フィルムの該片表面に上記方法により得られたアクリル系樹脂水エマルジョン型粘着剤を塗布し、100℃において60秒間乾燥し、剥離フィルムの表面に厚さ10μmのアクリル系粘看剤層を設けた。
剥離フィルムの表面に設けられたアクリル系粘着剤層の表面に積層支持体フィルムのコロナ放電処理面(基材フィルムAの片表面)を重ね合わせて積層し、2kg/cm2の圧力で押圧し、該粘着剤層を積層支持体フィルムの表面に転着させて、粘着力250g/25mmの半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
【0067】
<表面保護用粘着テープの使用>
得られた半導体ウエハ表面保護粘着テープを、表面に幅100μm、深さ5μmのスクライブラインが端面まで1cm間隔で縦横に形成されたシリコンミラーウエハ(直径200mm、厚み700μm)50枚の表面にテープ貼り機〔(株)タカトリ製「ATM1100E」〕を使用して貼着し、バックグラインド装置〔(株)ディスコ製「DFG841」〕へ供給した。研削機内では、最初に粗研削、次いで仕上げ研削、最後に裏面洗浄を実施した。すなわち、裏面研削機内で、該パターンウエハを研削速度300μm/分で厚み170μmまで粗研削し、次いで、20μm/分で100μmまで仕上げ研削した。最後に、バックグラインド装置内のスピンナーにて裏面を洗浄後、さらにウエハを反転させて表裏を反対にし、ウエハ表面に貼着された表面保護用粘着テープに95℃の温水(流量30ml/秒)を15秒間放射し、該テープを剥離した。その後3000rpmで回転させ乾燥後、スピンナーから取り出してカセットに収納した。50枚すべてのウエハは破損することなく収納することができた。得られた結果を〔表1〕に示す。
【0068】
実施例2
実施例1の補助フィルム(B)の製造において、エチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂〔MFI(ASTM−D−1238、230℃、2.16荷重)4g/10min、比重(ASTM−D−792)0.90、エチレン含有量5.5wt%、ショアD硬度98〕フィルムを90℃にてロール延伸法にて縦方向に2.5倍延伸し、厚さ80μmの一軸延伸フィルムとした以外は、全て実施例1と同様な試験を行なった。得られた結果を〔表1〕に示す。
【0069】
実施例3
実施例1の基材フィルム(A)の製造において、ショアD硬度が32のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をTダイ押出機を用いて、厚さ60μmのフィルムを製膜した以外は、全て実施例1と同様な試験を行なった。得られた結果を〔表1〕に示す。
【0070】
実施例4
実施例1の補助フィルム(B)の製造において、ショアD硬度45のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂〔MFI(ASTM−D−1238、190℃、2.16荷重)1.5g/10min〕フィルムを50℃にて縦方向に2.6倍延伸し、厚さ80μmの一軸延伸フィルムとした以外は、全て実施例1と同様な試験を行なった。得られた結果を〔表1〕に示す。
【0071】
実施例5
実施例1の表面保護用粘着テープの使用において、得られた半導体ウエハ表面保護粘着テープを、表面に幅100μm、深さ5μmのスクライブラインが端面まで1cm間隔で縦横に形成されたシリコンミラーウエハ(直径200mm、厚み700μm)50枚の表面にテープ貼り機〔(株)タカトリ製「ATM1100E」〕を使用して貼着し、バックグラインド装置〔(株)ディスコ製「DFG841」〕へ供給した。研削機内では、最初に粗研削、次いで仕上げ研削、最後に裏面洗浄を実施した。すなわち、裏面研削機内で、該パターンウエハを研削速度300μm/分で厚み170μmまで粗研削し、次いで、20μm/分で100μmまで仕上げ研削した。最後に、バックグラインド装置内のスピンナーにて裏面を洗浄後、3000rpmで回転させ乾燥、スピンナーから取り出してカセットに収納した。50枚すべてのウエハは破損することなく収納することができた。また、反り変形量を測定したところ300μmであった。
【0072】
次いで、23℃に保たれた61%硝酸3000mlと47%フッ化水素酸600mlの混合酸に2分間浸漬し、裏面を95μmまでエッチングした。この時、エッチングにともなう酸の浸入、割れはなかった。この後、ウエハの反り変形量を測定したところ、140μmであった。
次いで、ダイシング工程へと搬送した。マウンター装置として、(株)タカトリ製「ATM−8100」、ダイシング用テープとして、日東電工(株)製「UE−2092J」を用い、リング状フレームにウエハをマウントした。該マウント状態のまま、冷却水ラインを変更したフリーオートマチックダイシングソー、(株)ディスコ製「DFD−650」へ搬送した。温水ノズルから90℃の温水を毎分5リットルで表面保護用粘着テープの粘着剤層とウエハの界面に放射し、表面保護用粘着テープが収縮、カールして剥離するに従い、剥離界面部分に温水を放射し続けることで表面保護用粘着テープを剥離させ、ウエハ状から表面保護用粘着テープを除去した。この時、該粘着テープの剥離にともなうウエハの破損は全くなかった。
【0073】
【表1】
Figure 0004005218
【0074】
比較例1
実施例4の基材フィルム(A)の製造において、ショアD硬度が45のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルム用い、補助フィルム(B)の製造において、ショアD硬度が38のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いた以外は全て実施例4と同様な評価を行なった。得られた結果を〔表2〕に示す。
