JP3998362B2 - フタロシアニン系化合物及びその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れ、かつ溶解性に優れた加工容易なフタロシアニン系化合物に関する。また、本発明はこのフタロシアニン系化合物を含有する近赤外線吸収樹脂組成物及び該化合物を含有する近赤外線吸収材料に関する。詳細には光カード、セキュリティインキ、光記録媒体、有機光導電体、近赤外線吸収フイルター、熱線遮蔽フィルム、農業用フィルム、光熱変換材料等の近赤外線吸収能を必要とする用途への展開が可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
フタロシアニン系化合物は、光ディスク等の光記録媒体の記録層に利用したり、レーザー光、キセノンランプあるいは赤外線ランプ等の近赤外線を吸収し熱に変換させる光熱変換材料に利用したり、また、インキ化することにより近赤外線検出機で読み取り可能な近赤外線吸収インキとして利用することができる。また、バインダー樹脂と組み合わせることで塗料化しプラスチックやガラスにコーティングしたり、あるいは樹脂と混練して近赤外線吸収フィルター(プラズマディスプレイ等の表示材料用近赤外線吸収フィルター、CCDカメラ等のカットフィルターなど)を製造することもできる。
【0003】
近赤外線吸収材は、建造物、車、電車、船舶、航空機等の窓材として、外部からの熱線を遮断し、室内、車内の温度上昇を抑えることができる。また特定波長領域をカットすることで、光質選択利用農業用フィルムとして植物育成の制御、半導体受光素子の赤外線カット、有害な赤外線を含む光線から人体を保護する眼鏡等、あるいはディスプレイ(プラズマディスプレイ)から発生する赤外線をカットするための各種フィルターへも利用できる。
【0004】
近赤外線を吸収する化合物としては、従来、シアニン系化合物が良く知られている。しかし、シアニン系化合物は耐光堅牢性が極めて低いので、これを使用する場合には多くの制約を受けざるをえない。またアミニウム系化合物、あるいはジチオール金属錯体系化合物は、耐熱性、耐光性の点で不十分である。またアントラキノン系化合物も耐熱性はあるものの近赤外線領域の光吸収特性という点では不十分である。
【0005】
比較的に特性の良いフタロシアニン系化合物で、様々な化合物の検討が行われているが、高耐光性、高溶解性、及び高近赤外線吸収特性を全て満足させるには到っていない。例えば、特公平4−75916号公報、特開昭63−308073号公報では、塩素化銅フタロシアニン化合物と2−アミノチオフェノール類とを反応させて近赤外線吸収化合物を得ているが、これらの化合物は有機溶媒あるいは樹脂等への溶解度が低かったり、耐久性が不充分であったりするなどの問題点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、新規なフタロシアニン系化合物を提供することである。更には、光カード、セキュリティインキ、光記録媒体、有機光導電体、近赤外線吸収フイルター、熱線遮蔽フィルム、農業用フィルム、光熱変換材料等の近赤外線吸収能を必要とする用途への展開が可能な近赤外線吸収材として有効な近赤外線吸収化合物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フタロシアニン骨格に、少なくとも一つのメルカプトベンズイミダゾール類を導入することで高耐光性を有するフタロシアニン系化合物、さらには、置換基をもつ窒素原子を有する化合物を導入することで高溶解性をも有する新規なフタロシアニン系化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明は下記一般式(1)で表される新規のフタロシアニン系化合物に関する。
【0009】
【化2】
Figure 0003998362
【0010】
〔式中、R1〜R8は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基、あるいは置換されていてもよいアリールオキシ基を示し、Xは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、あるいはN−R9を示し、R9は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基を示し、Yは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基を示し、隣り合うYが二つのヘテロ原子を通じて5員環あるいは6員環を形成してもよい。nは1〜8の整数を示し、lは0〜14の整数を示し、mは0〜14の整数を示し、2n+l+m=16である。Mは2個の水素原子、2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属を示す。〕
【0011】
さらには、該フタロシアニン系化合物を含有した近赤外線吸収樹脂組成物及び近赤外線吸収材料に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
一般式(1)で表されるフタロシアニン系化合物において、式中、R1〜R8は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基、あるいは置換されていてもよいアリールオキシ基を示し、Xは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、あるいはN−R9を示し、R9は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基を示し、Yは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基を示し、隣り合うYが二つのヘテロ原子を通じて5員環あるいは6員環を形成してもよい。nは1〜8の整数を示し、lは0〜14の整数を示し、mは0〜14の整数を示し、2n+l+m=16である。Mは2個の水素原子、2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属を示す。
