JP3996717B2 - 基板熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板(以下「基板」という)に対して熱処理を施す基板熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
枚葉式の基板熱処理装置として、複数のランプからの光照射によって基板を加熱処理する装置(ランプアニール装置)が知られている。このような装置は基板上に膜を形成するために多く使用されるが、その際には膜厚の均一性を確保することが重要である。従来装置においては、基板に熱処理を施して得られた膜の厚さを膜厚測定器で測定し、その膜厚測定結果に応じてランプへの加熱指令値を調節して以後の基板の熱処理を改善するという手順が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来装置は、後追い的に加熱指令値を是正するものであるため、基板の温度分布をリアルタイムで調整することができない。このため、加熱指令値を最終的に決定するまでに多くの作業を必要とするだけでなく、熱処理の内容が変更になるごとに上記の手順を繰り返して加熱指令値を再設定しなければならないという問題も生じさせる。
【0004】
そして、このような問題は膜形成処理だけでなく、基板の加熱処理一般において生じる問題である。
【0005】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、基板上の温度分布をリアルタイムに求めることができる基板熱処理装置、および、得られる温度分布に基づいて基板の加熱処理を均一に行うように制御する基板熱処理装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の基板熱処理装置は、基板の熱処理を行う装置であって、前記基板を加熱する加熱手段と、前記基板の複数の測定位置における温度を測定する複数の温度測定手段と、前記複数の測定位置のうち少なくとも2つの測定位置のそれぞれにおける測定温度に基づいて、基板の非測定位置における温度を推定する温度推定手段と、前記加熱手段の複数のゾーンの加熱指令値を、前記複数の温度測定手段による測定温度と前記温度推定手段による推定温度とに基づいて変更することによって、前記基板の温度分布を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の基板熱処理装置は、請求項1に記載の基板熱処理装置において、前記温度推定手段は、線形補間により前記非測定位置における前記基板の温度を推定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の基板熱処理装置は、請求項1または請求項2に記載の基板熱処理装置において、前記複数の測定位置は、前記基板上の特定位置からの距離が互いに異なることを特徴とする。
【0011】
請求項4の基板熱処理装置は、請求項3に記載の基板熱処理装置において、前記基板を支持して回転する基板回転手段、をさらに備え、前記基板上の前記特定位置は、前記基板の回転中心であることを特徴とする。
【0012】
請求項5の基板熱処理装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板熱処理装置において、前記複数の測定位置は、第1の直線上に配列された第1の測定位置群を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6の基板熱処理装置は、請求項5に記載の基板熱処理装置において、前記複数の測定位置は、前記第1の直線に交わる第2の直線上に配列された第2の測定位置群をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
<A.第1実施形態>
<A1.装置>
図1は、本実施形態に係る熱処理装置1の概要構成を示す縦断面図である。熱処理装置1は、半導体ウエハなどの基板Wに対するランプアニール装置であり、基板の温度を高速に昇降させるRTP(Rapid Thermal Processing)に用いられ得る。熱処理装置1は、基板Wを収容するチャンバ10と、基板Wを支持する基板支持部20と、基板Wを加熱する基板加熱部30と、基板Wの温度を測定する温度測定部40と、基板Wの温度分布を推定する温度分布推定部45と、基板加熱部30に対する加熱指令値を生成して出力する加熱指令値生成部50とを備えている。
【0016】
