JP3995974B2 - フューエルデリバリパイプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の燃料供給系に使用されるフューエルデリバリパイプに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンにおける燃料供給系では、ポンプによって燃料供給配管を通して燃料をフューエルデリバリパイプに送り、このフューエルデリバリパイプに取り付けられているインジェクタから適正量の燃料をエンジンの吸気マニホールドに噴射している。
【0003】
従来のフューエルデリバリパイプは、金属製の箱状または管状の本体をもっており、大別してチューブを潰して加工し継ぎ目の無いものと、上下二つの箱状のケースをロー付けで接合したものとがある。
【0004】
まず、図8は、前者のフューエルデリバリパイプを示し、その本体部2は、金属製のチューブを潰して断面長方形にするとともに、その両端部に蓋をして密閉したものである。このフューエルデリバリパイプの本体部2の底面には、穴が複数形成され、各々の穴にインジェクタ取付用のホルダ4が取り付けられている。本体部2には、ブラケット6が2つ固着され、このブラケット6には取付ボルト穴7があけられている。
【0005】
これに対して、図11に示すフューエルデリバリパイプの本体部8は、板金をプレス加工してそれぞれ成形したアッパーケース10aとロアーケース10bの二つのケースからなり、ロアーケース10bにアッパーケース10aを組み合わせてから、重なり部分をロー付けすることにより、両者を一体に接合したものである。インジェクタ取付用のホルダ4はロアーケース10bの下面に取り付けられ、また取付ボルト穴7があいているブラケット6が同じように固着されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
フューエルデリバリパイプでは、それが用いられるエンジンのインジェクタの位置に応じて取付ボルト穴7の位置が自ずと決まってくる。
【0007】
図9のフューエルデリバリパイプの場合、本体部2が箱形であることから取付ボルト穴7に対する逃げを加工できないという制約を受けるので、本体部2から延ばしたブラケット6に取付ボルト穴7を形成しなければならず、図10に示すように、本体部2に近い位置に取付ボルト穴7のあるエンジンに取り付ける場合には、限界があるという問題がある。
【0008】
この点、図11のフューエルデリバリパイプでは、図12に示すように、アッパーケース10a、ロアーケース10bをプレス加工するときに同時に逃げとしての凹部9を形成しておくことにより、本体部8に接近させて取付ボルト穴7を配置することができるため、取付ボルト穴7の位置についての設計上の自由度が高いという利点はある。
【0009】
しかしながら、アッパーケース10a、ロアーケース10bの重なり部分をロー付けすることにより、本体部2の側面縦壁の板厚が倍になり、本体部2の剛性がそれだけ高くなる。
【0010】
自動車の燃料配管にあっては、インジェクタが開閉するたびに燃料の脈動現象が配管内に顕著に現れることが常に問題となり、この脈動を低減するためには、フューエルデリバリパイプ本体が圧力変動とともに変形して脈動を吸収することが有利であるが、フューエルデリバリパイプ本体の剛性が高すぎると、脈動吸収性は著しく低下する。
【0011】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、取付ボルト穴の位置等についての設計自由度を高めるとともに、脈動等を吸収性の高い柔構造のフューエルデリバリパイプを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、燃料供給系から燃料供給配管を通して圧送される燃料をインジェクタに供給するフューエルデリバリパイプにおいて、第1のケースと、前記インジェクタが取り付けられるインジェクタ取付部が底面に固着される第2のケースと、からフューエルデリバリパイプ本体部を構成し、前記第1のケース、第2のケースがそれぞれ端縁部を四囲するフランジ部を有しプレス加工により成形された長方形皿状で、かつ取付用ブラケットのボルト穴に対する逃げ部となる凹部が付加された同一形状を有し、前記第1のケースと第2のケースのフランジ部同士を重ねてロー付けまたは溶接により液密に接合したことことを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、縦壁面同士を同方向に重ね合わて厚みが倍になる継手構造と異なり、フランジ部同士が縦壁面とは略垂直になる継手構造となるので、第1ケースと第2ケースをロー付け接合した後で剛性が大きくならないようにすることができ、また、板金素材を絞ってプレス成形により取付ボルト穴等に対する逃げ形状を付加することが簡単であり、設計上の自由度を高くできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるフューエルデリバリパイプの一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
第1実施形態
図1は、本発明によるフューエルデリバリパイプについての第1の実施形態を示す斜視図である。参照符号20はフューエルデリバリパイプ、22は燃料配管で、これらがリターンレスシステムの燃料供給装置を構成している。図示しない燃料タンクの燃料は、ポンプから吐出されて燃料配管22を通ってフューエルデリバリパイプ20に供給されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、フューエルデリバリパイプ20の本体部は、この実施形態では、ロアーケース12とアッパーケース13をロー付けにより接合してなるものである。ロアーケース12とアッパーケース13は、板金に絞り加工を施すプレス加工工程を経て成形された同一形状の長方形皿状ケースで、それぞれ端縁部を四囲するようにフランジ部12a、13aが形成されており、フランジ部12a、13aは同じ幅をもって重なり合うようになっている。ロアーケース12、アッパーケース13の素材である鋼板は、例えば、SPCD、SPCE、SPCCなどの低炭素鋼や、SUS304、SUS304Lなどの耐熱鋼のものが用いられる。
【0017】
