JP3999220B2 - 落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁 - Google Patents

落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁 Download PDF

Info

Publication number
JP3999220B2
JP3999220B2 JP2004256085A JP2004256085A JP3999220B2 JP 3999220 B2 JP3999220 B2 JP 3999220B2 JP 2004256085 A JP2004256085 A JP 2004256085A JP 2004256085 A JP2004256085 A JP 2004256085A JP 3999220 B2 JP3999220 B2 JP 3999220B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
snow
lattice
prevention fence
snowfall
snowfall prevention
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004256085A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005133535A (ja
Inventor
秀人 岳本
樹 石田
隆二 安倍
浩司 布施
英睦 植野
政夫 竹内
隆弘 千葉
Original Assignee
独立行政法人北海道開発土木研究所
株式会社雪研スノーイーターズ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 独立行政法人北海道開発土木研究所, 株式会社雪研スノーイーターズ filed Critical 独立行政法人北海道開発土木研究所
Priority to JP2004256085A priority Critical patent/JP3999220B2/ja
Publication of JP2005133535A publication Critical patent/JP2005133535A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3999220B2 publication Critical patent/JP3999220B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Bridges Or Land Bridges (AREA)

Description

本発明は、メンテナンス作業を要することなく、橋梁の上弦材からの落雪による事故の発生を回避するための技術に関する。
積雪地においては、これまで橋梁の上弦材に冠雪や着雪が発生し、これが雪氷塊となって落雪することによって、通行車両等に損傷を与える事故が発生している。従来の対策は、雪氷塊にならないうちの密度の低い状態で上弦材から雪を落下させることで、落雪があっても通行車両等に損傷を与えないようにするものであった。そのためのいずれの方法も、除雪などの作業を完全には排除することができず、メンテナンスのためのコストがかかるという問題があった。
これに対して、特に建物やトンネルの開口部において適用することを想定したものではあるが、早期の落雪を図るのではなく、落雪そのものを防止しようとする技術が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。これら特許文献1〜3の技術では、建物やトンネルの開口部における雪庇の形成を格子状の雪庇防止体(網板)により阻止することで、落雪の発生を防止しようとするものである。
実公平1−26822号公報 特開2002−147061号公報 特開2002−129777号公報
しかしながら、特許文献1〜3の技術は、雪庇防止体(網板)の格子間隔が非常に狭い(例えば、2mm〜8mm:特許文献1、1ページ左23行参照)ので、雪庇形成端部の外側に積もった雪は早期に落下するが、雪が有する粘弾性の性質から、雪庇形成端部の内側に積もった雪は落下することなく内部に滞留する。すなわち、雪庇形成端部の内側は、雪庇防止体の位置までほぼ隙間なく雪で埋められることとなる。
ここで、雪庇防止体の高さが十分でなければ、長期に亘る大量の降雪で冠雪量が非常に多くなったときには、容易に雪庇防止体の高さを越えて冠雪してしまうこととなる。この場合、雪庇防止体の位置までほぼ隙間なく雪で埋められてしまっているので、雪庇防止体の上端部を越えて雪庇が形成されてしまう虞が大きかった。しかも、非常に大量の降雪時には、圧雪された比較的密度の高い雪庇が形成される虞があった。このため、短期間に大量の降雪があったときなどには、人の手により除雪作業を行わなければ、比較的密度の高い雪の固まりが落下してしまうという問題があった。
また、特許文献1〜3の技術では、雪庇防止体の外側に雪が落下してしまうのを完全に防止しようとするものである。これに対して、雪庇防止体の内側に傾斜があったり、雪庇防止体の内側に積もった雪が風などの外力を受けると、そこに積もった雪全体が雪庇防止体の外側に向けて滑動することがある。特に大量の降雪があった場合などには、滑動した雪が外部に落下するのを完全に防ごうとすれば、雪庇防止体の材質や取り付けに相当な強度が要求されることとなる。十分な強度を得ようとすれば、材質や取り付け方法の選択幅が限られてしまい、一方、十分な強度が得られなければ、雪庇防止体の取り付け場所が限られてしまうという問題があった。
ところで、特許文献1〜3の技術を適用することを想定している建物やトンネル開口部と異なり、橋梁の場合には、その全体が周囲の景観との調和を図るように美観的に設計されている。このため、落雪防止のための装置として余りに大規模な装置を敷設してしまうと、景観を損ねてしまう虞がある。また、橋梁は、ものによってはかなり大規模なものとなり、特許文献1〜3の技術を適用することを想定している建物やトンネル開口部などのように、その上弦材に人が立ち入るのは容易なことではない。このため、ほぼ完全なメンテナンスフリーを実現することが望まれていた。
本発明は、除雪などのメンテナンス作業を要することなく、密度が高く、重量の重い雪氷塊を上弦材から落下させないことで、落雪による事故の発生を回避するための落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる落雪防止フェンスは、水平面に対して0°〜45°の傾斜を有する橋梁の上弦材の上面と交差し、該上面の外側に向けて開放状態となっている面に取り付けられ、少なくとも前記上弦材の上面と45°〜90°の角度をなすように30mm〜120mmの間隔で5mm〜20mm太さの格子が形成されるとともに前記上弦材の上面から上部までの長さが100mm〜400mmの範囲に設定された格子部を有するとともに、前記上弦材の上面の該上面と交差する面の側で前記格子部より内側に、上部までの長さが30mm〜100mmの範囲で前記上弦材の上面と45°〜90°の角度をなすプレートが形成されたことを特徴とする。
上記の落雪防止フェンスが取り付けられている橋梁の上弦材に冠雪したとき、その冠雪は、短時間で大きな力が加わると弾性破壊する。ここで、格子の間隔が少なくとも30mmあるため、弾性破壊により生じた小さな雪片は、圧縮されて密度が高くなる前に、早期に落雪させることができる。このように密度の低い小さな雪片で落雪させれば、それが橋梁を通過する車両等に衝突しても損傷を与える危険がない。
一方、早期に落雪しないで上弦材の上面に残った冠雪は、雪粒子同士の結合力が増すとともに、重力や風の力などの長期間の小さな力が働いて塑性変形しようとする。このときに、冠雪に働く力が格子により遮られるので、圧雪されて密度の高くなってからの冠雪の落下を阻止することができる。格子の隙間を冠雪が通過しても、30mm〜120mmの範囲と落下する雪の固まりの大きさが小さくなるので、橋梁を通行する車両等に危険を及ぼさない。また、冠雪の最下部に生じ、密度が最も大きくなる氷板の落下を、格子によって防ぐことができるようになる。
