JP4000042B2 - 受光素子、回路内蔵型受光装置および光ディスク装置 - Google Patents

受光素子、回路内蔵型受光装置および光ディスク装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、受光素子、回路内蔵型受光装置および光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光ディスク装置が備える光ピックアップ部では、半導体レーザからのレーザ光を回折格子で複数のレーザ光に分光し、この複数のレーザ光を対物レンズで光ディスク上の複数位置に集光して、この光ディスク上で変調された複数の反射光を、受光素子で受光している。この受光素子は、1つの半導体基板上に複数の受光部が形成された受光素子であり、上記複数の受光部が各々受光する上記複数の反射光のパワーに応じて、複数の信号を出力する。この複数の信号から、上記光ディスクに記録されているデータ信号や、サーボ制御のためのフォーカス信号およびトラッキング信号を生成している。
【0003】
従来、受光素子としては、特開平10−84102号公報に開示されているようなものがある。この受光素子は、P型シリコン基板の表面にN型エピタキシャル層を形成し、このN型エピタキシャル層を、上記P型シリコン基板表面に達するP型拡散層によって分割して、複数のN型エピタキシャル領域を形成している。この複数のN型エピタキシャル領域と上記P型シリコン基板との間に形成される複数のPN接合で、複数の受光部を構成している。上記N型エピタキシャル領域およびP型拡散層の上に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の2層の膜からなる反射防止構造を設け、上記複数の受光部に入射する光の反射を防止して、受光素子の感度を向上するようにしている。
【0004】
上記受光素子は、光ディスク装置に搭載する場合、S/N比を良好にするために高い感度が要求される。例えば、波長が400nmの青色レーザ光を受光する場合、上記従来の受光素子は、10nm厚のシリコン酸化膜と39nm厚のシリコン窒化膜との2層の膜で上記反射防止構造を構成することによって、上記レーザ光の反射率を略0%にして、良好な感度を得るようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の受光素子は、上記複数の受光部の間でリーク電流が生じ易く、最悪の場合、受光部間のリーク電流が大きくて受光素子として機能しなくなるという問題がある。この問題の原因は、上記反射防止構造を形成するシリコン酸化膜とシリコン窒化膜との界面に正孔が蓄積されることにある。この蓄積された正孔で生じる電界によって、上記複数のN型エピタキシャル領域の間のP型拡散層の導電型が反転され、この導電型が反転された部分に、上記N型エピタキシャル領域の間のリーク電流が流れるのである。上記反射防止構造の界面に蓄積される正孔は、この受光素子の製造工程において、ドライエッチング工程でのプラズマへの曝露や、ダイシング工程で生じる静電気によって生成されることが判明した。したがって、上記従来の受光素子は、製造時の歩留まりが悪くコスト高になり、光ディスク装置には不適であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、リーク電流が殆ど無くて、良好な歩留まりで製造できる受光素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の受光素子は、半導体層上に、複数の受光部が設けられた受光素子において、
上記複数の受光部と、この複数の受光部の間の部分との上に、3層以上の光透過性膜を設け、隣接する上記光透過性膜の材料が互いに異なり、
最も上記受光部側の上記光透過性膜は、上記複数の受光部の上面全面および上記受光部の間の部分の上面の全てに接触しており、
上記受光部は、青色レーザ光を受光し、
上記複数の光透過性膜のうちの上記受光部に最も近い光透過性膜はシリコン酸化膜であり、このシリコン酸化膜の厚みは10nm以上であることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、上記受光素子の上記複数の受光部と、この複数の受光部の間の部分との上に、3層以上の光透過性膜を設け、隣接する上記光透過性膜の材料が互いに異なるので、この3層以上の光透過性膜の間には2個以上の界面が形成される。例えば製造工程などにおいて生じた電子または正孔は、上記2個以上の界面に分散して蓄積される。従来、上記電子や正孔は、2層の透過性膜の間の1つの界面に蓄積されていた。したがって、本発明の受光素子は、上記蓄積された電子または正孔によって上記受光部および受光部の間の部分に形成される電界の強さが、従来の受光素子におけるよりも小さくなる。その結果、上記複数の受光部の間の部分は導電型の反転が減少する。したがって、この複数の受光部の間の部分に電流が流れ難くなって、上記複数の受光部間のリーク電流が効果的に抑制される。
