JP3997421B2 - 耐熱性樹脂組成物、その製造方法、及び耐熱性樹脂組成物を用いた接着フィルム - Google Patents

耐熱性樹脂組成物、その製造方法、及び耐熱性樹脂組成物を用いた接着フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低弾性率であり、耐熱性、保存安定性に優れた各種プリント配線板や半導体パッケージ用の接着剤、封止材などに好適な耐熱性樹脂組成物、その製造方法、及び耐熱性樹脂組成物を用いた接着フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、プリント配線板や半導体パッケージの配線もより高密度化、微細化が進んでいる。このため、接着剤や接着フィルムに対しても、実装の際の高温プロセスに対応し、かつ電子部品を搭載する際の熱応力を緩和できる高耐熱性、低弾性率材料が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来より、耐熱性に優れた樹脂であるポリイミドやポリアミドイミドに、シロキサン構造を導入した低弾性率材料が開発されてきた。特開平5−9254号公報、特開平6−116517号公報などには、いずれもシロキサン変性ポリアミドイミドが提案されている。しかしながら、これらの樹脂は銅箔に対する接着力が十分でなく、耐熱性も十分でない。
【0004】
特開平10−60111号公報、特開平6−271673号公報には、シロキサン変性ポリアミドイミドにマレイミド基を2個以上有する化合物を配合して、高温特性を改良することが提案されているが、この樹脂組成物は特に銅箔に対する接着性に劣る。また、特許第3221756号公報には、フェノール性水酸基を有するポリイミドシリコーンとエポキシ樹脂との耐熱性接着剤フィルムが提案されているが、フェノール性水酸基は立体的に密な位置に存在するために、エポキシ樹脂との反応が困難であり、フェノール性水酸基とエポキシ樹脂の反応によって生じる水酸基の接着効果が期待できないものであった。
【0005】
本発明は、上記の欠点を解消すべく、接着性、耐熱性、保存安定性、耐溶剤性に優れ、かつ低弾性率である耐熱性樹脂組成物、その製造方法、及び耐熱性樹脂組成物を用いた接着フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−9254号公報
【特許文献2】
特開平6−116517号公報
【特許文献3】
特開平10−60111号公報
【特許文献4】
特開平6−271673号公報
【特許文献5】
特許第3221756号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂の硬化触媒との会合体を使用すること、好ましくは、上記会合体に分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂及び必要に応じエポキシ樹脂の硬化剤を配合してなる耐熱性樹脂組成物が、低弾性率であり、接着性、耐熱性、保存安定性にも優れる硬化物となり得ることを知見した。また、この樹脂組成物をワニスとして支持基材上に塗布すれば、銅箔などとの密着性に優れた接着フィルムとなり得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
なお、本発明において、接着フィルムとは、厚さ5〜500μmであることが好ましく、いわゆるシート状のものを包含する。
【0008】
従って、本発明は、下記に示す耐熱性樹脂組成物、その製造方法、及び耐熱性樹脂組成物を用いた接着フィルムを提供する。
(1) 2官能以上の酸無水物と2官能以上のアミンとの、モル比がアミン成分中のアミノ基/酸無水物成分中の酸無水物基=0.60〜0.99の反応生成物である骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂100重量部、該ポリイミド樹脂の酸無水物基と反応してアミド結合を形成する2級以下のアミンであるエポキシ樹脂の硬化触媒0.1〜15重量部とを混合して得られた上記ポリイミド樹脂と上記エポキシ樹脂の硬化触媒との会合体を含有すること特徴とする耐熱性樹脂組成物。
更に、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂とを含有することを特徴とする(1)記載の耐熱性樹脂組成物。
) 更にエポキシ樹脂の硬化剤を含有する(2)記載の耐熱性樹脂組成物。
(4) エポキシ樹脂の硬化触媒が、窒素原子上に水素原子を有するイミダゾール誘導体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂組成物。
(5) (1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂組成物を用いて得られる接着フィルム。
(6) 2官能以上の酸無水物と2官能以上のアミンとの、モル比がアミン成分中のアミノ基/酸無水物成分中の酸無水物基=0.60〜0.99の反応生成物である骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂100重量部と、該ポリイミド樹脂の酸無水物基と反応してアミド結合を形成する2級以下のアミンであるエポキシ樹脂の硬化触媒0.1〜15重量部とを混合して上記ポリイミド樹脂と上記エポキシ樹脂の硬化触媒とを会合体とし、該会合体に分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂を配合することを特徴とする耐熱性樹脂組成物の製造方法。
(7) 上記会合体に、更にエポキシ樹脂の硬化剤を配合することを特徴とする(6)記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法。
