JP4004995B2 - 教習コース選択システムおよび方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車運転免許の教習時に使用するシミュレータ装置を利用した教習システムに関し、特に、シミュレータ装置から取得したデータを利用してシミュレータ教習または実技教習時の教習コースを選択するシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車運転教習所では、交通法規などを講義により学習する学科教習、および実際に自動車に乗車し運転技術を学ぶ実技教習を行っている。また、教習所内に運転シミュレータを設置し、教習者にこれを使用させることによって、危険予測方法や運転技術を教習させることも行っている。
【0003】
このように教習者は種々の教習を受けなければならないが、教習生が限られた時間の中で効率よく運転免許証を取得できるように「合宿教習所」や、教習所に設定された「短期間教習コース」、「集中教習コース」など短期間で運転免許証が取得できる様々な工夫が思考されている。
【0004】
また一方で、さらに効率的かつ効果的な自動車の教習を提供するべく、いくつかの技術が公開されている。下に示す特許文献1では、シミュレータ装置が教習者の運転技量を基本のシミュレーション・プログラムによるシミュレーションで取得し、取得した教習生の運転技量の程度を演算して教習者に合ったシミュレーション・プログラムをコンピュータで生成する。そして、教習者の運転技量における弱点場面を多く含んだシミュレーション・プログラムを提供して教習者の運転技量を向上させることが記載されている。
【0005】
また、下に示す特許文献2には、教習車毎に携帯端末装置を備え、該携帯端末装置を介して教習情報を参照または入力するようにすることで、教習原簿を不要とする効率的な自動車教習システムを提供することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−61923号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2001−205581号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
学科教習と実技教習は別々に行われる。したがって、実技教習時に教官は、教習原簿を参照することにより教習者がどの時限の学科教習または実技教習を修了したかを知ることはできるが、どの部分の交通法規の理解が不足しているかを知ることは難しい。
【0009】
また、上述における特許文献1に記載の技術は、教習者の運転技量に合ったプログラムをコンピュータで生成し教習者の苦手としているシミュレーション上における教習コース路を提供するといった運転技量のみに基づいたシミュレーション教習における改善技術である。よって、運転技量のみならず教習者の交通法規の理解度にリンクさせ、効果的に路上運転技術を向上させる教習を行うための技術が望まれていた。
【0010】
従って、本発明は、上記の問題を解決するべく、シミュレータ装置から取得した操作データおよび交通法規の理解に関するデータを利用した教習コースの自動選択システムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の教習コース選択システムは、請求項1の発明によると、シミュレーション映像を表示するディスプレイ装置および前記シミュレーション映像に応じて教習者が運転操作をおこなうための操作機器を備える運転シミュレータによる教習に関連して、教習コースを選択する教習コース選択システムであって、シミュレーション・プログラムの実行時における教習者の運転操作情報を格納する操作情報データベースと、前記操作情報データベースから前記運転操作情報を取得し、該運転操作情報と所定の基準値とを比較して運転技能を判定する運転技能判定手段と、前記ディスプレイ装置を用いた交通法規試験の成績をそれぞれの教習者について格納する交通法規成績データベースと、複数の教習コース情報を格納した教習コースデータベースを含み、前記判定した運転技能および交通法規試験の成績に基づいて、前記教習者に適した教習コース情報を教習コースデータベースから選択する教習コース選択手段と、を備える。
【0012】
この発明によると、教習者の運転技能と交通法規試験の成績に基づいて教習コースが選択されるため、これを利用することで教習者の交通法規習得段階および運転技能に適したコースにて効率的かつ効果的に路上運転技術を向上させる教習をすることができる。
【0013】
また、請求項2の教習コース選択システムは、前記教習コース情報は、運転シミュレータで使用するシミュレーション・プログラム、または路上教習時に使用するコースを表す路上教習コース情報である。
【0014】
また、請求項3の教習コース選択システムは、前記ディスプレイ装置に表示、または音声出力された交通法規の試験問題に対する前記教習者の回答を取得し、該取得した回答と正答とを比較して前記交通法規試験の成績を判定する交通法規成績判定手段をさらに備える。