【0009】
さらに、この受光素子は、3層以上の光透過性膜が設けられ、隣接する上記光透過性膜の材料が互いに異なるので、上記光透過性膜の膜厚を、この受光素子が受光する光の波長に応じて所定の厚みにすることによって、この受光素子に入射する光の反射率が効果的に低下する。したがって、この受光素子の感度が効果的に向上する。
【0010】
ここで、半導体層とは、層状に形成された半導体を指し、半導体基板をも含む。また、受光部とは、半導体層上に形成されて光電変換効果を奏する最小の部分をいう。
【0011】
また、上記複数の光透過性膜のうちの上記受光部に最も近い光透過性膜が、厚みが10nm以上のシリコン酸化膜にすることによって、このシリコン酸化膜とその上に配置される光透過性膜との間に捕獲される電子または正孔を、複数の受光部およびこの受光部の間の部分から遠ざけて、この複数の受光部およびこの受光部の間の部分における上記電荷による電界の影響を低減できる。その結果、上記複数の受光部の間の部分の導電型の反転を 抑制して、上記受光部間のリーク電流を効果的に減少できる。ここにおいて、上記受光部に最も近い光透過性膜の厚みが10nmより薄いと、上記受光部の間の部分のリーク電流が増加してしまう。
【0012】
1実施形態の受光素子は、1つの上記光透過性膜はシリコン酸化膜であり、もう1つの上記光透過性膜はシリコン窒化膜である。
【0013】
上記実施形態によれば、上記シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜で光透過性膜を構成することにより、通常のプロセスによって容易かつ安価に、リーク電流が殆ど無く、しかも、入射光に対する反射率が小さくて、良好な感度を有する受光素子が得られる。ここにおいて、上記シリコン酸化膜の膜数と、上記シリコン窒化膜の膜数とは、各々1つ以上のいくつであってもよい。
【0014】
1実施形態の受光素子は、1つの上記光透過性膜は、チタン酸化膜である。
【0015】
上記実施形態によれば、上記1つの光透過性膜を構成するチタン酸化膜は、屈折率が比較的高いので、このチタン酸化膜よりも屈折率が小さい例えばシリコン酸化膜などと組合わせることによって、この受光素子への入射光の反射率が効果的に低減できる。また、上記チタン酸化膜は、屈折率が比較的高いので、このチタン酸化膜を有する複数の光透過性膜の外側が、空気であっても、あるいは、空気以外の物質であっても、受光素子の表面における反射率は殆ど変化しない。したがって、この受光素子を例えば樹脂封止した場合であっても、樹脂封止しない場合と略同じ反射率になるので、樹脂封止をする場合としない場合とで、受光する光のパワーに対する出力特性を変える必要がない。その結果、樹脂封止の有無などに対応して受光素子の駆動回路を変更する必要が無くなる。従来、受光素子の表面に2層の光透過性膜を備えた受光素子では、樹脂封止をした場合、光透過膜性膜の膜厚を最適化しても、受光素子の表面における反射率を、樹脂封止をしない場合の反射率と同一にすることができなかった
【0016】
発明の回路内臓型受光装置は、上記受光素子と、この受光素子の複数の受光部からの信号を処理する信号処理回路とを、同一の半導体基板上に形成したことを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、信号処理回路がモノリシックに形成され、リーク電流が殆ど無く、しかも良好な感度を有する回路内蔵型受光装置が得られる。
【0018】
1実施形態の光ディスク装置は、上記受光素子または上記回路内蔵型受光装置を備える。
【0019】
上記構成によれば、リーク電流が殆どなく、しかも良好な感度の受光素子を備えるので、例えば青色レーザ光源などを用いることによって、高密度記録の光ディスクの読み書きに好適な光ディスク装置が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態の受光素子を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I’線での断面図である。図1(a)、(b)では、コンタクト工程以降に形成されるコンタクト、メタル配線、および層間絶縁膜は省略している。図1(a)において、第1シリコン酸化膜105と、シリコン窒化膜106と、第2シリコン酸化膜107とは省略している。