このように、上記の落雪防止フェンスでは、危険を生じないような状態で冠雪を落下させると共に、落下により危険を生じるように成長した雪氷塊などの落下阻止とを、除雪などのメンテナンス作業を行うことなく、実現することができる。また、危険を生じない状態でなるべく冠雪を落下させることで、雪氷塊の成長も抑えることができる。
また、橋梁の上弦材の高さでは、一般に地表面よりも風が強く、できる限り冠雪を小さな雪片で早期に落下させることができるので、通常想定される程度の降雪量であれば、この程度の高さのフェンスで十分に対応することができる。橋梁は、周囲の景観と調和させるように外観のデザインがされているものが多いが、落雪防止フェンスの高さがこの程度であれば、橋梁の大きさに比較して十分に小さいものとなるので、橋梁の外観を損ねることがない。仮にフェンスの高さを超える積雪により生じた雪庇が落下しても、密度が小さく、また、橋梁の高さを考えると落下中にある程度の大きさまで崩壊するので、危険は生じない。
上記第1の観点にかかる落雪防止フェンスにおいて、前記垂直方向の格子は、30〜60mmの間隔で形成されていることが好ましい。
垂直方向の格子の間隔を、この程度に細かいものとすることで、冠雪から溶け出して生じた水の流路を分散させることができ、氷柱の成長を抑えることができるようになる。
また、上記第1の観点にかかる落雪防止フェンスでは、上記のようなプレートを形成することで、冠雪から溶け出して生じた水が上弦材から垂れないようにすることができるので、氷柱の成長をほぼ完全に抑えることができるようになる。また、このプレートによって、冠雪の最下部に生じる氷板の落下を完全に抑えることができるようになる。
上記第1の観点にかかる落雪防止フェンスにおいて、前記格子部には、前記上弦材の上面と前記上面の外側に向けて開放状態となっている面とが交差する辺と実質的な平行方向に30mm〜120mmの間隔で20mm以下の太さの格子がさらに形成されていることが好ましい。
上弦材の上に積もった雪は、同時期に降った雪は同一の質を有していることから、層構造をなすものとなる。上弦材の上面と前記上面の外側に向けて開放状態となっている面とが交差する辺と実質的な平行方向に格子を設けることで、異なる層の雪を容易に剥離させて、格子の隙間を通り抜けて落下する雪の固まりの大きさを小さくすることができる。これにより、格子の隙間を通り抜けて落下した雪の固まりが橋梁を通過する車両等に衝突しても、これによって大きな損傷を与えるのを防ぐことができる。
上記第1の観点にかかる落雪防止フェンスは、前記上弦の上面と交差し、該上面の外側に向けて開放状態となっている面に支柱を固定することにより取り付けられていることが好ましい。
また、本発明の第2の観点にかかる橋梁は、上記第1の観点にかかる落雪防止フェンスを、上弦材の上面と交差し、該上面の外側に向けて開放状態となっている面に取り付けたことを特徴とするものである。
本発明によれば、橋梁の上弦材への冠雪を、密度の低い雪片として早期に落雪させるとともに、早期に落雪せずに密度が高まったときには落雪させないようにすることができ、落雪による事故の発生を回避できる。この作用効果を得るため、除雪などのメンテナンス作業は必要ない。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる落雪防止フェンスを適用したニールセンローゼ橋の部分斜視図である。図示するように、ニールセンローゼ橋1の上弦材10のうち上横構10bの長辺方向端部は、主構10aなどとの接続がなく開放状態となっており、その開放状態となった長辺方向端部に落雪防止フェンス11が取り付けられている。例えば、このニールセンローゼ橋1が自動車道として用いられる場合は、上横構10bの下部を車両等が通行することとなるからである。
上横構10bの上面が水平面に対してなす角度は、0°以上45°以下の範囲となっている(場所により異なる)。上横構10bの上面が水平面に対してなす角度が0°よりも大きくなる場合には、落雪防止フェンス11の取り付け側は、傾斜の低くなっている方である。
ここではニールセンローゼ橋1の主構10aの下部に道路が形成されておらず、車両等の通行がないことを前提としているので、落雪防止フェンス11は取り付けられていないが、主構10aの下部にも車両等の通行がある場合には、ここにも落雪防止フェンス11が取り付けられる。なお、図では全体構成を示していないが、このニールセンローゼ橋1は、降雪地に設置されたものであって、その長さは200m程、幅は16m程、最上部までの高さは 21m程となっている。
図2は、図1の落雪防止フェンス11の構成を詳細に示す図である。落雪防止フェンス11は、金属や木材などによって構成されている。落雪防止フェンス11の上部には、格子部11aが構成されている。格子部11aを構成する部材の太さは5mm〜20mm程である。格子部11aは、落雪防止フェンス11の1つあたりについて、縦横それぞれ120mm間隔で、縦に3つ、横に10個の格子が形成されて、全体としての横幅は1200mmとなっている(長さは、格子部11aを構成する部材の中心を基準に計測されている。以下、同じ)。なお、上横構10bの末端部に取り付けられるフェンスでは、横方向が1200mmも小さくなる場合がある。
落雪防止フェンス11は、ボルト11bによって上横構10bの上面と実質的に垂直となるように取り付けられる。上横構10bの長さに足らない場合には、複数の落雪防止フェンス11がボルト11cで連結されて用いられる。落雪防止フェンス11は、上横構10bの上面から格子部11aの上端部までの高さが330mmとなる位置に、また、上横構10bの末端部の隙間が150mm以内となる位置に固定される。この取り付け位置において、格子部11aの構成面は、上横構10bの上面とほぼ垂直をなす。
上横構10bの端部には、落雪防止フェンス11のみを取り付けるものとすることもできるが、落雪防止方向フェンス11の格子部11aの内側であって、上横構10bの長辺方向端部に水処理プレートをさらに取り付けるものとすることができる。図3(a)及び(b)は、水処理プレートの構成及び取り付け状態を示す図である。図3(a)は、落雪防止フェンス11の取り付け側から見た図を、図3(b)は、図3の前後方向における断面を示す。図3(a)において、水処理プレート12は、網がけにして示している。
図示するように、水処理プレート12は、厚さが1mm〜3mm程度の金属板によって構成され、上横構10bの長辺方向端部であって格子部11aの内側となる位置にボルト12bによって取り付けられる。上弦材10bの上面から水処理プレート12の上部までの長さは、90mm程度となっている。水処理プレート12も、上横構10bの上面と実質的に垂直をなす。
次に、落雪防止フェンス11の作用について説明する。ニールセンローゼ橋1が設置されている地域に降雪があると、その上弦材10に着雪及び冠雪(これらをまとめて単に冠雪という)が生じる。降った直後の雪は、90%以上が空気で占められていて、その密度は、0.05〜0.1g/cmと非常に低い。また、冠雪の個々の雪粒子は、互いの接触点において焼結現象によっても結合し、三次元の網目構造が形成される。もっとも、降った時期により雪質が異なるため、異なる雪質の雪が層構造となって堆積されるものとなる。
次に説明するように雪氷塊に成長する前の冠雪に対して、強風などにより短時間で強い力が加わると、この冠雪に弾性破壊が生じる。弾性破壊により生じた雪片のうちで比較的小さな雪片は、さらに風の力を受けることにより、格子部11aの格子の隙間を通り、上横構10bの下部に落下する。この雪片は、依然として密度が低い状態にあり、大きさも小さくて重量が軽いので、上横構10bから落下したとしても、下部を通行する車両に衝突したとしても、その車両に損傷を加える程の衝撃を与えるものとはならない
小さな雪片となって格子の隙間から落下しなかった冠雪に対しては、雪そのものの重量により、或いは比較的弱い風の力により、小さな力が長期間加わることとなる。このような力に対しては、冠雪は塑性変形する。ここで、冠雪に対して働く力の方向、すなわち上横構10bの上面に傾斜がついていれば斜面の下方向、風の力を受けていれば風下の方向に張り出すように、冠雪が変形しようとする。