チャンバ10には、水路12および水路14が設けられている。水路12、14に冷却水を流すことによって、基板加熱部30の加熱によるチャンバ10の温度上昇を抑制している。
【0017】
基板支持部20は、基板Wを支持する支持リング22と、支持リング22を支える支持柱24とを有する。支持柱24は、その下部にモータ、ギア機構、マグネットなどを有する回転駆動機構26を有しており、軸AX1を中心に回転することができる。基板支持部20によって支持される基板Wは、以下に説明する熱処理中において、軸AX1を中心に回転する。また、基板Wの大きさに応じた支持リング22を設けることによって、複数の大きさの基板を支持することができる。
【0018】
基板加熱部30は、光を出射する複数のランプ32を備えており、これらの直線型のランプ32によって基板Wが加熱される。複数のランプ32は、複数のゾーンに区分されて基板に対向する位置にほぼ等間隔に配置されている。図1においては、各ゾーンZ1〜Z7にそれぞれ3つのランプが属する場合が示されている。なお、ゾーンの数および各ゾーンに属するランプの数は任意に設定することが可能である。
【0019】
温度測定部40は温度計42を備えており、これらの温度計42は基板の下方において固定されている。これらの温度計42としては、放射温度計などを用いることができる。温度計42によって、基板Wの所定位置における温度を測定する。また、温度測定部40は複数の温度計42を有しており、具体的には、温度計421〜424を有している。これらの温度計421〜424によって、各温度計に対応する複数の測定位置における基板Wの温度が測定される。
【0020】
また、温度分布推定部45は、温度測定部40による測定温度に基づいて基板の温度分布を推定する。より具体的には、温度分布推定部45が有する温度推定部46によって、複数の測定位置のうち少なくとも2つの測定位置についての相互位置関係とそれぞれにおける測定温度とに基づいて、非測定位置における基板の温度が推定される。なお、温度測定部40による測定、および温度分布推定部45による温度分布の推定については、後に詳述する。
【0021】
加熱指令値生成部50は、温度測定部40による測定温度に基づいて基板加熱部30(図1)のランプ32に対する加熱指令値を生成して、加熱指令値をランプ32に出力する。これによって、基板Wの温度などの被制御量を目標値に追従させるように最適な制御を行う。また、加熱指令値生成部50は、基板温度の面内分布を均一にするため、各ランプに固有の加熱指令値をリアルタイムに変更して制御する。
【0022】
<A2.動作>
<温度測定>
図2(a)、(b)は、熱処理装置1において基板支持部20に支持される基板Wの下方部分の状態を2つの例について表す上面図である。図2(a)の例では、複数の温度計421〜424のそれぞれは、互いに異なる半径を有する同心円上の位置における温度を測定できるように直線状に配置されている。また、図2(b)の例では、複数の温度計421〜424のそれぞれは、互いに異なる半径を有する同心円上の位置における温度を測定できるように2次元的に分散して配置されている。これらの2つの例はいずれも採用可能である。
【0023】
ここで、図2(a)、(b)のいずれの配置をも採用することができる理由について説明する。基板Wは基板支持部20(図1)の回転に伴って回転するため、基板上の回転中心から同一の距離の各部位では、所定時間内に受ける放射熱がほぼ同一量になる。よって、同一半径位置における基板温度は、その角度位置に依存せず、ほぼ同一となる。つまり、基板Wの温度分布は回転軸AX1を中心としてほぼ点対称な分布になり、基板の回転中心からの距離が互いに異なる基板上の位置の温度を測定すれば、基板の温度分布を求めることができる。すなわち、図2(a)(b)のいずれの配置の各温度計421〜424によっても、同様の結果を得ることができるのである。また、後述するように、この点対称性を利用して求められた基板Wの温度分布に基づいて、これらのゾーンに含まれるランプの加熱指令値を決定することができる。
【0024】
図3は、各ゾーンZ1〜Z7とそれらに対応する温度計421〜424の温度測定位置P1〜P4とを模式的に示す図である。なお、図3においては、各ゾーンZ1〜Z7に含まれている3つのランプ32は、それぞれ、白丸で表現されている。
【0025】
この実施形態における複数の温度計421〜424は図2(b)に示すような位置に配置されているが、図3の模式図においては、対応する温度計が各ゾーンの下方において直線的に配置されるように、すなわち図2(a)に対応するように図示されている。基板の温度は回転中心からの距離(つまり半径)のみによって一義的に決定されるものと仮定して、回転方向の角度を無視してその固有の半径に対応する位置に直線上に配置されるように表現したものである。
