JP4003056B2 - スピニング成形方法、およびスピニング成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピニング成形方法、およびスピニング成形装置に関し、さらに詳しくは、素材管に対して成形工具を相対的に公転させながら成形進行方向に移動させることにより、素材管を所定の角度に偏角成形するスピニング成形方法およびスピニング成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば車両の内燃機関などの燃焼機関においては、排気ガスを流通・排出するための排気系システムが接続されている。排気系システムは、燃焼機関から排出されエキゾーストマニホールドから流通される排気ガスを酸化・還元などの化学反応を作用させて浄化処理を行うための触媒コンバータを備えている。
【0003】
触媒コンバータは、触媒容器の内部に触媒担体を収容することにより構成されている。図20に示すように、触媒容器1”は、一般に、その長手方向略中央に配置されて触媒担体2を収容する比較的大径の触媒設置部1aと、両端に配置されて内燃機関の排気管および導出管にそれぞれ接続される比較的小径の接合部1bと、触媒設置部1aの両端部と各接合部1bとの間で漸次径が変化するようにロート状に形成されるコーン部1cとを備えている。
【0004】
このような触媒コンバータを製造する場合においては、図1および図2に示した一般的なスピニング成形装置を使用して中空状の素材管1を縮径させて、触媒設置部1aとコーン部1cと接合部1bとを一体に成形することが近年行われるようになっている。
【0005】
図1および図2に示したスピニング成形装置は、概略、素材管1を保持するクランプ手段11と、素材管1をその径方向に移動させる径方向移動手段12と、素材管1をその軸方向に移動させる軸方向移動手段13と、素材管1に対して成形工具であるローラ10を公転駆動する公転駆動手段14と、ローラ10の公転径を変更する公転径変更手段(図示は省略する)と、を備えている。
【0006】
このような構成のスピニング成形装置を使用して触媒コンバータを製造する場合では、触媒設置部1aと略同じ径を有する中空状の素材管1をクランプ手段11に保持させて、公転駆動手段14によりローラ10を公転させ、軸方向移動手段13によってローラ10を素材管1のスピニング成形開始位置となる触媒設置部1aとコーン部1cとの境界位置に相対的に配置し、図示しない公転径変更手段によって素材管1にローラ10を押し当てながら軸方向移動手段13によってローラ10を素材管1のスピニング成形開始位置から端部に向かって相対的に軸方向に移動させて、素材管1の一方の端部をスピニング成形して縮径させる。そして、触媒担体2をマット3(図20を参照)に巻回した状態で素材管1のスピニング成形されていない他方の端部から挿入し、この他方の端部を同様にスピニング成形によって縮径させる。
【0007】
また、図1および図2に示したスピニング成形装置では、スピニング成形時において、素材管1をさらに径方向に移動させることによって、触媒設置部1aの中心軸線C1に対して接合部1bの中心軸線C2が並行にずれて偏心するよう成形することもできる。
【0008】
ところで、触媒容器1”のなかには、排気系システムの配置などの要請から、図20に示したように、触媒設置部1aの中心軸線C1に対してコーン部1cおよび接合部1bの中心軸線C2が最終的に所定の角度θ5を形成するように偏角成形されたものがある。さらに、かかる触媒容器1”のなかには、図17および図18に参照されるように、一方のコーン部1cおよび接合部1bの中心軸線C2に対して、他方のコーン部1cおよび接合部1bの中心軸線C2が、触媒設置部1aの中心軸線C1回りに所定の角度αを形成して、位相を異ならせるように偏角成形されるものもある。
【0009】
素材管にスピニング加工を施して、中心軸線に対して所定の角度で偏角させるための従来の技術としては、特開平11−151535号公報に開示されているように、ワーク(素材管)の管軸とロール(成形工具)の公転軸を相対的に傾斜させてスピニング加工を施すことを特徴とする管端の成形方法、および、ワークの管軸とロールの公転軸を相対的に傾斜させることを特徴とする管端の成形方法とその装置が知られている。さらに、当該公報には、上記ロールはそのロール公転軸を中心に公転させるとともに公転軸を中心とする放射方向に移動させ、ワークは、その管軸を中心として回転しないように保持することも記載されている。
【0010】
そして、当該公報においては、ワークの管軸とロールの公転軸を相対的に傾斜させるために、ワークを保持するクランプ装置にモータ等のワークの傾動手段を設けて、この傾動手段によってクランプ装置を回転させることが記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術にあっては、図20に示すように、コーン部および接合部の中心軸線を触媒設置部の中心軸線に対して偏角成形すべくスピニング加工を行うときに、ワーク(素材管)の管軸とロール(成形工具)の公転軸を相対的に傾斜させるために、スピニング成形装置のワークを保持するクランプ装置にモータ等のワークの傾動手段を設ける必要があり、スピニング成形装置の小型化やコスト削減を図ることができなかった。
【0012】
また、上記従来の技術のように、傾動手段によってクランプ手段を回転させてワークの管軸とロールの公転軸を相対的に傾斜させてスピニング成形を行なう場合には、図20に示したように、触媒容器1”の触媒設置部1aとコーン部1cの境界面Kが触媒設置部1aの中心軸線C1と略直交することがなく傾斜するように成形される。一方、触媒設置部1aに収容される触媒担体2は、その端面が中心軸線と略直交する略円筒形であるのが一般的である。そのため、触媒設置部1aとコーン部1cの境界面Kと、触媒担体2の端面との間には、位置によって距離が異なるクサビのような空間Sが形成されることとなる。このようにスピニング成形品された製品を上述したように触媒コンバータの触媒容器1”に使用する場合、排気ガスは、コーン部1cから上記クサビのような空間S内で位置によって距離が異なる空間を介して、触媒担体2の端面に導入される。そのため、排気ガスを触媒担体2の端面全体から均等に導入させることができず、排気ガスの浄化効率を向上させることができないなどの問題もあった。さらに、図20に示したように、触媒設置部1aとコーン部1cの境界面Kが触媒設置部1aの中心軸線C1に対して傾斜するように成形された触媒容器1”にあっては、境界面と触媒担体の端面との間にクサビ状の空間Sが形成されるため、全体の長さL”が長くなり、触媒コンバータを設置する場所に大きなスペースを要するという問題や、触媒容器を成形するために多量の素材を要するなどの問題があった。
