JP3999667B2 - 医療用のフィブロイン粉末及びフィブロイン水溶液 - Google Patents

医療用のフィブロイン粉末及びフィブロイン水溶液 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、医療分野において利用可能なフィブロイン粉末及びフィブロイン水溶液に属する。
背景技術
絹フィブロインは、生体適合性の良いタンパク質であり、そのため従来より外科手術時の縫合糸として利用されている。また、フィブロインをペプチドに低分子化して得られるフィブロイン粉末は、水溶性を示し、食品や化粧品の分野において提案されあるいは用いられている(例えば特開2000−4828)。さらに近年、医療分野において、縫合糸以外でのフィブロインの利用が検討されている(特開平9−192210、特開平11−104228)。特に、手術後に切開部を接着させたり、創傷部を塞いだりするための封止剤、及び臓器同士が癒着するのを防ぐための癒着防止剤として利用することが求められている。
しかし、封止剤又は癒着防止剤として利用するためには、人体表面に塗布可能で流出しないという条件を満たす必要がある。この条件を満たすためには、フィブロイン粉末を水に溶解して、粘性の高い水溶液を作製しなければならない。
ところが、従来のフィブロイン粉末では、ペプチドの分子量が低いので、水に溶解しても粘性が高くならない。粘性を高くするには高分子量のフィブロインペプチドを溶解する必要があるが、フィブロインペプチドは、グリシンとアラニンとが交互に並んでβシート構造をとることから非常にゲル化しやすい。よって分子量が高いと、水に対して不溶性となる。従って、粘性の高いフィブロイン水溶液を得るのは容易ではない。
それ故、本発明の課題は、生体用封止剤及び癒着防止剤といった医療用基材として利用可能なフィブロイン粉末及びフィブロイン水溶液を提供することにある。
発明の開示
その課題を解決するために、この発明の医療用フィブロイン粉末は、分子量3500以上のフィブロインペプチドからなることを特徴とする。分子量が3500未満であると、水に溶解したときに適度な粘性が得られず、生体に塗布しても流失することが判明したからである。また、分子量を3500以上とすることにより、フィブロインペプチドに重合性の官能基を付与した場合、重合してゲル化しやすく、生体上に安定に止まるとともに接着性、封止性及び癒着防止性が得られるからである。
好ましいのは、前記フィブロインペプチドの分子量の最頻値が6000−15000の範囲にあるものである。最頻値がこの範囲にあるものは、水に対して非常に良く溶けるとともに、粘性が生体用封止剤や癒着防止剤に好適である上、水溶液が安定で扱いやすいからである。
前記フィブロインペプチドは、その内のアミノ酸中の一部の官能基(α)と、炭素−炭素不飽和基又はカルボキシル基を有する炭素数2−13、好ましくは炭素数2−10の二官能性化合物(β)とが縮合したものであると、フィブロインペプチドが重合性を有し、重合によりゲル化する上、生体に対して毒性を示さない。従って、生体用封止剤や癒着防止剤に最適である。特に好ましい化合物(β)は、炭素数2−10のものである。尚、二官能性化合物(β)の二官能基とは、一つは重合に用いられる炭素−炭素不飽和基又はカルボキシル基で、もう一つはアミノ酸中の一部の官能基(α)との縮合に用いられる官能基のことを意味している。
前記官能基(α)がセリン残基、スレオニン残基及び/又はチロシン残基中の水酸基であり、前記化合物(β)が下記の一般式で表されるものであると好ましい。
Figure 0003999667
(式中、Aは水酸基との縮合により除去されうる原子又は原子団、nは0又は10以下の整数、X及びYは水素原子又は炭素数10以下のアルキル基もしくはアリール基であり、XとYとは互いに同一であっても異なっていてもよく、Xの炭素数とYの炭素数とnの合計は10以下、好ましくは7以下である。)
