JP4004429B2 - 塗布膜の乾燥方法および装置 - Google Patents

塗布膜の乾燥方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布膜の乾燥方法および装置に係り、特に、連続走行する帯状可撓性支持体(以下、ウェブと称する)に各種液状組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面を乾燥する乾燥方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続走行するウェブに各種液状組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面を乾燥する乾燥方法および装置については、E.B.Gutoff、E.D.Cohen 著の『Coating and DryingDefects 』(Wiley-Intersciece, John Wiley & Sons, Inc) に非塗布面側をロールで支持し、塗布面側にエア・ノズルから風を吹いて乾燥させる乾燥方法や、塗布面、非塗布面ともにエア・ノズルから風を吹いて、ウェブを浮上させた状態、すなわちウェブがロール等に接触しないで乾燥させる非接触式のエア・フローティング乾燥方法について記されている。この非接触式の乾燥方法については、スペースを効率良く利用し、かつ効率良く乾燥させる方法として特許文献1に開示されているような弦巻き型の乾燥装置を用いた乾燥方法等がある。
【0003】
通常これらの風を吹かせて乾燥させる方法( 以下、熱風乾燥方法という) では、調湿した風を塗布面に吹きつけることにより、塗布面中に含まれる溶媒を蒸発させて乾燥させている。この熱風乾燥方法は乾燥効率に優れるものの、塗布面に直接または多孔板、整流板等を介して風をあてるために、この風によって塗布面が乱れて塗布層の厚さが不均一となってムラを生じたり、対流によって塗布面での溶媒の蒸発速度が不均一になったりし、いわゆるユズ肌( 例えば、非特許文献1参照。)等が発生して、均一な塗布層が得られないという問題があった。
【0004】
特に、塗布液中に有機溶剤を含む場合には、このようなムラの発生は顕著である。この理由は、乾燥初期には塗布膜中に有機溶剤が十分に含まれた状態であり、この段階で有機溶剤の蒸発分布が生じると、その結果、塗布膜面に温度分布、表面張力分布を生じ、塗布膜面内で、いわゆるマランゴニー対流等の流動が起きることによる。このようなムラの発生は重大な塗布欠陥となる。塗布膜内に液晶を含む場合には、上記の乾燥ムラのみならず、吹きつける風によって塗布膜面の液晶の配向にズレが生じる等の問題もあった。
【0005】
これらの問題点を解決する方法として、特許文献2に塗布直後に乾燥ドライヤを設ける構成が示されている。ここでは、乾燥ドライヤを分割し、分割された部分に支持体の幅方向の一方端側から他方端側へ風速を制御しながら送風し乾燥させることにより、ムラの発生を抑える方法が開示されている。特許文献3には、同様の目的で乾燥ドライヤを分割するかわりに金網を設置する方法が開示されている。
【0006】
また、塗布液を高濃度化したり、塗布液に増粘剤を添加したりすることにより、塗布液の粘度を増加させ、これにより塗布直後の塗布膜面の乾燥風による流動を抑制する方法や、高沸点溶液を用いることにより、塗布直後の塗膜面の乾燥風による流動が発生してもレベリング効果によってムラの発生を防止する方法も知られている。しかしながら、塗布液を増粘させたり、高沸点溶液を使用する方法は、特許文献2でも述べられているように、高速塗布適性をなくしたり、乾燥時間の増大をもたらしたりし、生産効率が極端に悪くなるという問題があった。
【0007】
乾燥風による塗布面の乾燥の不均一を防ぐため、塗布直後の風速を小さく制御する方法が、特許文献4に、また、風を吹きつけないで乾燥させる方法が、英国特許第1401041号明細書、米国特許第5168639号明細書、米国特許5694701号明細書等に開示されている。すなわち、英国特許第1401041号明細書には、風を吹かないで、塗布液中の溶媒を蒸発させ回収し乾燥させる方法が開示されている。この方法は、ケーシング上部に支持体の入り口、出口を設け、ケーシング内では非塗布面を加熱して塗布面からの溶媒の蒸発を促進し、塗布面側に設置した凝縮板に結露させる方法で溶媒を凝縮させて溶媒を回収し塗布膜を乾燥する方法である。また、米国特許第5168639号明細書には、水平に走行する支持体の上部でドラムを使って溶媒を回収する方法が開示されている。さらに、米国特許第5694701号明細書では、米国特許第5168639号明細書のレイアウトの改良方法についての提案がなされている。
【0008】
【特許文献1】
特公昭48−042903号公報
【非特許文献1】
尾崎勇次著、『コーティング工学』、朝倉書店、1971年、293頁〜294頁
【特許文献2】
特開2001−170547号公報 (第3−5頁、第1図)
【特許文献3】
特開平09−073016号公報 (第5頁、第5図)
【特許文献4】
特開2000−157923号公報 (第2−3頁、第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
塗布した後の走行位置に、ケーシングで囲ったドライヤを配置した場合、特に乾燥初期においてムラが発生しやすいため、乾燥初期の風の流れを極力小さくする必要がある。塗布面近傍の風の乱れを防止して、かつ乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥を行うことが望ましい。一般的に有機溶剤ガスは空気より重いので、特に強制風を吹き込んで風の流れを作らなければ、発生した溶剤蒸気の多くは下の方へ自然と拡散する。英国特許第1401041号明細書に記載されているように、塗布面を下向きにした場合には、発生したガスは自重により下方向への移動が促進され、塗布膜のごく近傍付近のガス濃度を高いまま維持するのが難しく、蒸発ムラを生じやすい。また、搬送方向をほぼ垂直にした場合のレイアウトを開示しているが、構成上支持体を反転させたりする必要があり、ゾーン長を長く出来ないなどの制約があった。
