JP4004782B2 - 巻線抵抗器およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雑音防止機能を有する巻線抵抗器およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器等の高性能化、および高速化の要求に対して、例えば、マイクロプロセッサを搭載した機器では、高速動作可能なデバイスを使用するとともに、その動作クロックを高速化して対処することが最も一般的な方法である。そして、この高速動作に伴い、機器に使用されている素子から発生するノイズの影響を無視することはできない。
【0003】
例えば、高電圧供給時における雑音放射の問題に鑑みてなされたものとして、特開平5−74629号公報に記載の高圧電線装置がある。これは、抵抗線を捲回した集中抵抗器を組み込むことにより、車両の点火プラグから発生する雑音放射を防止するようにした高圧電線装置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の巻線抵抗器は、コア材の表面に抵抗体となる線材を単に巻き付けた構造を有し、そのインダクタンス成分に起因するノイズの抑制に対しては、何ら対策がとられていないのが現状である。また、従来の巻線抵抗器の場合、螺旋状に巻かれた線材間に存在する、わずかな容量(線間容量)が、巻線抵抗器の抵抗成分とインダクタンス成分とが直列に接続された成分に対して、並列コンデンサとして接続されているに過ぎない。
【0005】
このような、従来の巻線抵抗器における容量成分は、並列コンデンサとしての機能が全くないか、不十分であり、その容量成分を利用して目的とするノイズ成分を除去し、抵抗器からのノイズの発生を抑制することはできない、という問題がある。
【0006】
一方、上述した特開平5−74629号公報に記載の高圧電線装置は、基本的に、集中抵抗器の抵抗とインダクタンスのみによって高周波雑音の放射を抑制するものであるため、かかる装置によって、所望の周波数帯を狙ったノイズ抑制は困難である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造の雑音防止機能を付加した巻線抵抗器およびその製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、既存の抵抗器の基本構造を変えずに雑音防止機能を付加できる巻線抵抗器およびその製造方法を提供することである。
【0009】
かかる目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、絶縁性材料からなるコア基材に抵抗線を巻き付けた巻線抵抗器において、上記コア基材の表面に、ほぼ中央位置で分割し所定間隔離間して形成されたコンデンサ形成電極と、上記コンデンサ形成電極が形成された上記コア基材の表面に巻き付けた抵抗線と、上記抵抗線を巻き付けたコア基材の両端部に被せた導電性キャップとを備え、上記導電性キャップ間の間隔が上記コンデンサ形成電極間の間隔よりも大きく、かつ、上記コンデンサ形成電極によって形成されるコンデンサが上記抵抗線の有する電気抵抗とインダクタンスとの直列成分に並列に接続されることを特徴とする。
【0010】
例えば、上記コンデンサ形成電極は、金属材料からなる電極材をめっき、蒸着、あるいは塗布して形成されることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決する他の手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、絶縁性材料からなるコア基材に抵抗線を巻き付けた巻線抵抗器において、上記抵抗線を巻き付けたコア基材の両端部に被せた導電性キャップを備え、上記導電性キャップは、上記コア基材から離間する離間部と、その離間部から他方の導電性キャップ側に延出する延出部とからなる補助電極を兼ねており、上記補助電極は、相互に所定の距離だけ離して配され、上記補助電極によって形成されるコンデンサが上記抵抗線の有する電気抵抗とインダクタンスとの直列成分に並列に接続されることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態の例を詳細に説明する。ここでは、巻線抵抗器の抵抗とインダクタンスの直列成分に並列容量を付加するための構造・方法等について説明する。
【0016】
[実施の形態例1]
図1は、本発明の実施の形態例1に係る巻線抵抗器の製造工程を示している。同図の(a)は、巻線抵抗器の母体となるコア基材1そのものの外観を示している。このコア基材1は、円筒型あるいは円柱形であり、例えば、アルミナ、樹脂、ガラス等の絶縁性材料からなる。同図の(b)に示す工程では、コア基材1の表面に、ほぼ中央位置で分割するようにコンデンサ形成電極2a,2b(後述するように、この電極で形成されるコンデンサが並列コンデンサとして機能するため、ここでは、並列容量電極とも呼ぶ)を形成する。
【0017】
