JP3991993B2 - 液体噴射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体噴射装置に関するものである。
一般に、A0版等の大型の紙に画像を印刷するプリンタは、インク消費量が多いため、大容量のインクを貯留したインクカートリッジが用いられる。そのため、インクカートリッジをキャリッジに搭載すると、キャリッジが重くなり多大な負荷がかかる。従って、図10に示す従来の大型プリンタでは、各色のインクカートリッジ271を、記録ヘッド272が設けられたキャリッジ273に搭載させない構成、いわゆるオフキャリッジ型、になっている。
インクは、交換可能に固定された各インクカートリッジ271から可撓性の各チューブ274(図10では1つのみ図示)を介してキャリッジ273の記録ヘッド272に供給される。そのため、キャリッジ273の移動に伴ってチューブ274内の圧力が変動すると、インクの吐出に影響し、所定量のインクを吐出することが難しくなる。そこで、キャリッジ273とチューブ274との間には、図11に示すように圧力ダンパ室275が設けられるとともに、インクカートリッジ271の吐出口の高さ位置Cがインクのノズル吐出口の高さ位置Nよりも常に下となるように配置されている。
このプリンタにおいて、図10に示すキャリッジ273の下方の領域Eは、印刷された紙Sの排出領域となっている。そして、印刷中にインクカートリッジ271のインクの交換を容易にするため、紙Sの排出領域Eの側方に、インクカートリッジ271が配設される。従って、チューブ274の長さは、印刷可能な紙Sの大きさの最大幅、すなわちキャリッジ273の最大移動幅W以上に必要となる。
ところで、インクの圧力損失は、チューブ274の長さに比例し、内径の4乗に反比例する。すなわち、多ノズル化や印字の高速化に伴ってインク消費量が増加してインクの圧力損失が大きくなる場合、インクをインクカートリッジ271から確実にキャリッジ273へと導くには、チューブ径を大きくする必要がある。そのため、チューブの屈曲径が大きくなり、プリンタを小型化することが難しかった。
この発明は、液体収容体の液体に加わる圧力損失を低減して、小型化を可能とした液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ターゲットに対して相対移動しながら、液体噴射ヘッドの複数のノズルから液体を噴射して前記ターゲットに前記液体を付着させるキャリッジと、前記キャリッジから上方に離間した位置に設けられ、前記キャリッジに供給される前記液体を貯留する液体収容体と、前記液体収容体と前記キャリッジとの間に配置され、液体収容体からキャリッジに至る液体流路を形成する可撓性の供給管と、前記キャリッジに搭載され、前記供給管から前記液体噴射ヘッドに至る液体流路に設けられた弁機構とを備えた液体噴射装置において、前記弁機構は、前記供給管及び前記液体流路を介して前記液体収容体に接続されると共に前記液体流路を介して前記液体噴射ヘッドに接続された圧力室と、該圧力室に前記液体収容体側から前記液体を供給するために前記供給管と前記圧力室との間の前記液体流路を開放又は閉鎖する弁体と、該弁体を前記液体流路を閉鎖する方向へ付勢するバネと、前記ノズルからの液体の噴射に基づいた前記圧力室内の液体の減少によって生じる負圧により変形し、その変形に伴い前記弁体を押圧することにより該弁体を前記バネの付勢力に抗して前記液体流路を開放するように動作させる可撓性のフィルムとを備え、前記液体収容体は、前記キャリッジが移動する範囲の上方の領域であって、前記弁機構より所定高さだけ上方となる位置に配設されており、前記所定高さは、その高さでの位置水頭が、前記液体収容体から前記供給管を介して前記液体が前記弁機構に至るまでの圧力損失による圧力水頭と、前記フィルムが変形して前記弁機構の前記弁体を開弁状態とするときに必要な前記圧力室の圧力による圧力水頭と、前記液体収容体における液体の消費による液体の位置水頭の変化との和以上の位置水頭となるように設定されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記所定高さは、その高さでの位置水頭が、前記液体収容体から前記供給管を介して前記液体が前記弁機構に至るまでの圧力損失による圧力水頭と、前記フィルムが変形して前記弁機構の前記弁体を開弁状態とするときに必要な前記圧力室の圧力による圧力水頭と、前記液体収容体における液体の位置水頭変化との和と同じ位置水頭となるように設定されていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記液体収容体は、前記キャリッジが移動する範囲の上方の領域内のほぼ中央に配設されていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記圧力室は、剛性を有するケースの側面に対して該側面に形成された凹部を覆うように前記フィルムが貼着されることにより形成されていることを要旨とする。
本発明によれば、インクの圧力損失を小さくすることで、小型化が可能な液体噴射装置を提供することができる。
(第1実施形態)