【0022】
この受光素子は、シリコン基板100上に、厚みが1μmで不純物濃度が1E18cm−3程度の第1P型拡散層101と、厚みが10〜20μm程度で不純物濃度が1E13〜1E16cm−3程度のP型半導体層102とを備える。このP型半導体層102の表面部分には、表面での不純物濃度が1E17〜1E20cm−3程度の2つのN型拡散層103,103を設けて、2つの受光部を構成している。このN型拡散層103,103は、V価の元素であれば、ヒ素、リン、アンチモンなどいずれの元素を拡散、注入して形成してもよい。
【0023】
上記P型半導体層102の図1(b)における幅方向両端付近には、上記P型半導体層102表面において上記第1P型拡散層101にコンタクトを得るために、上記P型半導体層102表面から上記第1P型拡散層101に達する第2P型拡散層104,104が形成されている。この第2P型拡散層104,104は、図1(a)に示すように、平面において上記受光部としてのN型拡散層103,103の周囲を囲むように形成されている。上記第1および第2P型拡散層101,104は、III価の元素であれば、ボロンやインジウムなどのいずれの元素を拡散、注入して形成してもよい。
【0024】
上記N型拡散層103,103上と、この2つのN型拡散層103,103の間のP型半導体層102の上には、光透過性膜としての第1シリコン酸化膜105と、シリコン窒化膜106と、第2シリコン酸化膜107とが順に設けられている。上記N型拡散層103に最も近い第1シリコン酸化膜105は厚みが9nm程度であり、上記シリコン窒化膜106は厚みが39nmであり、上記第2シリコン酸化膜107は厚みが280nmである。
【0025】
図2は、上記構成の受光素子と、光透過性膜を2層有する従来の受光素子とについて、電極間の印加電圧を変化させた際に、複数の受光部のカソード−カソード間に生じるリーク電流の変化を示した図である。上記実施形態と従来の受光素子において、一方の電極電圧を1.5Vに保持すると共に他方の電極への印加電圧を変化させた。図2において、横軸は上記他方電極の印加電圧値(V)であり、縦軸は受光部のカソード−カソード間の電流値(A)である。
【0026】
本実施形態の受光素子は、通常の使用時には、両方の電極に1.5Vの電圧が印加されるが、電圧を印加する回路や電源のばらつきによって、上記電極への否電圧はが1.5Vを中心に0.3V程度のばらつきが生じる。図2から分かるように、この印加電圧のばらつきの範囲内で、本実施形態の受光素子は、受光部のカソード−カソード間の電流値が10−9Aオーダーになって、リーク電流が効果的に抑制できる。
これは、複数の光透過性膜の間に形成される界面に、この隣合う光透過性膜のバンド構造が互いに異なることによって、正孔が捕獲され、この界面が、第1シリコン酸化膜105とシリコン窒化膜106との間の第1の界面と、シリコン窒化膜106と第2シリコン酸化膜107との間との第2の界面との2箇所に形成されていることによる。これによって、製造時におけるプラズマエッチング工程やダイシング工程で生じる正孔が、上記2箇所に形成された界面に分散して捕獲されるので、従来の1箇所の界面に正孔が捕獲されるよりも、受光部が設けられた半導体層における導電型の反転の原因となる電界の強さが弱くなるからである。さらに、上記第2界面は、上記第1界面よりもシリコン窒化膜106の厚み分だけ遠くに位置するので、上記P型半導体層102の表面において、上記第2界面に捕獲される正孔による電界強度は、上記第1界面に捕獲される正孔による電界強度よりも小さくなる。したがって、上記2つの界面に分散されて捕獲された正孔による電界強度は、従来の1つの界面に捕獲された正孔による電界強度よりも小さくなる。上記正孔による電界強度が小さくなるので、上記P型半導体層102のN型拡散層103,103の間の部分は、導電型が殆ど反転しない。したがって、従来におけるように、P型半導体層の一部が反転し、この反転部分を通って受光部間に異常なリーク電流が流れることが、効果的に防止できる。
【0027】
さらに、本実施形態の受光素子は3層の光透過性膜を備えるが、これらの光透過性膜の厚みを、上記第1シリコン酸化膜105は9nm程度、上記シリコン窒化膜106は39nm程度、上記第2シリコン酸化膜107は280nm程度にすることによって、従来の2層の光透過性膜における反射率と略同程度の数%の反射率にできる。ここにおいて、上記第2シリコン酸化膜107を、膜厚250nm〜310nmにすることによって、上記3層の光透過性膜による反射率を、従来の2層の光透過性膜の反射率と略同じにできる。