この重合性フィブロインペプチドの製造過程で化合物(β)のAを除いた残基例えばアクリロイル基やケイ皮酸エステル基が選択的に水酸基と置換し、リンパ球を活性化させるアミノ基を残しておくことができるからである。
上記課題を解決するために、この発明の医療用フィブロイン水溶液は、分子量3500以上のフィブロインペプチドが溶かされており、フィブロインペプチドの濃度が33%(w/w)以上であることを特徴とする。分子量と濃度をこのように制御することにより、封止剤や癒着防止剤として最適の粘性を有する水溶液となる。
この発明のフィブロイン粉末を製造する適切な方法は、絹フィブロインを濃塩酸で加水分解した後、中和、脱塩し、透析により分子量3500未満の物質を除去し、残った溶液を遠心分離した後、上澄みを凍結乾燥することを特徴とする。この方法において特に重要な過程は、濃塩酸による加水分解である。これによって絹フィブロインが分子量数万以下の水溶性フィブロインペプチドとなる。濃塩酸以外の他の酸やアルカリでは十分な加水分解が起こらず、回収量が悪くなる。
加水分解温度としては40−80℃が望ましく、処理時間としては5分−1時間が望ましい。最も好ましい加水分解条件は、12Nの濃塩酸を用いて、60℃で15分間処理することである。この条件により加水分解をすると、水に良く溶けてしかもその水溶液が高い粘性を示すフィブロイン粉末を高収率で得ることができる。
本発明において、フィブロインペプチドの分子量は、以下のようにして求められる。まず、フィブロイン粉末を含む溶液をゲル濾過により分画し、さらに分子量既知のマーカーを含む溶液も同条件で分画する。そして、それらの溶液の各フラクションの吸光度を測定し、その結果から、フィブロイン溶液のフラクションに含まれるペプチドの分子量を推定する。
また本発明において、フィブロイン水溶液の粘度は、キャピラリー式自動粘度測定装置を用いて、25℃の温度で測定される。
発明を実施するための最良の形態
−実施例1−
カイコ繭を小さな断片にカットし、0.5%(W/V)重炭酸アンモニウム水溶液中で40分間沸騰させて、セリシンを除去した。そして温水で洗浄後、風乾することにより、再生フィブロインを得た。続いて、3通りの方法で再生フィブロインからフィブロイン粉末を製造し、これらをフィブロイン粉末1−3とした。フィブロイン粉末1−3の製造方法は、以下の通りである。
フィブロイン粉末1:ナス型フラスコ中で、再生フィブロイン50gに12Nの濃塩酸80mlを加え、80℃で30分間加熱することにより、加水分解を行った。加水分解後、水で4倍に希釈し、12Nの水酸化ナトリウムで中和した。その後、分子量カット1000の透析チューブを使って流水で4日間透析した。そして、遠心分離器(HITACH himac SCR20B)を用いて遠心分離(8,000rpm,4℃,40分間、以下の実施例においても条件は同じ。)により沈殿を除去した後に、凍結乾燥した。これによって、フィブロインペプチドからなるフィブロイン粉末1を3.27g(収率6.64%)得た。
フィブロイン粉末2:加水分解時に60℃で15分間加熱し、透析時に分子量カット3500の透析チューブを用いた以外は、フィブロイン粉末1と同様に製造した。それによって、フィブロインペプチドからなるフィブロイン粉末2を10.8g(収率22%)得た。
フィブロイン粉末3:加水分解時に40℃で15分間加熱し、透析時に分子量カット15000の透析チューブを用いた以外は、フィブロイン粉末1と同様に製造した。それによって、フィブロインペプチドからなるフィブロイン粉末3を17.5g(収率35%)得た。
次に、フィブロイン粉末1−3が水に溶解するかどうかを調べた。そして溶解する場合には、最大濃度を求めた。さらにその飽和溶液が、人体表面に塗布しても流出しないぐらいの高い粘性を備えているか否かを調べた。
表1に結果を示すように、フィブロイン粉末1は70%(w/w)まで水に溶けたが、粘性が低かった。また、フィブロイン粉末3は、水に溶けなかった。これらに対して、フィブロイン粉末2は、60%(w/w)まで水に溶け、しかも十分に高い粘性を示した。これより、フィブロイン粉末2は医療用接着剤、被覆剤及び癒着防止剤として使用され得るということが判った。
