JP3998519B2 - 化粧品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚、毛髪などに用いる化粧品に関し、さらに詳しくは、生分解性ポリエステル樹脂からなる微粒子を用いる化粧品に関する。
【0002】
【従来の技術】
化粧品の皮膚への感触(しっとり感やすべすべ感など)や塗布時の滑り性の向上のための、あるいは毛髪化粧品の使用時の滑り性や感触を向上させるための化粧品原料として、架橋シリコーン粒子、ナイロン粒子、ビニルまたはアクリルのラジカルポリマー粒子などの、ポリマー微粒子を、前記化粧品に配合することは周知である。この種の化粧品としては、三次元的な網状の構造を有する架橋シリコーン粒子を含有する化粧品(特開平1−165509号公報および特開平1−190757号公報参照)や、シリコーン架橋物などからなるシリコーンオイルエマルジョンを含有する化粧品(特開平3−79669号公報参照)や、特定の大きさの略球形状のポリアミド粒子を含有する化粧品(特開平7−300410号公報参照)や、特定のポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のポリマー微粒子を含有する化粧品(特表平10−502389号公報)などが知られている。
【0003】
しかし、これらのポリマー微粒子は、主に石油原料から製造された物であり、皮膚への安全性は確認されているものの、より安全なものを使いたいという消費者のニーズには応えられていない。また、これらのポリマー微粒子は、自然界中では容易に分解せず、化粧品として使用された後に自然界に放出されると、長時間ゴミや堆積物として存在したり、焼却処理時にも炉への負荷が大きいなど、環境への負荷が大きい。
【0004】
このため、環境への負荷が少ないという特長を有する生分解性樹脂が注目されている。生分解性樹脂は、物性の面で制約はあるものの、これまでシート、フィルム、繊維、スパンボンド等に加工され、実用化されてきている。生分解性樹脂の粒子形状への加工としては、これまでに、特開平5−170965号公報等に示される生分解樹脂の発泡体や、特開平9−78494号公報に示される生分解性樹脂の水分散体、エマルションなどの検討がなされ、石油原料から製造した樹脂の代替品として提案されている。特に、生体内などで薬剤を徐放するいわゆるドラッグデリバリー用途のカプセルとしては、特公平1−5005号公報などにあるように、古くから研究・実用化がなされている。
【0005】
生分解性樹脂の水分散体については、これまでにいくつか提案がなされている。特開平9−77910号公報等には澱粉誘導体が、WO9704036号にはポリヒドロキシアルカノエートが、「コロイドポリマージャーナル」273巻、501頁(1995年)にはポリカプロラクトンが、特開平11−92712号公報には脂肪族ジカルボン酸とグリコール類とから構成される脂肪族ポリエステルが、それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの生分解性樹脂は、いずれも融点ないし分解温度が低いため、化粧品として使用されるときには温度範囲が制限され、夏季などにおける高温での保存時等において問題が生じやすい。また、エマルション形態から乾燥により微粒子を取り出した場合には、球形にすることは出来ても機械的強度に劣るものしか得られない。このため、この微粒子は、化粧品に添加した場合に球形から変形しやすく、したがってその転がり性能が低下しやすいため、感触向上材や肌等への塗布時の滑り性向上材としての用途には不向きである。
【0007】
ところが、生分解性樹脂のなかで、ポリ乳酸は、融点ないし軟化点が約100〜170℃と比較的高く、また、耐水性にも優れるため、化粧品の原料の微粒子として好適である。
【0008】
ポリ乳酸系水分散体に関しては、従来より薬剤徐放を目的としたマイクロカプセル化の研究が盛んに行われている。例えば、特開昭63−122620号公報、特開平5−58882号公報、特開平6−72863号公報、特開平9−110678号公報には、乳酸系ポリマーを用いたマイクロカプセル化技術が開示されている。これらにおいては、乳酸系ポリマーを有機溶剤に溶解し、これに薬物を溶解あるいは分散させた後、界面活性剤を含有する水溶液中に滴下または混合し、攪拌して転相乳化させることにより、水中油(O/W)型乳剤を形成する方法が採用されている。しかし、有機溶剤を大量に用いるため、溶剤の完全な除去が困難であったり、また溶剤留去および回収の工程が完全密閉系でないため周辺環境への影響が無視できない等の問題がある。また、この方法では、化粧品にとって有用な1μmを超える比較的大きな粒子を得ることが困難である。
【0009】
また、ポリ乳酸系樹脂の微粒子をエマルション(水溶液)の形態に作製する方法も提案されているが(特願2000−370106号)、この場合もエマルション形態から乾燥により微粒子を取り出した場合には、球形にすることは出来ても機械的強度に劣るものしか得られない。このため、化粧品に添加して感触向上材や塗布時の滑り性向上材とする用途には不向きである。有機溶剤に溶解した後に微粒子化する方法でも、機械的強度の向上はわずかである。
【0010】
一方、生分解性樹脂を粉砕後、有機溶媒などを含浸させ、これを発泡させる方法で発泡粒子が得られる。しかし、このような発泡粒子は、密度の低いものしか得られず、化粧品用の材料としては強度や比重の点から問題がある。また、ここでも有機溶媒を用いる問題がある。
【0011】
特開2000−220994号公報には、ポリ乳酸を主成分とする熱可塑性樹脂からなる生分解性材料を球状に加工したものであることを特徴とする生分解性ボールが開示されている。しかし、この技術では外形30mm程度の大粒径の粒子を得ることは出来るが、化粧品用の材料ととして好適な直径1mm以下の微粒子を作製することは出来ない。
