JP4001976B2 - ヒトbai遺伝子及びその利用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトの疾患の予防、診断及び治療の指針として有用な遺伝子、より詳しくは、脳において特異的に発現され、脳における発癌とその進展に重要な役割を果たしていると考えられるヒト遺伝子に関し、特に遺伝子診断並びに新しい治療法の開発に利用可能な遺伝子に関する。また、本発明は、当該遺伝子に関連する新規なペプチド、より詳しくは内皮細胞の増殖抑制作用を有し、例えば血管新生の亢進に起因するような各種の疾患及び病態の処置等に有用なペプチド及び該ペプチドを有効成分とする医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
血管新生は、新しい血管の成長の刺激因子と抑制因子との局地的バランスによりコントロールされており、これは正常の生理的状態では抑制されている〔I.J. Fidler, et al., Cell, 79, 185 (1994); J. Folkman, Nature Med., 1, 27 (1995); D. Hanahan, et al., Cell, 86, 353 (1996)〕。トロンボスポンディン(TSP)、アンギオスタチン(angiostatin)、エンドスタチン(endostatin)及びグリオーマ由来血管新生抑制因子(glioma-derived angiogenesis inhibitory factor)等、内因性の種々の血管新生の負の制御因子は、血管の静止(quiescence)維持に重要な役割を果たしていると考えられている。
【0003】
また、近年の研究によれば、かかる血管新生は,各種固形癌の成長,存続及び転移に必須のものであり、癌が進展するには、腫瘍細胞は、自らの増殖のための血液供給を得る上で、血管新生につながる遺伝的変異を経なければならないことが明らかとなってきている。例えば、膠芽腫(glioblastoma)は、最も顕著に新生血管形成される新生物のひとつであり、グリオーマからのより悪性形態である膠芽腫への進展は、血管増殖、内皮細胞の細胞学的変化及び内皮細胞過形成から明らかなように、新生血管形成の存在と結びついている。
【0004】
一方、p53癌抑制遺伝子の変異は、ヒト癌に見出される遺伝的変異において最も普遍的なものであり、ヒトの発癌に関与する最も重要な遺伝子のひとつとされている〔M. Hollstein, et al., Science, 253, 49 (1991)〕。このp53の変異は、腫瘍進展に殊に顕著な役割を果たしていることが明らかであり、例えば、野生型p53の欠失は、TSP1遺伝子の発現低下に至り、線維芽細胞をより血管新生的な表現型に変化させることが知られている〔K.M. Dameron, Science,
265, 1582 (1994)〕。
【0005】
しかして、新生血管形成は、p53不活化の直接の結果であると考えられ〔E.G. Van Meir, et al., Nature Genet., 8, 171 (1994)〕、これは、おそらくp53によって制御されている遺伝子の転写活性化の欠失によるものと思われる〔B. Vogelstein et al., Cell, 70, 523 (1992)〕。
【0006】
従って、p53によって制御されているその標的遺伝子の同定、解明は、血管新生抑制を始めとするp53の生物学的機能の研究に重要であり、ひいては、癌等の血管新生亢進に起因する各種の疾患及び病態の解明及びそれら疾患及び病態の予防及び治療法の開発の面からも斯界で望まれているところである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、癌抑制遺伝子産物p53の標的遺伝子(p53-target gene or p53-inducible gene)、即ちp53による特異的な転写制御下にある新規なヒト遺伝子を見出し、これを同定して前記斯界で要望される所望の情報を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、かかる新規なヒト遺伝子に顕著な相同性を有し、構造的並びに遺伝子発現パターンにおける共通性及びその生物学的機能の類似性により、上記遺伝子のファミリーと認識される一連の関連遺伝子を提供することを目的とする。
【0009】
更に、本発明は、当該遺伝子によってコードされている特定領域に相当するアミノ酸配列を有する新規なペプチド及び該ペプチドを有効成分とする医薬を提供することをも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、配列番号:1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子及びそのファミリー遺伝子から選択されるヒトBAI遺伝子、配列番号:1、2又は3で示されるアミノ酸配列の全部又は一部をコードする塩基配列を含む該遺伝子、特に、配列番号:4で示される塩基配列の全部又は一部を含む遺伝子、配列番号:5で示される塩基配列の全部又は一部を含む遺伝子及び配列番号:6で示される塩基配列の全部又は一部を含む遺伝子が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記ヒトBAI遺伝子がコードするタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有することを特徴とするペプチドが提供される。
【0012】
更に、本発明によれば、以下の各態様の上記ペプチドが提供される。
【0013】
(1) 配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなるヒトBAI1遺伝子産物の第1、第2、第3、第4及び第5のタイプ1リピートから選択される少なくともひとつのリピートに相当するアミノ酸配列を有する上記ペプチド。
【0014】
(2) 配列番号:2で示されるアミノ酸配列からなるヒトBAI2遺伝子産物の第1、第2、第3及び第4のタイプ1リピートから選択される少なくともひとつのリピートに相当するアミノ酸配列を有する上記ペプチド。
【0015】
(3) 配列番号:3で示されるアミノ酸配列からなるヒトBAI3遺伝子産物の第1、第2、第3及び第4のタイプ1リピートから選択される少なくともひとつのリピートに相当するアミノ酸配列を有する上記ペプチド。
【0016】
(4) タイプ1リピートに相当するアミノ酸配列が、システイン残基をアラニン残基に置換したアミノ酸配列からなる上記ペプチド。
【0017】
(5) 配列番号:7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17及び18で示されるアミノ酸配列から選択される少なくともひとつの配列を含む上記ペプチド。
【0018】
更にまた、本発明によれば、上記ペプチドを有効成分として含有する医薬、特に、血管新生の亢進に起因する各種疾患及び病態の処置等に使用される当該医薬が提供される。
【0019】
以下、本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138, 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野における慣用記号に従うものとする。
【0020】
また、本明細書に用いられる「ペプチド」なる用語は、その構成アミノ酸数には限定なく、例えばオリゴペプチド、ポリペプチド及びマクロペプチド乃至蛋白質を包含するものとする。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明遺伝子の一具体例としては、後述する実施例に示される「BAI1」、「BAI2」及び「BAI3」とそれぞれ名付けられた各クローンの有するDNA配列から演繹されるものを挙げることができ、それらの各塩基配列は、配列表に示されるとおりである。
【0022】
本発明遺伝子BAI1(脳特異的血管新生抑制因子1:brain-specific angiogenesis inhibitor 1)は、脳に特異的に発現される新規なp53標的ヒト遺伝子であり、1584アミノ酸のペプチドからなるその予想蛋白は、7旋回膜通過領域(seven-span transmembrane region)及びトロンボスポンディン(TSP)様タイプ1リピートを有する細胞外領域を含むことにより構造的に特徴付けられる。かかる構造的特徴、生理活性及びその遺伝子発現パターン等によれば、該BAI1遺伝子は、血管新生の阻害作用を有する膜蛋白であると考えられ、これは膠芽腫等の腫瘍抑制に重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0023】
本発明において、BAI1のファミリー遺伝子とは、この新規ヒト遺伝子BAI1の遺伝子産物に配列相同性を有し、上記構造的特徴並びに遺伝子発現パターンにおける共通性及びその生物学的機能の類似性によりひとつの遺伝子ファミリーと認識される一連の関連遺伝子を言い、これらの一具体例は、例えば上記したBAI2及びBAI3である。
【0024】
尚、上記配列相同性は、通常、アミノ酸配列の全体において約25%以上であることができる。
【0025】
BAI2及びBAI3の予想蛋白は、BAI1のそれと著しい相同性を示し、同じく、7旋回膜通過領域及びTSP様タイプ1リピートを有する細胞外領域を有している。BAI1と同じく、この両遺伝子は、脳に特異的に発現されており、その発現パターンの類似性によれば、同一タイプの細胞により発現されるものと考えられる。
【0026】
従って、本発明にかかるこれら遺伝子ファミリーは、脳における発癌とその進展に重要な役割を果たしているものと考えられ、例えば、本発明遺伝子の発現を目的とする遺伝子治療或は本発明遺伝子産物の生体への投与は、癌の予防及び治療に有用であると考えられる。殊に、野生型p53による制御を受けているBAI1遺伝子においては、p53遺伝子変異が認められる各種の癌等の場合のようにp53の癌抑制機能が失われた結果として癌化に向かうとされる個体において、その利用が好適と考えられる。
【0027】
尚、本発明遺伝子は、例えば配列番号:1〜3の具体例で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子又は配列番号:4〜6で示される塩基配列の全部或は一部を含むポリヌクレオチドからなる遺伝子として例示されるが、特にこれらに限定されることなく、例えば、上記特定のアミノ酸配列において一定の改変を有する遺伝子や上記特定の塩基配列と一定の相同性を有する遺伝子であることができる。
【0028】
即ち、本発明遺伝子には、配列番号:1〜3に示されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子もまた包含される。ここで、「アミノ酸の欠失、置換又は付加」の程度及びそれらの位置等は、改変された蛋白質が、配列番号:1〜3で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質と同様の機能を有する同効物であれば特に制限されない。具体的には、血管新生抑制活性を保持するものが挙げられる。
