JP3997178B2 - CrMoV鋼材の非破壊的なクリープ損傷評価法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電設備や加熱炉等の、高温下で長期間使用される鋼材のクリープ損傷の進行度合いを非破壊的に且つ高精度に評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所のボイラ等に用いられるCrMoV鋼材は長期にわたる使用によりクリープ損傷を受けるため、使用の過程において非破壊的にクリープ損傷を調査して、管理する必要がある。従来の非破壊的なクリープ損傷評価法としては、顕微鏡によりクリープボイドの数を計測し、その数によりクリープ損傷の進行度合いを評価する「クリープボイド観察法」、鋼材の硬さの低下度合いにより評価する「硬さ法」、及び鋼材の電気抵抗の変化により評価する「電気抵抗法」等がある。
【0003】
しかしながら、従来の非破壊的なクリープ損傷の評価方法のうち、「クリープボイド観察法」はクリープボイドを目視により直接観察できる反面、クリープボイドの判別に個人差が生じやすいという欠点があった。また、「硬さ法」及び「電気抵抗法」はいずれも実機での計測が比較的容易であるという利点があるが、「硬さ法」ではクリープ損傷後期以降における評価精度が低下し、また「電気抵抗法」ではクリープ損傷中期以降の評価ができないという問題点があった。
【0004】
一方、CrMoV鋼材は炭化物が微細に析出していることによりクリープ強度が保たれているが、クリープ損傷を受けるとその炭化物が凝集粗大化するとともに、炭化物の形態が変化することが知られている。例えば、CrMoV鍛鋼材の場合、初期の鍛鋼材に含有されているFe3Cがクリープ損傷の進行に伴って徐々にM23C6(Mは主にCrである)型炭化物に変化することを利用し、鍛鋼材中のM23C6型炭化物のFe3Cに対する含有量比を計測することによりクリープ損傷の進行度合いを評価する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は、抽出レプリカ法により非破壊的に炭化物をCrMoV鍛鋼材から採取し、得られた炭化物をX線回折分析により調査するものであり、簡便で人為的な判断が入らない評価手法である。
【0005】
しかしながら、CrMoV鋼材のうち、実用機のCrMoV鋳鋼材など、クリープ損傷の評価に上記のM23C6型炭化物の析出量を指標とする方法が適用できない部材があり、このようなCrMoV鋼材において、簡便且つ高精度にクリープ損傷の進行度合いを評価できる方法が求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−257788号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、鋳造品などのCrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを簡便且つ高精度に評価できる方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等が、火力発電設備の車室やバルブなど、CrMoV鋼材製の経年劣化した部材の析出物を分析したところ、同一の使用条件にも関わらず、M23C6型炭化物の析出量が多いものとM6C型炭化物の多いものとがあることが分かった。このように、同じCrMoV鋼材でも炭化物の析出の挙動に違いが生じるのは、部材の製造時(加工時)における熱処理条件の違い、並びにCrMoV鋼材の初期のビッカース硬度及び引張強さなどの初期の物理的性質の違いに起因することを、本発明者等は見出した。そして、このようなM6C型炭化物の析出が顕著となるようなCrMoV鋼材を特定すべく、本発明者等が更に検討を進めた結果、初期のビッカース硬さが200以下、又は初期の引張強さが640N/mm2以下であるCrMoV鋼材において、クリープ損傷の進行に伴ってM6C型炭化物の析出が顕著となり、このM6C型炭化物の析出量を、クリープ損傷の進行度合いの指標とすることができることを知見した。
【0009】