Figure 0003999667
Figure 0003999667
−実施例2−
実施例1で得られたフィブロイン粉末1−3を、50mMリン酸緩衝液でpH7.0に調製された0.3M塩化ナトリウム溶液に1%(W/V)、300μlになるように溶かした。続いて、セルロファインGCL2000sf(0.9×100cm)カラムでゲル濾過し、試験管一本当たり0.5mlずつ120本分画した。これらを早く溶出されたものから順にフラクション1−120とし、フラクション毎に吸光度を測定した。また、マーカータンパク質についても同様にゲル濾過して吸光度を測定した。そして、その結果より検量線を作成し、これに基づいて各フラクションに含まれるフィブロインペプチドの分子量を推定した。マーカータンパク質としては、albumine egg(45kDa)、chymotrypsin(25kDa)、lysozyme(14.3kDa)を使用した。
図1に、フィブロイン粉末2の吸光度(波長280nm及び220nm)の結果を示す。図1に見られるように、フラクション88−101において吸光度が高く、いずれも波長220nmで0.7以上であった。さらに、フラクション88に含まれるフィブロインペプチドの分子量は約15000であり、フラクション101に含まれるフィブロインペプチドの分子量は約6000であった。これより、分子量6000−15000のフィブロインペプチドが、フィブロイン粉末2の主成分であると言える。そのうち、分子量の最頻値(フラクション95、波長220nmでの吸光度1.6以上)は約10000であった。また、フィブロイン粉末1の分子量の最頻値は約2000であり、フィブロイン粉末3の分子量の最頻値は20000以上と推定された。
−実施例3−
実施例1で得られたフィブロイン粉末2を、種々の濃度になるように水に溶解した。そして、作製された各水溶液の粘度を測定した。粘度の測定は、25℃の温度条件下で、キャピラリー式自動粘度測定装置(独ショット社、AVS−310)を用いて行われた。また各水溶液について、人体表面に塗布に塗布したときに流出しないかどうかを基準にして、医療用接着剤、被覆剤及び癒着防止剤として適しているか否かを判断した。
表2に結果を示すように、フィブロイン粉末2が33%(w/w)以上の濃度で溶かされた水溶液は、医療用の封止剤(接着剤、被覆剤等)及び癒着防止剤として適しているということが判った。また、それらの水溶液の粘度は、300mm/s以上であった。
Figure 0003999667
Figure 0003999667
−比較例−
ナス型フラスコ中で、再生フィブロイン10gに12Nの酢酸、蟻酸、硫酸又は水酸化ナトリウム20mlを加え、60℃で加熱し、加水分解を試みた。分解後、水で4倍に希釈し、12Nの水酸化ナトリウム又は塩酸で中和後、分子量カット3500の透析チューブを使い流水で4日間透析した。遠心分離により沈殿を除去した後に、凍結乾燥することによって、フィブロインペプチドを得た。
その結果、酢酸及び蟻酸では30分以上経過しても加水分解しなかった。硫酸でも加水分解せず、硫酸量を100mlにしてようやく1時間で加水分解した。但し、濃縮前の収率は10%であった。水酸化ナトリウムでは30分で加水分解したが、未分解量が多く、濃縮前の収率は3%しかなかった。
−実施例4−
[水溶性フィブロインペプチドのアクリロイル化]
実施例1のフィブロイン粉末2と同一条件で生成したフィブロインペプチドを実施例2と同一条件で水に溶かした。そして、以下の操作によって、フィブロインペプチド中のセリン残基の水酸基へアクリロイル基を導入した。
