JP3998629B2 - コンロッド分解治具 - Google Patents
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Description
本発明は、車両用エンジンなどのコンロッドを分解する治具に関する。
従来、例えば車両用エンジンを組み立てる工程において、コンロッドの大端部をクランクシャフトに連結するにあたり、仮結合したコンロッドのロッド部とキャップ部を分解するため、人が手作業によりインパクトレンチを使用し、左右一対のボルトを弛めた後、クランクシャフト取付面にモリブデン等の潤滑剤の塗布作業を行うようにしている。
一方、クランクシャフトを軸受けするための軸受キャップを分割する装置として、軸受キャップの止め付けボルトを弛めるボルト弛め手段と、軸受キャップを複数の保持部で保持する保持手段と、軸受キャップを上方に引き抜く引抜き手段を設け、引抜き手段として、複数の保持部に連結するそれぞれのドライブ軸と、このドライブ軸を駆動する回転駆動部材を設け、各ドライブ軸にチェーンを架け渡して各保持部の上動を同期作動させることにより、軸受キャップの姿勢を傾けることなく取外しできるようにした技術が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
特開平5−228753号公報
ところが、従来のように仮結合されるコンロッドを分解するにあたり、インパクトレンチで手作業による取外し作業を行った後、クランクシャフトの取付面に潤滑剤を塗布しようとすると、インパクトレンチと塗布ガンの持ち替え作業が連続して発生することになり、手間と労力がかかると同時に、作業の効率性をあげることができなかった。
そこで本発明は、仮結合されるコンロッドを分解するにあたり、効率良く作業できるようにするとともに、作業者の手間や労力を省くことができるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため本発明は、ロッド部とキャップ部に分割され且つ一対の連結ボルトにより仮結合されるコンロッドを分解する治具において、前記コンロッドを位置決めするための位置決め機構と、前記連結ボルトを弛めるための一対のインパクトレンチと、前記ロッド部の大端部側内周面またはキャップ部の内周面の少なくとも一方に向けて潤滑剤を吐出する塗布機構を設け、前記インパクトレンチとして、エア駆動によって前進し且つソケット部が所定の圧力を受けると弛め回転を開始するプッシュスタート式のものを採用するとともに、インパクトレンチを前進させる際のエアの排出ガスを前記塗布機構に送り込むことで、該塗布機構が潤滑剤を吐出するようにした。
そして、位置決め機構によりコンロッドを位置決めした後、インパクトレンチをエア駆動により前進させた際、先端のソケット部がボルトの頭部に押し付けられるようにし、この時点で弛め回転が開始されるようにするとともに、インパクトレンチを前進させる際のエアの排出ガスを塗布機構に送り込んで、自動的に潤滑剤がロッド部の大端部側内周面またはキャップ部の内周面の少なくとも一方に向けて吐出されるようにすれば、分解から潤滑剤の塗布までの一連の作業が自動的に効率良く行われるようになる。
ここで、プッシュスタート式のインパクトレンチとは、例えば一般に広く知られているプッシュスタート型インパクトレンチを使用することができ、また、潤滑剤の塗布は、ロッド部の大端部側内周面またはキャップ部の内周面のいずれか一方だけで良いが、両方に塗布するようにしても良い。
また本発明では、前記各インパクトレンチを、後方に向けてそれぞれ独立にストローク移動可能にし、各インパクトレンチが所定ストロークだけ後退するとそれぞれのインパクトレンチの回転が停止するようにした。
このように、各インパクトレンチを独立に後方に向けてストローク移動可能にすれば、両者の弛めの速度やタイミングに差が生じた場合でも、それを吸収することができるようになり、効率的に分解できる。
また本発明では、前記それぞれのインパクトレンチの横間隔を調整可能にした。
このように各インパクトレンチの横間隔を調整可能にすれば、機種の異なるコンロッドにも対応できるようになり、汎用性が高まる。
ロッド部とキャップ部が仮結合されるコンロッドを分解する治具において、コンロッド位置決め用の位置決め機構と、ボルト弛め用の一対のインパクトレンチと、潤滑剤吐出用の塗布機構を設け、インパクトレンチとして、エア駆動によって前進し且つソケット部が所定の圧力を受けると弛めを開始するプッシュスタート式のものを採用するとともに、インパクトレンチを前進させる際のエアの排出ガスを塗布機構に送り込んで潤滑剤を吐出するようにすることで、分解から潤滑剤の塗布までの一連の作業が自動的に効率良く行われるようになる。