【0015】
また、請求項4の教習コース選択システムは、前記運転技能判定手段は、前記シミュレーション・プログラムに設定された複数のチェックポイントにおいて、それぞれ設定された運転操作項目毎に前記運転技能の判定を行う。
【0016】
また、請求項5の教習コース選択システムは、前記シミュレーション・プログラムにおけるコース路面状況または気象状況毎に、運転操作情報と比較する基準値が異なる。
【0017】
また、請求項6の教習コース選択システムは、前記教習コース選択手段は、さらに教習コースにおける混雑情報に基づいて教習者に適した教習コース情報を選択する。
【0018】
また、請求項7の教習コース選択システムは、さらに、前記選択した教習コース情報を教官の端末へ送信する通信手段を備える。
【0019】
また、請求項8の教習コース選択システムは、前記コース選択手段は、さらに前記運転技能および交通法規試験の成績に基づいて重点的に教習すべき重点教習項目を選択し、前記通信手段を介して前記教習コース情報とともに該重点教習項目を教官の端末へ送信する。
【0020】
【発明の実施の形態】
1.各機能ブロックの説明
図2は、本発明による学科教習システムの全体構成を示すブロック図である。ここでは、まず各機能ブロックの機能を説明し、後半部において本実施形態の実行プロセスについて説明する。
【0021】
運転シミュレータ201は、たとえば図1に示したような装置であり、教習者が乗り込む乗車部102、シミュレーション映像等を表示するディスプレイ装置101を備えている。そして乗車部102は、実際の車両と同様にハンドル、シフトレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器等の運転操作機器を備えている。ここで、ディスプレイ装置101は、シミュレーション映像等を映写する映写装置を備えたスクリーンとすることもできる。
【0022】
運転シミュレータ201には、本システムを実現するためにいくつかの機能ブロックが接続されている。これから説明する各機能ブロックは、コンピュータ・プログラムを実行するCPU、および各機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やハードディスク・ドライブを含むコンピュータ・システムによって実現される。各機能は、複数のプログラムを実行することによって複数の機能を単一のコンピュータ・システム上で実現することもできるし、複数のコンピュータ・システム上で分散して実現することもできる。また、後述する各データベースについても、単一のコンピュータ・システム上で稼働することとしてもよいし、分散して存在することもできる。
【0023】
シミュレーション映像制御部202は、シミュレーション・プログラムD/B212から教習項目に関連づけられたシミュレーション・プログラム等を読み出し、実行して、シミュレーション映像を運転シミュレータ201のディスプレイ装置に表示する機能を有する。尚、シミュレーション・プログラムD/B212には、各教習項目において学習する運転状況(「止まれ」などの標識)を出現させるシミュレーション・プログラムが、教習項目毎に関連付けられて格納されている。また、シミュレーション・プログラムD/B212には、シミュレーション・プログラムの他に、各シミュレーション・プログラムにおけるチェックポイント毎の判定項目、運転操作の基準値および点数表が各シミュレーション・プログラムに関連付けられて格納されている。
【0024】
運転技能判定部203は、教習者D/B211に格納された運転操作情報とシミュレーション・プログラムについて設定されている運転操作の基準値とを比較し、所定の点数表を参照して、教習者による運転操作に点数をつけることによって、教習者の運転技能を判定する機能を有する。この運転技能の判定のプロセスについては後述する。
【0025】
交通法規試験作成部204は、通信部207を介して教習項目に関連づけられた交通法規の問題を交通法規試験問題D/B213から読み出し、運転シミュレータ201のディスプレイ装置に表示する機能を有する。尚、交通法規試験問題D/B213には、教習項目で学習する交通法規について問う交通法規試験問題が教習項目に関連づけられて格納されている。また、交通法規試験問題D/B213には、試験問題の正答が交通法規試験問題に関連付けられて格納されている。尚、交通法規試験問題には、問題毎にどの判定項目に属する試験問題であるかを特定できるように判定項目の情報が付加されている。
【0026】
回答取得部(不図示)は、上述の交通法規試験作成部204によって出題された試験問題に対して教習者が回答を入力するための入力装置である。これらは、釦として運転シミュレータ内に設けることもできるし、交通法規試験は正誤問題であるためアクセルを「正しい」、ブレーキを「誤り」の入力装置として使用することもできる。
【0027】