【0029】
尚、これらアミノ酸配列の改変(変異)等は、天然において、例えば突然変異や翻訳後の修飾等により生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本発明の具体例遺伝子)に基づいて人為的に改変することもできる。本発明は、このような改変・変異の原因及び手段等を問わず、上記特性を有する全ての改変遺伝子を包含するものである。
【0030】
上記の人為的手段としては、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987);同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105 (1986)〕等の遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法等の化学合成手段〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983)〕及びそれらの組合せ方法等が例示できる。
【0031】
また、本発明遺伝子の態様として、配列番号:4〜6で示される塩基配列の全部或は一部を含むポリヌクレオチドからなる遺伝子を例示できるが、この塩基配列は、上記アミノ酸配列(配列番号:1〜3)の各アミノ酸残基を示すコドンの一つの組合せ例でもあり、本発明遺伝子はこれらに限らず、各アミノ酸残基に対して任意のコドンを組合せ選択した塩基配列を有することも勿論可能である。該コドンの選択は、常法に従うことができ、例えば利用する宿主のコドン使用頻度等を考慮することができる〔Ncleic Acids Res., 9, 43 (1981)〕。
【0032】
また、本発明遺伝子は、例えば配列番号:4〜6の具体例で示されるように、一本鎖DNAの塩基配列として表示されるが、本発明はかかる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドやこれらの両者を含むコンポーネントも当然に包含するものであり、また、cDNA等のDNAに限定されることもない。
【0033】
更に、本発明の遺伝子は、前記のとおり、配列番号:4〜6に示される塩基配列と一定の相同性を有する塩基配列からなるものも包含するものである。かかる遺伝子としては、少なくとも、下記に掲げるようなストリンジェントな条件下で、配列番号:4〜6で示される塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、一定の条件下で洗浄してもこれより脱離しないものが挙げられる。
【0034】
即ち、配列番号:4〜6のいずれかのコード領域塩基配列を有するDNAと、0.1%SDSを含む6×SSC中60℃の条件下にハイブリダイズし、0.1%SDSを含む2×SSC中45℃の条件下での洗浄においても該DNAから脱離しない塩基配列を有する遺伝子が例示される。
【0035】
本発明遺伝子は、本発明により教示された本発明遺伝子の具体例についての配列情報に基づいて、一般的遺伝子工学的手法により容易に製造・取得することができる〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)等参照〕。
【0036】
具体的には、本発明遺伝子が発現される適当な起源より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、本発明遺伝子に特有の適当なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択することにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613 (1981);Science, 222, 778 (1983)等〕。
【0037】
上記において、cDNAの起源としては、本発明の遺伝子を発現する各種の細胞、組織やこれらに由来する培養細胞等が例示され、これらからの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従い実施できる。また、cDNAライブラリーは市販されてもおり、本発明においてはそれらcDNAライブラリー、例えばクローンテック社(Clontech Lab. Inc.)より市販の各種cDNAライブラリー等を用いることもできる。
【0038】
本発明遺伝子をcDNAライブラリーからスクリーニングする方法も、特に制限されず、通常の方法に従うことができる。具体的には、例えばcDNAによって産生される蛋白質に対して、該蛋白質特異抗体を使用した免疫的スクリーニングにより対応するcDNAクローンを選択する方法、目的のDNA配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等やこれらの組合せ等を例示できる。
【0039】
ここで用いられるプローブとしては、本発明遺伝子の塩基配列に関する情報をもとにして化学合成されたDNA等が一般的に例示できるが、勿論既に取得された本発明遺伝子そのものやその断片も良好に利用できる。また、本発明遺伝子の塩基配列情報に基づき設定したセンス・プライマー、アンチセンス・プライマーをスクリーニング用プローブとして用いることもできる。
【0040】
本発明遺伝子の取得に際しては、PCR法〔Science, 230, 1350 (1985)〕によるDNA/RNA増幅法も好適に利用できる。殊に、ライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法〔Rapid amplification of cDNA ends;実験医学、12(6), 35 (1994)〕、殊に 5'-RACE法〔M.A. Frohman, etal., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 8, 8998 (1988)〕等の採用が好適である。
【0041】
かかるPCR法の採用に際して使用されるプライマーは、既に本発明によって明らかにされた本発明遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定でき、これは常法に従い合成できる。
【0042】
尚、増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、前記のとおり常法に従うことができ、例えばゲル電気泳動法等によればよい。
【0043】
また、上記で得られる本発明遺伝子或は各種DNA断片は、常法、例えばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 74, 5463 (1977)〕やマキサム−ギルバート法〔Methods in Enzymology, 65, 499 (1980)〕等に従って、また簡便には市販のシークエンスキット等を用いて、その塩基配列を決定することができる。
【0044】
本発明が提供するBAI遺伝子の利用によれば、後記詳述するように、一般の遺伝子工学的手法を用いることにより、該遺伝子産物(BAI蛋白)を含む本発明ペプチドを容易に大量に安定して製造することができる。
【0045】
即ち、本発明は、上記BAI遺伝子を含有するベクター(発現ベクター)及び該ベクターによって形質転換された宿主細胞並びに該宿主細胞を培養することにより本発明ペプチドを製造する方法をも提供するものである。
【0046】
また、本発明遺伝子の利用によれば、例えば該遺伝子の一部又は全部の塩基配列を利用することにより、個体もしくは各種組織における本発明遺伝子の発現の検出を行うことができる。かかる検出は常法に従って行うことができ、例えばRT−PCR〔Reverse transcribed-Polymerase chain reaction; E.S. Kawasaki, et al., Amplification of RNA. In PCR Protocol, A Guide to methods and applications, Academic Press, Inc., SanDiego, 21-27 (1991)〕によるRNA増幅やノーザンブロッティング解析〔Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Lab. (1989)〕、in situ RT−PCR〔Nucl. Acids Res., 21, 3159-3166 (1993)〕や in situ ハイブリダイゼーション等の細胞レベルでのそれら測定、NASBA法〔Nucleic acid sequence-based amplification, Nature, 350, 91-92 (1991)〕及びその他の各種方法によりいずれも良好に実施し得る。
【0047】
尚、PCR法を採用する場合において、用いられるプライマーは、本発明遺伝子のみを特異的に増幅できる該遺伝子特有のものである限り何等限定されず、本発明遺伝子の配列情報に基いてその配列を適宜設定することができる。通常、これは20〜30ヌクレオチド程度の部分配列を有するものとすることができる。
【0048】
このように、本発明遺伝子には、本発明にかかるBAI遺伝子検出用の特異プライマー及び/又は特異プローブとして使用されるDNA断片もまた包含されるものである。
【0049】
尚、前記した本発明遺伝子を利用する遺伝子治療或は処置においては、必ずしも本発明遺伝子の全て、即ち全配列からなる遺伝子が必要とされることはなく、本発明にかかる遺伝子の所望機能と実質的に同質な機能を保持する限りにおいて、前記した改変体或は一部配列からなる遺伝子を良好に使用することができる。
【0050】
かかる一部配列の具体例としては、例えば、前記したタイプ1リピート部位のある任意領域や、その繰返し単位からなる領域等を例示することができる。
【0051】
本発明ペプチドは、上記本発明のBAI遺伝子がコードする遺伝子産物の特定領域、即ちそのタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有することにより特徴付けられる。
【0052】
BAI1遺伝子は、5つのタイプ1リピートを有しており、それらは、配列番号:1における262−315アミノ酸配列(第1のタイプ1リピート)、355−407アミノ酸配列(第2のタイプ1リピート)、410−462アミノ酸配列(第3のタイプ1リピート)、468−520アミノ酸配列(第4のタイプ1リピート)及び523−574アミノ酸配列(第5のタイプ1リピート)である。
【0053】
BAI2及びBAI3は、いずれも4つのタイプ1リピートを有しており、それらは、配列番号:2(BAI2)における298−350アミノ酸配列(第1)、353−405アミノ酸配列(第2)、408−460アミノ酸配列(第3)並びに464−516アミノ酸配列(第4)、並びに配列番号:3(BAI3)における292−343アミノ酸配列(第1)、346−398アミノ酸配列(第2)、401−453アミノ酸配列(第3)及び456−508アミノ酸配列(第4)である。