ここで、コンデンサ形成電極2a,2bを形成するには、例えば、コア基材1の表面に所定の金属材(電極材)でめっきを施すか、あるいは、電極材を蒸着させる方法がある。また、コア基材1の表面に電極材を塗布する方法がある。電極材として、めっき、あるいは蒸着に対しては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)等がある。また、塗布する場合は、例えば、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)等を電極材として使用する。
【0018】
この巻線抵抗器では、図1の(b)に示すように、コア基材1のほぼ中央部(ギャップ部3とも呼ぶ)を除く表面において、その基材のほぼ中央位置から分離して形成された電極材が電極部となり、コンデンサを形成する。つまり、導電性の並列容量電極2a,2bが、互いにギャップ部3を介して分離されることで、それらの間に絶縁性のコア基材1が介在し、かかる構成によりコンデンサが形成されることになる。そして、その容量は、主にコア基材1の径およびその材料の誘電率とギャップ部3の幅(図中、“g”で示す)で決まる。
【0019】
図1の(c)では、上記のようにコンデンサが形成されたコア基材1の表面(つまり、塗布等された電極材を含むコア基材の上)に抵抗巻線4を、例えば、螺旋状に巻き付ける。この抵抗巻線4は、例えば、銅ニッケル、あるいはニッケルクロムからなる、絶縁性の材料で被覆された線材である。抵抗巻線4を巻き付けた後、コア基材1の両端に導電性キャップ5a,5bを被せる(同図(d)参照)。その際、抵抗巻線4の端部と導電性キャップ5a,5bとが電気的に接続されるようにする。
【0020】
次の工程で、それぞれの導電性キャップ5a,5bにリードワイヤ6a,6bを接続する(同図(e)参照)。なお、図1(e)は、リードワイヤを除く巻線抵抗器全体に保護膜が塗布されたときの様子を示している。また、リードワイヤ6a,6bの接続には、機械的な強度と電気的に良好な接触を確保するため、例えば、電気溶接等を使用する。
【0021】
図2は、本実施の形態例1に係る巻線抵抗器の部分的な断面構成を示す破断図である。同図に示すように、本実施の形態例1に係る巻線抵抗器は、コア基材上に形成された並列容量電極2a,2b間にコンデンサ21が形成される。そのため、この巻線抵抗器は、使用した抵抗巻線4の抵抗成分と、その巻線の螺旋形状によるインダクタンス成分が電気的に直列につながった状態になっており、それらに対してコンデンサCが並列に接続される構成をとる。
【0022】
図3は、本実施の形態例1に係る巻線抵抗器の電気的な等価回路を示している。同図に示すように、この巻線抵抗器は、抵抗巻線4の抵抗成分Rと、その巻線の主に螺旋形状によるインダクタンス成分Lが直列に接続され、これら直列接続された抵抗成分Rとインダクタンス成分Lに対して並列にコンデンサCが接続された構成になる。
【0023】
言うまでもなく、図3のコンデンサCは、上述したコンデンサ形成電極(並列容量電極)2a,2bによって作り込まれた容量(キャパシタンス)を有する。
【0024】
図4は、本実施の形態例1に係る巻線抵抗器の周波数特性の一例であり、ここでは、目標(ノイズ除去)とする周波数f1〜f2の範囲内において巻線抵抗器のインピーダンス|Z|が最大値をとり、雑音抑止効果を発揮するよう、並列容量電極2a,2b間に形成されるコンデンサの容量を決める。
【0025】
図4に示す特性曲線のうち、実線41は、本実施の形態例1に係る巻線抵抗器の周波数特性の例であり、破線43は、従来の巻線抵抗器(ノイズ除去対策が施されていない)の周波数特性である。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、コア基材の表面にめっき等により、そのほぼ中央部から分離する電極を設け、これらの電極の上から抵抗巻線を巻き付けて抵抗器を構成することで、巻線抵抗器自身が有する抵抗とインダクタンス成分に対して、電極間に形成したコンデンサによる並列容量成分を付加できる。そのため、これらの成分による並列共振によって所望の周波数帯域において大きなインピーダンスを得ることができ、結果として、雑音防止あるいは雑音抑止効果を併せ持った巻線抵抗器を実現できる。
【0027】
すなわち、巻線抵抗器の巻線間に本来的に存在する線間容量に依存することなく、巻線と並列に接続される容量(コンデンサ)を形成することで、積極的な雑音抑制効果を持つ巻線抵抗器を提供できる。
【0028】
[実施の形態例2]
図5は、本発明の実施の形態例2に係る巻線抵抗器の製造工程を示している。同図の(a)は、巻線抵抗器の母体となる、円筒(円柱)型のコア基材31を示している。このコア基材31は、例えば、アルミナ、樹脂、ガラス等の絶縁性材料からなる。同図の(b)は、コア基材31の表面に、抵抗巻線34を、例えば、螺旋状に巻き付けたときの様子を示している。この抵抗巻線34は、例えば、銅ニッケル、あるいはニッケルクロムからなる線材である。
【0029】
図5の(c)に示す工程では、巻線抵抗器に容量成分を付与するために、補助電極としての機能を兼ねた電極キャップを設ける。この電極キャップは、同図(c)に示す外観形状(帽子状)を有する、中空の大型キャップ(並列コンデンサ電極キャップ)35a,35bであり、ここでは、かかる形状の電極キャップをコア基材の両端部に被せる。その際、抵抗巻線34の各端部とキャップ35a,35bとが電気的に接続されるようにする。
【0030】
なお、電極キャップの形状を中空(帽子状)の大型キャップとすることで、抵抗巻線34と離間させる部分を形成し、その部分の表面積を大きく取れるため、離間部分を電極として形成されるコンデンサの容量も大きくすることができる。
【0031】
次の工程では、それぞれの電極キャップ35a,35bにリードワイヤ36a,36bを接続する(同図(d)参照)。なお、これらのリードワイヤの接続方法等は、上記実施の形態例1の場合と同様である。
【0032】
図6は、本実施の形態例2に係る巻線抵抗器の断面構造を示している。同図に示すように、補助電極機能を兼ねた電極キャップ35a,35bによって形成されるコンデンサ61が、抵抗巻線34の抵抗成分とインダクタンス成分とによる直列接続成分に対して、並列容量として接続される。
【0033】
なお、本実施の形態例に係る巻線抵抗器の電気的等価回路は、図3に示す、上記実施の形態例1に係る巻線抵抗器の電気的等価回路と同様である。また、巻線抵抗器の周波数特性についても、上記実施の形態例1に係る巻線抵抗器のそれと同様であるため、ここでは、それらの図示および詳細な説明を省略する。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、巻線抵抗器に補助電極機能を持つ帽子状の電極キャップを設けてコンデンサを形成し、巻線抵抗本来の抵抗成分とインダクタンス成分に並列に、そのコンデンサの容量成分を付与することで、これらの成分による並列共振によって、所望の周波数帯域において大きなインピーダンスを得ることができ、雑音防止あるいは雑音抑止効果を併せ持った巻線抵抗器を実現できる。
【0035】
また、電極キャップの端部に、コンデンサとして機能する補助電極を形成し、それが導電性キャップの機能をも兼ねる構成となっており、しかも、従前のコア基材をそのまま使用しているため、コストアップを抑えつつ、巻線抵抗器として所定の大きさを維持できる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、巻線と並列に接続されるキャパシタを形成し、抵抗とインダクタンス成分との並列共振によって、雑音防止あるいは雑音抑止効果を併せ持った巻線抵抗器およびその製造方法を実現することができる。
【0037】
また、本発明によれば、導電性キャップの機能をも兼ねる補助電極によって形成されるキャパシタと、抵抗とインダクタンス成分との並列共振によって、雑音防止あるいは雑音抑止効果を奏する巻線抵抗器およびその製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る巻線抵抗器の製造工程を示す図である。
【図2】実施の形態例1に係る巻線抵抗器の部分的な断面構成を示す破断図である。
【図3】実施の形態例1に係る巻線抵抗器の電気的な等価回路を示す図である。
【図4】実施の形態例1に係る巻線抵抗器の周波数特性の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態例2に係る巻線抵抗器の製造工程を示す図である。
【図6】実施の形態例2に係る巻線抵抗器の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
1,31…コア基材
2a,2b…コンデンサ形成電極(並列容量電極)
3…ギャップ部
4,34…抵抗巻線
5a,5b…導電性キャップ
6a,6b,36a,36b…リードワイヤ
21,61…コンデンサ
35a,35b…中空大型キャップ(並列コンデンサ電極キャップ)
Claims (3)
- 絶縁性材料からなるコア基材に抵抗線を巻き付けた巻線抵抗器において、
前記コア基材の表面に、ほぼ中央位置で分割し所定間隔離間して形成されたコンデンサ形成電極と、
前記コンデンサ形成電極が形成された前記コア基材の表面に巻き付けた抵抗線と、
前記抵抗線を巻き付けたコア基材の両端部に被せた導電性キャップとを備え、
前記導電性キャップ間の間隔が前記コンデンサ形成電極間の間隔よりも大きく、かつ、前記コンデンサ形成電極によって形成されるコンデンサが前記抵抗線の有する電気抵抗とインダクタンスとの直列成分に並列に接続されることを特徴とする巻線抵抗器。 - 前記コンデンサ形成電極は、金属材料からなる電極材をめっき、蒸着、あるいは塗布して形成されることを特徴とする請求項1記載の巻線抵抗器。
- 絶縁性材料からなるコア基材に抵抗線を巻き付けた巻線抵抗器において、
前記抵抗線を巻き付けたコア基材の両端部に被せた導電性キャップを備え、
前記導電性キャップは、前記コア基材から離間する離間部と、その離間部から他方の導電性キャップ側に延出する延出部とからなる補助電極を兼ねており、
前記補助電極は、相互に所定の距離だけ離して配され、前記補助電極によって形成されるコンデンサが前記抵抗線の有する電気抵抗とインダクタンスとの直列成分に並列に接続されることを特徴とする巻線抵抗器。
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