交通法規成績判定部205は、交通法規の試験問題に対して入力された回答と正答とを比較し、教習者の回答を採点して交通法規試験の成績を教習者D/B211に格納する機能を有する。この交通法規成績の判定の詳細については後述する。
【0028】
教習コース選択部206は、判定した運転技能および交通法規試験の成績に基づいて教習者に適した教習コース情報を選択する機能を有する。さらに、教習コース選択部206は、判定された運転技能および交通法規試験の成績に基づいて、教習者が苦手とし重点的に教習すべき重点教習項目を選択する機能を有する。この教習コース情報および重点教習項目の選択プロセスについては後に詳述する。
【0029】
教習コース情報D/B214は、予め多数のバリエーションの教習コースを表す教習コース情報ファイルを格納している。ここで、教習コース情報ファイルは、「路上教習コース情報」、「リアルコース情報」および「バーチャルコース情報」の3種類の情報のファイルを有する。路上教習コース情報ファイルは、予め設定した路上教習コースのルートを表す路上コースの地図画像や路上コース番号など、路上教習コースを特定するための情報を含んだファイルである。そして、各路上教習コースは、ある特定の運転状況(一時停止線、交差点)を多く含み、ある運転場面を重点的に練習できるコース設定となっている。たとえば、標識の見落としが多い教習者や標識に関する交通法規の成績が悪い教習者の練習用などとして、標識が多く出現する路上教習コースも用意される。そして、この路上教習コース情報は、その路上教習コースで重点的に練習できる運転状況の情報に関連づけられて路上教習コース情報D/B214に格納されている。リアルコース情報ファイルは、現実に存在する路上コースの環境(購買・曲がり等の道路形状や街路樹等の自然環境など)に基づいて運転シミュレータ用に作りかえたシミュレーション・プログラムであり、路上教習コース情報ファイルと同様に、この教習コースで重点的に練習できる運転状況の情報に関連付けられて教習コース情報D/B214に格納されている。バーチャルコース情報ファイルは、現実には存在しないコースをシミュレーションするシミュレーション・プログラムであって、教習者の弱点を重点的に練習できるように、車・自転車・バイク・歩行者(大人・子供・高齢者)などの各パーツを組み合わせることで予め作成されたコースを運転シミュレータ上で再現する。このバーチャルコース情報ファイルも、重点的に練習できる運転状況の情報に関連付けられて教習コース情報D/B214に格納されている。
【0030】
教習者D/B211は、教習者の未修了教習項目や後述する交通法規成績、および運転シミュレータ201によって教習項目毎に取得された運転操作情報を教習者のIDに関連づけて格納する。ここで、運転操作情報は、各運転操作機器から取得した運転操作値、および車両状態の情報を含む。たとえば、運転操作機器であるブレーキから取得したブレーキタイミング・ブレーキ踏力などの運転操作値や、車両の速度、他の車両との車間距離、および車両位置などの車両状態の情報などを含んでいる。
【0031】
これまでに登場したデータベースである教習者D/B211、シミュレーション・プログラムD/B212、交通法規試験問題D/B213および教習コース情報214は、図2においてネットワークを介して本システムに接続しているが、ネットワークを介さずに直接本システムに接続する構成としてもよい。
【0032】
通信部210は、ネットワーク・インタフェース・カードなどのネットワーク219に接続するための装置である。ここで、ネットワーク219は、インターネットや専用回線などの通信網である。
【0033】
PDA210は、教官が実技教習時に使用し、教習コース選択システムによって自動選択された教習コースおよび重点教習項目などを表示するための携帯情報端末である。また、PDA210には、教習コース選択システムと無線通信を行うための無線通信装置が取り付けられている。
【0034】
ネットワーク219には、無線送受装置209が接続されている。無線送受装置209は、PDA210に各種情報を送受信するための装置であって、PDA側の要求に応じてデータ通信接続を確立することができる携帯電話基地局や無線LANなどの装置である。
【0035】
2.運転操作データおよび交通法規成績取得プロセス
次に、図5のフローチャートを用いて、本システムを使用するための前提条件である運転操作データ、および運転法規成績取得プロセスについて説明する。ここでは、学科教習時に運転シミュレータを使用して運転操作情報等を取得した場合について説明する。尚、各機能ブロックを実現するためのプログラムは既にコンピュータ・システムのハードディスクからメモリ上に読み出され、CPUによって実行されているものとする。
【0036】