(8) エポキシ樹脂の硬化触媒が、窒素原子上に水素原子を有するイミダゾール誘導体であることを特徴とする(6)又は(7)記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法。
(9) (6)〜(8)のいずれか1項記載の方法により製造された耐熱性樹脂組成物を用いて得られる接着フィルム。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂の硬化触媒との会合体を含有するものであり、好ましくは上記会合体と、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、必要によりエポキシ樹脂の硬化剤とを含有するものである。
【0010】
本発明のポリイミド樹脂は、2官能以上のアミン成分、好ましくは2官能性のアミン成分と2官能以上の酸無水物成分、好ましくは2官能性の酸無水物成分とを反応させて得られるものであり、本発明のポリイミド樹脂の製造に使用される2官能以上の酸無水物成分としては、特に限定されないが、好ましくはピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−カルボキシフェニル)スルホン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−メタン、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−エタン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルなど又はこれらの二無水物、エステルなどの反応性誘導体から選ばれた1種又は2種以上である。
【0011】
また、本発明のポリイミド樹脂の製造に使用される2官能以上のアミン成分としては、特に限定されないが、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、o−,m−,p−フェニレンジアミン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノジュレン、ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、ジアルキル−4,4’−ジアミノジフェニル、ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニルヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジアミノジフェニル、3,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、2,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、3,3’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビストリフルオロメチル−5,5’−ジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルキル)−4,4’−ジアミノジフェニル、ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジブロモ−4,4’−ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルコキシ)−4,4’−ジアミノジフェニル、ジフェニル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビスナフチルアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノ(N−アルキル)ベンズアニリド等が例示でき、これら1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0012】
なお、本発明のポリイミド樹脂には、弾性率や可とう性及び溶解性を付与するためにシロキサン構造を導入することができる。このシロキサン構造を上記2官能以上のアミン成分に導入したものとしては、シロキシジアミン及びジアミノシロキサン等が挙げられ、シロキシジアミンとしては、特に限定されないが、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,2,2−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノブチル)−1,1,2,2−テトラメチルジシロキサン、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)テトラメチルジシロキサン等が挙げられ、ジアミノシロキサンとしては、例えば、下記一般式で表されるもの等が挙げられる。
【化1】
Figure 0003997421
(式中、Zは炭素数1〜8のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はエーテル結合酸素原子を含んでいてもよいアルキレン・アリーレン基であり、Rは互いに同一又は異なり、分岐を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいフェニル基である。nは4〜60の整数である。)
【0013】
ここで、上記Zのアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基等が挙げられる。エーテル結合酸素原子を含んでいてもよいアルキレン・アリーレン基としては、
【化2】
Figure 0003997421
等が挙げられる。また、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
【0014】