【0010】
米国特許第5168639号明細書,米国特許第5694701号明細書では、塗布面を上向きにし、ほぼ水平方向に搬送しているが、この場合発生したガスは支持体の搬送方向に対して垂直横方向流れやすく、この流れが新たなムラを発生する問題があった。
【0011】
また、これまでの従来技術は、溶媒の回収の方法については述べてあるものの、塗布直後の塗布ムラ発生の抑制方法に関する具体的な方法は示されていない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、連続走行するウェブに各種液状組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面において、塗布直後に発生する乾燥ムラを抑制し、かつ効率良く乾燥させる塗布膜の乾燥方法および装置を提供することを目的とする。
【0013】
【議題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、走行するウェブに有機溶剤を含む塗布液が塗布された塗布膜を乾燥させる塗布膜の乾燥方法において、前記塗布直後のウェブの搬送方向が水平方向に対して60度〜90度上向きであって前記ウェブの塗布面が上側であり、複数本のガイドロールを用いて前記上向きの搬送方向を徐々に水平方向に傾斜させ、前記塗布液が前記ウェブに塗布される塗布位置と前記塗布位置に最も近くに設けられた前記ガイドロールとの間隔が2m以下とされ、前記塗布膜からの前記有機溶剤の蒸気が両サイド方向から流れ出ないようにするための風発生抑制部材を含み前記塗布直後のウェブ及び前記複数本のガイドロールを囲むケーシングを備える乾燥機により前記塗布膜を乾燥し、前記ケーシング内部は、前記ウェブを搬送していない状態での風速が0.1m/s以下であることを特徴として構成されている。前記ケーシングを有する乾燥機により、塗布面近傍の風の乱れを防止し乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥を行う。前記1本または複数本のガイドロールが前記乾燥機内に備えられており、これにより、蒸発した溶剤蒸気が自重で下方向に流れる際、塗布膜表面ごく近傍を流れるため、溶剤蒸気を高い濃度で保った状態で乾燥させることが出来る。前記搬送方向は、水平方向に対して60度〜90度上向きで、かつ前記塗布面が上側であることが好ましい。なお、前記搬送方向は、水平方向に対してより好ましくは70度〜89度、最も好ましくは75度〜88度上向きにすることである。搬送角度を60度未満とすると有機溶剤の蒸気が自重で下に落ちていく速度が小さくなり、そのため溶剤蒸気が搬送方向に対して横方向に流れやすくなる。このため、前記塗布膜近傍の蒸気濃度を高濃度に保つことが難しくなる。また、横方向に溶剤蒸気が流れると蒸気濃度ムラが生じやすく、乾燥ムラが起きやすいという問題が生じるときがある。塗布面近傍の風の乱れを防止して、溶剤蒸気を高い濃度で保つため、前記ケーシングの内部は、前記ウェブを搬送していない状態で、風速が0.1m/s以下であることが好ましい。
【0014】
前記乾燥機では、前記ウェブを非塗布面から加熱することが好ましく、前記ウェブの塗布面側で前記有機溶剤の蒸気を凝縮させることがより好ましい。前記複数本のガイドロールの回転中心の各距離は2m以内であることが好ましい。
【0015】
前記塗布位置と前記ケーシングの入口との前記ウェブの搬送方向における距離は0.7m以内であることが好ましい。前記ウェブの搬送方向に略平行に配されて冷却機構を有する板状部材により前記有機溶剤を凝縮し、前記板状部材の凝縮面には、凝縮した前記有機溶剤の重力による流下を促すための流路が前記ウェブの搬送方向に延びて設けられていることが好ましい。
【0017】
前記塗布液前記有機溶剤を50質量%以上含有し、前記乾燥機では塗布された前記塗布液中の前記有機溶剤の70質量%以上を蒸発させることが好ましい。溶媒、特に有機溶剤が塗膜中に多く残った状態で、熱風乾燥手段を用いて乾燥を行うと、乾燥ムラが発生しやすいためである。前記乾燥機による乾燥の後に、熱風により前記塗布膜を乾燥させることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、連続走行するウェブに各種液状組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面を乾燥させる方法において、塗布直後に発生しやすい乾燥ムラを抑制し、かつ効率良く乾燥させることができる。特に、塗布液中に有機溶剤が含まれている場合、または、塗布液の溶媒が全て有機溶剤で構成されている場合に効果が大きい。更に、その有機溶剤が低沸点であれば更に効果は顕著に現れる。
【0019】
なお、有機溶剤とは、物質を溶解する性質をもつ有機化合物を意味し、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、脂肪族または芳香族炭化水素、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、脂肪族または芳香族炭化水素の混合物等が該当する。
【0020】
