JP3998910B2 - 炭化珪素成形体の焼成方法、多孔質炭化珪素部材の製造方法及びセラミックフィルタの製造方法 - Google Patents
炭化珪素成形体の焼成方法、多孔質炭化珪素部材の製造方法及びセラミックフィルタの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのセラミックフィルターを製造する際の炭化珪素成形体の焼成方法、多孔質炭化珪素部材の製造方法、及び、セラミックフィルタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排気ガス中に含有されるパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
この排気ガスを多孔質セラミックを通過させることにより、排気ガス中のパティキュレートを捕集して排気ガスを浄化するセラミックフィルタが種々提案されている。
【0003】
セラミックフィルタは、通常、図3に示すような多孔質炭化珪素部材40が複数個結束されてセラミックフィルタ30を構成している。また、この多孔質炭化珪素部材40は、図4に示すように、長手方向に多数の貫通孔41が並設され、貫通孔41同士を隔てる隔壁43がフィルタとして機能するようになっている。
【0004】
すなわち、多孔質炭化珪素部材40に形成された貫通孔41は、図4(b)に示すように、排気ガスの入り口側又は出口側の端部のいずれかが充填材42により目封じされ、一の貫通孔41に流入した排気ガスは、必ず貫通孔41を隔てる隔壁43を通過した後、他の貫通孔41から流出するようになっており、排気ガスがこの隔壁43を通過する際、パティキュレートが隔壁43部分で捕捉され、排気ガスが浄化される。
このような多孔質炭化珪素部材40は、極めて耐熱性に優れ、再生処理等も容易であるため、種々の大型車両やディーゼルエンジン搭載車両等に使用されている。
【0005】
従来、このような多孔質炭化珪素部材を製造する際には、まず、炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを混合して成形体製造用の混合組成物を調製した後、この混合組成物の押出成形等を行うことにより、炭化珪素成形体を作製する。
【0006】
次に、得られた炭化珪素成形体をヒーター等を用いて乾燥させ、一定の強度を有し、容易に取り扱うことができる炭化珪素成形体の乾燥体を製造する。
【0007】
この乾燥工程の後、炭化珪素成形体を酸素含有雰囲気下において、400〜650℃に加熱し、有機バインダー成分中の溶剤を揮発させるとともに、樹脂成分を分解消失させる脱脂工程を行い、さらに、炭化珪素粉末を不活性ガス雰囲気下、2000〜2200℃に加熱することにより焼結させる焼成工程を経て、多孔質炭化珪素部材が製造される。
【0008】
図5(a)は、従来の炭化珪素成形体の焼成工程を模式的に示した縦断面図であり、(b)は、その部分拡大断面図である。
図5(a)、(b)に示した通り、従来の炭化珪素成形体の焼成工程では、まず、脱脂工程を経た炭化珪素成形体52を、焼成用治具53内に下駄材55を介して複数個載置し、炭化珪素成形体52が載置された焼成用治具53を複数個積み重ねて積層体を形成する。そして、この積層体を支持台57上に載置した後、ベルトコンベア等の移動台54上に搬送し、移動台54の左右方向に設けたヒーター51で炭化珪素成形体52を加熱することにより、多孔質炭化珪素部材を製造していた。
【0009】
しかしながら、このような従来の炭化珪素成形体の焼成工程においては、焼成用治具内に載置した炭化珪素成形体の左右方向から加熱を行っていたたため、炭化珪素成形体の中央付近の温度が両端付近に比べて低くなり、炭化珪素成形体中に温度分布が発生していた。また、支持台をベルトコンベア等の移動台上に載置していたため、焼成炉の底面からの熱が移動台により遮られ、下方に積み重ねた炭化珪素成形体の温度が上方に積み重ねた炭化珪素成形体の温度に比べて低くなり、各炭化珪素成形体の間に温度差が発生していた。
【0010】
上記炭化珪素成形体の焼成工程において、炭化珪素成形体中に温度分布が存在すると、炭化珪素粒子の粒成長が均一に行われず、製造する多孔質炭化珪素部材の平均気孔径に、場所による大きなバラツキが存在してしまうことになる。
このように、平均気孔径に大きなバラツキが存在する多孔質炭化珪素部材は、その曲げ強度にもバラツキが発生し、また、このような多孔質炭化珪素部材を用いたセラミックフィルタは、その曲げ強度にバラツキが発生するとともに、パティキュレートの捕集効率に劣るものであった。