【0028】
上記実施形態において、P型半導体層102にN型拡散層103,103を形成して受光部を構成したが、他の構造によって複数の受光部を構成してもよい。
【0029】
また、上記光透過性膜は、第1シリコン酸化膜105或いは第2シリコン酸化膜107に限ることなく、窒素を含有した窒化酸化膜などを用いることも可能である。特に、第1シリコン酸化膜105の代わりに、窒素を含有する窒化酸化膜を用いた場合には、受光素子内部のキャリアが光透過性膜にリークし、この光透過性膜の界面に蓄積されてしまうのを防止することができると言う効果を得ることができる。
【0030】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態の受光素子を示す断面図である。図3において、図1(b)の第1実施形態の受光素子と同一の機能を有する部分には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、本実施形態の受光素子は、第1実施形態の受光素子について、受光部となるN型拡散層103,103上と、この2つのN型拡散層103,103の間のP型半導体層102の上に、4層の光透過性膜を形成し、この光透過性膜上に封止用樹脂204を配置した点のみが、第1実施形態の受光素子と異なる。
【0032】
上記4層の光透過性膜は、上記受光部に近い順に、膜厚9nm程度の第1シリコン酸化膜200、膜厚39nm程度の第1シリコン窒化膜201、膜厚250nm程度の第2シリコン酸化膜202、および、膜厚120nm程度の第2シリコン窒化膜203である。
【0033】
この受光素子は、上記4層の光透過性膜を備えて3箇所に界面を有するので、製造工程などで生じて上記界面に捕獲される正孔を、第1実施形態よりもさらに分散させ、かつ、P型半導体層102表面から遠ざけることによって、この正孔による電界強度をさらに減少することができる。したがって、上記P型半導体層102の上記N型拡散層103,103の間の部分における導電型の反転が効果的に防止でき、その結果、受光部のカソード−カソード間のリーク電流を効果的に減少できる。
【0034】
従来、2層の光透過性膜を有する受光素子は、表面に樹脂をコーティングした場合、樹脂をコーティングしない場合よりも入射光の反射率が増加していた。例えば、2層の光透過性膜を有する従来の受光素子は、樹脂をコーティングした場合、光透過性膜の膜厚を最適化しても、反射率を15%以下にできなかった。これに対して、本実施形態の受光素子は、4層の光透過性膜を備えるので、この4層の光透過性膜の厚みおよび屈折率を調節することによって、樹脂コーティングする場合と、樹脂コーティングしない場合とのいずれも反射率を略0にできる。したがって、この受光素子は、樹脂コーティングの有無に拘らず、受光する光のパワーに対する出力特性を均一にできるので、樹脂コーティングの有無などのような光学形態の違いに応じて駆動回路を変える必要がない。その結果、この受光素子は、1つの駆動回路を用意すればよいので、製造コストが安価になる。
【0035】
(第3実施形態)
図4(a)は、本発明の第3実施形態の受光素子の平面図であり、図4(b)は、図4(a)のII−II’線における断面図である。図4(a)、(b)では、コンタクト工程以降に形成されるコンタクト、メタル配線、および層間絶縁膜は省略している。図4(a)において、第1シリコン酸化膜306、チタン酸化膜307、および第2シリコン酸化膜308は省略している。
【0036】
本実施形態の受光素子は、シリコン基板300上に、厚みが1μmで不純物濃度が1E18cm−3程度のP型拡散層301と、厚みが10〜20μm程度で不純物濃度が1E13〜1E16cm−3程度のP型半導体層302とを備える。このP型半導体層302上に、厚みが1〜3μm程度で不純物濃度が1E16〜1E17cm−3程度のN型半導体層303,303を備える。このN型半導体層303,303は、上記P型半導体層302上にN型半導体を積層し、このN型半導体を、表面から上記P型半導体層302に達するP型拡散層304によって分割して形成している。上記N型半導体層303,303によって受光部を構成している。上記N型半導体層303,303およびP型半導体層302の図4(b)における両端部には、上記N型半導体層303,303表面からP型拡散層301に達するP型拡散層305が設けられている。このP型拡散層305によって、上記N型半導体層303,303表面と、P型拡散層301との間のコンタクトを得ている。
【0037】