前記塗布膜のウエット膜厚が50μm以下であることが好ましい。バックアップで支持された前記ウェブにエクストルージョンダイ・コータを用いて塗布することが好ましい。前記ウェブにワイヤーバーコータまたはグラビアコータの少なくともいずれかを用いて塗布することが好ましい。
【0021】
本発明の塗布膜の乾燥装置は、前記目的を達成するために、走行するウェブに有機溶剤を含む塗布液が塗布された塗布膜を乾燥させる塗布膜の乾燥装置であって、塗布直後の前記ウェブの搬送方向が水平方向に対して60度〜90度上向きで塗布面が上側となるようにウェブを非塗布面からガイドし、前記上向きから水平方向に徐々に傾斜させるための複数本のガイドロールと、前記ウェブを搬送していない状態での風速が0.1m/s以下となるように前記ウェブ及び前記複数本のガイドロールを囲むケーシングと、有機溶剤の蒸気がケーシングの両サイド方向から流れ出ないようにする風発生抑制部材と、を備え、塗布液がウェブに塗布される塗布位置とこの塗布位置に最も近くに設けられた前記ガイドロールとの間隔が2m以下であることを特徴とする。ウェブの非塗布面側を加熱する加熱手段が備えられることが好ましく、ウェブの搬送方向に略平行に配されウェブの塗布面側で有機溶剤の蒸気を凝縮する凝縮板を備え、この凝縮板の凝縮面には、凝縮した有機溶剤の重力による流下を促すための流路が前記ウェブの搬送方向に延びて設けられていることが好ましい。前記複数本のガイドロールの回転中心の各距離は2m以内であることが好ましく、塗布位置と前記ケーシングの入口との前記ウェブの搬送方向における距離は0.7m以内であることが好ましい。この乾燥装置は、塗布された塗布液中の有機溶剤の70質量%以上を蒸発させることが好ましく、ウェブの搬送方向でケーシング内部を複数のエリアに区画する仕切板を備え、エリア毎に凝縮板が配されることが好ましく、熱風を吹いて前記塗布膜を乾燥する熱風乾燥装置の上流側に設けられることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に従って本発明に係る塗布膜の乾燥方法および装置の好ましい実施の形態について詳説する。図1は、本発明の塗布膜の乾燥方法および装置が適用される乾燥装置を組み込んだ塗布・乾燥ライン10の一例を示す概念図である。
【0023】
塗布・乾燥ライン10は、ロール状に巻回されたウェブ11を送り出す送出装置12、ウェブ11に塗布液を塗布するためバックアップロール13とエクストルージョンダイ(extrusion die) 14とを備えた塗布装置、ウェブ11上に塗布形成された塗布膜(以下、塗布層とも称する)15を乾燥するドライヤ(乾燥機)16、ウェブ(以下の説明において、塗布層が形成されたものを含む意味で用いる場合がある)が走行する搬送経路を形成する多数のロール17,18,19,および塗布・乾燥により製造された製品20を巻き取る巻取装置21とを備えている。ドライヤ16は、ウェブ11を搬送すると共に搬送角度を変えるために第1ガイドロール22,第2ガイドロール23とを備えていることが好ましい。また、ドライヤ16に風速計24を取り付けウェブ11がそのなかを搬送していない状態で風速が0.1m/s以下となるように密閉されていることが好ましい。なお、ドライヤ16は公知の加熱装置25により所望の温度に保持されウェブ11上の塗布層15を乾燥する。また、ドライヤ16から送り出されたウェブ11の乾燥を進行させるために、熱風乾燥装置26を塗布・乾燥ライン10中に設けても良い。
【0024】
ウェブ11の材料としては、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(セルローストリアセテート)等の樹脂フイルム、紙、金属箔等を使用できる。また、塗布液としては、例えば、光学補償シートを製造する際に用いられる、ディスコティック液晶を含むものや、熱現像用感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子を含むものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明においては、有機溶剤の組成比が50質量%以上の塗布液を用いることが好ましい。
【0025】
塗布装置には、図1に示すエクストルージョンダイ14方式以外のものも使用できる。たとえば、スロット・ダイコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ、グラビアコータ、スライドホッパ塗布方式、カーテン塗布方式、等が使用できる。なお、塗布形態は、塗布面が水平方向に対して上側になるような構成であってもよいし、水平方向に対して下側になるような構成であってもよい。また、水平方向に対して傾斜するような構成であってもよい。
【0026】
塗布装置の前段に除塵設備(図示しない)を設置したり、ウェブ11の表面に前処理等を施してもよい。ゴミ等の殆どない高い品質が求められる光学性フイルム等では、これらを同時に採用することで、高品質な塗布、乾燥膜を得ることができる。
【0027】
ウェブ11の搬送方向の角度(以下、搬送角度と称する)は、水平方向に対して徐々に小さくなるように、バックアップロール13,第1ガイドロール22,第2ガイドロール23の位置決めを行う。位置決めは、ウェブ11の搬送方向と水平方向とがなすが徐々に小さくするように行なえば良いが、図1に示したようにドライヤ16中に2本のガイドロール22,23を備えている場合には、ドライヤ入口での搬送角度θ1,ドライヤ内での搬送角度θ2,ドライヤ出口での搬送角度θ3が下記式に示す関係とすることが好ましい。
60度≦θ3≦θ2≦θ1≦90度,θ3<θ1。
【0028】
