JP4000232B2 - 構工法選択支援装置、方法及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は構工法選択支援装置、方法及び記録媒体に係り、特に、建設工事に採用すべき構工法の選択を支援する構工法選択支援方法、該構工法選択支援方法が適用された構工法選択支援装置、及びコンピュータを構工法選択支援装置として機能させるためのプログラムが記録された記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
建設工事では、コスト(施工費用)を所定の予算内に収め、かつ所定の工事期間内に建設工事を完了することが重要である。また、建設物の各部分の構工法としては種々の構工法が存在するが、建設工事のコストや工事期間は建設物の各部分について何れの構工法を採用するかによって大きく左右される。このため、建設工事の設計・施工者は建設物の設計をおおよそ完了すると、多数種の構工法の中から最適な構工法(各部分の設計条件等から実施可能と判断でき、コストや工事期間の点で最適な構工法)を選択し、その後に、工事期間内の各時期にどのような作業を行うのかを詳細に定めた工程計画を作成するようにしている。
【0003】
なお、本明細書において、構工法は対象部分を構成する各部材の構成、組み合わせ方、接合方法、施工方法、施工手順等を定めたものを意味し、上記のうち、完成後の建設物を構成する材料や完成後も残る部材分割等の項目(例えばPCa化、鉄骨の節割り、鉄骨・鉄筋の接着方法等)は構法に属するものと位置づけ、それ以外の仮設的なものや手順的なもの(例えば工区、建方手順、揚重機、型枠工法、鉄筋先組、VH分離打ち等)を工法に属するものと位置づけて、これらを「構工法」と総称している。
【0004】
最適な構工法を選択する作業は、建設物の設計及び施工に関する幅広い知識が必要とされかつ膨大な時間がかかる煩雑な作業である。従来の構工法の選択は2つの手法に大別される。一方は施工計画者個人の経験に依存した手法であり、施工計画者は自身が過去に経験した構工法の中から最適と思われる構工法を選択する。しかし、上記手法は施工計画者の経験の浅い場合に不向きであると共に、施工計画者の経験が豊富な場合にも、選択される構工法が施工管理者自身が過去に経験した構工法に偏り、未経験の構工法の中により適切な構工法が存在していたとしても選択されない可能性が高いという問題がある。
【0005】
他方は周囲から収集した情報に基づく手法であり、施工計画者が過去の類似物件(工事)を調査し、類似物件で採用された構工法を今回のプロジェクトに採用するか否かを検討することで構工法を選択する。しかし現在、構工法の選択肢の数は非常に多いため、上記手法を適用した場合、適切な構工法を選択するためには多大な労力が必要になり、施工計画者に多大な負担を強いることになる。
【0006】
上記に関連して特開平7−282112号公報には、選定対象とするスパンを決定した後に、床構法モデルの属性である床構法に採用可能なすべての床構工法を選定し、床構法計画モデルを作成し、作成した床構法計画モデルの条件を満たす床構工法を選定し、選定した各床構工法毎にコストを算定し、コストの算定結果を参考にして単一の床構工法計画を設定するようにした躯体構工法計画システムが提案されている。
【0007】
また、特開平7−282133号公報には、システムの基本情報や設計情報を入力し、実施の段取りや工期等を決め、概略の躯体構法を選定すると共に目標データを設定し、目標データを基にして各種計画を作成し、得られた計画に基づいて計画指標(目標工業化率・工期短縮率・労務削減率等)を求め、必要に応じて躯体構法の再選定を含む計画の手直しを行う計画情報の整合性管理システムが開示されている。このシステムでは、計画が好ましい方向に向かっているか否かを評価することで構法計画・工法計画・工程計画・仮設計画等の整合性を評価することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−282112号公報に記載の技術では、構工法の選択にあたり、採用可能な全ての構工法(各種モデルの条件を満たす全ての構工法)の組み合わせを計画案として各々作成し、各計画案について施工費用のシミュレーション演算を行って各計画案を比較することで採用可能な各構工法を評価・選択するものであり、採用可能な構工法の中から最適な構工法を直接選択している。しかし、構工法の選択肢の数が非常に多い現在では非常に多数の計画案を作成する必要があり、施工費用のシミュレーション演算には個々の計画案毎に多大な時間がかかるので、最適な構工法を選択するために膨大な時間がかかるという欠点がある。
【0009】
また、特開平7−282133号公報には、計画指標を基準にして構法計画や工法計画等の整合性を評価し、必要に応じて構法の再選定等を行うことが開示されているものの、構工法をどのようにして選択するかについて詳細には記載されていない。現実には施工費用の比較を省略して最適な構工法を選択することは困難であるので、特開平7−282112号公報の技術と同様に、構工法の選択に膨大な時間がかかるという欠点を有している。
【0010】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、最適な構工法の選択にあたり選択に要する時間を短縮することができる構工法選択支援装置、方法及び記録媒体を得ることが目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る構工法選択支援装置は、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果を記憶すると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果を、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶し、個々の詳細構法の実施制約条件を記憶する記憶手段と、情報を入力するための入力手段と、前記複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、前記構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、前記記憶手段に記憶されている、前記過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び前記入力手段を介して入力された前記特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、前記構工法選択対象の建設工事に対して前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、前記複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援する第1支援手段と、前記構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が前記入力手段を介して選択されると、前記入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、前記選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を前記個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、前記特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの前記建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する第2支援手段と、を含んで構成されている。
【0012】
請求項1記載の発明では、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法が、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類されており、記憶手段には前記分類の結果が記憶されている。なお、上記の分類により、多数種の詳細構工法は複数のグループにグループ分けされることになる。更に、個々の詳細構法の実施制約条件も記憶されている。
【0013】
また、第1支援手段は、複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行う。本発明に係る概略構工法は幾つかの詳細構工法を代表するものであるので、或る概略構工法を採用した場合(詳細構工法が未選択の状態)の工期や施工費用の演算結果はおおよその見積もりに過ぎない。しかし、第1支援手段が行う第1の処理によって出力(CRTやLCD等の表示手段に表示してもよいし、紙等の記録媒体に記録するようにしてもよい)された工期及び施工費用の少なくとも一方は、対応する概略構工法を採用した場合の適性を構工法選択者(例えば施工計画者等)が判断する際の判断材料となる。従って、第1支援手段が第1の処理を行うことで、複数種の概略構工法の中から採用すべき概略構工法を選択することを、構工法選択者が容易に行うことができる。
【0014】
また、記憶手段には、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果が、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶されており、第1支援手段は、記憶手段に記憶されている、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と記憶手段に評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び入力手段を介して入力された特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、構工法選択対象の建設工事に対して記憶手段に評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行う。
【0015】