ここで、落雪防止フェンス11が取り付けられた方向に冠雪が変形しようとした場合、格子部11bに形成された格子、特に縦方向に形成された格子が、120mmという適度な間隔を有しているために、雪粒子に働く力を隣接する雪粒子に分散させて、冠雪が固まりとなって落下するのを防いでいる。もっとも、格子の隙間から少しずつ雪がはみ出していくが、落下する雪の固まりが格子の間隔以上にまとまった大きさとなるのを防いでいる。また、横方向の格子は、質の異なる雪の層を剥離させて、格子の間隔を通り抜けて落下する雪の固まりの大きさを、小さくするように作用している。
最下部にある冠雪は、上横構10bの上面の温度がプラスのときは熱伝導によって溶け出すが、気温が下がったときには再び凍結して、氷板が形成されることとなる。この氷板も、格子部11aの縦方向の格子によって上横構10bの下部に落下することが防止されることとなる。さらに、格子の付近から冠雪が溶け出すことにより、溶け出した水の流路は、格子のそれぞれの付近で生じる。これによって、上横構10bの上面の熱伝導によって溶け出した水も、各格子付近の流路に分散されて流れることとなるので、上横構10bと格子部11aとの隙間から垂れた水が再び凍結することで形成される氷柱(つらら)の成長を抑えることができる。
さらに、水処理プレート12を取り付けた場合には、氷板の落下をこれで完全に抑えられる。また、冠雪から溶け出して生じた水が上横構10bと格子部11aとの隙間から垂れるのを防ぐことができるので、氷柱の成長もほぼ完全に抑えられる。つまり、水処理プレート12は、最も密度の高い氷板や氷柱が上横構10bから落下するのを、完全に抑えるものとなる。
また、上横構10bの傾斜や風力が小さく、冠雪に加わる力が弱い場合には、格子の付近の冠雪、特に格子に触れている冠雪が、格子からの熱放射によって容易に溶けたり、昇華蒸発するようになる。こうして冠雪が融解、昇華蒸発することによって、格子と冠雪との間に隙間が生じることとなるので、雪の重みが落雪防止フェンス11にかかりにくくなる。
なお、短期間に大量の降雪があった場合には、落雪防止フェンス11の格子部11aの上部を越えて冠雪する場合もある。格子部11aの上部よりも高い位置の冠雪により、格子部11aの上部から雪庇が張り出す場合もある。内部の雪が沈降することにより、この雪庇が落下する場合もある。しかし、この雪庇は、雪自体の重量による圧力をそれほど受けてなく、また、降雪したときから比較的時間を経過していないものであるので、比較的密度が低く、その多くが落下中に飛散するものとなる。また、大きなまま落下したとしても、落下時の衝撃は大きくならない。
以上説明したように、この実施の形態にかかるニールセンローゼ橋1では、上弦材10の上横構10bの長辺端部に、格子部11aを有する落雪防止フェンス11を取り付けている。上横構10bの上面への冠雪は、短期間に大きな力を受けた場合には弾性破壊するが、小さな雪片は格子の隙間を通り抜けて、下部に落下する。格子の隙間を通り抜けることのできる小さな雪片以外は、上横構10bの上面に残ることとなる。
つまり、上横構10bの上面への冠雪を密度の低い状態で、大きな雪氷塊とせずに格子の隙間から早期に落雪させる。このような状態で落雪させることによって上横構10bの下部を通行する車両等に損傷を与えることがない。ここで、危険のない雪片をなるべく早期に落下させることで、上横構10bの上面に残る冠雪の量を少なくすることができ、なるべく大きな雪氷塊とならないようにすることができる。
早期に落雪せずに上横構10bの上面に残った冠雪は、特に下部の方で圧力を受けて密度が高くなり、融雪と凍結の繰り返しにより雪氷塊に成長する。また、この冠雪は、力の働く方向に塑性変形しようとするが、その力が格子(特に縦方向の格子)によって遮られ、格子の外側に大きな雪氷塊が落下するのを防ぐことができる。特に上横構10bが水平であるか、勾配があっても僅かなものである場合には、格子によって冠雪に働く力をほぼ完全に防ぐことができるので、格子の外側に雪庇がはみ出して落下するのを防ぐことができる。
上横構10bの勾配が大きい場合など冠雪に働く力によっては、格子の隙間から雪の固まりが落下することがあるが、格子を通り抜ける程度の大きさのものしか落下し得ない。特に横方向の格子は、縦方向の格子に比べて冠雪の落下を防ぐという点での効果は少ないが、雪質の異なる層を剥離させて、落下する雪の固まりを小さくすることができる。格子の隙間を抜けて落下した雪の固まりによって、下部を通行する車両等に大きな損傷を与えることがなくなる。また、このように危険のない状態でなるべく冠雪を落下させることで、雪氷塊の成長を防ぐこともできる。
さらに、格子により溶け出した水の流路も多く作るので、大きな氷柱を成長させることがない。落雪防止フェンス11に加えて水処理プレート12も設置した場合には、この水処理プレートによって上横構10bから水が垂れるのを防ぐことができるので、最も密度の高い氷板の落下や、氷柱の成長を完全に抑えることができるようになる。このように、上記した落雪防止フェンス11及び水処理プレート12によって、密度が高く、下部を通行する車両等に損傷を与える可能性のある大きな雪片や雪氷塊、最下部に生じる氷板、或いは氷柱の落下を防ぐことができる。
さらに、上横構10bの上面から落雪防止フェンス11の格子部11aの上部までの高さは、330mm程となっているが、ニールセンローゼン橋1の全体の大きさから比較すれば、非常に僅かなものでしかない。このため、周囲の景観との調和を考慮して外観がデザインされたニールセンローゼン橋1の形状が、落雪防止フェンス11の存在によって大きく変わるようなこともなく、その外観を損ねることもない。この高さを超える積雪によって生じた雪庇が落下しても、その密度は小さく、落差の大きさから落下中に崩壊するので、下部を通行する車両等に大きな損傷を与えることがなくなる。
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形態様について説明する。
上記の実施の形態では、落雪防止フェンス11の格子部11aは、縦横それぞれ120mm間隔で、格子が形成されるものとしていたが、これに限るものではない。図4(a)、(b)、図5(a)〜(d)は、それぞれ他の構成を有する落雪防止フェンス31〜36を示す図である。なお、これらの落雪防止フェンス31〜36を上横構10bに取り付ける場合も、水処理プレートを併せて取り付けた方が好ましいが、ここでは水処理プレートを省略している。
図4(a)に示す落雪防止フェンス31は、格子部31aにおいて縦に2段で格子が形成されている。図4(b)に示す落雪防止フェンス32は、格子部32aにおいて縦に一段で格子が形成されている。格子部31a、32aにおける格子の間隔は、上記した落雪防止フェンス11のものと同じである。従って、上弦材10の上面から格子部32a、32bの上端部までの高さは、それぞれ220mm、100mm程度となる。なお、落雪防止フェンス31、32と併せて取り付けられる水処理プレートの高さは、上記した水処理プレート12の高さよりも小さくてよい。
降雪量や雪質によっては、上弦材10の上面への冠雪がそれほど多くならない橋梁もある。想定される上弦材10の上面への冠雪の量によっては、図4(b)に示す落雪防止フェンス32のような100mm程度の高さであっても、これを越える程にまで雪氷塊が成長することがない。想定される冠雪の量がやや多くなるときには、図4(a)に示す落雪防止フェンス31のように220mm程度の高さがあれば、これを越える程にまで雪氷塊が成長することがない。
上弦材10の高さでは、地表面より風が強く、可能な限り小さな雪片での早期落下ができるものとなるので、日本国内の降雪地で想定される冠雪の量であれば、上弦材の上面から400mm程度の高さのフェンスで、ほとんど対応できることが計算上求められている。密度の高い雪氷塊に成長していない冠雪であれば、想定される冠雪の量が少なくても、落雪防止フェンス31、32の高さを越えて雪庇が形成されることもあるが、密度の低い雪の固まりの状態で早期に落下させられるので、下部を通行する車両等に損傷を与えることがない。