また、上方に積み重ねた炭化珪素成形体と下方に積み重ねた炭化珪素成形体との平均気孔径も異なったものとなるため、一定の平均気孔径及び曲げ強度を有する多孔質炭化珪素部材を製造することが困難であった。
【0011】
また、上述した従来の焼成工程において、移動台の移動速度を落とし、焼成時間を長時間とすることで、炭化珪素成形体に発生する温度分布をある程度低減させることは可能であるが、生産性が極端に低下してしまい、現実的でない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、炭化珪素成形体の焼成工程において、炭化珪素成形体を略均一な温度に加熱することができるため、焼結した多孔質炭化珪素部材の平均気孔径のバラツキが小さく、略均一な曲げ強度を有する多孔質炭化珪素部材を得ることができる炭化珪素成形体の焼成方法、多孔質炭化珪素部材の製造方法、及び、セラミックフィルタの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の炭化珪素成形体の焼成方法は、炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを含む柱状の炭化珪素成形体を脱脂した後、箱型の焼成用治具の内部に載置して焼成する上記炭化珪素成形体の焼成方法であって、脱脂後の炭化珪素成形体を載置した焼成用治具を複数段に積み重ねて積層体を形成するとともに、上記炭化珪素成形体と上下の焼成用治具との間に空間を設け、かつ、上記積層体の上下方向から加熱することを特徴とする。
また、本発明の多孔質炭化珪素部材の製造方法は、炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを含む柱状の炭化珪素成形体を脱脂した後、箱型の焼成用治具の内部に載置して焼成する多孔質炭化珪素部材の製造方法であって、脱脂後の炭化珪素成形体を載置した焼成用治具を複数段に積み重ねて積層体を形成するとともに、上記炭化珪素成形体と上下の焼成用治具との間に空間を設け、かつ、上記積層体の上下方向から加熱することにより、上記炭化珪素成形体を焼成することを特徴とする。
また、本発明のセラミックフィルタの製造方法は、本発明の多孔質炭化珪素部材の製造方法で製造した多孔質炭化珪素部材を複数個結束させることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の炭化珪素成形体の焼成方法、多孔質炭化珪素部材の製造方法、及び、セラミックフィルタの製造方法について、必要により、図1を参照しながら説明する。本発明では、初めに、炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを含む柱状の炭化珪素成形体を作製する。
【0015】
上記炭化珪素成形体の構造としては特に限定されず、例えば、上記従来の技術で説明したような、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のものや、その内部に多数の連通した気孔を有する柱状のもの等を挙げることができる。また、その形状は特に限定されず、例えば、円柱状、楕円柱状、角柱状等のものを挙げることができる。
なお、以下の説明においては、炭化珪素成形体の形状は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のものを用いることとする。
【0016】
上記炭化珪素粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成過程で収縮が少ないものが好ましく、例えば、0.3〜50μm程度の平均粒子径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μm程度の平均粒子径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。
【0017】
上記バインダーとしては特に限定されないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記バインダーの配合量は、通常、炭化珪素粉末100重量部に対して、1〜10重量部程度が好ましい。
【0018】
上記分散媒液としては特に限定されないが、例えば、ベンゼン等の有機溶媒;メタノール等のアルコール、水等を挙げることができる。
上記分散媒液は、混合組成物の粘度が一定範囲内となるように、適量配合される。
【0019】