【0054】
これらタイプ1リピートを含むペプチドは、内皮細胞の増殖抑制作用を有し、いずれも本発明ペプチドとして好適に採用される。しかしながら、かかる所望の生理活性を奏するに、上記した各タイプ1リピートの個々領域の全配列が必須とされることはなく、これは所望の生理活性が保持される限りにおいてそれらタイプ1リピートの一部配列を欠失したアミノ酸配列からなるペプチドであることができる。そのような具体例としては、例えば、配列番号:7〜18に示される各アミノ酸配列からなるペプチドを例示することができる。これらペプチドは、いずれも上記した各タイプ1リピートの一部の配列にのみ相当するアミノ酸配列、具体的にはその7番目のアミノ酸から25番目のアミノ酸までの19アミノ酸からなる一部配列に相当するアミノ酸配列のペプチドである。
【0055】
また、本発明ペプチドは、かかるタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有する限りにおいて、従って所望の生理活性を奏する限りにおいて、その大きさ(アミノ酸残基数)やそれに含まれるタイプ1リピートの組み合わせ等には何等制限されるところはない。各タイプ1リピートは、少なくともそのひとつに相当するアミノ酸配列がペプチド中に含まれていればよく、所望により任意の組み合わせによって結合することも、また、BAI遺伝子の配列情報に基づいた付加的アミノ酸配列の結合或は任意のアミノ酸又はアミノ酸配列の付加によって延長することもでき、本発明ペプチドはかかる結合物又は延長物に相当するアミノ酸配列を有するものであることができる。
【0056】
更に、本発明のペプチドには、上記の含まれるべきアミノ酸配列の一部においてアミノ酸の置換や欠失等による改変を有する同効物が含まれる。例えば、本発明ペプチドにおいて、そのアミノ酸配列中にシステイン残基を有するものは、所望によりこれを、本来の生理活性保持には影響を与えない他のアミノ酸、例えば、アラニン残基やセリン残基等、好ましくはアラニン残基に置換することができる。また、本発明ペプチド中の各アミノ酸残基は、通常L体であるのが普通であるが、特にL体である必要はなく、D体やN−メチル体であってもよく、またシステイン残基やメチオニン残基等の含硫アミノ酸は、その酸化体、即ちSS結合による二量体、Met(O)及びMet(O2)であることができる。
【0057】
しかして、本発明において、タイプ1リピートに相当するアミノ酸配列には、これら各種アミノ酸配列が包含され、本発明ペプチドにはこれら配列を有するペプチド並びにペプチド誘導体が包含される。
【0058】
本発明ペプチドは、内皮細胞の増殖抑制作用を有し、例えば血管新生の亢進に起因する各種の疾患及び病態の処置剤等として医薬分野で有用である。
【0059】
かかる医薬分野で有用な本発明ペプチドの好ましい例としては、ヒトBAI遺伝子産物の各タイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチド、特に、その第2のリピートに相当するアミノ酸配列を含むペプチド、その第2、第3及び第4のリピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチド、BAI1におけるそれらペプチド、及び配列番号:7、8、9又は10で示されるアミノ酸配列を有するペプチド等を例示することができる。
【0060】
また、本発明ペプチドからなる医薬が特に好適に適用される、血管新生の亢進に起因する疾患及び病態としては、例えば、各種の癌や糖尿病性網膜症等を例示することができる。
【0061】
本発明ペプチドは、そのアミノ酸配列に従って、例えば本発明のヒトBAI遺伝子群及びその配列情報を利用する遺伝子工学的手法により、また一般的な化学合成手法により製造することができる。
【0062】
遺伝子工学的手法を採用する場合につき詳述すれば、ヒトBAI遺伝子及びその配列情報は後述の実施例に示されるとおりであり、それらの利用によれば、本発明ペプチドは、通常の遺伝子組換え技術〔例えば、Science, 224, 1431 (1984) ; Biochem. Biophys. Res. Comm., 130, 692 (1985);Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80, 5990 (1983)等参照〕に従うことにより、組換え蛋白として得ることができる。
【0063】
該蛋白の製造は、より詳細には、該所望の蛋白をコードする遺伝子が宿主細胞中で発現できる組換えDNAを作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養することにより行われる。
【0064】
ここで宿主細胞としては、真核生物及び原核生物のいずれも用いることができる。該真核生物の細胞には、脊椎動物、酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞〔Cell, 23, 175 (1981)〕やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞及びそのジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 77, 4216 (1980)〕等がよく用いられているが、これらに限定される訳ではない。
【0065】
脊椎動物の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終了配列等を保有するものを使用でき、これは更に必要により複製起点を有していてもよい。該発現ベクターの例としては、例えば、SV40の初期プロモーターを保有するpSV2dhfr〔Mol. Cell. Biol., 1, 854 (1981)〕等を例示できる。また、真核微生物としては、酵母が一般によく用いられ、中でもサッカロミセス属酵母を有利に利用できる。該酵母等の真核微生物の発現ベクターとしては、例えば酸性ホスフアターゼ遺伝子に対するプロモーターを有するpAM82〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80, 1 (1983)〕等を利用できる。また、本発明にかかる所望遺伝子の発現ベクターとしては、原核生物遺伝子融合ベクターを好ましく例示でき、該ベクターの具体例としては、例えば分子量26000のGSTドメイン(S. japonicum由来)を有するpGEX−2TKやpGEX−4T−2等を例示できる。
【0066】
原核生物の宿主としては、大腸菌や枯草菌が一般によく用いられる。これらを宿主とする場合、例えば該宿主菌中で複製可能なプラスミドベクターを用い、このベクター中に所望遺伝子が発現できるように該遺伝子の上流にプロモーター及びSD(シヤイン・アンド・ダルガーノ)塩基配列、更に蛋白合成開始に必要な開始コドン(例えばATG)を付与した発現プラスミドを利用するのが好ましい。上記宿主としての大腸菌としては、エシエリヒア・コリ(Escherichia coli)K12株等がよく用いられ、ベクターとしては一般にpBR322及びその改良ベクターがよく用いられるが、これらに限定されず公知の各種の菌株及びベクターをも利用できる。プロモーターとしては、例えばトリプトファン(trp) プロモーター、lppプロモーター、lacプロモーター、PL/PRプロモーター等を使用できる。
【0067】
かくして得られる所望の組換えDNAの宿主細胞への導入方法及びこれによる形質転換方法としては、一般的な各種方法を採用できる。また得られる形質転換体は、常法に従い培養でき、該培養により所望のように設計した遺伝子によりコードされる目的の蛋白が生産、発現される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択利用でき、その培養も宿主細胞の生育に適した条件下で実施できる。
【0068】
上記により、形質転換体の細胞内、細胞外乃至細胞膜上に目的とする組換え蛋白が発現、生産、蓄積乃至分泌される。
【0069】
本発明ペプチドとしての該組換え蛋白は、所望により、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種の分離操作〔「生化学データーブックII」、1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年 6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274 (1986); Eur. J. Biochem., 163, 313 (1987) 等参照〕により分離、精製できる。該方法としては、具体的には例えば通常の再構成処理、蛋白沈澱剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧ショック法、超音波破砕、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せ等を例示でき、特に好ましい上記方法としては、本発明ペプチドの特異抗体を結合させたカラムを利用したアフィニティクロマトグラフィー等を例示できる。
【0070】
尚、上記本発明ペプチドをコードする所望の遺伝子を設計するに際しては、配列番号:4、5及び6で示されるヒトBAI遺伝子群を良好に利用することができる。該遺伝子は、所望により、前記したように各アミノ酸残基を示すコドンを適宜選択変更して利用することも勿論可能である。
【0071】
また、配列番号:4、5及び6に含まれるヒトBAI遺伝子群のアミノ酸配列において、その一部のアミノ酸乃至アミノ酸配列を置換、欠失、付加等により改変する場合には、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシス等の前記した各種方法により行うことができる。
【0072】
本発明ペプチドは、また、そのアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法により製造することができ、該方法には、通常の液相法及び固相法によるペプチド合成法が包含される。かかるペプチド合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていく所謂ステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含し、本発明ペプチドの合成は、そのいずれによってもよい。
【0073】
上記ペプチド合成に採用される縮合法も、常法に従うことができ、例えば、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)法、ウッドワード法等を例示できる。
【0074】