【0012】
さらに、上記いずれの方法でも、化粧品の特性を向上させるために樹脂中に無機或いは有機或いは無機・有機複合物質を包含させる事が非常に困難であり、これらを含有した生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子は得られていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記現状を鑑みてなされたものであり、その目的は、感触や塗布時の滑り性に優れた化粧品を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の化粧品は、下記の製造方法によって得られるものであって、微粒子と他の化粧品原料とを含み、前記微粒子は、樹脂成分中に乳酸単位を50モル%以上含有するとともに前記乳酸単位中のD体含有率が0.1〜25モル%である生分解性ポリエステル樹脂にて形成され、全個数の70%以上が、長径と短径の比が(長径)/(短径)≦1.5をみたし、密度が1.0〜10.0g/cm3であり、平均粒径が0.01〜1000μmであり、かつ圧縮時の10%変形強度が5MPa以上である。
このような化粧品は、微粒子の強度が非常に高く、感触の向上や肌等への塗布時の滑り性の向上に非常に効果的である。しかも、この微粒子は、有機溶剤を使用せずに、また特殊な設備や煩雑な操作を用いることなしに、容易かつ安価に製造することができる。
【0015】
本発明の化粧品は、乳酸を0.1〜1000ppm含有するのが好適である。
これにより、化粧品中にポリ乳酸から遊離した乳酸が存在するため、肌を弱酸性に保つことが容易で、肌に優しい化粧品とすることができる。
【0016】
本発明の化粧品において、微粒子は、その全体を100体積%として、生分解性ポリエステル樹脂のほかに、無機物質および、または有機物質から選ばれた少なくとも1種類の成分を1〜95体積%含有することができる。
本発明によれば、このように無機物質および、または有機物質から選ばれた少なくとも1種類の成分を含有することで、化粧品の特性を向上させることができる。
【0017】
本発明の化粧品の製造方法は、乳酸単位を90モル%以上含有するとともに乳酸単位中のD体含有率が0.1〜25モル%である生分解性ポリエステル樹脂を用い、この生分解性ポリエステル樹脂を水分率が1000ppm以下になるように乾燥させ、この乾燥樹脂および相溶性のない分散剤を一緒にしたものに2軸押出機を用いた溶融混練法を適用した後に分離を行って樹脂の微粒子を作製し、そしてこの微粒子を前記他の化粧品原料に添加するものである。
このように、乳酸を主体とする生分解性ポリエステル樹脂を水分率が1000ppm以下になるように乾燥させ、この乾燥樹脂に溶融混練法を適用して、微粒子を作製するものであるため、作製された微粒子は乳酸モノマーの含有量が少なく、したがって化粧品中の乳酸の含有量を上述の0.1〜1000ppmという好適な範囲とすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧品において用いられる微粒子を構成する生分解性ポリエステル樹脂は、主成分として乳酸単位を含む乳酸系ポリマーであり、単独では水に分散または溶解しない本質的に疎水性のポリマーである。以下、該生分解性ポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
【0019】
本発明で使用される生分解性ポリエステル樹脂としては、乳酸の単独重合体、または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等との共重合体が挙げられる。または乳酸と脂肪族あるいは芳香族カルボン酸およびグリコール酸との共重合体が挙げられる。または、ポリ乳酸と、他のポリヒドロキシカルボン酸、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステル、あるいは脂肪族/芳香族ポリエステル等との混合物が挙げられる。
【0020】
生分解性ポリエステル樹脂中の乳酸単位は、50モル%以上であることが必要であり、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。乳酸単位が50モル%未満では、水分散体から得られる樹脂被膜の耐熱性が低く化粧品として実用的でなくなる。
【0021】
ポリ乳酸から乳酸が少量遊離することで、化粧品を弱酸性に保ち、この化粧品を使用することで、肌を弱酸性に保つという効果がある。遊離する乳酸は、30℃の水溶液で0.1〜1000ppmになることが効果的である。そのためには、上記のように乳酸単位を50モル%以上含む生分解性ポリエステルであることが求められる。該生分解性ポリエステル樹脂中の乳酸単位が50モル%未満であると、乳酸量が0.1ppm未満となって、化粧品の酸性度が不足するため、該化粧品を使用したときに肌を弱酸性に保つ効果が薄くなる。一方、ポリ乳酸中のモノマー残量が多すぎると、化粧品中の乳酸量が1000ppmより多くなってしまい、肌へ悪影響を及ぼすレベルになる。このため、ポリ乳酸中に存在するモノマーを極力減らして、上記のように化粧品中の乳酸量を1000ppm以下にする必要がある。
【0022】
乳酸単位中のD−乳酸の含有量は、0.1〜25モル%であることが必要であり、好ましくは0.5〜20モル%、さらに好ましくは1〜15モル%である。D−乳酸の含有量が0.1モル%未満のポリ乳酸微粒子を作製することは、実質的に困難である。反対にD−乳酸の含有量が25モル%を超えると、ガラス転移温度や融点が低下して、得られる微粒子について化粧品の用途に求められる耐熱性が低下したり、コストアップになるなど弊害が大きくなる。
【0023】