【0013】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、従来の技術のように素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線とを相対的に傾斜させることなく、素材管を容易に偏角させることができるスピニング成形方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、従来の技術のようなワークの傾動手段を設けることなく、素材管を容易に偏角させることができ、もって、小型で安価に製作することができるスピニング成形装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1のスピニング加工方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材管を所定の角度に偏角させるスピニング成形方法であって、素材管と成形工具とを相対的に公転させると共に、素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線とを相対的に偏心させつつ、偏角させる方向に応じて、公転する成形工具の素材管に対する周方向の位置と同期して、素材管に対する成形工具の相対的な軸方向への移動を制御して、素材管と成形工具とを相対的に成形進行方向に移動させることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2のスピニング成形装置に係る発明は、上記目的を達成するため、素材管に対して成形工具を相対的に、公転させる公転駆動手段、軸方向に移動させる軸方向移動手段、および径方向に移動させることにより偏心させる径方向移動手段を備えてなり、素材管を所定の角度に偏角させるスピニング成形装置であって、偏角させる方向に応じて、公転する成形工具の素材管に対する周方向の位置と同期して、素材管と成形工具とを相対的に軸方向に往復移動させる往復移動手段を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項1の発明では、素材管と成形工具とを相対的に公転させながら、偏心させる方向と反対方向に素材管の中心軸線を成形工具の公転中心軸線から相対的に遠ざけるように偏心させつつ、素材管と成形工具とを相対的に成形進行方向に移動させる。そして、素材管に対する成形工具の周方向位置が偏角方向内側から偏角方向外側に向うときには、素材管に対して成形工具を相対的に軸方向に移動させ、また、偏角方向外側から偏角方向内側に向うときには、素材管に対して成形工具が相対的に軸方向に移動しないように、あるいは素材管に対して成形工具が相対的に軸方向に反対側へ移動するように、制御する。これにより、素材管の材料が偏角方向外側で軸方向に延伸するように、あるいは偏角方向内側で軸方向に収縮するように流動されるため、素材管を所定の角度に偏角成形することとなる。さらに、素材管に対する成形工具の周方向位置が偏角方向内側から偏角方向外側に向うとき、または、偏角方向外側から偏角方向内側に向うときの成形工具の軌跡が成形方向に対して略直角の関係となるため、成形工具により素材管が適切に押圧されて精度よく縮径される。なお、素材管に対する成形工具の相対的な軸方向への移動量や、素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線との偏心ピッチ等を変化させることによって、素材管の偏角角度を変化させる。
【0017】
請求項2の発明では、公転駆動手段によって素材管に対して成形工具を相対的に公転させながら、軸方向駆動手段によって素材管と成形工具とを相対的に軸方向に移動させると同時に、径方向移動手段によって素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線とを相対的に偏心させて成形進行方向に相対的に移動させるよう制御する。このとき、往復移動手段によって、成形工具の素材管に対する周方向位置が偏角方向内側から偏角方向外側に向うときには、素材管に対して成形工具を相対的に軸方向に移動させ、また、偏角方向外側から偏角方向内側に向うときには、素材管に対して成形工具が相対的に軸方向に移動しないように、あるいは素材管に対して成形工具が相対的に軸方向に反対側へ移動するように、成形工具の軸方向の往復移動を制御する。これにより、素材管の材料が偏角方向外側で軸方向に延伸するように、あるいは偏角方向内側で軸方向に収縮するように流動させるため、素材管が所定の角度に偏角成形されることとなる。さらに、素材管に対する成形工具の周方向位置が偏角方向内側から偏角方向外側に向うとき、または、偏角方向外側から偏角方向内側に向うときの成形工具の軌跡が成形方向に対して略直角の関係となるため、成形工具が素材管を適切に押圧する。なお、素材管に対する成形工具の相対的な軸方向への移動量や、素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線との偏心ピッチ等を変化させて制御することによって、素材管の偏角角度は変化する。
【0018】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明のスピニング成形方法に使用されるスピニング成形装置を図1および図2に基づいて説明する。なお、この実施の形態では、素材管1をスピニング成形して触媒コンバータを製造する場合により説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されることなく、他の目的に使用される中空の部材を製造する場合にも適用することができる。同一符号は、同一部分または相当する部分を示すものとする。
【0019】
この実施の形態で使用されるスピニング成形装置は、概略、素材管1を保持するクランプ手段11と、素材管1をその径方向に移動させる径方向移動手段12と、素材管1をその軸方向に移動させる軸方向移動手段13と、素材管1に対して成形工具としてのローラ10を公転駆動する公転駆動手段14と、ローラ10の公転径を変更する公転径変更手段(図示は省略する)と、を備えている。公転駆動手段14は基台20の一方側に設けられ、クランプ手段11、径方向移動手段12、および軸方向移動手段13は、基台20の他方側に設けられている。
【0020】