上記N型半導体層303,303の光入射部と、上記P型拡散層304との表面には、3層の光透過性膜が配置されている。この3層の光透過性膜は、上記N型半導体層303,303表面に近い側から順に、膜厚9nm程度の第1シリコン酸化膜306、膜厚30nm程度のチタン酸化膜307、および、膜厚210nm程度の第2シリコン酸化膜308である。
【0038】
本実施形態の受光素子は、上記3層の光透過性膜を備えて2箇所に界面を有するので、2層の光透過性膜を備えて1つの界面に正孔が捕獲される従来の受光素子よりも、界面に捕獲される正孔の数を分散させることができる。したがって、上記P型拡散層304表面における電界強度を従来よりも小さくできる。さらに、上記チタン酸化膜307と第2シリコン酸化膜308との間に捕獲される正孔は、上記P型拡散層304表面から第1シリコン酸化膜306とチタン酸化膜307とによって隔てられる。したがって、上記チタン酸化膜307と第2シリコン酸化膜308との間に捕獲される正孔による電界は、上記P型拡散層304表面において、強度が格段に小さくなる。したがって、上記P型拡散層304における導電型の反転が効果的に防止でき、その結果、受光部のカソード−カソード間の異常なリーク電流が効果的に抑制できる。
【0039】
また、本実施形態の受光素子は、シリコン窒化膜よりも屈折率が大きいチタン酸化膜を用いるので、受光素子への入射光の反射率を、シリコン窒化膜を用いるよりも小さくできる。具体的には、樹脂コーティングが施された場合、第1実施形態の第1シリコン酸化膜105と、シリコン窒化膜106と、第2シリコン酸化膜107とを備える受光素子は表面反射率が15%程度である一方、本実施形態の第1シリコン酸化膜306と、チタン酸化膜307と、第2シリコン酸化膜308とを備える受光素子は、表面反射率が略0%にできる。
【0040】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態の受光素子を示す断面図である。この受光素子は、第1実施形態と同様のシリコン基板100と、第1P型拡散層101と、P型半導体層102と、このP型半導体層102上に形成されたN型拡散層103,103とを備える。上記P型半導体層102およびN型拡散層103,103上に、第1シリコン酸化膜406と、シリコン窒化膜407と、第2シリコン酸化膜408との3層の光透過性膜を備える。上記シリコン窒化膜407は膜厚が33nm程度であり、上記第2シリコン酸化膜408は膜厚が70nm程度である。本実施形態では、上記第1シリコン酸化膜406の厚みが異なる場合において、受光素子の一方の電極に1.5Vの電圧を印加し、他方の電極の印加電圧を変化させて、受光部であるN型拡散層103,103間のリーク電流特性を調べた。このリーク電流は、受光素子に光が入射して出力される光電流において、ノイズ成分となる。通常、数百μm程度の寸法の受光素子で生じる暗電流は数pA程度であるので、受光素子全体としてノイズ成分になる電流を抑制するために、上記カソード−カソード間のリーク電流を数pA程度以下にする必要がある。
【0041】
図6は、印加電圧を変化させた場合のリーク電流の変化を示す曲線であって、上記第1シリコン酸化膜406の厚みが、5nmの場合の曲線1001と、7nmの場合の曲線1002と、10nmの場合の曲線1003と、16nmの場合の曲線1004とを重ねて示している。
【0042】
図6から分かるように、上記第1シリコン酸化膜406の厚みが5nmから7nmに増加すると、全ての印加電圧においてリーク電流が少なくなる。さらに、上記第1シリコン酸化膜406の厚みが10nmに増加すると、全ての印加電圧において、リーク電流がさらに減少する。このとき、受光素子の通常の使用時には、両電極に各々1.5Vの電圧が印加される。しかしながら、電圧を印加する回路や電源のばらつきにより、両極への印加電圧が1.5Vを中心に0.3V程度ばらつく場合がある。この場合においても、受光部間のリーク電流をpAのオーダーにできる。上記第1シリコン酸化膜406の厚みが16nmに増加すると、第1シリコン酸化膜406の厚みが10nmであるよりも、リーク電流は多少減少する。以上のことから、上記第1シリコン酸化膜406の厚みを10nm以上にすることによって、リーク電流を効果的に減少させて、出力信号のノイズ成分を効果的に抑制することができると言える。
【0043】
