JP3995475B2 - カメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム使用のスチルカメラにもデジタルスチルカメラにも適用可能なフォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のフォーカルプレンシャッタは、シャッタ羽根を二つ(先羽根(群)と後羽根(群))備えていて、それらを、シャッタ地板,中間板,補助地板と称されている3枚の板部材で構成された二つの羽根室に別々に配置している。また、電子スチルカメラ用のフォーカルプレンシャッタの中には、シャッタ羽根を一つしか備えていないものもあるが、その場合には、上記のうちの二つの地板だけで一つの羽根室を構成している。そして、いずれの場合にも、各シャッタ羽根は、一端をシャッタ地板の一方の面に枢着された二つのアームに対し1枚以上の羽根を枢支した構成になっている。
【0003】
また、シャッタ地板の他方の面には、露光用の開口部の側方領域に、シャッタ羽根に該開口部の開閉作動を行わせるためのシャッタ駆動機構が取り付けられている。そして、最近のフォーカルプレンシャッタは、撮影時におけるシャッタ羽根の作動開始時機を電気的に制御するようにしていることから、そのシャッタ駆動機構には電磁石の存在が欠かせないものとなっている。
【0004】
ところで、このようなフォーカルプレンシャッタを備えたカメラは、シャッタも含めたカメラの構成部材の作動によって、磨耗粉等の塵埃を発生させることが知られている。また、レンズ交換を行う際に外部から塵埃が進入してくることも知られている。そして、それらの塵埃が電磁石の吸着部位に付着してしまうと、電磁石の保持力に悪影響を与えたり、シャッタ羽根の作動開始のタイミングがずれてしまうことがある。そこで、そのようなことが生じにくいようにするための典型的な構成例が、実開昭61−140329号公報及び特開2001−281727号公報に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の実開昭61−140329号公報に記載されているものは、電磁石のみならず、一部ではあるが駆動ばねの付勢力によってシャッタ羽根を作動させる駆動部材までも、防塵部材によってカバーしている。そのため、電磁石に対する塵埃の付着は殆ど心配がない。しかしながら、防塵部材を独立した部材として製作し、それを取り付けるようにしているため、コスト面では有利といえない。また、最近の殆どのフォーカルプレンシャッタは、上記の特開2001−281727号公報に記載されているように、シャッタ駆動機構の被写体側に、電磁石を取り付ける支持板やプリント配線板が配置されるので、そのような構成の防塵部材を適用することができない。更に、フォーカルプレンシャッタは、ユニットとして構成した段階やカメラに組み付けた段階で、シャッタスピードの検査を行い、駆動ばねの付勢力を調整する必要があるが、このような構成の防塵部材の場合には、それを取り外したり再度組み付けたりする作業が決して容易とはいえない。
【0006】
また、特開2001−281727号公報に記載されているものは、露光用の開口部と、シャッタ駆動機構との間に、板状の防塵部材を取り付けたり、シャッタ地板に防塵用の折曲部を形成したりしている。そして、その板状の防塵部材は、シャッタ地板とは別部材であっても、その取付け方法は極めて簡単であり、駆動ばねを調整する場合にも取り外す必要は全くなく、防塵部材の設けられている側とは反対方向からピンセットなどを差し込んで、ラチェット車と爪部との係止位置を変えればよいようになっている。そして、このような、駆動ばねの調整は、シャッタ地板に防塵用の折曲部を形成するようにした態様のものも、同様にして行えるようになっている。しかしながら、それらのものは、露光用の開口部側からの防塵には効果があるが、シャッタ駆動機構に対して、開口部とは反対の方向から飛来する塵埃に対しては全く考慮されていない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、前記開口部とは反対側からシャッタ駆動機構に飛来する塵埃を防ぐのに有効であり、且つ組立後、駆動ばねの付勢力の調整や、電磁石を含むシャッタ駆動機構の清掃が簡単に行えるようにした低コストの防塵構成を有するカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、長方形をした露光用の開口部を形成している合成樹脂製のシャッタ地板と、前記シャッタ地板の一方の面に取り付けられていて前記開口部の開閉作動を行う少なくとも一つのシャッタ羽根と、前記開口部の一方の側方領域において前記シャッタ地板の他方の面に取り付けられており前記シャッタ羽根に前記開口部の開閉作動