これら各方法に利用できる溶媒も、この種ペプチド縮合反応に使用されることのよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
【0075】
尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸乃至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第3級ブチルエステル等の低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル等のアラルキルエステル等として保護することができる。
【0076】
また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばチロシン残基の水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第3級ブチル基等で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。更に、例えばアルギニン残基のグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、p−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。
【0077】
上記保護基を有するアミノ酸、ペプチド及び最終的に得られる本発明ペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸等を用いる方法等に従って実施することができる。
【0078】
かくして得られる本発明ペプチドは、前記した各種の方法にて、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用される方法に従い、適宜その精製を行うことができる。
【0079】
本発明ペプチドは、BAI蛋白(本発明ペプチドに包含される)の特異抗体を作成する為の免疫抗原としても好適に利用でき、これら抗原を利用することにより、所望の抗血清(ポリクローナル抗体)及びモノクローナル抗体を収得することができる。該抗体の製造方法自体は、当業者によく理解されているところであり、本発明においてもこれら常法に従うことができる〔続生化学実験講座「免疫生化学研究法」、日本生化学会編(1986)等参照〕。かくして得られる抗体は、例えばBAI蛋白の精製及びその免疫学的手法による測定乃至識別等に有利に利用できる。
【0080】
また、本発明ペプチドは、これを有効成分とする医薬品として医薬分野において有用である。
【0081】
該医薬品として有用な本発明ペプチド中には、その医薬的に許容される塩もまた包含される。かかる塩には、当業界で周知の方法により調製される、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム等の無毒性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩等が包含される。更に上記塩には、本発明ペプチドと適当な有機酸乃至無機酸との反応による無毒性酸付加塩も包含される。代表的無毒性酸付加塩としては、例えば塩酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、硼酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、スルホン酸塩、グリコール酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩及びナプシレート等を例示できる。
【0082】
本発明の範囲にはまた、上記本発明ペプチドの薬学的有効量を活性成分とし、これを適当な無毒性医薬担体乃至希釈剤と共に含む医薬組成物乃至医薬製剤が含まれる。
【0083】
上記医薬組成物(医薬製剤)に利用できる医薬担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤或は賦形剤等を例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
【0084】
本発明の上記医薬製剤の投与単位形態としては、各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれ、これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、軟膏剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形乃至調製することができる。
【0085】
例えば、錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。
【0086】
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠或は二重錠乃至多層錠とすることができる。
【0087】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0088】
カプセル剤は、常法に従い通常本発明の有効成分を上記で例示した各種の製剤担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調整される。
【0089】
経口投与用液体投与形態は、慣用される不活性希釈剤、例えば水、を含む医薬的に許容される溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシル等を包含し、更に湿潤剤、乳剤、懸濁剤等の助剤を含ませることができ、これらは常法に従い調製される。
【0090】
非経口投与用の液体投与形態、例えば滅菌水性乃至非水性溶液、エマルジョン、懸濁液等への調製に際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びオリーブ油等の植物油等を使用でき、また注入可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチル等を配合できる。これらには更に通常の溶解補助剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、分散剤等を添加することもできる。
【0091】
滅菌は、例えばバクテリア保留フィルターを通過させる濾過操作、殺菌剤の配合、照射処理及び加熱処理等により実施できる。また、これらは使用直前に滅菌水や適当な滅菌可能媒体に溶解することのできる滅菌固体組成物形態に調製することもできる。
【0092】
坐剤や膣投与用製剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン及び半合成グリセライド等を使用できる。
【0093】
ペースト、クリーム、ゲル等の軟膏剤の形態に成形するに際しては、希釈剤として、例えば白色ワセリン、パラフイン、グリセリン、セルロース誘導体、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト及びオリーブ油等の植物油等を使用できる。
【0094】
経鼻又は舌下投与用組成物は、周知の標準賦形剤を用いて、常法に従い調製することができる。
【0095】
尚、本発明薬剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品等を含有させることもできる。
【0096】
上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独で又はブドウ糖やアミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じ単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与され、坐剤は直腸内投与され、経膣剤は膣内投与され、経鼻剤は鼻腔内投与され、舌下剤は口腔内投与され、軟膏剤は経皮的に局所投与される。
【0097】
上記医薬製剤中に含有されるべき本発明の有効成分の量及びその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件等に応じて広範囲より適宜選択されるが、一般的には、該投与量は、通常、1日当り体重1kg当り、約1〜10mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1〜数回に分けて投与することができる。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、脳において特異的に発現され,脳における発癌とその進展に重要な役割を果たしていると考えられる新規なヒト遺伝子が提供され、該遺伝子の利用によれば、該遺伝子の組織での発現の検出や、そのコードする産物(BAI蛋白)の構造及び機能等を解析でき、また、該遺伝子産物の遺伝子工学的製造が可能となり、これらにより、癌の発生、進展等の解明やその診断、予防、治療等に有用な技術が提供される。
【0099】
また、本発明によれば、上記有用技術として、内皮細胞の増殖抑制作用を有し例えば血管新生の亢進に起因する各種の疾患及び病態の処置等に使用される新規ペプチド及び当該ペプチドを有効成分とする医薬が提供される。
【0100】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げる。
【0101】
【実施例1】
(1)cDNAクローンの単離
p53結合部位を有するDNA断片〔クローンp53−31,T. Tokino., et al., Hum. Mol. Genet., 3, 1537 (1994)〕を放射標識してプローブとし、ヒトコスミドライブラリー〔T. Tokino., et al., Am. J. Hum. Genet., 48, 258 (1991)〕をスクリーニングして、コスミドクローンp53−cos170を得た。
【0102】
377ABI自動シークエンサー(パーキン−エルマー)にて、文献〔Ishikawa., et al., DNA Res., 4, 35 (1997)〕記載のプロトコールに従い、該コスミドクローンのゲノムDNA配列を決定し、コンピュータープログラムによるエクソン検索〔Grail2及び Hexon:Y. Xu, et al., Comput. Appl. Biosci., 11, 117 (1995);V.V. Solovyev, et al., Nucl. Acids Res., 24, 5156 (1994)〕により4つの候補エクソンを得た。
【0103】
これらのDNA断片が実際に転写されるか否かを検討するため、これら候補エクソンに相当するオリゴヌクレオチドを合成し、RT−PCRによるエクソン−連結試験を行った〔E.R. Fearon, et al., Science, 247, 49 (1990)〕。候補エクソン中の2つが連結されることを確認し(後述のプライマー「E1S」及び「E1A」を使用)、この453bpのエクソン連結産物(cDNA断片)を170E1と命名し、ノーザンハイブリダイゼーション用及びヒト胎児脳cDNAライブラリー(ストラタジーン)スクリーニング用プローブとした。