本発明において、生分解性ポリエステル樹脂微粒子の圧縮時の10%変形強度(測定法については後述)は、5MPa以上であることが必要であり、特に10MPa以上が好ましい。10%変形強度が5MPa未満の場合は、化粧品に配合した際に元の球状体から非球状体へ変形しやすく、このため感触の向上や塗布時の滑り性向上への効果が少なくなる。
【0024】
本発明の化粧品において用いられる生分解性ポリエステル樹脂は、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィー,ポリスチレン換算)で測定される数平均分子量が、2,000〜1,000,000の範囲内であることが好ましい。2,000未満では、十分な強度が付与できず、このためポリ乳酸が分解して乳酸が発生することで、化粧品中の乳酸濃度が高くなりすぎる。また1,000,000を超える高分子量体は、入手することが困難である。
【0025】
化粧品の特性を向上させるために、ポリ乳酸を主体とした生分解性ポリエステル樹脂中に無機或いは有機或いは無機・有機複合物質を包含させた複合微粒子を用いることが好ましい。
【0026】
このような複合微粒子を形成することができる無機/有機化合物としては、生分解性ポリエステル樹脂中に安定に存在可能なものであれば特に規定はなく、各種無機化合物、各種有機化合物、無機・有機複合物質を用いることが出来る。
【0027】
化粧品の特性を向上させるのに適した無機化合物の例としては、各種金属、各種金属化合物、各種セラミックス等を挙げることが出来る。具体的には、アルミニウム、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、セレン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、白金、金、ビスマスなどが挙げられる。また、これらの元素および周期律表第一族から第三族を含めた元素の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭酸化合物、水酸化化合物、リン酸化合物、硫黄化合物などが挙げられる。さらに、これら化合物の複合化物、合金、天然/合成鉱物などが挙げられる。
【0028】
有機化合物の例としては、各種合成樹脂組成物、オリゴマー、天然化合物、炭素化合物などを挙げることが出来る。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどの炭化水素樹脂、アクリル酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ジエン系化合物、ポリエーテル類、フェノール系樹脂、アミノ樹脂、芳香族炭化水素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、珪素樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系化合物、タンパク質、アミノ酸、これらの炭化物などである。これらのうち、天然に存在する化合物または、生分解性を示す化合物を用いることが望ましい。これらの化合物は、1種以上用いることができ、無機/有機化合物を混合して用いてもよい。
【0029】
さらに、複合微粒子を作製する場合に用いられる無機/有機化合物を化粧品として有用な機能の点から分類すれば、紫外線を吸収あるいは散乱する物質、顔料、染料、赤外線吸収剤、電磁波や放射線の吸収剤等がある。一般には、着色顔料、体質顔料、着色顔料の混合物、着色顔料で被覆した体質顔料等に分類される。
【0030】
着色顔料の例では、酸化チタン(チタンホワイト、チタンブラック)、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、超微粒子酸化鉄)、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化セレン、炭化珪素、窒化珪素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、アルミン酸ストロンチウム硫化亜鉛などを挙げることが出来る。体質顔料としては、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、黄土、アンバー、二酸化チタン、酸化亜鉛、モンモリロナイト、雲母、クレー、ベントナイト等を挙げることができる。着色顔料の混合物としては、単なる混合物や、着色顔料で被覆した着色顔料があり、具体的には、二酸化チタン被覆雲母や、ベンガラ、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、チタンブラックなどのうち少なくとも1種により被覆された雲母チタンなどが挙げられる。着色顔料で被覆した体質顔料の例を挙げると、二酸化チタン被覆雲母、ベンガラ、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブランク、チタンブラックなどのうち少なくとも1種により被覆された体質顔料などがある。
【0031】
複合微粒子に用いるための、上記のような各種の化合物(以下、「複合化化合物」という)は、液体や気体でも差し支えないが、操作上は固体物質が扱いやすい。固体状の複合化化合物を用いる場合に、その初期粒径は特に限定されない。しかしながら、初期粒径が大きくても、複合微粒子を製造する途中で微粒化するものが好ましく用いられる。複合化化合物の含有量は、作製する生分解性ポリエステル樹脂複合粒子の全体に1〜95体積%含まれる必要があり、また複合化化合物が直接肌に触れないようにこの複合化化合物が生分解性ポリエステルによって覆われた構成であることが好ましい。複合化化合物の含有割合が生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子全体の1体積%未満では複合化による機能化が充分ではなく、これに対し95体積%よりも多くなると、これを生分解性ポリエステルで覆うことが困難となる。