図5(a)に示す落雪防止フェンス33は、上記した落雪防止フェンス11の格子部33aの格子の間隔が半分の60mmとなっている。図5(b)に示す落雪防止フェンス34は、格子部34aの格子の間隔がさらに半分の30mmとなっている。この程度の格子間隔でも短期間の強い力により弾性破壊した密度の低い雪片を、格子の隙間から落下させることができる。一方、早期に格子の隙間から落下しなかった雪が、その後に働く力により格子の隙間から落下する場合でも、その大きさをさらに小さくすることができる。また、このように格子の間隔をさらに小さくした場合には、冠雪から溶け出した水の流路がさらに多くなるので、大きな氷柱を成長させることがない。
図5(d)に示す落雪防止フェンス35は、格子部35aにおける縦方向(すなわち、上横構10bの長辺方向と実質的な垂直方向)の格子の間隔は、上記した落雪防止フェンス11の格子の間隔と同じ120mmであるが、横方向(すなわち、上横構10bの長辺方向と実質的な平行方向)の格子の間隔は、これの1.5倍の180mmとなっている。図5(d)に示す落雪防止フェンス36は、格子部36aにおいて縦方向に120mm間隔で格子が形成されているが、格子部36aの上部まで横方向の格子は形成されていない。
落雪防止フェンス35、36を用いた場合でも、横方向に長い固まりとなった雪が格子の隙間から落下することはない。もっとも、このような構造の落雪防止フェンス35、36では、格子部35a、36aの格子の隙間から縦方向に長い固まりとなった雪が落下することがあり得なくはない。もっとも、冠雪は、層構造をなして堆積しているため、横方向で自然に断裂して小さくなった雪片が落下する場合が多い。また、縦方向でまとまった大きさの固まりの雪が落下しても、落下時に働く力によって雪の層と雪の層とが剥離しやすく、多くの場合において、地上に落下するまでの間に小さな雪片に崩壊してしまうこととなる。
上記の実施の形態では、水処理防止プレート12は、落雪防止フェンス11とは別部材で構成されて橋梁1の上弦材10bに取り付けられ、落雪防止フェンス11と一体となって落雪防止のために作用するものとしていた。言い換えれば、本発明としての効果を最も奏する落雪防止フェンスが、本体(落雪防止フェンス11)と本体とは別の水処理プレート12という2つの部品によって構成されるものとなっていた。これに対して、上弦材10bの開放端部に隙間を生じさせないように水処理プレートを取り付けられるのであれば、格子部と水処理プレートとが一体に形成された落雪防止フェンスを適用することもできる。
上記の実施の形態では、格子部11aの格子面が上横構10bの上面に対してほぼ垂直をなすように、落雪防止フェンス11を取り付けるものとなっていたが、上横構10bの上面に対して傾斜をなすように取り付けるものとしてもよい。特に上横構10bに水勾配がある場合には格子面が水平面に対して垂直となるように、すなわち水勾配の大きさに応じて上横構10bの上面に対して45°〜90°の傾斜をなすように落雪防止フェンス11を取り付けることができる。
以上のような変形例を含めて、本発明においては、落雪防止フェンスとして次のような格子部を有するものを適用することができる。格子は、少なくとも縦方向に設けるものとし、その間隔は、30mm以上120mm以下の範囲とする。格子の隙間を通り抜けて落下する雪の大きさを一定範囲に抑えるため、格子の間隔は、30mm以上60mm以下の範囲とすることが好ましい。30mm以上60mm以下に格子の間隔を設定した場合には、水処理プレートを取り付けていない場合であっても、冠雪から溶け出して生じた水の流路を分散させることができ、氷柱の成長を抑えることができるようになる。
もっとも、格子の間隔に関わらず、水処理プレートを取り付けた場合には、冠雪から溶け出して生じた水による氷柱の形成をほぼ完全に抑えることができ、また、冠雪の最下部に生じる氷板の落下を完全に防ぐことができるので、格子の間隔に関わらず、水処理プレートを取り付けるものとすることが好ましい。水処理プレートは、氷柱の成長を抑えると共に氷板の落下を抑えるため、さらには一定の強度を持たせるため、上端までの長さが30mm以上100mm以下となるものとすることができる。なお、水処理プレートは、格子部とは別個の部材として橋梁に取り付けられるものとしても、格子部と一体に取り付けられたものであってもよい。
横方向の格子は、必ずしもなくてもよいが、層構造となって積もった異なる質の雪を剥離させ、格子の隙間を通り抜けて落下する雪の大きさを一定範囲以内に抑えるためには、これが形成されたものとすることが好ましい。その間隔は、異なる質の雪を剥離させるのを妨げないようにするため、ある程度の間隔を有しているものとすることが好ましく、縦方向の格子の間隔として適用されるのと同じ、30mm以上120mm以下の範囲とすることが好ましい。
橋梁の上弦材の上面から格子部の上端までの長さは、想定される降雪量や雪質に従って、さらには周辺の景観と橋梁の外観も考慮して、100mm以上400mm以内の範囲とすることができる。水処理プレートの上端までの長さは、上記したように30mm以上100mm以下の範囲とするが、この長さは、格子部の上端までの長さに合わせて決めることができる。
落雪防止フェンスの取り付け方向は、縦方向の格子が上弦材の上面と45°以上90°以下の角度をなすようにすることができる。また、水処理プレートの取り付け方向も、上弦材の上面と上弦材の上面と45°以上90°以下の角度をなすようにすることができる。もっとも、取り付けの容易さや取り付け強度の観点から、縦方向の格子や水処理プレートは、上弦材の上面と実質的に垂直方向に取り付けるものとすることができる。
上記の実施の形態では、上横構10bの長辺方向端部にのみ落雪防止フェンス11を取り付けるのではなく、これと垂直方向に所定間隔で格子を設けて、箱形に落雪防止フェンスを設置するものとしてもよい(水処理プレート12は、長辺方向端部のみに設定すればよく、箱形とする必要はない)。この場合、垂直方向の格子によって冠雪が区切られることとなるため、冠雪がその箱の大きさよりも大きな雪氷塊に成長することがない。このため、上横構10bから雪氷塊が滑り落ちようとしたときであっても、それが巨大な雪氷塊であることがないため、滑り落ちようとする雪氷塊の重量に落雪防止フェンス11が強度的に耐えられなくなることがなくなる。
上記の実施の形態では、ニールセンローゼ橋に落雪防止フェンスを取り付けた場合を例として説明したが、これ以外のタイプのアーチ橋やトラス橋の上弦材、さらには吊り橋の橋脚上部に上記の構成を有する落雪防止フェンスを取り付けるものとすることもできる。橋梁としては、道路橋だけではなく、鉄道橋や人道橋などの上弦材の下部を車両や人が通行するものであれば、任意のものに適用することができる。
また、橋梁が完成した後に、上弦材とは別に構成した落雪防止フェンスを取り付けるのではなく、落雪防止フェンスが上弦材と一体となったものであってもよい。この場合、格子状の落雪防止フェンスを一体として周囲の景観に合わせて橋梁をデザインすることが可能となる。もっとも、橋梁の上弦材に落雪防止フェンスを別に取り付ける場合でも、最初から落雪防止フェンスが取り付けられた状態を考慮して橋梁をデザインすることもできる。
さらには、斜張橋のケーブルに落雪防止フェンスを取り付けるものとすることもできる。斜張橋のケーブルへの冠雪及び着雪は、従来より専用のスクレーパーを用いて除雪されてきた。もっとも、主塔への取り付け端部において、ケーブルの太さが太くなっているため、この部分については、スクレーパーで除雪をすることが困難であった。そこで、斜張橋においては、スクレーパーによる除雪が困難なケーブル端部に落雪防止フェンスを取り付けることによって、とりわけ効果を得ることができる。
図6は、本発明の実施の形態にかかる落雪防止フェンスを適用した斜張橋の部分斜視図である。図示するように、斜張橋2は、主塔20に複数のケーブル21が取り付けられ、これらのケーブル21の他端を桁部に取り付けて、桁部を支える構造となっている。ケーブル21の主塔20から1〜2m程度の位置にある取付端部21aは、その太さが他の部分よりも太くなっている。取付端部21aの太さは、200mm程度である。