【0013】
ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0014】
置換されていてもよいアルキル基としては特に制限されるわけではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、1,2−ジメチル−プロピル基、n−ヘキシル基、1,3−ジメチル-ブチル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、ベンジル基、sec−フェニルエチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−フェニルエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、2−ジメチルアミノエチル基、2−ジイソプロピルアミノエチル基、2−ジエチルアミノエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、2−(1−ピペリジニル)エチル基、3−(1−ピペリジニル)プロピル基、2−(4−モルフォリニル)プロピル基、3−(4−モルフォリニル)エチル基、2−(1−ピロリジニル)エチル基、2−ピリジルメチル基、フルフリル基等が挙げられる。
【0015】
置換されていてもよいアリール基としては特に制限されるわけではないが、例えば、フェニル基、2−メルカプトフェニル基、3−メルカプトフェニル基、4−メルカプトフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0016】
置換されていてもよいアルコキシ基としては特に制限されるわけではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基、アミノエトキシ基、n−ブチルアミノエトキシ基、ベンジルアミノエトキシ基、メチルカルボニルアミノエトキシ基、フェニルカルボニルアミノエトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0017】
置換されていてもよいアリールオキシ基としては特に制限されるわけではないが、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0018】
置換されていてもよいアルキルカルボニル基としては特に制限されるわけではないが、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、iso−ブチリル基、バレリル基、iso−バレリル基、トリメチルアセチル基、ヘキサノイル基、t−ブチルアセチル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、オレオイル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、6−クロロヘキサノイル基、6−ブロモヘキサノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、パーフルオロオクタノイル基、2,2,4,4,5,5,7,7,7−ノナフルオロ−3,6−ジオキサヘプタノイル基、メトキシアセチル基、3,6−ジオキサヘプタノイル基等が挙げられる。
【0019】
置換されていてもよいアリールカルボニル基としては特に制限されるわけではないが、例えば、ベンゾイル基、o−クロロベンゾイル基、m−クロロベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、o−フルオロベンゾイル基、m−フルオロベンゾイル基、p−フルオロベンゾイル基、o−アセチルベンゾイル基、m−アセチルベンゾイル基、p−アセチルベンゾイル基、o−メトキシベンゾイル基、m−メトキシベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基、o−メチルベンゾイル基、m−メチルベンゾイル基、p−メチルベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル基等が挙げられる。
【0020】
置換されていてもよいアルキルチオ基としては特に制限されるわけではないが、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、1,2−ジメチル−プロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ノニルチオ基、メトキシエチルチオ基、エトキシエチルチオ基、プロポキシエチルチオ基、ブトキシエチルチオ基、アミノエチルチオ基、n−ブチルアミノエチルチオ基、ベンジルアミノエチルチオ基、メチルカルボニルアミノエチルチオ基、フェニルカルボニルアミノエチルチオ、メチルスルホニルアミノエチルチオ基、フェニルスルホニルアミノエチルチオ基、ジメチルアミノエチルチオ基、ジエチルアミノエチルチオ基等が挙げられる。
【0021】