まず、教習者によって個人を識別するためのICカードが運転シミュレータにセットされ、教習が開始される(S501)。ICカードがセットされると、運転シミュレータ201は、セットされたICカードから教習者のIDを特定する。そして、教習者のIDに関連付けられた未修了教習項目を教習者D/B211から読み出し、これをディスプレイ装置に表示する(S502)。未修了教習項目が表示されると、ハンドルやペダルなどが入力装置として使用され、表示された未修了教習項目の中から教習者によって今回受講する教習項目が選択され入力される。ここでは、「標識・表示などに従うこと」を教習内容とする教習項目3が教習者によって選択されたものとして説明する(図4)。
【0037】
教習項目が選択されると、シミュレーション映像制御部202は、選択した教習項目に関連づけられたシミュレーション・プログラムをシミュレーション・プログラムD/B212からメモリ上に読み出す。そして、シミュレーション映像制御部202は、読み出したシミュレーション・プログラムを実行し、シミュレーション映像を運転シミュレータ201のディスプレイ装置上に表示する(S503)。たとえば、教習項目3の「標識、標示などに従うこと」の教習項目が教習者によって選択されると、シミュレーション映像制御部は、「止まれ」の標識などを多く出現させて操作者にこれらの標識を遵守させるシミュレーション・プログラムを読み出し、実行する。
【0038】
シミュレーション映像に対する教習者による運転操作が行われると、運転シミュレータ201は、各運転操作機器から入力される運転操作情報を取得し、該運転操作情報をシミュレーション映像制御部202に送信する。運転操作情報が送信されるとシミュレーション映像制御部202は、運転操作情報に応じてシミュレーション映像を反映させる。一方、運転シミュレータ201は、この運転操作情報を教習者D/B211にも送信し、教習項目毎にこの運転操作情報を格納する(S505)。
【0039】
シミュレーションによる教習が終了すると、交通法規試験作成部204は、教習項目に関連付けられた試験問題のファイルを交通法規試験問題D/B213から読み出し、展開して、運転シミュレータ201のディスプレイ装置101に表示する(S506)。たとえば、今回の場合では、教習項目3の「標識・標示などに従うこと」に関連する交通法規の試験問題のファイルが読み出され、展開されてディスプレイ装置に表示される。また、ファイルには音声情報も含まれることとして、ファイルの内容を音声として出力することもできる。
【0040】
交通法規試験問題が表示されると、回答取得部を介して教習者によって回答が入力される(S507)。所定数の試験問題に対する回答が入力されると運転シミュレータ201の回答取得部は、入力された回答を交通法規成績判定部205に送信する。回答を受信すると交通法規成績判定部205は、出題した試験問題に関連づけられた正答を交通法規試験問題D/B213から読み出し、入力された回答と正答とを比較する。そして、交通法規成績判定部205は、比較した結果、正答と一致した分の点数を教習項目の判定項目毎に算出する。たとえば、教習項目3において判定項目が「一時停止」である問題を5問正答した場合には、教習項目3の「一時停止」の評価は5点となる。
【0041】
ここで、予め教習者D/B211には、図3(a)に示すような教習項目と判定項目からなる2次元のデータ配列で表される「交通法規成績」の表が用意されている。判定項目毎の点数付けが完了すると、交通法規成績判定部209は、教習者D/B211から「交通法規成績」を読み出し、この表に判定した教習項目毎の点数を入力する。たとえば、教習項目3において「一時停止」の問題を5問正解した場合には、図3(a)に示すように教習項目3の「一時停止」のセルに5点が入力される。出題された試験問題に対する点数の表への入力が完了すると、交通法規成績判定部205は、入力した交通法規成績を教習者D/B211に再び格納する(S508)。
【0042】
ここで、図3(a)を参照すると、教習項目1には点数が入力されていない。これは、教習項目1の教習内容が「運転者の心得」であって、判定項目に該当する試験の問題が出題されなかったからである。一方、教習項目3における交通法規試験では「標識・標示」および「一時停止」に関する問題が出題されたため、これに対する点数が記録されており、その他の判定項目については点数が記録されない。
【0043】
上述のようにシミュレータを使用した教習を繰り返し、所定の教習項目(例えば学科教習における26時限分)までの教習が修了すると、教習者は次に示すような路上運転技術の向上させるための(実技教習を含む)教習を行うことができる。
【0044】
3.教習コース選択プロセス
3.1.路上教習コース選択プロセス
教習者が実技教習に入ると、教習者のIDが教官によってPDA210に入力される。IDが入力されるとPDA210は、教習者のIDおよび路上教習コース選択要求を路上教習コース選択システムの教習コース選択部206に送信する。教習者のIDおよび教習コース選択要求が送信されると、教習コース選択部206は、この教習コース選択要求を受信し(S601)、選択要求が路上教習コース選択要求か否かを判断する(S602)。送信された教習コース選択要求は上述の通り路上教習コース選択要求であるため、プロセスは路上教習コース選択プロセス(S603)へと進める。路上教習コース選択プロセスにおいては、最初に運転技能判定部203が教習者の運転技能を判定し、その後運転技能および交通法規試験の成績に基づいて路上教習コース選択部206が路上教習コース情報を特定することとなるが、ここでは、まず図8を用いて、図7に示す運転技能の判定プロセスについて具体的に説明する。
【0045】
最初に路上コース選択プロセスにおいて教習コース選択部206は、運転技能判定部203に「運転技能」の表の作成要求を送信する。表の作成要求が送信されると、運転技能判定部203は、シミュレーション・プログラムD/B212から、各教習項目のシミュレーション・プログラムにおけるチェックポイント毎の判定項目、基準値および点数表を読み出す。
【0046】
ここで、各シミュレーション・プログラムには、図8(a)の表に示すようにA〜Fのチェックポイントが設定されている。そして、各チェックポイントには判定すべき判定項目が設定されている。つまり、Aポイントについては、停止位置に対してブレーキペダルを踏むべき距離であり、Bポイントでは、右左折する位置に対して方向指示器を操作するべき距離であり、Cポイントでは、一時停止線と一時停止した車両との距離である。Dポイントでは制限速度の遵守であり、Eポイントでは、Aポイントと同様停止位置に対してブレーキを踏むべき距離であり、FポイントではCポイントと同じく一時停止線と一時停止した車両との距離である。これらは例示であり、他にも種々の判定項目を設定することができる。尚、図8(a)では、各チェックポイントについて判定する判定項目が1つのみ設定されているが、1つのチェックポイントについて2つ以上の判定項目を設定しても良い。例えば、チェックポイントが交差点での左折の場合は、ブレーキのタイミングと方向指示器の操作の両方を判定項目とする等である。また、チェックポイントの数については制限がなく、Cポイント・Fポイントの「一時停止」のように、ある判定項目を2つ以上のチェックポイントで判定しても良い。また、図8(a)中の「基準値」は、シミュレーション・プログラムにおける車両の走行速度やシミュレーションコースの路面状況・季節毎の気象環境・時間帯に応じて変化させることとすることもできる。たとえば、路面がウェットである場合に車間距離を多めにしたりブレーキタイミングを早くするなどである。
【0047】
チェックポイント毎の判定項目等を読み出すと、次に運転技能判定部203は、教習者のIDに関連づけられて格納されている教習項目毎の運転操作情報を教習者D/B211から読み出す(S701)。次に、運転技能判定部203は、運転操作情報から各操作機器への操作値である運転操作値を抽出する。そして、運転技能判定部203は、運転操作値から基準値の差をとる演算を行い各チェックポイントにおける「基準値との差」を算出する(S702)。例えばAポイントでは、停止位置に対して30m手前でブレーキペダルを踏み始めるべきであったのに対し、教習者は24m手前からブレーキペダルを踏み始めたので、その差はマイナス6mとなる。またCポイントでは、一時停止線に対して1m手前以内に停止するべきであったのに対して、車両が停止線から4mの位置で停車したので、その差は3mとなる。
【0048】
そして、運転技能判定部203は、この差を図7(b)(c)の点数表と比較して、各チェックポイントの各項目毎に点数をつける(S703)。例えばAポイントではマイナス6mなので、点数は5点となる。点数表は判定する判定項目ごとに同一のものを用いても良いが、チェックポイントによって交通状況は異なるので、チェックポイント別に準備されているのが好ましい。
【0049】
各チェックポイント毎の点数付けが完了すると、運転技能判定部203は、判定項目毎の平均点を算出する。たとえば、図8(a)の「ブレーキ」の判定項目はAポイントとEポイントがあり、それぞれの5点ずつ取得しているが、これらの平均点を算出することで5点を得る。また、同様に「一時停止」の判定項目はCポイントとFポイントがあり、それぞれの点数は3点と5点であるが、これらの平均点を算出することで4点を得る。そして、すべての教習項目における判定項目毎の平均点を算出すると、運転技能判定部203は、教習項目および判定項目からなる2次元のデータ配列で表される「運転技能」の表を作成する(図3(b))。そして、作成した表に算出した平均点数を入力する(S704)。たとえば、教習項目3の「ブレーキ」には前述で算出した5点、「一時停止」には4点が入力される。
【0050】
上述のような評価プロセスを繰り返して、すべての教習項目における運転操作情報のチェックポイントにおけるの点数付けおよび表への入力を行う。そして表への入力が完了すると、完成した運転技能の表を路上教習コース選択部206に送信して運転技能判定プロセスを終了する。
【0051】
ここで、図3(b)を参照すると、教習項目1には点数が入力されていない。これは、交通法規成績と同様で教習項目1の教習内容が「運転者の心得」であって(図4)、シミュレータを使用した教習を行うことが難しく、本システムを使用していないからである。一方、教習項目3における教習内容「標識・標示などに従うこと」のときは、シミュレーションにおいて「標識・標示」および「一時停止」などが出現し、さらにその他の運転操作(ブレーキ、ハンドリングなど)を行っているため、これらの運転操作に対する運転技能の点数がつけられている。
【0052】
運転技能判定プロセスが完了し、「運転技能」の表が送信されると、路上教習コース選択部206は、教習者D/B211から、交通法規成績を読み出す。路上教習コース選択部206は、運転技能および読み出した交通法規成績の判定項目毎の平均点を演算して、運転技能平均点および交通法規成績平均点を作成する(図3(c))。そして、さらに路上教習コース選択部206は、運転技能の平均点と交通法規成績の平均点を判定項目毎に合計した合計点を算出する。ここで、出題される交通法規の試験問題数や運転操作の難易度が各判定項目間で異なることから、バランスのとれた点数評価とならない場合も考えられる。よって、合計テーブルの作成の際にこれらを考慮して各セル毎に重み付けを行うことや統計的手法により点数調整を行うこともできる。
【0053】
合計テーブルを作成すると、教習コース選択部206は、合計テーブルの判定項目の合計において最も点数の低い判定項目を特定する。そして、教習コース選択部206は、特定した判定項目が示す運転状況に関連付けられた路上教習コース情報のファイルを、教習コース情報D/B214から検索してメモリ上に読み出す(S603)。たとえば、図3(c)に示すように合計テーブルの判定項目において「一時停止」の点数が最も低い場合は、「一時停止」の運転状況に関連付けられ「一時停止」を重点的に教習できる路上教習コースを示す路上教習コース情報のファイルを検索して読み出す。
【0054】
路上教習コース情報のファイルを読み出すと、路上教習コース選択部206は、読み出した路上教習コース情報のファイルを通信部207を介して教官のPDA210に送信する(S605)。ここで本システムが、さらに道路交通情報通信システム(VICS)用のFM多重受信アンテナおよび受信装置を設けることとして道路の混雑情報を受信し、この混雑情報に基づいて「一時停止」を重点的に教習できる路上教習コースの中から最も交通量が少なく効率よく教習ができる路上教習コースを選択する構成とすることもできる。また、路上教習コース情報D/B214に格納されている路上教習コース情報のファイルに、各路上教習コースの時間帯毎の統計的な混雑情報を関連付けて格納することもできる。そして、教習コース選択部206が、教習の行われる時間情報を取得し、「一時停止」を重点的に教習できる路上教習コースの中で、この時間帯において最も交通量の少ない混雑度を示す混雑情報に関連付けられた路上教習コースを選択することもできる。
【0055】
教習コース選択部206は、さらに前述において判定した運転技能および交通法規成績に基づいて教習時の重点教習項目を選択する(S604)。具体的には、教習コース選択部206は、前述のようにして作成された合計テーブル(図3(c))の各判定項目の合計から、点数の低い判定項目を所定の個数だけ特定する。そして、教習コース選択部206は、特定した判定項目を、重点教習項目として通信部210を介して教官のPDA210に送信する。たとえば、図3(c)に示すように「一時停止」および「信号」の点数が低い場合、PDA210には重点教習項目として「一時停止」と「信号」が送信される(S605)。
【0056】
路上教習コース情報ファイルおよび重点教習項目が送信されるとPDA210上では、路上教習コース情報ファイルが展開され、路上教習コースを示す路上教習コース画像および重点教習項目などが表示される(図11(a)(b))。路上教習コース画像等が表示されると、教官によって路上教習コース画像が参照され、教習コース選択システムによって自動選択された路上教習コースにおいて路上教習が行われる。
【0057】
シミュレータ乗車時の運転操作および教習者の交通法規試験の成績を考慮して路上教習コースや重点教習項目を選択し、これらを教官のPDA210に送信するため、教官は教習者に適した路上教習コースにて教習者の苦手な教習内容を把握しながら効率的かつ効果的な実技教習をすることができる。
【0058】
3.2.シミュレータにおいて使用するリアルコース選択プロセス
一方、路上教習を行わず、路上教習コースと同様のコースを運転シミュレータ201内で再現させ、苦手な項目の運転練習をすることもできる。この場合、操作者は運転シミュレータ201から、リアルコースによる運転練習の選択を行う。リアルコースによる運転練習の選択がされると、運転シミュレータ201は、リアルコース選択要求を教習コース選択システムの教習コース選択部206に送信する。
リアルコース選択要求を受信すると(S601)、教習コース選択部206は、本要求が路上コース選択要求であるか否かを判定する。ここで本要求はリアルコース選択要求であるので、プロセスをS607へと進め、さらにプロセスをS608へと進める。
【0059】
次にリアルコースの選択を行うために、教習コース選択部206は運転技能判定部203に前述の「運転技能」の表の作成要求を送信する。運転技能の表の作成要求が送信されると、運転技能判定部203は、前述の路上教習選択プロセスにおける運転技能判定プロセスと同様の方法で運転技能の表を作成する。ここでは、重複する運転技能判定プロセスの説明を省略する。
【0060】
運転技能の表が作成されると、作成された運転技能の表は教習コース選択部206へと送信される。運転技能の表が送信されると教習コース選択部は、ここでも前述の路上教習選択プロセスにおける方法と同様の方法で合計テーブルを作成する。
【0061】
合計テーブルを作成すると、教習コース選択部206は、合計テーブルの判定項目の合計において最も点数の低い判定項目を特定する。そして、教習コース選択部206は、特定した判定項目が示す運転状況に関連付けられたリアルコースのプログラムファイルを、教習コース情報D/B214から検索してメモリ上に読み出す(S603)。たとえば、図3(c)に示すように合計テーブルの判定項目において「一時停止」の点数が最も低い場合は、「一時停止」の運転状況に関連付けられ「一時停止」を重点的に教習できる教習コースを再現するリアルコースのプログラムのファイルを検索して読み出す。
【0062】
リアルコースのファイルを読み出すと、教習コース選択部206は、リアルコースのプログラムファイルをシミュレーション映像制御部202へと送信する。リアルコースのプログラムファイルが送信されるとシミュレーション映像制御部202は、受信したリアルコースのプログラムファイルを実行し(S610)、シミュレーション映像を運転シミュレータ201のディスプレイ装置に表示させる。
【0063】
ここで、教習コース選択システムがVICS用のFM多重アンテナおよび受信装置を備えることとして、リアルコースのプログラムがVICS情報を取得し、混雑情報に応じてシミュレーション内の車両の数を増減させることができるプログラムとすることもできる。
【0064】
3.3.シミュレータにおいて使用するバーチャルコース選択プロセス
上述のリアルコース選択プロセスにおいて、現実の路上コースを運転シミュレータ上で再現できるリアルコースを選択することとしたが、運転シミュレータで使用したリアルコースを現実には存在しないバーチャルなコースで代用することもできる。この場合、次のようなプロセスにより教習コース情報D/B214からはバーチャルコースのシミュレーション・プログラムが選択されることとなる。
【0065】
教習者の操作によって、運転シミュレータ201からバーチャルコース選択要求が送信されると、教習コース選択部206は、選択要求を受信し(S601)受信した教習コース選択要求が路上教習コース選択要求か否かを判断する(S602)。ここでは上述の通り受信した路上コース選択要求がバーチャルコース選択要求であるので、プロセスはS607へと進み、さらにS610へと進む。
【0066】
次にバーチャルコースの選択を行うために、教習コース選択部206は、前述のリアルコースの選択プロセスと同様の方法で合計テーブルを作成する。ここでは、重複する運転技能判定プロセスの説明を省略する。
【0067】
合計テーブルを作成すると、教習コース選択部206は、合計テーブルの判定項目の合計において最も点数の低い判定項目を特定する。そして、教習コース選択部206は、特定した判定項目が示す運転状況に関連付けられたバーチャルコースのプログラムファイルを、教習コース情報D/B214から検索してメモリ上に読み出す(S603)。バーチャルコースのファイルを読み出すと、教習コース選択部206は、読み出したバーチャルコースのプログラムファイルをシミュレーション映像制御部202へと送信する。バーチャルコースのプログラムファイルが送信されるとシミュレーション映像制御部202は、受信したバーチャルコースのプログラムファイルを実行し(S610)、シミュレーション映像を運転シミュレータ201のディスプレイ装置に表示させる。
【0068】
以上にこの発明を具体的な実施例について説明したが、この発明は、このような実施例に限定されるものではない。
【0069】
【発明の効果】
この発明によると、教習者の運転技能と交通法規試験の成績に基づいて教習コースが選択されるため、これを利用することで教習者の交通法規習得段階および運転技能に適したコースにて効率的かつ効果的に路上運転技術を向上させる教習をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】操作機器を備えるシミュレータの一例を示す図。
【図2】本発明の一実施形態である路上教習コース選択システムのブロック図。
【図3】運転技能・交通法規成績および合計テーブルを表形式で表した図。
【図4】教習課程の一例を表した図。
【図5】本発明を実施するための運転操作データおよび交通法規成績取得のプロセスを表すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態である教習コース選択プロセスを表すフローチャート。
【図7】運転技能の判定を表すフローチャート。
【図8】チェックポイントを説明するための表。
【図9】シミュレーションコースの環境の一例を表す図。
【図10】路上教習コースのバリエーションの一例を表す図。
【図11】教官が使用するPDAを表す図。
【符号の説明】
201 運転シミュレータ
202 シミュレーション映像制御部
203 運転技能判定部
204 交通法規試験作成部
205 交通法規成績判定部
206 路上教習コース選択部
207 通信部
208 ネットワーク
210 PDA
Claims (8)
- シミュレーション映像を表示するディスプレイ装置および前記シミュレーション映像に応じて教習者が運転操作をおこなうための操作機器を備える運転シミュレータによる教習に関連して、教習コースを選択する教習コース選択システムであって、
各教習項目において学習する運転状況を出現させるシミュレーション・プログラムの実行時における教習者の運転操作情報を格納する操作情報データベースと、
前記操作情報データベースから前記教習者の前記運転操作情報を取得し、該運転操作情報と所定の基準値とを比較して前記教習者の運転技能を判定する運転技能判定手段と、
前記教習項目に関連付けられた交通法規試験についての前記教習者の成績をそれぞれの教習者について格納する交通法規成績データベースと、
それぞれ重点的に練習できる運転状況に関連付けられた複数の教習コース情報ファイルを格納した教習コースデータベースを含み、前記教習者の前記判定された運転技能および前記交通法規試験の成績に基づいて、前記教習者に重点的に教習させるべき教習項目を選択し、該選択された教習項目が示す運転状況に関連する前記教習コース情報ファイルを教習コースデータベースから選択する教習コース選択手段とを備え、
前記教習コース情報ファイルは、少なくとも、予め設定した路上教習コースのルートを表す情報を含んだ路上コース情報ファイルと、シミュレーション・プログラムのコース情報ファイルとを含む、教習コース選択システム。 - 前記ディスプレイ装置に表示、または音声出力された交通法規の試験問題に対する前記教習者の回答を取得し、該取得した回答と正答とを比較して前記交通法規試験の成績を判定する交通法規成績判定手段をさらに備えた、請求項1に記載の教習コース選択システム。
- 前記運転技能判定手段は、前記シミュレーション・プログラムに設定された複数のチェックポイントにおいて、それぞれ設定された運転操作項目毎に前記運転技能の判定を行う、請求項1または2に記載の教習コース選択システム。
- 前記シミュレーション・プログラムにおけるコース路面状況または気象状況毎に、運転操作情報と比較する基準値が異なる、請求項1乃至3のいずれかに記載の教習コース選択システム。
- 前記教習コース選択手段は、さらに教習コースにおける混雑情報に基づいて教習者に適した教習コース情報を選択する、請求項1乃至4のいずれかに記載の教習コース選択システム。
- さらに、前記選択した教習コース情報を教官の端末へ送信する通信手段を備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の教習コース選択システム。
- 前記コース選択手段は、前記通信手段を介して前記教習コース情報とともに該重点教習項目を教官の端末へ送信する、請求項6記載の教習コース選択システム。
- シミュレーション映像を表示するディスプレイ装置および前記画像に応じて教習者が運転操作をおこなうための操作機器を備える運転シミュレータによる教習に関連して、教習コースを選択する教習コース選択方法であって、
各教習項目において学習する運転状況を出現させるシミュレーション・プログラムの実行時における教習者の運転操作情報を運転操作データベースに格納するステップと、
前記運転操作データベースから前記教習者の運転操作情報を取得し、該運転操作情報と所定の基準値とを比較して運転技能を判定するステップと、
前記教習項目に関連付けられた交通法規試験についての前記教習者の成績をそれぞれの教習者について格納するステップと、
前記教習者の前記判定された運転技能および前記交通法規試験の成績に基づいて、前記教習者に重点的に教習させるべき教習項目を選択し、該選択された教習項目が示す運転状況に関連する教習コース情報ファイルを、それぞれ重点的に練習できる運転状況に関連付けられた複数の教習コース情報ファイルを格納した前記教習コースデータベースから選択するステップとを含み、
前記教習コース情報ファイルは、少なくとも、予め設定した路上教習コースのルートを 表す情報を含んだ路上コース情報ファイルと、シミュレーション・プログラムのコース情報ファイルとを含む、教習コース選択方法。
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