300mlのナス型フラスコを用いて、1gのフィブロインペプチドを10mlのジメチルホルムアミド中に懸濁し、氷浴中で冷却した。その懸濁液に1.37mlのトリエチルアミンを加えた後、5mlのN,N−ジメチルホルムアミドで希釈した1.57mlの塩化アクリロイルを滴下し、氷浴中で6時間、撹拌した。反応を止めるため、3.67mlのジメチルホルムアミドに溶かした1.37mlのトリエチルアミンと0.95mlの2−プロパノールを加え、氷浴中で20分間撹拌した。反応液を室温に戻した後、25mlの水に滴下し、続いて、分子量3500カットの透析チューブで流水に対して、7日間透析した。遠心分離後、上清を凍結乾燥することによって、アクリロイル化フィブロインペプチドを得た。
[アクリロイル基の導入確認]
上記の操作でアクリロイル基をフィブロインペプチドのセリン残基に導入できたかどうかを、プロトンNMR(Brucker AC300)によって以下の要領で確認した。上記で得られたアクリロイル化フィブロインペプチドを2%(W/V)の濃度になるように、0.5mlの重水に溶かして測定試料とした。アクリロイル基の導入量はアクリロイル基のビニル結合のプロトン(5.8ppmと6.6ppm)とチロシン残基のaromaticプロトン(6.9ppmと7.2ppm)の面積比から計算した。その結果、アクリロイル基がフィブロインペプチド1分子に対して10モル%導入されていることが判った。これはセリン残基中の水酸基の全量に対応する。
[アクリロイル化フィブロインペプチドのラジカル重合]
アクリロイル化フィブロインペプチド(セリン残基がアクリロイル化されたもの)の33%(W/W)または50%(W/W)水溶液に、アクリロイルモノマーに対し10mol%になるように、重合開始剤として0.1mlの蒸留水に溶かした過硫酸アンモニウムとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを加えた。室温で15分間反応させ、アクリロイル化フィブロインペプチドを重合させた。重合反応によってフィブロインペプチドはゲル化した。最後にゲルを水で洗浄した。
[ゲル化率及びゲルの水膨潤度の測定]
ゲル化前のアクリロイル化フィブロインペプチドの乾燥重量(Ws)と、生成したゲルの平衡吸水時および乾燥時における重量(WwおよびWg)を測定し、式(1)および(2)からゲル化率(GY:アクリロイル化水溶性フィブロインペプチドの乾燥重量の不溶化率)およびゲルの水膨潤度(DS:ゲルの乾燥重量に対する平衡吸水量の比)を算出した。
GY(%)= Wg/Ws×100 −−−−−−−(1)
DS=(Ww−Wg)/Wg −−−−−−−−−−(2)
その結果、フィブロイン濃度33%(W/W)%および50%(W/W)水溶液は、それぞれ、GYが20%と45%、DSが7と3であった。
[生体実験]
ラットの肺上部を切除し、アクリロイル化フィブロインペプチドを塗布し、ゲル化させ、肺切除部に対する接着性、生体適合性を検討した。対照としては、市販のポリエチレングリコール糊(商品名:登録商標「アドバシール」)を用いた。その結果、アクリロイル化フィブロインペプチドは生体適合性が良く、接着性にも優れていることが分かった。
(1)使用動物
体重250−300g(週齢10週程度)のWistar rat(各群n=5)
(2)麻酔
エトレンにて鎮静し、ケタラール0.6ml(100mg/kg)を腹腔内に投与した。16Gサーフロー針の外筒を用いて顕微鏡下に気管内挿管を行った。人工呼吸器の設定条件は、NO1L、O1L、一回換気量3ml、呼吸回数80/分とし、吸入麻酔薬としてハロセンを導入、維持ともに2%の濃度で使用し、閉胸開始時に中止し、純酸素換気とした。
(3)手術前操作
右側臥位で皮膚切開部位を剃毛し、アルコールで脱脂後、イソジン消毒した。
(4)手術操作
第五肋間に相当する部位の皮膚をメッチェンにて切開した。可及的に皮下を剥離し、筋層を電気メスにて止血しながら切開し、胸壁に達した。第五肋間を確認し、第六肋骨上縁で開胸した。換気停止後、肺の一部を切除した。切除断端からの出血を電気メスで焼灼止血した。切除断端にアクリロイル化フィブロインペプチド又はポリエチレングリコール糊を塗布し、可視光波長:450−550nm、光源:キセノン光を5分間照射して各々重合させた。胸腔ドレーンを開胸肋間から一肋間下より挿入し、出血及び残物のないことを確認して閉胸した。閉胸後、加圧しながら胸腔ドレーンを抜いた。創部をイソジン消毒し、フラセンパウダーを散布し、その上にノベクタンスプレーを噴霧した。自発呼吸回復後、気管内チューブを抜いた。
