JP4004849B2 - 色補正回路と撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置で用いられる色補正回路に係り、特に、R(赤)G(緑)B(青)などの各色信号のホワイトバランス,色相,彩度を補正する色補正回路と撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
撮像装置には、CCD等の撮像素子から出力されるRGBの各色信号に対して、各種の色補正を自動的に行う補正回路が搭載されている。図5は、従来の色補正回路の構成図であり、この例では、ゲイン補正回路1と、リニアマトリクス回路2の2つの色補正回路が設けられている。ゲイン補正回路1は、ホワイトバランスを補正する回路であり、撮像素子から出力されてくるRGBの色信号3に対し、光源種類に対応した3行3列のマトリクス係数4を乗算し、光源種類に関わらず白色が白く見えるように補正している。
【0003】
また、リニアマトリクス回路2は、撮像素子から出力されてくる色信号3に対し、3行3列のマトリクス係数5を乗算し、肉眼に近い自然な色調が得られる様に補正している。
【0004】
この図5に示す従来の色補正回路は、ゲイン補正回路1とリニアマトリクス回路2とを独立に設け、ゲイン補正回路1でゲイン補正のみを行い、リニアマトリクス回路2でリニア補正のみを行う構成となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示すゲイン補正回路1に入力する色信号のうち、例えばG(緑)信号の値が“2500”であったとする。そして、ゲイン補正回路1がG信号に対してゲインとして“2”を乗算することになっていた場合、ゲインの掛けられたG信号の値は“5000”となる。
【0006】
しかし、図5に示すデジタル信号処理系は12ビットデータ系であるため、その上限値は“4095”であり、“5000”を表現することはできない。このため、図5に示す色補正回路には、実際はA点(ゲイン補正回路1の出力段)にクリップ処理回路が設けられ、G信号の値を“4095”にクリップする様になっている。
【0007】
更に、リニアマトリクス回路2で、例えば、R’=0.9R−0.1Gという演算を行うと、本来であればG=5000であるため、この演算はR’=0.9R−500となるべきところ、ゲイン補正回路1におけるクリップ処理の影響を受けてR’=0.9R−409.5となり、色相や彩度が変わってしまうという現象が起きる。また同様に、実際にはリニアマトリクス回路2の出力段にもクリップ処理回路が設けられるため、ゲイン補正回路1とリニアマトリクス回路2とが独立に設けられた従来の色補正回路では、クリップ処理が複数回実行され、色が飽和し易く、色の再現性が劣化してしまうという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、色補正が良好に行われ、クリップ処理の悪影響を低減した色補正回路とこの色補正回路を搭載した撮像装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、撮像素子から出力される色信号に対しマトリクス係数を乗算して色補正を行う色補正回路において、複数種類の色補正を行う場合に各種類の色補正に対応した複数のマトリクスの係数同士を乗算するとき各マトリクスの係数値に任意値を掛け整数値にしてから該乗算を行うと共に該乗算結果の分母と分子を共に所定値で除算することで統合マトリクスの各係数値を求め前記色信号に対して該統合マトリクスの該係数値を乗算して前記複数種類の色補正を一括して行う統合マトリクス演算処理手段を設けたことで、達成される。
【0010】
この構成により、各マトリクス係数を色信号に乗算する度に必要となるクリップ処理が省略され、クリップ処理が多数回実行されることにより色再現の影響を低減可能となる。
【0011】
好適には、上記において、前記マトリクス係数のうち少なくとも1つはユーザ指定の色空間マトリクス係数であることを特徴とする。この構成により、ユーザは任意の色空間を指定可能となり、ユーザの嗜好に合わせた色補正回路が提供でき、しかも、ユーザが色空間を指定したことによるクリップ処理回数の増加が防止される。
【0012】
上記目的を達成する撮像装置は、上述した色補正回路を搭載することで、達成される。この撮像装置によれば、複数種類の色補正が実行されることで良好な色再現性が高まり、しかもユーザのニーズに合った撮像画像を得ることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る色補正回路を搭載したデジタルスチルカメラの構成図である。尚、この例ではデジタルスチルカメラに本実施形態の色補正回路を搭載しているが、デジタルビデオカメラ等の他の種類の撮像装置に本実施形態の色補正回路を同様に搭載可能である。
【0015】