【0026】
中央のゾーンZ1の下方には、温度計421が配置されている。温度計421は、ゾーンZ1のランプ32が最も影響を及ぼす位置の基板温度を測定することができる。同様に、温度計422は、ゾーンZ2のランプ32により特に大きく影響を受ける位置の基板温度を測定する。温度計423および424についても同様である。
【0027】
また、中央のゾーンZ1に関してゾーンZ2〜Z4と対照的な位置にあるゾーンZ5〜Z7の各ランプ32の加熱指令値の決定にあたっては、上記の温度分布の点対称性に基づいて、温度計422〜424の測定温度を用いることができる。
【0028】
各温度計421〜424によって、ゾーンZ1〜Z4に対応する測定位置P1〜P4の基板温度を測定する。測定位置P1〜P4における測定温度に基づいて、ゾーンZ1〜Z4に属するランプ32の出力を決定することができる。
【0029】
<温度分布推定>
図3においては、温度計421〜424によって、各ゾーンZ1〜Z4が影響を及ぼす測定位置P1〜P4における温度を実際に測定する場合が示されている。
【0030】
ところで、各ゾーンZ1,Z2(Z5)、Z3(Z6)、Z4(Z7)に対応する基板部位のすべてについて、必ずしも実際に温度計による測定を行う必要はない。たとえば、次のようにして、このうちの一部の基板部位での基板温度を他の温度計による測定値に基づいて推定することも可能である。なお、以下では加熱制御のために温度情報を取り込む位置の全体を「温度参照位置」と呼び、そのうち実際に温度測定を行う位置を「測定位置」、実際には温度測定を行わないが推定演算によってその位置での温度が推定される位置を「非測定位置」と呼ぶことにする。
【0031】
図4は、そのような場合の温度計421、424、425の配置を示す図である。温度計421は測定位置P1の温度を測定し、温度計424は測定位置P4の温度を測定する。なお、温度計425は、隣接する2つのゾーンZ2,Z3の境界付近を測定位置とする温度計であるが、この温度計425も使用する場合については後述し、ここではまず2つの温度計421,424だけが存在する場合を考える。
【0032】
ここで、図4においては、図3における温度計422、423、つまり温度参照位置P2、P3の温度を直接に測定する温度計は存在しない。この場合、これらの温度参照位置(すなわち非測定位置)P2、P3の温度は、たとえば、温度計421および温度計424に対応する測定位置P1、P4の相互間の位置関係とそれぞれにおける測定温度との関係に基づいて推定することができる。
【0033】
具体的には、測定位置P1における測定温度T1と測定位置P4における測定温度T4とを線形補間して、非測定位置P2における温度の推定値T2’と非測定位置P3における温度の推定値T3’とを求めることができる。温度参照位置P1からP4までが等間隔に並んでいる場合には、この線形補間の式は次の数1および数2のようになる。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
また、温度参照位置が等間隔でない場合にも、同様の線形補間(内挿)ないしは線形近似により非測定位置の温度を推定によって求めることができる。たとえば、測定位置P1と測定位置P4との間をm:nに内分する位置の温度の推定値T’は、次の数3で表される。
【0037】
【数3】
【0038】
各位置P1、P4、P’の座標値が基板Wの回転中心を原点(極)とする極座標系で表現されている場合には、任意角度をθとして、測定位置P1(r1,θ)における測定温度T1と、測定位置P4(r4,θ)における測定温度T4とに基づいて、非測定位置P’(r,θ)における温度T’を次の数4によって推定することができる。
【0039】
【数4】
【0040】
図4中に示すように、上記で用いた2つの温度計421および温度計424以外の別の温度計425が存在する場合、この温度計425の測定温度T5も非測定位置の温度推定のためにさらに用いることもできる。既述したように、測定位置P5は、測定位置P1と測定位置P4との間において、隣接する2つのゾーンZ2,Z3の境界付近に位置している。
【0041】