を行わせるシャッタ駆動機構と、を備えていて、前記シャッタ地板は、前記シャッタ駆動機構が前記開口部との間になる位置に、合成樹脂で一体成形されていて前記シャッタ地板の前記一方の面側に凸となるU字形の可撓部で折り曲げ可能な壁部と、合成樹脂で一体成形されたロック部を有していると共に、該壁部には合成樹脂で一体成形された可撓性のフック部を有していて、該壁部が折り曲げられて前記シャッタ駆動機構の側面に起立されたとき、前記フック部の復元習性により該フック部を前記ロック部に係合させ、その起立状態を前記可撓部の復元習性に抗して維持させるようにする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、図1は本実施例の斜視図であり、図2は図1の一部を破断して示した部分斜視図である。また、図3は本実施例における壁部の起立状態を示す部分平面図であり、図4は図2に示した可撓部の変形例を図2と同様にして示した部分斜視図である。
【0011】
図1において、シャッタ地板1は合成樹脂製であり、略中央部には横長の長方形をした露光用の開口部1aが形成されている。このシャッタ地板1の背面側には、上記の特開2001−281727号公報に記載されているように、図示していない中間板と補助地板が、所定の間隔を空けて順に取り付けられていて、シャッタ地板1と中間板の間に後羽根用の羽根室を構成し、中間板と補助地板の間に先羽根の羽根室を構成している。また、図示していない中間板と補助地板にも、開口部1aと類似の形状をした開口部が形成されていて、開口部1aと重なるように配置されている。そして、それらの三つの開口部の少なくとも一つによって,露光開口が規制されるようになっている。
【0012】
シャッタ地板1の背面には、先羽根と後羽根が取り付けられているが、本発明とは直接関係がなく、且つ周知の構成であるため、図1にはそれらの具体的な構成が示されていない。しかし、それらの構成は、上記の特開2001−281727号公報に記載されている構成と同じと考えてよい。即ち、図1は、シャッタのセット状態を示している。そのため、開口部1aは、展開状態となっている先羽根2の4枚の羽根によって覆われている。このとき、図示していない後羽根は、重畳状態となって開口部1aの上方位置に格納されている。そして、先羽根と後羽根は、各々、それらの4枚の羽根を、二つのアームの長さ方向に順に枢支しているが、それらのアームの一端は、何れも、図1の背面側において開口部1aの左側の領域に枢着されている。
【0013】
図1の表面側において、シャッタ地板1には、開口部1aの左側の領域にシャッタ駆動機構3が取り付けられている。このシャッタ駆動機構3の具体的な構成は、実用化されている周知のものと同じでよいことから、図1においては直方体のブロックとして二点鎖線で示してあるが、上記の特開2001−281727号公報に記載されている構成と同じあっても構わない。即ち、シャッタ駆動機構3の構成部材としては、先羽根と後羽根に各々連結された二つの駆動部材、それらの二つの駆動部材の作動開始を各々制御するための二つの電磁石、それらの二つの駆動部材をセットするセット部材、それらの二つの駆動部材を各々作動させるための二つの駆動ばね、それらの二つの駆動ばねの付勢力を各々調整可能にするための二つのラチェット車、などが含まれる。そして、それらの被写体側(図1の表面側)には、通常、それらを取り付けたりするのに必要な支持板やプリント配線板などが配置されている。
【0014】
既に説明したように、本実施例のシャッタ地板1は合成樹脂製である。そこで、図1に示すように、シャッタ地板1には、シャッタ駆動機構3の左側に、これまで知られていない形状の部位が、一体成形加工によって形成されている。先ず、壁部1bは、可撓部1cで折り曲げ可能となっており、さらに可撓性を有する二つのフック部1d,1dを有している。また、その壁部1bを間にして、各々の先端をロック部1e,1eとする二つの柱が形成されている。そして、それらのフック部とロック部によってロック手段を構成している。また、図2に示すように、本実施例の可撓部1cは、断面がV字状をした溝として形成されており、壁部1bを矢印方向へ折り曲げ可能にしている。しかし、本発明は、このような形状に限定されず、例えば、図4に示したような形状の可撓部1c′としても構わない。
【0015】
本実施例のシャッタ地板1は、このように構成されているため、図1において、壁部1bを矢印方向へ折り曲げ、シャッタ地板1の板面に対して約90度に起立させると、シャッタ駆動機構3の側面を覆うようになる。そして、この起立状態は、フック部1d,1dが一旦撓まされてから復元した後、可撓部1cの復元習性によって復元しようとするのをロック部1e,1eに係止されて、維持されるようになっている。図3は、その起立状態における一方のフック部1dとロック部1eとの係合状態を示したものである。尚、本実施例においては、フック部1d,1dを壁部1bに設けているが、図面で示すまでもなく、ロック部1e,1e側に設けても一向に差し支えない。更に、フック部の形状については、種々のものが考えられる。