ウェブ11の搬送角度を一定に保持し、ウェブ11が撓むなどの搬送異常を抑制するために、塗布位置と第1ガイドロール22との距離L1を2m以下とすることが好ましい。同様に第1ガイドロール22と第2ガイドロール23との距離L2を2m以下とすることが好ましい。なお、図1に示すドライヤ16では、そのなかに2本のガイドロール22,23を備えているものを示したが、さらに多数のガイドロールを備えることも可能である。この場合にも、隣接するガイドロール同士の距離は、2m以下とすることが好ましい。また、ガイドロールは1本のみ用いても良い。
【0029】
ドライヤ16は、塗布液を塗布した直後の自然対流の発生による塗布層15の乾燥ムラを防止するため、塗布装置のできるだけ近くに配設することが好ましい。なお、ドライヤ16は、塗布後のウェブの走行位置をケーシング16aにより囲い、塗布面近傍の風の乱れを防止する。さらに、乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保持して乾燥するために、急激な乾燥に伴うウェブ11,塗布層15の変形を防止できる。具体的には、ドライヤ16の入口と塗布装置との間隔L3が2m以内の位置になるように配設することがより好ましく、0.7m以内の位置になるように配設することが最も好ましい。ドライヤ16により塗布層15の乾燥が進行したウェブ11をロール17で支持しながら熱風乾燥装置26に送り込む。なお、ロール17は、自由ロールでも良いし、駆動装置(図示しない)を取り付けた駆動ロールであっても良い。
【0030】
ドライヤ16中に、複数のガイドロール22,23を配置することで、搬送上の制約を受けることなくケーシング長を自在に決めることが出来る。ガイドロール22,23が加熱装置25によって加熱されて温度が高くなってしまう場合には、ガイドロールにジャケットを取り付けたジャケットロールにして温度制御することが望ましい。
【0031】
熱風乾燥装置26には、従来技術として使用されている、非塗布面側をロールで支持し、塗布面側にエア・ノズルから風を吹いて乾燥させるローラ搬送ドライヤ方式、塗布面、非塗布面ともにエア・ノズルから風を吹いて、ウェブを浮上させた状態、すなわちウェブがロール等に接触しないで乾燥させる非接触式のエアフローティングドライヤ方式、非接触式の乾燥方式の一種で、スペースを効率良く利用し、かつ効率良く乾燥させる弦巻き型の乾燥方式、等の乾燥装置が使用できる。いずれの方式の乾燥装置であっても、乾燥した空気を塗布層の表面に供給して塗布層を乾燥させる点では共通する。
【0032】
その後に、ロール18,19などで支持しながら製品20として巻取装置21で巻き取る。なお、ロール18,19もロール17と同様に、自由ロール,駆動ロールのいずれを用いても良い。
【0033】
図2に示す、塗布・乾燥ライン40を用いてウェブ11上にエクストルージョンダイ14により塗布液を塗布して塗布層41を形成する。ドライヤ42には、板状部材43,44,45と加熱装置46,47,48とが備えられている。また、それぞれの板状部材43〜45を分割して設置するために、ドライヤ42内のドライヤ入口と第1ガイドロール49との間である第1区画42a、第1ガイドロールと第2ガイドロール50との間である第2区画42bと、第2ガイドロール50とドライヤ出口との間である第3区画42cに分割可能なように、仕切り板51,52を取り付けることが好ましい。
【0034】
板状部材43〜45は、ウェブ11と所定距離をおいてその搬送方向に対して略平行に設けることができる。板状部材は整流板として用いても良い。または、ムラの発生なく塗布層41を乾燥させるには塗布層41の乾燥速度を制御するように、温度管理されていることが好ましい。板状部材は、温度コントロールできるようにし、冷却したい場合には、冷却するための設備を設置する必要がある。冷却には、冷媒等を使った水冷式の熱交換器方式のもの、風を使った空冷式、電気を用いた方式、たとえばペルチェ素子を使用した方式、等を用いることができる。
【0035】
図2では、板状部材に冷却器53〜55を取り付けて、蒸発した有機溶剤を凝縮、回収する凝縮板を図示しており、以下の説明では板状部材を凝縮板43〜45とした例を用いて説明する。なお、板状部材に用いる材質は、金属、プラスチック、木材等、特に限定はされないが、塗布液中に有機溶剤が含まれる場合には、その有機溶剤に対して耐性のある材料を使用するか、または表面にコーティングを施すことが望ましい。
【0036】
図3を用いて凝縮板43の形態をさらに説明する。なお、他の凝縮板44,45も同様の形態とすることが好ましい。凝縮板43に凝縮した有機溶剤を回収させる手段は、たとえば、凝縮板43の凝縮面に凸部43aと凹部43bとを形成し、少なくともいずれか一方が重力の働く方向に凝縮溶剤の流路とする。また、凝縮板43の右端の下方には凝縮した有機溶剤を回収するための樋43cが設けられており、樋43cを経て有機溶剤が回収される。なお、図4に示すように凝縮面に凸部43a,凹部43bを形成した場合、流下の駆動力である重力の作用を妨げるような余分力が発生しないように、大きく深い溝や、毛管力が働くような細かな溝は好ましくない。ドライヤに板状部材である凝縮板を採用する構成以外に、同様な機能を奏する構成、たとえば、多孔板、網、簀の子、ロール等を使用する構成も採用できる。また、米国特許第5694701号明細書に示されるような回収装置と併用してもよい。なお、凝縮板43内に空隙43dを設け、冷媒56を通液することで有機溶剤を凝縮回収する際に、温度制御を容易に行なうことができ効率よく回収できる。
【0037】