これら炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液等とは、アトライター等で混合された後、ニーダー等で充分に混練され、押し出し成形法等により柱状の炭化珪素成形体が作製される。
【0020】
この後、上記工程により作製された炭化珪素成形体の脱脂を行う。
上記炭化珪素成形体の脱脂工程では、通常、上記炭化珪素成形体を脱脂用治具に載置した後、脱脂炉に搬入し、酸素含有雰囲気下、400〜650℃に加熱する。
これにより、バインダー等が揮散するとともに、分解、消失し、ほぼ炭化珪素粉末のみが残留する。
【0021】
次に、脱脂した炭化珪素成形体12を、焼成用治具13の内部に載置し、焼成用治具13を複数段積み重ねて積層体を形成するとともに、該積層体の上下方向からヒーター11で加熱することにより炭化珪素成形体12を焼成する。この焼成工程では、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、脱脂した炭化珪素成形体12を2000〜2200℃で加熱し、炭化珪素粉末を焼結させて多孔質炭化珪素部材を製造する。
脱脂後の炭化珪素成形体は、機械的強度が強く、壊れ易いため、焼成用治具13を脱脂用治具を兼ねたものとし、脱脂工程の後、脱脂用治具を兼ねた焼成用治具13を複数段積み重ねて積層体を形成してもよい。
【0022】
本発明において、積層体を加熱する方向はその上下方向からである。
このように、積層体を上下方向から加熱することで、積層体内に載置した炭化珪素成形体12を略均一な温度に加熱することができる。また、上下に設けたヒーター11の発熱量を制御することで、上方に積み重ねた炭化珪素成形体12と下方に積み重ねた炭化珪素成形体12との間に生じる温度分布を小さくすることができる。
【0023】
また、本発明では、上記積層体を支持台17上に載置し、マッフル14中を移動しながらヒーター11により上記積層体を加熱するが、その際、上記積層体及び支持台17を移動させる手段としては、ローラー(図示せず)を用いることが好ましい。下に設けたヒーター11で上記積層体を加熱する際、ローラーによる遮蔽面積が小さいため、ヒーター11から放射された熱が積層体の炭化珪素成形体に届き易いからである。
しかしながら、通常、上記ローラーを用いて上記積層体の移動を行った場合であっても、下方の炭化珪素成形体の温度は上方の炭化珪素成形体に比べて若干低くなる。従って、上下の炭化珪素成形体間で温度分布が発生することを防止するために、上記積層体の下方に設けたヒーターの発熱量を上方に設けたヒーターの発熱量よりも若干多くすることが望ましい。
【0024】
本発明では、炭化珪素成形体12を焼成する際に、炭化珪素成形体12と上下の焼成用治具13との間に空間を設ける。
これは、以下に挙げるような理由による。
【0025】
即ち、通常、上記焼成用治具としては、カーボン製のものが用いられるが、炭化珪素成形体は、その製造条件に起因して炭化珪素粉末中に約3%程度のSiO2 を含有している。従って、焼成工程において、炭化珪素成形体から上記SiO2 が昇華して放出され、その一部がSiOガスとなり、このSiOガスと焼成用治具11を構成する炭素との下記反応式(1);
【0026】
SiO+2C→SiC+CO・・・(1)
【0027】
に示す反応が進行する。
その結果、炭化珪素からなる粗大粒子が焼成用治具表面に形成され、焼成用治具表面の平滑性が失われてしまうとともに、炭化珪素成形体と焼成用治具とのくっつき等が生じ、得られる多孔質炭化珪素部材に欠けやピンホールを発生させ、歩留まりが低減する原因となる。
しかしながら、炭化珪素成形体12と上下の焼成用治具13との間に空間を設けることにより、炭化珪素成形体と焼成用治具とのくっつき等が発生することはない。また、この空間をガス等が流通しやすくなるため、発生したSiO等のガスも拡散し易く、焼結もスムーズに進行する。
【0028】
上記焼成用治具と上記炭化珪素成形体との間に空間を設ける方法としては特に限定されないが、例えば、図1(b)に示したような、炭化珪素成形体12と焼成用治具13との間に下駄材15を挿入する方法が挙げられる。
【0029】
下駄材15は、焼成時の高温に耐え得る耐熱性が必要であることから、そのような耐熱性を有するセラミック材料であることが好ましい。
【0030】
上記セラミック材料としては、比較的熱伝導率の高いものが好ましく、例えば、カーボン、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0031】