【0032】
本発明の化粧品に用いられる生分解性ポリエステル樹脂微粒子(複合微粒子を含む)は、以下の方法で製造される。
すなわち、まず、ポリ乳酸を主体とする生分解性ポリエステル樹脂、または、ポリ乳酸を主体とする生分解性ポリエステル樹脂と無機物質および・または有機物質から選ばれた少なくとも1種類の複合化化合物とからなる生分解性ポリエステル樹脂組成物を、水分量が1000ppm以下になるように乾燥する。水分量が1000ppmよりも多いと、生分解性ポリエステルが分子量低下を起こして、作製した微粒子中に多量の乳酸モノマーが残存することになるため好ましくない。
【0033】
次に、上記の生分解性ポリエステル樹脂または生分解性ポリエステル樹脂組成物(以下、簡単のため、両者をまとめて「生分解性ポリエステル樹脂組成物」あるいは単に「組成物」と称することがある)を、相溶性のない分散媒と一緒に、この生分解性ポリエステル樹脂組成物の融点以上の温度に加熱溶融しかつ混合して、この組成物を微粒子に分散する。次に、得られた生分解性ポリエステル樹脂組成物の微粒子をその融点以下の温度に冷却して、平均粒径が約0.01μm以上でありかつ1,000μm以下である、微小球体として分散媒中でこの分散媒とともに固化させる。これにより、生分解性ポリエステル樹脂微粒子が製造される。
この際に使用する分散媒の量は、生分解性ポリエステル樹脂組成物に対して、体積比で1〜5倍が好ましい。
【0034】
混合する際の加熱温度は、生分解性ポリエステル樹脂組成物を構成する物質のうち最も高融点のものの融点よりも高ければよく、好ましくは融点より10〜200℃高い温度、さらに好ましくは20〜100℃高い温度を用いる。加熱温度が低すぎると、生分解性ポリエステル樹脂組成物は溶融が不充分となって微粒子に分散されにくなる。反対に加熱温度が高くすぎると、生分解性ポリエステル樹脂組成物の熱分解や分子量低下等が起こるため好ましくなく、またモノマーである乳酸が樹脂中に残存することになるという観点からも好ましくない。
【0035】
冷却固化により微粒子を形成した後、微粒子状の生分解性ポリエステル樹脂組成物と分散媒との混合固化物に対し、生分解性ポリエステル樹脂組成物の貧溶媒(沈殿剤)でかつ分散媒の良溶媒である溶媒(以後「縣濁液作製用溶媒」という)を加えて混合する。これにより、分散媒を溶解させて生分解性ポリエステル樹脂組成物の縣濁液とし、この縣濁液から目的とする微粒子を分離して取り出す。
【0036】
このような分散媒としては、親水性物質としては、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレングリコール等)、ポリアルケンカルボン酸のホモポリマーもしくは共重合体またはこれらの塩(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等)、ポリアルケンアミドの単独重合体または共重合体(ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド)等のうち、少なくとも1種を挙げることが出来る。また、疎水性物質としては、プロピルセルロース、ポリスチレンが挙げられる。
【0037】
本発明においては、化粧品に用いる生分解性ポリエステル樹脂微粒子または複合微粒子を製造する時において、生分解性ポリエステル樹脂または樹脂組成物を分散媒と混合してこの分散媒中に微粒子として分散させるために、2軸押出機を用いる。そうすることが、連続生産性の点と微粒子の圧縮時の強度を高める点で好ましい。これにより、樹脂または樹脂組成物と分散媒とを高剪断状況下で溶融混練することができる。2軸押出機の種類や大きさは特に限定されないが、シリンダー長と口径の比(L/D)が20以上のものを好ましく用いることができる。
このような造粒方法は湿式攪拌造粒に属すると考えられ、微粒子を分裂する力であるところの攪拌による剪断力と、微粒子を保持する力であるところの組成物の粘弾性および界面張力とのバランスにより、粒子サイズが決定されると考えられる。
【0038】
前述の好ましい方法を用いて生分解性ポリエステル樹脂微粒子または複合微粒子を製造すると、その際に与えられる高い剪断力によって、生分解性樹脂分子が分散媒中へきわめて高度に分散する。しかも、このような高い剪断力を受けるために、ここで得られる微粒子は他の製法によって得られる微粒子に比べて特に圧縮強度において優れている、と推定される。
【0039】
上述のように、樹脂組成物/分散媒混合物を融点以下に冷却して固化した後、該組成物の貧溶媒でかつ分散媒の良溶媒である縣濁液作製用溶媒とこの混合物とを混合するが、本発明の化粧品を得る場合においては、この混合物を微粒子の縣濁液としてそのまま使用しても良い。あるいは、前記混合物を冷却して固化した後、クラッシャー等で粉砕したり、ペレタイザーでペレット化したり、押出機、ロール等でシート状に成形してから、縣濁液作製用溶媒と混合して、縣濁液作製の工程に進んでもよい。
【0040】
親水性の分散媒に対する縣濁液作製用溶媒としては、水、または水性有機溶剤を用いることができる。たとえば分散媒がポリアルキレンオキシドまたはポリアルキレンカルボン酸である場合には、上記のように水を縣濁液作製用溶媒として使用することができる。
【0041】
疎水性の分散媒に対する縣濁液作製用溶媒としては、疎水性の有機溶剤を使用することができる。たとえば分散媒としてプロピルセルロースを使用する場合には、その良溶媒であるトルエン、メチルエチルケトン(MEK)等を使用することができる。
ただし、環境へ与える影響を考慮すると、上記のように親水性の分散媒と水とを用いることが望ましい。
【0042】