そして、各インパクトレンチを、後方に向けてそれぞれ独立にストローク移動可能にし、各インパクトレンチが所定ストロークだけ後退するとそれぞれのインパクトレンチの回転が停止するようにすれば、両者の弛めの速度やタイミングに差が生じた場合でも、それを吸収できるようになり、効率的に分解できる。
また、それぞれのインパクトレンチの横間隔を調整可能にすれば、機種の異なるコンロッドにも対応できるようになって汎用性が高まる。
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係るコンロッド分解治具を斜め上方から見た斜視図、図2は同平面図、図3はスライド体部分を側面から見た部分図、図4は塗布機構部分を斜め上方から見た部分図、図5はコンロッドの説明図である。
本発明に係るコンロッド分解治具は、図5に示すように、ロッド部Crとキャップ部Ccが左右一対の連結ボルトbで仮結合されたコンロッドCを分解する作業と、大端部側のクランクシャフト取付面にモリブデン等の潤滑剤を塗布する作業を効率良く、しかも短時間に手間をかけないで行うことができるようにされ、仮結合されたコンロッドCを所定の箇所に位置決めするだけで、分解と塗布作業が自動的に行われるようにされている。
すなわち、図1乃至図3に示すように、本コンロッド分解治具1は、基台2に対して前後方向(図1の左右方向)に摺動自在なスライド台4と、このスライド台4上に設けられ、且つスライド台4に対して前後方向に独立して摺動自在な一対のインパクトレンチ6a、6bと、ピストンPとコンロッドCの結合体Wを位置決めするための位置決め機構7と、コンロッドCの大端部側のクランクシャフト取付面に潤滑剤を塗布するための塗布機構8を備えている。
前記スライド台4は、基台2上に設けられる第1レール3(図3)に摺動自在なスライド部材9を介して配設されるとともに、図2に示すように、左右のスライド体4a、4bに分割され、またこのスライド台4には、左右のスライド体4a、4bの横間隔を調整するための調整ノブ13が設けられている。
また、スライド台4の基端側には、基台2に取り付けられる不図示のシリンダが配設されており、このシリンダにエア供給ホースx(図3)を通して加圧エアを供給することによって左右のスライド体4a、4bが一体となって前進可能とされ、その際、シリンダに接続されるエア排出ホースy(図3)から排気エアが排出されるようになっている。そしてこの排気エアは、後ほど詳述する塗布機構8に送給可能にされている。
前記インパクトレンチ6a、6bは、各スライド体4a、4b上に配設されるそれぞれの第2レール5(図3)に対して摺動自在なそれぞれの受台10上に設けられており、それぞれのインパクトレンチ6a、6bが各スライド体4a、4bに対して独立して摺動可能にされている。そして、各インパクトレンチ6a、6bの横間隔は、前記調整ノブ13を調整することにより、各スライド体4a、4bと一体となって調整されるようになっている。
また、それぞれのインパクトレンチ6a、6bの先端部には、ソケット部11が設けられるとともに、基端部にはそれぞれ定荷重バネ12が連結されており、この定荷重バネ12によって、インパクトレンチ6a、6bの後退のタイミングに差が生じてもそれを吸収できるようにされるとともに、後退ストローク量に程度に拘わらず、一定の復元荷重がかかるようにされている。
そして、これらインパクトレンチ6a、6bは、ソケット部11が前方から所定の圧力を受けると、自動的に弛め方向に回転を開始するプッシュスタート式にされており、また、一定ストローク後退すると、回転が停止するようにされている。
前記位置決め機構7は、図4にも示すように、基台2に取り付けられ且つ位置決めピン14を立設せしめるためのピン受台15と、コンロッドCの大端部下面を支持するための大端部受台16を備えており、前記ピン受台15には、コンロッドCの種類等に対応して複数箇所に受け孔15hが設けられている。
そして、位置決めピン14の下端部は、受け孔15hに嵌合可能な径とされ、上端部は、ピストンピンの径と略同一の径とされている。
また、大端部受台16上には、前記塗布機構8の吐出ノズル17を設けており、コンロッドCの大端部を大端部受台16に載置した際、吐出ノズル17がクランクシャフト取付孔内に位置するとともに、コンロッドCのキャップ部Cc内面に向けて潤滑剤を吹き付けることができるようにされている。
そして、この吐出ノズル17には、前記エア排出ホースyに接続されるバルブが設けられており、エア供給ホースxから供給されるエア圧によってスライド台4が前進する際、シリンダから排出される排気エアを利用して吐出ノズル17からモリブデンなどの潤滑剤を吹き出すようにしている。そしてこの潤滑剤の吐出時間はタイマーによって調整できるようにされている。