CrMoV鋼材の初期のビッカース硬度及び引張強さは、CrMoV鋼材の製造時(加工時)における熱処理条件によって変化する。例えば、製造時の熱処理温度が比較的低い鍛造品では、初期の鍛造品に析出する炭化物がFe3Cを主とするものであるに対し、製造時の熱処理温度の高い鋳造品においては、初期の鋳造品に析出する炭化物がM7C3型を主とするものとなっている。このような熱処理条件の差及びそれに伴う初期析出物(炭化物)の違いは、CrMoV鋼材の初期のビッカース硬さ及び/又は引張強さの違いに現れ、本発明の評価方法の対象である初期のビッカース硬度又は引張強さを有するCrMoV鋼材は、後者の製造時の熱処理温度が高く、初期の析出物がM7C3型炭化物を主とするものである。そして、このM7C3型炭化物は、クリープ損傷の進行に伴って徐々にM6C3型炭化物に変化する。よって、CrMoV鋼材中におけるM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比を測定することによって、該CrMoV鋼材のクリープ損傷の進行の度合い、即ち余寿命を評価することができる。
【0010】
このように、本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、初期のビッカース硬さが200以下、又は初期の引張強さが640N/mm2以下のCrMoV鋼材では、クリープ損傷の進行に伴って増加するM6C型炭化物の含有量を指標とすることにより、該CrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを評価できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、初期のビッカース硬さが200以下、又は初期の引張強さが640N/mm2以下のCrMoV鋼材のクリープ損傷を非破壊的に評価する方法であって、前記CrMoV鋼材表面に析出した炭化物を採取し、該炭化物中におけるM7C3型炭化物の含有量に対するM6C型炭化物の含有量の比を測定し、該測定結果より前記CrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを評価する、CrMoV鋼材のクリープ損傷評価法に関する。
【0012】
上記本発明のクリープ損傷評価法は、CrMoV鋼材が鋳造品である場合に好適に用いることができる。
【0013】
また、上記本発明のクリープ損傷評価法では、X線回折分析により得られるチャートにおけるM7C3型炭化物及びM6C型炭化物のそれぞれのピーク強度より、前記M7C3型炭化物の含有量に対するM6C型炭化物の含有量の比を測定することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、初期のビッカース硬さが200以下のCrMoV鋼材、又は初期の引張強さが640N/mm2以下のCrMoV鋼材のクリープ損傷を非破壊的に評価する方法であって、CrMoV鋼材表面に析出した炭化物を採取し、該炭化物中におけるM7C3型炭化物の含有量に対するM6C型炭化物の含有量の比を測定し、該測定結果より前記CrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを評価する、CrMoV鋼材のクリープ損傷評価法である。
【0015】
即ち、本発明の評価方法を用いることにより、CrMoV鋼材のクリープ損傷の評価において、従来のM23C6型炭化物の析出量を指標とする方法が適用できなかった部材についても、簡便に且つ高精度な非破壊評価を行うことができる。
【0016】
本発明のクリープ損傷評価法の評価対象となるCrMoV鋼材は、初期のビッカース硬度が200以下のCrMoV鋼材又は初期の引張強さが640N/mm2以下のCrMoV鋼材である。本発明の評価対象となるCrMoV鋼材は、必須成分としてCr、Mo及びVを必須成分とする鋼材である。鋼材中におけるこれら必須成分の含有量としては、例えば、Crが1.00〜1.50%、Moが0.90〜1.20%、Vが0.15〜0.25%である。CrMoV鋼材は、他の成分として、Cを0.20%以下、Siを0.60%以下、Mnを0.50〜0.80%、Pを0.025%以下、Sを0.015%以下、Niを0.75%以下、更に他の不純物を含んでいてもよく、これら各成分の含有量は上記のみに限定されるものではない。
【0017】
また、本発明の評価方法が適用できるCrMoV鋼材は、初期のビッカース硬さが200以下、又は初期の引張強さが640N/mm2以下のものである。本発明におけるCrMoV鋼材の初期のビッカース硬度は200〜176であることが好ましい。また、初期の引張強さは、640〜550N/mm2であることが好ましい。