ドライヤ42内に複数の加熱装置46〜48を備え、塗布層41中の溶剤の蒸発を促進させると共に制御することが好ましい。ウェブ11上に塗布層41が形成されていない面側に加熱装置46,47,48を設けることが好ましい(図2参照)。また、昇温可能な搬送ロール(加熱ロール)を配設して加熱することもできる。その他、赤外線ヒータ、マイクロ波加熱手段等を用いて加熱してもよい。赤外線のヒーターを用いる場合、表面フラットの箱形のジャケット構造にして、そこに温水を流して低温赤外線ヒーターとして用いるのが好ましい。設定距離と温度を精度よくコントロールすることで、乾燥中の塗膜温度を繊細に制御することが可能である。
【0038】
塗布層41の表面41aと凝縮面43aとの間隔L4は、所望の塗布層41の乾燥速度を考慮した上で、適当な距離に調整する必要がある。間隔L4を短くすると乾燥速度が上がる一方、設定した距離精度の影響を受けやすい。また、塗布層表面41aと凝縮面43aとが接触する可能性が大きくなる。一方、間隔を大きくすると乾燥速度が大幅に低下するのみならず、熱による自然対流が起きて乾燥ムラを引き起こす。そこで、間隔L4は、5mm〜10mmの範囲であることが好ましい。
【0039】
ドライヤをケーシングで覆う形態以外に、例えばサイドプレートを取り付けることも可能である。これにより、蒸発した有機溶剤が放出されたり、不均一なガスがドライヤ内に入ることにより発生する不均一な風の発生を抑制する。なお、本発明において、ドライヤのサイドを略密閉するものであれば、その形態は特に限定されるものではない。
【0040】
ウェブ11の走行速度は、ウェブが塗布装置による塗布後3秒以内にドライヤに到達する速度であることが好ましい。塗布液の塗布量および塗布層厚さは、大きい程塗布層内部での流動が起きやすいことよりムラが発生しやすいが、本発明によれば、塗布量および塗布層厚さが大きい場合でも十分な効果が得られる。特に塗布層の厚さ(塗布ウェット膜厚)が0.001mm〜0.05mm(1μm〜50μm)であれば、ムラなくかつ効率よく乾燥することができる。なお、本発明において塗布ウェット膜厚とは、塗布時にウェブに付与される総塗布厚みを意味している。
【0041】
塗布層15のムラは、乾燥初期で特に発生しやすいので、ドライヤ16が塗布液中の溶媒の70質量%以上を乾燥、若しくは凝縮させて、回収し、残りの塗布液を熱風乾燥装置26で乾燥させることが好ましい。塗布液中の溶媒の何質量%を乾燥させるかは、塗布層の乾燥ムラへの影響、生産効率、等を総合的に判断して決定すればよい。また、ウェブ11の走行速度が速すぎると、同伴風によって塗布層近傍の境界層が乱され、塗布層に悪影響を及ぼす。したがって、ウェブ11の走行速度は1m/分〜100m/分に設定することが好ましい。
【0042】
本発明では、塗布層15中の有機溶剤の蒸発、凝縮を促進させるため、ウェブ11の塗布面側に配置されている凝縮板43〜45を冷却し、反対面側を加熱装置46〜48により加熱している。この場合に、ウェブ11と塗布層15、凝縮板43〜45の温度を決定する際、注意しなければならないのは、蒸発させた溶剤が凝縮板以外の場所、例えば、ガイドロール22,23の表面等に結露させないことである。例えば、凝縮板以外の部分の温度を凝縮板の温度よりも高くしておくことによりこの種の結露を回避することができる。特に樋43c,44c,45cには冷却された有機溶剤が流れ込み、冷やされるため、結露防止の保温機構を設けると良い。温水を利用した熱交方式でも良いし、簡単に断熱部材を用いたものでもよい。
【0043】
その他、本発明の塗布膜の乾燥方法および装置が適用される乾燥装置を組み込んだ塗布・乾燥ラインに使用されている送出装置、ガイドロール、巻取装置等には慣用の部材を使用しており、それらの説明は省略する。以上に詳述した本発明の塗布膜の乾燥方法及び装置によれば、塗布直後の塗布層15に発生するムラを抑制しかつ効率よく均一に塗布層を乾燥できる。また、塗布、乾燥工程のレイアウトを大きく変更することなく、さらに、塗布液の物性や溶媒の種類等に制約されないので、塗布液処方手段の柔軟な設計が可能である。
【0044】
すなわち、既存の熱風乾燥装置を含む塗布・乾燥ラインの塗布装置と熱風乾燥装置との間に、塗布直後のウェブの走行位置に塗布面近傍の風の乱れを防止し、乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥を行うケーシングで囲ったドライヤを配置するだけで、本発明の乾燥方法及び装置と同様の形態にでき、その結果、低コストで装置改造ができる。もちろん、前述のように溶媒を凝縮・回収する機構を設けると更に望ましい設備となる。
【0045】
また、本発明の塗布膜の乾燥方法及び装置を用いると、乾燥初期において非常に均一な乾燥が可能なため、次のような予期しなかった効果が得られることがわかった。すなわち、従来の熱風乾燥装置では、塗布層を乱す影響を完全には抑えられないため、塗布層内に流動を生じていたが、本発明の装置を用いると、それらの流動を防止でき、また、乾燥中に形成される塗布層中の高分子、粒子のネットワークの構造を非常に細かく、しかも均一に形成できることがわかった。これにより、単に塗布層を均一に乾燥させるだけのみならず、塗布層の構造が細かくなることにより、たとえば、光学フイルムの場合、新たな付加機能を追加できることにもつながる。また、本発明の塗布膜の乾燥装置は、たとえば、ナノ粒子等が含まれる機能性膜の乾燥等にも非常に適しているといえる。
【0046】
本発明の塗布膜の乾燥方法及び装置は、塗布液に高分子や粒子等の固形分が溶解または分散されたものに適用した場合でも、同様の効果が得られる。むしろ、粒子等が含まれる系では、乾燥ムラの発生が塗布層中の粒子の分散分布にも大きく影響する。したがって、この系に本発明を使用することは好ましい。
【0047】
本発明は、光学補償シート等の光学的機能性フイルムシート、感光材料用のフイルムの溶剤下塗り、熱現像感光材料、ナノ粒子等の微細構造粒子を含む機能性フイルム、写真用フイルム、写真用印画紙、磁気記録テープ、接着テープ、感圧記録紙、オフセット版材、電池などの製造に使用することが可能となる。