アッパーケース13には、燃料配管22の端末部が接続されている。ロアーケース12の底面には、所要数の燃料供給口が形成され、この燃料供給口には、図示しないインジェクタを取り付けるためのインジェクタ取付部15が固着されている。また、ロアーケース12には、取付用ブラケット16が2箇所に取りつけられている。この取付用ブラケット16の端部には、取付ボルト穴17が形成されている。
【0018】
この実施形態では、図1に示すように、取付ボルト穴17の位置はロアーケース12、アッパーケース13に接近した位置となっており、この取付ボルト穴17の位置に対応させて、ロアーケース12、アッパーケース13には逃げ部としての凹部18が形成されている。この凹部18に連なる部分のフランジ部12a、13aの幅は、他の部分よりも狭くなっている(図4参照)。
【0019】
このようなロアーケース12とアッパーケース13は、銀ろうなどのろう合金を介在させてフランジ部12a、13a同士を重ね合わせ、ロー付けにより液密に接合される。ロー付けによる接合の他、レーザ溶接や、高周波アーク溶接などの溶接によって接合してもよい。
【0020】
以上のような実施形態によれば、ロアーケース12とアッパーケース13とにフューエルデリバリパイプ20の本体部を分割し、本体部の側面縦壁とは略直角なロアーケース12のフランジ部12aと、アッパーケース13のフランジ部13b同士を重ね合わせて、ロー付け接合のための継手構造とすることで、図11に示した従来例のように、縦壁面同士を同方向に重ね合わて厚みが倍になる継手構造と異なり、ロー付け接合した後で本体部の剛性が大きくならないようにすることができる。このため、フューエルデリバリパイプ20内部の圧力変動とともに本体部の各壁面が変形して脈動を吸収する柔構造という観点からは、有利な構造となる。
【0021】
しかも、ロアーケース12、アッパーケース13は同一形状であり、板金素材を絞ってプレス成形できるので、量産性が高いとともに、取付ボルト穴17の位置などに対する設計上の自由度を高めることが可能となる。
【0022】
例えば、本実施形態のように、取付ボルト17穴の位置が本体部20に接近しているようなアレンジの場合、凹部18を逃げ形状として簡単に付加することができる。さらに、凹部18がある部位では、内圧の受圧面積が他の部位に比べて小さくなり、フランジ部12a、12bを引き剥がそうとする力が相対的に小さくなるため、フランジ幅を小さくできる。このことは、凹部18のへこみ量を少なくできることにつながるので、絞り加工が容易になる。
【0023】
第2実施形態
次に、図5並びに図6を参照しながら、本発明の第2の実施形態によるフューエルデリバリパイプについて説明する。
【0024】
この実施形態は、第1実施形態における取付用ブラケット16を用いることなく、エンジンに取りつけられるようにした実施形態である。
【0025】
凹部18の逃げ部の形状は、第1実施形態と同様であるが、この凹部18のある部位では、フランジ部12a、13bは幅広の延長部19となって取付ボルト穴17が形成されている。
【0026】
このような第2実施形態によれば、取付用ブラケット16の代用としてフランジ部12a、13bを活用して、部品点数を削減できる上に、取付ボルト穴17の位置についての設計自由度は第1実施形態と同様である。
【0027】
第3実施形態
図7は、本発明の第3の実施形態によるフューエルデリバリパイプ20を示す。この第3実施形態は、ロアーケース12を板状のロアープレート23とした実施形態である。
【0028】
この第3実施形態によれば、ロアーケース12の替わりのロアプレート23の周縁部がフランジ部として機能し、アッパーケース13のフランジ部13aとろう材を介在させて重ね合わせてロー付けすることができる。なお、アッパーケース13の方を板形状としても、同じようにフューエルデリバリパイプ20を構成することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、取付ボルト穴の位置等に対する逃げ形状を付加するについての設計自由度を高めるとともに量産性が高まり、しかも剛性を高めることなく脈動等を吸収性を高めた柔構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフューエルデリバリパイプの第1実施形態を示す斜視図。
【図2】第1実施形態によるフューエルデリバリパイプの本体の側面図。
【図3】第1実施形態によるフューエルデリバリパイプ本体の横断面図。
【図4】フューエルデリバリパイプ本体に設けた逃げ形状を示す平面図。
【図5】本発明の第2実施形態によるフューエルデリバリパイプの平面図。
【図6】第2実施形態によるフューエルデリバリパイプの横断面図。
【図7】本発明の第3実施形態によるフューエルデリバリパイプの横断面図。
【図8】従来のフューエルデリバリパイプを示す側面図。
【図9】図8のフューエルデリバリパイプの横断面図。
【図10】取付ブラケットの取付ボルト穴と本体の位置関係を示す平面図。
【図11】従来の他のフューエルデリバリパイプの横断面図。
【図12】図11のフューエルデリバリパイプの平面図。
【符号の説明】
12 ロアーケース
12a フランジ部
13 アッパーケース
13a フランジ部
16 取付用ブラケット
17 取付ボルト穴
18 凹部
19 延長部
20 フューエルデリバリパイプ
22 燃料配管
Claims (2)
- 燃料供給系から燃料供給配管を通して圧送される燃料をインジェクタに供給するフューエルデリバリパイプにおいて、
第1のケースと、前記インジェクタが取り付けられるインジェクタ取付部が底面に固着される第2のケースと、からフューエルデリバリパイプ本体部を構成し、前記第1のケース、第2のケースがそれぞれ端縁部を四囲するフランジ部を有しプレス加工により成形された長方形皿状で、かつ取付用ブラケットのボルト穴に対する逃げ部となる凹部が付加された同一形状を有し、前記第1のケースと第2のケースのフランジ部同士を重ねてロー付けまたは溶接により液密に接合したことを特徴とするフューエルデリバリパイプ。 - 前記凹部に対応させて前記フランジ部には取付用のボルト穴が形成された延長部分を有することを特徴とする請求項1に記載のフューエルデリバリパイプ。
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