公転駆動手段14は、基台20上のコラム20aに回転可能に支持されその端面にローラ10を公転径方向に移動可能に支持するスピンドル21と、所定の回転数で回転駆動制御することが可能なモータ22と、このモータ22の回転駆動力をスピンドル21に伝達するための、スピンドル21に設けられたプーリ23とモータ22の回転軸に設けられたプーリ24との間に巻き掛けられたベルトなどの巻き掛け伝動機構25と、により構成されていている。図1および図2に示した実施の形態の場合、ローラ10は単一でスピンドル21に支持されており、そのローラ10の対角線位置にはカウンタバランサ26が支持されている。図示しない公転径変更手段によって、ローラ10およびカウンタバランサ26はスピンドル21の径方向に移動される。なお、図に示された一点鎖線CKは、ローラ10の公転中心軸線を表している。
【0021】
軸方向移動手段13は、基台20上にローラ10の公転中心軸線CKと平行に配設された一対のガイドレール30と、両ガイドレール30の間に並行に且つ軸回りに回転可能に配設されたボールネジ軸31と、ボールネジ軸31の一端に接続されてそのボールネジ軸31を軸回りに回転駆動するサーボモータ32と、ガイドレール30上に摺動可能に載置された軸方向移動台33と、軸方向移動台33の下面に設けられボールネジ軸31に螺合されたボールネジナット34と、により構成されている。サーボモータ32を回転駆動すると、ボールネジ軸31に螺合されたボールネジナット34を介して軸方向移動台33が軸方向(図1および図2の左右方向)に任意の速度で任意の位置まで移動されることとなる。
【0022】
径方向移動手段12は、この実施の形態の場合、軸方向移動台33上にローラ10の公転中心軸線CKと直交するように配設された一対のガイドレール40と、両ガイドレール40の間に並行に且つ軸回りに回転可能に配設されたボールネジ軸41と、ボールネジ軸41の一端に接続されてそのボールネジ軸41を軸回りに回転駆動するサーボモータ42と、ガイドレール40上に摺動可能に載置された径方向移動台43と、径方向移動台43の下面に設けられボールネジ軸41に螺合されたボールネジナット44と、により構成されている。サーボモータ42を回転駆動すると、ボールネジ軸41に螺合されたボールネジナット44を介して径方向移動台43が径方向(図1および図2の上下方向)に任意の速度で任意の位置まで水平に移動されることとなる。なお、径方向移動手段12は、上述したように径方向移動台43を水平に移動させる実施の形態に限定されることなく、垂直方向に昇降させるなど、ローラ10の公転中心軸線CKに対して直交する方向であれば、他の方向に移動させるよう構成することもできる。
【0023】
クランプ手段11は、図14に参照されるように、素材管1を把持する複数の爪からなるコレットチャック(50)が、径方向移動台43上に設けられたフレーム(51)に支持されている。
【0024】
次に、本発明のスピニング成形方法の実施の一形態を、以上のように構成されたスピニング成形装置を使用した場合により、図3〜図9に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明のスピニング成形方法は、概略、素材管1と成形工具であるローラ10とを所定の径で相対的に公転させながら、素材管1の中心軸線C1とローラ10の公転中心軸線CKとを相対的に偏心させると同時に素材管1とローラ10とを相対的に軸方向に移動させて、素材管1とローラ10とを相対的に成形進行方向に移動させるもので、この成形進行方向移動時において、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側から偏角方向外側に向うときには、素材管1に対してローラ10を相対的に軸方向に移動させ、また、偏角方向外側から偏角方向内側に向うときには、素材管1に対するローラ10の相対的な軸方向の移動を停止させるように、軸方向移動手段13を制御することにより、素材管1の端部をスピニング成形しない部分の中心軸線C1に対して所定の角度に偏角させるものである。
【0026】
図3は、本発明により素材管1を偏角させる原理を説明するために、図4から図8にそれぞれ示した1回の工程(1パス)を模式的に示した図であるが、素材管1を基準として、ローラ10が素材管1の中間部から端部に向かって移動するように示されていることに注意されたい。ここで、偏角方向内側とは、図3において、素材管1の偏角成形される部分の上方を指し、偏角方向外側とは、素材管1の偏角成形された部分の下方を指す。
【0027】
素材管1をスピニング加工により偏角成形して触媒コンバータを製造するするに際しては、最初に、触媒設置部1aと略同じ径の素材管1を用意して、かかる素材管1をクランプ手段11のコレットチャック50に把持させる。このとき、素材管1は、その中心軸線C1とローラ10の公転中心軸線CKとが同一直線上に位置するように、径方向移動手段12によって配置されている。この状態で、素材管1の軸方向に関して、ローラ10が素材管1のスピニング成形の開始地点に位置するように軸方向移動手段13のサーボモータ32を駆動して素材管1を移動させ、ローラ10を素材管1に対して所定量押し込むように図示しない公転径変更手段によってローラ10の公転径を調整すると共に公転駆動手段14のモータ22を駆動して、ローラ10の公転径を所定に維持して公転させながら、径方向移動手段12のサーボモータ42を駆動して公転するローラ10に対して素材管1を偏心移動させると同時に、軸方向移動手段13のサーボモータ32を駆動して公転するローラ10から素材管1を抜くように概ね移動させる。ここで、成形進行方向とは、公転するローラ10に対する素材管1の、径方向移動手段12による径方向への偏心移動と軸方向移動手段13による軸方向への移動とを合成した方向を云う。
【0028】
このとき、軸方向移動手段13のサーボモータ32は、より正確には、図3に示すように、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側P1、P3…から偏角方向外側P2、P4…にそれぞれ向うときに、素材管1の中間部側から端部側に向かってローラ10が相対的に軸方向に移動するように、また、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向外側P2、P4…から偏角方向内側P3、P5…にそれぞれ向かうときに、素材管1に対してローラ10が軸方向に移動しないように、ローラ10の素材管1に対する周方向位置と同期して駆動制御される。
【0029】
これにより、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側P1、P3…から偏角方向外側P2、P4…に向うときに、素材管1の材料が偏角方向外側で軸方向に延伸されるように流動するため、従来の技術のように素材管1の中心軸線C1とローラ10の公転中心軸線CKを相対的に傾斜させることなく、図1および図2に示された従来から知られている一般的なスピニング成形装置を使用して、素材管1の端部が偏角成形されることとなる。そして、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側P1、P3…から偏角方向外側P2、P4…に向うときのローラの軌跡は、偏角しようとする中心軸線C2に対して直角となるため、素材管1を適切に押圧して精度よく縮径することとなる。