この場合、非測定位置P2における温度の推定値T2’は、測定位置P5における測定温度T5と測定位置P1における測定温度T1とによって、上記と同様の線形補間を用いて推定により求めることができる。また、非測定位置P3における温度の推定値T3’は、測定位置P5における測定温度T5と測定位置P4における測定温度T4とによって、上記と同様の線形補間を用いて推定により求めることができる。このように測定位置の間隔を小さくすることにより、温度分布の推定精度を向上させることができる。
【0042】
また、線形補間以外の補間方法、たとえば、より高次の補間曲線によっても、非測定位置の温度を推定することができる。また、基板の回転中心から見て測定位置の外に非測定位置がある場合には、線形外挿によってその非測定位置の温度を推定可能である。いずれの場合も、2以上の測定位置における測定温度(温度測定結果)を使用することが好ましい。
【0043】
以上のようにして、所望の位置に関する温度を推定することにより、基板の温度分布を温度計の数で規定される空間間隔よりも精密な間隔で求めることができる。
【0044】
<制御>
上記のようにして、基板W上の測定位置での測定温度と非測定位置での推定温度とが求められると、加熱指令値生成部50が、このような温度分布に基づいて各ランプ32への加熱指令値を決定する。その加熱指令値がランプ32に出力することにより、基板Wの温度などの被制御量を目標値に追従させる。その際、加熱指令値生成部50は、基板温度の面内分布を均一にするため、各ランプに固有の加熱指令値をリアルタイムに変更して制御する。面内分布の均一化のための各ランプ32の加熱指令値の決定方法には、様々な方法を利用することができるが、ここでは、ゾーン毎に固有の基準出力指令値を生成し、その基準出力指令値をゾーン内の各ランプの加熱指令値として求める方式について説明する。
【0045】
図5は、本制御方式の概略概念図である。図5は、説明のため図を簡単化している。図5においてはゾーン数は3つのみしか示されていないが、図1におけるゾーンの一部が示されていると考えることができる。たとえば、互いに隣接ないしは連続するゾーンZa、Zbは、それぞれ図1のゾーンZ1、Z2に対応する。あるいは、ゾーンZb、Zcは、それぞれ、Z3、Z6と対応するものと考えることもできる。
【0046】
ゾーンZaに対する基準出力指令値YCaは、位置Paの温度Taに基づいたフィードバック制御系を構成する補償器Caによって決定される。このようなフィードバック制御系としては、様々な制御系を用いることができ、PID動作型の制御系はもちろん、他の様々な制御系を用いることができる。また、同様にして、ゾーンZbに対する基準出力指令値YCbも決定される。
【0047】
ここで、温度Taとしては、実際に測定された測定温度の値を用いることができるが、上記の温度分布推定によって求められた推定温度の値を用いることもできる。推定温度の値を用いる場合においては、上述したように、その位置の温度を実際に測定する温度計を配置する必要がないため、さらに少ない数の温度計で同様の結果を得ることができる。
【0048】
各ランプa1〜a3、b1〜b3に対する加熱指令値は、このようにして求められた各ゾーンZa、Zbに固有の基準出力指令値YCa、YCbの値をそれぞれ用いて定められる。
【0049】
このようにしてN個のすべてのランプ32についてそれぞれの加熱指令値を求めることにより、基板W上の温度分布を均一化することができる。
【0050】
<B.第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る熱処理装置1Bの概要構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1Bは、基板支持部20が基板を回転させるための回転駆動機構26などを有しないことと温度計の配置が異なることとを除いては、第1実施形態の熱処理装置1と同様の構成である。熱処理装置1Bの基板支持部20Bは、基板を回転させずに支持柱24によって基板Wを支持する。
【0051】
このような場合に厳密に温度分布を測定するためには、各ゾーンに対応する位置に温度計を配置することが望ましい。基板Wが回転しないので、基板W上の温度分布の点対称性が必ずしも保証されないからである。
【0052】
しかしながら、基板Wの温度分布は、完全な点対称ではないにしても、対称性を有することがある。たとえば、図1のように、直線型のランプ(以下、「直管ランプ」ともいう)32が並列的に配置されている場合には、各直管ランプ32の長手方向には、温度分布があまり変化しないことが多い。したがって、このような場合には、直管ランプ32の長手方向に直交する方向にのみ温度分布が変化すると仮定することができる。