目的とする樹脂微粒子は、樹脂/分散媒混合物の縣濁液から、遠心分離、濾過、またはこれらの方法の組み合せによって、分離することができる。分離した微粒子は、必要に応じて、乾燥してから使用する。
【0043】
化粧品の特性の向上を図るために、上記のようにして得られた微粒子に、さらに表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、湿式粉砕装置を用いて、金属酸化物(鉄、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、コバルト等の酸化物)を被覆する方法を採用することができる(特開平8−59433号公報)。
【0044】
本発明の化粧品に用いられる微粒子または複合微粒子は、化粧品の感触の向上や肌等への塗布時の滑り性の向上に資するために、転がりやすい球状に形成されていることが必要である。この球状であることの条件としては、微粒子全体のうち、長径と短径の長さの比が1.5以下のものが70%以上存在することが必要である。この比が1.5よりも大きいと、微粒子は、細長となって、転がりにくくなるとともに、その強度が低くなっていっそう非球状体となりやすくなる。このため、この比が1.5以下のものが全体の70%未満である場合は、微粒子全体の転がり性や強度が不十分となる。
【0045】
微粒子の密度は、1.0〜10g/cm3であることが必要である。1.0g/cm3未満の場合は、微粒子中に空隙があることを意味し、その強度が低下してしまう。10g/cm3よりも大きい場合には、化粧品の原料となる他の素材との密度差が大きくなるため、混練時などにトラブルが起こる。
【0046】
微粒子の平均粒径は、0.01〜1,000μmであることが必要である。中でも平均粒子径が1〜100μmの粒子は、化粧品としての多くの用途に好ましく使用される。平均粒径が0.01μm未満の微粒子は作製することが困難であり、歩留まりが悪い。また、静電気や吸湿が起こりやすくなり、粉体として取り扱いにくい。反対に1,000μmを超える場合には、歩留まりが悪くなり、コスト高となる。
【0047】
次に、上記の微粒子を用いた本発明の化粧品について詳細に説明する。本発明の化粧品は、生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子と他の化粧品原料からなることを特徴とする。本発明の化粧品の類型としては、石鹸、ボディシャンプー、洗願クリーム等の洗浄用化粧品;化粧水、クリーム、乳液、パック等の基礎化粧品;おしろい、ファンデーション等のベースメークアップ化粧品;口紅、ほほ紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ等の眉目化粧品;マニキュア等のメークアップ化粧品;シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、セットローション、ブロースタイリングローション、ヘアスプレー、泡状スタイリング剤、ジェル状スタイリング剤、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアクリーム、育毛剤、養毛剤、染毛剤、整髪料等の毛髪化粧品;香水、オー・デ・コロン等の芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;脱毛剤、髭剃り用ローション、制汗・消臭剤、日焼け防止剤等の特殊化粧品が例示される。特に、基礎化粧品、メークアップ化粧品等の皮膚化粧品、あるいは毛髪化粧品であることが好ましい。また、この化粧品の状態としては、水性液状、油性液状、乳液状、クリーム状、フォーム状、半固形状、固形状、粉状が例示される。また、この化粧品をスプレーにより用いることも可能である。
【0048】
この化粧品は、上記生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子と他の化粧品原料とからなるが、この、他の化粧品原料としては、アボガド油、アルモンド油、オリブ油、カカオ脂、ゴマ油、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油等の油脂;オレンジラフィー油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン酸、合成脂肪酸等の高級脂肪酸;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等のアルコール;コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール等のステロール;リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル等の脂肪酸エステル;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、d,1−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤、多価アルコールエステル型、酸化エチレン縮合型等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤;酸化鉄等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジリコニウム等の白色顔料、マイカ、タルク、セリサイト等の体質顔料等の顔料;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル;精製水;カラギーナン、アルギン酸、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレングリコール等の増粘剤、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーンレジンやアクリルポリマー等の皮膜形成剤、さらには、紫外線吸収剤、抗菌剤、抗炎症剤、制汗剤、防腐剤、香料、酸化防止剤、pH調節剤、噴射剤が例示される。