斜張橋2において、ケーブル21への冠雪は、従来よりケーブル21上を自走するスクレーパーによって除去されている。もっとも、太くなっている取付端部21aまでは、スクレーパーが届かず、冠雪を除去することができない。このスクレーパーで冠雪を除去することができない取付端部21aに、上記した落雪防止フェンス11と同様の作用を奏する落雪防止フェンス22が取り付けられている。
図7は、図6の落雪防止フェンス22の取り付け状態及び構成を詳細に示す図である。図7(a)に示すように、ケーブル21の取付端部21aには、落雪防止フェンス22を取り付けるためのUボルト23が止め金具24を用いて固定される。Uボルト23の上部に対向して一対の落雪防止フェンス22が、ボルト22b(図7(b)参照)を用いて固定される。つまり、取付端部21aの上部を挟むように、一対の落雪防止フェンス22が取り付けられるものとなる。さらに、対向する落雪防止フェンス22の垂直方向に(少なくとも取付端部21aの末端に)、70mmの間隔で太さが10mmの格子が形成されたフェンス25を取り付けている。
図7(b)に示すように、落雪防止フェンス22は、金属によって構成され、その上部には格子部22aが設けられている。格子部22aにおいて、縦に2つ、横に10個の格子が形成されている。縦方向の格子の間隔は、82mmとなっており、横方向の格子の間隔は、両端以外では100mm、両端では70mmとなっており、落雪防止フェンス22の1枚当たりの横幅が940mmとなっている。落雪防止フェンス22は、少なくともケーブル21が太くなる取付端部21aの43mmの位置までは取り付けられる。1枚の落雪防止フェンス22の横幅が取付端部21aの長さに足らなければ、図に示すように、複数の落雪防止フェンス22が連結される。
斜張橋2が設置されている地域に降雪があると、取付端部21aを含めてケーブル21にも着雪及び冠雪(これらをまとめて単に冠雪という)が生じる。ケーブル21の冠雪は、スクレーパーによって除去されるが、スクレーパーの届かない取付端部21aには、その冠雪が除去されずに残ることとなる。スクレーパーで除去できない取付端部21aの冠雪は、上記した上横構10bの上部の冠雪と同様に、格子部22aの格子の隙間から密度の低い小さな雪片の状態で早期に落雪させることが可能になるとともに、早期に落雪させることができなかった冠雪を格子によって阻止して下部に落下させないようにすることができる。さらに対向する落雪防止フェンス22の垂直方向に取り付けられたフェンス25により、ケーブル21の取付端部21aからの雪氷塊の落下を完全に防ぐことができるようになる。
なお、ケーブル21の取付端部21aに取り付ける落雪防止フェンスの格子部も、少なくとも縦方向(ケーブル21の伸延する方向と実質的な垂直方向)の格子が形成されたものであればよく、その間隔は50mm〜150mmの範囲に設定することができる。また、横方向(ケーブル21の伸延する方向と実質的な平行方向)の格子の間隔は、50mm以上の任意の長さに設定することができ、縦方向の格子の間隔は、これ以下であることが好ましい。
また、一対の落雪防止フェンス22の垂直方向にフェンス25を取り付けているが、このフェンス25は、必ずしもなくてもよい。ケーブル21の取付端部21aに一対の落雪防止フェンス22を取り付けた場合において、取付端部21aに残った冠雪から成長した雪氷塊は、雪の粘弾性の性質により格子部22aである程度まで抑えることができ、ほぼ落下することがないからである。
(第1実験)
上記の実施の形態で示した落雪防止フェンスの有効性を検証するため、ニールセンローゼ橋、及びローゼ橋またはトラス橋において上弦材の傾斜が(あまり)ない場合を想定した実験装置を用いて実験を行った。図8は、落雪防止フェンスの有効性を検証するための第1実験における実験装置を示す図である。ここで適用した落雪防止フェンス41a、41bは木製であり、格子の太さを20mm、格子の間隔を縦横それぞれ120mmに設定している。また、格子は縦方向に3段設けられており、上記の実施の形態で示した落雪防止フェンス11とほぼ同様の作用をするものとなっている。
図8において、(a)は、落雪防止フェンス41aを取り付け、トラス橋を想定した水勾配のない実験装置4aを、(b)は、落雪防止フェンス41bを取り付け、ニールセンローゼ橋を想定した3°の水勾配を設けた実験装置4bを示す。(c)は、比較として落雪防止フェンスを取り付けていないトラス橋を想定した水勾配のない実験装置4cを、(d)は、比較として落雪防止フェンスを取り付けていないニールセンローゼ橋を想定した3°の水勾配を設けた実験装置4dを示す。
また、これらの実験装置4a〜4dは、橋梁の上弦部に近い条件を得るため、屋外に設置して自然の状態の降雪と外気温を得るものとするとともに、地上からある程度の高さの位置に設置して自然の風が当たるものとした。ここで降雪と融雪とを繰り返していくことにより、それぞれの実験装置の平板42a〜42dの上において、冠雪43a〜43dの量が増していくものとなる。そして、この冠雪43a〜43dの挙動を連続的に観測した。この間に人の手による除雪作業などは一切行っていない。この冠雪43a〜43dの時間の経過に伴う挙動を、図9により説明する。
図9(a)に示すように、実験装置4aでは、風の影響により冠雪43aに力が加わっても、落雪防止フェンス41aの格子によってその力が遮られており、平板42aの外側に格子の間から雪庇の張り出しが生じないことが観測された。また、強風など短期間の強い力で冠雪43aに弾性破壊が生じて形成された小さな雪片44aは、格子の隙間を通り抜けて早期に落雪することも観測された。
これに対して、図9(c)に示すように、落雪防止フェンスのない実験装置4cでは、風の影響により冠雪43cに力が働くと、その力の方向に冠雪43cが滑動することとなる。この滑動により、冠雪43cが平板42cの外側にオーバーハングして、比較的密度の高い雪庇44cが形成されることが観測された。さらなる滑動によりオーバーハング量が大きくなると、大きな塊として雪庇44cが落下することも観測された。また、冠雪43cから溶け出した水が最凍結して、平板42cの端部に比較的大きな氷柱45cが形成されることも観測された。
また、図9(b)に示すように、実験装置4bでは、風の影響の他に平板42bに設けられた勾配により、冠雪43bに対してやや大きな力が働くこととなる。もっとも、勾配の影響により冠雪43bにやや大きな力が働いても、なおも落雪防止フェンス41bの格子によりその力が遮られ、平板42bの外側に格子の間から雪庇の張り出しが生じないことが観測できた。また、実験装置4aの場合と同様に、強風など短期間の強い力で冠雪43bに弾性破壊が生じて形成された小さな雪片44bが、格子の隙間を通り抜けて早期に落雪することも観測された。
これに対して、図9(d)に示すように、落雪防止フェンスのない実験装置4dでは、冠雪43dが一定量以上となると、平板42dに設けられた勾配により働く力によって、次々と冠雪43dがオーバーハングして雪庇44dが形成され、雪片45dとなって平板42dから滑落することが観測された。平板42dから滑落する雪片45dの中には、比較的密度の高いものも含まれていること、或いは比較的大きく、全体としてかなりの重量があるものも含まれていることが観測された。
また、実験装置4a、4bにおいては、平板42a、42bの上に残った冠雪が成長した雪氷塊の下に、厚さが10mmほどの氷板が形成されているのを観測することができた。しかし、この氷板は、落雪防止フェンス41a、42aにより直接的に滑動が阻止され、またその上の冠雪の滑動も阻止されていることによっても滑動が阻止されて、平板42a、42bから落下することがないことが観測できた。
さらに、実験装置4dにおいては、冠雪の落雪量が大きいので氷柱の形成は観測されなかったが、上述したように、実験装置4cにおいては、平板42cの端部に比較的大きな氷柱45cが形成されることが観測された。これに対して、実験装置4a、4bにおいては、落雪防止フェンス41a、41bの格子の近辺に比較的小さな氷柱が形成されるのが観測されただけとなった。
