JP4004613B2 - 球状ガラスプリフォームの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形後に研削または研磨を必要とせずに、そのままレンズ等の光学素子として使用することができるガラスの高精度プレス、いわゆるモールドプレスに使用する球状ガラスプリフォームの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プレス成形等に使用する球状のガラス体を成形する方法として、例えば、特公平7−51446号公報には、流出パイプから流下する溶融ガラスを自然滴下させることによって溶融ガラス塊を落下させ、この溶融ガラス塊を成形型の凹部で受け、その際、凹部に開口する細孔から気体を吹き出し、溶融ガラス塊を凹部内面と非接触状態で回転させて球状に成形する方法が開示されている。しかし、この方法では、落下しようとする溶融ガラスの粘性が高い場合、溶融ガラス塊が流出パイプから流下する溶融ガラスと細い糸状につながった状態で落下し、溶融ガラス塊が上方の溶融ガラスから糸を引いた状態となる。この糸引き部分は溶融ガラス塊の落下により切断され、やがて溶けて溶融ガラス塊に吸収され消失するが、上記従来の方法では、流出パイプの下端から成形型までの距離が短い場合、上記糸引き部分が切断される前や、切断後、糸引き部分が吸収されて消失する前に、溶融ガラス塊が回転を始め、その際、糸引き部分が溶融ガラス塊の内部に巻き込まれて、成形して得た球状ガラス体の内部に折れ込みや、脈理等の不均質部分が生じるという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、折れ込み、脈理、キズ、汚れ等の不良が発生しない球状ガラスプリフォームの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の球状ガラスプリフォームの製造方法の特徴は、第1の成形型の多孔質部材からなる凹状成形面から気体を噴出して、ノズルの先端から流下する溶融ガラス流を非回転状態で上記凹状成形面上に浮上させて保持しつつ、表面張力により溶融ガラス流を切断して溶融ガラス塊を得、切断時に溶融ガラス塊の上面に生じる糸引き部が消失した後、溶融ガラス塊を落下させ、この溶融ガラス塊を第1の成形型の下方に配置した第2成形型の凹状成形面上に受け、その際、第2の成形型の凹状成形面に選択的に開口する細孔から気体を噴出して、溶融ガラス塊を第2の成形型の凹状成形面と非接触状態で保持しながら回転させて球状に成形しつつ冷却するところにある。
【0005】
本発明において、第1の成形型の凹状成形面を構成する多孔質部材は、その表面の全面にわたって多数の微細孔が開口しており、これらの微細孔から噴出するエアーまたは不活性ガス等の気体は、第1の成形型の多孔質部材からなる凹状成形面上に流下する溶融ガラス流の下面全体およびこの溶融ガラス流を切断して得た溶融ガラス塊の下面全体に当たり、溶融ガラス流および溶融ガラス塊にアンバランスな力が加わらないため、溶融ガラス流および溶融ガラス塊は、非回転状態で上記凹状成形面上に浮上して保持される。
【0006】
一方、本発明において、第2の成形型の凹状成形面には、細孔が選択的に開口しており、この細孔から噴出するエアーまたは不活性ガス等の気体は、第1の成形型から落下し第2の成形型の凹状成形面上に非接触状態で保持される溶融ガラス塊の下面の特定の箇所に集中して当たり、溶融ガラス塊にアンバランスな力が加わるため、溶融ガラス塊は回転し、球状に成形されて、冷却される。ここで、第2の成形型の凹状成形面に選択的に開口する細孔の個数は、1個でも複数個でも良いが、溶融ガラス塊を上記凹状成形面と非接触状態で保持しながら回転させるためには、細孔の開口位置および個数は、上記凹状成形面の中心に1個開口させるか、もしくは、上記中心の近くの中心に対して対称な位置に数個開口させるように選択することが好ましく、上記凹状成形面の形状はU字状、ワイングラス状または漏斗状であることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる球状ガラスプリフォームの製造方法の実施の形態の一例を図面に基づき説明する。
