JP2012132933A - 耐熱鋼の劣化評価方法およびタービンの劣化評価方法 - Google Patents

耐熱鋼の劣化評価方法およびタービンの劣化評価方法 Download PDF

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【課題】耐熱鋼、特に高Cr鋼に発生する熱的損傷であるクリープ損傷を非破壊で判定し、耐熱鋼の劣化を評価する方法、および、この方法を用いたタービンの劣化評価方法を提供する。
【解決手段】本発明の耐熱鋼の劣化評価方法は、検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度を算出し、耐熱鋼の多軸度で規格化し、予め作成された、耐熱鋼の寿命比と多軸度で規格化したボイドの個数密度との相関を表すグラフに基づき、検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度を前記多軸度で規格化した値から検査対象の耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを判定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱鋼、特に高Cr鋼の熱的損傷による劣化の評価方法、及びこれを用いたタービンの劣化評価方法に関するものである。
蒸気タービンやガスタービンは、ロータ、主要弁、車室などから構成されている。これら高温部材には、低合金鋼や、より高温で使用される部位にはCrを9〜12重量%含有する高Cr鋼が用いられる。
タービンを高温で長時間運転することにより、高温部材はクリープ損傷、脆化、疲労などの熱的損傷を受ける。例えば、タービン用ロータの翼溝部では、運転中に高温となるとともに、遠心応力が負荷されて多軸応力場となり、クリープ損傷が発生しやすい。また、車室や主要弁でも同様に内圧が負荷されて多軸応力場となり、クリープ損傷が発生する。さらに、タービン用ロータのような回転部品では、高温で長時間使用することによる脆化も重要な問題となる。このように、タービン高温部の各部位によって熱的損傷の発生状況は異なっている。従って、それぞれの部位の高温部材の劣化を非破壊で検出し、高精度で早期に劣化度合いを評価する保守管理を行う必要がある。
低合金鋼のクリープ損傷を評価する手法としては、硬さ法、Aパラメータ法、電気抵抗法などが実用化されている。また、脆化を評価する手法としては、粒界溝エッチング法などが実用化されている。
しかし、高Cr鋼は、金属組織がマルテンサイト組織でありベイナイト組織を有する低合金鋼とは異なるために、損傷モードが低合金鋼と異なり、従来の低合金鋼のクリープ損傷評価手法や脆化評価手法を適用できない。
高Cr鋼表面のクリープ損傷を非破壊で評価する方法は、例えば特許文献1から3に開示されている。
特許第1547716号公報 特開昭64−53156号公報 特許第2084622号公報
特許文献1及び2は、使用中に高Cr鋼に析出する析出物(ラーベス相)の析出量から当該温度における使用時間を推定し、当該温度と応力とから推定されるクリープ破断時間と使用時間との差を残寿命として評価するものである。このように、高Cr鋼に発生する析出物量の変化からクリープ損傷を評価するが、脆化の評価については記載されていない。また、特許文献3は、ボイド分布状況とクリープ損傷との相関を用いてクリープ損傷を評価している。これは、低合金鋼や溶接熱影響部などのボイド発生の大きい材料や部位については効果的な方法である。しかし、高Cr鋼ではボイド発生量が少なく、また、応力場の影響を多分に受けるため、評価部位によって応力状態が異なるタービン高温部材においては、単一的なボイド評価カーブを用いた評価では評価精度が不十分である。例えば、高Cr鋼は、短軸クリープ試験ではボイドの発生が確認できないまま破断に至るのに対して、切欠きクリープ試験や内圧クリープ試験などの多軸応力場における試験ではボイド発生が確認される。このように、応力状態によりボイド発生量が異なっている。
以上のように、高Cr鋼の脆化や多軸応力場におけるクリープ損傷を非破壊かつ高精度で評価する手法は現在のところ報告されていない。高Cr鋼に関する熱的損傷による劣化の体系的な評価手法は確立されていないのが現状である。
タービンの保守管理においては、使用温度や応力状態の異なる各部位について表面および内部に発生する種々の熱的損傷を反映した評価を行い、精度の高いタービン全体の劣化評価を迅速に行うことが求められる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、耐熱鋼、特に高Cr鋼に発生するクリープ損傷と脆化を非破壊で判定し、耐熱鋼の劣化を評価する方法を提供するものである。また、本発明の耐熱鋼の劣化評価方法を用いて、耐熱鋼を使用したタービン、特にロータ、車室、主要弁といったタービン高温部の劣化を評価する方法を提供するものである。