以上の第1実験の実験結果から、橋梁の上弦材に水平または僅かな勾配がある場合には、格子を形成した落雪防止フェンスを橋梁の上弦材に設置した場合には、上弦材の上部への冠雪を、密度の低い小さな雪片で早期に落下させることができるものと推定することができる。また、上弦材から早期に落下せずに密度が高くなり、さらには雪氷塊に成長した冠雪の落下を落雪防止フェンスによって阻止することができるものと推定することができる。さらに、落雪防止フェンスによって巨大な氷柱が形成されるのを阻止することができるものとも推定することができる。
(第2実験)
また、ニールセンローゼ橋、及びローゼ橋またはトラス橋において上弦材に大きな傾斜がある場合を想定した実験装置を用いて実験を行った。図10は、落雪防止フェンスの有効性を検証するための第2実験における実験装置を示す図である。ここで適用した実験装置では、上弦材を想定した平板50に水平面に対して30°の傾斜を付けている。また、異なるタイプのフェンスを取り付けた部分毎に仕切り板50a〜50eで仕切っている。
仕切り板50a〜50eでそれぞれ仕切られた部分が実験装置51〜54となる。実験装置51に取り付けられた落雪防止フェンス61の縦方向の格子の間隔は240mm、実験装置52、53に取り付けられた落雪防止フェンス62の縦方向の格子の間隔は120mm、実験装置54に取り付けられた落雪防止フェンス64の縦方向の格子の間隔は60mmである。落雪防止フェンス61には、最上部と最下部以外に横方向の格子はないが、落雪防止フェンス62、64には、縦方向の格子と同じ間隔で横方向の格子が設けられている。
また、実験装置53には、落雪防止フェンス62に加えて、高さが90mmの金属製の水処理プレート63が取り付けられている。実験装置51〜54に取り付けられた落雪防止フェンス61、62、64の格子は、いずれも金属製で、太さが6mmである。また、落雪防止フェンス61、62、64、及び水処理プレート63は、いずれも平板50と垂直をなすように取り付けられている。
図10に示す実験装置も、橋梁の上弦部に近い条件を得るため、屋外に設置して自然の状態の降雪と外気温を得るものとするとともに、地上からある程度の高さの位置に設置して自然の風が当たるものとした。この実験装置では、平板50に30°という大きな傾斜がついているため、平板50の上の冠雪には、落雪防止フェンス61、62、64の方向に向けて動く力が働くものとなる。そして、平板50の上の冠雪の挙動を連続的に観測した。この間に人の手による除雪作業などは一切行っていない。
図11は、この第2実験における実験結果を一覧にして示すテーブルである。格子間隔が240mmの落雪防止フェンス61を取り付けた実験装置51では、平板50の上に積もった雪が格子の隙間を抜けて落下し、しかも落下するまでの時間が短いことが観測できた。落下する雪塊の大きさは、縦横方向の長さが格子の間隔以内となるが、前後方向にも比較的長く、かなりの大きさがあることが観測できた。また、その雪塊には、最下部に生じた密度の高い氷板を含んでいることが観測できた。さらに、大きなつららが形成されるのが観測できた。
格子間隔が120mmの落雪防止フェンス62のみを取り付けた実験装置52では、平板50の上に積もった雪が格子の隙間を抜けて落下し、しかも落下するまでの時間が比較的短いことが観測できた。落下する雪塊の大きさは、縦方向の長さが格子の間隔以内となるが、前後方向の長さは実験装置51の場合に比べて短くなり、全体として十分に小さいものとなることが観測できた。もっとも、一番下の格子の隙間を抜けて落下する雪塊には、密度の高い氷板が含まれる場合があることが観測できた。さらに、比較的大きなつららが形成されるのが観測できた。
格子間隔が120mmの落雪防止フェンス62と水処理プレート63とを取り付けた実験装置53では、平板50の上に積もった雪のうち水処理プレート63の高さを超える部分が格子の隙間を抜けて落下することが観測できた。落下するまでの時間は、実験装置52に比べても十分に長いものとなることが観測できた。落下する雪塊の大きさは、実験装置52の場合とあまり変わらないが、上層の部分であって密度としては低いものであることが観測できた。最下部の氷板は、全く落下しない。さらに、つららも全く形成されていないことが観測できた。
格子間隔が60mmの落雪防止フェンス64を取り付けた実験装置54では、平板50の上に積もった雪が格子の隙間を抜けて落下することはあったが、落下するまでの時間は、実験装置53と同程度であった。落下する雪塊の大きさは、格子の間隔が小さいことからかなり小さくなり、また、最下部に形成される氷板の落下を阻止できることが観測できた。また、縦方向の格子が多いことから冠雪から溶け出した水に対して多くの流路ができ、つららができても、それほど大きくは成長しないことが観測できた。
なお、縦横の格子間隔が30mmの落雪防止フェンスを取り付けた実験装置を用いて同様の実験を行ったが、格子間隔が60mmの落雪防止フェンス64を取り付けた実験装置54とほぼ同様の実験結果が得られた。また、格子間隔が60mmの落雪防止フェンス64に加えて水処理プレート63も取り付けた実験装置を用いて同様の実験を行ったが、格子間隔が120mmの落雪防止フェンス62と水処理プレート63とを取り付けた実験装置53とほぼ同様の実験結果が得られた。
また、いずれの実験装置においても、平板50の面から落雪防止フェンス61、62、64の上部までの高さ(平板50の面に対して垂直となる方向の長さ)を330mmとしたが、この高さを超える冠雪が観測された場合があり、フェンスの上部を越えて形成された雪庇が落下する場合があった。もっとも、落下した雪庇は、比較的まとまった大きさで落下することもあったが、密度が非常に小さく、落下中に崩壊することも観測できたので、橋梁の上弦材から落下したとしても、その下を通行する車両等に大きな損害を与えるものとならないと考えられる。
落雪防止フェンスの格子の間隔が120mmまでであれば、橋梁の上弦材から落下する雪塊の大きさを十分に小さくすることができることが分かる。もっとも、格子の間隔を小さくし過ぎると小さな雪片すら落下させることができなくなり、滞留した雪によりかなりの重量がフェンスにかかってしまうこととなるが、格子の間隔が30mmあれば、小さな雪片として落下させることができることが分かる。
格子の間隔が30mm乃至60mmであれば、水処理プレートがなくても、氷板の落下を防ぎ、大きなつららが成長するのを抑えることができることが分かる。落雪防止フェンスに加えて、水処理プレートを取り付けることで、氷板の落下を完全に防ぎ、つららの形成も完全に抑制することができることが分かる。以上の実験結果から、格子の間隔が120mm(30mmまでであれば、これより小さくてもよい)の落雪防止フェンスと共に水処理プレートを橋梁の上弦材に取り付けることで、橋梁の下を通行する車両等に損失を与えるような雪氷塊の落下を防ぐことができるものと推定できる。
本発明の実施の形態にかかる落雪防止フェンスを適用したニールセンローゼ橋の部分斜視図である。 図1のニールセンローゼ橋の上弦材に取り付けられている落雪防止フェンスの例を示す図である。 図2の落雪防止フェンスと共に上弦材に取り付けられる水処理プレートの例を示す図である。 落雪防止フェンスの変形例を示す図である。 落雪防止フェンスの変形例を示す図である。 本発明の他の実施の形態にかかる落雪防止フェンスを適用した斜張橋の部分斜視図である。 図6の斜張橋のケーブル端部に取り付けられている落雪防止フェンスを示す図である。 落雪防止フェンスの有効性を検証するための第1実験における実験装置を示す図である。 落雪防止フェンスの有効性を検証するための第1実験における実験結果を説明する図である。 落雪防止フェンスの有効性を検証するための第2実験における実験装置を示す図である。 落雪防止フェンスの有効性を検証するための第2実験における実験結果を示すテーブルである。
符号の説明
10 上弦材
11 落雪防止フェンス
12 水処理プレート
21 ケーブル
22 落雪防止フェンス
31〜36 落雪防止フェンス