置換されていてもよいアリールチオ基としては特に制限されるわけではないが、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、4−プロピルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−メトキシフェニルチオ基、4−エトキシフェニルチオ基、4−アミノフェニルチオ基、4−アルキルアミノフェニルチオ基、4−ジアルキルアミノフェニルチオ基、4−フェニルアミノフェニルチオ基、4−ジフェニルアミノフェニルチオ基、4−ヒドロキシフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、4−ブロモフェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、2−エチルフェニルチオ基、2−プロピルフェニルチオ基、2−t−ブチルフェニルチオ基、2−メトキシフェニルチオ基、2−エトキシフェニルチオ基、2−アミノフェニルチオ基、2−アルキルアミノフェニルチオ基、2−ジアルキルアミノフェニルチオ基、2−フェニルアミノフェニルチオ基、2−ジフェニルアミノフェニルチオ基、2−ヒドロキシフェニルチオ基、4−ジメチルアミノフェニルチオ基、4−メチルアミノフェニルチオ基、4―メチルカルボニルアミノフェニルチオ基、4−フェニルカルボニルアミノフェニルチオ基、4―メチルスルホニルアミノフェニルチオ基、4−フェニルスルホニルアミノフェニルチオ基等が挙げられる。
【0022】
置換されていてもよいアルキルアミノ基としては特に制限されるわけではないが、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、iso−プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、ベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
置換されていてもよいアリールアミノ基としては特に制限されるわけではないが、例えば、フェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−メトキシフェニルアミノ基、ヒドロキシフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、フェニルエチルアミノ基、フェニルプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
また隣り合うYが二つのヘテロ原子を介して5員環あるいは6員環を形成してもよい置換基としては下記式で示される置換基等が挙げられる。
【0025】
【化3】
Figure 0003998362
【0026】
2価の金属としては特に制限されるわけではないが、例えば、Cu(II)、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられる。
【0027】
1置換の3価金属としては特に制限されるわけではないが、例えば、Al−Cl、Al−Br、Al−F、Al−I、Ga−Cl、Ga−F、Ga−I、Ga−Br、In−Cl、In−Br、In−I、In−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Tl−F、Al−C65、Al−C64(CH3)、In−C65、In−C64(CH3)、In−C65、Mn(OH)、Mn(OC65)、Mn〔OSi(CH33〕、Fe−Cl、Ru−Cl等が挙げられる。
【0028】
2置換の4価金属としては特に制限されるわけではないが、例えば、CrCl2、SiCl2、SiBr2、SiF2、SiI2、ZrCl2、GeCl2、GeBr2、GeI2、GeF2、SnCl2、SnBr2、SnF2、TiCl2、TiBr2、TiF2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、Sn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、SnR2、GeR2〔Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す〕、Si(OR’)2、Sn(OR’)2、Ge(OR’)2、Ti(OR’)2、Cr(OR’)2〔R’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す〕、Sn(SR”)2、Ge(SR”)2(R”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す〕などが挙げられる。
【0029】
オキシ金属としては特に制限されるわけではないが、例えば、VO、MnO、TiOなどが挙げられる。
更に好ましい式(1)のフタロシアニン系化合物としては、Yが各々独立に水素原子、あるいはハロゲン原子であり、R1〜R8は各々独立に水素原子あるいは置換されていてもよいアルキル基であり、2l+mが2〜16であり、Mが2個の水素原子、Cu、Fe、Pd、AlCl、TiO又はVOである。
【0030】
本発明のフタロシアニン系化合物は、700〜1000nmに吸収極大を有するもので、用途に応じて吸収極大波長をコントロールすることが可能である。中でも半導体レーザーを用いる用途に対しては、700〜1200nmに吸収極大波長を有するフタロシアニン系化合物が好ましい。
【0031】
本発明のフタロシアニン系化合物は、例えば、下記一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物と下記一般式(3)で表される2−メルカプトベンズイミダゾール誘導体、さらには下記一般式(4)で表されるメルカプト基を有するヘテロ環化合物との反応によって得られる。具体的には、本発明の化合物は、化合物(2)と化合物(3)と反応させた化合物、化合物(2)と化合物(4)を反応させた化合物、化合物(2)と化合物(3)を反応させた後、化合物(4)と反応させた化合物、化合物(2)と化合物(3)及び化合物(4)を同時に混合して反応させた化合物等を製造する方法で得られる。
【0032】
【化4】
Figure 0003998362
〔上式中、R1〜R8、M、X、Y、mは、前記の定義に同じ。〕
【0033】
一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物において、Yがハロゲン原子のものが好ましく、特に好ましい化合物は、C.I.ピグメントグリーン 7、C.I.ピグメントグリーン 36、C.I.ピグメントグリーン 37、あるいはC.I.ピグメントグリーン 38であり、ハロゲン化フタロシアニン化合物として工業的に入手容易な化合物である。
【0034】
一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物と一般式(3)及び/または一般式(4)で表されるヘテロ環化合物との反応は、常法により、すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、t−ブトキシカリウム等の塩基の存在下で行うことができる。あるいは式(3)をナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩として単離したものを用いれば、塩基の使用量を減らすか、全く使用しないで反応を行うこともできる。
【0035】
この反応は、通常、溶媒中で行い、その際の溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、スルホラン等の極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられ、単独あるいは混合して用いられる。
【0036】
反応は、通常、一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物と塩基(フタロシアニン化合物に対して1〜50倍当量)を、溶媒(フタロシアニン化合物に対して、1〜100重量倍)に溶解、あるいは懸濁させて、攪拌しながら、一般式(3)及び/または一般式(4)で表されるヘテロ環化合物(フタロシアニン化合物に対して、1〜50倍当量)を添加し、50〜250℃で行われる。ヘテロ環化合物の添加は、昇温前に行なっても、昇温途中、あるいは昇温後に行ってもよい。また、一度に添加してもよく、分割添加してもよい。さらに、ヘテロ環化合物、塩基を加えた後に、フタロシアニン化合物を添加してもよい。使用するヘテロ環化合物は一種類でも、あるいは数種類を混在させてもよい。反応は、常圧下でも、加圧下で行ってもよい。さらに、アミド化あるいはイミド化反応を行う場合、反応混合物中にアミド化試薬及び/またはイミド化試薬を加えて引き続き反応させる方法と、一旦中間体である2−アミノチオフェノール誘導体が反応したフタロシアニン化合物を単離した後に、アミド化あるいはイミド化反応を行なう方法がある。
【0037】
前者の方法においては、反応混合物中にアミド化試薬及び/またはイミド化試薬として、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水ペンタン酸、無水ヘキサン酸、無水ヘプタン酸、無水オクタン酸、無水安息香酸等のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等のカルボン酸二無水物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸エチル、ペンタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチルコハク酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジエチル等のカルボン酸エステル類、アセチルクロリド、アセチルブロミド、エチルカルボニルクロリド、プロピルカルボニルクロリド、ブチルカルボニルクロリド、ペンチルカルボニルクロリド、ヘキシルカルボニルクロリド、ヘプチルカルボニルクロリド、ベンゾイルクロリド等のカルボン酸ハライド類を(フタロシアニン化合物に対して1〜100倍当量)添加、反応させて得ることができる。反応終了後は、通常水あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール溶液中に排出することにより、目的化合物を析出させる。析出した目的物を吸引濾過して分離し、さらに水洗浄、アルコール洗浄して、塩分、残塩基、未反応の2−アミノチオフェノール誘導体、未反応のアミド化試薬あるいはイミド化試薬等を除去し、乾燥して、本発明の近赤外線吸収化合物を単離する。
【0038】
また後者の方法においては、一般式(2)と一般式(3)及び/または一般式(4)で表されるヘテロ環化合物の反応混合物を水あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール溶液中に排出することにより、反応したフタロシアニン化合物を析出させる。析出した化合物を吸引濾過して分離し、さらに水洗浄、アルコール洗浄して、塩分、残塩基、未反応の一般式(3)及び/または一般式(4)で表されるヘテロ環化合物等を除去し、乾燥して単離する。引き続きアミド化あるいはイミド化反応は、常法に従いピリジン溶媒中、あるいはトリエチルアミン等の3級アミン類の存在下、トルエン、キシレン、塩化メチレン等の溶媒中で、上記のアミド化あるいはイミド化試薬を(原料フタロシアニン化合物に対して1〜100倍当量)添加して、0〜150℃程度の温度範囲で撹拌、反応させる。この際、ジメチルアミノピリジン等の反応促進剤を添加することもできる。反応終了後、目的物の単離は上記前者の方法と同様に行う。
【0039】
反応の進行度合いは、例えば、反応液の吸収極大波長λmaxを測定することにより判断することができる。
【0040】
本発明の一般式(1)のフタロシアニン化合物は単一化合物、あるいは一般式(1)のn、mの数が異なった数種類の化合物の混合物としても得られ、単一化合物あるいは混合物いずれも使用できるが、必要により、カラムクロマトグラフィーにて精製し単一化合物とし使用することもできる。本発明のフタロシアニン系化合物は、高耐光性で、樹脂、溶媒等への高溶解型、高分散型の化合物である。更にその製造方法は出発原料に安価な顔料が利用でき、反応も簡便である。
【0041】
前記の製造方法で得られた本発明のフタロシアニン系化合物は単一化合物としても近赤外線吸収能に優れているが、数種類混合することで、さらに、幅広く近赤外線波長領域を吸収することが可能となり、より優れた近赤外線吸収能を示す。すなわち、上記のフタロシアニン系化合物の単一あるいは数種類の化合物からなることで、近赤外線吸収塗料や近赤外線吸収フィルター等への応用が容易となり、熱線吸収材用として優れた特性を有したものとなる。
【0042】
上記フタロシアニン系化合物を用いて近赤外線樹脂組成物あるいは近赤外線吸収材料を作製する方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下の3つの方法が利用できる。
(1)樹脂にフタロシアニン系化合物を混練し、加熱成形して樹脂板或いはフィルムを作製する方法。
(2)フタロシアニン系化合物を含有する塗料を作製し、透明樹脂板、透明フィルム、或いは透明ガラス板上にコーティングする方法。
(3)フタロシアニン系化合物を接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、合わせガラス等を作製する方法。
【0043】
まず、樹脂にフタロシアニン系化合物を混練、加熱成形する(1)の方法において、樹脂材料としては、樹脂板または樹脂フィルムにした場合にできるだけ透明性の高いものが好ましく、具体例としてポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等ビニル系樹脂及びビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、シアン化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を挙げることが出来るが、これらの樹脂に限定されるものではない。
【0044】
作製方法としては用いるベース樹脂によって、加工温度、フィルム化条件等が多少異なるが、通常フタロシアニン系化合物を、ベース樹脂の粉体或いはペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後成形、或いは、押し出し成形して厚さ0.1〜100mmの近赤外線吸収板を得る方法、或いは押し出し機によりフィルム化するか、或いは押し出し機により原反を作製し、30〜120℃で2〜5倍に、1軸乃至は2軸に延伸して10〜200μm厚のフィルムにする方法で得られる。また、本発明のフタロシアニン系化合物をアクリル樹脂等の樹脂モノマー又は樹脂モノマーの予備重合体を重合開始剤の存在下にキャスト重合し、近赤外線吸収材を作製することもできる。なお、混練する際に紫外線吸収剤、可塑剤等の通常の樹脂成型に用いる添加剤を加えてもよい。フタロシアニン系化合物の添加量は、作製する製品の厚み、目的の吸収強度、目的の熱線透過率、目的の可視透過率等によって異なるが、通常1ppm〜10%である。
【0045】
塗料化後、コーティングする(2)の方法においては、本発明のフタロシアニン系化合物をバインダー樹脂及び有機系溶媒に溶解させて塗料化する方法と、フタロシアニン系化合物を数μm以下に微粒化し、アクリルエマルジョン中に分散した水系塗料とする方法がある。前者の方法は通常、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂(PVB、EVA等)或いはそれらの共重合樹脂をバインダーとして用いる。溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合物系等を用いる。フタロシアニン系化合物の濃度はコーティングの厚み、目的の吸収強度、目的の熱線透過率、目的の可視透過率等によって異なるが、バインダー樹脂の重量に対して通常0.1〜100%である。また、バインダー樹脂濃度は塗料全体に対して通常1〜50%である。アクリルエマルジョン系水系塗料の場合も同様に、未着色のアクリルエマルジョン塗料にフタロシアニン系化合物を微粉砕(50〜500nm)したものを分散させることで得られる。塗料中には紫外線吸収剤、酸化防止剤等の通常塗料に用いるような添加物を加えてもよい。上記の方法で作製した塗料は透明樹脂フィルム、透明樹脂、透明ガラス等の上にバーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーター、或いはスプレー等でコーティングして熱線吸収フィルターを作製する。コーティング面を保護するために保護層を設けたり、透明樹脂板、透明樹脂フィルム等コーティング面に貼り合わせることもできる。またキャストフィルムも本方法に含まれる。
【0046】
フタロシアニン系化合物を接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、合わせガラス等を作製する(3)の方法においては、接着剤としては一般的なシリコーン系、ウレタン系、アクリル系等の樹脂用、或いは合わせガラス用のポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等の合わせガラス用の公知の透明接着剤が使用できる。フタロシアニン系化合物を0.1〜50%添加した接着剤を用いて樹脂板同士、樹脂板と樹脂フィルム、樹脂板とガラス、樹脂フィルム同士、樹脂フィルムとガラス、ガラス同士を接着して熱線吸収フィルターを作製する。また熱圧着する方法もある。
【0047】
以上のように作製された近赤外線吸収材料は、実際にはその片面あるいは両面に紫外線カット層、ハードコート層、反射防止層をもうけたり、また、粘着層をもうけることでより実用的なフィルターとなる。また、必要に応じて、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物と金、銀等の金属を交互にスパッタリングにより積層した赤外線反射層、あるいは銅塩、酸化亜鉛を主成分とする金属混合物、タングステン化合物,YbPO4、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(錫ドープ酸化アンチモン)等を平均粒径100μm以下に微粒化して作製した赤外線反射塗料を本発明の近赤外線吸収材料と組み合わせることもできる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これによりなんら制限されるものではない。なお実施例中、「部」は重量部を示す。
【0049】
実施例1
下記式(a)のフタロシアニン化合物48.3部、2−メルカプトベンズイミダゾール24部、炭酸カリウム22.1部を、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン483部中、130℃で、15時間反応させた。反応混合物は、室温に冷却後、メタノール500部に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ下記式(b)で表されるフタロシアニン系化合物73部を得た。さらにカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、吸収極大波長(λmax)を測定したところ816nm(溶媒;DMF)であった。
【0050】
【化5】
Figure 0003998362
【0051】
【化6】
Figure 0003998362
【0052】
【表1】
Figure 0003998362
【0053】
フタロシアニン化合物(b)を、ユニチカ製ポリエチレンテレフタレートペレット1203と重量比0.03:1の割合で混合し、260〜280℃で溶融させ、押出機で厚み100μmのフィルムを作製した後、このフィルムを2軸延伸して厚み25μmの近赤外線吸収フィルターを作製した。JIS−R−3106に従って、(株)島津製作所製分光光度計UV−3100で該フィルターのTv(可視光透過率)及びTe(日射透過率)を測定したところ、それぞれ60%、54%となり、700〜900nmの光をよく吸収した。また、1000時間のカーボンアーク灯(63℃)による耐光試験を行ったところ、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0054】
実施例2
前記フタロシアニン化合物(b)10部とポリメタクリル酸メチル(PMMA)(「デルペット80N」(商品名)、旭化成工業(株)製)10000部とを混合し、260〜280℃で溶融させ押し出し機で厚み3mmの近赤外線吸収フィルターを作製した。該フィルターのTv及びTeを測定したところ、それぞれ59%、53%となり、700〜900nmの光をよく吸収した。また、実施例1と同様に耐光試験を行ったところ、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0055】
実施例3
実施例1で得たフタロシアニン系化合物(b)をピリジン300部に装入し、アセチルクロリド7.0部を添加後、50℃で2時間反応させた。反応混合物は氷水1000部に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、水洗、メタノール洗浄後、乾燥させ下記式(c)で表されるフタロシアニン系化合物29.4部を得た。さらにカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、λmaxを測定したところ820nm(溶媒;DMF)であった。
【0056】
【化7】
Figure 0003998362
【0057】
【表2】
Figure 0003998362
【0058】
近赤外線吸収材料は、実施例1と同様な方法で厚み25μmの近赤外線吸収フィルターを作製した。該フィルターのまた、Tv及びTeを測定したところ、それぞれ58%、54%となり、700〜900nmの光をよく吸収した。また、実施例1と同様に耐光試験を行ったところ、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0059】
実施例4
下記式(d)のフタロシアニン化合物73.5部、2−メルカプトベンズイミダゾール105.7部、炭酸カリウム97.2部を、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン451部中、130℃で、10時間反応させた。反応混合物は、室温に冷却後、メタノール500部に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ下記式(e)で表されるフタロシアニン系化合物26.5部を単離した。さらにカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、λmaxを測定したところ824nm(溶媒;DMF)であった。
【0060】
【化8】
Figure 0003998362
【0061】
【化9】
Figure 0003998362
【0062】
【表3】
Figure 0003998362
【0063】
近赤外線吸収材料は、実施例1と同様な方法で厚み25μmの近赤外線吸収フィルターを作製した。該フィルターのTv及びTeを測定したところ、それぞれ55%、48%となり、700〜900nmの光をよく吸収した。また、実施例1と同様に耐光試験を行ったところ、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0064】
実施例5
フタロシアニン化合物(e)25.6部と4−ジメチルアミノピリジン1.0部をピリジン300部溶媒中、ベンゾイルクロリド13.0部を添加後、50℃で2時間反応させた。反応混合物は氷水1000部中に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、水洗、メタノール洗浄後、乾燥させ下記式(f)のフタロシアニン系化合物30.4部を得た。 さらにカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、λmaxを測定したところ840nm(溶媒;DMF)であった。
【0065】
【化10】
Figure 0003998362
【0066】
【表4】
Figure 0003998362
【0067】
フタロシアニン化合物(f)を用いて、実施例1と同様に厚み25μmの近赤外線吸収フィルターを作製した。該フィルターのTv及びTeを測定したところ、それぞれ54%、48%となり、700〜1000nmの光をよく吸収した。また、実施例1と同様に耐光試験を行ったところ、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0068】
実施例6
実施例5においてベンゾイルクロリドを用いる代わりに、p−トリフルオロメチルベンゾイルクロリド19.3部を用いた以外は、実施例5と全く同様の反応を行い、下記式(g)のフタロシアニン系化合物29.8部を得た。さらにカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、λmaxを測定したところ844nm(溶媒;DMF)であった。
【0069】
【化11】
Figure 0003998362
【0070】
【表5】
Figure 0003998362
【0071】
フタロシアニン化合物(g)2.0部、「チヌビン329」(商品名、チバガイギー(株)製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)100部、「シーソルブ501」(商品名、シプロ化成(株)製紫外線吸収剤)100部、及びポルカーボネート(「パンライトK−1300Z」(商品名)、帝人(株)製)10000部を260〜280℃で溶融混練して、押し出し成型器を用いて、厚み2mmの近赤外線吸収フィルターを作製した。該フィルターと紫外線吸収剤を含有する50μm厚のアクリルフィルムを熱ラミネートした。(アクリルフィルムはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の「チヌビンP」(商品名、チバガイギー(株)製)100部、およびシアノ酢酸系紫外線吸収剤の「ユービナール3039」(商品名、BASF(株)製)100部とをポリメタクリル酸メチル(PMMA)(「デルペット80N」(商品名)、旭化成工業(株)製)10000部とを混合し、260〜280℃で溶融させ押し出し機で厚み200μmのフィルム原反を作製した後、このフィルムを2軸延伸して作製した。
【0072】
該フィルターのTv及びTeを測定したところ、それぞれ52%、45%となり、700〜1000nmの光をよく吸収した。また、実施例1と同様に耐光試験を行ったところ、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0073】
実施例7〜32
前記実施例と同様な方法に従い、表−1に示すフタロシアニン化合物を製造した。さらに、前記実施例と同様な方法で作製した近赤外線吸収材料の性能評価結果を示す。その結果、本発明のフタロシアニン化合物を用いた近赤外線吸収材料は700〜1000nmの光をよく吸収した。また、実施例1と同様に行った耐光試験においても、色素の分解による吸収低下はほとんど見られず耐光性は良好であった。
【0074】
【表6】
Figure 0003998362
【0075】
【表7】
Figure 0003998362
【0076】
【表8】
Figure 0003998362
【0077】
【表9】
Figure 0003998362
【0078】
【表10】
Figure 0003998362
【0079】
【表11】
Figure 0003998362
【0080】
【表12】
Figure 0003998362
【0081】
【発明の効果】
本発明のフタロシアニン系化合物は、特に700〜1000nmに吸収極大を有する近赤外線吸収能力に優れた化合物で、溶剤及び樹脂に対する相溶性、耐光性に優れた化合物である。さらに該化合物を用いた近赤外線吸収材料も、近赤外線吸収能力、耐久性に優れた材料となり、特に、700〜1200nmに吸収極大波長を有することが好ましい用途に対し、優れた材料を提供することが可能である。

Claims (4)

  1. 一般式(1)で表されるフタロシアニン系化合物。
    Figure 0003998362
    〔式中、R1〜R8は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基、あるいは置換されていてもよいアリールオキシ基を示し、Xは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、あるいはN−R9を示し、R9は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基を示し、Yは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基、隣り合うYが二つのヘテロ原子を通じて5員環あるいは6員環を形成してもよい。nは1〜8の整数を示し、lは0〜14の整数を示し、mは0〜14の整数を示し、2n+l+m=16である。Mは2個の水素原子、2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属を示す。〕
  2. 一般式(1)においてYが各々独立に水素原子あるいはハロゲン原子であり、R1〜R8は各々独立に水素原子あるいは置換されていてもよいアルキル基であり、2n+lが2〜16であり、Mが2個の水素原子、Cu、Fe、Pd、AlCl、TiO又はVOである請求項1記載のフタロシアニン系化合物。
  3. 請求項1、2のいずれかに記載のフタロシアニン系化合物を含有する近赤外線吸収樹脂組成物。
  4. 請求項1、2のいずれかに記載のフタロシアニン系化合物を含有する近赤外線吸収材料。
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