【0048】
【実施例】
<実験1>
光学補償シートの製造ラインにおける塗布層の乾燥工程に、塗布直後の走行位置に、塗布面近傍の風の流れを防止するケーシングで囲ったドライヤを配設して、光学補償シートを製造する上での好適なドライヤ内の搬送方向を検討した。
【0049】
光学補償シートの製造ラインは、たとえば下記の工程により行われる。
1)透明フィルの送出工程;
2)透明フイルムの表面に配向膜形成用樹脂を含む塗布液を塗布、乾燥する配向膜形成用樹脂層の形成工程;
3)表面に配向膜形成用樹層が形成された透明フイルム上に、樹脂層の表面にラビング処理を施し透明フイルム上に配向膜を形成するラビング工程;
4)液晶性ディスコティック化合物を含む塗布液を、配向膜上に塗布する液晶性ディスコティック化合物の塗布工程;
5)塗布層を乾燥して該塗布層中の溶媒を蒸発させる乾燥工程;
6)前記塗布層をディスコティックネマティック相形成温度に加熱して、ディスコティックネマティック相の液晶層を形成する液晶層形成工程;
7)前記液晶層を固化する(すなわち、液晶層形成後急冷して固化させるか、または、架橋性官能基を有する液晶性ディスコティック化合物を使用した場合、液晶層を光照射(または加熱)により架橋させる)工程;
8)該配向膜および液晶層が形成された透明フイルムを巻き取る巻取り工程。
【0050】
光学補償シートの製造方法は、実施例1では、長尺状透明フイルムを送り出す工程から、得られた光学補償シートを巻き取る工程まで一貫して連続的に行なった。トリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フイルム(株)製、厚さ:100μm、幅:500mm)の長尺状のフイルムの一方の側に、長鎖アルキル変成ポバール(MP−203、クラレ(株)製,なおポバールは登録商標)5重量%溶液を塗布し、90℃で4分間乾燥させた後、ラビング処理を行って膜厚2.0μmの配向膜形成用樹脂層を形成した。フイルムの搬送速度は、20m/分であった。
【0051】
上記トリアセチルセルロースフイルムは、フイルム面内の直交する二方向の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、そしてフイルムの厚さをdとしたとき、
(nx−ny)×d=16nm、
{(nx−ny)/2−nz}×d=75nmであった。また、上記配向膜形成用樹脂層の形成は、本発明に係る乾燥装置(塗布面方向は上,塗布後の搬送方向は、ドライヤ入口での搬送角度θ1は90度,ドライヤ出口での搬送角度θ3は84度)を備えた塗布・乾燥ラインを用いて行なった。
【0052】
続いて、得られた樹脂層を有するフイルムを、連続して20m/分で搬送しながら、樹脂層表面にラビング処理を施した。ラビング処理は、ラビングローラの回転数を300rpmにて行い、次いで得られた配向膜の除塵を行った。
【0053】
得られた配向膜を有するフイルムを、連続して20m/分の速度で搬送しながら、配向膜上に、化1に示すディスコティック化合物TE−(1)とTE−(2)の重量比で4:1の混合物に、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を上記混合物に対して1重量%添加した混合物の10重量%メチルエチルケトン溶液(塗布液)を、ワイヤーバー塗布機にて、塗布速度を20m/分、塗布量を5cc/m2 で塗布し、次いで乾燥および加熱ゾーンを通過させた。乾燥ゾーンには風を送り、加熱ゾーンは130℃に調整した。塗布後3秒後に乾燥ゾーンに入り、3秒後に加熱ゾーンに入った。加熱ゾーンは約3分で通過した。
【0054】
【化1】
Figure 0004004429
【0055】
続いて、この配向膜および液晶層が塗布されフイルムを、連続して20m/分で搬送しながら、液晶層の表面に紫外線ランプにより紫外線を照射した。すなわち、上記加熱ゾーンを通過したフイルムは、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、液晶層を架橋させた。
【0056】
表1に示す塗布方式及び塗布後の搬送方向を変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例2〜4及び比較例1〜5を上記の工程により行った。なお、評価は、乾燥ムラの発生なく、均一な塗膜品質が得られているときには○とし、乾燥ムラによって塗布面に乱れが生じ、均一な塗膜品質が得られていないときには、×とした。その条件および結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0004004429
【0058】
<実験2>
実験2では、熱現像感光材料の製造ラインの乾燥工程に、凝縮・回収するドライヤ(前段側)と熱風乾燥装置(後段側)とを組み合わせた乾燥手段を配設し、ドライヤ内の搬送方向を塗布面上側で90度(入口) 〜60度(出口) になるように調節した場合の実施例5と、ドライヤ内の搬送方向を塗布面上側で15度(入口) 〜0度(出口) になるように場合の比較例6とを対比した。
【0059】
ウェブに塗布する熱現像感光材料用の塗布液は次のように調製した。
1)ハロゲン化銀粒子の調製