【0104】
(2)RT−PCR分析
p53の変異型アレル(Met 237 Ile)を有し野生型アレルを欠失する膠芽腫細胞株T98G〔E.G. Van Meir, et al., Cancer Res., 54, 649 (1994)〕に、p53発現ベクター:p53−wt(野生型)又はp53−273(変異型)〔S.E. Kern, et al., Science, 256, 827 (1992)〕を一過的にDNA導入した。
【0105】
導入24時間前に、1×106細胞を25cm2フラスコに入れ、各導入にはプラスミドDNA5μg及びリポフェクチン(ギブコ−BRL)25μlを用いた。
【0106】
cDNAの調製は、文献〔T. Furuhata, et al., Oncogene, 13, 1965 (1996)〕記載の方法に準じて行い、全RNAから SuperscriptII(ギブコ−BRL)を使用して逆転写した。
【0107】
RT−PCRの指数的成長相は、20−30サイクルにおいて決定され、同一反応により得られたcDNA間の定量的比較を可能とした。各PCR反応は、0.2μgの全RNAからのcDNAを使用して実施した。PCR溶液としては文献〔H-J. Han., et al., Hum. Mol. Genet., 4, 237 (1995)〕記載のものを使用し、全反応は、GeneAmp PCR system 9600(パーキン−エルマー)での、94℃2分の初期変性の後、94℃30秒、55−59℃1分及び72℃90秒の30サイクル(170E1の場合)又は25サイクル(p21/WAF1及びG3PDHの場合)の工程を含んでいる。
【0108】
用いたプライマーの配列は下記表1のとおりである。
【0109】
【表1】
Figure 0004001976
得られたPCR産物は、2%GTGアガロースゲル電気泳動により単離した。
【0110】
尚、PCR反応は、少なくとも2回実施して結果を確認し、RNA鋳型の保全は、G3PDH転写物の増幅を通してコントロールした(全てのサンプルにおいて同様のシグナルを与えた)。
【0111】
(3)ノーザンブロット分析
各レーンに正常ヒト組織からのポリ(A)+RNA2μgを含むノーザンブロットをクローンテック社から購入し、これをBAI1cDNAの2013−2465ヌクレオチドに相当するランダムプライム〔32P〕−標識DNAプローブと同社仕様書に従いハイブリダイズさせた。
【0112】
ブロットを50℃下に0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄し、−80℃下に7日間オートラジオグラフィーにて露光した。
【0113】
(4)膠芽腫細胞株のBAI1発現レベル
9種の膠芽腫細胞株を使用した。A172、T98G及びYKG1は、HSRRB社から購入し、U87MG、U118MG、U373MG、SW1088、SW1783及びDBTRG05MGは、ATCCからそれぞれ入手した。初代ヒト星状細胞はIWAKIから購入した。
【0114】
全ての細胞は寄託機関及び購入先の推奨する適当条件下に培養した。RNA抽出及び定量的RT−PCR試験は上記と同様にして実施した。
【0115】
(5)結果
(5−1)cDNAの単離
p53結合部位のひとつであるクローンp53−31をプローブとして、ヒトコスミドライブラリーより、p53−cos170と命名したコスミドクローンを単離した。該コスミドクローンより候補エクソンを想定し、エクソン−連結試験により、453bpのエクソン連結断片170E1を得た。
【0116】
この170E1の発現がp53によって制御されていることを確認するため、野生型又は変異型のp53を含む発現ベクターで一過的にDNA導入されたT98G細胞におけるその発現を調べた。RT−PCR分析により、上記170E1転写物は、野生型p53でDNA導入されたT98G細胞において発現されており、変異型p53でDNA導入されたT98G細胞及び親細胞(T98G細胞)では認められなかった(図1)。このことより、該遺伝子の転写は野生型p53により誘導されることが明らかとなった。
【0117】
尚、図1において、上段(BAI1)は170E1、中段(WAF1)はp21/WAF1、下段(G3PDH)はG3PDHの結果をそれぞれ示し、PCR産物のサイズ(bp)は右側に示されており、また、各レーンは次の鋳型を用いた場合をそれぞれ示している。
【0118】
レーン「Genomic」:0.1μgのヒトゲノムDNA
レーン「H2O」:鋳型なし
レーン「Brain」:0.2μgの脳由来全RNAからのcDNA
レーン「p53-」:T98G親細胞
レーン「p53-wt」:野生型p53を導入したT98G細胞
レーン「p53-mt」:変異型p53を導入したT98G細胞。
【0119】
上記エクソン連結産物170E1をプローブとして利用して、ヒト胎児脳cDNAライブラリー(1.0×106プラーク)をスクリーニングして、cDNAクローン40個を単離した。3つの代表的cDNAクローンの配列調整により、4752bpのオープンリーディングフレームを含む5535bp(配列番号:4参照)の転写物が明らかとなった。
【0120】
BAI1と名付けられた該遺伝子がコードする1584アミノ酸の配列は、図2に示されるとおりである。
【0121】
また、上記において、配列番号:4に示される塩基配列の1784番目の塩基に多型性が検出され、(G)が(A)に置換した以外は同一のBAI1遺伝子の存在もまた確認された。該遺伝子は、この塩基置換により、そのコードするアミノ酸配列の534番目におけるアミノ酸に、Cys(TGC)とTyr(TAC)の多型性が存在する。
【0122】
尚、ノーザンブロット分析によれば、胎児及び成人脳において約6.5kbの転写物が見られることより(図5)、これらのcDNA配列は、5’非コード配列の一部を欠失しているものと考えられる。
【0123】
(5−2)蛋白の構造解析
ヒトBAI1遺伝子産物の推定アミノ酸配列を図2に、その推定分子構造を示す模式図を図3にそれぞれ示す。
【0124】
図2において、シグナル配列は下線により示した。7つの膜通過部分は文字を囲んで示した。太字及び下線を付したアミノ酸は、TSP−タイプ1リピートとの相同性領域を示している。RGDモチーフは白抜き文字にて示している。
【0125】
図3において、その上段はアミノ酸残基数によるスケールである。図3中の各文字は、細胞外領域(Extracellular region)、細胞質領域(Cytoplasmic region)、シグナル配列(Signal sequence)、タイプ1リピート(Type I repeats)、7旋回膜通過領域(Seven-span transmembrane region: TM)、TSPとの相同性領域(Homology to thrombospondin)、CD97との相同性領域(Homology to CD97)及びセクレチンレセプターとの相同性領域(Homology to secretin
receptor)を、それぞれ示している。
【0126】
ハイドロパシープロット解析〔J. Kyte, et al., J. Mol. Biol., 157, 105 (1982)〕により、ヒトBAI1遺伝子産物のC端部分における7つの疎水性セグメントの存在と、N端メチオニンに続く疎水性シグナル配列の存在が明らかとなった。これは、BAI1が、ほぼ930アミノ酸近くの細胞外部分、膜を7回通過する233アミノ酸領域及び約400アミノ酸の細胞質領域(図3参照)を有する多旋回膜蛋白であることを示唆している。上記7旋回膜通過領域のアミノ酸配列は、典型的な蛋白G−結合レセプター〔J.M. Baldwin, EMBO J., 12, 1693 (1993)〕の対応領域のそれとは全く相同性がないが、白血球活性化抗原であり且つセクレチンレセプタースーパーファミリーのメンバーであるCD97〔J. Hamann, et al., J. Immunol., 155, 1942 (1995)〕と23%の相同性を有していた。
【0127】
細胞外領域は、ラミニン、フィブロネクチン、ヘパリン、スルファチド及びヘパリン硫酸プロテオグリカン等の種々の蛋白に結合することが知られている〔J. Lawler, et al., J. Cell Biol., 103, 1635 (1986); P. Bornstein, FASEB J., 6, 3290 (1992); D.D. Robert, FASEB J., 10, 1183 (1996)〕TSP−タイプ1リピートと著しいホモロジーが認められた。TSP1及びTSP2はいずれも3回のリピートを有するの対し、BAI1においては5回の同リピートを有していた。
【0128】
尚、BAI1、ヒトTSP1及びヒトTSP2の各タイプ1リピートのアミノ酸配列を整列した図面を図4に示す。同図には、後述の実施例2で得たBAI2及びBAI3におけるタイプ1リピートも併記されており、上段より順次、TSP1、TSP2、BAI1、BAI2及びBAI3における各アミノ酸配列が示されている。同図において、同一アミノ酸残基は黒塗り反転させて描かれており、また保存されている残基(下段「Consensus」)は太字表示されている。
【0129】
TSP−タイプ1リピートに相当するペプチドは、bFGFによって誘導される実験的血管新生を抑制することが報告されている〔S.S Tolsma, et al., J. Cell Biol., 122, 497 (1993)〕。現在までに単離されている5種のTSP遺伝子中、タイプ1リピートを含むTSP1及びTSP2だけが血管新生を抑制する。
【0130】
また、BAI1の細胞外領域内に、インテグリン結合のための認識配列とされる単一の Arg−Gly−Asp(RGD)モチーフ〔S.E. D'Souza, et al., Trends biochem. Sci., 16, 246 (1991); T.A. Haas, et al., Curr. Biol., 6, 656 (1994)〕の存在が確認された。
【0131】
以上の配列類似性より、この新規な遺伝子「BAI1」の遺伝子産物は、血管新生を抑制するものと考えられ、本遺伝子を脳特異的血管新生抑制因子1と名付けた。
【0132】
(5−3)ヒト組織における遺伝子発現
BAI1遺伝子の各種ヒト組織における発現を、ノーザンブロット分析により調べた結果を図5に示す。
【0133】
図5における供試組織(成人及び胎児ヒト組織)は次のとおりである。
【0134】
・heart 心臓
・brain 脳
・placenta 胎盤
・lung 肺
・liver 肝臓
・skeltal muscle 骨格筋
・kidney 腎臓
・pancreas 膵臓
・spleen 脾臓
・thymus 胸腺
・prostate 前立腺
・testis 睾丸
・ovary 卵巣
・small intestine 小腸