図1は、上記実施の形態の一例に使用する第1の成形型の一部断面側面図であり、図2は、上記一例の第1の成形型の上面図である。これらの図における第1の成形型1は、図示しない開閉装置を作動させることにより、中央から水平方向に二分割できる割型であり、図示しないガラス溶融槽に接続されている流出パイプ下端のノズル2の下方に配置されている。また、第1の成形型1とノズル2との間には、可視光または赤外光等の光線を発光する発光部3と光線を受光して信号を発するセンサー4とが対向して設けられている。
【0008】
第1の成形型1の凹状成形面5は、ステンレスを焼結したポーラスメタル等の耐熱性の多孔質部材からなり、その表面および裏面には、それらの全面にわたって多数の微細孔が開口しており、気体の漏出を防止するため、上記凹状成形面5の分割面6は、その両面ともコーティングが施され、上記微細孔が塞がれている。また、凹状成形面5は、割型を閉じ合わせた状態で、全体が凹球面状をなすように形成されている。第1の成形型1を構成する二つの割型の枠体7は、ステンレス等の耐熱金属製であり、それぞれの割型の枠体7の内部には気体供給室8が設けられ、気体供給室8には、それぞれ、気体供給パイプ9が接続されている。また、それぞれの枠体7の外周には、第1の成形型1を冷却するための水冷管10が設けられており、水冷管10には、それぞれ、冷却水を循環させるための冷却水供給管11および冷却水排出管12が接続されている。上記気体供給パイプ9から気体供給室8へエアーや不活性ガス等の気体を供給すると、供給された気体は、多孔質部材内部の微細孔を通じて凹状成形面5に開口している多数の微細孔から噴出する。
【0009】
図3は、上記実施の形態の一例に使用する第2の成形型の側断面図であり、図4は、上記一例の第2の成形型の上面図である。これらの図における第2の成形型13は、図示しない円形の回転テーブル上の同心円上に等間隔に複数個配置されているが、図にはそれらの成形型のうちの一個のみを示す。第2の成形型13は、ステンレス等の耐熱金属製であり、その凹状成形面14の中心には、エアーや不活性ガス等の気体を噴出する細孔15が開口している。
【0010】
球状ガラスプリフォームを製造するにあたっては、まず、図5に示すように、第1の成形型1をノズル2の下方に配置し、第1の成形型1が過熱して溶融ガラスが凹状成形面5に焼き付かないように、水冷管10内に冷却水を循環させて、第1の成形型1を冷却しておく。ついで、ノズル2の下端から溶融ガラス流16を流下させ、第1の成形型1の凹状成形面5上で溶融ガラス流16を受ける。その際、矢印で示すように気体供給パイプ9から気体供給室8へエアーや不活性ガス等の気体を供給し、凹状成形面5の表面に開口する多数の微細孔から気体を噴出させて、第1の成形型1内に流入する溶融ガラス流16を非回転状態で凹状成形面5上に浮上させて保持する。ついで、図6に示すように、表面張力により溶融ガラス流16を切断して溶融ガラス塊17を得る。この切断の際、溶融ガラス塊17の上面には糸引き部18が生じる。
【0011】
ついで、上記糸引き部18が溶融ガラス塊17内に溶け込んで消失すると、図7に示すとおり、発光部3から発する可視光または赤外光等の光線を矢印で示すようにセンサー4が受光して、信号を発信し、この信号により図示しない開閉装置を作動させて第1の成形型1を左右に開き、溶融ガラス塊17を第1の成形型1の下方に配置した第2の成形型13の凹状成形面14上に矢印で示すように落下させる。その際、矢印で示すように気体を供給し、凹状成形面14に開口する細孔15から気体を噴出して、落下した溶融ガラス塊17を凹状成形面14と非接触状態で保持しながら回転させる。また、溶融ガラス塊17が凹状成形面14上に落下した後、直ちに、第2の成形型13を載置した図示しない回転テーブルを回転させて、溶融ガラス塊17を保持した第2の成形型13を第1の成形型1の下方から移動させるとともに、別の空の第2の成形型を第1の成形型1の下方に配置して、次の溶融ガラス塊の落下に備える。一方、開閉装置を作動させて第1の成形型1を閉じ合わて溶融ガラス流16の再度の流下に備える。
【0012】
ついで、図8に示すように、細孔15から引き続き気体を噴出させて溶融ガラス塊17を凹状成形面14と非接触状態で保持しながら回転させて球状に成形しつつ、溶融ガラス塊17の表面が吸引装置等との接触により変形したり、傷ついたりしない温度になるまで冷却し、球状ガラスプリフォームを得た後、得られた球状ガラスプリフォームを図示しない吸引装置により吸引して第2の成形型13から取り出す。
