JP3992858B2 - 表面処理用組成物 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の技術分野】
本発明は、表面処理用組成物に関するものであり、さらに詳しくは、室温での長期にわたる良好な貯蔵性を有し、各種製品および材料等の表面に塗布した後に大気中に存在する湿気等の水分もしくは若干の加熱による有効な硬化被膜を形成し、種々の環境下における基材の浸食、腐食、酸化および劣化を抑えるためのコーティング剤、並びにエンジニアプラスチック、電着アルミ、塩ビ鋼板等の難接着基材に対する接着力を向上させるためのプライマーとして有用な表面処理用組成物に関するものである。本発明の組成物は金属、プラスチック、セラミックス、ガラス、木材等の基材の被覆に適するものであり、かつシール剤の密着を向上させるのに適するものであり、機械工業、自動車工業、電気・電子機器工業、建築分野等の各種産業分野で広く利用できるものである。
【０００２】
【発明の技術的背景とその問題点】
従来より、基材表面を種々の浸食環境条件から保護する目的で、各種の処理剤および塗料等が用いられている。これらの中で、常温で被膜を形成あるいは硬化するものは、熱エネルギー不要であり、省資源、省エネルギーおよび工程が簡便であることから広く用いられている。これらの例として、ニトロセルロース系等のクリアーラッカー、ポリウレタン系およびエポキシ系等の二液型の常温硬化型のもの、アルキッド系およびポリブタジエン系の空気乾燥型のもの、およびシリコーン系湿気硬化型のものが挙げられる。
これらのもののうち、エポキシ系のものはアミン系の硬化剤を使用し、常温もしくは低温で速やかに硬化し、強靱な被膜を形成し金属等に優れた密着性を示すため、広い分野で用いられている。しかしながら、これらのアミン硬化型のエポキシ組成物は、二液型であるため、硬化剤の配合時の計量および混合の煩雑さ、可使時間の短さ等の作業上の制約が多い。また、金属以外の材質の基材に用いた場合、密着性に劣り、使用に制限がある。
【０００３】
【発明の目的】
本発明者らは、従来のコーティング組成物が有していた上記の問題点、すなわち各種材質の基材には適応できない、二液型であるための作業上の制約が大きい等の問題点を解消し、優れた耐食性を基材に付与可能な被膜を、常温ないしは若干の加熱で硬化・形成し、かつ貯蔵安定性に優れる表面処理用組成物を提供することを目的とする。
【０００４】
【発明の構成】
すなわち、本発明は基本的に下記の２成分を含有することを特徴とする表面処理用組成物である。
(A) オキシラン環含有化合物
(B) 一般式(1) で表されるアミン環官能基含有化合物
【０００５】
【化２】

【０００６】
（式中、R¹およびR²は一価の置換または非置換の炭化水素であり、ｎは０〜３の整数、ｍは０〜２の整数である。）
【０００７】
【発明の構成】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる(A) オキシラン環含有化合物とは、一般的にエポキシ化合物またはエポキシ樹脂といわれるものを示し、分子末端あるいは分子鎖中にオキシラン環を有する化合物であり、例えば以下のようなものが例示される。
・エポキシアルキルアルコキシシラン
３−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、３−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、２−（３，４−エポキシシクロヘキシル）エチルトリメトキシシラン、３−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、２−（３，４−エポキシシクロヘキシル）エチルメチルジメトキシシラン
【０００８】
【化３】

【０００９】
【化４】

【００１０】
・複素環式エポキシ樹脂
ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート
【００１１】
【化５】

