JP4001463B2 - スパークプラグの製造方法及びスパークプラグの製造装置 - Google Patents

スパークプラグの製造方法及びスパークプラグの製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグの製造方法及びスパークプラグの製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグにおいては、近年、耐火花消耗性向上のために、Ni基あるいはFe基の耐熱合金で構成された中心電極の先端にPtやIr等を主体とする貴金属チップを溶接して貴金属発火部を形成したタイプのものが使用されている。例えば接地電極と対向して火花放電ギャップを形成することになる中心電極の先端面に貴金属チップを接合する場合、その製造方法として、円板状の貴金属チップを中心電極の先端面(チップ被固着面)に重ね合わせ、中心電極を回転させながら貴金属チップの外周に沿ってレーザー光を照射することにより、全周レーザー溶接部を形成する方法が提案されている(例えば、特開平6−45050号、特開平10−112374号の各公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなスパークプラグの製造方法においては、例えば、YAGレーザー等によるパルス状レーザー光を用い、貴金属チップと中心電極のチップ被固着面形成部位とにまたがるレーザー溶接部を貴金属チップの外周に沿って形成するようにしている。しかしながら、チップ材質であるPtやIr等の貴金属ないしそれらを主体とする貴金属合金と、電極材質であるNiあるいはFe系の合金とは、融点が数100〜1000℃程度も異なり、僅かな溶接条件のずれが生じても、貴金属ないし貴金属合金の溶け不足あるいは電極合金の過剰溶融などにより、健全な溶接部が形成できなくなってしまうことにつながる。また、貴金属チップ及び中心電極の材質など、発火部の仕様が異なるスパークプラグを同一のラインにて製造しようとする場合、仕様に応じて溶接部の品質も大きく影響されやすくなる。
【0004】
例えば溶接条件のずれにより、溶接部の深さが不足すると、中心電極と貴金属チップとの溶接強度、ひいては形成される発火部の耐剥離強度が損なわれる問題がある。また、チップ厚さ方向における溶接部の幅が極端に増大したり、溶接部の形成位置が放電面側に偏ったりすると、中心電極の軸線方向においてチップ放電面から溶接部の縁までの最短距離、すなわち発火部厚さが不足し、発火部が少し消耗しただけで溶接部が放電面に露出して寿命低下に直結する問題がある。
【0005】
本発明の課題は、溶接部深さや発火部厚さの不足を生じにくく、ひいては発火部の溶接強度や寿命を向上できるスパークプラグの製造方法及び装置と、それによって実現可能となる高性能のスパークプラグとを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明のスパークプラグの製造方法は、
中心電極を有したスパークプラグワークの、中心電極の軸線方向における先端に形成されたチップ被固着面に貴金属チップを重ね合わせて重ね合せ組立体を作り、該重ね合せ組立体に対しレーザービームを照射して、貴金属チップとチップ被固着面の形成部位とにまたがるレーザー溶接部を形成することにより、放電面を有する貴金属発火部を形成するスパークプラグの製造方法において、
中心電極の軸線方向におけるチップ被固着面の位置を検出し、その検出結果に基づいて、軸線方向におけるレーザービームの重ね合せ組立体への相対的な照射位置調整を行なうことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のスパークプラグの製造装置は、
中心電極のチップ被固着面に貴金属チップを重ね合わせた重ね合せ組立体に対し、貴金属チップとチップ被固着面の形成部位とにまたがるレーザー溶接部を形成するために、該重ね合せ組立体に対しレーザービームを照射するレーザー照射ユニットと、
重ね合わせ方向におけるチップ被固着面の位置を検出する位置検出機構と、
チップ被固着面の位置検出結果に基づいて、軸線方向におけるレーザービームの重ね合せ組立体への相対的な照射位置調整を行なう照射位置調整機構と、
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところによると、貴金属チップを中心電極に接合する全周溶接部をレーザー溶接により形成する際に、レーザービームの照射位置のばらつきが、溶接部深さや発火部厚さが不足する要因であることが判明した。そして、さらに検討を重ねた結果、中心電極の軸線方向において、チップ被固着面の位置に対するレーザービームの相対的な照射位置を管理することが、上記不具合の解消に有効であることを見出して、本発明を完成するに至ったのである。具体的には、中心電極の軸線方向におけるチップ被固着面の位置を検出し、その検出結果に基づいて、軸線方向におけるレーザービームの重ね合せ組立体への相対的な照射位置調整を行なうこと、つまり、レーザー溶接部を形成する際に、検出されたチップ被固着面の位置を基準として、レーザービームの照射位置を、その都度、予め定められた目標位置に合わせこむことにより、貴金属チップとチップ被固着面の形成部位とにまたがって形成されるレーザー溶接部の深さや発火部厚さが常に最適の値に確保され、発火部の耐剥離強度向上及び寿命延長に顕著な効果が発揮される。
【0009】