このなかで上記炭化珪素は、SiOガスと全く反応せず、製造される多孔質炭化珪素部材と材料が同じであるため好ましいが、この炭化珪素は硬すぎるため上記炭化珪素成形体を傷付けやすい。従って、これらの事項を総合的に勘案すると、カーボンがより好ましい。また、カーボンであれば、その形態は特に限定されないが、炭化珪素成形体を傷付けにくい、フェルト(布)状のものや糸状のものを組み上げたもの等が好ましい。
【0032】
下駄材15の厚さは、炭化珪素成形体12の下からの熱伝導を考慮すると、1〜10mmの範囲が好ましい。具体的な厚さは、実際に用いる下駄材15の熱伝導率を考慮して適宜調整すればよい。
【0033】
上記下駄材の具体的な形状としては特に限定されないが、炭化珪素成形体12を載置した際の安定性の面から四角柱状が好ましい。
また、炭化珪素成形体の下に配置する下駄材の数としては、炭化珪素成形体と焼成用治具との間に空間を設けることができるならば特に限定されず、炭化珪素成形体の両端に2本載置しても良いし、それ以上載置しても良い。
【0034】
上記焼成用治具は、上述した通り、通常、カーボン製のものが使用され、その形状としては、図2に示した通り、箱型であることが好ましい。内部に載置した炭化珪素成形体を保温性に優れるとともに、内部の温度を均一化させることができるからである。
なお、図2は、焼成用治具13内に炭化珪素成形体12を下駄材(図示せず)を介して複数本載置した斜視図である。
【0035】
このような焼成用治具13を積み重ねることで、その内部に載置した炭化珪素成形体12と、その上方に積み重ねた焼結用治具13の底面との間に空間を設けることができる。
なお、炭化珪素成形体12の上面に空間を設ける理由は、上述した下駄材15において説明した理由と同様である。
【0036】
炭化珪素成形体12と、上方の焼成用治具13との間の空間は、上述した下駄材15により形成される空間と同程度であることが好ましい。
また、最上層の焼成用治具の上面は、カーボン製の板で覆われていることが好ましい。炭化珪素成形体の保温効率を向上させるとともに、焼成中にスス等の落下物が炭化珪素成形体に付着することを防止するためである。
【0037】
このような焼成用治具13を積み重ねる個数としては特に限定されないが、4〜10段であることが好ましい。4段未満であると充分に炭化珪素成形体を焼成することはできるが、生産性が低下してしまう。一方、10段を超えると中央付近の炭化珪素成形体を充分に焼成することが困難となり、また、装置を大型化する必要が生じ、効率的な製造が困難となる。
【0038】
なお、脱脂工程から焼成工程に至る一連の工程では、上述したように、焼成用治具上に下駄材を介して炭化珪素成形体を載せ、そのまま、脱脂工程及び焼成工程を行うことが好ましい。脱脂工程及び焼成工程を効率的に行うことができ、また、載せ代え等において、炭化珪素成形体が傷つくのを防止することができるからである。
【0039】
このように本発明の炭化珪素成形体の焼成方法を用いることにより、炭化珪素成形体内を略均一な温度に加熱することができ、焼結した多孔質炭化珪素部材の平均気孔径のバラツキが小さく、略均一な曲げ強度を有する多孔質炭化珪素部材を得ることができる。また、炭化珪素成形体を複数段に積み重ねて焼成を行っても、各段における温度のバラツキも小さなものとすることができるため、一定の平均気孔径及び曲げ強度を有する多孔質炭化珪素部材を安定して製造することができる。
また、炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを含む柱状の炭化珪素成形体を脱脂した後、焼成用治具上に載置して焼成する多孔質炭化珪素部材の製造方法であって、脱脂後の炭化珪素成形体を載置した焼成用治具を複数段に積み重ねて積層体を形成するとともに、上記炭化珪素成形体と上下の焼成用治具との間に空間を設け、かつ、上記積層体の上下方向から加熱することにより、上記炭化珪素成形体を焼成することを特徴とする多孔質炭化珪素部材の製造方法も本発明の一つである。
さらに、本発明の多孔質炭化珪素部材の製造方法で製造した多孔質炭化珪素部材を複数個結束させるセラミックフィルタの製造方法もまた本発明の一つである。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
平均粒子径30μmのα型炭化珪素粉末70重量部、平均粒子径0.28μmのβ型炭化珪素粉末30重量部、メチルセルロース5重量部、分散剤4重量部、水20重量部を配合して均一に混合することにより、原料の混合組成物を調製した。