【0016】
このように、本実施例によれば、壁部1bやロック部1e,1eは、シャッタ駆動機構3の構成設計に殆ど影響を与えない位置に設けられている。しかも、それらを、シャッタ地板と共に合成樹脂による一体成形加工によって形成しているので、コスト面で極めて有利である。そして、カメラに組み付けるときには、壁部1bを起立状態にして係止しておくため、カメラの使用中に図1の左側からシャッタ駆動機構3に進行してくる塵埃を遮断することが可能となる。また、壁部1bの起立状態において、フック部1d,1dの自由端側を押して撓ませれば、簡単に係止を解除することができ、シャッタ駆動機構3の清掃や駆動ばねの付勢力の調整などが行えるようになる。更に、その後、壁部1bを起立状態にする場合には、シャッタ地板と壁部1bとが別部材ではないので、面倒な位置合わせなどをしてから取り付ける必要がなく、単に、折り曲げ操作を行うだけで、必然的に起立状態に係止される。
【0017】
尚、上記の実施例においては、ロック部1e,1eをシャッタ地板1と共に合成樹脂の一体成形で形成しているが、シャッタ地板1に取り付けられた別部材に形成しても差し支えない。また、上記の実施例においては、開口部1aとシャッタ駆動機構3との間に何も配置しない場合で説明した。しかしながら、本発明は、その位置に、上記の特開2001−281727号公報に記載されているような防塵部材や防塵用の折曲部を設けることを妨げるものではない。また、上記の実施例においては、シャッタ羽根は、先羽根も後羽根も、二つのアームに4枚の羽根を枢支している場合で説明したが、各々の羽根は何枚であっても構わない。更に、上記の実施例は、先羽根と後羽根と称している二つのシャッタ羽根を備えているが、デジタルスチルカメラ用のフォーカルプレンシャッタの中には、シャッタ羽根を一つだけしか備えていないものもある。本発明は、そのようなシャッタにも適用することが可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、シャッタ地板に、シャッタ駆動機構が露光用の開口部との間になるようにして壁部を設けたから、該開口部とは反対側からシャッタ駆動機構に進入してくる塵埃を好適に遮断することができる。また、その壁部を、シャッタ地板と共に合成樹脂で一体成形しているため、コスト的に極めて有利である。更に、シャッタ地板は、ロック手段を有しており、しかも、壁部との間には可撓部を設けていて、その壁部を板面から約90度に折り曲げた状態でロック手段に係脱可能に係止させているので、シャッタ駆動機構の清掃や駆動ばねの付勢力の調整などを行いたいときは、簡単な操作でその係止を解除して行えるという特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の斜視図である。
【図2】図1の一部を破断して示した部分斜視図である。
【図3】実施例における壁部の起立状態を示す部分平面図である。
【図4】可撓部の変形例を図2と同様にして示した部分斜視図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b 壁部
1c,1c′ 可撓部
1d フック部
1e ロック部
2 先羽根
3 シャッタ駆動機構
Claims (1)
- 長方形をした露光用の開口部を形成している合成樹脂製のシャッタ地板と、前記シャッタ地板の一方の面に取り付けられていて前記開口部の開閉作動を行う少なくとも一つのシャッタ羽根と、前記開口部の一方の側方領域において前記シャッタ地板の他方の面に取り付けられており前記シャッタ羽根に前記開口部の開閉作動を行わせるシャッタ駆動機構と、を備えていて、前記シャッタ地板は、前記シャッタ駆動機構が前記開口部との間になる位置に、合成樹脂で一体成形されていて前記シャッタ地板の前記一方の面側に凸となるU字形の可撓部で折り曲げ可能な壁部と、合成樹脂で一体成形されたロック部を有していると共に、該壁部には合成樹脂で一体成形された可撓性のフック部を有していて、該壁部が折り曲げられて前記シャッタ駆動機構の側面に起立されたとき、前記フック部の復元習性により該フック部を前記ロック部に係合させ、その起立状態を前記可撓部の復元習性に抗して維持させるようにしたことを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
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