上記ジアミノシロキサンの使用量は、シロキサン成分がポリイミド樹脂の1〜50モル%となる量であることが好ましく、より好ましくは2〜40モル%である。シロキサン成分が1モル%未満では可とう性の付与効果が得られない場合があり、50モル%を越えると透湿性が上昇して、耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。
【0015】
本発明の骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂は、2官能以上のアミン成分と2官能以上の酸無水物成分とを、モル比がアミン/酸無水物(即ち、アミン成分中のアミノ基/酸無水物成分中の酸無水物基)=0.60〜0.99となるように使用し、好ましくはアミン/酸無水物のモル比が0.75〜0.98である。アミン/酸無水物のモル比が0.60未満であると鎖長の短いポリイミドが生成して、エポキシマトリックスに可とう性を与える架橋としてのポリイミドの特性を発揮しにくくなる場合がある。またアミン/酸無水物のモル比が0.99より大きいとポリイミド骨格中にエポキシ樹脂に対する架橋点が少なくなるため、エポキシ−ポリイミドのブロックポリマーとしての特性が発揮しにくくなる場合がある。
【0016】
本発明の骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂は、例えばあらかじめ2官能以上のアミン成分と2官能以上の酸無水物成分を反応器に仕込み、溶媒を添加して加熱することにより得ることができる。特には、反応容器中に2官能以上のアミン成分を溶媒に分散又は溶解させ、溶媒に溶解又は分散させた2官能以上の酸無水物成分を低温で滴下し、攪拌後、加熱することが好ましい。
【0017】
ここで、上記ポリイミド樹脂を作製する際の溶媒としては、通常採用される溶解力の大きいN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒や、含酸素溶媒としては、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類が例示でき、この他に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのエステル類、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン類、ブタノール、オクタノール、エチルセロソルブなどのアルコール類、更に鎖状ないし環状のアミド系、尿素系、スルフォキシド系、スルホン系、炭化水素系、ハロゲン系溶媒等をポリイミド樹脂の安定性に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0018】
本発明において、会合体の調製に用いるエポキシ樹脂の硬化触媒は、2級以下のアミンであって、酸無水物と反応をしてアミド結合を持つような化学構造であれば特に制限はない。このようなエポキシ樹脂の硬化触媒として、好ましくは窒素原子上に水素原子を有するイミダゾール誘導体であり、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
上記エポキシ樹脂硬化触媒の添加量としては、ポリイミド樹脂100重量部に対して0.1〜15重量部とし、特に0.2〜10重量部とすることが好ましい。エポキシ樹脂硬化触媒の添加量が少なすぎると硬化不良を起こしたり、硬化させる際に非常に高い温度を要する場合があり、多すぎると保存安定性に劣る接着剤となる場合がある。
【0020】
上記ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂の硬化触媒との会合体の製造方法としては、例えば、上述したような溶媒中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂の硬化触媒とを添加混合して、室温で30分〜8時間攪拌することにより得ることができる。なお、反応が遅い場合は、150℃程度まで加温してもよく、また、会合体の製造時に発熱反応が起こる場合は、氷浴中で撹拌することが好ましい。
【0021】
更に本発明においては、耐熱性や電気特性に優れた樹脂であるポリイミド樹脂に、熱硬化性樹脂として、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、必要に応じこのエポキシ樹脂の硬化剤とを配合すれば、接着力、耐熱性、耐溶剤性に優れた樹脂組成物とすることができる。
【0022】
本発明で用いる分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のビスフェノール型樹脂、ノボラック型樹脂等のフェノール類のグリシジルエーテル、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル、アニリン、イソシアヌール酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものなどのグリシジル型(メチルグリシジル型も含む)エポキシ樹脂、分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
本発明においては、上記会合体の酸無水物基とエポキシ樹脂のエポキシ基とが硬化反応を起こすため、必ずしもそれ以上の硬化剤を配合しなくてもよいが、必要によってはエポキシ樹脂の硬化剤を硬化有効量配合することができる。本発明に用いられるエポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として働くものであれば特に制限はなく、例えば、フェノール系化合物、酸無水物、アミン系化合物等が挙げられるが、これらのうちフェノール系化合物が好ましい。フェノール系化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂;フェノール類とジメトキシパラキシレン等から合成されるキシリレン骨格を有するフェノール樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノール樹脂;シクロペンタジエン骨格を有するフェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;多環芳香族変性フェノール樹脂;キシリレン骨格を有するナフトール樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