この混合組成物を押出成形機に充填し、押出速度2cm/分にて図4に示した多孔質炭化珪素部材40と同形状の炭化珪素成形体を作製した。この炭化珪素成形体は、その大きさが33mm×33mm×300mmで、貫通孔の数が31個/cm2 、隔壁の厚さが0.35mmであった。
【0042】
次に、ポーラスカーボン(東海カーボン社製 G100)からなり、その一主面が開口した箱型の焼成用治具(45mm×350mm×430mm)内に、カーボンフェルト(3mm×5mm×410mm、熱伝導率0.24W/m・K)からなる下駄材を載置し、この上に乾燥した炭化珪素成形体を10個載置した後、5%の酸素濃度を有する空気と窒素との混合ガス雰囲気下、450℃で加熱することにより脱脂工程を行った。
【0043】
次に、脱脂工程を経た炭化珪素成形体載置した焼成用治具を4段積み重ね、最上層の焼成用治具の上にポーラスカーボンからなる板(10mm×360mm×450mm)を載置して蓋をし、積層体を形成した。
そして、上記積層体を2列に並べて焼成装置に搬入し、窒素ガス雰囲気下、上記積層体をその下方に設けたローラーで移動させながら、上記焼成用治具の上下方向から、最高温度が2200℃、その温度における加熱時間が3時間となるように加熱することにより炭化珪素成形体の焼成を行い、多孔質炭化珪素部材を製造した(図1参照)。
得られた多孔質炭化珪素部材について、以下の方法で物性を調べた。
その結果を下記表1に示す。
【0044】
評価方法
(1)平均気孔径の差
水銀ポロシメータにより、水銀を気孔中に充填し、圧力と充填量との相関検量線により、各段における多孔質炭化珪素部材の両端付近と中央付近との平均気孔径を測定し、これらの値から、上下方向での平均気孔径の差、及び、左右方向での平均気孔径の差の最大値を測定した。
(2)平均気孔径のバラツキ
上記(1)で測定した各多孔質炭化珪素部材の平均気孔径の値から、標準偏差を算出し、平均気孔径のバラツキを評価した。
(3)温度差
炭化珪素成形体を焼成する際の積層体における上下及び左右方向での温度差を、上記(1)で測定した平均気孔径と、予め測定しておいた多孔質炭化珪素部材の平均気孔径と温度とに関する検量線とから算出した。すなわち、上記(1)で測定した平均気孔径から、各部分における温度を求め、このデータをもとにして温度差を算出した。
(4)曲げ強度
曲げ強度試験機を用い、得られた多孔質炭化珪素部材の3点曲げ試験を行い、曲げ強度の平均値を測定し、各曲げ強度の値から標準偏差を算出し、曲げ強度のバラツキを評価した。
【0045】
実施例2
焼成用治具を5段積み重ねたほかは、実施例1と同様にして多孔質炭化珪素部材を製造した。
【0046】
本実施例2で得られた多孔質炭化珪素部材も実施例1と同様にして物性を調べた。
その結果を下記表1に示す。
【0047】
比較例1
実施例1で形成した焼成用治具を4段積み重ねた積層体を、ベルトコンベア上に直接載置して焼成装置に1列で搬入し、上記積層体の左右方向からヒーターで加熱し、焼成を行ったほかは、実施例と同様にして多孔質炭化珪素部材を製造した(図5参照)。
本比較例1で得られた多孔質炭化珪素部材も実施例1と同様にして物性を調べた。但し、本比較例1においては、上記積層体を1列で焼成処理を行ったため、平均気孔径の左右方向の差は、1つの多孔質炭化珪素部材の左右方向における平均気孔径の差の最大値を測定した。
その結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1及び実施例2に係る多孔質炭化珪素部材は、その上下及び左右方向に関する平均気孔径の差や平均気孔径のバラツキは小さく、焼成時の上下及び左右方向での温度差も小さい。また、その曲げ強度も高く、バラツキも小さなものであり、充分に優れた特性を有していた。また、上記積層体を2列に並べて同時に焼成処理を行うことができるため、その生産性に優れたものであった。
【0050】
一方、比較例1に係る多孔質炭化珪素部材は、その上下方向における平均気孔径の差、平均気孔径のバラツキ、及び、焼成時の温度差は大きく、その曲げ強度のバラツキも大きなものであった。
また、比較例1に係る多孔質炭化珪素部材における左右方向に関する平均気孔径の差、平均気孔径のバラツキ、及び、焼成時の温度差は、実施例1、2の場合と比較して若干優れるものとなっているが、余り大きな差はなかった。
比較例1に係る多孔質炭化珪素部材が、左右方向の特性に関して若干優れているのは、積層体を1列にして焼成していることに起因している。すなわち、通常、積層体を1列にした場合には、2列にした場合と比較して、その幅が半分となり、熱容量も半分となるため、焼成時の温度差が大きく改善されると考えられるが、比較例1と実施例1、2とを比較すると、比較例1の場合が若干優れているのみであり、実施例2と比較例1とを比べると、殆ど差がない。従って、同じ条件(すなわち、積層体を2列にした場合)で比べると、実施例1、2の方がはるかに平均気孔径のバラツキ(温度差)が少なくなると考えられる。