【0053】
図7は、そのような場合の温度計の配置を示す上面図である。図7に示すように、ランプ32(一部のみ示す)に関する各ゾーンZ1〜Z7に対応する位置に温度計421〜427が配置されており、基板W上の各測定位置P1〜P7の温度を測定する。これにより、チャンバ10内における基板Wの温度分布を求めることができる。
【0054】
また、温度参照位置P1〜P7の温度は、その位置の温度を測定するための温度計を設けずに、他の温度計の測定値から推定することもできる。このような推定によって求められた値(温度推定値)によっても、基板Wの温度分布を制御することができる。温度の推定のための演算方法については、第1実施形態と同様であり、2以上の測定温度に基づいて、補間などの近似により求めることができる。
【0055】
さらに、基板の温度分布が所定の直線に関して対称になることが保証される場合には、さらに温度計の数を減らすことが可能である。図7の場合、この所定の直線は、直管ランプ32の長手方向に平行な直線である。たとえば、測定位置P5〜P7と測定位置P2〜P4とにおける温度が直線LXに関して対称であると仮定できる場合には、温度計425〜427を配置せずに温度計421〜424のみによって、温度分布を推定することも可能である。
【0056】
上記のような測定および推定によって求められた温度分布に基づいて、第1実施形態と同様の制御を行うことにより、基板の温度分布を均一にするように基板の加熱処理を行うことができる。
【0057】
<C.第3実施形態>
第3実施形態における熱処理装置1は、ランプの配置および温度計の配置が異なることを除いては、第2実施形態と同様の構成である。第2実施形態においては、特定の1方向にのみ温度分布が変化すると仮定する場合について例示したが、第3実施形態においては、2つの直交する方向に温度分布が変化すると仮定できる場合について例示する。図8は、このような基板の温度分布を与えるランプ配列の一例を示す上面図である。図8においては、直管ランプ32の平行配列が、上下に互いに直交するように配置されている。なお、図1は、図8における上下の配列の一方のみが存在する場合に相当する。図8に示すようなランプ配列の場合には、ランプ32が配列される2つの方向にのみ温度分布が変化するものとして近似できることが多い。
【0058】
図9は、この場合の温度計の配置を示す上面図である。温度計421x〜427x、421y〜423y、425y〜427yは、図に示すように十字形に配置されており、対応する位置PX1〜PX7、PY1〜PY3、PY5〜PY7の温度を測定する。特定の方向(図ではX方向)に配列される複数のランプ32aはゾーンZX1〜ZX7に区分されており、その特定方向に直交する方向(図ではY方向)に配列される他の複数のランプ32bはゾーンZY1〜ZY7に区分されている。温度計421x〜427xによれば、X方向に変化する温度分布を得ることができ、温度計421y〜423y、424x、425y〜427yによれば、Y方向に変化する温度分布を得ることができる。これらの組合せにより、チャンバ10内の基板Wの任意の位置の温度を推定することにより、基板の温度分布を求める。
【0059】
ここで、非測定位置における温度は、第1実施形態と同様に、線形補間またはそれ以外の補間方法に推定により求めることができる。たとえば、線形補間を2つの方向に組み合わせて2次元的な補間を行い、それによって任意の位置の温度を推定することができる。
【0060】
たとえば、図10に示すような基板上の位置P0(x,y)の温度T0は、次の数5で表され得る。なお、本実施形態における座標値は、直交座標系で表現する。
【0061】
【数5】
【0062】
なお、温度T53は、位置P53(x5,y3)における温度であり、温度T63は、位置P63(x6,y3)における温度であり、温度T52は、位置P52(x5,y2)における温度である。また、これらの温度T53、T63、T52は、同様の線形補間により次の数6により求めておくことができる。
【0063】
【数6】
【0064】
【数7】
【0065】
【数8】
【0066】
基板W上の任意の位置について、同様にして、温度の推定値を求めることができるため、それを使用すれば基板Wの温度分布を推定により求めることができる。
【0067】
また、基板の温度分布が所定の直線に関して対称になることが保証される場合には、さらに温度計の数を減らすことが可能である。たとえば、図における直線LX(X軸)、LY(Y軸)に関して温度分布が対称になると仮定できる場合には、温度計425x〜427x、425y〜427yを設けずに、温度計421x〜424x、421y〜423yのみを配置し、配置された温度計421x〜424x、421y〜423yのみによって、基板Wの温度分布を推定することができる。