因みに、この潤滑剤は、組み付けられたエンジンにおいて、最初のエンジン始動時に、正規の潤滑ラインを介してクランクシャフト取付面にオイルが行き渡るようになるまでの初期段階の潤滑を担うものである。
以上のようなコンロッド分解治具の作用等について説明する。
まず、スライド台4が後退した原位置の状態において、位置決め機構7にコンロッドCとピストンPを組み合わせた結合体Wを位置決めする。すなわち、ピン受台15の所定の箇所の受け孔15hに位置決めピン14の下端部を嵌合させた状態で、位置決めピン14の上端部をピストンピン挿入孔に挿入させ、コンロッドCの大端部を大端部受台16上に載置する。
このとき、コンロッドCのロッド部Crとキャップ部Ccを結合する左右一対の連結ボルトbが、インパクトレンチ6a、6bの軸線上でソケット部11の前方延長線上に位置するようにされている。
結合体Wが位置決めされると、エア供給ホースxを通してシリンダに加圧エアを供給し、スライド台4を前進させる。すると、インパクトレンチ6a、6bが同時に前進して、そのソケット部11が連結ボルトbの頭に押し付けられるように嵌合すると同時に、所定の圧力を受けて自動的に弛み方向に回転を始める。
またこれと同時に、エア排出ホースyを通してシリンダから排出される排気エアが塗布機構8のバルブに送られ、吐出ノズル17からモリブデンなどの潤滑剤がタイマーで調整された時間だけキャップ部Cc内面に吹き付けられる。
そして、各インパクトレンチ6a、6bは連結ボルトbの弛めの程度に応じて後退し、締結が外れる位置まで後退すると、回転が自動的に停止する。この際、各インパクトレンチ6a、6bの後退のタイミングや速度に差があってもそれぞれの定荷重バネ12によって吸収される。
そして、両方のインパクトレンチ6a、6bの回転が停止した時点で、結合体Wを取り外すと、インパクトレンチ6a、6bは定荷重バネ12によって元の位置に復元する。
以上のような要領によって仮結合したコンロッドCのロッド部Crとキャップ部Ccの分解作業が容易になされると同時に、潤滑剤の塗布作業も自動的に行われるようになり、作業者の労力削減が図られると同時に、作業の効率化が図れるようになる。
ちなみに、コンロッドCの種類が異なるときは、調整ノブ13によってインパクトレンチ6a、6bの横間隔を調整すると同時に、ピン受台15に差し込む位置決めピン14の受け孔15hの位置を変更すれば、複数機種にも対応することができる。
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
一対の連結ボルトで仮結合されるコンロッドを分解するにあたり、位置決め機構によってコンロッドを位置決めした後、プッシュスタート式の一対のインパクトレンチをエア圧で前進させてボルトの弛め回転を開始するとともに、シリンダからの排気エアによってクランクシャフト取付面に潤滑剤を吐出するため、分解から潤滑剤塗布作業に至るまでの一連の作業が効率的に行われるようになり、作業者の労力が削減される。
1…コンロッド分解治具、4…スライド台、6a、6b…インパクトレンチ、7…位置決め機構、8…塗布機構、11…ソケット部、13…調整ノブ、C…コンロッド、Cr…ロッド部、Cc…キャップ部。
Claims (3)
- ロッド部とキャップ部に分割され且つ一対の連結ボルトにより仮結合されるコンロッドを分解する治具であって、前記コンロッドを位置決めするための位置決め機構と、前記連結ボルトを弛めるための一対のインパクトレンチと、前記ロッド部の大端部側内周面またはキャップ部の内周面の少なくとも一方に向けて潤滑剤を吐出する塗布機構を備え、前記インパクトレンチはエア駆動によって前進し且つソケット部が所定の圧力を受けると弛め回転を開始するプッシュスタート式のものが採用されるとともに、前記インパクトレンチを前進させる際のエアの排出ガスを前記塗布機構に送り込むことで、該塗布機構が潤滑剤を吐出するようにしたことを特徴とするコンロッド分解治具。
- 前記各インパクトレンチは、後方に向けてそれぞれ独立にストローク移動可能にされ、各インパクトレンチが所定ストロークだけ後退するとそれぞれのインパクトレンチの回転が停止するようにされることを特徴とする請求項1に記載のコンロッド分解治具。
- 前記それぞれのインパクトレンチの横間隔は、調整可能にされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンロッド分解治具。
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