上記エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との配合割合は、特に制限されるものではないが、硬化剤としてフェノール系化合物を使用する場合、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、フェノール系化合物中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.01〜0.99、特に0.02〜0.80の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明においては、上述したように酸無水物基とエポキシ基との反応を利用して硬化反応を行うことができるが、エポキシ基が少なすぎると被着体との接着力が十分でなくなるおそれがあり、また多すぎると過剰分のエポキシ樹脂により弾性率が上昇するため、柔軟な接着剤シートを作製できなくなるおそれがある。よって、上記会合体と、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤との配合比は、上記会合体100重量部に対して、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量が1〜900重量部、特に5〜400重量部の範囲であることが好ましい。
【0026】
また、エポキシ樹脂を硬化させるものとして、本発明では上記のように会合体又は会合体とエポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂硬化触媒が使用され、この場合、その化学当量比は特に制限されないが、エポキシ樹脂のエポキシ基/(ポリイミド樹脂の酸無水物基とエポキシ樹脂硬化剤の硬化有効基とエポキシ樹脂の硬化触媒の有効基との総量)が当量比で0.7〜1.3、特に0.8〜1.2の範囲に設定することが好ましい。この範囲に抑えることにより、それぞれの未反応分を少なく抑え、接着力、吸水量、電気特性等の経時劣化を低下させることができる。なお、硬化有効基とは、例えばフェノール樹脂のフェノール性水酸基、アミンのアミノ基、アミド基、イミダゾール環である。
【0027】
本発明の耐熱性樹脂組成物においては、更に、本発明の目的を損なわない範囲でその他の添加物を配合することができる。
【0028】
本発明の耐熱性樹脂組成物の製造方法としては、上記ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂硬化触媒の会合体、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及びその他の添加物を配合した後、成分を分離させないために、5分以上よく攪拌混合することが好ましい。
【0029】
このようにして得られた本発明の耐熱性樹脂組成物は、NMPなどの非プロトン性極性溶媒に可溶で、そのままワニスとして用いることができ、これを支持基材上に塗布すれば、銅箔などとの密着性に優れた接着フィルムを得ることができる。また、この接着フィルムを用いて、銅箔などとプレスを行うことにより、接着力、はんだ耐熱性に優れた銅張り積層フィルムを得ることができる。
なお、本発明の接着フィルムの厚さとしては、特に制限されるものではないが、5〜500μm、特に5〜100μmとすることが好ましい。
【0030】
本発明の接着フィルムは、通常160℃以上、好ましくは200℃以上の加熱によって硬化させることができる。
【0031】
【実施例】
次に、合成例及び実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
[合成例1]
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、攪拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、表1に示すように芳香族ジアミン:BAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)35.67重量部(30モル%)と反応溶媒としてシクロヘキサノン200重量部を仕込み、80℃で攪拌し、ジアミンを溶解した。そして酸無水物として6FDA(2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)64.33重量部(50モル%)とシクロヘキサノン100重量部の溶液をこれに滴下し、80℃で8時間攪拌反応を行った。その後、トルエン25mlを投入してから温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、水の流出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器にたまっている流出液を除去しながら、160℃でトルエンを完全に除去し、骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液400重量部を得た。次に、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液400重量部に、エポキシ樹脂硬化触媒として4.75重量部(20モル%)の1H,2−メチルイミダゾール(2MZ)を添加して室温にて2時間攪拌したところ、褐色透明の液体となり、エポキシ樹脂硬化触媒と会合したポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0033】