【0075】
比較例2
実施例4の基材フィルム(A)の製造において、ショアD硬度38のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂〔MFI(ASTM−D−1238、190℃、2.16荷重)1.5g/10min〕フィルムを50℃にて縦方向に2.6倍延伸し、厚さ60μmの一軸延伸フィルムとし、補助フィルム(B)の製造において、ショアD硬度が45のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルムを未延伸とした以外は、全て実施例4と同様な評価を行なった。得られた結果を〔表2〕に示す。
【0076】
比較例3
実施例4の補助フィルム(B)の製造において、延伸倍率を1.4倍とした以外は、全て実施例4と同様な評価を行なった。ウエハの破損において、研削中、搬送中は問題なく行われたが、剥離中においては収縮不足のため、28枚のウエハに剥離不良がみられ、4枚のウエハが破損した。得られた結果を〔表2〕に示す。
【0077】
比較例4
実施例1の補助フィルム(B)の製造において、延伸倍率を1.2倍とした以外は、全て実施例1と同様な評価を行なった。得られた結果を〔表2〕に示す。
【0078】
比較例5
実施例4において、基材フィルム(A)を用いず、補助フィルム(B)単層で用いた以外は全て実施例4と同様な評価を行なった。研削後の反り変形量は、450μm、ウエハ破損数は、研削中14枚、搬送中6枚、剥離中10枚、計30枚が破損した。得られた結果を〔表2〕に示す。
【0079】
【表2】
Figure 0004005218
【0080】
【発明の効果】
本発明は、2層構造として、その内の一層が熱収縮性を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープを裏面研削後の半導体ウエハ表面から剥離する際に、ウエハの反り変形を低減させ、且つウエハ表面に温水を放射することで、表面保護用粘着テープに熱収縮を発生させ、温水が粘着剤層とウエハ間への浸透を促し、粘着テープの粘着力を低下させながら、粘着テープを剥離することを特徴とする。これより半導体ウエハ表面保護粘着テープ剥離工程において、剥離時のウエハの破損を生じることなく、容易に該粘着テープを剥離することができる。さらには、粘着剤の組成を選択すれば、剥離操作によりウエハ表面の洗浄を兼ねることもでき、作業時間の短縮などさらなる合理化を可能とする。

Claims (8)

  1. 半導体ウエハ表面保護用粘着テープをその粘着剤層を介して半導体ウエハの表面に貼着して、該半導体ウエハの裏面を研削し、研削終了後に剥離する半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法であって、
    該粘着テープに、ショアD硬度が40以下の基材フィルム(A)の片表面に粘着剤層が設けられ、他の片表面にショアD硬度が40超の補助フィルム(B)が積層され、
    95℃において60秒間加熱したときの(A)の熱収縮率が5%以下、(B)の該熱収縮率が1〜40%である粘着テープを用い、
    該粘着テープ剥離時に該粘着テープに70〜95℃の温水を放射して剥離することを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  2. 補助フィルム(B)が少なくとも1方向に1.5〜8倍延伸された樹脂フィルムである請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  3. 基材フィルム(A)の厚み(TA)が30〜300μm、補助フィルム(B)の厚み(TB)が35〜350μmであり、且つ、両者が〔TA<TB〕の関係にある請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  4. 基材フィルム(A)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び低密度ポリエチレンから選ばれた樹脂フィルム、補助フィルム(B)がプロピレン−エチレンランダム共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれた樹脂フィルムである請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  5. 温水の放射を、半導体ウエハの表面と半導体ウエハ表面保護用粘着テープの粘着剤層との界面に放射することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  6. 粘着剤層がエマルジョン系粘着剤ポリマーおよび/または界面活性剤を含有するものである事を特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  7. 半導体ウエハの裏面研削終了後、ケミカルエッチングを実施し、その後、剥離することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
  8. 半導体ウエハの裏面研削終了後、ケミカルエッチングを実施し、次いで、半導体ウエハの裏面にダイシング用粘着テープを貼着し、その後剥離することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法。
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