JP3992628B2 - 窒化物系半導体基板の製造方法及び窒化物系半導体素子の製造方法 - Google Patents

窒化物系半導体基板の製造方法及び窒化物系半導体素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は窒化物系の半導体層を有する半導体レーザ、発光ダイオード等の窒化物系半導体素子に用いられる窒化物系半導体基板の製造方法、及び窒化物系半導体素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクシステムの高容量化が伸展しつつある。これに対応するために、光源の短波長化、すなわち青色又は紫色の光を発する窒化物系半導体レーザの研究開発が活発化している。
【0003】
従来、この種の窒化物系半導体レーザは、サファイア基板上に作成されている。しかし、サファイア基板とその上に形成される窒化物系半導体層とは結晶学的方位が異なるため、へき開面が一致せず、良好な共振器面を形成することが困難であるという問題がる。
【0004】
この問題を解決するものとして、GaN基板上に窒化物系半導体層を形成した窒化物系半導体レーザが研究開発されている。
【0005】
しかしながら、このGaN基板上を用いた窒化物系半導体レーザにおいては、超高速パルス駆動時における光出力の立上り、立下りに時間を要し、立上り、立下り特性が悪いという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高速動作が可能な窒化物系半導体発光素子を形成するのに適した窒化物系半導体基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
また、本発明は上記従来例の欠点に鑑み為されたものであり、高速動作が可能な窒化物系半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともGaとNを含有する窒化物系半導体基板上に、窒化物半導体層が形成されてなる窒化物系半導体発光素子おいて、前記窒化物系半導体基板に含まれるClの濃度がパルス駆動時における光出力の立上り、立下り時間に影響を及ぼすことを見出すことにより為し得たものである。
【0009】
具体的には、本発明の窒化物系半導体基板の製造方法は、ハイドライドVPE法を用いて窒化物系半導体基板を製造する方法において、基板上に、Clの濃度が3×1015cm−3以下である少なくとGaとNを含有する層を、ハイドライドVPE法により成長させる工程と、前記少なくとGaとNを含有する層から前記基板を除去する工程と、前記少なくともGaとNを含有する層の上面を所定角度傾斜させて研磨する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような製造方法により製造された窒化物系半導体基板を用いた窒化物系半導体発光素子では、パルス駆動時における立上り、立下り時間が大幅に短くなる。
【0011】
更に、前記Clの濃度が1×1015cm-3以下になると、窒化物系半導体素子のパルス駆動時における立上り、立下り時間が十分に短くなる。
【0012】
また、本発明の窒化物系半導体発光素子の製造方法は、上述の本発明の窒化物系半導体基板の製造方法により形成された窒化物系半導体基板上に、発光層を有する窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする。尚、窒化物系半導体層は、GaN、AlN、InN、BN若しくはTlN又はこれらの混晶等のIII−V族系半導体からなる化合物半導体層である。
【0013】
このような製造方法により製造された窒化物系半導体発光素子では、パルス駆動時における立上り、立下り時間が大幅に短くなる。
【0014】
更に、前記窒化物系半導体基板に含まれるClの濃度が1×1015cm-3以下になると、パルス駆動時における立上り、立下り時間が十分に短くなる。
【0015】
これらの理由は定かではないが、窒化物系半導体基板に含まれているClの濃度が低くなることにより、窒化物系半導体素子の抵抗成分或いは容量が低下するためと推測される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態である一実施例の半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0018】
本実施例の半導体レーザ装置は、リッジ導波型の半導体レーザ装置であり、後述するn型GaN基板1の(0001)面からわずかに傾斜した面上に、OMVPE法(有機金属気相エピタキシー法)により、Siドープのn型GaNからなる厚さ3μmの第1コンタクト層2、Siドープのn型In0.1Ga0.9Nからなる厚さ0.1μmのクラック防止層3、Siドープのn型Al0.07Ga0.93Nからなる厚さ1.5μmの第1クラッド層4、後述する多重量子井戸構造の発光層5、Mgドープのp型Al0.07Ga0.93Nからなる厚さ1.5μmの第2クラッド層6、Mgドープのp型GaNからなる厚さ0.05μmの第2コンタクト層7が順に積層された半導体ウエハにより構成されている。
【0019】
上記半導体ウエハには、反応性イオンエッチング又は反応性イオンビームエッチングにより第2クラッド層6を所定の厚さ(例えば0.05μm)を残して除去されてストライプ状のリッジ部8が形成される。尚、リッジ部8の幅は1.5〜5.0μmである。
【0020】
また、リッジ部8の両側面から第2クラッド層6の平坦面には厚さ0.5μmのn型Al0.12Ga0.88Nからなる電流阻止層9が形成されている。