【0030】
図4〜図8は、素材管1から触媒容器1’のコーン部1cと接合部1bとを連続した一体に偏角成形する様子を工程順に示したもので、図4においては、スピニング成形の開始地点は、触媒容器1’の触媒設置部1aとコーン部1cの境界地点に設定されており、ローラ10の公転半径がR1となるように図示しない公転径変更手段が設定されており、偏角方向内側の位置P1、P3…から偏角方向外側の位置P2、P4…への軸方向の移動ピッチがp1となるように、公転駆動手段14および軸方向移動手段12の駆動速度比率が設定されており、また、素材管1の抜き方向(成形進行方向)が所定の角度θ1となるように、軸方向移動手段13と径方向移動手段12の駆動速度比率が設定されている。そして、図示しない公転径変更手段によって設定された公転径R1となるまでローラ10を素材管1の成形開始位置に押し付けながら公転駆動手段によって公転させると共に(図4の左方を参照)、上述したように、径方向移動手段12によって公転するローラ10に対して素材管1を偏心移動させると同時に、軸方向移動手段13によってローラ10の周方向位置に同期させてローラ10に対する素材管1の軸方向の移動および停止を繰り返しながら端部まで抜いて1回の工程が終了すると(図4の右方を参照)、素材管1の境界地点から端部までのスピニング成形された部分は、その中心軸線(成形進行方向)C2が素材管1の中心軸線C1に対してθ1の角度に偏角され、また境界地点の近傍が僅かに縮径されて、そこから先端が所定の径に縮径成形されることとなる。その後、図示しない公転径変更手段によってローラ10を素材管1に接触させないように径方向外側へ開かせて、軸方向移動手段13および径方向移動手段12を駆動することによって次の工程のスピニング成形の開始地点にローラ10が相対的に位置するように素材管1を所定の位置(後述する)に戻す。
【0031】
次いで、2回目の工程では、図5に示すように、スピニング成形の開始地点が1回目の工程による縮径終了位置に設定されており、ローラ10の公転半径がR2(≦R1)となるように図示しない公転径変更手段が設定されており、偏角方向内側の位置P1、P3…から偏角方向外側の位置P2、P4…への軸方向の移動ピッチがp2(≧p1)となるように、公転駆動手段14および軸方向移動手段13の駆動速度比率が設定されており、また、素材管1の抜き方向(成形進行方向)が所定の角度θ2(≧θ1)となるように、軸方向移動手段13と径方向移動手段12の駆動速度比率が設定されている。そして、図示しない公転径変更手段によって設定された公転径R2となるまでローラ10を素材管1の成形開始位置に押し付けながら公転駆動手段によって公転させると共に(図5の左方を参照)、上述したように、径方向移動手段12によって公転するローラ10に対して素材管1を偏心移動させると同時に、軸方向移動手段13によってローラ10の周方向位置に同期させてローラ10に対する素材管1の軸方向の移動および停止を繰り返しながら端部まで抜いて2回の工程が終了すると(図5の右方を参照)、素材管1の境界地点から端部までのスピニング成形された部分は、その中心軸線(成形進行方向)C2が素材管1の中心軸線C1に対してθ2の角度に偏角され、また境界地点の近傍が僅かに縮径されて、そこから先端が所定の径に縮径成形されることとなる。その後、1回目の工程と同様に、ローラ10を開かせて次の工程のスピニング成形の開始地点にローラ10が相対的に位置するように素材管1を所定の位置に戻す。
【0032】
3回目の工程では、図6に示すように、スピニング成形の開始地点が2回目の工程による縮径終了位置に設定されており、ローラ10の公転半径がR3(≦R2)となるように図示しない公転径変更手段が設定されており、偏角方向内側の位置P1、P3…から偏角方向外側の位置P2、P4…への軸方向の移動ピッチがp3(≧p2)となるように、公転駆動手段14および軸方向移動手段13の駆動速度比率が設定されており、また、素材管1の抜き方向(成形進行方向)を所定の角度θ3(≧θ2)となるように、軸方向移動手段13と径方向移動手段12の駆動速度比率が設定されている。図示しない公転径変更手段によって設定された公転径R3となるまでローラ10を素材管1の成形開始位置に押し付けながら公転駆動手段14によって公転させると共に(図6の左方を参照)、上述したように、径方向移動手段12によって公転するローラ10に対して素材管1を偏心移動させると同時に、軸方向移動手段13によってローラ10の周方向位置に同期させてローラ10に対する素材管1の軸方向の移動および停止を繰り返しながら端部まで抜いて3回の工程が終了すると(図6の右方を参照)、素材管1の境界地点から端部までのスピニング成形された部分は、その中心軸線(成形進行方向)C2が素材管1の中心軸線C1に対してθ3の角度に偏角され、また境界地点から連続して縮径されて、そこから先端が所定の径に縮径成形されることとなる。その後、1回目および2回目の工程と同様に、ローラ10を開かせて次の工程のスピニング成形の開始地点にローラ10が相対的に位置するように素材管1を所定の位置に戻す。
【0033】
4回目の工程では、図7に示すように、スピニング成形の開始地点が3回目の工程による縮径終了位置に設定されており、ローラ10の公転半径がR4(≦R3)となるように図示しない公転径変更手段が設定されており、偏角方向内側の位置P1、P3…から偏角方向外側の位置P2、P4…への軸方向の移動ピッチがp4(≧p3)となるように、公転駆動手段14および軸方向移動手段13の駆動速度比率が設定されており、また、素材管1の抜き方向(成形進行方向)を所定の角度θ4(≧θ3)となるように、軸方向移動手段13と径方向移動手段12の駆動速度比率が設定されている。図示しない公転径変更手段によって設定された公転径R4となるまでローラ10を素材管1の成形開始位置に押し付けながら公転駆動手段14によって公転させると共に(図7の左方を参照)、上述したように、径方向移動手段12によって公転するローラ10に対して素材管1を偏心移動させると同時に、軸方向移動手段13によってローラ10の周方向位置に同期させてローラ10に対する素材管1の軸方向の移動および停止を繰り返しながら端部まで抜いて4回の工程が終了すると(図7の右方を参照)、素材管1の境界地点から端部までのスピニング成形された部分は、その中心軸線(成形進行方向)C2が素材管1の中心軸線C1に対してθ4の角度に偏角され、また境界地点から先端近傍までが連続して縮径されて、そこから先端が所定の径に縮径成形されることとなる。その後、1回目〜3回目の工程と同様に、ローラ10を開かせて次の工程のスピニング成形の開始地点にローラ10が相対的に位置するように素材管1を所定の位置に戻す。