[合成例2〜4]
表1に示す配合量で各種ジアミン(シロキサンジアミン:KF−8010(信越化学工業株式会社製)、芳香族ジアミン:BAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))をシクロヘキサノン200重量部に溶解させた以外は合成例1に準拠して、骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液を得た。次にポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液400重量部に表1に示す配合量の1H,2−メチルイミダゾール(2MZ)を添加して室温にて2時間攪拌したところ、褐色透明の液体となり、エポキシ樹脂硬化触媒と会合したポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0034】
[合成例5〜8]
表2に示す配合量で各種ジアミン(シロキサンジアミン:KF−8010(信越化学工業株式会社製)、芳香族ジアミン:BAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))をシクロヘキサノン200重量部に溶解させた以外は合成例1に準拠して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液を得た。次にポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液400重量部に表2に示す配合量の1H,2−メチルイミダゾール(2MZ)を添加して室温にて24時間攪拌したが、この溶液は乳褐色の液体のまま変化せず、エポキシ樹脂硬化触媒とポリイミド樹脂の混合シクロヘキサノン溶液であった。
【0035】
【表1】
Figure 0003997421
【0036】
【表2】
Figure 0003997421
【0037】
[実施例1〜9、比較例1〜9]
合成例1〜8で得られたポリイミド樹脂と2MZのシクロヘキサノン溶液に、表3,4に示される配合比で2官能性エポキシ樹脂:RE310(日本化薬社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、180g/Eq)及びエポキシ樹脂の硬化剤:TD−2131(大日本インキ社製、フェノールノボラック樹脂、110g/Eq)を添加後、攪拌し、耐熱性樹脂組成物を得た。この組成物を乾燥後の膜厚が50μmになるようにテフロンフィルム上に塗布し、80℃で30分間乾燥させて接着フィルムを得た。
この接着フィルムについて、以下に示す方法で、耐溶剤性、ガラス転移点、ヤング率、銅ポリイミド接着強度を測定した。これらの結果を表3,4に併記する。
【0038】
〈耐溶剤性〉
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた接着フィルムをテフロンフィルムから剥がし、ステンレス枠に固定して175℃で1時間熱処理し、乾燥硬化させた。この20mm×20mm×50μmの接着フィルム上に0.03gのアセトンを滴下して、25℃で1時間放置後、表面を目視にて観察し、アセトンに対する耐溶剤性を観察した。
【0039】
〈ガラス転移点〉
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた接着フィルムをテフロンフィルムから剥がし、ステンレス枠に固定して175℃で1時間熱処理し、乾燥硬化させた。この20mm×5mm×50μmの接着フィルムのガラス転移点を測定した。測定には、熱機械特性測定装置TMA−2000(アルバック理工製)を用い、引張りモード、チャック間距離15mm、測定温度25〜300℃、昇温速度10℃/分、測定荷重10gの条件でガラス転移点を測定した。
【0040】
〈ヤング率〉
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた接着フィルムをテフロンフィルムから剥がし、ステンレス枠に固定して175℃で1時間熱処理し、乾燥硬化させた。この20mm×5mm×50μmの接着フィルムの動的粘弾性率を測定した。測定には動的粘弾性測定装置を用い、引張りモード、チャック間距離15mm、測定温度20〜300℃、昇温速度5℃/分、測定周波数30Hzの条件で、25℃におけるヤング率を測定した。
【0041】
〈銅ポリイミド接着強度〉
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた接着フィルムをテフロンフィルムから剥がし、この接着フィルムをポリイミドフィルムと銅箔の間に重ね合わせて、圧力をかけながら115℃に加熱したラミネートロール間を2回通過させることにより圧着し、この圧着した積層体を80℃で3時間、120℃で2時間、150℃で2時間、180℃で3時間、窒素気流中、加熱処理して接着フィルムを硬化させ、積層体を製造した。得られた積層体の銅箔をエッチングして、JIS C 6471準拠の試験片を作製し、これを用いて接着強度を測定した。
ここで、耐熱性フィルム基材としては、東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム「カプトン100V」(厚み25μm)を、銅箔としては、ジャパンエナジー社製圧延銅箔「BHY22BT」(厚み35μm)を用いた。また、接着強度は、島津社製の引張り試験機を用いて、剥離速度50mm/分の条件で測定した。なお、90度方向の引き剥がしに関しては回転ドラム型支持金具を用いた。
【0042】