以下、この発明の第1の実施形態にかかる液体噴射装置を図面に従って詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、プリンタ)210は、逆T字形状の1対の支持柱211,212を備えている。各支持柱211,212の下方には、プリンタの移動を容易に行うため、一対のキャスタ213が設けられている。また、支持柱211,212には、これらを連結する連結棒214が設けられるとともに、その上方に略直方体形状をしたハウジング215が支持されている。
ハウジング215の右側上部には、操作パネル216が突設されている。この操作パネル216は、複数の操作ボタン217及び表示画面218を有している。従って、操作パネル216は、処理内容を表示画面218に表示しながら、ユーザによる操作ボタン217の選択により、所定の印刷を行うことができる。また、ハウジング215には、その背面側に図示しない接続部が設けられており、この接続部を介して図示しないコンピュータが接続されている。従って、ハウジング215に内蔵されている図示しないメモリには、そのコンピュータから受信した印刷データが記憶される。
ハウジング215の背面側には、給紙部219が設けられ、この給紙部219には、巻心219aに巻かれたターゲットとしての紙Sが収容されている。また、このハウジング215には、図示しない紙送り機構が設けられており、この紙送り機構により紙Sが、後述するプラテン235へと送られる。
ハウジング215の外部においてその中央上部には、インクカートリッジ収容部220が固着されている。このインクカートリッジ収容部220には、液体収容体としての各色(例えばシアン、マゼンタ、イエロ及びブラックの4色)のインクカートリッジ221,222,223,224が前面から交換可能に配置されている。詳述すると、インクカートリッジ221〜224は、扁平な直方体の箱状であって、その最大面積部分が上向き及び下向きに配置され、かつ各インクカートリッジ221〜224が同一平面上に配設されている。各インクカートリッジ221〜224内には、図2に示すように、液体であるインクが貯留されたインクパック225が内蔵されている。各インクカートリッジ221〜224のインクパック225の中央には、外部に突出したインク導出口221a,222a,223a,224aが設けられている。各インク導出口221a,222a,223a,224aには、供給管としての可撓性のチューブ226,227,228,229の先端に設けられた針Iがそれぞれ装着される。
一方、ハウジング215の内部には、図3に示すように、左右一対の駆動プーリ231及び従動プーリ232に掛け装されたタイミングベルト233と、ガイド軸234とが配置されている。また、同ハウジング215の中央下側には、紙Sが載置されるプラテン235が配設されている。更に、このプラテン235の上方には、キャリッジ236が配設されている。このキャリッジ236は、前記ガイド軸234に係合されて案内されるとともに、前記タイミングベルト233に係合して駆動される。従って、このキャリッジ236は、前記プラテン235と所定の隙間をおいて、プラテン235の上方に配置されるとともに、X方向に移動可能となっている。
キャリッジ236には、図2に示すように、インクを吐出する複数のノズルが形成された記録ヘッド237が設けられている。また、このキャリッジ236には、記録ヘッド237の上方に位置するように、各インクカートリッジ221〜224に対応するバルブユニット241〜244が設けられている。各バルブユニット241〜244は、図2〜図4に示すように、同一の構造を有している。なお、図2において、バルブユニット241は図4の241−241線に沿った断面図によって示され、バルブユニット242,243は図5の242−242線に沿った断面図によって示され、バルブユニット244は図4の244−244線に沿った断面図によって示されている。
各バルブユニット241〜244は、図2、図4及び図5に示すように、例えば剛性のある合成樹脂などからなる略円筒状のケース245を備えている。図4に示すように、同ケース245の第一側面には、略円筒状の凹部245aと、屈曲された2つの溝部245b,245cとが形成されている。これら凹部245a、溝部245b及び溝部245cを覆うように、導入側フィルム248が、ケース245の第一側面に熱溶着により貼着されている。これにより、前記凹部245aが供給室250となり、溝部245bが供給室250に連通する供給路251となり、溝部245cが排出路253となる。
また、図5に示すように、同ケース245の第二側面には、略円筒状の凹部245dが形成されている。そして、第二側面には、駆動体としての排出側フィルム249が、熱溶着により貼着されており、これにより凹部245dは、圧力室252を構成する。
なお、導入側フィルム248及び排出側フィルム249は、軟質であって、インク性状に化学的な影響を及ぼさず、更に水分透過度や酸素や窒素透過度の低い材質が重要である。そこで、フィルム248及び249は、高密度ポリエチレンあるいはポリプロピレンフィルムに、塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成から成る。これは、供給室250及び圧力室252の圧力状態を、両フィルムにて効率的に感知するためである。なお、本実施形態の導入側フィルム248及び排出側フィルム249は、透明である。
また、ケース245の中央には、前記供給室250及び圧力室252を互いに連通するための貫通孔245eが設けられるとともに、圧力室252と排出路253とを連通する連絡路253aが設けられている。