【００１２】
【化６】

【００１３】
中でも、特に好ましいのは、貯蔵安定性を加味した場合、エポキシアルキルアルコキシシラン、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂および構造中に水酸基を含まないものである。
【００１４】
本発明で用いられる(B) アミン環官能基含有化合物は、(A) 成分のオキシラン環と反応することにより、強固な被膜を形成するとともに、オキシラン環の開環の触媒作用を示すものである。また、プライマー特性の向上、基材への密着性を向上させるものである。
(B) アミン環官能基含有化合物としては、１，１−ジメトキシ−２−トリメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタン、１，１−ジエトキシ−２−トリブチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタンなどのシクロペンタン環化合物およびこれらのアルコキシ部がシロキサン鎖のものや窒素原子に結合したシリル化部がシロキサン鎖のものなど例示される。中でも、貯蔵安定性から、窒素原子に結合する珪素の置換基が比較的大きいもの、例えばブチル基、フェニル基などのものが好ましく、シロキサン鎖の様なものが好ましい。また、アルコキシ部分も炭素数が大きいものが好ましいが、加水分解性との兼ね合いから炭素数が１〜４程度が好ましい。
本発明において、(B) 成分の配合量は、(A) 成分のオキシラン環１当量に対して0.02〜５モルとなる量が好ましくは、より好ましくは0.02〜２モルとなる量である。この範囲を外れると、塗布対象物への塗工に際し、成膜性が低下したり、硬化速度が低下し、塗膜の物性をも低下させるので好ましくない。
【００１５】
本発明で用いられる(C) 樹脂成分は、被膜形成成分として配合されるものである。これらの成分としては、炭化水素系樹脂、例えばブタジエン系樹脂、また、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが用いられる。
【００１６】
また、本発明で用いられる(D) アクリロイル基および／またはメタクリロイル基含有化合物としては、３−（メタ）アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、３−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、３−（メタ）アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、３−（メタ）アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシランが例示される。これらの化合物はコーティング被膜に可撓性をもたせ、かつ密着性とりわけ耐水条件下における密着性を向上させる目的で配合されるものである。
【００１７】
本発明のおいては、適度な塗工性、安定性を得るため溶剤を用い、希釈するのが好ましい。使用される溶剤としては非極性、極性溶剤の広範囲なものが可能であるが、活性水素を有するものは好ましくない。使用可能な溶剤の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ｎ−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【００１８】
また、種々の目的で他の成分を添加することが可能である。例えば、防錆剤、有機カルボン酸金属塩などのアルコキシ基の縮合用触媒、塗工時の流れ性を改良するための微粉末シリカ、ベントナイト等のチクソトロピー性付与剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などが挙げられる。
【００１９】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の表面処理用組成物が有していた上記の問題点、すなわち各種材質の基材には適応できない、二液型であるための作業上の制約が大きい等の問題点が解消され、優れた耐食性を基材に付与可能な被膜を常温ないしは若干の加熱で硬化し、かつ貯蔵安定性に優れる表面処理用組成物（コーティング剤、プライマー）を提供することができる。
【００２０】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部とあるのはいずれも重量部を表し、粘度などの物性値はすべて25℃、相対湿度60％での値を示す。
・貯蔵安定性：
密閉容器中にて50℃、１ヶ月間、また室温にて３ヶ月間放置し性状の変化を観察した。
・密着性試験：
電気亜鉛メッキ電解クロメート処理鋼板、塩ビ鋼板を、組成物溶液に浸漬塗布したものを風乾した後、カッターナイフで１mm間隔で100 個の碁盤目を入れ、セロテープを押し付けた後、引き剥がして観察し、碁盤目の残存率を評価した。
【００２１】
・温水浸漬試験：
密着性試験と同様に準備した試験体を40℃の温水に10日間浸漬した後、密着性試験と同様な碁盤目の残存率を評価した。
【００２２】
・プライマー特性：
シール剤に以下に示すものを用いて密着性を評価した。
ＴＳＥ３９２；一成分脱アルコール型シリコーン接着剤 東芝シリコーン（株）製
ＴＳＥ３８２；一成分脱オキシム型シリコーン接着剤 東芝シリコーン（株）製
ＰＯＳシール；一成分変性シリコーン セメダイン（株）製
エポソフト；一成分弾性エポキシ 横浜ゴム（株）製
ＴＯＰＫＯＬ−Ｓ；一成分ポリサルファイド 東レチオコール（株）製
また、40℃の温水に10日間浸漬した後、密着性を評価した。
【００２３】
実施例１
オキシラン環含有化合物（エピコート８２８；油化シェル（株）製）と、１，１−ジメトキシ−２−トリメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタンとをトルエンに、表１に示す配合量で混合・溶解してコーティング組成物を調製した。
実施例２
実施例１と同様操作にて、１，１−ジエトキシ−２−フェニルジメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタンを用いて、コーティング組成物を調製した。
比較例１
３−アミノプロピルトリメトキシシランを環状アミン類の代わりに用いて、実施例１と同様操作にてコーティング組成物を調製した。
比較例２
オキシラン環含有化合物（エピコート８２８；油化シェル（株）製）をトルエンに溶解したものを比較例２として評価を行った。
実施例３〜５
表１に示す配合量および実施例１と同様操作にて、組成物を調製した。
【００２４】
【表１】

【００２５】
*1：１，１−ジメトキシ−２−トリメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタン
*2：１，１−ジエトキシ−２−フェニルジメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタン
*3：アロニクスＭ−８０３０（東亜合成化学（株）製）
実施例６、比較例４
実施例１および比較例１の組成物について、プライマー特性を評価した。結果を表２に示す。
【００２６】
【表２】

Claims (5)

1. (A) オキシラン環含有化合物
   (B) １，１−ジメトキシ−２−トリメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタン、１，１−ジエトキシ−２−トリブチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタン及び１，１−ジエトキシ−２−フェニルジメチルシリル−１−シラ−２−アザシクロペンタンより選ばれるアミン環官能基含有化合物
   を有効成分とする表面処理用組成物。
2. (C) 成分として、樹脂成分を含有する請求項１記載の表面処理用組成物。
3. (D) 成分として、アクリロイル基および／またはメタクリロイル基含有化合物を含有する請求項１又は２記載の表面処理用組成物。
4. 請求項１〜３の何れか１項記載の表面処理用組成物からなるコーティング剤。
5. 請求項１〜３の何れか１項記載の表面処理用組成物からなるプライマー。