【0068】
以後の加熱制御は、第1実施形態と同様である。
【0069】
<D.第4実施形態>
第4実施形態における熱処理装置1は、ランプの配置が異なることを除いては、第3実施形態と同様の構成である。
【0070】
第3実施形態においては、2つの直交する方向に温度分布が変化すると仮定する場合について例示したが、第4実施形態においては、温度分布が所定の点(対称中心)に関して点対称になることが所定程度に保証される場合に相当する。このような対称中心の位置は基板の平面的な重心位置に相当し、たとえば、基板の形状が円形である場合には円の中心である。なお、円形基板には通常、オリフラまたはノッチが形成されているが、その影響についてはほとんど無視できるため、円形基板の中心を、その外形円の中心して扱っても大きな誤差はない。
【0071】
図11は、このような基板の温度分布を与えるランプ配列の一例を示す上面図である。図11においては、球状のランプの平行配列が、同心円状に配置されている。図11に示すようなランプ配列の場合には、温度分布が点対称であるとして近似できることが多い。温度分布が点対称性がほぼ完全に保証されている場合は、第1実施形態と同様の、図2(a)(b)に示すような位置に配置する温度計による測定によって、基板の全面に亙る温度分布を推定することができる。
【0072】
しかしながら、対称性があまり保証されない場合には、図2(a)(b)に示すような温度計の配置では、基板の温度分布を正確に推定することができない。そのような場合には、温度計を追加して測定位置を増やすことによって対処することができる。
【0073】
図12は、このような場合の温度計の配置の一例を示す上面図である。各温度計421r〜429rは、図に示すように十字形に配置されており、それぞれに対応する位置PR1〜PR9の温度TR1〜TR9を測定する。
【0074】
ここで、非測定位置における温度は、測定位置PR1〜PR9における測定温度TR1〜TR9に基づく補間によって推定することが可能である。ここでは、線形補間により、非測定位置PR12における温度TR12を求める場合について例示する。
【0075】
(1)まず、中間段階として、位置PR10における温度TR10と位置PR11における温度TR11とを求める。ここで、位置PR10と位置PR11とは、対称中心Oからの距離が等しい位置である。
【0076】
位置PR10は位置TR7と位置TR3とを1:2に内分する位置であるとすると、温度TR10は次の数9によって求められる。
【0077】
【数9】
【0078】
このように、直線上の異なる位置における測定温度に基づいて、その直線上の任意の点の温度を推定によって求めることができる。なお、補間(すなわち内分ないしは内挿)ではなく、外挿(すなわち外分)によって非測定位置の温度を求めることも可能である。
【0079】
同様に、位置PR11は位置TR8と位置TR4とを1:2に内分する位置であるとすると、温度TR11は次の数10によって求められる。
【0080】
【数10】
【0081】
このようにして、対称中心Oからの距離が同一の距離を有する2つの異なる位置における温度TR10,TR11を求めることができる。
【0082】
(2)つぎに、位置PR12が、位置PR10と位置PR11とを結ぶ円弧を2:1に内分する点であるとすると、温度TR12は、温度TR10と温度TR11とに基づいて次の数11によって求められる。
【0083】
【数11】
【0084】
上記のように、対称中心からの距離が同一の距離を有する2つの異なる位置における温度TR10,TR11に基づいて、その円上の任意の位置の温度を推定によって求めることができる。なお、この際、両測定位置相互間の角度の内分比に応じて求める場合を例示したが、外分比に応じて求めることも可能である。
【0085】
上記の(1)(2)により、基板上の任意の位置における温度を推定により求めることができるため、基板の温度分布を基板の全面に亙って求めることができる。
【0086】
図13は、上記の温度推定方法を一般的に拡張した場合について説明するための図である。すなわち、図12においては、直交する2本の直線上の異なる複数の位置の温度を測定するように温度計を配置したが、図13においては、任意の角度で交わる2本の直線La、Lb上の異なる複数の位置の温度を測定するように温度計を配置する場合を例示する。