水700mリットルにフタル化ゼラチン22gおよび臭化カリウム30mgを溶解して温度35℃にてpHを5に調整した後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mリットルと臭化カリウムと沃化カリウムとを92:8のモル比で含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で10分間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.4gを含む水溶液476mリットルと六塩化イリジウム酸第二カリウムを10.5μモル/リットルと、臭化カリウムを1モル/リットルで含む水溶液pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で30分間かけて添加した。その後、pHを下げて凝集沈降させ脱塩処理をし、フェノキシエタノール0.11gを加え、pH5.9,pAg8.2に調整し、沃臭化銀粒子(沃素含量コア8モル%、平均2モル%、平均サイズ0.05μm、投影面積変動係数8%、(100)面比率90%の立方体粒子)を調製した。こうして得たハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1モル当たりチオ硫酸ナトリウム85μモルと、2,3,4,5,6 −ペンタフルオロフェニルジフェニルフォスフィンセレニドを11μモル、15μモルのテルル化合物、塩化金酸3.6μモル、チオシアン酸280μモルを添加し、120分間熟成した後、30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤を得た。
【0060】
2)有機酸銀乳剤の調製
ステアリン酸1.3g、アラキジン酸0.5g、ベヘン酸8.5g、蒸留水300mリットルを、90℃で40分間混合し、激しく攪拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液31.1mリットルを15分かけて添加した後、30℃に昇温した。次に、1Nのリン酸水溶液7mリットルを添加し、より激しく攪拌しながらN−ブロモスクシンイミド0.012gを添加した後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をハロゲン化銀量が2.5mモルになるように添加した。さらに、1Nの硝酸銀水溶液25mリットルを25分かけて添加し、そのまま90分間攪拌し続けた。その後、吸引ろ過で固形分をろ別し、固形分をろ過水の伝導度が30μS・cmになるまで水洗いした。こうして得られた固形分にポリ酢酸ビニルの1.2重量%の酢酸ブチル溶液37gを加えて攪拌し、攪拌を止めて放置し、油層と水層に分離させ、含まれる塩とともに水層を除去し、油層を得た。次に、この油層にポリビニルブチラールの2.5重量%2−ブタノン溶液20gを添加し攪拌した。さらに、過臭化ピリジニウム0.1mモルと、臭化カルシウム二水和物0.18mモルを0.7gメタノールとともに添加した後、2−ブタノン40gとポリビニルチラールの7.8gを添加し、ホモジナイザで分散し、有機酸銀塩乳剤(平均短径0.04μm、平均長径1μm、変動係数30%の針状粒子)を得た。
【0061】
3)乳剤層塗布液の調製
上記で得た有機酸銀乳剤に銀1モル当たり以下の量になるように各薬品を添加し、乳剤層塗布液を得た。25℃でフェニルチオスルホン酸ナトリウム10mg、68mgの色素1、30mgの色素2、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール2g、4−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸21.5gと、2−ブタノン580g、ジメチルホルムアミド220gを攪拌しながら添加し、3時間放置した。ついで、5−トリブロモメチルスルフォニル−2−メチルチアジアゾール8g、2−トリブロモメチルスルフォニルベンゾチアゾール6g、4,6−ジトリクロロメチル−2−フェニルトリアジン5g、ジスルフィド化合物2g、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5トリメチルヘキサン160g、テトラクロロフタル酸5g、1.1gのフッ素系界面活性剤、2−ブタノン590g、メチルイソブチルケトン10gを攪拌しながら添加した。
【0062】
上記の如く調製した乳剤層塗布液を青色染料で色味付けした175μmのポリエチレンテレフタレート支持体(ウェブ)に、銀が2.3g/cm2 になるように塗布した。そして、塗布後、実施例5の場合には凝縮・回収するドライヤ(前段側)と熱風乾燥装置(後段側)とを組み合わせた乾燥手段を配設し、ドライヤ内の搬送方向を塗布面上側で90度(入口) 〜60度(出口) になるように配置し乾燥させた後、紫外線照射して熱現像感光材料を得た。一方、比較例6の場合にはドライヤ内の搬送方向を塗布面上側で15度(入口) 〜0度(出口) になるように配置し乾燥した後、紫外線照射して熱現像感光材料を得た。実施例5の方法で製造した製品の表面性状は良好であった。一方、比較例6の方法で製造した製品の表面性状は、風ムラの影響を受け不良となった。
【0063】
【発明の効果】
本発明の塗布膜の乾燥方法および装置によれば、連続走行するウェブに各種液状組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布層面において、塗布直後に発生する乾燥ムラを抑制しかつ効率よく均一に塗布層を乾燥できる。また、塗布、乾燥工程のレイアウトを大きく変更することなく、さらには塗布液の物性や溶媒の種類等に制約されないので、塗布液処方手段の柔軟な設計が可能である。また、省エネルギー化、コストダウンにも効果がある。さらに、塗布層内の流動を防止でき、また、乾燥中に形成される塗布層中の高分子、粒子のネットワークの構造を非常に細かく、しかも均一に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塗布膜の乾燥方法に用いられる塗布・乾燥ラインの概略図である。