なお、上記光透過性膜が4層である場合、4層の光透過性膜は3層の光透過性膜よりも正孔を分散させてP型半導体層102の表面付近の電界を減少できるので、上記P型半導体層102の表面に接して設けられるシリコン酸化膜の厚みを10nm以上にすることによって、上記P型半導体層102の導電型が反転することによって生じるリーク電流を十分に小さくpAオーダーにすることができる。実際に、上記P型半導体層102表面に、膜厚が16nm程度のシリコン酸化膜と、膜厚が33nm程度のシリコン窒化膜と、膜厚が64nm程度のシリコン酸化膜と、膜厚が49nm程度のシリコン窒化膜との4層の光透過性膜を設けた場合、上記受光部の間のP型半導体層102に流れるリーク電流を、十分に小さくpAオーダーにすることができた。
【0044】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態の受光素子を示す断面図である。この受光素子は、不純物濃度が1E19cm−3程度のP型GaN(ガリウム窒素)基板500上に、厚みが15μm程度で不純物濃度が1E13〜1E16cm−3程度のP型GaNエピタキシャル層501を備える。このP型GaNエピタキシャル層501の表面付近に、表面における不純物濃度が1E17〜1E20cm−3程度の2つのN型拡散層502,502を形成して、受光部を構成している。なお、上記N型拡散層502,502は、例えばIV価のシリコンのイオン注入で形成してもよい。
【0045】
この受光素子は、少なくとも上記受光部およびP型GaNエピタキシャル層501の上記受光部の間の部分の上に、3層の光透過性膜を設けている。この3層の光透過性膜は、上記P型GaNエピタキシャル層501に近い側から順に、膜厚が9nmの第1シリコン酸化膜503と、膜厚が39nm程度のシリコン窒化膜504と、層厚が210nm程度の第2シリコン酸化膜505とである。この3層の光透過性膜によって、この受光素子への入射光の表面反射率を、3%程度にすることができる。本実施形態においても、製造工程などで生じる正孔を、上記2つの界面を有する3層の光透過性膜によって分散して捕獲できる。また、上記シリコン窒化膜504と第2シリコン酸化膜505との界面によって、上記P型GaNエピタキシャル層501表面から正孔を隔離して捕獲できる。したがって、上記P型GaNエピタキシャル層501表面付近において、上記正孔で形成される電界による導電型の反転を防止でき、上記受光部のカソード−カソード間のリーク電流を効果的に防止できる。
【0046】
本実施形態では、基板およびこの基板上のエピタキシャル層に、GaNを用いたが、ガリウムヒ素、ガリウムアルミニウムヒ素、またはインジウムリン系などのIII−V族化合物半導体や、セレン化亜鉛などのII−VI族化合物半導体、あるいは、これらの混晶などによって構成してもよい。
【0047】
(第6実施形態)
図8は、本発明の第6実施形態の回路内蔵型受光装置を示す図である。この回路内蔵型受光装置は、本発明の受光素子Dと、この受光素子から出力された信号を処理するバイポーラトランジスタTとを、同一の半導体基板上に形成して構成している。なお、図8において、メタル配線の処理工程以降の工程で形成される多層配線や層間膜などは、省略している。
【0048】
本実施形態の回路内蔵型受光装置は、ボロン濃度が1E15cm−3程度のシリコン基板600上に、厚みが1〜2μmでボロン濃度が1E18〜1E19cm−3程度の第1P型拡散層601と、厚みが15〜16μmでボロン濃度が1E13〜1E14cm−3程度の第1P型半導体層602とが形成されている。この第1P型半導体層602上のバイポーラトランジスタが形成される領域の一部には、コレクタとなるN型拡散層613が設けられている。上記第1P型半導体層602およびN型拡散層613上に、厚みが1〜2μmでボロン濃度が1E13〜1E14cm−3程度の第2P型半導体層610が形成されている。この第2P型半導体層610表面付近には、素子分離を行うための複数のロコス領域603,603・・・が形成されている。
【0049】
受光素子Dが形成された領域であって、上記第2P型半導体層610の表面部分には、リン濃度が1E19〜1E20cm−3程度で接合深さが0.3〜0.8μm程度の2つのN型半導体領域604,604が形成されて、受光部を構成している。この受光部の上、および、上記第2P型半導体層610の上記受光部の間の部分の上には、4層の光透過性膜が配置されている。この4層の光透過性膜は、上記第2P型半導体層610に近い側から順に、膜厚が16nmの第1シリコン酸化膜605、膜厚が33nmの第1シリコン窒化膜606、膜厚が210nmの第2シリコン酸化膜607、および、膜厚が200nmの第2シリコン窒化膜608である。上記第1P型半導体層602および第2P型半導体層610には、配線としての第1P型拡散層601と第2P型半導体層610表面とを接続する第2P型拡散層609が形成されている。
【0050】
一方、バイポーラトランジスタTが形成された領域であって、上記第2P型半導体層610には、上記N型拡散層613上に位置するように、リン濃度が2E15〜2E16cm−3のN型ウェル構造612が形成されている。このN型ウェル構造612の一部に、ボロン濃度が1E17〜2E17cm−3のP型半導体層が形成されてトランジスタのベース615を構成している。さらに、上記ベース615を構成するP型半導体層の表面部分に、ヒ素を注入したポリシリコンによる固層拡散でN型半導体層が形成されて、トランジスタのエミッタ616を構成している。
【0051】
上記受光素子Dには、図示しないカソード電極と、アノード電極611を形成する共に、上記バイポーラトランジスタTには、コレクタ電極617、ベース電極618、エミッタ電極619を形成している。
【0052】
上記構成によって、上記受光素子Dにリーク電流が殆ど流れなくて、良好な特性を有する回路内蔵型受光装置が構成できた。
【0053】
本実施形態において、NPN型トランジスタを用いたが、PNP型トランジスタを用いてもよく、また、NPN型とPNP型との両方のトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタ構造は、本実施形態の構造に限定されることなく、他の構造を用いることができる。
【0054】
(第7実施形態)
図9は、本発明の第7実施形態の光ディスク装置を示す図であり、この光ディスク装置は本実施形態の受光素子を備える。
【0055】
この光ディスク装置は、青色発光の半導体レーザ700を備え、この半導体レーザ700から出射した光を、トラッキングビーム生成用の回折格子701によって2つのトラッキング用副ビームと1つの信号読み出し用主ビームとに分けるようにしている。これらの光を、ホログラム素子702を0次光として透過させて、コリメートレンズ703で平行光に変換した後、対物レンズ704によってディスク盤面705上に集光する。この集光した光は、上記ディスク盤面705で反射されると共にディスク盤面上に形成されたピットによって光強度が変調され、この変調された反射光を、対物レンズ704およびコリメートレンズ703を介してホログラム素子702に入射させている。このホログラム素子702で、入射光を回折し、この回折した1次光を、受光素子706のD1からD5までの5つの受光部に入射させる。そして、上記5つの受光部への入射光に対応して出力された信号を加算および減算して、読み出し信号とトラッキング信号とを得ている。
【0056】
上記光ディスク装置は、本発明の受光素子706を備え、この受光素子706は受光部間のリーク電流が少なく、また、入射光の反射率が比較的小さいので、高密度の光ディスクを高速に読み出し可能な光ディスク装置が得られる。
【0057】
本実施形態において、受光素子706に代えて回路内蔵型受光装置を設けてもよい。この場合、光ディスク装置の回路構成を簡単にできる。
【0058】
また、本実施形態の光学系に限らず、他の光学系を用いてもよい。
【0059】
また、青色発光以外の例えば赤色発光の半導体レーザを用いてもよい。
【0060】
上記実施形態の受光素子において、受光素子の構成部分のN型とP型とが逆であってもよい。この場合、上記複数の光透過性膜の間の界面には電子が蓄積されるが、この電子で形成される電界強度を従来よりも減少させて、この電界によって、半導体層の受光部の間の部分の導電型が反転することが効果的に回避でき、その結果、複数の受光部の間のリーク電流が効果的に減少できる。
【0061】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の受光素子によれば、半導体層上に、複数の受光部が設けられた受光素子において、上記複数の受光部と、この複数の受光部の間の部分との上に、3層以上の光透過性膜を設け、隣接する上記光透過性膜の材料が互いに異なるので、製造工程などで生じた電子または正孔を、2箇所以上に形成された界面に分散して蓄積し、上記受光部および受光部の間の部分に形成される電界の強さを従来よりも小さくできる。したがって、上記複数の受光部の間の部分での導電型の反転を防止して、この複数の受光部の間のリーク電流を抑制できる。また、上記受光素子は、上記光透過性膜の膜厚を所定厚にすることによって、この受光素子に入射する光の反射率を効果的に低下できるから、この受光素子の感度が効果的に向上できる。
【0062】
1実施形態の受光素子によれば、1つの上記光透過性膜はシリコン酸化膜であり、もう1つの上記光透過性膜はシリコン窒化膜であるので、通常のプロセスによって容易かつ安価に、異常なリーク電流が無く、しかも、入射光の反射率が小さくて良好な感度を有する受光素子が得られる。