【0087】
図13に示すように、基板上の任意の位置Q(r,θ)の温度Sは、一般的に、次の数12で表され得る。なお、本実施形態における座標値は、たとえば2つの直線La、Lbの交点Orを原点とする極座標系で表現する。
【0088】
【数12】
【0089】
ここで、温度S1は、位置Q1(r,θ1)における温度であり、温度S2は、位置Q2(r,θ2)における温度である。
【0090】
また、温度S1、S2は、実測値が存在しない場合は、次のようにして推定され得る。たとえば、位置(r11、θ1)における測定温度S11と、位置(r12、θ1)における測定温度S12とに基づいて、次の式13により、温度S1を推定することができる。
【0091】
【数13】
【0092】
同様にして、位置(r21、θ2)における測定温度S21と、位置(r22、θ2)における測定温度S22とに基づいて、次の数14により、温度S2を推定することができる。
【0093】
【数14】
【0094】
上記の数12〜数14によって表されるように、同一半径上の異なる2つの位置Q1,Q2の温度S1,S2に基づいて、その半径を有する円上の位置Qの温度Sを求めることができる。
【0095】
また、基板の温度分布が所定の直線に関して対称になることが保証される場合には、さらに温度計の数を減らすことが可能である。たとえば、基板の温度分布が図12の直線Lに関して対称になる場合には、温度計424r、425r、428r、429rを設けずに、温度計421r〜423r、426r、427rのみを配置し、配置された温度計のみによって温度分布を推定することができる。
【0096】
一方、基板の温度分布をさらに正確に測定するためには、角度θ方向に温度計の配列を追加して配列することができる。ただし、ある程度の対称性が保証されている場合、所定数以上の温度計を増設しても、温度分布精度の飛躍的な向上には結びつかない。したがって、要求される温度分布精度に応じた適切な数の温度計を配置することが望ましい。
【0097】
上記のような測定および推定によって求められた温度分布に基づいて、第1実施形態と同様の制御を行うことにより、基板の温度分布を均一にするように基板の加熱処理を行うことができる。
【0098】
<E.その他の変形例>
上記実施形態においては、各ゾーンに属する複数のランプの出力を求めるにあたって、基準出力指令値をそのまま加熱指令値として出力する場合を示したが、これに限定されない。たとえば、隣接するゾーンの基準出力指令値を参照して、基準出力指令値を修正して各ランプの加熱指令値を求めることなども可能である。
【0099】
また、上記実施形態において、基板の形状は円形である場合を示したが、基板上の温度分布が上記実施形態で示したような特性を有する分布であればよく、矩形形状などの基板にも本発明を適用することが可能である。
【0100】
上記実施形態においては、基板を加熱するランプは、基板面の一方の側のみに配置されていたが、基板面の両側にランプを配置して基板に対して加熱処理を行うこともできる。たとえば、第3実施形態における互いに直交する上下2段に配列された直管ランプの平行配列のうち、一方の方向の配列のものを基板面の上方に配置し、他方の配列を基板面の下方に配置することも可能である。
【0101】
さらに、上記実施形態においては、得られた温度分布に基づいて、自動的に各ランプの加熱指令値を求めて、基板の温度分布を均一にするような制御が行われる場合を例示した。しかしながら、たとえば、得られた温度分布を表示部60(図1、図6参照)などに表示し、操作者がこの表示部60の表示に基づいて、基板の温度分布を手動で調整することも可能である。また、基本的には自動制御を行う場合であっても、表示部60に表示された温度分布に基づいて、自動制御の際のパラメータ決定にあたって微妙な調整を行うこともできる。
【0102】
【発明の効果】
以上のように、請求項1ないし請求項6に記載の基板熱処理装置によれば、基板の複数の測定位置における温度を測定する複数の温度測定手段と、複数の測定位置のうち少なくとも2つの測定位置のそれぞれにおける測定温度に基づいて、基板の非測定位置における温度を推定する温度推定手段とを備えているので、加熱手段の加熱による基板の温度分布をリアルタイムで求めることができる。また、温度を得るべき所望の位置のうちの一部の位置の温度を求めるにあたって実際には温度計を設けずに温度を推定することができるので、より少ない数の温度計で所望の位置の温度を求めることができる。
【0104】