レーザービームの照射位置は、貴金属チップ及び電極の材質といった発火部の仕様が異なる場合、例えば仕様毎に最適の溶接部の深さや発火部厚さが得られる位置を実験的に予め見出しておき、スパークプラグの製造品種を変更する場合は、その品種の仕様に応じた最適のレーザービーム照射位置を採用するようにする。例えば、Pt系の貴金属チップとIr系の貴金属チップとでは、後者のほうが融点において数100℃も高いため、レーザービームの照射位置を同じに設定した場合、Ir系の貴金属チップのほうが溶融しにくく、形成される溶接部の性状も大幅に異なるものとなる。従って、貴金属チップ及び/又は中心電極の材質に応じてレーザービームの照射位置を、チップ被固着面との相対的な位置関係が材質毎に固有のものとなるように定められた設定位置に位置決め調整することが、均一な深さあるいは幅の溶接部を得る上で極めて有効である。なお、発火部の仕様において、貴金属チップ及び電極の外径や高さなどの寸法パラメータが、最適の溶接部の深さや発火部厚さに影響する場合は、材質とともにこれら寸法パラメータに関しても、最適のレーザービーム照射位置を見出しておき、個々の仕様に応じてこれに適したレーザービーム照射位置を採用することが望ましい。
【0010】
例えば、中心電極のチップ被固着面形成部位がNi又はFeを主成分に構成され、貴金属チップがIr、Rh及びPtのいずれかを主成分に構成される場合、レーザー溶接部は、貴金属チップの厚さ方向において放電面に到達しない全周溶接部として形成され、貴金属発火部の中心軸線を含む断面において、全周レーザー溶接部の溶け込み深さ(以下、溶接部深さともいう)をdとし、溶接部幅をwとしたとき、d/wが0.35より大きくなるように調整されているのがよい。これによると、溶接部幅wが相対的に小さく、また溶接部深さdが相対的に大きく形成されるので、接合面積が増大し、発火部の溶接強度ひいては耐剥離性能を高めることができる。また、d/wがこのような数値範囲となるようにレーザービームの照射位置が調整されることで、結果的に溶接部深さdや溶接部幅wのばらつきを小さく抑えることが可能となり、品質のそろったスパークプラグが得やすくなる利点も生ずる。ただし、d/wが0.35未満になると、該効果の顕著性が損なわれる。他方、貴金属チップ及び中心電極の両方にまたがる均一な溶接部を形成する観点において、d/wを極端に大きくすることは却って不利に作用する場合がある。また、d/wを小さくするには、高エネルギーのレーザービームスポットを相当縮小しなければならないが、実用上これには一定の限界がある。これらの観点から、d/wは望ましくは1以下に設定するのがよい。さらに、d/wは、望ましくは0.55以上とするのがよい。
【0011】
一方、チップ被固着面位置を基準として、レーザービームの照射位置を、その都度予め定められた目標位置に合わせこむようにすることで、溶接幅wがばらつきなく形成できるようになれば、その分、発火部厚さhを大きく確保するできるようになる。このような場合には、発火部の消耗に伴って、全周レーザー溶接部が発火部の放電面へ露出する現象が生じにくくなる。したがって、全周レーザー溶接部の露出に伴う発火部の急激な消耗進行が抑制され、これによって発火部の耐久性が向上する。具体的には、チップ厚さHと発火部厚さhとの比h/Hにおいて、これを1/3以上に容易に高めることが可能となる。使用するチップの厚さHの実質的に1/3以上を、有効な発火部厚さhとして使用できるので、発火部の寿命向上に大きく寄与できる。ただし、h/Hが極端に小さくなることは、溶接部によるチップの接合代を十分に確保できなくなることを意味し、発火部の接合強度低下につながる場合がある。従って、この観点において、h/Hの値は9/10程度を上限として定めることが望ましい。なお、h/Hの値は、より望ましくは1/2以上とするのがよい。
【0012】
そして、上記のようなd/w比あるいはh/H比を実現するには、貴金属チップ側の構成金属の溶融割合が40〜60体積%となるように全周レーザー溶接部を形成することが望ましい。また、これにより、以下のようなスパークプラグを実現できる。すなわち、該スパークプラグは、中心電極の軸線方向における先端に形成されたチップ被固着面に貴金属チップを重ね合わせ、貴金属チップとチップ被固着面の形成部位とにまたがるレーザー溶接部を形成することにより、貴金属チップに基づく放電面を有する貴金属発火部が形成されてなり
中心電極のチップ被固着面形成部位がNi又はFeを主成分に構成され、
貴金属チップがIr、Rh及びPtのいずれかを主成分に構成され、
レーザー溶接部は、貴金属チップの厚さ方向において放電面に到達しない全周溶接部であり、貴金属チップ側の構成金属の溶融割合が40〜60体積%であることを特徴とする。
【0013】
貴金属チップ側の構成金属の溶融割合が40体積%未満になると、溶接部深さdが不足しがちとなり、d/wの値も上記望ましい数値範囲に確保することが困難となって、発火部の耐剥離性能の低下を招くことにつながる。また、貴金属チップ側の構成金属の溶融割合が減少すれば、電極側の構成金属の溶融割合は逆に増大するが、これは、チップ被固着面から中心電極側にかなり偏った位置にレーザービームの照射位置を設定することを意味し、溶接部も中心電極側に寄って形成される。該傾向が甚だしくなると、溶接部による貴金属チップの接合代が不足し、発火部の接合強度低下につながる場合がある。他方、上記溶融割合が60体積%を超えると、高融点である貴金属チップ側の溶融量を増大させるために、レーザービームによる入熱量の増加を余儀なくされ、溶接部幅wの過剰な増大ひいては発火部厚さh(ひいてはh/H)の不足につながる。また、溶接部深さdの不足にもつながりやすい。
【0014】
いうまでもなく、貴金属チップ側の構成金属の溶融割合を上記の範囲に調整するためには、重ね合わせ組立体に対するレーザービームの照射位置の調整が不可欠である。換言すれば、レーザービームの照射位置は、溶融割合を上記の範囲のものとなるように調整を行なう。ただし、好適な照射位置は、発火部(貴金属チップ)の材質や寸法に応じて異なるため、一義的な数値範囲によって規定することはできない。具体例については、発明の実施の形態にて示す。