すなわち、本発明の参考例は、検査対象の耐熱鋼の表面に生成した析出物を検出し、該検査対象の耐熱鋼の表面に生成した析出物の面積率を算出し、予め作成された、脆化指標と耐熱鋼に生成した析出物の面積率との相関を表すグラフに基づき、前記検査対象の耐熱鋼の表面に生成した析出物の面積率から検査対象の耐熱鋼の脆化の度合いを判定する耐熱鋼の劣化評価方法を提供する。
本発明の参考例によれば、検査対象となる耐熱鋼の表面に生成した析出物を非破壊的手法により検出し、該検査対象の耐熱鋼の表面に生成した析出物の面積率を算出する。そして、得られた検査対象の耐熱鋼の表面に生成した析出物の面積率を、予め作成された脆化指標と耐熱鋼に生成した析出物の面積率との相関を表すグラフと照合して、検査対象となる耐熱鋼の脆化度合いを判定する。これにより、耐熱鋼の脆化度合いを非破壊かつ高精度に評価することが可能となる。
上記発明の参考例において、前記検査する析出物が、結晶粒界近傍の粗大析出物であることが好ましい。
耐熱鋼中に存在する析出物は、製造時にCrを主成分とするM23炭化物が結晶粒界近傍および結晶粒内に析出し、NbまたはVを主体としたMX型炭窒化物が結晶粒内に析出している。さらに経年使用中に金属間化合物であるラーベス相(Fe(Mo,W))が結晶粒界近傍に析出する。これらの析出物は経年使用中に使用温度や時間に応じた粗大化が進行するが、脆化には結晶粒界近傍の粗大析出物が影響する。このように、結晶粒界近傍の粗大析出物のみを検出して面積率を算出すれば、脆化の進行に影響しない微細析出物の面積率への寄与を除外できるので、評価精度が向上する。
上記発明の参考例において、前記検出する析出物の大きさが0.4μm以上であることが好ましい。このように、0.4μm以上の粗大な析出物のみを検出すれば、耐熱鋼素材状態の結晶粒内に存在する微細な析出物をほぼ全て除外でき、評価精度が更に向上する。
上記発明の参考例において、前記脆化指標が、延性脆性遷移温度またはシャルピー吸収エネルギーとすることができる。延性脆性遷移温度およびシャルピー吸収エネルギーは、簡便な脆性評価手法であるシャルピー衝撃試験により得られ、そのため短時間で脆性の度合いを評価することが可能となる。
本発明は、検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドを検出し、該検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度を算出し、該検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度を多軸度で規格化し、予め作成された、耐熱鋼の寿命比と多軸度で規格化したボイドの個数密度との相関を表すグラフに基づき、前記多軸度で規格化した検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度から検査対象の耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを判定する耐熱鋼の劣化評価方法を提供する。
高Cr鋼などの耐熱鋼に発生するボイドの量は耐熱鋼にかかる応力場に依存し、応力状態、特に多軸度が大きいほどボイド発生量が多くなる。本発明によると、ボイドの個数密度を耐熱鋼の多軸度で規格化するので、ボイド発生への応力場の影響を補正することができる。
そして、本発明によると、非破壊的手法で検出し算出した検査対象である耐熱鋼の表面のボイド個数密度を多軸度で規格化し、この値を予め作成された耐熱鋼の寿命比と多軸度で規格化したボイドの個数密度との相関を表すグラフと照合して、検査対象となる耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを判定する。これにより、耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを非破壊かつ高精度に評価することが可能となる。
また、上記発明において、前記ボイドの個数密度を、耐熱鋼における前記ボイドを検出した位置での多軸度で規格化することが好ましい。
耐熱鋼の多軸度は、材料の形状や部位によって異なる。ボイド個数密度を、耐熱鋼のボイドを検出した場所での多軸度で規格化すれば、多軸度の影響を除外した評価ができるので、耐熱鋼の劣化評価の精度を更に向上させることができる。