【0049】
次に、本発明の化粧品を製造する方法を説明する。本発明の化粧品を製造する方法は、上記生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子を他の化粧品原料に配合することを特徴とする。例えば、回分式または連続式攪拌手段によって配合を行うことができる。このための具体的な装置としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機が例示される。他の化粧品原料への生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子の添加時期は、いつでもよい。
【0050】
本発明の化粧品を製造する方法において、生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子の添加量は、その水分以外の成分換算(固形分換算)で、化粧品中の0.1〜99質量%であることが好ましく、特に、0.5〜90質量%の範囲内であることが好ましい。これは、上記生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子の添加量が上記範囲の上限をこえる場合には、化粧品としての効果が失われる傾向があるからであり、一方、上記範囲の下限未満であると、添加効果が少なく、本微粒子を配合することによる化粧品の使用感等の改善が達成されにくくなる傾向があるからである。
【0051】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
下記の各項目の分析は、それぞれ以下に記載の方法に従って行った。
(1)生分解性ポリエステル樹脂の分子量
GPC分析(島津製作所社製の屈折率分光計、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により分子量を求めた。
(2)微粒子の樹脂成分中の乳酸単位の含有率の測定
微粒子をD−クロロホルムに溶解し、NMR測定(日本電子社製Lambda300WB)を室温にて行うことで決定した。
(3)微粒子の乳酸単位中のD体含有率の測定
微粒子をクロロホルムに溶解し、旋光計(堀場製作所社製 SEPA−200)を用いて、Na−D線(589nm)、25℃にて比旋光度を求め、D体量(モル%)を計算した。
(4)微粒子の長径と短径の測定
粒径が5μm以上のものは、光学顕微鏡(OLYMPUS社製 PM−10AK)を用いて、倍率500倍で測定した。粒径が5μm未満のものは、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製 S−4000)を用いて、倍率2000〜5000倍で測定した。
そして、顕微鏡の視野中に存在する一定個数(後述の表1において「測定対象」として記載)の微粒子のうち、長径と短径の比が1.5以下であるものが何個存在するかを数えることによって、それが全個数の何%になるかを求めた。
(5)微粒子の密度
食塩水による密度勾配管を作製し、密度標準サンプルで校正して測定を行った。
(6)微粒子の10%変形強度
微粒子を1点ずつ顕微鏡観察して粒径を測定した後、微小圧縮試験器(島津製作所社製 MCTM−500)を用い、試験荷重49mN、負荷速度0.89mN/sにて、強度測定をおこなった。そして、粒子径が10%変化したときの圧縮荷重を10%変形強度とした。1サンプルにつき10回測定し、平均値を採用した。
(7)微粒子の平均粒子径
粒度分布測定装置(堀場製作所社製 LA920)を用いて測定し、体積平均粒子径で評価した。
(8)化粧品中の乳酸量の定量
HPLC法(カラム:Amix HPX−87P 長さ300mm×直径7.8mm、移動相:0.005N硫酸、検出:RI、温度:60℃、流速:0.6ml/min、注入試料:100μl。標準試料は乳酸(試薬特級、石津製薬社製)の1/500希釈水溶液)にて定量した。なお、30℃の雰囲気中に1か月置いた後の化粧品について乳酸量を測定した。
(9)化粧品の評価
パネラ20名による官能試験を行った。この試験における評価項目としては、感触および滑りを選び、各々の項目について、次のような基準で5段階評価を行った。
1…悪い、2…やや悪い、3…普通、4…やや良い、5…良い
また、化粧品を塗布したときの肌のpH状態を、皮膚pH計−PH900(Courage+Khazaka electronic GmbH社製)を用いて測定した。
【0052】
まず、下記の要領で、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(A)〜(H)を得た。
【0053】
微粒子(A)
生分解性ポリエステル樹脂としての、水分量が200ppmになるまで乾燥したポリ乳酸(数平均分子量6万、D体含有率1.7モル%)40質量部と、分散媒としての、ポリアクリル酸(重量平均分子量100,000)60質量部とをドライブレンドした後、同方向2軸押出機(池貝鉄工社製 PCM−30)の供給口に供給した。同押出機のシリンダー温度を180℃として溶融混練を行い、ノズルから樹脂組成物を押出して冷却固化した。その後、ポリアクリル酸に対して10倍の質量の水を用いて当該ポリアクリル酸を溶解し、直径約10μmのポリ乳酸球状粒子の縣濁液を得た。この縣濁液を遠心分離したうえで乾燥して、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(A)を得た。
【0054】
微粒子(B)