【0018】
本発明において「初期のビッカース硬さ」又は「初期の引張強さ」とは、新材、即ち部材の製造(又は加工)直後のCrMoV鋼材のビッカース硬さ又は引張強さを示す。一般に、クリープ損傷は長期にわたって使用された部材について評価するので、その性質上、新材のビッカース硬さや引張強さなどの物性値を得ることが困難なこともある。本発明においては、新材でなくとも評価対象のCrMoV鋼材においてクリープ損傷を受けていない部分のビッカース硬さ又は引張強さを、初期の値と見なす。
【0019】
なお、本発明において、ビッカース硬さは、JIS Z 2244ビッカース硬さ試験で測定した硬さである。また、JIS Z 2243ブリネル硬さ試験、JIS Z 2245ロックウェル硬さ試験等の方法より得られた硬さ、或いはエコーチップやシェア硬さ計などで計測した硬さを、硬さ換算表や換算式などを用いてビッカース硬さに換算して求めることもできる。
【0020】
また、本発明における引張強さは、JIS Z 2201金属材料引張試験片或いはその他の規格に準拠した試験片を用いて、例えばJIS Z 2241金属材料引張試験方法或いはその他の規格に準拠した方法で試験を行い、測定された引張強さである。また、引張強さは、硬さの値から硬さ換算表などを用いて算出することもできる。
【0021】
上述したように、本発明の評価対象である初期のビッカース硬さ又は引張強さを有するCrMoV鋼材は、鋳造品などの製造時の熱処理温度が高いものである。従って、本発明の評価方法は、鋳造によって成形されたもの(鋳造品)に好適に用いることができる。
【0022】
このように、初期のビッカース硬さ及び/又は引張強さを基準として本発明の評価方法を適用する以外に、CrMoV鋼材が鋳造により製造されたもの(鋳造品)であることに基づいて、本発明の評価方法を適用することも好ましい。
【0023】
また、本発明の評価方法の対象とされるCrMoV鋼材は、クリープ損傷を受ける程度の熱にさらされたCrMoV鋼材である。具体的には、火力発電設備のタービン車室などの500℃以上の高温下で使用されるCrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いの評価に、本発明の方法を好適に使用できる。
【0024】
本発明の評価方法において、CrMoV鋼材の表面に析出した炭化物を採取する方法としては、任意の方法を用いることができ、特に限定されないが、このような析出物の採取法として従来より一般に用いられている抽出レプリカ法を好ましく用いることができる。これは、薄膜を評価対象のCrMoV鋼材表面に付着した後に剥離することにより、鋼材表面の炭化物(以下、「析出炭化物」ということがある)を該薄膜に転写させ、転写された炭化物を薄膜から分離する方法である。
【0025】
薄膜としては、予め用意されたもの(レプリカフィルム)を用いてもよいし、プラスティック液をCrMoV鋼材表面に塗布し、これを乾燥させることにより溶媒を揮発させて薄膜を形成するものであってもよい。また、薄膜をCrMoV鋼材表面に付着させるに際し、鋼材表面を機械的に研磨し、鏡面処理を施した後に、適当な腐食液を用いて該鋼材表面を腐食させる必要がある。
【0026】
このようにCrMoV鋼材表面から採取された炭化物中のM7C3型炭化物及びM6C型炭化物の同定及び定量方法としては、X線回折や、電子顕微鏡写真とXMA解析により得られるマッピング画像とを対照させる方法など、種々の方法を用いることができ、特に限定されないが、簡便に且つ高精度に同定及び定量することができるという点から、X線回折による分析を行うことが好ましい。
【0027】
X線回折を用いた析出炭化物中のM7C3型炭化物及びM6C型炭化物の同定及び定量は、以下の方法により行うことができる。X線回折(CuKα)によりM7C3型炭化物を分析すると、チャート上で2θ=50.5deg、52.7degの位置にピークが認められる。同様に、M6C型炭化物に関しては、2θ=32.4deg、35.2deg、46.5degの位置にピークが認められる。析出炭化物をX線回折により分析し、これらM7C3型炭化物及びM6C型炭化物のそれぞれのピーク強度を測定する。M7C3型炭化物のピーク強度に対するM6C型炭化物のピーク強度の強度比(M6C型炭化物のピーク強度/M7C3型炭化物のピーク強度)を求め、これを析出炭化物中におけるM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比とすることができる。