【0013】
【実施例】
(実施例1)
ノズル2下端の内径を4.5mm、第1の成形型1の凹状成形面5の曲率半径を4.0mm、第2の成形型13の凹状成形面14の上端部の内径を10.0mm、凹状成形面14に開口する細孔15の径を2.0mmとし、ノズル2の下端部の温度を1025℃に調整し、第1の成形型1の左右の割型の気体供給室8に、それぞれ1.5リットル/分の空気を供給し、第2の成形型13の細孔15に1.0リットル/分の空気を供給して、SiO2−B2O3−BaO−ZnO−Al2O3−R2O系組成のクラウンガラスを溶融ガラス流16としてノズル2から流下させ、球状ガラスプリフォームを成形した。得られた球状ガラスプリフォームの重量は425mg±0.3mgであり、その内部に折れ込み、脈理等の不均質部分はなく、その表面にキズや汚れは見られなかった。
【0014】
(実施例2)
ノズル2下端の内径を6.0mm、第1の成形型1の凹状成形面5の曲率半径を6.0mm、第2の成形型13の凹状成形面14の上端部の内径を10.0mm、凹状成形面14に開口する細孔15の径を2.0mmとし、ノズル2の下端部の温度を1000℃に調整し、第1の成形型1の左右の割型の気体供給室8に、それぞれ2.0リットル/分の空気を供給し、第2の成形型13の細孔15に1.0リットル/分の空気を供給して、SiO2−TiO2−Na2O−K2O−RO系組成のフリントガラスを溶融ガラス流16としてノズル2から流下させ、球状ガラスプリフォームを成形した。得られた球状ガラスプリフォームの重量は550mg±0.3mgであり、その内部に折れ込み、脈理等の不均質部分はなく、その表面にキズや汚れは見られなかった。
【0015】
【発明の効果】
以上、述べたとおり、本発明の球状ガラスプリフォームの製造方法は、溶融ガラス流を非回転状態で第1の成形型の凹状成形面上に浮上させて保持しつつ、表面張力により溶融ガラス流を切断して溶融ガラス塊を得、切断時に溶融ガラス塊の上面に生じる糸引き部が消失した後、溶融ガラス塊を落下させ、落下した溶融ガラス塊を第2の成形型の凹状成形面と非接触状態で保持しながら回転させて球状に成形しつつ冷却する方法であるから、溶融ガラス塊が回転する際、上記糸引き部が溶融ガラス塊の内部に巻き込まれることがなく、折れ込み、脈理、キズ、汚れ等の不良がない球状ガラスプリフォームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例に使用する第1の成形型の一部断面側面図。
【図2】上記一例の第1の成形型の上面図。
【図3】本発明の実施の形態の一例に使用する第2の成形型の側断面図。
【図4】上記一例の第2の成形型の上面図。
【図5】溶融ガラス流を非回転状態で第1の成形型の凹状成形面上に浮上させて保持している状態を示す模式図。
【図6】表面張力により溶融ガラス流を切断して溶融ガラス塊を得た状態を示す模式図。
【図7】第1の成形型から溶融ガラス塊を落下させる状態を示す模式図。
【図8】溶融ガラス塊を回転させて球状に成形する状態を示す模式図。
【符号の説明】
1 第1の成形型
2 ノズル
5 第1の成形型の凹状成形面
13 第2の成形型
14 第2の成形型の凹状成形面
15 細孔
16 溶融ガラス流
17 溶融ガラス塊
18 糸引き部
Claims (1)
- 第1の成形型の多孔質部材からなる凹状成形面から気体を噴出して、ノズルの先端から流下する溶融ガラス流を非回転状態で上記凹状成形面上に浮上させて保持しつつ、表面張力により溶融ガラス流を切断して溶融ガラス塊を得、切断時に溶融ガラス塊の上面に生じる糸引き部が消失した後、溶融ガラス塊を落下させ、溶融ガラス塊を第1の成形型の下方に配置した第2の成形型の凹状成形面上に受け、その際、第2の成形型の凹状成形面に選択的に開口する細孔から気体を噴出して、溶融ガラス塊を第2の成形型の凹状成形面と非接触状態で保持しながら回転させて球状に成形しつつ冷却することを特徴とする球状ガラスプリフォームの製造方法。
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