【0021】
さらに、第2コンタクト層7の上面から電流阻止層9の上面にわたって、Mgドープのp型GaNからなる厚さ0.5μmの第3コンタクト層10が形成されている。
【0022】
また、第3コンタクト層10上にはp型電極11が形成され、GaN基板1の裏面にはn型電極12が形成されている。
【0023】
図2は発光層5の構造を示す断面図である。発光層5は第1クラッド層4上に形成されたSiドープのn型GaNからなる厚さ0.1μmの第1光ガイド層51と、その上に形成されたSiドープのn型In0.02Ga0.98Nからなる厚さ6nmのバリア層521と、Siドープのn型In0.10Ga0.90Nからなる厚さ3nmの井戸層522と、Siドープのn型In0.02Ga0.98Nからなる厚さ6nmのバリア層523と、Siドープのn型In0.10Ga0.90Nからなる厚さ3nmの井戸層524と、Siドープのn型In0.02Ga0.98Nからなる厚さ6nmのバリア層525と、Siドープのn型In0.10Ga0.90Nからなる厚さ3nmの井戸層526と、Siドープのn型In0.02Ga0.98Nからなる厚さ6nmのバリア層527とが順に積層された多重量子井戸構造の活性層52と、その上に形成されたMgドープのp型GaNからなる厚さ0.1μmの第2光ガイド層53とからなる。
【0024】
上記窒化物化合物半導体各層2〜7、9、10は、OMVPE法により形成される。原料ガスとして、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、NH3、SiH4、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いる。
【0025】
次に、本実施例の半導体レーザで用いたGaN基板1の製造方法について、図3を用いて説明する。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、厚さ400μmのサファイア基板21上にアンドープのAl0.5Ga0.5Nからなる低温バッファ層22を例えば600℃で成長させ、その上に例えば1050℃でアンドープの第1GaN層23を成長させ、更にその上にストライプ状のSiO2膜24を形成する。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、ストライプ状のSiO2膜24間に露出したGaN層23上にアンドープの第2GaN層25を選択成長させる。
【0028】
続いて、第2GaN層25上にMgドープのGaN層を成長させることにより、図3(c)に示すように、SiO2膜24上およびSiO2膜24間の第2GaN層25上に、上面が平坦である第3GaN層26を形成する。
【0029】
尚、第3GaN層26をアンドープのGaN層により形成することも可能であるが、この場合、上面を平坦化するためには、Mgドープとする場合より厚いGaN層を成長させる必要がある。
【0030】
また、上記図3(a)〜(c)の工程において、窒化物化合物半導体各層22、23、25、26は、OMVPE法により形成される。この時、原料ガスとして、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、アンモニア(NH3)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いる。
【0031】
次に、塩化ガリウム(GaCl)、NH3、SiH4を原料とするハイドライドVPE法により、図3(d)に示すように、Siドープの第4GaN層27を成長させる。
【0032】
尚、塩化ガリウムは、ハイドライドVPE装置の反応管内において、サファイア基板21上に上述の各層が形成された図3(c)に示すウエハよりも上流側に設置されたボート内の金属Gaと、その更に上流側から供給される塩化水素(HCl)とが反応することによって生成される。
【0033】
また、この図3(d)の工程において第4GaN層27を成長する際のサファイア基板21の温度や、HClの流量によって、第4GaN層27に含まれる塩素(Cl)濃度が変化する。
【0034】
次に、サファイア基板21側から図3(d)に示す破線a−a’まで、研磨またはエッチングを行うことにより、サファイア基板21、Al0.5Ga0.5バッファ層22、第1GaN層23、SiO2膜24、第2GaN層25、第3GaN層26の全部、および第4GaN層27の一部を除去する。この除去により残った第4GaN層がn型のGaN基板1となる。
【0035】
n型のGaN基板1は上面が(0001)面であり、この(0001)面から[2−1−10]方向に所定角度(本実施例では0.5°)傾斜させて研磨することにより、微傾斜基板を作製することができる。
【0036】
図1に示す本実施例の半導体レーザは、このようにして作製された微傾斜のGaN基板1の表面上に、上述したようにOMVPE法による結晶成長、エッチングによるリッジ形成、さらに埋め込み成長、および電極の蒸着を行うことにより作製される。
【0037】
次に、この半導体レーザにおいて、GaN基板1中に含まれるCl濃度の異なる基板面上に半導体レーザを作製し、超高速パルス駆動時の半導体レーザの光出力の立上り、立下り時間に及ぼすCl濃度の影響を調べた。その結果を図4に示す。
【0038】
尚、GaN基板1中に含まれるCl濃度は、上述したようにGaN基板1を作製する図3(d)の工程において、第4GaN層27を成長する際のサファイア基板21の温度及びHClの流量を変化させることによって行った。