(5)評価
術後、1,4,7,14,21日目に犠牲死させ、開胸部と肺切除部位との癒着の有無を目視で観察した。また、HE染色で組織学的検討を行った。その結果、癒着は全く無く、創傷治癒効果もポリエチレングリコール糊に比べて良好であった。
−実施例5−
実施例4と同じアクリロイル化フィブロインペプチドをあらかじめ脱気した水に溶かしてフィブロイン濃度33%(W/W)又は50%(W/W)とし、この水溶液に水溶性カンファキノンをアクリロイルモノマー濃度に対して1mol%になるように加えた。混合溶液にトクソーパワーライト(株式会社トクヤマ製歯科用可視光線照射器、波長:400−520nm、光源:ハロゲンランプ)を使い、室温で10分程度可視光を照射し、アクリロイル化フィブロインペプチドを重合させた。重合反応によってフィブロインペプチドはゲル化した。反応後、ゲルを水で洗浄した。実施例4と同様にGY及びDSを測定したところ、フィブロイン濃度44(W/V%)から重合したものがGY=18、DS=7であった。また、フィブロイン濃度63(W/V%)から重合したものがGY=39、DS=4であった。
−実施例6−
実施例4と同じアクリロイル化フィブロインペプチドをあらかじめ脱気した水に溶かしてフィブロイン濃度50%(W/W)とし、この水溶液に、アクリロイルモノマーに対し1mol%になるように、光重合開始剤としてエオシンYを加えた後、還元剤としてアスコルビン酸をエオシンYの1/10molになるように加えた。室温でキセノンランプを使って波長450−550nmの可視光を2分間照射し、アクリロイル化フィブロインペプチドを重合させた。重合反応によってフィブロインペプチドはゲル化した。反応後にゲルを水で洗浄した。実施例4と同様にGY及びDSを測定したところ、GYは64%、DSが3であった。
−実施例7−
[水溶性フィブロインペプチドのメタクリロイル(methacryloyl)化]
以下の操作によって、水溶性フィブロインペプチド中のグルタミン酸残基とアスパラギン酸残基のカルボキシル基へメタクリロイル基(methacryloyl基)を導入した。
実施例1のフィブロイン粉末2と同一条件でフィブロイン粉末を生成した。そして、フィブロイン粉末1g中のカルボキシル基の10倍モル等量のWSCを20mlのPBS(phosphate buffer saline)に溶かし、上記フィブロイン粉末1gを加え、pHを7.0付近に保った。室温で1時間撹拌した後、20mlのイオン交換水に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)(以下、WSC)、及びこれと等量の2−Aminoethyl methacrylateを溶かした溶液(あらかじめ10%NaHCOでpHを7.0に調整しておいたもの)を室温で滴下した。17時間撹拌後、分子量3500カットの透析チューブに入れ、流水で3日間透析した。遠心分離後、上清を凍結乾燥することによって、メタクリロイル化フィブロインペプチドを得た。
[メタクリロイル基(methacryloyl基)の導入確認]
上記の操作でメタクリロイル基(methacryloyl基)をフィブロインペプチドのカルボキシル基に導入できたかどうかを、プロトンNMR(Brucker AC300)によって以下の要領で確認した。上記で得られたフィブロインペプチドを2%(W/V)の濃度になるように、0.5mLの重水に溶かして測定試料とした。メタクリロイル基の導入量は、メタクリロイル基(methacryloyl基)のビニル結合のプロトン(5.8ppmと6.6ppm)とチロシン残基のaromaticプロトン(6.9ppmと7.2ppm)の面積比から計算した。その結果メタクリロイル基(methacryloyl基)がフィブロインペプチド1分子に含まれる全てのカルボキシル基に導入されたことが判った。
[メタクリロイル化フィブロインペプチドの光重合]