また、上記発明において、前記耐熱鋼の脆化の度合いおよび前記耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを判定することにより、検査対象の耐熱鋼の劣化の度合いを評価してもよい。
本発明及び本発明の参考例は、上記の方法を用い、耐熱鋼の脆化の度合いおよび耐熱鋼のクリープ損傷の度合いの少なくとも一方を判定することにより、タービンの劣化度合いを評価するタービンの劣化評価方法を提供する。
本発明によれば、上記の耐熱鋼の劣化評価方法をタービン、特にタービン高温部に適用することで、タービンの熱的損傷による劣化を非破壊かつ高精度で早期に評価することが可能となる。これにより、タービンの劣化を事前に予測し、劣化によってタービンが停止し経済的損失を被ることを回避することができる。
本発明及び本発明の参考例によれば、耐熱鋼、特に高Cr鋼の脆化とクリープ損傷を非破壊で判定し、耐熱鋼の劣化度合いを高精度で評価することができる。また、本発明は高Cr鋼を使用したタービンの劣化度合いを非破壊で早期に、高精度で評価できる。このため、タービンの熱的損傷による劣化を事前に予測し、タービン停止によって経済的損失を被ることを回避することができる。
耐熱鋼表面から析出したレプリカの画像処理像と、大きさが0.4μm未満の析出物を除外した画像処理像である。 耐熱鋼試験片に生成した大きさ0.4μm以上の析出物の面積率と耐熱鋼の脆性指標との相関を表すグラフである。 各種耐熱鋼試験片における生成ボイドの個数密度と寿命比との相関を表すグラフである。 多軸度で規格化した各種耐熱鋼試験片における生成ボイドの個数密度と寿命比との相関を表すグラフである。
本発明の参考例に係る耐熱鋼の劣化評価方法について、脆化の度合いを判定する場合の一実施形態を以下で説明する。
検査対象となる耐熱鋼表面の析出物の抽出レプリカを採取する。具体的には、まず検査対象となる耐熱鋼の調査位置をサンドペーパー及びバフにより研磨する。研磨面をエッチング液を用いて組織が現出するまでエッチングし、エッチングした被検面をアルコール洗浄し乾燥させる。次いで、被検面に酢酸メチルを塗布し、酢酸メチルが乾燥する前にアセチルセルロースフィルム等のレプリカフィルムを貼り付ける。レプリカフィルムが乾燥した後、被検面から剥がし、耐熱鋼表面の析出物を転写し付着させたレプリカを採取する。
採取したレプリカフィルムを走査型電子顕微鏡などの電子顕微鏡で観察し、旧オーステナイト粒界三重点を含む視野を選び、所定の観察倍率で析出物の電子顕微鏡写真を撮影する。次に、電子顕微鏡写真を画像処理し、析出物に対応するコントラストのみを抽出した2値化像に変換する。得られた2値化像から0.4μm未満の析出物に対応するコントラストを除外して粗大析出物のみのコントラストとする。このようにして検出した析出物の面積率を画像処理により算出する。
耐熱鋼中には、製造時に、Crを主成分とするM23炭化物が結晶粒界近傍および結晶粒内に析出し、NbまたはVを主体としたMX型炭窒化物が結晶粒内に析出する。さらに、高温下における経年使用により金属間化合物であるラーベス相(Fe(Mo,W))が結晶粒界近傍に析出する。これらの析出物は経年使用中に使用温度や時間に応じた粗大化が進行するが、脆化には結晶粒界近傍の粗大析出物が影響する。そこで、粒界近傍に析出した粗大なM23炭化物およびラーベス相(Fe(Mo,W))のみを抽出し、脆化の進行に影響しない微細析出物の面積率への寄与を除外することで、評価精度を向上させる。
上記の各種析出物を、走査型電子顕微鏡観察のEDS分析等により判別するのは非常に煩雑であるので、本発明の参考例では簡便的に脆化に影響する析出物を大きさで判別する。また、粒界近傍の析出物に限定するため、粗大析出物が最も密集している旧オーステナイト粒界三重点を含む視野を所定の倍率で観察する。粗大析出物のみをクローズアップさせて評価するために、検出する析出物の大きさの閾値を検討した。その結果、図1に示すように、0.4μmを閾値とし、大きさが0.4μm未満の析出物を除外して2値化像を作成すると、素材状態における粒内の微細析出物をほぼ全て除外することができた。また、長時間加熱試験を実施した耐熱鋼表面の粗大析出物に対応する部分が非常に鮮明となった。従って、大きさが0.4μm以上の析出物に対応する部分を抽出した2値化像を作成しその面積率を算出することにより、粒内に存在する微細な析出物を完全に除外でき、さらに2値化像における粗大析出物に対応する部分が鮮明となるため、面積率の算出精度が向上する。その結果耐熱鋼の脆化評価の精度を向上させることができる。
ここで、耐熱鋼試験片についての脆化指標と耐熱鋼に生成した析出物の面積率との相関を表すグラフを予め作成しておく。具体的には、実験室にて試験片を500〜600℃で最大10万時間まで長時間加熱し、上述の手順に従って試験片表面に生成した析出物の面積率を算出する。