・colon 結腸
・leukocyte 白血球
・f. brain 胎児脳
・f. lung 胎児肺
・f. liver 胎児肝臓
・f. kidney 胎児腎臓
これらの結果より、BAI1遺伝子は、ヒト脳において特異的に発現されていることが認められた。
【0135】
(5−4)膠芽腫における遺伝子発現
膠芽腫の発生及び/又は進展におけるBAI1の果たす役割を調べる上で、培養星状細胞からのRNAをコントロールとするRT−PCR分析試験により、膠芽腫細胞株におけるBAI1遺伝子の発現を調べた。
【0136】
結果を前記図1に準じた体裁にて図6に示す。
【0137】
試験した9種の膠芽腫細胞株中、6種(A172、T98G、U87MG、DBTRG05MG、SW1783及びU373MG)において、BAI1遺伝子の発現は認められず、他の2種(SW1088及びYKG1)において著しく減少していた。
【0138】
(5−5)考察
脳において特異的に発現されており、p53によって誘導される新規な遺伝子BAI1を単離した。本遺伝子のイントロン中に機能的p53結合性配列が存在しており、野生型p53を導入した腫瘍細胞株において生じる本遺伝子の転写活性化は、p53蛋白による直接作用であるものと考えられる。
【0139】
BAI1が膠芽腫の腫瘍抑制に重要な役割を果たしているとの考えは、次の事実により支持される。
【0140】
(1).BAI1転写は、野生型p53により誘導され、主に脳において認められた。
【0141】
(2).試験した9種の膠芽腫細胞株の8種において、BAI1発現はなかったか或は著しく低下していた。
【0142】
(3).現在までに確認されている5種のTSP遺伝子において、TSP1及びTSP2だけが血管新生抑制を担うドメインとされるタイプ1リピートを含んでいる。そして、BAI1は、その細胞外ドメインに5つのTSP様−タイプ1リピートを有している。
【0143】
(4).BAI1のタイプ1リピートを含む組換え蛋白は、血管新生を阻害した(後記実施例4参照)。
【0144】
以上より、BAI1遺伝子産物は、脳の血管新生抑制因子としての膜蛋白であり、p53シグナルメディエーターとして、膠芽腫の抑制に重要な役割を果たしていると考えられる。
【0145】
【実施例2】
BAI1遺伝子ファミリーのクローニング及び特徴付
(1)cDNAクローンの単離
BAI1遺伝子と関連するヒト遺伝子の探索に、BAI1と相同性を有するヒト脳由来のEST(T08038及びH15399)を利用し、これに応じた特異的プライマーをデザインした。胎児脳ポリ(A)+RNAを鋳型とし、該特異的プライマーを用いたRT−PCR増幅により「RG1」及び「RG2」と名付けたcDNA断片を得た。
【0146】
上記プライマーの配列は下記表2のとおりである。
【0147】
【表2】
Figure 0004001976
増幅されたcDNA断片を放射標識し、これをプローブとして用い、ヒト胎児脳cDNAライブラリー(ストラタジーン)をスクリーニングして、数種のcDNAクローンを得た。これらのcDNA断片を同一ライブラリーの再スクリーニング用プローブとして使用した。
【0148】
(2)ノーザンブロット分析
増幅されたRG1cDNA断片及びRG2cDNA断片をプローブとして用い、前記実施例1(3)に準じて行った。
【0149】
(3)RT−PCR分析
前記実施例1(2)に準じて、T98Gにp53発現ベクター(p53−wt又はp53−273)を一過的にDNA導入した。以下同様にして、RT−PCR分析を実施した。
【0150】
(4)結果
(4−1)cDNAの単離
PCR断片(RG1及びRG2)をプローブとして、ヒト胎児脳cDNAライブラリー(1×106プラーク)をスクリーニングし、cDNAクローン80個を単離した。これらのcDNAをプローブとし、同一ライブラリーを再度スクリーニングして更に50個のクローンを得た。代表的cDNAクローンの配列を決定することにより、「BAI2」及び「BAI3」と名付けた2つの新規な遺伝子の全長cDNAを得た。
【0151】
BAI2及びBAI3は、順次、4716bp及び4566bpのオープンリーディングフレームを含む5201bp(配列番号:5)及び5267bp(配列番号:6)の転写物からなり、これによりコードされるアミノ酸配列は、配列番号:2及び:3に示すとおりである。
【0152】
(4−2)蛋白の構造解析
BAI2及びBAI3遺伝子の推定蛋白は、BAI1遺伝子のそれに対して著しい配列類似性が認められた。
【0153】
BAI2及びBAI3遺伝子産物の推定分子構造を示す模式図を、図3に準じて図7に示す。同図において、遺伝子産物は便宜的に図示するI〜Vのドメインに分けられており、保存されたシステイン残基(conserved cysteine residues)も示されている。
【0154】
ハイドロパシープロットにより、これら分子のC端部分に7つの疎水性部分が認められ、BAI1と同様に、BAI2及びBAI3もまた7旋回膜通過蛋白と考えられた。また、BAI2びBAI3の膜通過領域は、セクレチンレセプタースーパーファミリーのメンバーと考えられるCD97、セクレチン及びカルシトニンにいくらかの相同性が認められた。
【0155】
ドメインIは、これら遺伝子の中では最も低い類似性を示したが、システイン残基はよく保存されていた。サイトカインレセプターファミリーに属するメンバーの保存されたシステイン残基は、それらの構造形成及びレセプターとしての生物学的機能に重要であると考えられており、上記保存されたシステイン残基は、BAI1、BAI2及びBAI3のドメインIが同様の構造を有し、同様のもしくは関連する未知のリガンドファミリーを認識することを示唆する。
【0156】
TSPと著しい相同性を有するドメインIIは、リピートの数は異なるものの、よく保存されている。BAI1は、5つのタイプ1リピートを有し、BAI2及びBAI3は、4つのタイプ1リピートを含んでいる。TSPタイプ1リピートは、細胞外マトリクスと相互作用するだけでなく、内皮細胞とも直接作用することが知られており、これはTSPファミリーの多機能ドメインであると考えられる。
【0157】
タイプ1リピートドメインの配列類似性より考慮すると、BAI1と同様に、BAI2及びBAI3もまた、細胞外マトリクスと相互作用し及び/又は細胞間相互作用に関与するものと考えられる。
【0158】
ドメインIII及び膜通過領域(ドメインIV)は、CD97に相同性を示すが、この領域の機能は解明されていない。
【0159】
CD97及びEMRIを含むセクレチンレセプタースーパーファミリーに属するメンバーとは異なり、この3つのレセプター(BAI1、BAI2及びBAI3)は伸長した細胞質領域(ドメインV)を含んでいる。このドメインVが、C端の短いペプチドを除き、これら3つのレセプターで保存されていないことは興味深いことである。BAI1のプロリンに富む配列は、SH3ドメインに対する結合活性を有すると考えられているが、これは他の2つのメンバーでは保存されていない。
【0160】
これらの結果は、これら3つのレセプターの下流のシグナル経路がおそらく相違するであろうことを示している。
【0161】
(4−3)ヒト組織におけるBAI2及びBAI3の発現
各種ヒト組織におけるBAI2及びBAI3mRNAの発現をノーザンブロット分析により試験した結果を図8に示す。
【0162】
図8中、中段はBAI2及び下段はBAI3の結果を示しており、BAI1の結果を参考に上段に示した。尚、試験した組織は前記したとおりである。
【0163】
両遺伝子転写物は、主に脳において検出され、その発現パターンは(心臓、骨格筋及び脾臓における比較的大きな転写物であるBAI2発現を除き)BAI1のそれと非常に類似していた。この大きなサイズの転写物は、別態様(alternative)スプライシングによるBAI2転写物の結果であるか、又は他の関連する遺伝子によるものと考えられる。
【0164】
ヒト脳部分におけるBAI1転写物の分布を試験した結果を同様に図9に示す。
【0165】
転写物は、試験された全ての各部において発現されていたが、骨髄、脊髄及び脳梁は、これら遺伝子をあまり豊富には発現していなかった。これら脳部分における発現パターンの類似性は、BAI1、BAI2及びBAI3が同一タイプの細胞において発現されていることを示唆している。
【0166】
(4−4)p53による発現制御
BAI1は、野生型p53蛋白によって直接誘導されるので、BAI2及びBAI3もまた同様に野生型p53蛋白によって誘導されるか否かを試験した。
【0167】
変異型p53のみを有する膠芽腫細胞株T98Gに、野生型もしくは変異型p53を含む発現ベクターを一過的にDNA導入し、BAI2及びBAI3の発現に与える影響を試験した。
【0168】
結果を、図1に準じて図10に示す。
【0169】
尚、図10において、上段はBAI1、中段はBAI2、下段はBAI3の結果をそれぞれ示し、PCR産物のサイズ(bp)は右側に示されており、また、各レーンは次の鋳型を用いた場合をそれぞれ示している。
【0170】
レーン「DW」:鋳型なし
レーン「Genomic」:0.1μgのヒトゲノムDNA
レーン「Brain cDNA」:0.2μgの脳由来全RNAからのcDNA
レーン「p53-」:T98G親細胞
レーン「p53-wt」:野生型p53を導入したT98G細胞
レーン「p53-mt」:変異型p53を導入したT98G細胞。
【0171】
BAI2は、T98G細胞株において発現されていたが、p53のいずれのタイプのDNA導入によってもその発現レベルに変化がなかった。
【0172】
BAI3の場合、T98Gにおいて転写物は検出されなかった。この細胞株においては、p53のいずれのタイプのDNA導入によってもp53の発現は認められなかった。
【0173】
これらの結果より、これら3つの遺伝子は構造的に非常に類似しているにもかかわらず、それらの発現調節は同一ではないものと結論付けすることができる。
【0174】
(4−5)膠芽腫細胞株における発現
BAI3の発現が上記T98G細胞株において認められなかったので、他の膠芽腫細胞株におけるその発現を試験した。
【0175】
このRT−PCR分析による結果を、前記図6に準じて、図11に示す。
【0176】
BAI3の発現は、A172、T98G、SW1088、SW1783及びU373MGにおいて、非常に低いか又は完全に失われていた。A172及びT98Gにおいては、40サイクルの増幅によってもPCR産物は検出されなかった。
【0177】
膠芽腫細胞株へのBAI1cDNAの導入は増殖抑制を惹起するので、BAI3のかかる発現低下制御(down-regulation)も膠芽腫の発生や進展に重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0178】
(5)考察
血管新生の阻害に関与すると考えられるBAI1に相同性ある2つの新規なヒト遺伝子、BAI2及びBAI3、を単離した。両遺伝子の推定蛋白は、BAI1のそれに著しい類似性を有する。特に、そのタイプ1リピート及び膜通過ドメインは高度に保存されている。