【0015】
なお、本明細書の特許請求の範囲において各要件に付与した符号は、添付の図面の対応部分に付された符号を援用して用いたものであるが、あくまで発明の理解を容易にするために付与したものであり、特許請求の範囲における各構成要件の概念を何ら限定するものではない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1に示す本発明の一例たるスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された貴金属発火部(以下、単に発火部ともいう)31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する貴金属発火部(以下、単に発火部ともいう)32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0017】
なお本明細書でいう「発火部」とは、接合された貴金属チップのうち、溶接による組成変動の影響を受けていない部分(例えば、溶接により接地電極ないし中心電極の材料と合金化した部分を除く残余の部分)を指すものとする。また、「主成分」(「主に〜構成される」あるいは「主体に〜構成される」等も同義)とは、着目している材料中にて、最も重量含有率の高い成分を意味する。
【0018】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3及び端子金具8を嵌め込むための孔部6を有している。また、主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。
【0019】
なお、対向する発火部32については、これを省略する構成としてもよい。この場合には、発火部31と、発火部を有さない接地電極4の側面との間に火花放電ギャップgが形成されることとなる。
【0020】
中心電極3及び接地電極4のチップ被固着面形成部位、この実施例では少なくともその表層部がNi又はFeを主成分とする耐熱合金にて構成されている。Ni又はFeを主成分とする耐熱合金としては、次のようものが使用可能である。▲1▼Ni基耐熱合金:本明細書では、Niを40〜85質量%含有し、残部の主体が、Cr、Co、Mo、W、Nb、Al、Ti及びFeの1種又は2種以上からなる耐熱合金を総称する。具体的には、次のようなものが使用できる(いずれも商品名;なお、合金組成については、文献(改訂3版金属データブック(丸善)、p138)に記載されているので、詳細な説明は行なわない);
ASTROLOY、CABOT 214、D-979、HASTELLOY C22、HASTELLOYC276、HASTELLOY G30、HASTELLOY S、HASTELLOY X、HAYNES 230、INCONEL 587、INCONEL 597、INCONEL600、INCONEL 601、INCONEL 617、INCONEL 625、INCONEL 706、INCONEL 718、INCONEL X750、KSN、M-252、NIMONIC75、NIMONIC 80A、NIMONIC 90、NIMONIC 105、NIMONIC 115、NIMONIC 263、NIMONIC 942、NIMONICPE11、NIMONIC PE16、NIMONIC PK33、PYROMET 860、RENE 41、RENE 95、SSS 113MA、UDIMET 400、UDIMET500、UDIMET 520、UDIMET 630、UDIMET 700、UDIMET 710、UDIMET 720、UNITEP AF2-1 DA6、WASPALOY。
【0021】
▲2▼Fe基耐熱合金:本明細書では、Feを20〜60質量%含有し、残部の主体が、Cr、Co、Mo、W、Nb、Al、Ti及びNiの1種又は2種以上からなる耐熱合金を総称する。具体的には、次のようなものが使用できる(いずれも商品名;なお、合金組成については、文献(改訂3版金属データブック(丸善)、p138)に記載されているので、詳細な説明は行なわない);
A-286、ALLOY 901、DISCALOY、HAYNES 556、INCOLOY800、INCOLOY 801、INCOLOY 802、INCOLOY 807、INCOLOY 825、INCOLOY 903、INCOLOY 907、INCOLOY909、N-155、PYROMET CTX-1、PYROMET CTX-3、S-590、V-57、PYROMET CTX-1、16-25-6、17-14CuMo、19-9DL、20-Cb3。
【0022】
一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、Ir、Pt及びRhのいずれかを主成分とする貴金属を主体に構成されている。これらの貴金属の使用により、中心電極の温度が上昇しやすい環境下においても、発火部の耐消耗性を良好なものとすることができる。また、上記のような耐熱合金を母材とする中心電極3及び接地電極4に対する溶接性も良好である。例えばPtをベースにした貴金属を使用する場合には、Pt単体の他、Pt−Ni合金(例えばPt−1〜30質量%Ni合金)、Pt−Ir合金(例えばPt−1〜20質量%Ir合金)、Pt−Ir−Ni合金等を好適に使用できる。また、Irを主成分とするものとしては、Ir−Ru合金(例えばIr−1〜30質量%Ru合金)、Ir−Pt合金(例えばIr−1〜10質量%Pt合金)、Ir−Rh合金(例えばIr−5〜25質量%Rh合金)、Ir−Rh−Ni合金(例えば、Ir−1〜40質量%Rh−0.5〜8質量%Ni合金)等を使用できる。
【0023】