生分解性ポリエステル樹脂としての、水分量が200ppmになるまで乾燥したポリ乳酸(数平均分子量6万、D体含有率1.7モル%)40質量部を用い、これに複合微粒子化のための複合化化合物としての酸化亜鉛微粒粉末4質量部を加え、さらに分散媒としてのポリエチレングリコール(三洋化成製P20000)60質量部とよく混合した後、同方向2軸押出機(池貝鉄工社製 PCM−30)の供給口に供給した。同押出機のシリンダー温度を200℃として溶融混練を行い、ノズルから樹脂組成物を押出して冷却固化した。その後、ポリエチレングリコールに対して10倍の質量の水を用いて当該ポリエチレングリコールを溶解し、直径約10μmの、酸化亜鉛含有ポリ乳酸球状粒子の懸濁液を得た。この縣濁液を遠心分離したうえで乾燥して、生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(B)を得た。
【0056】
微粒子(D)
ポリ乳酸として、水分量が200ppmになるまで乾燥した、数平均分子量10万、D体含有率19モル%のものを用いた。また2軸押出機のシリンダー温度を170℃とした。そして、それ以外は微粒子(A)の場合と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(D)を得た。
【0057】
微粒子(E)
生分解性ポリエステル樹脂として、水分量が200ppmになるまで乾燥したポリ乳酸(数平均分子量10万、D体含有率19モル%)1.8kgと、複合化化合物としてのポリカプロラクトン(数平均分子量8万)0.2kgとを混合して用いた。そして2軸押出機のシリンダー温度を160℃とした。そして、それ以外は微粒子(A)の場合と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(E)を得た。
【0058】
微粒子(F)
複合化化合物として、酸化亜鉛粉末のかわりにチタンホワイト微粒粉末を用いた。そして、それ以外は微粒子(B)の場合と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(F)を得た。
【0059】
微粒子(G)
複合化化合物として、酸化亜鉛粉末のかわりにデンプン粉末(馬鈴薯)を用いた。そして、それ以外は微粒子(B)の場合と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(G)を得た。
【0060】
微粒子(H)
複合化化合物として、酸化亜鉛粉末のかわりにフェライト微粒粉末を用いた。そして、それ以外は微粒子(B)の場合と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(H)を得た。
【0061】
実施例1
生分解性ポリエステル樹脂微粒子(A)20質量部、p−メトキシ桂皮酸オクチル5質量部、脂肪酸エステルとしてのα−モノイソステアリルグリセリルエーテルポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル1質量部、ロウ類としてのミツロウ2質量部、ロウ類としてのラノリン2質量部、炭化水素としてのスクワラン20質量部、炭化水素としての流動パラフィン30質量部、精製水19質量部、防腐剤適量、および香料適量をホモディスパーに投入し、2500rpmで3分間攪拌して、乳液状化粧品を調製した。
【0062】
実施例2
生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(B)30質量部、p−メトキシ桂皮酸オクチル5質量部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテルポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル1質量部、ミツロウ2質量部、ラノリン2質量部、スクワラン20質量部、流動パラフィン20質量部、精製水19質量部、防腐剤適量、および香料適量をホモディスパーに投入し、2500rpmで3分間攪拌して、乳液状化粧品を調製した。
【0063】
実施例3
(削除)
【0064】
実施例4
生分解性ポリエステル樹脂微粒子(D)30質量部、p−メトキシ桂皮酸オクチル5質量部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテルポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル1質量部、ミツロウ2質量部、ラノリン2質量部、スクワラン20質量部、増粘剤としてのグアガム20質量部、精製水19質量部、防腐剤適量、および香料適量をホモディスパーに投入し、2500rpmで3分間攪拌して乳液状化粧品を調製した。
【0065】
実施例5
生分解性ポリエステル樹脂微粒子(E)30質量部を用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0066】
実施例6
生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(F)30質量部を用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0067】
実施例7
生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(G)30質量部を用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0068】
実施例8
生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子(H)30質量部を用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0069】
比較例1