記憶手段に記憶されている評価結果は、過去に実施された建設工事での施工実績に基づいて付与されたものであるので、実際に施工を行っていく過程で概略構工法に対する評価が変化した場合にも該評価の変化が反映され、過去に実施された建設工事における施工を経ての最終的な評価結果を表している。なお、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目の数は単数であっても複数であってもよく、具体的には、例えば構造種別、階数、基準階床面積等の建設物に関連する項目や、指定躯体工期、指定躯体コスト、労務事情(不足労務種等)、資材事情(不足資材種等)、建築地域等の建設工事に関連する項目のうちの少なくとも1つを用いることができる。
【0016】
上記のような情報が記憶手段に記憶されているので、第1支援手段が行う第2の処理において、記憶手段に評価結果が記憶されている構工法については、該記憶されている評価結果及び与条件に基づいて、入力された構工法選択対象の建設工事における与条件の下で実施した場合の適性を高い精度で判定することができ、出力された判定結果を参照することで、構工法選択者は、適性が判定された概略構工法の採用の適否を容易に認識することができる。このように、第1支援手段による第2の処理では、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し施工実績に基づいて付与された評価結果を利用し、前記概略構工法を採用した場合の適性を判定して出力するので、概略構工法の選択にあたって選択精度を向上させることができる。
【0017】
第1支援手段は、上述した第1の処理及び第2の処理を行うことで、複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援するので、最適な概略構工法の選択を短時間で精度良く行うことが可能となる。
【0018】
更に記憶手段には個々の詳細構法の実施制約条件が記憶されており、第2支援手段は、構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が入力手段を介して選択されると、入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する。これにより、出力された判定結果(個々の詳細構法の実施の適正)を参照することで、最適な詳細構法を容易かつ短時間で選択することができ、最適な詳細構工法の選択を短時間で精度良く行うことが可能となる。
【0019】
このように、請求項1記載の発明では、採用すべき構工法の選択に際し、第1支援手段が上述した第1の処理及び第2の処理を行うことで、第1支援手段の支援を受けながら複数種の概略構工法の中から特定の概略構工法が選択され、続いて第2支援手段が上述した第3の処理を行うことで、第2支援手段の支援を受けながら特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中から採用すべき詳細構工法が選択されるので、構工法が段階的に選択されることになる。
【0020】
最適な構工法を選択・採用するためには、選択対象の個々の構工法を採用した場合の施工費用等を各々演算して比較する必要があるが、請求項1の発明では、特定の概略構工法が選択された段階で、特定の概略構工法以外の概略構工法に対応する詳細構工法が構工法の選択対象から外され、選択された特定の概略構工法に対応する詳細構工法のみが選択対象とされるので、特定の概略構工法に対応する詳細構工法のみについて施工費用等の演算・比較を行えばよく、選択対象から外された詳細構工法については施工費用等の演算・比較を行う必要が無くなる。従って、請求項1の発明によれば、最適な構工法の選択にあたり選択に要する時間を短縮することができる。
【0021】
なお、本発明に係る概略構工法は、請求項2に記載したように、概略構工法のうちの概略構法については建設物の部位毎に複数種定め、概略構工法のうちの概略工法については工法の種類毎に複数種定めることができる。この場合、第1支援手段による概略構工法の選択の支援は、概略構工法選択対象の部位又は工法種が指定されると、指定された部位に採用可能な概略構法又は指定された工法種に採用可能な概略工法の名称を一覧表示することで行うことができる。
【0022】
これにより、構工法選択者(例えば施工計画者等)が建設物の特定部位を指定すると該特定部位に採用可能な複数種の概略構法が一覧表示され、特定の工法種を指定すると該工法種に採用可能な複数種の概略工法が一覧表示されることになるので、構工法選択者が選択肢(選択対象の概略構法又は概略工法)を容易に認識することができ、複数種の概略構工法の中から採用すべき概略構工法を選択することを、構工法選択者が容易に行うことができる。
【0027】
請求項3記載の発明に係る構工法選択支援方法は、情報を入力するための入力手段及び記憶手段を備えたコンピュータの前記記憶手段に、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果を記憶させると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果を、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶させ、個々の詳細構法の実施制約条件を記憶させておき、前記コンピュータを、前記複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、前記構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、前記記憶手段に記憶されている、前記過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び前記入力手段を介して入力された前記特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、前記構工法選択対象の建設工事に対して前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、前記複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援する第1支援手段、及び、前記構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が前記入力手段を介して選択されると、前記入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、前記選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を前記個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、前記特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの前記建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する第2支援手段として機能させるので、請求項1の発明と同様に、最適な構工法の選択にあたり選択に要する時間を短縮することができる。
【0028】
請求項4記載の発明に係る記録媒体は、情報を入力するための入力手段及び記憶手段を備えたコンピュータの前記記憶手段に、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果が記憶されていると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果が、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶され、個々の詳細構法の実施制約条件が記憶されている状態で、前記コンピュータを、前記複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、前記構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、前記記憶手段に記憶されている、前記過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び前記入力手段を介して入力された前記特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、前記構工法選択対象の建設工事に対して前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、前記複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援する第1支援手段、及び、前記構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が前記入力手段を介して選択されると、前記入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、前記選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を前記個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、前記特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの前記建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する第2支援手段として機能させるためのプログラムが記録されている。
【0029】