試験片の脆化を測定する。脆化は、例えば、シャルピー衝撃試験によって測定することができる。シャルピー衝撃試験は、材料の脆性を簡便に評価する手法として有効であり、脆性評価を短時間で行える利点がある。シャルピー衝撃試験で得られた延性脆性遷移温度またはシャルピー吸収エネルギーを、脆化指標とする。
図2に、耐熱鋼試験片の生成析出物の面積率と脆性指標との相関を表すグラフを示す。同図において、脆性指標は、延性脆性遷移温度の初期値からの変化量(ΔFATT)とし、マスターカーブを作成する。
検査対象の耐熱鋼に生成した析出物の面積率の値と、図2のマスターカーブとを照合し、その面積率に対応するΔFATTの値を読み取る。このΔFATTの値を、検査対象の耐熱鋼の脆化度合いとし、耐熱鋼の劣化を評価する。
さらに、得られた検査対象となる耐熱鋼のΔFATTの値を材料の規格値と比較し、脆化による劣化進行の程度を評価することもできる。
次に、本発明に係る耐熱鋼の劣化評価方法について、クリープ損傷の度合いを判定する場合の一実施形態を以下で説明する。
脆化の度合いを判定する場合の実施形態と同様にして、検査対象となる耐熱鋼表面の金属組織のレプリカを採取し、走査型電子顕微鏡にて所定の倍率及び視野数で粒界上のボイドを観察し、電子顕微鏡写真を撮影する。
得られた電子顕微鏡写真を、画像処理によって粒界上のボイドに対応するコントラストを抽出して2値化像に変換する。このようにして検出したボイドの個数を画像処理により計測し、単位面積当たりの個数密度を算出する。
次に、検査対象の耐熱鋼のボイドの個数密度を、検査対象部位の多軸度で規格化する。耐熱鋼である高Cr鋼のボイドの発生量は、多軸度だけでなく最大主応力などの応力とも相関があるが、本発明では最も相関が強い多軸度を採用した。多軸度は、FEM計算等を用いて設計条件から算出される。高Cr鋼が多軸応力場で加熱されると、多軸度が大きいほどボイドが多く発生する。例えば、タービンロータ翼溝は各段落で翼溝形状が異なるとともに、タービン形式により翼溝形状も変わってくるため、多軸度の値に幅がある。さらに、車室や主要弁などの内圧下では翼溝と多軸度が異なっている。本発明のように、得られたボイドの個数密度を耐熱鋼の多軸度で規格化することで、多軸度の影響を除外できる。このとき、ボイドを検出した位置(レプリカを採取した位置)での多軸度で規格化すると、評価精度が更に向上するので好ましい。
ここで、別の耐熱鋼試験片を用いて、耐熱鋼のクリープ破断寿命比と多軸度で規格化したボイドの個数密度との相関を表すグラフを予め作成しておく。具体的には、切欠き試験片のクリープ試験や内圧クリープ試験を実験室において行い、任意の試験時間で試験を止め、試験片の表面および内部に生成したボイドの個数密度を計測する。試験片の多軸度は、試験片の切欠き形状や検査位置で異なるので、検査対象部位での多軸度を試験片のFEM解析により算出し、得られた多軸度でボイド個数密度を規格化する。また、各切欠き形状の試験片それぞれの破断時間を測定し、クリープ試験時間を破断時間で除算した値を寿命比とする。
図3は、耐熱鋼の各種試験片形状におけるクリープ破断寿命比t/tと生成ボイドの個数密度との相関を表すグラフである。図3には、各試験片の測定点を二乗平均した近似曲線を示し、試験片の測定点の範囲(データバンド)を網掛け部で示した。寿命比の増大とともにボイド個数密度が増大する傾向があるが、同じ寿命比であっても試験片によりボイド個数密度にばらつきが見られ、多軸度が大きい試験片でボイドが多く発生する。また、試験片表面と内部とでは、内部の方が多軸度が大きいのでボイドが多く発生する。本試験の範囲では、ボイド個数密度のばらつきは、データバンドのほぼ中央に位置している内圧クリープ先端表面のカーブに対して、最大で縦軸の2倍、最小で縦軸の1/2の範囲内(factor of 2)であった。このように、ボイド観察部の多軸度とボイド発生量に相関があるため、試験片形状や観察部位毎に別々のマスターカーブを作成する必要があり、評価が煩雑になってしまう。
図4は、図3におけるボイド個数密度を各検査位置における多軸度で規格化したグラフである。図4の網掛け部は、試験片の測定点の範囲を示している。多軸度は、試験片のFEM解析により算出した。発生したボイドの個数密度を多軸度で規格化することにより、多軸度が異なる試験片ごとのボイド個数密度のばらつきは、全データ平均線に対して、最大で縦軸の1.3倍、最小で縦軸の1/1.3の範囲内(factor of 1.3)にまで大幅に低減される。また、多軸度で規格化したボイド個数密度を基にマスターカーブを作成しているので、例えばタービン型式や検査部位によって多軸度の異なる実機において、それぞれの部位毎にマスターカーブを作成する手間が省け、評価の効率化が図られる。