【0179】
ノーザンブロット分析によれば、各種のヒト組織におけるBAI2及びBAI3転写物の発現パターンもまたBAI1のそれに類似しており、これら3つの遺伝子は同一タイプの脳細胞において発現されるものと考えられる。
【0180】
これらの構造的類似性は、これら蛋白が類似の機能を有していることを示唆しており、BAI2及びBAI3もまた、BAI1と同様に血管新生を抑制するものと考えられる。
【0181】
BAI1は野生型p53により誘導されるが、BAI2及びBAI3の発現はp53によっては影響されなかった。しかしながら、BAI3mRNAレベルは、試験した9種の膠芽腫細胞株中5種において発現低下制御され、該5種中3種の細胞株においては完全に消失していた。
【0182】
以上の試験結果によれば、BAI1、BAI2及びBAI3は、細胞外マトリクスと相互作用し及び/又は細胞間相互作用に関与し、不適当な条件下では増殖しないとするシグナルを伝達するものと考えられる。
【0183】
【実施例3】
本発明ペプチドの製造
(1)配列番号:7〜18のペプチドの化学合成
配列番号:7に示されるアミノ酸配列のペプチド(ペプチドA1)は、常法〔E. Atherton & R.C. Sheppard, "Solid phase peptide synthesis: a practical approach", IRL PRESS at Oxford University Press 1989, ED. by D. Richwood, B.D. Hames, p25-161〕に従い、ペプチド合成機(PSSM-8, 島津製作所)を使用して固相合成された。
【0184】
即ち、Fmoc-Arg(Pmc)-2-Chlorotrityl 樹脂(0.1 mmol)に、所望のアミノ酸配列に従う次の各アミノ酸(各4倍当量)を順次反応させた:
Fmoc-Thr(tBoc)、Fmoc-Arg(Pmc)、Fmoc-Thr(tBoc)、Fmoc-Gln(trt)、Fmoc-Trp(Boc)、Fmoc-Gly、Fmoc-Glu(OtBu)、Fmoc-Gly、Fmoc-Ala、Fmoc-Thr(tBoc)、Fmoc-Ser(tBu)、Fmoc-Ser(tBu)、Fmoc-Ala、Fmoc-Val、Fmoc-Ser(tBu)、Fmoc-Trp(Boc)、Fmoc-Pro 及び Fmoc-Ser(tBu)。
【0185】
かくして得たペプチド−樹脂を、脱保護液(Reagent K: 82.5% TFA, 5% phenol, 5% H2O, 5% thioanisole, 2.5% ethandithiol)にて室温で2時間処理することにより、ペプチドの脱保護を行った。樹脂と溶液を分離し、TFA及び揮発性スカベンジャーを除去後、ジエチルエーテルにて粗ペプチドを沈殿させた。粗ペプチドを逆相クロマトグラフィー(VYDAC, 218TP54カラム)に付し、0.1%の水性TFAと100%アセトニトリル(0.1% TFA)により得られる勾配で目的分画を回収し、濃縮、凍結乾燥して精製された目的ペプチド(ペプチドA1)を得た。
【0186】
該ペプチドA1は、BAI1遺伝子の第2のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0187】
上記と同様にして、以下の各ペプチドを合成した。
【0188】
(1) ペプチドA2(配列番号:8に示されるアミノ酸配列のペプチド)
該ペプチドA2は、BAI1遺伝子の第3のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0189】
(2) ペプチドA3(配列番号:9に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドA3は、BAI1遺伝子の第4のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0190】
(3) ペプチドA4(配列番号:10に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドA4は、BAI1遺伝子の第5のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ala)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0191】
(4) ペプチドB1(配列番号:11に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドB1は、BAI2遺伝子の第1のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0192】
(5) ペプチドB2(配列番号:12に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドB2は、BAI2遺伝子の第2のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Gly)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0193】
(6) ペプチドB3(配列番号:13に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドB3は、BAI2遺伝子の第3のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Gly)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0194】
(7) ペプチドB4(配列番号:14に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドB4は、BAI2遺伝子の第4のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Asn)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0195】
(8) ペプチドC1(配列番号:15に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドC1は、BAI3遺伝子の第1のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0196】
(9) ペプチドC2(配列番号:16に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドC2は、BAI3遺伝子の第2のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0197】
(10) ペプチドC3(配列番号:17に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドC3は、BAI3遺伝子の第3のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Ser)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0198】
(11) ペプチドC4(配列番号:18に示されるアミノ酸配列のペプチド):
該ペプチドC4は、BAI3遺伝子の第4のタイプ1リピートに相当するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該リピートの第7番目のアミノ酸(Gly)から第25番目のアミノ酸(Arg)までの19アミノ酸(2個のシステイン残基はいずれもアラニン残基に置換されている)で構成されている。
【0199】
上記で得た各ペプチドは、逆相HPLC(流速:1.0 ml/min、緩衝液A:0.1% TFA、緩衝液B:0.1% TFA / 90% acetonitrile、グラジエント:0-60% B in 45min)による純度分析の結果、いずれも95〜100%の純度を有していた。また、各ペプチドは、アミノ酸組成分析〔新生化学実験講座1「蛋白質II 一次構造」日本生化学会編、東京化学同人、40-48頁、1990年〕により、いずれも理論値に一致するアミノ酸の検出を与えたことより、所望の配列を有するペプチドであることを確認した。
【0200】
尚、各ペプチドのマススペクトル分析(Kratos Kompact MALDI 1V4.0.0;島津製作所、飛行時間型質量分析)の結果(M+H)を表3に示す。
【0201】
【表3】
Figure 0004001976
(2)ペプチドの遺伝子工学的製造
配列番号:1に示されるBAI1の第2、第3及び第4のタイプ1リピート又は同第3、第4及び第5のタイプ1リピートを有する本発明ペプチド(組換え蛋白)を、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として得た。
【0202】
即ち、下記表4のプライマーを用いたPCR法により、BAI1のアミノ酸340−495(タイプ1A)又は同386−568(タイプ1B)に相当するcDNA断片を増幅し、制限酵素SmaIで切断後、アガロースゲルから目的のDNA断片を調製した。
【0203】
【表4】
Figure 0004001976
上記のDNA断片を、プラスミドpGEX−5X−2(ファルマシア社)の制限酵素SmaI部位に組込み、BAI1タイプ1A又は同タイプ1BとGSTとの融合蛋白発現プラスミドを構築した。該発現プラスミドを、エレクトロポレーション法に従い大腸菌株DH10Bへ導入し、1mMのIPTGによって発現誘導した。発現された目的の融合蛋白は、不溶性ペレットより同社(ファルマシア社)仕様書に従うグルタチオンのアフィニティークロマトグラフィーにより回収及び精製した。
【0204】
かくして得た目的の融合蛋白は、BAI1のアミノ酸340−495又は同386−568に相当するペプチドとGSTとの融合蛋白であり、順次、GST−BAI1−タイプ1A及びGST−BAI1−タイプ1Bと名付けた。
【0205】
【実施例4】
血管新生抑制活性試験
(1)インビトロ試験
ウシ頚動脈内皮細胞(BCEC: bovine carotid endothelial cells)の増殖及び遊走に対する本発明ペプチドの作用を試験した〔Journal of Cellular Biochemistry, 53, 74-84 (1993)〕。
【0206】
即ち、継代数が10〜20代のBCEC細胞を、1%FBS含有E’MEM培地(以下「培地」)で1×105/mlに調製した。この50μlを、96穴プレート(コーニング)の各ウエルに播種し(5×103細胞/ウエル)、CO2インキュベーターにて約10分間培養した。培地にて所定濃度に調製した塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、R&D)及び被検試料のそれぞれ25μlづつを各ウエルに添加し、72時間培養後、MTTの5mg/mlPBS(−)溶液(シグマ)を各ウエルに10μlづつ添加し、同インキュベーター内に4時間放置した。可溶化溶液(10% SDS-0.01NHCl)を各ウエルに100μlずつ添加し、570及び630nmでの吸光度を24時間後に測定し(Titertek Multiscan MCC/340、大日本製薬)、その吸光度の差を細胞増殖の指標とした。