請求項4記載の発明に係る記録媒体には、上記のコンピュータを上記の第1支援手段及び第2支援手段として機能させるためのプログラムが記録されているので、上記コンピュータが請求項4記載の発明に係る記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで、上記コンピュータが請求項1記載の発明に係る構工法選択支援装置として機能することになり、請求項1の発明と同様に、最適な構工法の選択にあたり選択に要する時間を短縮することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、以下では、実施を予定している建設工事で採用すべき構工法の選択にあたり、建設物の「柱」「大梁」「床」「バルコニー」「外壁」「戸境壁」の各部位について採用すべき構法を選択し、「工区数」「建方手順」「揚重機(移動式クレーン/定置式クレーン)」「鉄筋工法」「型枠工法」「コンクリート打設工法」の各項目(工法種)について採用すべき工法を選択する場合を例に説明するが、構法選択対象部位及び工法選択対象の工法種は上記に限定されるものではない。
【0031】
図1には、本発明に係る構工法選択支援装置として機能させることが可能なパーソナルコンピュータ10が示されている。パーソナルコンピュータ10は、コンピュータ本体12と、コンピュータ本体12の入出力ポート20に接続される各種の入出力機器と、から構成されている。コンピュータ本体12は、CPU14、ROM16、RAM18及び入出力ポート20を備えており、これらがデータバス、アドレスバス、制御バス等によって互いに接続されて構成されている。本実施形態では、入出力機器として、CD−ROMドライバ22、フロッピーディスクドライバ(FDD)24、キーボード26、マウス28、ディスプレイ30、プリンタ32、及びハードディスク装置34が入出力ポート20に各々接続されている。
【0032】
パーソナルコンピュータ10を本発明に係る構工法選択支援装置として機能させるためのプログラム(以下、単に「構工法選択支援プログラム」という)は、例えばハードディスク装置34に内蔵されているハードディスク(図示省略)、又はCD−ROMドライバ22に装填されるCD−ROM36、又はFDD24に装填されるフロッピー(登録商標)ディスク(FD)38の何れかに記憶することができる。構工法選択支援プログラムの実行が指示されると、構工法選択支援プログラムを記憶している記憶媒体(ハードディスク又はCD−ROM36又はFD38)から構工法選択支援プログラムが読み出され、パーソナルコンピュータ10によって構工法選択支援プログラムが実行される。これにより、パーソナルコンピュータ10は構工法選択支援装置として機能する。なお、構工法選択支援プログラムを記憶している記憶媒体(ハードディスク又はCD−ROM36又はFD38)は請求項4に記載の記録媒体に対応している。
【0033】
キーボード26及びマウス28は、施工管理者や施工計画者等のオペレータが各種のデータやコマンドを入力するためのものであり、本発明の入力手段に対応している。ディスプレイ30は処理結果を表示するためのものであり、CRTやLCD(液晶ディスプレイ)等の各種の表示手段を適用できる。またプリンタ32は処理結果を紙やその他の記録媒体に印刷するためのものであり、レーザビームプリンタ、ドットプリンタ、XYプロッタ等の各種の印刷手段を適用できる。ディスプレイ30及びプリンタ32は出力手段の一部を構成している。
【0034】
次に本実施形態の作用を説明する。例として図2(A)に示すように、建設対象の建設物の各部位(例えば柱・梁・床・壁等)の構法の選択にあたり、従来は構法選択対象部位に採用可能な多数の構法の中から、採用すべき構法を直接選択していた(工法の選択についても同様)。
【0035】
これに対して本実施形態では、特定の部位に採用可能な多数の構法を「詳細構法」と称し、多数の詳細構法の各々を、互いに類似の詳細構法から構成される複数のグループの何れかに予め分類し、複数のグループに名称(概略構法名)を各々付与し、概略構法名によって各グループを識別している(図2(B)参照)。本実施形態では、上記の詳細構法のグループ分け及び概略構法名の付与が、構法選択対象の各部位について各々行われる。また、工法選択対象の工法種のうち工法の選択肢の数が比較的多い特定の工法種(例えば「型枠工法」等)についても、上記と同様に詳細工法のグループ分け及び概略工法名の付与が行われる。
【0036】
そして、実施を予定している建設工事で採用すべき構法(工法)の選択にあたっては、詳細は後述するが、まず各部位毎(工法種毎)に複数の概略構法(概略工法)の中から採用すべき概略構法(概略工法)が選択された後に、選択された概略工法に対応する詳細構法(詳細工法)の中から採用すべき詳細構法(詳細工法)が選択される。
【0037】
本実施形態では各種の詳細構法について、構法名、採用可能な部位、採用可能な構造形式等の構法識別情報や、採用するにあたっての制約条件を表す制約条件情報等から成る構法情報が各々設定されている。また、概略工法が設定されている詳細工法についても、工法名、採用可能な工法種等の工法識別情報を含んだ工法情報が設定されている。
【0038】
ハードディスク装置34の内蔵ハードディスクには、構法選択対象の各部位の名称が記憶され、各概略構法の情報(名称・工期や施工費用を概算するための情報(例えば単位施工数量当りの工期や施工費用)等)が、個々の概略構法を採用可能な部位の名称と各々対応されて記憶され、更に、前述した各詳細構法の構法情報が、個々の詳細構法に対応する概略構法の情報と各々対応されて記憶されている。
【0039】
また、ハードディスク装置34の内蔵ハードディスクには、工法選択対象の構法種の名称が記憶され、概略工法が設定されている工法種については、各概略工法種の情報(名称やその他の情報)が個々の概略工法を採用可能な工法種の名称と各々対応されて記憶され、更に、前述した各詳細工法の工法情報が個々の詳細工法に対応する概略工法の情報と各々対応されて記憶されている。
【0040】
このように、ハードディスク装置34の内蔵ハードディスクには、構法に関する情報及び工法に関する情報が、図2(B)に示すような階層構造で記憶されている。以下では、これらの情報を構工法情報データベース(構工法情報DB)と総称する。なお、構工法情報DBは、請求項1に記載の「建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果」を表す情報を含んでおり、ハードディスク装置34の内蔵ハードディスクは本発明の記憶手段に対応している。
【0041】
次に構工法選択支援処理の説明に先だって、まず、或る建設工事の施工が完了した後に、該建設工事で各部位毎に採用された概略構法、及び各工法種毎に採用された概略工法に対する評価結果の入力について説明する。或る建設工事の施工が完了し、前記建設工事の施工を担当した施工管理者から、前記建設工事で採用した構工法に対する評価の入力が指示されると、図3に示す構工法評価入力処理がパーソナルコンピュータ10によって実行される。なお、この処理も構工法選択支援プログラムによって実現される処理の一部である。
【0042】
ステップ100では、施工が完了した建設工事(評価対象の建設工事)で採用された各部位毎の概略構法名及び各工法種毎の概略工法名を取り込む。ステップ102では、取り込んだ概略構法名及び概略工法名に基づき、各構工法に対して評価結果を入力するための評価入力画面(例として図8参照)をディスプレイ30に表示する。例として図8に示す評価入力画面は、構法選択対象の各部位名及び工法選択対象の工法種名を表示するための表示欄50Aと、各部位で採用された概略構法名(図8の例では全て「在来」)及び各工法種で採用された概略工法名を表示するための表示欄50Bと、各構工法毎に入力された評価結果を表示するための表示欄50Cと、で構成されている。
【0043】
次のステップ104では、パーソナルコンピュータ10を操作している施工管理者に対し、表示している概略構工法の各々に対する評価結果の入力を要請するメッセージをディスプレイ30に表示する。そしてステップ106では、何れかの概略構法又は概略工法に対する評価結果が入力されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0044】
評価結果の入力を要請するメッセージがディスプレイ30に表示されると、施工管理者は、評価対象の建設工事の施工実績に基づいて定めた特定の概略構法又は概略工法に対する評価結果をキーボード26又はマウス28を操作して入力する。これにより、ステップ106の判定が肯定されてステップ108へ移行し、入力された特定の概略構法又は概略工法に対する評価結果を、表示欄50Cの中の対応する欄に表示する。なお、本実施形態では概略構法/概略工法に対する評価の一例として、○/×の2段階評価を採用している。
【0045】
次のステップ110では、評価対象の建設工事で採用された全ての概略構法・工法に対する評価結果の入力が完了したか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ104に戻り、ステップ104以降を繰り返す。これにより、評価対象の建設工事での施工実績に基づいて付与された、前記建設工事で採用された各概略構法・工法に対する評価結果が順次入力される。そして、図8に示すように全ての概略構法・工法に対して評価結果が入力されて表示されると、ステップ110の判定が肯定されてステップ112へ移行する。
【0046】
ステップ112では評価対象の建設工事における与条件を取り込む。本実施形態では、与条件の一例として建設物の「階数」及び「基準階床面積」を用いているが、他のパラメータを用いてもよいことは言うまでもない。そして、次のステップ114では、施工管理者によって入力された各概略構法・工法に対する評価結果(評価データ)を、部位毎・工法種毎に分けて、先に取り込んだ与条件と対応させてハードディスク装置34のハードディスクに記憶し、構工法評価入力処理を終了する。
【0047】
建設工事の施工が終了する毎に、該建設工事を評価対象として上記の構工法評価入力処理が行われることにより、ハードディスク装置34のハードディスクには、例として次の表1に示すように、各種の概略構法・工法に対する評価結果が与条件と対応されて蓄積記憶されることで評価データベース(評価DB)が形成されることになる。
【0048】
【表1】
【0049】
なお、表1では一例として、過去に実施された建設工事で「柱」の構法として採用された概略構法のうち、「PCa」についてはi個の評価データが、「ハーフPCa」についてはj個の評価データが、「在来」についてはk個の評価データが各々蓄積記憶されている状態を示している。また表1では、与条件としての「階数」及び「基準階床面積」に加え、柱の「構造形式」(RCとSRCとがある)も記憶されている。