上記のメタアクリロイル化フィブロインペプチド50%(W/V)に、アクリロイルモノマーに対し1mol%になるように、光重合開始剤としてエオシンYを加えた後、還元剤としてアスコルビン酸をエオシンYの1/10molになるように加えた。室温でキセノンランプを使って波長450−550nmの可視光を2分間照射し、アクリロイル化フィブロインペプチドを重合させた。重合反応によってフィブロインペプチドはゲル化した。最後にゲルを水で洗浄した。
ゲルのGY及びDSを実施例4と同様に測定したところ、GYが23%、DSが7であった。
−実施例8−
[水溶性フィブロインペプチドのケイ皮酸エステル化]
以下の操作によって、水溶性フィブロインペプチド中のセリン残基、スレオニン残基、チロシン残基の水酸基へケイ皮酸エステル基を導入した。
実施例1のフィブロイン粉末2と同一条件でフィブロイン粉末を生成した。300mlのナス型フラスコを用いて、上記フィブロイン粉末1gを10mlのジメチルホルムアミド中に懸濁し、氷浴中で冷却した。その懸濁液に0.92mlのトリエチルアミンを加えた後、5mlのジメチルホルムアミドに溶かした2gのケイ皮酸クロリドを滴下し、氷浴中6時間、撹拌した。反応を止めるため、4.5mlのジメチルホルムアミド溶かした0.92mlのトリエチルアミンと0.48mlの2−プロパノールを加え、氷浴中で30分間撹拌した。反応液を室温に戻した後、20mlの水に滴下し、続いて、分子量3500カットの透析チューブで流水に対して、7日間透析した。遠心分離後、上清を凍結乾燥することによって、ケイ皮酸エステル化フィブロインペプチドを得た。
[ケイ皮酸エステル基の導入確認]
上記の操作でケイ皮酸エステル基をフィブロインペプチドの水酸基に導入できたかどうかを、IR(日本分光)によって以下の要領で確認した。上記で得られた2mgのフィブロインペプチドと200mgのKBrを混合し作成したKBrディスクを測定試料とした。修飾前フィブロインペプチド、修飾後のフィブロインペプチド、ケイ皮酸クロリドの測定結果を比較することによってケイ皮酸エステル基が導入されたかどうかを確認した。修飾前後でケイ皮酸エステル基のベンゼン環由来の3000−3100cm−1吸収が大きくなっていることからケイ皮酸エステル基の導入が確認された。
[ケイ皮酸エステル化フィブロインペプチドの光重合]
得られたケイ皮酸エステル化フィブロインペプチドの50%(W/V)水溶液を作成し、室温で500Wのキセノンランプを使って紫外光を2分間照射しケイ皮酸エステル化フィブロインペプチドを重合させた。重合反応によってフィブロインペプチドはゲル化した。最後にゲルを水で洗浄した。ゲルのGY及びDSを実施例4と同様に測定したところ、GY=26%、DS=8であった。
産業上の利用可能性
本発明によると、医療用の封止剤及び癒着防止剤といった医療用基材として利用可能なフィブロイン粉末及びフィブロイン水溶液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明のフィブロイン粉末の吸光度を示す図である。

Claims (3)

  1. 分子量3500以上で分子量の最頻値が10000であるフィブロインペプチドからなり、その内のアミノ酸中のセリン残基、スレオニン残基及び/又はチロシン残基中の一部の水酸基が、縮合により下記一般式で表される基で置換されていることを特徴とする医療用フィブロイン粉末。
    Figure 0003999667
    (式中、nは0又は10以下の整数、X及びYは水素原子又は炭素数10以下のアルキル基もしくはアリール基であり、XとYとは互いに同一であっても異なっていてもよく、Xの炭素数とYの炭素数とnの合計は10以下である。)
  2. 請求項1に記載の医療用フィブロイン粉末からなる臓器癒着防止剤。
  3. 請求項1に記載の医療用フィブロイン粉末からなる生体用封止剤。
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