【図2】本発明の塗布膜の乾燥方法に用いられる塗布・乾燥ラインの他の実施形態の概略図である。
【図3】本発明に用いられる凝縮板の実施形態を示す図である。
【図4】図3のIV−IV線の断面図である。
【符号の説明】
10,40 塗布・乾燥ライン
11 ウェブ
15,41 塗布層
16,42 ドライヤ
θ1,θ2,θ3 搬送角度
43,44,45 凝縮板
46,47,48 加熱装置

Claims (16)

  1. 走行するウェブに有機溶剤を含む塗布液が塗布された塗布膜を乾燥させる塗布膜の乾燥方法において、
    前記塗布直後のウェブの搬送方向が水平方向に対して60度〜90度上向きであって前記ウェブの塗布面が上側であり、複数本のガイドロールを用いて前記上向きの搬送方向を徐々に水平方向に傾斜させ、
    前記塗布液が前記ウェブに塗布される塗布位置と前記塗布位置に最も近くに設けられた前記ガイドロールとの間隔が2m以下とされ、
    前記塗布膜からの前記有機溶剤の蒸気が両サイド方向から流れ出ないようにするための風発生抑制部材を含み前記塗布直後のウェブ及び前記複数本のガイドロールを囲むケーシングを備える乾燥機により前記塗布膜を乾燥し、
    前記ケーシング内部は、前記ウェブを搬送していない状態での風速が0.1m/s以下であることを特徴とする塗布膜の乾燥方法。
  2. 前記乾燥機では、前記ウェブを非塗布面から加熱することを特徴とする請求項1記載の塗布膜の乾燥方法。
  3. 前記乾燥機では、前記ウェブの塗布面側で前記有機溶剤の蒸気を凝縮させることを特徴とする請求項2記載の塗布膜の乾燥方法。
  4. 前記複数本のガイドロールの回転中心の各距離は2m以内であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥方法。
  5. 前記塗布位置と前記ケーシングの入口との前記ウェブの搬送方向における距離は0.7m以内であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥方法。
  6. 前記ウェブの搬送方向に略平行に配されて冷却機構を有する板状部材により前記有機溶剤を凝縮し、前記板状部材の凝縮面には、凝縮した前記有機溶剤の重力による流下を促すための流路が前記ウェブの搬送方向に延びて設けられていることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥方法。
  7. 前記塗布液は前記有機溶剤を50質量%以上含有し、前記乾燥機では塗布された前記塗布液中の前記有機溶剤の70質量%以上を蒸発させることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥方法。
  8. 前記乾燥機による乾燥の後に、熱風により前記塗布膜を乾燥させることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つ記載の塗布膜の塗布方法。
  9. 走行するウェブに有機溶剤を含む塗布液が塗布された塗布膜を乾燥させる塗布膜の乾燥装置であって、
    塗布直後の前記ウェブの搬送方向が水平方向に対して60度〜90度上向きで塗布面が上側となるように前記ウェブを非塗布面からガイドし、前記上向きから水平方向に徐々に傾斜させるための複数本のガイドロールと、
    前記ウェブを搬送していない状態での風速が0.1m/s以下となるように前記ウェブ及び前記複数本のガイドロールを囲むケーシングと、
    前記溶剤の蒸気が前記ケーシングの両サイド方向から流れ出ないようにする風発生抑制部材と、
    を備え、
    前記塗布液が前記ウェブに塗布される塗布位置と前記塗布位置に最も近くに設けられた前記ガイドロールとの間隔が2m以下であることを特徴とする塗布膜の乾燥装置。
  10. 前記ウェブの非塗布面側を加熱する加熱手段が備えられることを特徴とする請求項9記載の塗布膜の乾燥装置。
  11. 前記ウェブの搬送方向に略平行に配され前記ウェブの塗布面側で前記有機溶剤の蒸気を凝縮する凝縮板を備え、
    前記凝縮板の凝縮面には、凝縮した前記有機溶剤の重力による流下を促すための流路が前記ウェブの搬送方向に延びて設けられていることを特徴とする請求項10記載の塗布膜の乾燥装置。
  12. 前記複数本のガイドロールの回転中心の各距離は2m以内であることを特徴とする請求項9ないし11いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥装置。
  13. 前記塗布位置と前記ケーシングの入口との前記ウェブの搬送方向における距離は0.7m以内であることを特徴とする請求項9ないし12いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥装置
  14. 塗布された前記塗布液中の前記有機溶剤の70質量%以上を蒸発させることを特徴とする請求項9ないし13いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥装置。
  15. 前記ウェブの搬送方向で前記ケーシング内部を複数のエリアに区画する仕切板を備え、前記エリア毎に前記凝縮板が配されることを特徴とする請求項9ないし14いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥装置。
  16. 熱風を吹いて前記塗布膜を乾燥する熱風乾燥装置の上流側に設けられることを特徴とする請求項9ないし15いずれか1つ記載の塗布膜の乾燥装置。
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