水分量が200ppmになるまで乾燥したポリ乳酸(数平均分子量6万、D体含有率1.7モル%)1kgを、塩化メチレン10kgに溶解後、攪拌しながら水中へ投入して、ポリ乳酸球状粒子の懸濁液を得た。これを、遠心分離し、乾燥して、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(a)を得た。
微粒子(D)のかわりに、この微粒子(a)を30質量部用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0070】
比較例2
ポリ乳酸として、水分量が200ppmになるまで乾燥したポリ乳酸(数平均分子量10万、D体含有率9モル%)を用いた。そして、それ以外は比較例1と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(b)を得た。
微粒子(D)の代わりに、この微粒子(b)を30質量部用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0071】
比較例3
ポリ乳酸として、水分量が200ppmになるまで乾燥したものであり、かつ一部解重合したポリ乳酸(数平均分子量2万、D体含有率9モル%)250gを用い、これをイソプロピルアルコール100gで膨潤させた。そして、この膨潤したポリ乳酸と、界面活性剤としてのPVA(ユニチカ製、UF170G)2質量%水溶液100gと、蒸留水550gと、該ポリ乳酸中に含まれる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するトリエチルアミンとを投入し、6,000rpmで強制攪拌した。さらに系内温度を60℃まで上昇させ、攪拌を続けて、エマルジョンを得た。これを遠心分離し、乾燥して、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(c)を得た。
微粒子(D)のかわりに、この微粒子(c)を30質量部用いた。そして、それ以外は実施例4と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0072】
比較例4
水分率が1200ppmのポリ乳酸(数平均分子量6万、D体含有率1.7モル%)を用いた。そして、それ以外はポリエステル樹脂微粒子(A)の場合と同様にして、生分解性ポリエステル樹脂微粒子(d)を得た。
微粒子(A)のかわりに、この微粒子(d)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、乳液状化粧品を調製した。
【0073】
実施例1〜2、実施例4〜8および比較例1〜4に関し、生分解性ポリエステル樹脂微粒子および化粧品について各種測定をおこなった。その結果を表1に示す。化粧品として評価を行った結果および肌のpH状態を測定した結果については、実施例1〜2と実施例4〜6は表2に示し、実施例7〜8と比較例1〜4は表3にまとめて示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表1〜表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜2および実施例4〜8の化粧品は、生分解性ポリエステル樹脂微粒子または生分解性ポリエステル樹脂複合微粒子が所定の特性を有したものであったため、得られた化粧品は、感触や、肌へ塗布するときの滑り性にすぐれたものであった。
【0078】
これに対し、比較例1〜3の化粧品は、実施例1〜2および実施例4〜8の化粧品のように原料を高剪断状況下で溶融混練することで微粒子を製造したものではなかったため、微粒子の圧縮時の変形強度が低く、このため化粧品として用いる際に微粒子が変形してしまい、したがって皮膚への感触や塗布時の滑り性に劣るものであった。比較例4の化粧品は、水分率が1200ppmのポリ乳酸を用いたものであったため、作製した微粒子中に多量の乳酸モノマーが残留し、そのため得られた化粧品中に含まれる乳酸濃度が1500ppmにもなってしまい、好ましい化粧品ではなかつた。
【0079】
【発明の効果】
本発明の化粧品は、微粒子の強度が非常に高く、感触の向上や肌等への塗布時の滑り性の向上に非常に効果的である。しかも、この微粒子は、有機溶剤を使用せずに、また特殊な設備や煩雑な操作を用いることなしに、容易かつ安価に製造することができる。
Claims (4)
- 乳酸単位を50モル%以上含有するとともに乳酸単位中のD体含有率が0.1〜25モル%である生分解性ポリエステル樹脂を用い、この生分解性ポリエステル樹脂を水分率が1000ppm以下になるよう乾燥させ、この乾燥樹脂および相溶性のない分散剤を一緒にしたものに2軸押出機を用いた溶融混練法を適用した後に分離を行って樹脂の微粒子を作製し、そしてこの微粒子を他の化粧品原料に添加することを特徴とする微粒子と他の化粧品原料とからなる化粧品の製造方法。
- 請求項1に記載の方法によって製造された化粧品であって、微粒子は、樹脂成分中に乳酸単位を50モル%以上含有するとともに前記乳酸単位中のD体含有率が0.1〜25モル%である生分解性ポリエステル樹脂にて形成され、全個数の70%以上が、長径と短径の比が(長径)/(短径)≦1.5をみたし、密度が1.0〜10.0g/cm3であり、平均粒径が0.01〜1000μmであり、かつ圧縮時の10%変形強度が5MPa以上であることを特徴とする化粧品。
- 乳酸を0.1〜1000ppm含有することを特徴とする請求項2記載の化粧品。
- 微粒子は、その全体を100体積%として、生分解性ポリエステル樹脂のほかに、無機物質および、または有機物質から選ばれた少なくとも1種類の成分を1〜95体積%含有することを特徴とする請求項2記載の化粧品。
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