【0050】
次に、例えば建設工事の受注時や建設物の基本設計時等の段階で建設工事のコストや工事期間の概算を行う必要が生じた等の場合や、施工計画を立案する場合に、計画対象の建設工事における構工法を選択するために、施工計画者によって実行が指示される構工法選択支援処理について、図4乃至図7のフローチャートを参照して説明する。なお、構工法選択支援処理の実行が指示されると、前記指示に応じてCPU14が構工法選択支援プログラムを実行することで、パーソナルコンピュータ10が構工法選択支援装置として機能するので、以下では、構工法選択支援プログラムを実行しているパーソナルコンピュータ10を、単に「構工法選択支援装置10」と称する。
【0051】
構工法選択支援処理は、まずステップ150でシステムメイン画面をディスプレイ30に表示する。図示は省略するが、システムメイン画面には各種の処理の実行を指示するためのボックスが表示されている。次のステップ152では、実行すべき処理として「プロジェクト情報の入力」が選択されたか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ154へ移行し、実行すべき処理として「設計条件の設定」が選択されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ156へ移行し、実行すべき処理として「概略構工法の選択」が選択されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ158へ移行し、実行すべき処理として「詳細構法の選択」又は「詳細工法の選択」が選択されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ152に戻り、ステップ152〜158の何れかの判定が肯定される迄、ステップ152〜158を繰り返す。
【0052】
施工計画者により、実行すべき処理として「プロジェクト情報の入力」が選択されると、ステップ152の判定が肯定されてステップ160へ移行し、一例として図9に示すようなプロジェクト情報入力画面をディスプレイ30に表示する。そして、次のステップ162ではプロジェクト情報の入力か完了したか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0053】
本実施形態では、プロジェクト情報(建設工事情報)が「工事名」「建築地(住所)」「(建設物の)構造種別」「階数」「敷地面積」「基準階床面積」「指定躯体工期」「指定躯体コスト」「労務事情(不足労務)」「資材事情(不足資材)」の各項目から構成されており、図9に示すように、プロジェクト情報入力画面には上記各項目の情報を入力するための入力欄が各々設けられている。
【0054】
プロジェクト情報入力画面が表示されると、施工計画者は、プロジェクト情報を構成する各項目のうち、少なくとも本実施形態での与条件である「階数」及び「基準階床面積」について情報を入力すると共に、他にも情報を入力可能な項目が有れば、該項目について情報を入力する(一例として図9は「指定躯体工期」「指定躯体コスト」「労務事情(不足労務)」「資材事情(不足資材)」の各項目については情報が未入力の状態を示している)。
【0055】
施工計画者による情報の入力が完了すると(「閉じる」と表記されているボックス(図9参照)がクリックされると)、ステップ162の判定が肯定されてステップ164へ移行し、入力されたプロジェクト情報をハードディスク等の記憶媒体に記憶してステップ150に戻る。これにより、ディスプレイ30にはシステムメイン画面が再度表示される。
【0056】
上記のようにしてプロジェクト情報を入力すると、続いて施工計画者により、実行すべき処理として「設計条件の設定」が選択される。これにより、ステップ154の判定が肯定されてステップ166へ移行し、建設物の各部の設計条件を設定する設計条件設定処理を行う。なお、建設物の各部の設計条件は膨大な数の項目の情報で構成されているが、このステップ166では詳細構工法の選択等に必要な最小限の主要項目の情報のみが設定される。設計条件の設定を完了するとステップ150に戻り、ディスプレイ30にシステムメイン画面を再度表示させる。
【0057】
設計条件の設定を完了すると、続いて施工計画者により、実行すべき処理として「概略構工法の選択」が選択される。これにより、ステップ156の判定が肯定されてステップ168へ移行し、概略構工法選択処理を行う。以下、概略構工法選択処理について図5のフローチャートを参照して説明する。なお、概略構工法選択処理は本発明の第1支援手段に対応している。
【0058】
ステップ200では、例として図10に示すような概略構工法選択画面をディスプレイ30に表示する。この概略構工法選択画面には、概略構法選択対象の各部位毎に、「構造形式」を表示するための表示欄52A、「概略構法名」を表示するための表示欄52Bが設けられていると共に、概略工法選択対象の各工法種毎に「概略工法」を表示するための表示欄52Cが設けられている。また、各部位及び各工法種毎に、採用した場合の適性の評価結果を表示するための表示欄52Dが設けられており、工期の演算を指示するためのボックス54A及びコスト(施工費用)の演算を指示するためのボックス54Bも表示されている。
【0059】
ステップ202では、概略構法選択対象部位のうちの特定部位に採用可能な構造形式名の一覧表示が施工計画者から指示されたか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ204へ移行し、特定部位に採用可能な概略構法名の一覧表示が施工計画者から指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ206へ移行し、概略工法選択対象の工法種のうちの特定工法種に採用可能な概略工法名の一覧表示が施工計画者から指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ208へ移行し、全ての構工法の選択が完了したか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ202に戻り、ステップ202〜208の何れかの判定が肯定される迄、ステップ202〜208を繰り返す。
【0060】
特定部位の「構造形式」表示欄52Aの右隅の「▼」と表示されているボックスが施工計画者によってクリックされると、ステップ202の判定が肯定されてステップ210へ移行し、前記特定部位で採用可能な構造形式として予め記憶された複数種の構造形式(例えばRC/SRC)を取り込み、取り込んだ複数種の構造形式をディスプレイ30に一覧表示する。そして、次のステップ212では特定の構造形式が選択されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0061】
一覧表示している複数種の構造形式の中から特定の構造形式がダブルクリック等の操作によって選択されると、ステップ212の判定が肯定されてステップ214へ移行し、選択された構造形式を「構造形式」表示欄に表示してステップ202に戻る。上記処理が概略構法選択対象の各部位について各々行われることにより、各部位の構造形式が各々選択・設定される。
【0062】
また、特定部位の「概略構法名」表示欄52Bの右隅の「▼」と表示されているボックスが施工計画者によってクリックされると、ステップ204の判定が肯定されてステップ216へ移行し、前記特定部位の構造形式は選択済みか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ202に戻り、構造形式の選択を促すメッセージ等をディスプレイ30に表示する。また、特定部位の構造形式が選択されている場合には、ステップ216の判定が肯定されてステップ218へ移行し、特定部位に、前記選択された特定の構造形式を適用した場合に採用可能な複数種の概略構法の名称等の情報を構工法DBから取り込む。
【0063】
次のステップ220では、ステップ218で取り込んだ複数種の概略構法の中から特定の概略構法を選択する。次のステップ222では、選択した特定の概略構法についての評価データ(前記特定の構造形式を適用した場合の評価データ)が評価DBに記憶されているか否か判定する。ステップ222の判定が否定された場合には、特定の概略構法を採用した場合の適性を評価データに基づいて判定することは不可能であるので、ステップ224で特定の概略構法に対する評価結果として「Δ」を設定し、ステップ236へ移行する。
【0064】
一方、特定の概略構法についての評価データが評価DBに記憶されている場合には、ステップ222の判定が肯定されてステップ226へ移行し、特定の概略構法に対する評価結果(評価データ)及び該評価結果と対応されて記憶されている与条件を取り込む。そして、取り込んだ評価結果及び与条件に基づいて、与条件と特定の概略構法に対する評価結果との関係を解析し(ステップ228)、処理対象の建設工事の与条件(「階数」及び「基準階床面積」)を取り込み(ステップ230)、処理対象の建設工事において、特定部位の構法として特定の概略構法を採用した場合の評価結果を推定する(ステップ232)。
【0065】
本実施形態では、多変量統計解析手法の一種である数量化理論2類を適用して上記の解析・推定を行っている。数量化理論2類は目的変量がカテゴリー分類を表すようなデータ行列を対象として分類の構造を明らかにし、更に進んで未分類のサンプルがどのカテゴリーに分類されるかを推定するものであり、本実施形態では、過去に実施された建設工事での特定の概略構法に対する評価(○/×)を目的変量、特定の概略構法を採用して過去に実施された建設工事における与条件を前述のデータ行列として、特定の概略構法に対する評価が○/×に分類される要因(与条件である「階数」及び「基準階床面積」との相関)を解析し、更に処理対象の建設工事の与条件を未分類のサンプルとして、前述の解析結果に基づいて、処理対象の建設工事に特定の概略構法を採用した場合の評価結果を推定している。
【0066】
評価DBから取り込んだ評価結果は、過去に実施された建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果であるので、実際に施工を行っていく過程で特定の構法に対する評価が変化した場合も含め、過去に実施された建設工事における経験がフィードバックされることで、処理対象の建設工事の与条件下で特定部位に特定の概略構法を採用した場合の評価結果を高精度に推定することができる。
【0067】
次のステップ234では、処理対象の建設工事において、特定部位の構法として特定の概略構法を採用した場合の評価結果を推定した結果に基づき、特定の概略構法に対する評価結果として「○」又は「×」を設定する。ステップ236では、ステップ218で取り込んだ全ての概略構法に対して上記の評価処理を行ったか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ220に戻り、ステップ236の判定が肯定される迄ステップ220〜ステップ236を繰り返す。これにより、採用可能な全ての概略構法に対し、処理対象の建設工事の特定部位に採用した場合の適性が各々評価されることになる。
【0068】
ステップ236の判定が肯定されるとステップ238へ移行し、例として図11にも示すように、処理対象の建設工事において、特定部位に採用可能な概略構法名と各概略構法に対する評価結果をディスプレイ30に一覧表示する。図11の例では、特定部位として「柱」が選択され、「柱」に適用可能な概略構法である「PCa」「ハーフPCa」「在来」の各名称が、評価結果を表す記号(○/Δ/×)と対応されて表示された状態を示している。施工計画者は、一覧表示された概略構法名及び評価結果を参照することで、採用すべき概略構法の選択を適正かつ容易に行うことができる。このステップ238は請求項2に記載の第1支援手段に対応している。
【0069】
次のステップ240では一覧表示している概略構法の中から特定の概略構法が選択されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。特定の概略構法が選択されると、ステップ240の判定が肯定されてステップ242へ移行し、選択された特定の概略構法の名称を表示欄52Bに表示すると共に、特定の概略構法に対する評価結果を対応する表示欄52Dに表示し、ステップ202に戻る。上記処理が概略構法選択対象の各部位について各々行われることにより、各部位の概略構法が各々選択・設定される。
【0070】
また、特定の工法種の「概略工法」表示欄52Cの右隅の「▼」と表示されているボックスが施工計画者によってクリックされると、ステップ206の判定が肯定されてステップ246へ移行し、特定の工法種に採用可能な複数種の概略工法の名称等の情報を構工法DBから取り込んだ後にステップ220へ移行し、先に述べた概略構法に対する処理と同様の処理が概略工法を対象として行われる。
【0071】
すなわち、ステップ246で取り込んだ複数種の概略工法の中から特定の概略工法を選択し(ステップ220)、選択した特定の概略工法についての評価データが評価DBに記憶されているか否か判定し(ステップ222)、判定が否定された場合には、特定の概略工法に対する評価結果として「△」を設定する(ステップ224)。
【0072】
また、判定が肯定された場合には、特定の概略工法に対する評価結果及び対応記憶されている与条件を取り込み(ステップ226)、与条件と特定の概略工法に対する評価結果との関係を解析し(ステップ228)、処理対象の建設工事の与条件を取り込み(ステップ230)、処理対象の建設工事において、特定の概略工法を採用した場合の評価結果を推定し(ステップ232)、評価結果として「○」又は「×」を設定する(ステップ234)。これにより、処理対象の建設工事の与条件下で特定の工法種として特定の概略工法を採用した場合の評価結果を高精度に推定することができる。
【0073】
ステップ246で取り込んだ全ての概略工法に対して上記の評価処理を行うと(ステップ236が肯定されると)、特定の工法種に採用可能な概略工法と各概略工法に対する評価結果をディスプレイ30に一覧表示し(ステップ238)、一覧表示している概略工法の中から特定の概略工法が選択されると(ステップ240が肯定)、選択された特定の概略工法の名称を表示欄52Cに表示すると共に、特定の概略工法に対する評価結果を対応する表示欄52Dに表示し(ステップ242)、ステップ202に戻る。上記処理が各工法種について各々行われることにより各工法種毎に概略工法が各々選択・設定される。
【0074】
上記のように、全ての概略構法選択対象部位について概略構法が選択・設定され、全ての概略工法選択対象の工法種について概略工法が選択・設定されると、ステップ208の判定が肯定されてステップ250へ移行し、工期の演算が指示されたか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ254へ移行し、コストの演算が指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ258へ移行し、概略構工法選択処理の終了が指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ202に戻り、ステップ202〜208,250,254,258を繰り返す。
【0075】
概略構工法の選択・設定を完了すると、施工計画者は、設定した概略構工法が工期や施工費用の点から見て適正か否かを検証するために、ボックス54Aをクリックすることで工期の演算を指示すると共に、ボックス54Bをクリックすることで施工費用の演算を指示する。
【0076】
工期の演算が指示されると、ステップ250の判定が肯定されてステップ252へ移行し、現在設定されている概略構工法の情報を構工法DBから取り込み、前記概略構工法を採用した場合の工期を概算し、演算結果をディスプレイ30に表示する。また、施工費用の演算が指示されると、ステップ254の判定が肯定されてステップ256へ移行し、現在設定されている概略構工法の情報を構工法DBから取り込み、建設対象の建設物の延床面積や工期日数に基づいて、前記概略構工法を採用した場合の施工費用を概算し、演算結果をディスプレイ30に表示する。
【0077】
これにより、施工計画者は、表示された工期や施工費用を参照することで、設定した概略構工法が工期や施工費用の点で適正か否かを容易に判断することができ、必要に応じて概略構法や概略工法を再設定することができる。概略構工法選択処理の終了が指示されるとステップ258の判定が肯定されて概略構工法選択支援処理を終了し、図4のフローチャートのステップ150に戻る。これにより、ディスプレイ30にはシステムメイン画面が再度表示される。
【0078】
上記のようにして概略構工法の選択を完了すると、施工計画者により、実行すべき処理として「詳細構法の選択」又は「詳細工法の選択」が選択される。これにより、ステップ158の判定が肯定されてステップ170へ移行し、選択対象が詳細構法か否か判定する。判定が肯定された場合にはステップ172で詳細構法選択処理を行い、判定が否定された場合にはステップ174で詳細工法選択処理を行う。なお、詳細構法選択処理及び詳細工法選択処理は、ステップ178(後述)と共に本発明の第2支援手段に対応している。
【0079】
以下では、まず詳細構法選択処理について図6のフローチャートを参照して説明する。ステップ300では、詳細構法の選択を行う部位の指定を要請するメッセージをディスプレイ30に表示し、施工計画者に前記部位を指定させる。ステップ302では詳細構法の選択を行う部位が指定されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。ステップ302の判定が肯定されるとステップ304へ移行し、指定された部位の詳細構法を設定するための詳細構法設定画面をディスプレイ30に表示する。例として図12には、詳細構法の選択を行う部位として「床」が指定された場合(詳しくは工法種の1つである「工区数(階毎の工区数)」として「1工区」が指定されている場合)に表示する詳細構法設定画面の一例を示している。
【0080】
この詳細構法設定画面は、処理対象の工区(この場合は階毎の工区数が1であるので処理対象の階)を表示するための表示欄56A、設定されている概略構法を表示するための表示欄56B、詳細構法を表示するための表示欄56Cが設けられている。また、各工区毎(各階毎)に、設定された詳細構法名を表示するための表示欄56Dと、小梁に関する情報を表示するための表示欄56Eが各々設けられており、更に判定理由(詳細は後述)の表示を指示するためのボックス58A及び構造計算の実行を指示するためのボックス58Bが設けられている。
【0081】
次のステップ306では、指定された部位に対して設定されている概略構法の名称を表示欄56Bに表示すると共に、この概略構法に対応する詳細構法(通常は複数種存在している)を判定する。ステップ308では詳細構法の設定を行う工区の指定を要請するメッセージをディスプレイ30に表示し、施工計画者に工区を指定させる。次のステップ310では詳細構法の設定を行う工区が指定されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0082】
詳細構法の設定を行う工区が施工計画者によって指定されると、ステップ310の判定が肯定されてステップ312へ移行し、指定された工区を表示欄56Aに表示すると共に、指定された工区の設計条件(前述した設計条件設定処理で設定された主要項目についての設計条件)の取り込みを行う。次のステップ314では、設定されている概略構法に対応する各詳細構法の中から特定の詳細構法の構法情報を構工法情報DBから取り込む。
【0083】
そしてステップ316では、特定の詳細構法の構法情報をステップ312で取り込んだ指定工区の設計条件と照合し、指定工区の詳細構法として前記特定の詳細構法を採用した場合の実施の適性(指定工区の設計条件が特定の詳細構法の実施制約条件に合致するか否か)を判定する。本実施形態では実施の適性を「○/△/×」の3段階で評価している。
【0084】
次のステップ318では、設定されている概略構法に対応する全ての詳細構法に対して実施の適性を判定したか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ314に戻り、ステップ318の判定が肯定される迄、ステップ314〜318を繰り返す。これにより、設定されている概略構法に対応する全ての詳細構法に対して実施の適性が各々判定される。ステップ318の判定が肯定されるとステップ320へ移行し、指定工区に採用可能な詳細構法(設定されている概略構法に対応する詳細構法)の一覧表示が指示されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0085】
また、詳細構法の表示欄56Cの右隅の「▼」と表示されているボックスが施工計画者によってクリックされると、ステップ320の判定が肯定されてステップ322へ移行し、設定されている概略構法に対応する詳細構法の名称を、ステップ316で判定した実施の適性の判定結果を表す記号「○/△/×」と対応させて一覧表示する。
【0086】
ここで一覧表示される詳細構法は、前述のように設定されている概略構法に対応する詳細構法であり、他の概略構法に対応する詳細構法は表示されない。施工計画者は、一覧表示された詳細構法の中から指定工区に採用する詳細構法を選択するので、構法選択対象の各部位について予め概略構法を各々設定することで、各部位で採用すべき詳細構法を工区単位で選択する際の選択肢の数(一覧表示する詳細構法の数)を少なくすることができる。従って施工計画者は、詳細構法の名称と共に表示された実施の適性の判定結果も参考にして、指定工区に採用すべき詳細構法を容易かつ短時間で選択することができる。
【0087】
次のステップ324では、一覧表示した各詳細構法に対する実施の適性の判定理由の表示が指示されたか否か判定する。この判定が否定された場合にはステップ328へ移行し、特定の詳細構法が選択されたか否か判定する。この判定も否定された場合にはステップ324に戻り、ステップ324,328を繰り返す。
【0088】
一覧表示されている詳細構法のうち特定の詳細構法に付与されている実施の適性の判定理由が不明である等の場合、施工計画者は特定の詳細構法を仮選択してボックス58Aをクリックする。これにより、ステップ324の判定が肯定されてステップ326へ移行し、仮選択された特定の詳細構法についての実施の適性の判定理由をディスプレイ30に表示する。この判定理由の表示は、例えば仮選択された特定の詳細構法の実施制約条件そのものを表示してもよいし、設計条件を構成する各項目のうち実施制約条件に合致しない項目を表示するようにしてもよい。これにより、各詳細構法についての実施の適性の判定理由を施工計画者が理解することができ、採用すべき詳細構法の選択を更に容易に行うことができる。
【0089】
施工計画者により、指定工区に採用すべき詳細構法として特定の詳細構法が選択されると、ステップ328の判定が肯定されてステップ330へ移行し、選択された詳細構法を表示欄56Dのうちの指定工区に対応する表示欄に表示する。次のステップ332では構造計算の実行が指示されたか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ336へ移行するが、判定が肯定された場合にはステップ334において、指定工区の詳細構法として前記選択された特定の詳細構法を採用した場合について、設定されている設計条件に基づき構造計算を行って施工数量を演算し、演算結果を表示する。
【0090】
次のステップ336では、選択された特定の詳細構法を採用するか否か判定する。例えば特定の詳細構法を選択したものの、構造計算の結果等に基づき、選択した詳細構法が不適であると判断した場合や、選択した詳細構法が最適でない可能性があると判断した場合、施工計画者は、他の詳細構法を採用した場合の構造計算の結果を確認する等の目的で、一旦選択した詳細構法の選択取り消しを指示する。これにより、ステップ336の判定が否定されてステップ322に戻り、ステップ322以降を繰り返す。このように、各詳細構法を採用した場合の構造計算の結果を比較することも可能とされている。
【0091】
指定工区に採用すべき詳細構法として施工計画者が特定の詳細構法を選択し、更に特定の詳細構法を採用することを指示すると、ステップ336の判定が肯定されてステップ338へ移行し、全ての工区について詳細構法の選択を完了したか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ308に戻り、ステップ308以降を繰り返す。これにより、詳細構法選択対象の部位に対し、工区単位で全ての工区について詳細構法が各々選択されることになる。ステップ338の判定が肯定されるとステップ340へ移行し、詳細構法選択対象の部位に対して工区毎に選択された詳細構法をハードディスク装置34のハードディスク等の記憶媒体に記憶し、詳細構法選択処理を終了する。
【0092】
次に詳細工法選択処理について図7のフローチャートを参照して説明する。ステップ400では、詳細工法の選択を行う工法種の指定を要請するメッセージをディスプレイ30に表示し、詳細工法の選択を行う工法種を施工計画者に指定させる。ステップ402では工法種が指定されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0093】
施工計画者によって工法種が指定されるとステップ402の判定が肯定されてステップ404へ移行し、指定された工法種が「揚重機」か否か判定する。本実施形態では、「揚重機」「型枠工法」「鉄筋工法」「コンクリート打設工法」の各工法種について詳細工法の選択を行う。指定された工法種が「揚重機」以外であった場合には、ステップ404の判定が否定されてステップ406へ移行し、指定された工法種に対応する詳細工法設定画面をディスプレイ30に表示する。
【0094】
一例として、図13には工法種として「型枠工法」が指定された場合にディスプレイ30に表示する型枠詳細工法設定画面を示し、図14には工法種として「鉄筋工法」が指定された場合にディスプレイ30に表示する鉄筋詳細工法設定画面を示し、図15には工法種として「コンクリート打設工法」が指定された場合にディスプレイ30に表示するコンクリート打設詳細工法設定画面を示す。これらの画面には、処理対象の工区(処理対象の階)を表示するための表示欄60A、詳細工法を表示するための表示欄60Bが設けられており、更に各工区毎(各階毎)に設定された詳細構法名を表示するための表示欄60Cも設けられている。
【0095】
次のステップ408では、構工法情報DBに記憶されている情報に基づいて、指定された工法種に対して設定されている概略工法に対応する詳細工法を判定する。ステップ410では詳細工法の設定を行う工区の指定を要請するメッセージをディスプレイ30に表示し、施工計画者に工区を指定させる。ステップ412では詳細構法の設定を行う工区が指定されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0096】
詳細工法の設定を行う工区が施工計画者によって指定されるとステップ412の判定が肯定され、指定された工区を表示欄60Aに表示した後にステップ414へ移行し、指定工区に採用可能な詳細工法(設定されている概略工法に対応する詳細工法)の一覧表示が指示されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。詳細工法の表示欄60Bの右隅の「▼」と表示されているボックスが施工計画者によってクリックされると、ステップ414の判定が肯定されてステップ416へ移行し、設定されている概略工法に対応する詳細工法(ステップ408で判定した詳細工法)の名称を一覧表示する。
【0097】
ここで一覧表示される詳細工法は、前述のように設定されている概略工法に対応する詳細工法であり、他の概略工法に対応する詳細工法は表示されない。施工計画者は、一覧表示された詳細工法の中から指定工区に採用する詳細工法を選択するので、各工法種について予め概略工法を各々設定することで、各工法種で採用すべき詳細工法を工区単位で選択する際の選択肢の数(一覧表示する詳細工法の数)を少なくすることができる。従って施工計画者は、指定工区に採用すべき詳細工法を容易かつ短時間で選択することができる。
【0098】
施工計画者により、指定工区に採用すべき詳細工法として特定の詳細工法が選択されると、ステップ418の判定が肯定されてステップ422へ移行し、選択された詳細工法を表示欄60Cのうちの指定工区に対応する表示欄に表示する。次のステップ422では全ての工区について詳細工法の選択を完了したか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ410に戻り、ステップ410以降を繰り返す。
【0099】
これにより、詳細工法選択対象の工法種について、工区単位で全ての工区について詳細工法が各々選択されることになる。ステップ422の判定が肯定されるとステップ424へ移行し、詳細工法選択対象の工法種について工区毎に選択された詳細工法をハードディスク装置34のハードディスク等の記憶媒体に記憶し、詳細工法選択処理を終了する。
【0100】
一方、詳細工法選択対象の工法種として「揚重機」が指定された場合には、ステップ404の判定が肯定されてステップ430へ移行し、例として図16に示すような揚重機詳細設定画面を表示する。本実施形態では、「揚重機」の概略工法として移動式クレーン及び定置式クレーンの台数が選択され、「揚重機」の詳細工法として各揚重機(クレーン)の機種名が選択される。揚重機詳細設定画面には、各揚重機の機種名を表示するための表示欄62A、揚重重量を表示するための表示欄62Bが設けられている。また、建設対象の建設物を表す建物モデルのデータに基づいて前記建設物の概略平面図62Cが画面中央に表示される。
【0101】
次のステップ432では、n番目(初期値は1)の揚重機の揚重条件(揚重機の位置、揚重位置及び揚重重量)の入力を要請するメッセージをディスプレイ30に表示し、n番目の揚重機の揚重条件を施工計画者に入力させる。これにより施工計画者は、マウス28等を操作して揚重機の位置を表す点及び揚重位置を表す点を概略平面図62C上にプロットすると共に、揚重重量を表す数値を表示欄62B内に入力する。例として、図16に示す概略平面図62Cのうち「No.1」の符号が付された「×」点は揚重機の位置を表す点、符号が付されていない「×」点は揚重位置を表す点を意味している。
【0102】
上記のようにしてn番目の揚重機の揚重条件が入力されると、ステップ434の判定が肯定されてステップ436へ移行し、入力された揚重条件で揚重可能な能力を有する揚重機を判定し、機種名を一覧表示する。次のステップ438では、機種名を一覧表示している揚重機の中から、n番目の揚重機として使用する揚重機の選択を要請するメッセージをディスプレイ30に表示し、施工計画者に揚重機を選択させる。ステップ440では、施工計画者によって揚重機が選択されたか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0103】
n番目の揚重機として使用する揚重機が施工計画者によって選択されると、ステップ440の判定が肯定されてステップ442へ移行し、選択された揚重機の機種名をn番目の揚重機として記憶する。次のステップ444では、全ての揚重機について機種名が選択されたか否か判定する。判定が否定された場合には変数nの数を1だけインクリメントしてステップ432に戻り、ステップ432以降を繰り返す。建設工事で使用する全ての揚重機について機種名が各々決定されるとステップ444の判定が肯定され、詳細工法選択処理を終了する。
【0104】
先に説明した詳細構法選択処理又は詳細工法選択処理を行うと図4のフローチャートのステップ176へ移行し、全ての詳細構工法の選択を完了したか否か判定し、判定が否定された場合にはステップ170に戻る。従って、全ての詳細構工法の選択が完了する迄、詳細構法選択処理又は詳細工法選択処理が繰り返し実行される。
【0105】
全ての詳細構工法が選択されると単一の構工法計画案が完成する。このため、詳細構工法の選択が完了すると、ステップ176の判定が肯定されてステップ178へ移行し、選択された詳細構工法に基づいて、前記構工法計画案を採用したときのコスト(施工費用)を演算し、例として図17に示すように演算結果を表示する。これにより、完成した構工法計画案の施工費用の点から見た良否を確認することができる。
【0106】
次のステップ180では選択した構工法がOKか否か(完成した構工法計画案が適正か否か)判定する。施工計画者が、完成した構工法計画案が適正でないと判断した場合には、この判断結果が入力されることでステップ180の判定が否定され、ステップ152に戻る。これにより、例えば特定部位の特定工区についてのみ詳細構法を変更したり、特定工法種の詳細工法を変更したり、或いは概略構法や概略工法そのものの変更等の構工法計画案の修正が必要に応じて行われることになる。
【0107】
また施工計画者が、完成した構工法計画案が適正と判断した場合には、この判断結果が入力されることでステップ180の判定が肯定され、構工法選択支援処理を終了する。
【0108】
なお、上記では概略構工法が選択され施工費用の演算が指示されると、建設対象の建設物の延床面積や工期日数に基づいて、選択された概略構工法を採用した場合の施工費用を単に概算するようにしていたが、これに限定されるものではなく、選択された概略構工法に対応する各詳細構工法を採用した場合の施工費用を各々演算し、算出された施工費用の最大値及び最小値を各々表示するようにしてもよい。この場合、施工費用の演算が煩雑になるという欠点はあるものの、表示された施工費用を参照することで、最終的な施工費用がどの程度の範囲内になるのかを施工計画者が容易に把握することができる。また、施工計画者の工事計画の経験が浅い場合、例えば施工費用の変化幅の大きい概略構工法よりも、施工費用の変化幅の小さい概略構工法を選択した方が、次の詳細構工法の選択において失敗する危険性が低い等の判断材料を与えることができる。
【0109】
なお、上記では本発明に係る与条件を表す情報として「階数」及び「基準階床面積」を用いた場合を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば構造種別や敷地面積等の建設物に関連する項目や、指定躯体工期、指定躯体コスト、労務事情(不足労務種等)、資材事情(不足資材種等)、建築地域等の建設工事に関連する項目を与条件として用いてもよい。
【0110】
また、上記では評価DBに評価データが記憶されている概略構工法に対して○/×の2段階評価を行う場合を説明したが、これに限定されるものではなく、より多段階の評価を行ってもよいことは言うまでもない。
【0111】
更に、上記では概略構工法に対する評価を、概略構法選択対象の個々の部位・概略工法選択対象の個々の工法種を単位として別個に行っていたが、これに限定されるものではなく、施工を完了した建設工事で採用された概略構工法を評価するにあたり、概略構工法そのものに対する評価に加えて、前記建設工事で他の部位に採用された概略構法や他の工法種に採用された概略工法との組み合わせの適否についても評価するようにしてもよい。評価DBに上記のような情報を蓄積記憶することにより、例えば各部位や各工法種について各々選択された概略構工法の組み合わせの適否を評価し、評価結果を表示することも可能となり、最適な概略構工法の選択にあたっての選択精度を更に向上させることができる。
【0112】
また、上記では本発明に係る入力手段としてキーボード26及びマウス28を例に説明したが、マウス28以外の他のポインティングデバイス(例えばディジタイザ等)等を用いてもよい。
【0113】
また、上記では本発明の記憶手段としてハードディスク装置34のハードディスクを用いた場合を説明したが、これに限定されるものではなく、CD−ROMやFD等の他の情報記憶媒体を記憶手段として用いてもよい。また、記憶手段としての記憶装置を、複数台の構工法選択支援装置10(パーソナルコンピュータ10)と通信回線を介して接続することで、複数台の構工法選択支援装置10で記憶手段を共有する構成としてもよい。
【0114】
更に、上記では数量化理論2類を適用して概略構工法の評価を行う場合を説明したが、これに限定されるものではなく、過去に実施された建設工事で採用された構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果に基づき、公知の他の統計的解析方法(例えば数量化理論1類や判別分析法等)を適用して概略構工法の評価を行ってもよい。
【0115】
【実施例】
次に、本願発明に関して本願発明者等が行った実験の結果について説明する。本願発明者等は、過去に実施した建設工事における概略構工法の評価結果に基づき、未実施の建設工事に前記概略構工法を適用した場合の評価を、数量化理論2類を適用して推定する場合の推定精度を検証する実験を行った。
【0116】
この実験では、与条件として「階数」及び「基準階床面積」を用い、「階数」については「1階〜5階」「6階〜15階」「16階以上」の3タイプに分け、「基準階床面積」については「500m2以下」「501m2〜1000m2」「1001m2以上」の3タイプに分けて、過去に実施した建設工事における与条件及び概略構工法に対する評価結果を分類した。数量化理論2類では全てのタイプのデータが揃っていれば(上記例では6タイプ)、未分類のサンプルを分類(この場合は評価結果が○か×かの分類)が可能であるので、本実験では、過去に実施した建設工事における与条件及び柱に対する概略構法の1つであるPCaに対する評価結果を表すデータとして、次の表2に示す6種類のサンプルデータを用意した。
【0117】
【表2】
【0118】
そして、未実施の建設工事における与条件として、「階数」を5、「基準階床面積」を500m2を設定し、「柱」の概略構法としてPCaを採用した場合の評価を数量化理論2類を適用して推定したところ、評価の推定結果は「×」となった。
【0119】
表2からも明らかなように、本実験で用いたサンプルデータは、「柱」の概略構法として「PCa」を採用することに対し、基本的な傾向として「階数」及び「基準階床面積」の値が大きい程「○」の評価を与えている。従って、「階数」が5、「基準階床面積」が500m2の与条件下で「柱」の概略構法としてPCaを採用した場合の評価の推定結果が「×」となったことで、過去に実施した建設工事で採用された概略構工法に対する評価結果から、未実施の建設工事に前記概略構工法を適用した場合の評価を略正確に推定できることが確認された。
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果を記憶すると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果を、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶しておき、複数種の概略構工法のうちの少なくとも1つの概略構工法について、構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、入力された前記項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報と、記憶している情報とに基づき、構工法選択対象の建設工事に対して評価結果を記憶している概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援し、構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が選択されると、入力された建設物の設計条件が、選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援するので、最適な構工法の選択にあたり選択に要する時間を短縮することができる、という優れた効果を有する。
【0121】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、概略構法は建設物の部位毎に、概略工法は工法の種類毎に各々複数種定められており、概略構工法選択対象の部位又は工法種が指定されると、指定された部位に採用可能な概略構法又は指定された工法種に採用可能な概略工法の名称を一覧表示するので、上記効果に加え、複数種の概略構工法の中からの採用すべき概略構工法の選択を、構工法選択者が容易に行うことができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る構工法選択支援装置として機能させることが可能な本実施形態に係るパーソナルコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図2】 (A)は所定部位に採用すべき構法の従来の選択方法を説明するための概念図、(B)は本実施形態における構法の分類及び選択方法を説明するための概念図である。
【図3】 構工法評価入力処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】 構工法選択支援処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】 概略構工法選択処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】 詳細構法選択処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】 詳細工法選択処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】 各構工法に対する評価結果を入力するための評価入力画面の一例を示すイメージ図である。
【図9】 プロジェクト情報入力画面の一例を示すイメージ図である。
【図10】 概略構工法選択画面の一例を示すイメージ図である。
【図11】 概略構工法選択画面において、選択可能な概略構工法が評価結果と共に一覧表示されている状態の一例を示すイメージ図である。
【図12】 詳細構法設定画面の一例を示すイメージ図である。
【図13】 型枠詳細工法設定画面の一例を示すイメージ図である。
【図14】 鉄筋詳細工法設定画面の一例を示すイメージ図である。
【図15】 コンクリート打設詳細工法設定画面の一例を示すイメージ図である。
【図16】 揚重機詳細設定画面の一例を示すイメージ図である。
【図17】 詳細コストリストの一例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
10 構工法選択支援装置
14 CPU
26 キーボード
28 マウス
30 ディスプレイ
32 プリンタ
34 ハードディスク装置
36 CD−ROM
38 FD
Claims (4)
- 建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果を記憶すると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果を、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶し、個々の詳細構法の実施制約条件を記憶する記憶手段と、
情報を入力するための入力手段と、
前記複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、前記構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、前記記憶手段に記憶されている、前記過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び前記入力手段を介して入力された前記特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、前記構工法選択対象の建設工事に対して前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、前記複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援する第1支援手段と、
前記構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が前記入力手段を介して選択されると、前記入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、前記選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を前記個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、前記特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの前記建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する第2支援手段と、
を含む構工法選択支援装置。 - 前記概略構工法のうちの概略構法は建設物の部位毎に、概略工法は工法の種類毎に各々複数種定められており、前記第1支援手段は、概略構工法選択対象の部位又は工法種が指定されると、指定された部位に採用可能な概略構法又は指定された工法種に採用可能な概略工法の名称を一覧表示することを特徴とする請求項1記載の構工法選択支援装置。
- 情報を入力するための入力手段及び記憶手段を備えたコンピュータの前記記憶手段に、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果を記憶させると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果を、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶させ、個々の詳細構法の実施制約条件を記憶させておき、
前記コンピュータを、
前記複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、前記構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、前記記憶手段に記憶されている、前記過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び前記入力手段を介して入力された前記特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、前記構工法選択対象の建設工事に対して前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、前記複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援する第1支援手段、
及び、前記構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が前記入力手段を介して選択されると、前記入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、前記選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を前記個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、前記特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの前記建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する第2支援手段
として機能させる構工法選択支援方法。 - 情報を入力するための入力手段及び記憶手段を備えたコンピュータの前記記憶手段に、建設工事に採用可能な多数種の詳細構工法を、互いに類似の詳細構工法が同一の概略構工法に分類されるように、複数種の概略構工法の何れかに各々分類した結果が記憶されていると共に、過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対し前記建設工事での施工実績に基づいて付与された評価結果が、概略構工法の選択・評価に影響を及ぼすと推定される特定項目についての前記建設工事での与条件を表す情報と対応付けて記憶され、個々の詳細構法の実施制約条件が記憶されている状態で、
前記コンピュータを、
前記複数種の概略構工法のうち少なくとも1つの概略構工法について、前記構工法選択対象の建設工事に採用した場合の工期及び施工費用の少なくとも一方を演算し、演算した工期及び施工費用の少なくとも一方を出力する第1の処理を行うと共に、前記記憶手段に記憶されている、前記過去に実施された建設工事で採用された概略構工法に対して付与された評価結果、及び、当該評価結果と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記建設工事での与条件を表す情報に基づき、与条件と前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法に対する評価結果との関係を解析し、当該解析の結果及び前記入力手段を介して入力された前記特定項目についての構工法選択対象の建設工事での与条件を表す情報に基づいて、前記構工法選択対象の建設工事に対して前記記憶手段に前記評価結果が記憶されている概略構工法を採用した場合の適性を判定し、判定結果を出力する第2の処理を行うことで、前記複数種の概略構工法の中からの構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法の選択を支援する第1支援手段、
及び、前記構工法選択対象の建設工事に採用すべき概略構工法として特定の概略構工法が前記入力手段を介して選択されると、前記入力手段を介して入力された建設物の設計条件が、前記選択された特定の概略構工法に対応する個々の詳細構法の実施制約条件に合致するか否かを各々判定し、判定結果を前記個々の詳細構法の実施の適正として出力する第3の処理を行うことで、前記特定の概略構工法に対応する詳細構工法の中からの前記建設工事に採用すべき詳細構工法の選択を支援する第2支援手段
として機能させるためのプログラムが記録された記録媒体。
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