なお、この実施例1、2に係る多孔質炭化珪素部材の左右方向の気孔径の差は、充分に許容範囲内のものであった。
【0051】
以上のように、積層体を上下方向から加熱する実施例1、2の加熱方法では、積層体の上下の温度分布が大きく改善されるとともに、積層体の左右方向の温度分布のばらつきも小さくなり、得られる多孔質炭化珪素部材の気孔径のばらつきや強度のばらつきが小さくなる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の炭化珪素成形体の焼成方法は、上述の通りであるので、その平均気孔径のバラツキが小さく、略均一な曲げ強度を有する多孔質炭化珪素部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の炭化珪素成形体の焼成方法の一例を模式的に示した縦断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図2】本発明の炭化珪素成形体の焼成方法において使用する焼成用治具の一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】セラミック構造体を模式的に示した斜視図である。
【図4】(a)は、セラミック構造体を構成する多孔質炭化珪素部材を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)に示した多孔質炭化珪素部材のA−A線断面図である。
【図5】(a)は、従来の炭化珪素成形体の焼成方法の一例を模式的に示した縦断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【符号の説明】
11、51 ヒーター
12、52 炭化珪素成形体
13、53 焼成用治具
14 マッフル
15、55 下駄材
17、57 支持台
54 コンベアベルト
Claims (11)
- 炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを含む柱状の炭化珪素成形体を脱脂した後、箱型の焼成用治具の内部に載置して焼成する前記炭化珪素成形体の焼成方法であって、
脱脂後の炭化珪素成形体を載置した焼成用治具を複数段に積み重ねて積層体を形成するとともに、
前記炭化珪素成形体と上下の焼成用治具との間に空間を設け、かつ、前記積層体の上下方向から加熱することを特徴とする炭化珪素成形体の焼成方法。 - 前記脱脂を酸素含有雰囲気下で行い、前記焼成を不活性ガス雰囲気下で行う請求項1に記載の炭化珪素成形体の焼成方法。
- 前記焼成により前記炭化珪素粉末が焼結する請求項1又は2に記載の炭化珪素成形体の焼成方法。
- 積層体の下方からの熱量が、積層体の上方からの熱量よりも多い請求項1〜3のいずれかに記載の炭化珪素成形体の焼成方法。
- 前記空間は1〜10mmである請求項1〜4のいずれかに記載の炭化珪素成形体の焼成方法。
- 前記空間はセラミック材料からなる下駄材を挿入することによって設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の炭化珪素成形体の焼成方法。
- 炭化珪素粉末とバインダーと分散媒液とを含む柱状の炭化珪素成形体を脱脂した後、箱型の焼成用治具の内部に載置して焼成する多孔質炭化珪素部材の製造方法であって、
脱脂後の炭化珪素成形体を載置した焼成用治具を複数段に積み重ねて積層体を形成するとともに、
前記炭化珪素成形体と上下の焼成用治具との間に空間を設け、かつ、前記積層体の上下方向から加熱することにより、前記炭化珪素成形体を焼成することを特徴とする多孔質炭化珪素部材の製造方法。 - 前記積層体を移動させながら、加熱する請求項7に記載の多孔質炭化珪素部材の製造方法。
- 前記空間は1〜10mmである請求項7又は8に記載の多孔質炭化珪素部材の製造方法。
- 前記空間はセラミック材料からなる下駄材を挿入することによって設けられている請求項7〜9のいずれか1に記載の多孔質炭化珪素部材の製造方法。
- 請求項7〜10のいずれか1に記載の製造方法で製造した多孔質炭化珪素部材を複数個結束させることを特徴とするセラミックフィルタの製造方法。
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