検査対象の耐熱鋼に生成したボイドの個数密度を検査対象部位での多軸度で規格化した値を、図4のマスターカーブと照合し、そのボイド個数密度での寿命比t/tを読み取る。この寿命比を検査対象の耐熱鋼のクリープ損傷の度合いとし、検査対象の耐熱鋼の劣化度合いを評価する。
本発明においては、上記の方法に従って脆化度合いの判定およびクリープ損傷度合いの判定の両方を行い、これらを併せて検査対象の耐熱鋼の劣化度合いを評価することも可能である。
次に、本発明及び本発明の参考例の耐熱鋼の劣化評価方法を用いたタービンの劣化評価方法の一実施形態を説明する。
ロータ、車室、主要弁などタービン高温部の調査位置の表面から、上述の工程により金属組織のレプリカを採取する。
タービン高温部の脆化による劣化を評価する。採取したレプリカフィルムを走査型電子顕微鏡で観察し、旧オーステナイト粒界三重点を含む視野を選び、所定の観察倍率で電子顕微鏡写真を撮影する。次に、電子顕微鏡写真を画像処理して、大きさが0.4μm以上の結晶粒界上の粗大析出物に対応するコントラストのみを抽出し2値化像を作成し、その面積率を算出する。
次いで、図2に示す、試験片についての粗大析出物の面積率とΔFATTとの相関を表すマスターカーブと、タービン調査位置表面に生成した粗大析出物の面積率とを照合する。図2のマスターカーブからタービン調査位置表面の粗大析出物の面積率に対応するΔFATTの値を読み取り、タービン調査位置の脆化度合いとし、タービンの劣化度合いを評価する。
タービン高温部のクリープ損傷による劣化を評価する。採取したレプリカフィルムを走査型電子顕微鏡で観察し、顕微鏡写真を撮影する。得られた電子顕微鏡写真を画像処理し、粒界上のボイドに対応するコントラストを2値化像に変換する。このようにして検出したボイドの個数を計測し、単位面積あたりのボイド個数密度を算出する。
その後、タービンの調査位置での多軸度を、調査位置のFEM計算により算出する。そして、算出した多軸度で調査位置表面のボイド個数密度を規格化する。図4に示す、試験片についてのクリープ破断寿命比t/tと多軸度で規格化したボイド個数密度との相関を表すマスターカーブと、タービン調査位置での多軸度で規格化したボイド個数密度とを照合する。図4のマスターカーブからタービン調査位置での多軸度で規格化したボイド個数密度に対応する寿命比t/tの値を読み取り、タービン調査位置のクリープ損傷度合いとし、タービンの劣化度合いを評価する。
上記で得られたタービン高温部における脆化度合い及びクリープ損傷度合いを、それぞれの材料の規格値と比較しても良い。例えば、いずれも規格値よりも小さければタービンを継続して使用できると判断する。タービン高温部における脆化度合いあるいはクリープ損傷度合いの少なくとも一方が規格値よりも大きい場合は、タービンを交換する必要があると判断することができる。
なお、本発明の耐熱鋼の劣化評価方法、およびタービンの劣化評価方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で任意に組み合わせ可能である。

Claims (4)

  1. 検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドを検出し、
    該検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度を算出し、
    該検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度を多軸度で規格化し、
    予め作成された、耐熱鋼の寿命比と多軸度で規格化したボイドの個数密度との相関を表すグラフに基づき、前記多軸度で規格化した検査対象の耐熱鋼の表面に生成したボイドの個数密度から検査対象の耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを判定する耐熱鋼の劣化評価方法。
  2. 前記ボイドの個数密度を、耐熱鋼における前記ボイドを検出した位置での多軸度で規格化する請求項1に記載の耐熱鋼の劣化評価方法。
  3. 前記判定した検査対象の耐熱鋼のクリープ損傷の度合いから、検査対象の耐熱鋼の余寿命を評価する請求項1または請求項2に記載の耐熱鋼の劣化評価方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載する方法で耐熱鋼のクリープ損傷の度合いを判定することにより、タービンの劣化度合いを評価するタービンの劣化評価方法。
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