〈熱履歴後の接着強度〉
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた80℃で30分間乾燥させた接着フィルムに、更に100℃で30分熱履歴を加えた。テフロンフィルムから剥がしたこの接着フィルムをポリイミドフィルムと銅箔の間に重ね合わせて、圧力をかけながら115℃に加熱したラミネートロール間を2回通過させることにより圧着し、この圧着した積層体を80℃で3時間、120℃で2時間、150℃で2時間、180℃で3時間、窒素気流中、加熱処理して接着フィルムを硬化させ、積層体を製造した。得られた積層体の銅箔をエッチングして、JIS C 6471準拠の試験片を作製し、これを用いて接着強度を測定した。
ここで、耐熱性フィルム基材としては、東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム「カプトン100V」(厚み25μm)を、銅箔としては、ジャパンエナジー社製圧延銅箔「BHY22BT」(厚み35μm)を用いた。また、接着強度は、島津社製の引張り試験機を用いて、剥離速度50mm/分の条件で測定した。なお、90度方向の引き剥がしに関しては回転ドラム型支持金具を用いた。
【0043】
【表3】
Figure 0003997421
【0044】
【表4】
Figure 0003997421
【0045】
表3,4から明らかなように、実施例1〜9の骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を含有した接着フィルムは、アセトンに対して不溶であり、膨潤や溶解は観察されなかったが、比較例1〜9の骨格中に酸無水物基がないポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を含有した接着フィルムは膨潤や溶解が観察された。
また、実施例1〜9の骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を含有した接着フィルムは、比較例1〜9の骨格中に酸無水物基がないポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を含有した接着フィルムに比べて、高いガラス転移点、低いヤング率、高い接着力を示し、熱履歴後においても高い接着力を示した。
【0046】
【発明の効果】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、接着性、耐熱性、保存安定性、耐溶剤性が要求されるワニス、接着剤及び接着フィルム等に使用でき、塗料分野、配線板・電気分野、自動車分野、建築・建材分野等に幅広く使用することができる。そして、本発明の耐熱性樹脂組成物は、従来の樹脂に比べて、特に耐熱性に優れるだけでなく、乾燥性、フィルム成形性、電気特性などにも優れた特性を示し、また、溶媒に可溶であるため、取り扱いも容易である。更に本発明の接着フィルムを層間絶縁性の接着剤として使用した場合、加熱による機械特性の低下を防ぎ、層間絶縁抵抗や耐熱信頼性が向上するほか、従来の樹脂系では対応できなかったような高温のプロセスにおいても用いることができる。

Claims (9)

  1. 2官能以上の酸無水物と2官能以上のアミンとの、モル比がアミン成分中のアミノ基/酸無水物成分中の酸無水物基=0.60〜0.99の反応生成物である骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂100重量部、該ポリイミド樹脂の酸無水物基と反応してアミド結合を形成する2級以下のアミンであるエポキシ樹脂の硬化触媒0.1〜15重量部とを混合して得られた上記ポリイミド樹脂と上記エポキシ樹脂の硬化触媒との会合体を含有すること特徴とする耐熱性樹脂組成物。
  2. 更に、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項記載の耐熱性樹脂組成物。
  3. 更にエポキシ樹脂の硬化剤を含有する請求項記載の耐熱性樹脂組成物。
  4. エポキシ樹脂の硬化触媒が、窒素原子上に水素原子を有するイミダゾール誘導体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐熱性樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項記載の耐熱性樹脂組成物を用いて得られる接着フィルム。
  6. 2官能以上の酸無水物と2官能以上のアミンとの、モル比がアミン成分中のアミノ基/酸無水物成分中の酸無水物基=0.60〜0.99の反応生成物である骨格中に酸無水物基を有するポリイミド樹脂100重量部と、該ポリイミド樹脂の酸無水物基と反応してアミド結合を形成する2級以下のアミンであるエポキシ樹脂の硬化触媒0.1〜15重量部とを混合して上記ポリイミド樹脂と上記エポキシ樹脂の硬化触媒とを会合体とし、該会合体に分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂を配合することを特徴とする耐熱性樹脂組成物の製造方法。
  7. 上記会合体に、更にエポキシ樹脂の硬化剤を配合することを特徴とする請求項6記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法。
  8. エポキシ樹脂の硬化触媒が、窒素原子上に水素原子を有するイミダゾール誘導体であることを特徴とする請求項6又は7記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法。
  9. 請求項6乃至8のいずれか1項記載の方法により製造された耐熱性樹脂組成物を用いて得られる接着フィルム。
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