Claims (5)

  1. 水平面に対して0°〜45°の傾斜を有する橋梁の上弦材の上面と交差し、該上面の外側に向けて開放状態となっている面に取り付けられ、少なくとも前記上弦材の上面と45°〜90°の角度をなすように30mm〜120mmの間隔で5mm〜20mm太さの格子が形成されるとともに前記上弦材の上面から上部までの長さが100mm〜400mmの範囲に設定された格子部を有するとともに、前記上弦材の上面の該上面と交差する面の側で前記格子部より内側に、上部までの長さが30mm〜100mmの範囲で前記上弦材の上面と45°〜90°の角度をなすプレートが形成されたことを特徴とする落雪防止フェンス。
  2. 前記垂直方向の格子は、30〜60mmの間隔で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の落雪防止フェンス。
  3. 前記格子部には、前記上弦材の上面と前記上面の外側に向けて開放状態となっている面とが交差する辺と実質的な平行方向に30mm〜120mmの間隔で20mm以下の太さの格子がさらに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の落雪防止フェンス。
  4. 前記上弦の上面と交差し、該上面の外側に向けて開放状態となっている面に支柱を固定することにより取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の落雪防止フェンス。
  5. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の落雪防止フェンスを、上弦材の上面と交差し、該上面の外側に向けて開放状態となっている面に取り付けたことを特徴とする橋梁。
JP2004256085A 2003-10-09 2004-09-02 落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁 Expired - Fee Related JP3999220B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004256085A JP3999220B2 (ja) 2003-10-09 2004-09-02 落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003351317 2003-10-09
JP2004256085A JP3999220B2 (ja) 2003-10-09 2004-09-02 落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005133535A JP2005133535A (ja) 2005-05-26
JP3999220B2 true JP3999220B2 (ja) 2007-10-31