このデジタルスチルカメラは、撮影レンズ10と、CCD等の固体撮像素子11と、この両者の間に設けられた絞り12と、赤外線カットフィルタ13と、光学ローパスフィルタ14とを備える。デジタルスチルカメラの全体を制御するCPU15は、赤外線発光部16及び赤外線受光部17を制御して得た被写体までの距離情報に基づき、レンズ駆動部18を制御して撮影レンズ10の位置をフォーカス位置に調整し、絞り駆動部19を介し絞り12の開口量を制御して露光量が適正露光量となるように調整する。
【0016】
また、CPU15は、撮像素子駆動部20を介して固体撮像素子11を駆動し、撮影レンズ10を通して撮像した被写体画像を色信号として出力させる。また、CPU15には、操作部21を通してユーザの指示信号が入力され、CPU15はこの指示に従って各種制御を行う。
【0017】
デジタルスチルカメラの電気制御系は、固体撮像素子11の出力に接続されたアナログ信号処理部22と、このアナログ信号処理部22から出力された色信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路23とを備え、CPU15によって制御される。
【0018】
更に、このデジタルスチルカメラの電気制御系は、メインメモリ24に接続されたメモリ制御部25と、詳細は後述するデジタル信号処理部26と、撮像画像をJPEG画像に圧縮したり圧縮画像を伸張したりする圧縮伸張処理部27と、測光データを積算してホワイトバランスのゲインを調整させる積算部28と、着脱自在の記録媒体29が接続される外部メモリ制御部30と、カメラ背面等に搭載された液晶表示部31が接続される表示制御部32とを備え、これらは、制御バス33及びデータバス34によって相互に接続され、CPU15からの指令によって制御される。
【0019】
図2は、図1に示すデジタル信号処理部26の詳細構成図である。このデジタル信号処理部26は、A/D変換回路23から出力されるデジタルのRGB色信号を取り込んでオフセット処理を行うオフセット補正回路41と、オフセット補正後のRGB色信号に対して統合リニアマトリクス処理を施して色補正を統合的に行う本実施形態の特徴に係る統合リニアマトリクス回路42とを備える。
【0020】
本実施形態のデジタル信号処理部26は更に、色補正後の色信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正回路43と、ガンマ補正後のRGB色信号を補間演算して各画素位置におけるRGB3色の信号を求めるRGB補間演算部44と、RGB信号から輝度信号Yと色差信号Cとを求めるRGB/YC変換回路45と、輝度信号Yと色差信号Cからノイズを低減するノイズ低減回路46と、ノイズ低減後の輝度信号Yに対して輪郭補正を行う輪郭補正回路47と、ノイズ低減後の色差信号Cに対して色差マトリクスを乗算して色調補正を行う色差マトリクス回路48とを備える。
【0021】
図3は、図2に示す統合リニアマトリクス回路42の詳細構成図である。この統合リニアマトリクス回路42は、入力してくるRGB色信号3に対して3行3列の統合マトリクス〔uij〕を乗算するマトリクス演算処理部51と、統合マトリクス演算処理後のデータが12ビットデータ系の上限値,下限値を超える場合にクリップ処理を行うクリップ処理回路52とから成る。
【0022】
マトリクス演算処理部51で用いる3行3列の統合マトリクス係数〔uij〕は、本実施形態では、次の数1に従って予め演算して求め、統合マトリクス演算処理部51に設定される。
【0023】
【数1】
【0024】
即ち、本実施形態の統合リニアマトリクス回路42は、図4に示す様に、3つの色補正回路(リニアマトリクス回路55,ゲイン補正回路56,リニアマトリクス回路57)を予め乗算して統合し求めた3行3列の統合マトリクス係数〔uij〕を使用して色補正のマトリクス演算処理を行うことを特徴とする。
【0025】
仮に、図4に示すリニアマトリクス回路55のマトリクス〔aij〕をRGB信号に乗算し、次に、ゲイン補正回路56のマトリクス〔gainij〕を乗算し、最後にリニアマトリクス回路57のマトリクス〔bij〕を乗算する構成であると、マトリクス〔aij〕の乗算後にクリップ処理が必要となり、マトリクス〔gainij〕の乗算後にもクリップ処理が必要となり、従来技術で述べた様に色補正後の色相等が歪んでしまうという問題が発生する。
【0026】
しかし、本実施形態では、複数の色補正回路を統合したマトリクス〔uij〕の各係数値uijを予め求めておき、入力信号に対して統合マトリクス〔uij〕を乗算する構成のため、クリップ処理は最後の出力段で行うだけで済む。即ち、本実施形態では、クリップ処理が1回で済むため色が飽和しにくくなり、更に、色補正に伴う色相などの歪みを最小限に抑えることが可能となる。
【0027】
本実施形態では、統合マトリクス〔uij〕を、2つのリニアマトリクス〔aij〕,〔bij〕とホワイトバランスのマトリクス〔gainij〕から求めている。リニアマトリクス〔aij〕は、図5で説明したリニアマトリクスと同じであり、色信号が肉眼に近い自然な色調となる様にするものである。これに対し、リニアマトリクス〔bij〕は、別の目的で設けたものである。
【0028】
近年では、ユーザが、パソコンなどを用いて撮像画像を自分の好みに応じて調整したいという要望が高く、そのためのソフトウェアが各種普及している。しかし、デジタルスチルカメラで撮像され記録媒体29に格納された画像データそのものが既に統合リニアマトリクス回路42で補正され、クリップ処理されてしまうため、クリップされてしまった部分は復元することができない。
【0029】
このため、本実施形態では、図4に示すリニアマトリクス回路57として、ユーザが指定した色空間(例えば、アドビRGB空間,SRGB空間,NTSCなどがあり、夫々、色の再現域が異なる。)のマトリクスを操作部21で選択でき、このデジタルスチルカメラはユーザが選択した色空間のマトリクス〔bij〕を用いて統合マトリクス〔uij〕を求め、この統合マトリクス〔uij〕を用いて撮像画像の色信号を色補正する様になっている。
【0030】
この様に、本実施形態によれば、複数種類の色補正を行う複数のマトリクスを予め統合し、統合したマトリクスを色信号に対して乗算し、複数種類の色補正を一括して行う構成としたため、何種類もの色補正を行ってもクリップ処理回数が1回で済み、クリップ処理に起因する色相や彩度の変化が生じ難く、色の再現性が良好になるという効果を奏する。
【0031】
上述した数1の統合マトリクス係数〔uij〕を用いて演算処理を行う場合、各係数値uijが小数点の値になると処理が面倒となり演算処理手段の処理負荷が大きくなるため、マトリクス演算は整数演算で実行するのが好ましい。
【0032】
即ち、図4で、任意の値“lmtx1#denomi”をマトリクス〔aij〕の各係数値に乗算して各係数値を整数にしておき、同様に、値“gain#denomi”をマトリクス〔gainij〕に乗算しておき、値“lmtx2#denomi”をマトリクス〔bij〕に乗算しておき、各係数値が整数値となったマトリクスから統合マトリクス〔uij〕を求め、この統合マトリクス〔uij〕で色信号を補正処理する。
【0033】
このとき、統合マトリクスの統合係数値uijの値が大きくなりオーバーフローする可能性があるため、統合係数値uijの分母と分子を所定の値Kで除算した上で、3行3列のリニアマトリクス演算処理を実行する。このとき用いる数式を数2に例示する。
【0034】
【数2】
【0035】
この本実施形態によれば、演算負荷が少なくなって色補正を高速処理することができ、被写体の撮像から記録媒体29への格納までの処理時間が短縮される。
【0036】
上述した各実施形態に係る色補正回路は、色空間をユーザが任意に選択できる形式の撮像装置に適用するのが好適である。動画を撮影する撮像装置の場合、製品規格によって色空間が例えばNTSCなどに限定されてしまうため、ユーザが任意に色空間を選択することはできない。
【0037】
しかし、静止画を撮像するデジタルスチルカメラや静止画を撮像可能なデジタルビデオカメラ等では、撮像した静止画のデータを撮像装置から読み出し、この静止画像をパソコンで調整してプリントアウトすることが多いため、ユーザが好みの色空間を撮像装置で選択できれば、ユーザの自由度が増し、製品価値が高くなるためである。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、色補正でクリップ処理が複数回入ることに起因する色相や彩度の変化をなくすことができ、色の再現性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る色補正回路を搭載したデジタルスチルカメラの構成図である。
【図2】図1に示すデジタル信号処理部の詳細構成図である。
【図3】図2に示す統合リニアマトリクス回路の詳細構成図である。
【図4】図3に示す統合マトリクス回路の説明図である。
【図5】従来の色補正回路の説明図である。
【符号の説明】
11 固体撮像素子
15 CPU
22 アナログ信号処理回路
23 A/D変換回路
26 デジタル信号処理部
42 統合リニアマトリクス回路
51 統合マトリクス演算処理部
52 クリップ処理部
55,57 リニアマトリクス回路
56 ゲイン補正回路(ホワイトバランス)
Claims (3)
- 撮像素子から出力される色信号に対しマトリクス係数を乗算して色補正を行う色補正回路において、複数種類の色補正を行う場合に各種類の色補正に対応した複数のマトリクスの係数同士を乗算するとき各マトリクスの係数値に任意値を掛け整数値にしてから該乗算を行うと共に該乗算結果の分母と分子を共に所定値で除算することで統合マトリクスの各係数値を求め前記色信号に対して該統合マトリクスの該係数値を乗算して前記複数種類の色補正を一括して行う統合マトリクス演算処理手段を設けたことを特徴とする色補正回路。
- 前記マトリクス係数のうち少なくとも1つはユーザ指定の色空間マトリクス係数であることを特徴とする請求項1に記載の色補正回路。
- 請求項1または請求項2に記載の色補正回路を搭載したことを特徴とする撮像装置。
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