【0039】
具体的には、サファイア基板21の温度を1000℃、HCl流量を30μmol/minとすることにより、GaN基板1中のCl濃度は、1×1016cm-3となり、サファイア基板21の温度を1020℃、HCl流量を30μmol/minとすることにより、GaN基板1中のCl濃度は、5×1015cm-3となり、サファイア基板21の温度を1040℃、HCl流量を30μmol/minとすることにより、GaN基板1中のCl濃度は、3×1015cm-3となり、サファイア基板21の温度を1040℃、HCl流量を20μmol/minとすることにより、GaN基板1中のCl濃度は、2×1015cm-3となり、サファイア基板21の温度を1060℃、HCl流量を30μmol/minとすることにより、GaN基板1中のCl濃度は、1×1015cm-3となり、サファイア基板21の温度を1060℃、HCl流量を15μmol/minとすることにより、GaN基板1中のCl濃度は、5×1014cm-3となった。
【0040】
また、GaN基板1に含有されるCl濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定した。具体的には、上述の手順で作製されたGaN基板1の表面側からCl(質量数35及び37)の深さプロファイルを得る。イオン源(一次イオン)には、Cs+イオンを用い加速電圧14.4keVとする。Cl濃度の校正には、別途用意したアンドープGaN単結晶層中に1×1013cm-2のドーズ量でClがイオン注入された試料を標準試料として、上述と同一条件でSIMS分析を行い比較することにより行った。
【0041】
尚、サファイア基板21の温度を1060℃、HCl流量を15μmol/minとした場合(図4の括弧内のデータ)、GaN基板1中のCl濃度は、前述の二次イオン質量分析法では検出限界以下となったが、HCl供給量とGaN基板中のCl濃度がほぼ比例する関係にあり、サファイア基板21が1060℃、HCl流量が30μmol/minであるときGaN基板1中のCl濃度が1×1015cm-3であることから、5×1014cm-3程度であると推察した。
【0042】
また、立上り時間は、パルス幅20ns、デューティー比50%(周波数25MHz)で半導体レーザを駆動したときに、光出力が10%から90%に増加するのに要する時間と定義した。また、立下り時間は、立上り時間とは逆に、パルス幅10ns、デューティー比50%(周波数50MHz)で半導体レーザを駆動したときに、光出力が90%から10%に減少するのに要する時間と定義した。尚、光出力100%とは、10mWに対応する。
【0043】
図4から判るように、n型GaN基板1中のCl濃度の低下とともに光出力の立上り、立下り時間が減少し、Cl濃度を3×1015cm-3にすることにより、立上り、立下り時間が大幅に短くなり、特にCl濃度を1×1015cm-3にすることにより、立上り時間0.7ns、立下り時間1nsと高速動作が可能である。
【0044】
尚、本発明は上述の構成以外の発光素子においても適用可能なことは当然であり、例えば、電流阻止層9を、第2クラッド層6に接する側からi型のAl0.12Ga0.88Nとn型Al0.12Ga0.88Nを順に形成した2層からなる電流阻止層としても良い。
【0045】
また、少なくともGaとNを含有する窒化物系半導体基板として、上述の実施例では、GaN基板を用いたが、GaNにAl、In、B、Tl等の元素を更に含んでも良い。
【0046】
【発明の効果】
本発明に依れば、高速動作可能な窒化物系半導体発光素子を形成するのに適した窒化物系半導体基板の製造方法を提供し得る。
【0047】
また、本発明に依れば、高速動作可能な窒化物系半導体発光素子の製造方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザの全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体レーザの発光層の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の半導体レーザの製造方法を示す図である。
【図4】本発明の半導体レーザにおけるGaN基板に含まれるCl濃度とパルス駆動時の立上り、立下り時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 GaN基板(窒化物系半導体基板)
4 第1クラッド層(窒化物系半導体層)
5 発光層(窒化物系半導体層)
6 第2クラッド層(窒化物系半導体層)
21 サファイア基板(基板)
27 第4GaN層(少なくとGaとNを含有する層)

Claims (2)

  1. ハイドライドVPE法を用いて窒化物系半導体基板を製造する方法において、
    基板上に、Clの濃度が×1015cm−3以下である少なくともGaとNを含有する層を、ハイドライドVPE法により成長させる工程と、
    前記少なくともGaとNを含有する層から前記基板を除去する工程と、
    前記少なくともGaとNを含有する層の上面を所定角度傾斜させて研磨する工程と、
    を備えたことを特徴とする窒化物系半導体基板の製造方法。
  2. 請求項に記載の窒化物系半導体基板の製造方法により形成された窒化物系半導体基板上に、発光層を有する窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
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