【0034】
5回目の工程では、図8に示すように、スピニング成形の開始地点が4回目の工程による縮径終了位置に設定されており、ローラ10の公転半径がR5(≦R4)となるように図示しない公転径変更手段が設定されており、偏角方向内側の位置P1、P3…から偏角方向外側の位置P2、P4…への軸方向の移動ピッチがp5(≧p4)となるように、公転駆動手段14および軸方向移動手段13の駆動速度比率が設定されており、また、素材管1の抜き方向(成形進行方向)を所定の角度θ5(≧θ4)となるように、軸方向移動手段13と径方向移動手段12の駆動速度比率が設定されている。図示しない公転径変更手段によって設定された公転径R5となるまでローラ10を素材管1の成形開始位置に押し付けながら公転駆動手段14によって公転させると共に(図8の左方を参照)、上述したように、径方向移動手段12によって公転するローラ10に対して素材管1を偏心移動させると同時に、軸方向移動手段13によってローラ10の周方向位置に同期させてローラ10に対する素材管7の軸方向の移動および停止を繰り返しながら端部まで抜いて5回の工程が終了すると(図8の右方を参照)、素材管1の境界地点から端部までのスピニング成形された部分は、素材管1の中心軸線C1に対するその中心軸線(成形進行方向)C2が最終形状であるθ5の角度に偏角され、また境界地点から連続して縮径されてコーン部1cを形成し、先端が所定の径に成形されて接合部1bを形成することとなる。
【0035】
その後、所定の径に縮径成形された先端の接合部1bは、図9に示すように、必要に応じて所定の長さにカットされる。そして、触媒コンバータを製造する場合には、素材管1のスピニング成形されていない他端から触媒担体2を例えばマット3(図19を参照)で巻回した状態で挿入し、その他端も上述したようにスピニング成形する(図16(d)を参照)。
【0036】
なお、本発明は、上述した回数の工程に限定されることはなく、素材管1の偏角成形する角度などに応じて変更することができる。また、本発明は、上述したスピニング成形装置を使用する場合に限定されることはなく、例えば、素材管1に対してローラ10が軸方向および/または径方向に移動するよう構成されたスピニング成形装置を使用する場合にも適用することができる。さらに、軸方向移動手段13の駆動制御は、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側P1、P3…から偏角方向外側P2、P4…にそれぞれ向うときに、素材管1の中間部側から端部側に向かってローラ10を相対的に軸方向に移動させ、または、素材管1に対してローラ10を軸方向に移動させることなく、一方、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向外側P2、P4…から偏角方向内側P3、P5…にそれぞれ向かうときに、素材管1に対してローラ10を軸方向に移動させることなく、または、素材管1の端部側から中間部側に向かってローラ10を相対的に軸方向に移動させるように、ローラ10の素材管1に対する周方向位置と同期して駆動制御される。
【0037】
次に、本発明のスピニング成形装置の実施の一形態を、図10および図11に基づいて詳細に説明する。なお、上述したスピニング成形装置と異なる部分について説明し、同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0038】
本発明のスピニング成形装置は、概略、素材管1を保持するクランプ手段11と、素材管1をその径方向に移動させる径方向移動手段12と、素材管1をその軸方向に移動させる軸方向移動手段13と、素材管1に対して成形工具であるローラ10を公転駆動する公転駆動手段と、ローラ10の公転径を変更する公転径変更手段(図示は省略する)と、を備えており、さらに、偏角させる方向に応じて、公転するローラ10の素材管1に対する周方向の位置と同期して、素材管1とローラ10とを相対的に軸方向に往復移動させる往復移動手段15が設けられている。なお、図10においては、説明の都合により、往復移動手段15を実際の位相と異なるように示したことに注意されたい。
【0039】
図10に示すように、公転駆動手段14のスピンドル21は、コラム20aに対して回転可能に且つ軸方向に移動可能に支持されており、また、プーリ23が相対回転不能に且つ軸方向に摺動可能に設けられている。
【0040】
スピンドル21には軸方向にキー溝21aが形成されており、プーリ23の内側にはキー23aが取付けられている。プーリ23のキー23aがスピンドル21のキー溝21aに摺動可能に係合されていることにより、プーリ23に対してスピンドル21が相対回転不能に、且つ軸方向に移動できるように構成されている。
【0041】
往復移動手段15は、スピンドル21の後方端(図10における左方端)に回転可能に設けられたガイドローラ60と、このガイドローラ60が内接されるリング部材61と、偏角成形する方向に応じてリング部材61を俯仰させるように支持する固定部材62および、リング部材61を軸方向に制御可能に移動させるリング部材俯仰駆動機構63と、を備えている。
【0042】
スピンドル21の後方端の中心軸線から所定長さだけ離れた位置には支持軸21bが設けられており、この支持軸21bにガイドローラ60が回転可能に取付けられている。ガイドローラ60の外周面は、リング部材61に係合し得る形状に成形されている。リング部材61は固定部材62に対して俯仰可能に係合されており、この固定部材62に係合した部分と反対側の部分は可動部材65に係合されている。リング部材俯仰駆動機構63は、可動部材65に設けられたボールネジナット66と、ボールネジナット66が螺合されるボールネジ軸67と、このボールネジ軸67を軸回りに回転駆動するサーボモータ68とにより構成されている。サーボモータ68を任意の方向に所定量駆動することによって、可動部材65が軸方向に移動されて、リング部材61が所定の角度に傾動し、このリング部材61にガイドローラ60が内接していることにより、ローラ10がその公転と同期して軸方向に移動することとなる。なお、リング部材61の傾動する方向は、素材管1を偏角成形する方向に応じて設定される。
【0043】
本発明の往復移動手段15は、上述した実施の形態に限定されることはない。図示は省略するが、例えば、固定部材62に代えて、リング部材61の中心から可動部材65への方向と直交する方向の外側位置に軸を設け、かかる軸を回転可能に支持することによりリング部材61を回動させるように構成することもできる。また、リング部材61とガイドローラ60に替えて、カムとカムフォロワなどによって構成することもでき、さらには、スピンドル21の後方端にボールネジ機構を設けて、スピンドル21の軸方向位置を直接制御するよう構成することもできる。