【0207】
細胞増殖阻害活性は、被検試料を添加しないコントロール(C)の結果に対する百分率(T/C)にて評価した。
【0208】
また、遊走性測定のために、細胞を24時間インキュベートし、収穫し、培地に懸濁させ、次いでケモタキセル(chemotaxicel, Kurabo)の上表面に、1ng/mlのbFGF及び所定濃度の被検試料と共に、1×105細胞/ウエルとなるように加えた。37℃で4時間培養して遊走させた後、チェンバーごと24穴プレート中で固定及び染色し、フィルターの底に遊走した細胞数を9ハイパワーフィールド(9HPF)でカウントした。
【0209】
結果を図12〜20に示す。
【0210】
図12〜15は、本発明ペプチドのBCEC増殖に与える結果を示しており、図12はペプチドA1、図13はペプチドA2、図14はペプチドA3及び図15はペプチドA4における各結果である。これらの図面において、縦軸はT/C(%)を、横軸は被検試料の濃度(μg/ml)をそれぞれ示し、結果は平均値(n=3)で示されている。
【0211】
図16〜18は、対照群における同結果を同様に示しており、図16はヒトTSP1(R&D)、図17はTSP1タイプ1リピート由来ペプチド(実施例3(1)と同様にして得たTSP1アミノ酸368〜386の合成ペプチド:MalI)及び図18はTSP1タイプ1リピート由来ペプチド(実施例3(1)と同様にして得たTSP1アミノ酸424〜442の合成ペプチド:MalII)における各結果である。
【0212】
図19は、本発明ペプチド(実施例3(2)で得た組換え蛋白)及び対照(実施例3(2)におけるGST蛋白「GST」及び同実施例と同様にして得たTSP1のアミノ酸341〜523のGST融合蛋白「GST-TSP1-type1」)における各結果を示しており、結果は平均±SD(n=3)で示されている。
【0213】
図20は、上記19図の試験において測定された、本発明ペプチド及び対照のBCEC遊走に与える結果を示している。同図において、縦軸は、遊走細胞数(数/9HPF)を、横軸は、被検試料の濃度を示す。結果は、平均±SD(n=3)で示されている。
【0214】
図12〜19より、本発明ペプチドが用量依存的にBCECの増殖を抑制することが判る。また、合成ペプチドにおけるその強さは、TSP1タイプ1リピートに由来する対照ペプチド(MalI及びMalII)に比較してより強力であり、殊にペプチドA1が最も強力で、1ng/mlbFGF存在下でのIC50値(50% 阻害濃度)は約46μg/ml(24μM;分子量約 1,900)であった。
【0215】
また、図20より、本発明ペプチドがbFGFによって誘導される内皮細胞の遊走を抑制したことが判る。
【0216】
尚、上記試験において、本発明ペプチド又は対照のGST−TSP1−タイプ1と共にインキュベートした細胞は、丸くなり培養皿から脱離するという形態学的変化を示した。
【0217】
(2)インビボ試験
本発明ペプチドがインビボで血管新生を抑制するか否かを評価するため、角膜ポケットアッセイ(Journal of Cell Biology, 122(2) 497-511 (1993))に従い、本発明ペプチドを含む徐放性ペレット(ethylene-vinyl-acetate: EVA pellets)を調製し、これをラット角膜に移植し、bFGFによって誘導される角膜縁からの新しい血管補充に与えるその効果を評価した。
【0218】
50ngのbFGFと共に、2μMの前記GST蛋白(対照)又は本発明ペプチド(GST-BAI1-タイプ1A 又は GST-BAI1-タイプ1B)を含むEVAペレットを調製し、1群5匹のSD雄性ラット(200-400 g)の角膜に移植した。新生血管形成は、移植第5日及び第7日に顕微鏡下に評価した。
【0219】
尚、個々のラットにおけるbFGF誘導新生血管形成の感受性の個体差を除去する為、対照ペレット(bFGF 及び GST 含有ペレット)と試験ペレット(bFGF 及び本発明ペプチド含有ペレット)を同一個体の左目と右目に移植した。
【0220】
その結果、本発明ペプチドは、ラット角膜でのbFGF誘導新生血管形成をインビボで抑制し、特に、GST−BAI1−タイプ1Aにおいては、全5匹のラットにおいて新生血管形成の顕著な抑制が認められた。
【0221】
この代表的な結果を図21に示す。同図は、第7日目におけるペレット移植部位の血管を示す図面代用写真であり、「A」〜「F」は次のとおりである。
【0222】
・A:PBSのみ含有ペレット移植群
・B:bFGF含有ペレット移植群
・C及びE:bFGF及びGST含有ペレット移植群
・D:bFGF及びGST−BAI1−タイプ1A含有ペレット移植群
・F:bFGF及びGST−BAI1−タイプ1B含有ペレット移植群。
【0223】
【配列表】
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【0224】
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【0225】
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【0227】
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【0228】
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【0229】
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【0241】
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【図面の簡単な説明】
【図1】野生型p53によるBAI1遺伝子の発現制御の結果を示す図面代用写真である。
【図2】ヒトBAI1遺伝子産物の推定アミノ酸配列を示す。
【図3】第2図に示すヒトBAI1遺伝子産物の推定分子構造を示す模式図である。
【図4】BAI1、BAI2、BAI3、TSP1及びTSP2の各タイプ1リピートアミノ酸配列の整列をした図面である。
【図5】ノーザンブロット分析により、BAI1遺伝子の種々ヒト組織における遺伝子発現を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図6】種々の膠芽腫細胞株におけるBAI1遺伝子発現をRT−PCR分析により調べた結果を示す図面代用写真である。
【図7】BAI2及びBAI3遺伝子産物の推定分子構造を示す模式図である。
【図8】ノーザンブロット分析により、BAI2及びBAI3遺伝子の種々ヒト組織における遺伝子発現を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図9】ノーザンブロット分析により、BAI2及びBAI3遺伝子のヒト脳組織における遺伝子発現を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図10】野生型p53によるBAI2及びBAI3遺伝子の発現制御の結果を示す図面代用写真である。
【図11】種々の膠芽腫細胞株におけるBAI3遺伝子発現をRT−PCR分析により調べた結果を示す図面代用写真である。
【図12】本発明ペプチドによるBCECの増殖抑制を示すグラフである。
【図13】本発明ペプチドによるBCECの増殖抑制を示すグラフである。
【図14】本発明ペプチドによるBCECの増殖抑制を示すグラフである。
【図15】本発明ペプチドによるBCECの増殖抑制を示すグラフである。
【図16】上記における対照群の増殖抑制を示すグラフである。
【図17】上記における対照群の増殖抑制を示すグラフである。
【図18】上記における対照群の増殖抑制を示すグラフである。
【図19】本発明ペプチドによるBCECの増殖抑制を示すグラフである。
【図20】本発明ペプチドによるBCEC遊走の抑制を示すグラフである。
【図21】本発明ペプチドによる新生血管形成の抑制を示す図面代用写真である。

Claims (7)

  1. 以下から選択される塩基配列を含むヒトBAI遺伝子
    (1) 配列番号 :1 で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列;
    (2) 配列番号 :1 で示されるアミノ酸配列において、 1 又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、血管新生抑制作用を有するペプチドをコードする塩基配列;
    (3) 配列番号 :4 で示される塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であり、血管新生抑制作用を有するペプチドをコードする塩基配列;及び
    (4) 配列番号 :1 で示されるアミノ酸配列からなるヒト BAI1 遺伝子がコードするトロンボスポンディン (TSP) 様タイプ 1 リピートに相当するアミノ酸配列を含み、血管新生抑制作用を有するペプチドをコードする塩基配列
  2. 配列番号:4で示される塩基配列からなる請求項1に記載の遺伝子。
  3. 請求項1に記載のヒトBAI遺伝子によりコードされるペプチド
  4. 配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなるヒトBAI1遺伝子産物の 262 番目から 315 番目までの領域からなる第1、355 番目から 407 番目までの領域からなる第2、410 番目から 462 番目までの領域からなる第3、468 番目から 520 番目までの領域からなる第4及び523 番目から 575 番目までの領域からなる第5のTSP タイプ1リピートから選択される少なくともひとつのリピートに相当するアミノ酸配列を含む請求項3に記載のペプチド。
  5. TSP タイプ1リピートに相当するアミノ酸配列が、システイン残基をアラニン残基に置換したアミノ酸配列からなる請求項4に記載のペプチド。
  6. 配列番号:7、8、9及び10で示されるアミノ酸配列、並びに配列番号 :1 で示されるアミノ酸配列からなるヒト BAI1 遺伝子産物の 340 番目から 495 番目までの領域からなるアミノ酸配列、及び 386 番目から 568 番目までの領域からなるアミノ酸配列から選択される少なくともひとつの配列を含む請求項3に記載のペプチド。
  7. 請求項3に記載のペプチドを有効成分とする医薬。
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