【0063】
1実施形態の受光素子によれば、1つの上記光透過性膜は、屈折率が比較的高いチタン酸化膜であるので、このチタン酸化膜よりも屈折率が小さい例えばシリコン酸化膜などと組合わせることによって、例えば受光素子に樹脂をコーティングするか否かに拘らず、受光素子の表面の反射率を略均一にできる。したがって、上記受光素子の信号特性が、光学形態に拘らず略同一にできるので、1つの駆動回路で受光素子が駆動でき、その結果、安価に所望の光学形態で使用できる受光素子が得られる。
【0064】
本発明の受光素子によれば、上記複数の光透過性膜のうちの上記受光部に最も近い光透過性膜はシリコン酸化膜であり、このシリコン酸化膜の厚みは10nm以上であるので、上記複数の受光部の間の部分に生じる電界の強度を効果的に低減できる。したがって、上記受光部の間の部分の導電型の反転を抑制できて、上記受光部間の異常なリーク電流を効果的に防止できる。
【0065】
本発明の回路内臓型受光装置によれば、上記受光素子と、この受光素子の複数の受光部からの信号を処理する信号処理回路とを、同一の半導体基板上に形成したので、リーク電流が殆ど無く、しかも良好な感度を有する回路内蔵型受光装置が得られる。
【0066】
1実施形態の光ディスク装置によれば、上記受光素子または上記回路内蔵型受光装置を備えるので、例えば青色レーザ光源などを用いることによって、高密度記録の光ディスクの読み書きに好適な光ディスク装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)は、本発明の第1実施形態の受光素子の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I’線での断面図である。
【図2】 図2は、本発明の第1実施形態の受光素子と従来の受光素子とについて、電極間の印加電圧を変化させた際に、複数の受光部のカソード−カソード間に生じるリーク電流の変化を示した図である。
【図3】 本発明の第2実施形態の受光素子を示す断面図である。
【図4】 図4(a)は、本発明の第3実施形態の受光素子の平面図であり、図4(b)は、図4(a)のII−II’線での断面図である。
【図5】 本発明の第4実施形態の受光素子を示す断面図である。
【図6】 第1シリコン酸化膜406の厚みが、5nmの場合と、7nmの場合と、10nmの場合と、16nmの場合とについて、印加電圧を変化させた場合のリーク電流の変化を示す曲線である。
【図7】 本発明の第5実施形態の受光素子を示す断面図である。
【図8】 本発明の第6実施形態の回路内蔵型受光装置を示す図である。
【図9】 本発明の第7実施形態の光ディスク装置を示す図である。
【符号の説明】
100 シリコン基板
101 第1P型拡散層
102 P型半導体層
103 N型拡散層
104 第2P型拡散層
105 第1シリコン酸化膜
106 シリコン窒化膜
107 第2シリコン酸化膜

Claims (5)

  1. 半導体層上に、複数の受光部が設けられた受光素子において、
    上記複数の受光部と、この複数の受光部の間の部分との上に、3層以上の光透過性膜を設け、隣接する上記光透過性膜の材料が互いに異なり、
    最も上記受光部側の上記光透過性膜は、上記複数の受光部の上面全面および上記受光部の間の部分の上面の全てに接触しており、
    上記受光部は、青色レーザ光を受光し、
    上記複数の光透過性膜のうちの上記受光部に最も近い光透過性膜はシリコン酸化膜であり、このシリコン酸化膜の厚みは10nm以上であることを特徴とする受光素子。
  2. 請求項1に記載の受光素子において、
    1つの上記光透過性膜はシリコン酸化膜であり、もう1つの上記光透過性膜はシリコン窒化膜であることを特徴とする受光素子。
  3. 請求項1または2に記載の受光素子において、
    1つの上記光透過性膜は、チタン酸化膜であることを特徴とする受光素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の受光素子と、この受光素子の複数の受光部からの信号を処理する信号処理回路とを、同一の半導体基板上に形成したことを特徴とする回路内蔵型受光装置。
  5. 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の受光素子または請求項4に記載の回路内蔵型受光装置を備えた光ディスク装置。
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