また、請求項1ないし請求項6に記載の基板熱処理装置によれば、加熱手段の複数のゾーンの加熱指令値を、複数の温度測定手段による測定温度と温度推定手段による推定温度とに基づいて変更することによって、基板の温度分布を制御する制御手段をさらに備えるので、基板の温度分布を均一化するような制御をより少ない数の温度計でリアルタイムで行うことができる。
【0105】
特に、請求項3および請求項4に記載の基板熱処理装置によれば、複数の測定位置は、基板上の特定位置からの距離が互いに異なるので、温度分布が点対称性を有する場合には、さらに少ない数の温度計で効率的に基板の温度分布を求めることができる。
【0106】
また特に、請求項5に記載の基板熱処理装置によれば、複数の測定位置は、第1の直線上に配列された第1の測定位置群を含む。したがって、温度分布が線対称性を有する場合に、さらに少ない数の温度計で効率的に基板の温度分布を求めることができる。
【0107】
また特に、請求項6に記載の基板熱処理装置によれば、複数の測定位置は、第1の直線に交わる第2の直線上に配列された第2の測定位置群をさらに含む。したがって、より細かい温度分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱処理装置1の概要構成を示す縦断面図である。
【図2】熱処理装置1における基板支持部20の下方部分を表す上面図である。
【図3】各ゾーンZ1〜Z7とそれらに対応する温度測定位置P1〜P4とを模式的に示す図である。
【図4】温度計421、424、425の配置を示す図である。
【図5】本制御方式の概略概念図である。
【図6】第2実施形態に係る熱処理装置1Bの概要構成を示す縦断面図である。
【図7】温度計の配置の一例を示す上面図である。
【図8】直線型のランプの平行配列が、上下に互いに直交するように配置される、ランプの配置例を示す図である。
【図9】温度計の配置の一例を示す上面図である。
【図10】図9の一部を拡大した図である。
【図11】基板上に点対称な温度分布を与えるランプ配列の一例を示す上面図である。
【図12】温度計の配置の一例を示す上面図である。
【図13】温度推定方法を一般的に拡張した場合について説明するための図である。
【符号の説明】
1,1B 基板熱処理装置
10 チャンバ
12,14 水路
20,20B 基板支持部
22 支持リング
24,24B 支持柱
26 回転駆動機構
30 基板加熱部
32 ランプ
40 温度測定部
42,421〜427 温度計
45 温度分布推定部
46 温度推定部
50 加熱指令値生成部
60 表示部
Ca,Cb 補償器
W 基板
Z1,Z2,Za,Zb ゾーン
Claims (6)
- 基板の熱処理を行う装置であって、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記基板の複数の測定位置における温度を測定する複数の温度測定手段と、
前記複数の測定位置のうち少なくとも2つの測定位置のそれぞれにおける測定温度に基づいて、基板の非測定位置における温度を推定する温度推定手段と、
前記加熱手段の複数のゾーンの加熱指令値を、前記複数の温度測定手段による測定温度と前記温度推定手段による推定温度とに基づいて変更することによって、前記基板の温度分布を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする基板熱処理装置。 - 請求項1に記載の基板熱処理装置において、
前記温度推定手段は、線形補間により前記非測定位置における前記基板の温度を推定することを特徴とする基板熱処理装置。 - 請求項1または請求項2に記載の基板熱処理装置において、
前記複数の測定位置は、前記基板上の特定位置からの距離が互いに異なることを特徴とする基板熱処理装置。 - 請求項3に記載の基板熱処理装置において、
前記基板を支持して回転する基板回転手段、
をさらに備え、
前記基板上の前記特定位置は、前記基板の回転中心であることを特徴とする基板熱処理装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板熱処理装置において、
前記複数の測定位置は、第1の直線上に配列された第1の測定位置群を含むことを特徴とする基板熱処理装置。 - 請求項5に記載の基板熱処理装置において、
前記複数の測定位置は、前記第1の直線に交わる第2の直線上に配列された第2の測定位置群をさらに含むことを特徴とする基板熱処理装置。
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