【0028】
析出炭化物中のM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比より、CrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを好ましく測定できる方法を以下に述べる。クリープ損傷の度合いを示す指標の一つとして、クリープ寿命消費率を用いることができる。まず、このクリープ寿命消費率を上記析出炭化物中のM6C型炭化物の含有量比と対応づけるために、検量曲線を作成する。検量曲線の作成に際して、新材及び既知のクリープ寿命消費率を有する種々のCrMoV鋼材を検量曲線作成用のサンプルとして用意する。これらのCrMoV鋼材サンプルについて、上述したX線回折分析により析出炭化物中のM6C型炭化物/M7C3型炭化物の含有量比を測定する。この結果よりクリープ寿命消費率と上記含有量比との関係(検量曲線)が得られる。そして、評価対象のCrMoV鋼材について析出炭化物を採取し、この中のM6C型炭化物/M7C3型炭化物の含有量比を測定し、測定結果を上記検量曲線に当てはめることにより、該鋼材のクリープ寿命消費率を得ることができる。
【0029】
上記のクリープ寿命消費率と析出炭化物の含有量比との関係を求める際の、検量曲線作成用サンプルとしてのCrMoV鋼材のクリープ寿命消費率を求める方法として、以下の方法が挙げられる。まず、CrMoV鋼材の析出炭化物を採取した部位と同一の部位からクリープ試験片を採取してクリープ破断試験を行い、得られたクリープ破断曲線を新材のそれと比較して、クリープ寿命消費率を求める方法を用いることができる。他の方法として、新材(又はクリープ損傷を受けていない鋼材)を用いてクリープ破断試験を行い、所定時間経過後に試験を中断して炭化物の抽出、分析を行う。この時の試験中断までの経過時間と同一試験条件における破断時間との比から、クリープ寿命消費率を求めるというクリープ途中止め試験を用いてもよい。更に他の方法によりクリープ寿命消費率を求めてもよく、特に限定されない。
【0030】
上述したような方法を用いて得られた、CrMoV鋼材のクリープ寿命消費率と析出炭化物中におけるM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比との関係を表すグラフ(検量曲線)の一例を図4に示す。本発明の評価方法によれば、評価対象のCrMoV鋼材について析出炭化物中のM6C型炭化物の含有量比を上記X線回折分析により測定し、得られた含有量比をこの図4の曲線に当てはめることによりクリープ寿命消費率を求めることができ、これより該CrMoV鋼材の余寿命を評価することができる。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0032】
火力発電設備で使用されていたタービン車室より、表1に示す組成を有する1〜4の試料を採取した。試料1〜3は、車室の高温部(566℃)から採取した損傷材である。試料4は、車室の低温部(100℃)から採取したものであり、使用前と同等の金属組織、特性を有する新材相当材である。なお、試料4のビッカース硬さ及び引張強さを発明の実施の形態で述べた方法により測定したところ、ビッカース硬さが189であり、引張強さは605N/mm2であった。また、試料1〜4に用いられたタービン車室は、鋳造により成形されたものである。
【0033】
【表1】
【0034】
図1は、本発明で用いる析出炭化物の抽出及び分析の手順を示す図である。試料1〜4より析出炭化物を以下の方法により採取した。まず、試料表面をダイヤモンドペーストを用いて研磨した。次に上記研磨面を30%硝酸アルコール溶液を用いてエッチングした。エッチングされた試料表面に、酢酸メチルに浸したアセチルセルロース製のレプリカフィルムを、気泡が入らないように付着させ、1〜2分間放置した。試料からレプリカフィルムを剥離し、これをアセトンに浸してレプリカフィルムから析出炭化物を分離した。分離された析出炭化物を含む溶液を吸引濾過し、目的の炭化物をフィルター上に採取した。
【0035】
得られたフィルターを良く乾燥させた後に、試料1〜4に関して、X線回折装置による測定を行った。試料1(損傷材)のX線回折チャートを図2に、試料4(新材相当材)のX線回折チャートを図3に、それぞれ示す。試料1(損傷材)のチャートから、M6C型炭化物のピーク及びM7C3型炭化物のピークが検出された。一方、試料4(新材相当材)のチャートにおける主たるピークはM7C3型炭化物のものであり、M6C型炭化物のピークはほとんど検出されなかった。即ち、損傷材でM6C型炭化物が生成していたことが分かった。各試料1〜4について、それぞれのX線回折チャートのM7C3型炭化物のピーク強度に対するM6C型炭化物のピーク強度の比(M6C型炭化物のピーク強度/M7C3型炭化物のピーク強度)を測定し、これをM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比とした。
【0036】
試料1〜3のクリープ寿命消費率は、以下のように測定した。各試料において、析出炭化物を採取した部位と同一の部位からクリープ試験片を採取してクリープ破断試験を行い、得られたクリープ破断曲線を新材のそれと比較することによりクリープ寿命消費率を求めた。
【0037】
一方、試料4については、まず上記試料1〜3と同様にクリープ試験片を採取してクリープ破断試験を行った。クリープ破断試験開始後、所定時間経過後に試験を中断して上記と同様の方法により析出炭化物を抽出し、X線回折分析し、M7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比を求めた。また、試料4のクリープ破断試験を別途実施し、得られたクリープ破断時間より上記試験中断試料のクリープ寿命消費率を求めた。即ち、試験中断までの時間とクリープ破断時間の比より、中断時におけるクリープ寿命消費率を求めた。このようなクリープ途中止め試験を繰り返して行うことにより、異なるクリープ寿命消費率における析出炭化物中のM6C型炭化物の含有量比をそれぞれ求めた。
【0038】
試料1〜4について得られた、クリープ寿命消費率と、析出炭化物中のM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比との関係を図4に示す。図4より、本実施例で用いられたCrMoV鋳鋼材は、クリープ寿命消費率が大きくなるに従って、M6C型炭化物の含有量比が増加していることが分かる。この結果より、特定のビッカース硬さ及び/又は引張強さを有するCrMoV鋼材の析出炭化物中のM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比を用いることにより、該CrMoV鋼材のクリープ寿命消費率を評価できることが示された。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、鋳造品などの特定の物性を有するCrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを、簡便に且つ高精度に評価できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるCrMoV鋼材からの析出炭化物の抽出及び分析方法の手順を示す図
【図2】実施例の試料1(損傷材)の析出炭化物のX線回折チャート
【図3】実施例の試料4(新材相当材)の析出炭化物のX線回折チャート
【図4】本発明におけるクリープ寿命消費率と析出炭化物中のM7C3型炭化物に対するM6C型炭化物の含有量比との関係の一例を示すグラフ
Claims (3)
- 初期のビッカース硬さが200以下、又は初期の引張強さが640N/mm2以下のCrMoV鋼材のクリープ損傷を非破壊的に評価する方法であって、
前記CrMoV鋼材表面に析出した炭化物を採取し、該炭化物中におけるM7C3型炭化物の含有量に対するM6C型炭化物の含有量の比を測定し、該測定結果より前記CrMoV鋼材のクリープ損傷の進行度合いを評価する、CrMoV鋼材のクリープ損傷評価法。 - 前記CrMoV鋼材が鋳造品である、請求項1記載のCrMoV鋼材のクリープ損傷評価法。
- X線回折分析により得られるチャートにおけるM7C3型炭化物及びM6C型炭化物のそれぞれのピーク強度より、前記M7C3型炭化物の含有量に対するM6C型炭化物の含有量の比を測定する、請求項1又は2記載のCrMoV鋼材のクリープ損傷評価法。
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