【0044】
次に、以上のように構成されたスピニング成形装置を使用する場合により、本発明のスピニング成形方法の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と異なる部分のみについて説明し、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
上述した実施の形態では、ローラ10の公転と同期して素材管1に対するローラ10の周方向位置に応じた軸方向の移動を、軸方向移動手段13の制御のみによって行っていたが、この実施の形態では、軸方向移動手段13によってローラ10から抜くように移動される素材管1に対して、往復移動手段15によってローラ10をその公転と同期して周方向位置に応じて軸方向に移動させる。
【0046】
図11に示すように、往復移動手段15のリング部材61は、ローラ10が素材管1の偏角方向内側にあるときに前進(図11の実線を参照)し、素材管1の偏角方向内側にあるときに後退(図11の鎖線を参照)するように、傾動されている。そして、軸方向移動手段13は、ローラ10が後退した位置から前進した位置に移動するときの速度と略同じ速度で素材管1を軸方向に反対側へ移動させるよう設定されている。
【0047】
このように構成されたスピニング成形装置では、図3に示したように、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側P1、P3…から偏角方向外側P2、P4…にそれぞれ向うときに、ローラ10が後退して素材管1の中間部側から端部側に向かってローラ10が抜かれるように軸方向に相対的に移動し、また、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向外側P2、P4…から偏角方向内側P3、P5…にそれぞれ向うときにはローラ10が前進するが、軸方向移動手段13によって素材管1が軸方向に移動されてローラ10の前進移動が相殺されるために、ローラ10と素材管1の軸方向に関する相対位置が変わらず、したがって、素材管1に対してローラ10が軸方向に移動しない。
【0048】
そのため、この実施の形態においても、上述した実施の形態と同様に素材管1をローラ10によって偏角成形することができる。しかしながら、上述した実施の形態においては、ローラ10と素材管1の軸方向に関する移動を軸方向移動手段13のサーボモータ32の駆動によってのみ制御するため、構成が簡単ではあるが、ローラ10の公転速度が速い場合にはそのローラ10の公転に軸方向移動手段13のサーボモータ32を追従させて制御することが困難となる。したがって、上述した実施の形態は、ローラ10の公転速度が比較的低い場合に有効となる。一方、この実施の形態においては、往復移動手段15によってローラ10が公転と同期して確実に前進・後退するため、ローラ10の公転速度が速い場合に有効となる。
【0049】
次に、本発明のスピニング成形装置の公転駆動手段14と往復移動手段15の別の実施の形態を図12および図13に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同様または相当する部分についてはその説明を省略し、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0050】
この実施の形態においては、公転駆動手段14のスピンドル21がコラム20aに対して軸方向に移動することなく回転可能に支持されており、スピンドル21の中央にはドローバ70が相対回転不能に且つ軸方向に移動可能に担持されている。スピンドル21の前端面には、図示しない径方向移動手段によって径方向に移動される一対の支軸71が軸方向に延びるように設けられており、この支軸71には、ローラ10を回転可能に支持するスリーブ72がそれぞれ嵌挿されている。ドローバ70の先端と一方のスリーブ72とは連結部材73によって連結されている。スピンドル21の前端面にはブラケット74が設けられており、このブラケット74には一方のスリーブ72と他方のスリーブ72とを連結するリンク75の中央部が揺動可能に数着されている。なお、図12においては、リンク75と接続されるブラケット76をスリーブ72にそれぞれ設けた場合を示し、図13においては、リンク75と接続されるピン77をスリーブ72にそれぞれ設けた場合を示している。いずれの場合も、リンク75に長穴75aが成形されており、図示しない公転径変更手段によるローラ10の径方向の移動を妨げることなく、支軸71に対してスリーブ72を軸方向に駆動することができるよう構成されている。ドローバ70の後端には往復移動手段15が設けられている。
【0051】
このように構成されたスピニング成形装置を使用するに際しては、往復移動手段15のリング部材61を所定の姿勢に径動させた状態で、公転駆動手段14のモータ22によりスピンドル21を回転させる。スピンドル21の回転に伴ってリング部材61に内接されたガイドローラ60が回転し、ドローバ70が軸方向に往復移動されると、これに連結された一方のローラ10が軸方向に往復移動し、中央がブラケット74に枢着されたリンク75によって連結された他方のローラ10は、一方のローラ10と対称的に軸方向に往復移動されることとなる。したがって、図12において、ガイドローラ60がリング部材61の下方に内接している状態(鎖線を参照)では、ドローバ70が右方に突出されるように移動して、一方のローラ10が上方に実線で示された軸方向位置に移動し、他方のローラ10が下方に同じく実線で示された軸方向位置に移動する。
【0052】
このとき、径方向移動手段12および軸方向移動手段13により、素材管1は、偏心移動されると共に公転するローラ10から抜かれるように軸方向に移動される。そのため、両ローラ10、10は、上述した実施の形態と同様に、図3に示したように、それぞれその周方向位置が偏角方向内側P1、P3…から偏角方向外側P2、P4…に向うときに、素材管1の中間部側から端部側に向かって相対的に軸方向に移動するように、また、それぞれの周方向位置が偏角方向外側P2、P4…から偏角方向内側P3、P5…に向かうときに、素材管1に対してローラ10が軸方向に移動しないように、ローラ10の素材管1に対する周方向位置と同期して駆動制御される。これにより、素材管1の端部は、素材管1が適切に押圧されて精度よく縮径されると共に、偏角成形されることとなる。そして、この実施の形態においては、一対のローラ10、10を使用するため、スピニング成形を短時間で効率よく行うことができる。
【0053】