Family

ID=34656071

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004256085A Expired - Fee Related JP3999220B2 (ja) 2003-10-09 2004-09-02 落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3999220B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4840743B2 (ja) * 2006-12-26 2011-12-21 勝又金属工業株式会社 雪庇防止部材
RU2534695C1 (ru) * 2013-04-15 2014-12-10 Леонид Николаевич Михайлов Устройство для приема падающих сосулек с крыши жилых домов, балконов, других сооружений и сохранение при этом жизни проходящих под ними пешеходов
CN107587432B (zh) * 2017-09-20 2018-12-21 南京浦口科创投资集团有限公司 一种桥梁建筑设备

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005133535A (ja) 2005-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6502497B2 (ja) 屋根ペーバーロックシステム
JP3999220B2 (ja) 落雪防止フェンス、及びこれを備える橋梁
Qu et al. Mechanisms of the formation of wind-blown sand hazards and the sand control measures in Gobi areas under extremely strong winds along the Lanzhou-Xinjiang high-speed railway
CN201686943U (zh) 双层柔性棚洞
RU90453U1 (ru) Сетчатые террасы для предотвращения схода снежных лавин
CN113931093B (zh) 一种输导式下空芦苇束式沙障
CN216947947U (zh) 一种耗能型边坡防护系统
JPH0492064A (ja) 雪害防止型鉄塔および雪害防止方法
JP3134480U (ja) 雪崩予防柵
CA2499048A1 (en) An avalanche protection system
JP2007063754A (ja) 側溝蓋用グレーチング
RU2583107C1 (ru) Охлаждающая конструкция для земляных сооружений на вечномерзлых грунтах и способ ее возведения
Gnyawali et al. Rockfall Characterization and Structural Protection in the Siddhababa Section of Siddhartha Highway H10, Nepal.
KR20120059876A (ko) 생태조경을 위한 가드레일
JP6895618B2 (ja) 雪崩予防柵用雪庇形成防止体および雪庇の形成防止法
CN113931094B (zh) 一种自适应弹塑性偏转芦苇束式沙障
JP3785621B2 (ja) 防雪柵
Margreth Falling snow and ice from buildings and structures: risk assessment and mitigation–two case studies
KR102580245B1 (ko) 도로 노면의 결빙을 방지하고 먼지바람을 차단하는 도로변 차단벽
CN215714735U (zh) 一种边坡落石缓冲防护系统
KR102580231B1 (ko) 각도 조절이 가능한 방사/방설용 차단판을 갖는 펜스
RU2462550C1 (ru) Противолавинное защитное устройство
JPS6215293Y2 (ja)
JP6322479B2 (ja) 覆道構造物
JP5569979B2 (ja) 雪庇防止具の施工方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060818

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061031

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070403

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070601

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070731

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070808

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100817

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110817

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120817

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130817

Year of fee payment: 6

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130817

Year of fee payment: 6

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130817

Year of fee payment: 6

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130817

Year of fee payment: 6

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130817

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees