JP3998249B2 - 冷凍サイクル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒を圧縮膨張させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルに関し、特に冷媒の膨張エネルギを機械(回転)エネルギに変換する膨張機を有する冷凍サイクルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の冷凍サイクルにおいて、膨張エネルギを回収できる圧縮・膨張システムとしては、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
この特許文献1記載のものは、主圧縮機と膨張機を分離し、膨張機で発生した膨張エネルギを回収する副圧縮機を備えた冷凍サイクルが記載されており、冷凍サイクルの主流回路を流れる主流冷媒を膨張機で膨張させ、そのときの主流冷媒の膨張エネルギを機械エネルギに変換しながら主流冷媒を減圧している。膨張機で発生した機械エネルギにより副圧縮機は駆動される。
【0004】
特許文献2のものは、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、冷媒を膨張させる膨張機構部を電動機を介して接続した軸直結構造とし、圧縮機構部の吸込み側が蒸発器に、吐出側がガスクーラに連通する一方、膨張機構部の吸込み側がガスクーラに、吐出側が蒸発器に連通するようにして冷凍サイクルが構成されている。
【特許文献1】
特開2000−329416号公報
【特許文献2】
特開2001−107881号公報
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1においては、主圧縮機、副圧縮機、膨張機を定常的に潤滑する必要があるが、それぞれがサイクル中に別々に存在しているため、圧縮機と膨張機間で油が偏在する可能性があった。また、膨張機の周囲圧力に比べて膨張機の内圧が大きくなり、膨張機内部からのガス漏洩が発生し易い。さらに、周囲圧力が低圧であるために潤滑油への冷媒の溶け込み量が少なく、また低温であるため潤滑油の粘度が大きくなり、高粘度の潤滑油が電動機や圧縮機、膨張機の負荷になってしまう問題があった。また、膨張機や副圧縮機を用いるため、コスト上昇や設置スペースが大きくなる課題もある。
【0005】
特許文献2においては、特許文献1のような圧縮機、膨張機間の油偏在の問題は改善されるが、主圧縮機と膨張機が近接した配置になるため、室内ユニットと室外ユニットに別れたセパレートタイプの冷凍空調機器とした場合、配管が長くなり、コスト上昇や配管の圧力損失による性能低下の問題がある。また、比較的低温で動作する膨張機が、ガス圧縮作用により高温となった圧縮機及び電動機からの熱影響を受けて加熱されるため、膨張過程のエンタルピ差が減少して膨張機での動力回収が少なくなり、膨張機効率を低下させる課題があった。
【0006】
本発明の目的は、必要な部品を効率よく配置して装置の小型化、低コスト化を図ることのできる冷凍サイクルを得ることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、作動流体の膨張過程のエネルギを機械エネルギに効率よく変換して利用できる膨張/圧縮システムを構成することにより、COP(成績係数)を向上し、汎用性の高い冷凍サイクルを得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、底部に潤滑油を貯留した密閉容器と、この密閉容器内に収納され冷媒の膨張エネルギを機械エネルギに変換する膨張機と、前記膨張機の上方に積層配置して前記密閉容器内に収納され前記膨張機によって駆動される副圧縮機と、遠心ポンプ作用で潤滑油を供給する給油通路とを有する膨張/圧縮システムと、底部に潤滑油を貯留した密閉容器内に収納した主圧縮機およびそのモータと、前記主圧縮機で圧縮した高圧の冷媒を、放熱器、膨張弁、蒸発器を介して前記副圧縮機に流通させる吸入パイプと、前記膨張/圧縮システムの前記密閉容器内の冷媒を前記膨張機に流通させる流出パイプと、前記副圧縮機で昇圧した冷媒を前記主圧縮機に流通させる吐出パイプと、前記吸入パイプから分岐し前記放熱器から流出した冷媒の一部を前記膨張/圧縮システムの前記密閉容器内に流通させる流入パイプとを備えたことを特徴とする冷凍サイクルにある。
【0011】
また、前記主圧縮機を、内部が該主圧縮機吸い込み圧力に保たれた密閉容器内に収納すると共に、該密閉容器内部には潤滑油を貯溜し、この潤滑油の油面上部に前記主圧縮機の吸入口を設けることもできる。
【0012】
さらに、前記主圧縮機とそのモータを収納して内部に潤滑油を貯留した密閉容器を備え、この主圧縮機密閉容器内を該主圧縮機の吐出圧力に保つと共に、主圧縮機の吐出口を前記モータ下方の前記密閉容器側面に設けるようにすることもできる。
【0013】
前記主圧縮機と前記放熱器の間に油分離器を設け、該油分離器で分離された油を、前記膨張機と副圧縮機を収納した前記密閉容器に戻すようにしても良い。
【0015】
上記において、前記放熱器下流で分岐された他方の冷媒を減圧膨張させる膨張弁は、放熱器からの高圧冷媒を、前記膨張機で減圧膨張されて吐出された冷媒の圧力と同程度の圧力まで減圧するように制御される構成にすると良い。
【0016】
前記膨張機と副圧縮機を収納した密閉容器内を高圧・低温に保つことで、前記膨張機、副圧縮機の摺動部に潤滑油を供給するための差圧を大きくできるから、摺動部への油供給量が増加し、シール性能を向上させることが可能となる。また、前記密閉容器内が高圧となることにより、潤滑油への冷媒の溶け込み量が増加するため、潤滑油の粘度が低下し、膨張機及び副圧縮機の粘性摩擦損失を低減することもできる。
【0017】
また、膨張機と副圧縮機を収納した前記密閉容器に、レシーバタンクの役割を兼ねさせることが可能となるから、レシーバタンクを不要にできる。
主圧縮機を密閉容器に収納し、この密閉容器内を主圧縮機吸入圧力に保り、主圧縮機吸入口をモータ下方で油面の上部に設ける構成としたものでは、副圧縮機から吐出された潤滑油が、吸入口付近まで上昇すると、冷媒の流れと共に主圧縮機容器から吐出され、放熱器を通過後、副圧縮機を収容した密閉容器に供給されるので、膨張/圧縮システムと主圧縮機間での潤滑油の偏在を防止できる。
【0018】
主圧縮機密閉容器内を主圧縮機吐出圧力に保つ場合も同様に、主圧縮機吐出口をモータ下方の容器側面に設けるようにしているから、潤滑油が吐出口付近まで上昇すると、冷媒の流れと共に主圧縮機容器から吐出され、放熱器通過後、副圧縮機密閉容器に供給されるから、膨張/圧縮システムと主圧縮機間での潤滑油の偏在を防止することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す冷凍サイクルの模式図、図2は冷凍サイクルの作動流体として自然冷媒である二酸化炭素(R744)を使用した場合のモリエル線図、図3はR744を使用した冷凍サイクルに使用される潤滑油の粘度特性を示す線図である。なお、冷媒としての二酸化炭素は、地球温暖化係数(GWP)がフロン系冷媒の数千分の一と小さく地球環境保全の点で優れている。反面、高圧冷媒であり、モリエル線図上の理論的COP(成績係数)が低いという欠点がある。しかし、R744は膨張過程のエネルギ損失がフロン系冷媒に比べて大きいことから、この膨張過程の動力を回収することによりCOPの大幅な改善をできる可能性があり、高効率で信頼性の高い膨張機を備えた冷凍サイクルの開発が冷媒R744システムの実用化の鍵を握ると考えられている。フロン系冷媒のシステムでも改善比率は小さくなるが、COPの向上を図ることができる。ここでは、冷媒R744を使用した冷凍サイクルの例を説明する。
【0020】
図1において、3は電動機(モータ)(M)、2は主圧縮機(MC)、5は膨張機(膨張手段)(EX)、6は副圧縮機(SC)である。主圧縮機2で圧縮された高温・高圧冷媒(図2モリエル線図上の点Cの状態)は、主圧縮機2と電動機3を収納した密閉容器1に吐出され、吐出パイプ11から放熱器(ガスクーラ)7に供給され、ここで放熱し温度低下(図2の点D)した後、流入パイプ12を通って、膨張機5及び副圧縮機6を収容した膨張/圧縮システムの密閉容器4に入り、この容器4内を低温、高圧に保つ。この膨張/圧縮システム密閉容器4から流出パイプ13を通って吐出された冷媒は、前段膨張弁9を通過して膨張機5の設計圧力比に合うように予膨張される。その後、冷媒は膨張機5に流入パイプ14を通って入り、膨張動作を行って膨張エネルギを機械エネルギに変換し、流出パイプ15から低温・低圧の気液二相冷媒(図2の点E)となって吐出される。膨張機5から吐出された冷媒は、放熱器7下流側で前記流入パイプ12側から分岐され、膨張弁(膨張手段)10を通って減圧膨張された冷媒と合流し、蒸発器8に入って吸熱ガス化し、吸入パイプ26を通って副圧縮機6に吸い込まれ(図2の点A)、この副圧縮機6内で若干昇圧されて吐出パイプ16から吐出される(図2の点B)。副圧縮機6から吐出されたガス冷媒は主圧縮機2に戻り再び圧縮されて高温・高圧のガス冷媒となる。以上のサイクルが繰り返されて冷凍作用を行なう。
【0021】
なお、前記膨張弁10は、膨張機5をバイパスする回路に取り付けられ、冷凍サイクルの運転条件変化時の流量(圧力)調整等を行う。本実施例では、主圧縮機2で圧縮された高圧の冷媒を膨張/圧縮システム密閉容器4に流通させて密閉容器4内部を高圧に保つことで、潤滑油29への冷媒の溶け込み量を増加させ、その結果潤滑油29の粘度を低下させ(図3参照)、膨張機5と副圧縮機6にかかる負荷を低減させることが可能となる。また、密閉容器4には、放熱器7で放熱された冷媒を流通させることにより、主圧縮機側から比較的低温で動作する膨張機5への熱侵入を極力抑えることが可能となる。
【0022】
図4は図1に示す膨張/圧縮システム密閉容器4内の詳細構造を説明する図、図5は図4に示す膨張機5の動作説明図で、クランク軸回転角ごとの作動流体の流入過程を説明した図である。
【0023】
膨張/圧縮システムは、冷凍サイクルにおける作動流体の膨張エネルギを機械エネルギに変換する膨張機5と、この変換された機械エネルギにより仕事をする副圧縮機6から構成され、膨張機5と副圧縮機6は積層して配置され、クランク軸17を介して連結されて、密閉容器4内に収納されている。
【0024】
膨張機5は、クランク軸17の軸受を兼ねた下ベア18と中間仕切り板19により、シリンダ20の両端開口部が閉塞されている。シリンダ20には中央部に円筒状内周面20aが形成されている。クランク軸17にはシリンダ20の円筒状内周面20aにあたる部分に偏心部17aが形成されており、この偏心部17aは、揺動ピストン21のローラ部21aに圧入された軸受メタル21b円筒状内周面を摺動回転できるようになっている。
【0025】
ローラ部21aの円筒状外周面には板状のベーン部21cが一体で形成されている。シリンダ20の円筒状内周面20aの外側にはその中心軸と平行な中心軸を持つ円筒孔部20bが形成されており、円筒孔部20bの外側には逃げ孔部20cが形成されている。前記円筒孔部20bは、シリンダ20の円筒状内周面20aと、前記逃げ孔部20cにそれぞれ連通している。揺動ピストン21のベーン部21cは円筒孔部20bと逃げ孔部20cとに挿入されている。ベーン部21cと円筒孔部20bとの間には、ベーン部21cの平面部に摺動可能に当接する平面部と、円筒孔部20bの円筒面部に摺動可能に当接する円筒面部とを有するシュー22がベーン部21cを挟み込む形で組込まれている。この結果、ベーン部21cは円筒孔部20bの中心軸を通る往復運動と中心軸廻りの揺動運動を行い、シュー22は円筒孔部20b中心軸廻りの揺動運動を行う。ベーン部21cの先端部は逃げ孔部20cの中で運動し、シリンダ20と干渉することはない。密閉容器4に取り付けられる流入パイプは、シリンダ20の円筒孔部20bに開口する流入通路20dと接続される。
【0026】
図5は、クランク軸の回転角が90°毎のシリンダ20内における揺動ピストン21の位置関係を示したもので、揺動ピストン21のベーン部21cが上死点位置(ベーン部が最もシリンダ20の外周部に突き出した状態)を回転角θの0°とし、クランク軸17は時計廻りに回転する。
【0027】
まず、回転角0°の状態では、(イ)図に示すように、シリンダ20の流入通路20dとシュー22の流入孔22aとは一部連通しており、シュー22の流入孔22aと揺動ピストン21のベーン部21cに形成された流入溝21dも連通しているが、この流入溝21dのシリンダ円筒状内周面20a側端部aはシュー22により塞がれているため、蒸気圧縮冷凍サイクルの膨張過程入口にある高圧の作動流体はシリンダ20内への流入を遮断された状態にある。一方、シリンダ20の流出通路20eはシリンダ20内に連通しているため、作動流体は膨張過程出口にあたる低圧の圧力状態になっている。
【0028】
この状態からクランク軸17が時計廻りに回転すると、(ロ)図に示すように、ベーン部21cがシリンダ20内に突き出して流入溝21dがシリンダ内との連通を開始するため、高圧の作動流体がシリンダ20内に流入しはじめ、シリンダ20内の圧力差によりピストン21を介してクランク軸17を時計廻りに回転させ、機械エネルギが発生する。(ロ)図に示す回転角90°の状態では、シュー22の揺動によりシリンダ流入通路20dとシュー流入孔22aの接続部bの流路面積も拡大するため作動流体の流入が促進される。
【0029】
さらに90°回転した回転角180°の状態((ハ)図参照)では、シリンダの流入通路20dとシューの流入孔22aとは回転角0°の状態と同様に一部連通しているが、ベーン部21cのシリンダ内周面20a側への往復運動により、シュー流入孔22aとベーン流入溝21dとは連通が遮断されている。このため、高圧の作動流体の流入が遮断された状態で作動室容積が拡大することから、作動流体は膨張してクランク軸を回転させ、機械エネルギに変換される。
【0030】
(ニ)図に示す回転角270°の状態では、シュー流入孔22aとベーン流入溝21dとは連通しはじめるが、シュー22が回転角90°の状態とは反対方向に揺動運動するため、シリンダの流入通路20dとシューの流入孔22aとは連通が遮断され、このため作動流体はさらに膨張して機械エネルギに変換され続ける。
【0031】
さらに回転が進むと、シリンダの流出通路20eはシリンダ20内に連通し、最初の回転角0°の状態になる。以上の動作を繰り返すことにより、作動流体の持つ膨張エネルギが機械エネルギに変換されることになる。
【0032】
一方、副圧縮機6は、クランク軸17の軸受を兼ねた上ベア27と中間仕切り板19によりシリンダ23の両端開口部が閉塞されている。シリンダ23には中央部に円筒状内周面23aが形成されている。クランク軸17には、シリンダ内周面23aにあたる部分にもう一方の偏心部17bが形成されており(この偏心部17bは、膨張機5側の偏心部17aとは回転位相が180°ずれている)、偏心部17bは円筒状ローラ24の内周面に装着されたころ軸受内に回転可能に挿入されている。ローラ24の円筒状外周面には板状のベーン25がベーンスプリング25aにより押圧されている。シリンダ内周面23aより外側のシリンダ23には、前記ベーン25が往復摺動するためのベーン溝、ベーン25がシリンダ23と干渉しないように形成された逃げ孔部23b、及びベーンスプリング25aの他端部を装着するスプリング孔部23cが形成されている。
【0033】
密閉容器4に取り付けられた吸入パイプ26は、シリンダ23の吸入通路と接続しており、吸入パイプ26から吸い込まれた冷媒ガスは、吸入通路を通ってシリンダ23内に入る。クランク軸17の回転によって、ローラ24がシリンダ内周面23aに沿って偏心回転運動して移動し、シリンダ内周面23aの一部を切り欠く形に形成された吐出切り欠き23eを通り、上ベア27に形成された吐出ポート27aから吐出パイプ16に吐き出され、外部の冷凍サイクルに流出する。
【0034】
密閉容器4の底部には、潤滑油29が貯溜されており、軸受摺動部(クランク軸17の各軸受部)に強制的に潤滑油を給油するため、クランク軸17の下端部に給油ピース28を装着し、クランク軸17内に形成した給油通路17cを通してクランク軸17の回転による遠心ポンプ作用で各軸受摺動部に潤滑油を供給するようになっている。本発明では、膨張機5及び副圧縮機6の大部分がこの潤滑油29中に侵漬された状態とし、主圧縮機2で圧縮された高圧の冷媒を膨張/圧縮システム密閉容器4に流通させ、内部を高圧に保つことで、膨張機5の揺動ピストン21及び副圧縮機6のローラ24の両端面から、各摺動部に容易に潤滑油を供給することが可能となる。
【0035】
次に、主圧縮機及び膨張/圧縮システムでの冷媒と潤滑油の状態について、図1と図6に基づいて説明する。図6の(a)図は主圧縮機密閉容器内を主圧縮機吸入圧力に保つ場合の例を、(b)図は主圧縮機密閉容器内を主圧縮機吐出圧力に保つ場合の例を、(c)図は膨張/圧縮システム密閉容器内の冷媒と潤滑油の状態をそれぞれ示したものである。
【0036】
ガスクーラ7で液化された冷媒を分岐し、流入パイプ12から膨張/圧縮システム密閉容器4に流入させると、液冷媒31は潤滑油29に比べて密度が小さく、混合することなく上部に蓄積する。本実施例では、流出パイプ13の端を潤滑油29の油面29aの上部に設けることにより、液冷媒31のみを流出することができる。冷凍サイクルでは、条件によってサイクル中の必要な冷媒量が変化するが、膨張/圧縮システム密閉容器4の液冷媒31の蓄積量を変化させるため、その液面31aを上下させることで、サイクルでの必要な冷媒量を容易に調節することが可能となる。即ち、密閉容器4はレシーバタンクとしての役割を兼ねるため、装置全体としての小型・低コスト化を実現できる。
【0037】
また、膨張機5の揺動ピストン21の両端面から差圧によって各摺動部に供給された潤滑油は、冷媒の流れと共に吐出パイプ15から流出して副圧縮機6に供給され、その潤滑油と、副圧縮機6のローラ24の両端面から差圧によって供給された潤滑油は吐出パイプ16から吐き出される。さらに、この潤滑油は吐出パイプ16から主圧縮機2へ供給され、主圧縮機密閉容器1内に吐出されて蓄積する。以上の過程から、膨張/圧縮システム密閉容器4内に貯溜された潤滑油29は、次第に主圧縮機密閉容器1内に移動して蓄積され、主圧縮機密閉容器1と膨張/圧縮システム密閉容器4の間で潤滑油が偏在する。特に、膨張/圧縮システム密閉容器4では、潤滑油29の油面29aが上下することに伴い、流出パイプ13から液冷媒31と共に、潤滑油29やガス冷媒が流出してしまう可能性があった。しかし、本実施例では、図6(a)に示すように、主圧縮機密閉容器1の内部を主圧縮機2の吸入圧力に保つ場合、密閉容器1と4間で潤滑油の偏在が無い状態での油面30aを基準として、その油面30aのすぐ上に、主圧縮機の吸入口32を設置する。これにより、油面30aが吸入口32以上の高さに上昇すると、油は冷媒と共に該吸入口32から主圧縮機2に吸い込まれ、吐出パイプ11から流出される。
【0038】
また、図6(b)に示すように、主圧縮機密閉容器1の内部を主圧縮機2の吐出圧力に保つ場合、密閉容器1と4間で潤滑油の偏在が無い状態での油面30aを基準として、その油面30aのすぐ上の密閉容器1側面に、吐出パイプ11を設置する。これにより、油面30bがそれ以上に上昇すると、油は冷媒と共に吐出パイプ11から流出される。
【0039】
吐出パイプ11から流出させた潤滑油は、ガスクーラ7で放熱させた後、流入パイプ12から再び膨張/圧縮システム密閉容器4に戻される。この結果、密閉容器1,4間での潤滑油の偏在が防止され、膨張/圧縮システム密閉容器4内の潤滑油29の油面29aが上下することも防止でき、密閉容器4のレシーバタンクとしての信頼性を向上することができる。なお、密閉容器1内の潤滑油30の油面30a,30bを電動機3よりも下方に設定することにより、潤滑油30による電動機3への負荷を防止できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、作動流体の膨張過程のエネルギを機械エネルギに効率よく変換して利用できる膨張/圧縮システムを実現できると共に、膨張/圧縮システム密閉容器内を、主圧縮機の吐出圧力と同一またはほぼ同一の高圧力に保つようにしたから、潤滑油の粘度を低下させて膨張機と副圧縮機の摩擦損失を低減することができ、冷凍サイクルのCOP(成績係数)向上を図れる効果がある。この結果、自然冷媒である二酸化炭素を用いた冷凍空調システム等の実現が可能となる。
【0041】
また、膨張/圧縮システム密閉容器内に液冷媒を蓄積させてレシーバタンクとしての役割も兼ねさせることにより、小型・低コスト化も実現できる。
【0042】
さらに、膨張/圧縮システム密閉容器内を高圧に保つことにより、膨張機と副圧縮機のシリンダ内各摺動部に差圧により容易に潤滑油を供給することも可能になる。
【0043】
また、主圧縮機密閉容器の潤滑油を膨張/圧縮システム密閉容器に戻す構成にすることにより、密閉容器間での均油が可能となり、信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す冷凍サイクルの模式図である。
【図2】冷凍サイクルの作動流体として二酸化炭素を使用した場合ののモリエル線図である。
【図3】二酸化炭素を使用した冷凍サイクルに使用される潤滑油の粘度特性を示す線図である。
【図4】図1に示す膨張/圧縮システム密閉容器内の詳細構造を説明する縦断面図である。
【図5】図4に示す膨張機の動作説明図である。
【図6】主圧縮機密閉容器、及び膨張/圧縮システム密閉容器内の冷媒と潤滑油の状態を説明する模式図である。
【符号の説明】
1…主圧縮機密閉容器、2…主圧縮機、3…電動機(モータ)、4…膨張/圧縮システム密閉容器、5…膨張機、6…副圧縮機、7…放熱器(ガスクーラ)、8…蒸発器、9…膨張機前段膨張弁、10…流量調整用膨張弁、11…吐出パイプ、12…流入パイプ、13…流出パイプ、14…膨張機の流入パイプ、15…膨張機の吐出パイプ、16…副圧縮機の吐出パイプ、17…クランク軸、17a,17b…偏心部、17c…給油通路、18…下ベア、19…中間仕切り板、20…膨張機のシリンダ、20a…円筒状内周面(シリンダ内周面)、20b…円筒孔部、20c…逃げ孔部、20d…流入通路、20e…流出通路、21…揺動ピストン、21a…ローラ部、21b…軸受メタル、21c…ベーン部、21d…流入溝、22…シュー、22a…流入孔、23…副圧縮機のシリンダ、23a…円筒状内周面(シリンダ内周面)、23b…逃げ孔部、23c…スプリング孔部、23e…吐出切り欠き、24…ローラ、25…ベーン、25a…ベーンスプリング、26…副圧縮機の吸入パイプ、27…上ベア、28…給油ピース、29,30…潤滑油、29a,30a,30b…油面、31…液冷媒、31a…液面、32…主圧縮機の吸入口。

Claims (5)

  1. 底部に潤滑油を貯留した密閉容器と、この密閉容器内に収納され冷媒の膨張エネルギを機械エネルギに変換する膨張機と、前記膨張機の上方に積層配置して前記密閉容器内に収納され前記膨張機によって駆動される副圧縮機と、遠心ポンプ作用で潤滑油を供給する給油通路とを有する膨張/圧縮システムと、
    底部に潤滑油を貯留した密閉容器内に収納した主圧縮機およびそのモータと、
    前記主圧縮機で圧縮した高圧の冷媒を、放熱器、膨張弁、蒸発器を介して前記副圧縮機に流通させる吸入パイプと、
    前記膨張/圧縮システムの前記密閉容器内の冷媒を前記膨張機に流通させる流出パイプと、
    前記副圧縮機で昇圧した冷媒を前記主圧縮機に流通させる吐出パイプと、
    前記吸入パイプから分岐し前記放熱器から流出した冷媒の一部を前記膨張/圧縮システムの前記密閉容器内に流通させる流入パイプと
    を備えたことを特徴とする冷凍サイクル。
  2. 請求項1記載の冷凍サイクルにおいて、前記主圧縮機を、内部が該主圧縮機吸い込み圧力に保たれた密閉容器内に収納すると共に、該密閉容器内部の潤滑油の油面上部に前記主圧縮機の吸入口を設けたことを特徴とする冷凍サイクル。
  3. 請求項1記載の冷凍サイクルにおいて、前記主圧縮機密閉容器内を該主圧縮機の吐出圧力に保つと共に、主圧縮機の吐出口を前記モータ下方の前記密閉容器側面に設けたことを特徴とする冷凍サイクル。
  4. 請求項1記載の冷凍サイクルにおいて、前記主圧縮機と前記放熱器の間に油分離器を設け、該油分離器で分離された油を、前記膨張機と副圧縮機を収納した前記密閉容器に戻すことを特徴とする冷凍サイクル。
  5. 請求項1記載の冷凍サイクルにおいて、前記放熱器下流で分岐された他方の冷媒を減圧膨張させる膨張弁は、放熱器からの高圧冷媒を、前記膨張機で減圧膨張されて吐出された冷媒の圧力と同程度の圧力まで減圧するように制御されるものであることを特徴とする冷凍サイクル。
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