次に、本発明のスピニング成形装置のクランプ手段11の別の実施の形態を説明するが、これに先だって、このようなクランプ手段11を設けることが望ましい製品を図17および図18に基づいて説明する。
【0054】
図17および図18は、素材管1をスピニング加工により偏角成形した触媒コンバータを示したもので、触媒コンバータを設置する条件などにより、触媒容器1’の一方のコーン部1cおよび接合部1bに対して他方のコーン部1cおよび接合部1bが角度αを有するねじれの位置関係に成形する必要がある場合もある。このような場合、素材管1の一方の端部を上述したようにスピニング成形により偏角したコーン部1cおよび接合部1bを成形し、その後、素材管1の他方端から触媒担体2をマット3(図19を参照)に巻回した状態で挿入し、他方の端部を一方の端部に対して角度αとなるような姿勢で保持して、かかる他方の端部を同様にスピニング成形により偏角成形してコーン部1cおよび接合部1bを成形する。
【0055】
図14および図15、または図16に示した実施の形態におけるクランプ手段11は、素材管1の一端および他端をそれぞれローラ10によってスピニング成形し得るように、クランプ手段11のフレーム51を回転させて位置決めする回転手段52と、素材管1をその中心軸線C1回りに回転駆動して位相を変更する位相変更手段53と、を備えている。
【0056】
回転手段52は、径方向移動台43とフレーム51の間に介装されてなるもので、コレットチャック50に把持された素材管1の中心軸線C1がローラ10の公転中心軸線CKと並行となるように、径方向移動台43に対してフレーム51を矢印X方向に180度回転させて位置決めする。
【0057】
図14および図15に示された実施の形態における位相変更手段53は、コレットチャック50がフレーム51に対して軸回りに回転可能に支持されており(図14および図15の矢印Yを参照)、コレットチャック50がウォームホイール55内に設けられており、このウォームホイール55と噛合されるウォーム56、およびこのウォーム56を駆動するためのモータ57がフレーム51に設けられて構成されている。
【0058】
このように構成されたクランプ手段11では、素材管1の一方の端部の偏角成形が完了すると、モータ57を駆動してウォーム56を軸回りに回転させ、ウォームホイール55内に設けられたコレットチャック50に把持された素材管1をその軸周りに矢印Y方向へ角度αだけ回転させる。そして、素材管1の他方の端部をスピニング成形し得るように、回転手段52によってフレーム51を径方向移動台43に対して矢印X方向へ180度回転させる。なお、フレーム51を径方向移動台43に対して矢印X方向へ180度回転させた後に、素材管1をその軸周りに矢印Y方向へ角度αだけ回転させてもよい。
【0059】
図16に示された実施の形態における位相変更手段53は、フレーム51のローラ10側とは反対側に設けられたチャックシリンダ58と、このチャックシリンダ58を矢印Y方向(図16(b)を参照)に回動可能に支持するロータリシリンダ59とを備え、ロータリシリンダ59がフレーム51に対して近接・遠退移動可能に設けられてなるものである。
【0060】
このように構成されたクランプ手段11では、素材管1の一方の端部の偏角成形が完了すると、図16の(a)に示すように、チャックシリンダ58を開いた状態でロータリシリンダ59をフレーム51に近接移動させると共に、コレットチャック50をアンクランプ状態としておき、次いで図16の(B)に示すように、チャックシリンダ58を閉じて素材管1の他方の端部を把持し、ロータリシリンダ59の駆動によって矢印Y方向に所定角度αだけ回転させ、コレットチャック50をクランプ状態にして、素材管1を把持する。その後図16の(c)に示すように、チャックシリンダ58を開いてロータリシリンダ59をフレーム51から遠退移動させ、素材管1の他方の端部をスピニング成形し得るように、回転手段52によってフレーム51を径方向移動台43に対して矢印X方向へ180度回転させ、このときまでに素材管1の端部からマット3を巻回した状態の触媒担体2を素材管1の他方端から挿入し、図16の(d)に示すように、ローラ10によって素材管1の他方の端部も同様にスピニングにより偏角成形してコーン部1cおよび接合部1bを成形する。
【0061】
本発明のクランプ手段11は、そのフレーム51が径方向移動台43に対して180度回転して位置決めすることができるように構成するだけでよく、従来の技術のように所定の角度に傾動させるような複雑な構成は必要ない。
【0062】
次に、本発明により成形される触媒コンバータの実施の一形態を、上述したスピニング加工方法に従ってスピニング加工装置を用いて製造した場合よって詳細に説明する。本発明により成形される触媒コンバータは、概略、触媒容器1’内に触媒担体2が設置されてなり、触媒容器1’が、触媒担体2を収容する比較的大径の触媒設置部1aと、端部に配置された比較的小径の接合部1bと、触媒設置部1aと接合部1bとの間で漸次径が変化するように形成されたコーン部1cと、を備えており、触媒設置部1aの中心軸線C1に対して接合部1bとコーン部1cの中心軸線C2が所定の角度θ5を形成するように偏角成形されてなるもので、触媒容器1’の触媒設置部1aとコーン部1cの境界面Kが触媒設置部1aの中心軸線C1に対して略直交するように成形されている。そして、触媒容器1’は、素材管1をスピニング加工することにより成形されてなり、さらには、上述した本発明のスピニング加工方法に従って素材管1を成形してなるものである。
【0063】
本発明により成形される触媒コンバータの触媒容器1’は、その長手方向略中央に触媒担体2が収容される比較的大径の触媒設置部1aが配設されており、また、両端には内燃機関の排気管および導出管にそれぞれ接続される比較的小径の接合部1bが配設され、触媒設置部1aと接合部1bとの間には、比較的大径の触媒設置部1aから比較的小径の接合部1bに向かって漸次縮径するようにコーン部1cが配設されている。このような形状の触媒容器1’は、触媒設置部1aと略同径の素材管1の一端側をスピニング加工してコーン部1cと接合部1bを成形し、他端側からマット3に巻回された触媒担体2を挿入し、かかる他端側を一端側と同様にスピニング加工してコーン部1cと接合部1bを成形することにより一体に成形される。そして、このスピニング加工を行うときに、上述したように、素材管1と成形工具であるローラ10とを所定の径で相対的に公転させながら、素材管1の中心軸線C1とローラ10の公転中心軸線CKとを相対的に偏心させると同時に素材管1とローラ10とを相対的に軸方向に移動させて、素材管1とローラ10とを相対的に成形進行方向に移動させるのであるが、この成形進行方向移動時において、素材管1に対するローラ10の周方向位置が偏角方向内側から偏角方向外側に向うときには、素材管1に対してローラ10を相対的に軸方向に移動させ、また、偏角方向外側から偏角方向内側に向うときには、素材管1に対するローラ10の相対的な軸方向の移動を停止させるように、軸方向移動手段13を制御することにより、素材管1の端部をスピニング成形しない部分である触媒設置部1aの中心軸線C1に対して所定の角度に偏角させる。この工程は所定の回数繰り返し行われる。