なお、Ir系の貴金属材料を使用する場合には、元素周期律表の3A族(いわゆる希土類元素)及び4A族(Ti、Zr、Hf)に属する金属元素の酸化物(複合酸化物を含む)を0.1〜15質量%の範囲内で含有させることができる。これにより、Ir成分の酸化・揮発を効果的に抑制でき、ひいては発火部の耐火花消耗性を向上させることができる。上記酸化物としてはYが好適に使用されるが、このほかにもLa、ThO、ZrO等を好ましく使用することができる。この場合、金属成分はIr合金のほか、Ir単体を使用してもよい。
【0024】
中心電極3は、図2に示すように、先端側が円錐台状のテーパ面3tにより縮径されるとともに、その先端面3sに上記発火部31を構成する合金組成からなる円板状の貴金属チップ31'を重ね合わせる。さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接により全周レーザー溶接部(以下、単に溶接部ともいう)10を形成して貴金属チップ31'を固着することにより発火部31が形成される。また、対向する発火部32は、発火部31に対応する位置において接地電極4に貴金属チップを位置合わせし、その外縁部に沿って同様に溶接部を形成してこれを固着することにより形成される。ただし、中心電極3側の発火部31をIr系金属にて構成し、接地電極4側の発火部32をPt系金属にて構成する場合、後者を抵抗溶接接合にて形成することも可能である。上記で用いられる貴金属チップは、例えば直径Dが0.4〜1.2mm、厚さHが0.5〜1.5mmのものを使用する。
【0025】
以下、中心電極3側の発火部31を、レーザー溶接を用いて形成する方法につき、以下に詳しく説明する。図2(a)に示すように、中心電極3の先端面3sをチップ被固着面として、ここにチップ径D、チップ厚さHの貴金属チップ31'を重ね合わせて重ね合せ組立体170(スパークプラグワークW)を作り、(b)及び(c)に示すように、その重ね合せ組立体170に対しレーザービームLBを照射して、貴金属チップ31'とチップ被固着面とにまたがり、かつ貴金属チップ31'の厚さ方向において放電面31a(図7参照)に到達しない全周レーザー溶接部10をチップ外周面周方向に沿って形成する。
【0026】
貴金属チップ31'は円板状あるいは円柱状であり、図2(b)に示すように、該貴金属チップ31と中心電極3との重ね合せ組立体170を、レーザー照射ユニット200(図3参照)の出射光学部に対しチップ31’(中心電極3)の中心軸線Oの周りにおいて相対的に回転させながら、重ね合せ組立体170に向けて、パルス状のレーザービームLBのスポット内にチップ被固着面(この場合、中心電極3の先端面)とチップ外周面との交差縁Qが入り、かつチップ被固着面に対する照射角度θが−5゜〜+60゜の範囲(水平より上方側を+とする;例えば+45゜)となるように照射する。この場合、組立体170又はレーザー照射ユニット200の一方のみを回転させるようにしてもよいし、双方ともに(例えば互いに逆方向に)回転させることも可能である。
【0027】
この場合、その回転速度は以下のように調整することが望ましい。まず、重ね合せ組立体170とレーザー照射ユニット200との相対回転速度は、図2のようにレーザー照射ユニット200を1つのみ使用する場合には、10rpm以上(望ましくは60rpm以上、さらに望ましくは120rpm以上)とするのがよい。全周レーザー溶接を行なうためには、重ね合せ組立体170とレーザー照射ユニット200とを最低1周分は相対回転させなければならないが、その相対回転速度が10rpm未満になると、1周分の溶接時間ひいては1個のスパークプラグを製造するためのピースタイムが長くなる場合がある。なお、上記相対回転速度の上限値については、重ね合せ組立体170を回転させる場合、溶接時に生ずる溶融金属の遠心力による変形を防止するために、150rpm程度に留めるのがよい。
【0028】
そして、本発明においては、中心電極3の軸線Oの方向におけるチップ被固着面3sの位置を検出し、その検出結果に基づいて、軸線Oの方向におけるレーザービームLBの重ね合せ組立体170への相対的な照射位置調整を行なう。つまり、図2(c)に示すように、溶接部10を形成する際に、検出されたチップ被固着面3sの位置を基準として、レーザービームLBの照射位置を、その都度、予め定められた照射位置δ(チップ被固着面3sを原点とし、チップ31’側を正、中心電極3側を負とする)に合わせこむことにより、図8に示すように、形成される全周溶接部10の深さdや発火部厚さhが常に最適の値に確保され、発火部31の耐剥離強度向上及び寿命延長に顕著な効果が発揮される。
【0029】
図3は、本発明に係るのスパークプラグ製造装置300の一例の要部を示すものである。該装置300においては、位置検出機構として撮影用のカメラ50が設けられ、該カメラ50により、チップ被固着面3sを含む視野により重ね合せ組立体170の画像撮影を行い、その撮影画像に基づいてチップ被固着面3sの位置を測定するようにしている。撮影による位置検出は迅速かつ高精度であり、非接触方式であることとも相俟って、検出工程の付加がスパークプラグの製造工程全体の能率低下を招きにくい利点がある。ここでは、チップ被固着面3sのエッジ線決定アルゴリズムの簡略化を図るために、画像撮影を、チップ被固着面に対してほぼ平行な光軸ξを有するカメラ(撮像装置)により行なっている。
【0030】
なお、チップ被固着面3s側から測定プローブを適用する形にて、接触式測長器やレーザー測長器を用いて位置検出を行なうなど、画像撮影以外の検出方法を採用することも可能である。
【0031】
次に、レーザービームLBの照射位置調整は、レーザー照射ユニット200と重ね合わせ組立体170との軸線Oの方向における相対移動により行なうようにしている。このようにすることで、レーザービームLBの照射位置調整を簡単かつ正確に行なうことができる。この場合、重ね合わせ組立て体170とレーザー照射ユニット200とのいずれを移動させてもよいが、図3に示すように、レーザー照射ユニット200のみを軸線Oの方向に移動させて行なうようにしておくと、重ね合わせ組立て体170の特定部分、例えばチップ固着面3sを基準位置に固定することで、レーザービームLBの照射位置、ひいてはレーザー照射ユニット200の位置決め位置を、上記基準位置からの距離により一義的に表すことができるので、工程管理上便利である。
【0032】
本実施形態では、図3に示すように、照射位置調整機構65は、軸線Oの方向においてレーザー照射ユニット200を昇降駆動するものである。駆動部はサーボモータ61であり、その回転出力が、ねじ軸(ボールねじ含む)70と変換機構68とを介してレーザー照射ユニット200の昇降駆動出力に変換される。変換機構68は傾斜カムとして構成され、ねじ軸70がサーボモータ61により正逆両方向に回転駆動されると、これに螺合するカム69が水平ガイド69bに沿って進退移動し、他方、その傾斜面状のカム摺動面69aに当接する従動部材67が、垂直ガイド67bに沿って昇降移動する。カム69の進退変位は、ねじ軸70の回転量に応じて定まり、ねじ軸70の回転が停止すれば従動部材67の昇降も停止するとともに、該停止位置を保持する。
【0033】
これにより、従動部材67にベース71を介して取り付けられたレーザー照射ユニット200は、サーボモータ61の回転により、任意の位置を保持可能に、かつ重ね合わせ組立体170の軸線O方向に昇降することとなる。なお、サーボモータ61の回転角度位置、ひいてはレーザー照射ユニット200の現在位置(つまり、レーザービームLBの照射位置である)は、サーボモータ70に結合された回転センサ、ここではパルスジェネレータ(以下、PGと略記する)62により検出される。また、レーザー照射ユニット200は、ベース71に対し旋回軸73を介して旋回可能かつ任意の角度位置を保持可能に設けられたアーム72に取り付けられており、該アーム72の旋回角度によりレーザービームLBの入射角度を任意に調整できるようになっている。
【0034】
なお、レーザー照射ユニットは、レーザー光発生部からのレーザービームを、反射鏡に一旦反射させた後、重ね合わせ組立体に向けて出射させる構造とすることも可能である。この場合、反射鏡を回転可能としておき、その回転角度位置に応じて、反射されたレーザービームの出射方向を変更できるようにすることができる。この構成によると、レーザー照射ユニットの位置を固定しつつ、反射鏡の角度調整を行なうことにより、重ね合わせ組立体に対するレーザービームの照射位置を変更することができる。
【0035】
図4は、スパークプラグ製造装置300の電気的構成の一例を示すブロック図であり、出入力部55とこれに接続されたCPU56、ROM57及びRAM58を有する制御用コンピュータ49を主体に構成されている。カメラ50はCCDカメラであり、レンズ等からなる光学系52を介して撮影された画像が、画像センサである二次元CCDセンサ51により画像信号とされ、出入力部55を介してコンピュータ49に入力されるとともに、RAM58内の画像メモリに画像データとして記憶される。
【0036】
一方、照射位置調整機構65の駆動部であるサーボモータ61は、信号処理部及び駆動出力部を有したサーボコントローラ60を介してコンピュータ49に接続されている。また、PG62の出力はカウンタ63により計測され、レーザービームLBの現在位置情報としてサーボコントローラ60に入力される。コンピュータ49は、撮影により得られた画像データを解析してチップ被固着面3s(図3)の位置を算出する。
【0037】
チップ被固着面3sの位置(エッジ位置)は、チップ被固着面の外形線を含む中心電極のマスター画像を予め用意しておき、撮影画像においてマスター画像と適合する部分を検索するとともに、その検索結果に基づいて決定することができる。こうしたパターンマッチングによるエッジ検出方法は周知であるので、詳細な説明は省略する。なお、図4に示すように、種別(品番)の異なるスパークプラグワークWに対し、チップ被固着面の外形線を含む中心電極のマスター画像を該種別毎に用意して記憶装置59に記憶しておき、処理すべきスパークプラグワークWの種別変更に伴い、該種別に対応するマスター画像を選択して使用するようにすれば、複数品種のスパークプラグワークWの処理を同一の製造装置300により処理できるので能率的である。
【0038】
上記のように算出されたチップ被固着面位置は、RAM58内のチップ被固着面位置メモリに記憶される。他方、HDD等からなる記憶装置59には、チップ被固着面3sからの軸線O方向の距離の形で、レーザービームLBの照射位置δが制御パラメータとして記憶されている。コンピュータ49は、対応する品番の制御パラメータを読み出して(RAM58の制御パラメータメモリにロードされる)、その照射位置δの値と、すでに算出されているチップ被固着面位置の値とを用いて、レーザービームLB(レーザー照射ユニット200)の移動目標位置を演算・決定し、サーボコントローラ60に出力する。サーボコントローラ60は、移動目標位置にレーザービームLBが移動するように、カウンタ63(PG62)の出力を参照しつつサーボモータ61を所定の駆動パターンに従い駆動する。
【0039】
なお、コンピュータ49の処理動作は、ROM57に記憶された制御・解析プログラムにより、RAM58をワークエリアとして実行されるものである。また、上記の態様では、移動目標位置をサーボコントローラ60に出力後は、その移動後の結果がフィードバックされないオープンループ型制御を採用しているが、カウンタ63からのレーザービームLBの現在位置情報をコンピュータ49にフィードバックし、これが設定された移動目標位置に一致するまでレーザー照射ユニット200の移動を継続するようにしてもよい。
【0040】
次に、チップ被固着面3sの位置検出は、チップ被固着面3sへの貴金属チップ31’の重ね合わせ後に行なうこともできるが、チップ31’と中心電極3とはいずれも似通った金属光沢を呈するため、チップ被固着面3sの画像上での識別精度が低下することもありうる。従って、チップ被固着面3sへの貴金属チップ31’の重ね合わせ前に検出を行なうようにすることで、チップ被固着面3sの位置検出精度を高めることができる。このとき、チップ被固着面3sの位置検出及びレーザー照射ユニット200と中心電極3との相対位置決めを、チップ被固着面3sへの貴金属チップ31’の重ね合わせ前に行なうようにすれば、その後、チップ被固着面3sへ貴金属チップ31’を配置するだけで、すぐに溶接工程に移ることができるので、工程の能率化に有利である。
【0041】
また、チップ被固着面3sの位置検出処理の簡略化を図るためには、前記した基準位置の固定化が有効であるが、具体的には、以下のようにすると一層効果的である。すなわち、図5(a)及び(b)に示すように、予め位置固定された位置決め部材80の位置決め面80aに対し、中心電極3のチップ被固着面3sを軸線Oの方向に押し付けて仮保持する。この実施形態では、昇降テーブル84上にホルダ83によりスパークプラグワークWを立てた状態に保持し、その状態でエアシリンダ82により昇降テーブル84を上昇させてスパークプラグワークWを位置決め面80aに押し付け保持させるようにしている。これにより、チップ被固着面3sの軸線O方向の位置は、基準位置を与える位置決め面80aにより常に一定に規定されることとなる。
【0042】
そして、(c)に示すように、その仮保持位置を維持した状態にてスパークプラグワークWを本把持し、その本把持されたスパークプラグワークWに対し、チップ被固着面3sの位置を検出して、その検出結果に基づきレーザービームの照射位置調整を行なう。本実施形態では、スパークプラグワークWの主体金具を把持チャック81により本把持し、(d)に示すように、その状態で昇降テーブル84を下降させてホルダ83を退避させ、該本把持状態にあるスパークプラグワークWの軸線O方向の位置を保ちつつ、レーザービームによる照射位置まで搬送を行なう。なお、ここでは仮保持されたスパークプラグワークWを直接把持チャック81により本把持するようにしているが、製造ラインにおける別の要請により、仮保持したスパークプラグワークを一旦別の把持チャックにより中間把持し(この場合、もちろん、軸線O方向において最初の仮保持位置が維持されることが前提である)、その中間把持されたスパークプラグワークをさらに本把持用のチャックにて本把持するようにしてもよい。中間把持は2段階以上に行なうこともできる。なお、この中間把持の実施に伴いスパークプラグワークの軸線O方向に位置ずれを生ずることもあるが、本把持状態にてチップ被固着面の位置を検出して、その検出結果に基づきレーザービームの照射位置調整を行なうようにすれば、そのような中間把持に伴う位置ずれの影響も受けにくくなる。
【0043】
上記の方法によると、図6に示すように、軸線O方向の長さが異なる複数種類のスパークプラグワークW1,W2に対し、位置決め部材80の位置決め面80aの固定位置を共通に設定することができる。つまり、品番の異なるスパークプラグワークWを同一のラインにて処理する場合、ワーク毎に位置決め面80aの位置、つまり前記した基準位置を変更する必要がないので能率的であり、工程管理も楽である。
【0044】
図7(a)〜(c)は、上記のようにして製造されたスパークプラグの、発火部31近傍を示すものである。すなわち、貴金属チップ31’の周方向において、貴金属チップ31’と中心電極3のテーパ面3tの先端縮径部位とにまたがり、かつ貴金属チップ31’の厚さ方向において放電面31aに到達しない形で、図7(b)及び(c)に示すような溶接部深さ(溶け込み深さ)d、溶接部幅wの全周レーザー溶接部10が形成される。全周レーザー溶接部10の形成に伴って、貴金属チップ31’には放電面31aを有する発火部31が形成され、放電面31aの外縁から全周レーザー溶接部10の対応する端縁までの軸線O方向の最短距離が発火部厚さhとなる。
【0045】
そして、貴金属チップ31’自体の軸線O方向の高さをHとした場合、すでに述べた通り、発火部31の接合強度確保及び耐剥離性向上と、長寿命化を図る観点において、d/wは0.35より大きく1以下となり、h/Hは1/3以上9/10以下の範囲となるように調整する。この場合、貴金属チップ31’側の構成金属の溶融割合が40〜60体積%となるように全周レーザー溶接部10を形成することが望ましく、重ね合わせ組立体170に対するレーザービームの照射位置δは、溶融割合が上記の範囲のものとなるように調整される。
【0046】
本発明者らの検討によれば、レーザービームLBの照射位置により、溶接部10の形態は図8のように変化することがわかっている。すなわち、軸線O方向にレーザービームLBの照射位置を変化させたとき、(a)に示すように、ある位置(以下、最大深さ位置)で溶接部深さdは最大値d0となる(なお、図8では、チップ被固着面3sの位置を最大深さ位置としているが、常にこうなるとは限らない)。そして、最大深さ位置での発火部厚さをh0としたとき、(b)に示すように照射位置が(a)の照射位置よりも中心電極3側にずれた場合は、溶接部深さdLはd0よりも減少し、発火部厚さhLはh0よりも増加する。他方、(c)に示すように、照射位置が(a)の照射位置よりもチップ31’側にずれたときは、溶接部深さdUは同様にd0よりも減少するが、発火部厚さhUはh0よりも減少する。なお、図8(a)〜(c)においては、すべて同材質の貴金属チップ31’及び中心電極3を用いることを前提としている。
【0047】
図11は、中心電極3の材質をINCONEL600に固定し、チップの材質を、Pt−13質量%Ir、Ir−20質量%Ru、Ir−5質量%Pt及びIr―5質量%Yとし、レーザービームLBの出力条件を一定として上記関係を測定した例である。ただし、チップ厚さHは0.6mm、チップ径Dが0.8mmである。このように、レーザービームの照射位置δと、溶接部深さdあるいは発火部厚さhとの関係は、チップあるいは電極の材質により全て異なるので、これらを予め実験により見出しておき、d/wあるいはh/Hが上記数値範囲に収まる照射位置条件を、該実験結果より見出して設定すればよい。このとき、得られる溶接部10におけるチップ側金属の溶解比率も前述の範囲のものとなる。
【0048】
なお、図7(b)に示すように、貴金属発火部31の中心軸線Oを挟んだ全周レーザー溶接部10の両側部分が半径方向において内部でつながらない場合(この場合、全周レーザー溶接部10はドーナツ状の形態を呈する)には、溶接後においてチップ厚さH及び溶け込み深さdを、中心軸線Oを含む断面(以下、軸平行断面という)から実測すればよい。しかし、同図(c)に示すように、両側の全周レーザー溶接部10が半径方向において内部でつながってしまう場合(全周レーザー溶接部10は円板状の形態を呈する)には、溶接後においてチップ厚さH及び溶け込み深さdを、その軸平行断面において直ちに実測できるわけではない。ただし、溶け込み深さdについては、全周レーザー溶接部10の軸断面において、中心軸線Oを挟んで対称と仮定し、チップ半径とすることができる。一方、チップ厚さHについては、全周レーザー溶接部10を、周方向に対して均一な濃度分布を有する貴金属チップ成分と電極成分との溶融合金部として捉えることにより、次のように定めるものとする。
【0049】
まず、図9に示すように、貴金属発火部31と中心電極3(チップ被固着面3sの形成部分)の金属組成は既知であるとし、前者の主成分をC、含有率をNC(質量%)、後者の主成分をE、含有率をNE(質量%)とする。次に、貴金属発火部31の軸平行断面において、全周レーザー溶接部10の成分C及び成分Eの各平均含有率NCW及びNEWを、EPMAあるいはEDX等の微小面分析法により求める。溶接部10中の貴金属チップの溶解比率をxとすると、図中の▲1▼の関係が成立するから、xは▲2▼のように求めることができる。近似的ではあるが、本明細書では、成分C単体の室温での密度をρC(g/cm)、成分E単体の室温での密度をρE(g/cm)として、溶接部10中の貴金属チップの体積溶解比率を、(x/ρC)/{(x/ρC)+(1−x)/ρE}にて求めるものとする(この数値を100倍すれば、体積%による表示となる)。該貴金属チップの体積溶解比率の決定方法は、図7(b)のように、全周レーザー溶接部10の両側部分が半径方向において内部でつながらない場合も同様である。
【0050】
次に、溶接部10の体積を以下のようにして求める(図10参照)。すなわち、軸線Oの方向において、溶接部10を、該軸線Oと直交する断面(以下、軸直交断面という)により、微小距離Δzに分割する。誤差を小さくするには分割数は多ければ多いほどよいが、例えば100分割程度あれば十分である。そして、各切断面による溶接部10の軸直交断面積Si(ここでは、チップ側から数えたi番目の切断面による軸直交断面積をSiと表している;Si’についても同様)、前記軸平行断面において溶接部10により切り取られる部分の長さを直径とする円により近似する。なお、溶接部10の上下のくぼみにかかる部分では、溶接部10により切り取られる部分は、軸線Oの両側に別れて現われるが、この場合は軸直交断面積Siを、外縁間距離及び内縁間距離をそれぞれ直径とする円に挟まれたドーナツ状領域の面積として求める。
【0051】
溶接部10の全体積Vtは、区分求積法の原理により、各位置の軸直交断面積Skを底面とし微小距離Δzを高さとする薄い柱体の体積和として算出できる(図中▲3▼式)。また、貴金属チップ31’の体積溶解比率は、すでに(x/ρC)/{(x/ρC)+(1−x)/ρE}として算出してあるので、貴金属チップ31’及び中心電極3の各溶解体積は、前記全体積Vtを用いて図中▲4▼及び▲5▼式によりそれぞれ算出できる。
【0052】
そして、発火部厚さをtとし、溶接部10の縁位置から、チップ被固着面3sの推定位置までの軸線O方向の距離をtAとすれば、推定チップ厚さHは、h+tA(図中▲6▼式)にて表される。ここで、溶接部10のチップ(発火部)側のくぼみの体積Vrは、前記ドーナツ状の推定断面の内周縁に囲まれる領域の軸直交断面積をSi’とすれば、同様の区分求積法により▲6▼式のように算出できる。その結果、チップの直径をD、発火部厚さをhとして、推定チップ体積Vmは▲7▼式にて表されるから、推定チップ高さHを▲8▼のように求めることができる。このような演算は、前記軸平行断面の観察画像を撮影し、その画像にコンピュータを用いた周知の図形演算処理を施せば、迅速かつ正確に行なうことができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態につき説明したが、これらはあくまで例示であって本発明を限定するものではなく、請求項の概念を逸脱しない範囲内にて種々の改良を施すことができ、それらも当然に本発明の技術的範囲に属するものである。例えば、レーザー照射ユニットは、上記実施形態の装置では1台のみ用いていたが、例え能率向上のため、軸線Oの周りに複数台のレーザー照射ユニットを配置し、それらレーザー照射ユニットにより1つのスパークプラグワークに対する溶接を同時に行なうようにしてもよい。この場合、各レーザー照射ユニット毎に、チップ被固着面の位置検出結果に基づくレーザービーム照射位置の調整を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一実施例を示す縦断面図及びその要部拡大図。
【図2】図1のスパークプラグの、中心電極側発火部の製造工程説明図。
【図3】本発明に係るスパークプラグの製造装置の一例を示す模式図。
【図4】図3の製造装置の、電気的構成の一例を示すブロック図。
【図5】チップ被固着面の位置決め方法の一例を示す工程説明図。
【図6】図5の工程の効果説明図。
【図7】レーザー溶接部と、その断面形態の例を示す説明図。
【図8】レーザービーム照射位置の溶接部形態に及ぼす影響を説明する図。
【図9】溶接部中の貴金属チップ溶解比率を算出する方法の概念説明図。
【図10】推定チップ高さを算出する方法の概念説明図。
【図11】溶接部深さ及び発火部厚さと、レーザービーム照射位置との関係を、いくつかのチップ材質について調べた結果を示すグラフ。

Claims (9)

  1. 中心電極(3)を有したスパークプラグワーク(W)の、前記中心電極(3)の軸線(O)方向における先端に形成されたチップ被固着面(3s)に貴金属チップ(31’)を重ね合わせて重ね合せ組立体(170)を作り、該重ね合せ組立体(170)に対しレーザービーム(LB)を照射して、前記貴金属チップ(31’)と前記チップ被固着面(3s)の形成部位とにまたがるレーザー溶接部(10)を形成することにより、放電面(31a)を有する貴金属発火部(31)を形成するスパークプラグの製造方法において、
    前記チップ被固着面(3s)を含む視野により前記中心電極(3)の画像撮影を行い、その撮影画像に基づいて、前記中心電極(3)の軸線(O)方向における前記チップ被固着面(3s)の位置を測定・検出し、その検出結果に基づいて、前記軸線(O)方向における前記レーザービーム(LB)の前記重ね合せ組立体(170)への相対的な照射位置調整を、前記貴金属チップ(31’)及び/又は前記中心電極(3)の材質に応じて前記レーザービーム(LB)の照射位置を、前記チップ被固着面(3s)との相対的な位置関係が前記材質毎に固有のものとなるように定められた設定位置に位置決め調整することにより行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
  2. 前記画像撮影を、前記チップ被固着面(3s)に対してほぼ平行な光軸を有する撮像装置(50)により行なう請求項1記載のスパークプラグの製造方法。
  3. 前記レーザービーム(LB)の照射位置調整は、前記レーザー照射ユニット(200)と前記中心電極(3)との前記軸線(O)方向における相対移動により行なう請求項1又は2に記載のスパークプラグの製造方法。
  4. 前記レーザービーム(LB)の照射位置調整を、前記レーザー照射ユニット(200)のみを前記軸線(O)方向に移動させて行なう請求項3記載のスパークプラグの製造方法。
  5. 前記チップ被固着面(3s)の位置検出を、前記チップ被固着面(3s)への前記貴金属チップ(31’)の重ね合わせ前に行なう請求項1ないし4のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法。
  6. 前記チップ被固着面(3s)の位置検出及び前記レーザー照射ユニット(200)と前記中心電極(3)との相対位置決めを、前記チップ被固着面(3s)への前記貴金属チップ(31’)の重ね合わせ前に行なう請求項5記載のスパークプラグの製造方法。
  7. 予め位置固定された位置決め部材(80)の位置決め面(80a)に対し、前記中心電極(3)の前記チップ被固着面(3s)を前記軸線(O)方向に押し付けて仮保持し、その仮保持位置を維持した状態にて前記スパークプラグワーク(W)を本把持して、その本把持されたスパークプラグワーク(W)に対し、前記レーザービーム(LB)の照射位置調整を行なう請求項1ないし6のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法。
  8. 軸線(O)方向の長さが異なる複数種類の前記スパークプラグワーク(W)に対し、前記位置決め部材(80)の前記位置決め面(80a)の固定位置を共通に設定する請求項7記載のスパークプラグの製造方法。
  9. 中心電極(3)のチップ被固着面(3s)に貴金属チップ(31’)を重ね合わせた重ね合せ組立体(170)に対し、前記貴金属チップ(31’)と前記チップ被固着面(3s)の形成部位とにまたがるレーザー溶接部(10)を形成するために、該重ね合せ組立体(170)に対しレーザービーム(LB)を照射するレーザー照射ユニット(200)と、
    前記チップ被固着面(3s)を含む視野により前記中心電極(3)の画像撮影を行なうカメラを有し、その撮影画像に基づいて、前記中心電極(3)の軸線(O)方向における前記チップ被固着面(3s)の位置を測定・前記重ね合わせ方向における前記チップ被固着面(3s)の位置を検出する位置検出機構と、
    前記レーザービーム(LB)の照射位置を、前記貴金属チップ(31’)及び/又は前 記中心電極(3)の材質に応じたスパークプラグ種別と対応付けて記憶した記憶装置を有し、該記憶装置にてスパークプラグの種別に対応した前記照射位置を読み出し、該照射位置と、前記チップ被固着面(3s)の位置検出結果とに基づいて、前記軸線(O)方向における前記レーザービーム(LB)の前記重ね合せ組立体(170)への相対的な照射位置調整を、前記チップ被固着面(3s)との相対的な位置関係が前記材質毎に固有のものとなるように定められた設定位置に位置決め調整する照射位置調整機構(65)と、
    を有することを特徴とするスパークプラグの製造装置。
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