【0064】
このように成形された触媒コンバータの触媒容器1’は、図19に示すように、触媒設置部1aの中心軸線C1に対してコーン部1cおよび接合部1bの中心軸線C2が所定の角度θ5を形成することとなる。そして、触媒設置部1aとコーン部1cとの境界面Kは、従来の技術(図20)のように触媒担体2の端面との間にクサビ型の空間Sが形成されることなく、触媒設置部1aの中心軸線C1に対して略直交するように成形される。そのため、排気ガスの流れGが接合部1bからコーン部1cを経て触媒担体2の端面に均等に導入されて、効率良く浄化されることとなる。また、触媒コンバータの全長L’は、従来の技術における全長L”よりも確実に短くなるため、その設置場所に大きなスペースを要することがなく、しかも、素材管1が短くて済むこととなる。なお、本発明により成形される触媒コンバータの触媒容器1’は、素材管1をスピニング加工することにより一体に成形した上述した実施の形態に限定されることなく、触媒設置部1aとコーン部1cの境界面Kが触媒設置部1aの中心軸線C1に対して略直交するように成形されたものであれば、例えば触媒設置部1aとコーン部1cおよび接合部1bとを個別に成形して接合したものなども含まれる。
【0065】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、素材管と成形工具とを相対的に公転させると共に、素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線とを相対的に偏心させつつ、偏角させる方向に応じて、公転する成形工具の素材管に対する周方向の位置と同期して、素材管に対する成形工具の相対的な軸方向への移動を制御して、素材管と成形工具とを相対的に成形進行方向に移動させることにより、素材管の材料が偏角方向外側で軸方向に延伸するように、あるいは偏角方向内側で軸方向に収縮するように流動されるため、従来の技術のようなワークの傾動手段を必要とすることなく、素材管を所定の角度に容易に偏角成形することができ、しかも、成形工具により素材管を適切に押圧して精度よく縮径させることができるスピニング成形方法を提供することができる。
【0066】
請求項2の発明によれば、素材管に対して成形工具を相対的に、公転させる公転駆動手段、軸方向に移動させる軸方向移動手段、および径方向に移動させることにより偏心させる径方向移動手段を備えてなるスピニング成形装置に、偏角させる方向に応じて、公転する成形工具の素材管に対する周方向の位置と同期して、素材管と成形工具とを相対的に軸方向に往復移動させる往復移動手段を設けたことにより、成形工具の軸方向の往復移動を制御して、素材管の材料が偏角方向外側で軸方向に延伸するように、あるいは偏角方向内側で軸方向に収縮するように流動させるため、従来の技術のようなワークの傾動手段を設けることなく、素材管を所定の角度に安価で容易に偏角成形することができ、しかも、成形工具が素材管を適切に押圧して精度よく縮径させることができる小型のスピニング成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスピニング成形方法に使用される一般的なスピニング成形装置の正面図である。
【図2】 図1に示したスピニング成形装置の平面図である。
【図3】 本発明により素材管を偏角させる原理を説明するための、1回の工程を模式的に示した図である。
【図4】 本発明の1度目の工程により素材管を偏角成形する様子を示す説明図である。
【図5】 図4の状態から2度目の工程により素材管を偏角成形する様子を示す説明図である。
【図6】 図5の状態から3度目の工程により素材管を偏角成形する様子を示す説明図である。
【図7】 図6の状態から4度目の工程により素材管を偏角成形する様子を示す説明図である。
【図8】 図7の状態から5度目の工程により素材管を偏角成形する様子を示す説明図である。
【図9】 図8の状態から先端の不要な部分をカットして所定形状のスピニング成形を完了した状態を示す説明図である。
【図10】 本発明のスピニング成形装置の正面図である。
【図11】 図10に示したスピニング成形装置の平面図である。
【図12】 本発明のスピニング成形装置における公転駆動手段と往復移動手段の別の実施の形態を示す部分正面図である。
【図13】 図12に示したスピニング成形装置の要部を説明するための部分断面図である。
【図14】 本発明のクランプ手段の別の実施の形態の構成を示す説明図である。
【図15】 図14の側面図である。
【図16】 本発明のクランプ手段のさらに別の実施の形態の構成とその作動を示す説明図である。
【図17】 本発明により成形される製品として、コーン部および接合部の一方が他方とねじれの関係に成形された触媒コンバータを示す斜視図である。
【図18】 図17の矢印方向から見た正面図である。
【図19】 本発明により成形される触媒容器を示す正面図である
【図20】 従来の技術により製造された触媒容器を示す正面図である
【符合の説明】
1 素材管
10 ローラ(成形工具)
11 クランプ手段
12 径方向移動手段
13 軸方向移動手段
14 公転駆動手段
15 往復移動手段
C1 素材管の中心軸線
C2 偏角成形部分の中心軸線
CK 公転中心軸線
1’ 触媒容器
1a 触媒設置部
1b 接合部
1c コーン部
2 触媒担体
Claims (2)
- 素材管を所定の角度に偏角させるスピニング成形方法であって、素材管と成形工具とを相対的に公転させると共に、素材管の中心軸線と成形工具の公転中心軸線とを相対的に偏心させつつ、偏角させる方向に応じて、公転する成形工具の素材管に対する周方向の位置と同期して、素材管に対する成形工具の相対的な軸方向への移動を制御して、素材管と成形工具とを相対的に成形進行方向に移動させることを特徴とするスピニング成形方法。
- 素材管に対して成形工具を相対的に、公転させる公転駆動手段、軸方向に移動させる軸方向移動手段、および径方向に移動させることにより偏心させる径方向移動手段を備えてなり、素材管を所定の角度に偏角させるスピニング成形装置であって、偏角させる方向に応じて、公転する成形工具の素材管に対する周方向の位置と同期して、素材管と成形工具とを相対的に軸方向に往復移動させる往復移動手段を設けたことを特徴とするスピニング成形装置。
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