更に、同ケース245には、前記チューブ226〜229が接続される接続部246と、記録ヘッド237に接続されるインク導出部247とが形成されている。接続部246には前記供給路251と前記チューブ226〜229とを接続する通路形成孔246aが形成され、インク導出部247には前記排出路253から前記記録ヘッド237へと続く通路形成孔247aが形成されている。
従って、チューブ226〜229から接続部246の通路形成孔246aに至ったインクは、供給路251、供給室250、貫通孔245e、圧力室252、連絡路253a、排出路253及び通路形成孔247aを介して、記録ヘッド237に供給される。
一方、図2に示すように、弁体255は、軸部255a及びこの軸部255aと一体形成された円板部255bから成り、その軸部255aが前記貫通孔245eに挿通され、円板部255bが供給室250に位置している。また、円板部255bの背面には、閉弁用バネ257の一端が圧接され、この閉弁用バネ257の他端は、バネ座258に圧接されている。従って、閉弁用バネ257は、弁体255を排出側フィルム249側(図の右側)に付勢する。供給室250側(図の左側)の貫通孔245eの周囲には、シール部材259が固着されている。従って、閉弁用バネ257が弁体255を図2の右方に付勢することにより、前記弁体255の円板部255bがシール部材259を圧接して、弁体255は貫通孔245eを塞いで閉弁する(図2のバルブユニット242参照)。
一方、前記排出側フィルム249の外側には、剛性のある受圧板254が、前記ケース245の貫通孔245eに対して同心的に固着されている。受圧板254は、可撓性の排出側フィルム249が圧力室252の圧力を受ける度に変形してしまうことを極力防ぎ、常に同じ圧力を受けた場合には同じように供給室250側(左側)に撓んで、弁体255の軸部255aを同じように押圧するためのものである。また、圧力室252には、負圧保持バネ260が配設されている。この負圧保持バネ260は、貫通孔245eの周囲に当接しているとともに、排出側フィルム249を押圧している。従って、負圧保持バネ260は、圧力室252内のインクの自重によって圧力室252内の圧力が不均一となって、弁体255の軸部255aを偏った状態で押圧されることを極力防いでいる。
次に、バルブユニット241〜244の弁体255に対するインクカートリッジ収容部220の高さH(mm)の設定方法について、図2,6及び図7を参照して説明する。
記録ヘッドがインクを消費している際の圧力室252の圧力Pvは、弁体255の開放圧力Poに等しい。開放圧力Poは負圧であるから、マイナスの符号となり、以下の式で示される。
Pv=−Po ・・・(1)
また、この開放圧力Poは、図6に示すように供給室250に配設された閉弁用バネ257の付勢力Ke、圧力室252に配設された負圧保持バネ260の付勢力Ko、排出側フィルム249が変形する際の抵抗力fm、位置水頭Hにより弁体255の円板部255bの背面に加わる力Pcの和より大きい必要がある。そのため、開放圧力Poは以下の式で表される。
Po≧Ko+Ke+fm+Pc
ここで、弁体255の円板部255bにかかる力Pcは位置水頭により変化するため、圧力室252の圧力Pvは図7の点線dLに示すようになる。しかしながら、円板部255bの面積が微小であるため、円板部255bにかかる力Pcは無視できる程小さい。そのため、位置水頭Hを変えても大きな開放圧力Poには影響が及びがたく、開放圧力Poは、Po=a(一定)の直線L1で表されると考えても差し支えない。
一方、供給室250の圧力Pkは、インクカートリッジ収容部220から供給室250までの高さによる位置水頭Hと、チューブ226〜229の圧力損失Ptの和となる。圧力損失Ptは負圧であるから、マイナスの符号となり、以下の式で表される。
Pk=−Pt+H ・・・(2)
位置水頭Hがゼロの場合、Pk=−Ptとなり、位置水頭Hを高くしていけば、供給室250の圧力Pkは図7の直線L2で示されるようになる。
そして、インク消費中における(2)式で示される供給室250の圧力Pkが、(1)式で示される圧力室252の圧力Pv以上である場合に、インクは供給室250から圧力室252へ十分供給されることになる。即ち、
Pk≧Pv = −Pt+H≧−Po
となり、上式よりインクが供給室250から圧力室252へ十分供給されるための位置水頭Heは以下の式で表されることになる。
He≧−Po+Pt
また、位置水頭Hを変化させた場合の、圧力室252の圧力Pvは図7の直線L1と直線L2とを結んだ線で表される。
H≧Heと設定した場合、記録ヘッドが印字のためにインクを消費した場合でも、インクは供給室250から圧力室252へ十分に供給される。従って、弁体255は圧力室252の圧力を調製しながら開閉(自己封止)することになり、圧力室252の圧力Pvは−Poに等しくなって、Pv=−Poが成立する。
H<Heと設定した場合、記録ヘッドが印字のためにインクを消費した場合に、供給室250から圧力室252へのインクの供給が不足気味となり、それを解消すべく、弁体255を常に開放した状態で圧力室252へインクが供給される。この場合、圧力室252の圧力Pvは次の式、Pv=−Po−H
によって表される。
圧力室252の圧力は記録ヘッドへの供給圧力となるため、小さい程良い。従って、本実施形態におけるカートリッジ収容部220の高さHはHe以上とすべきである。
次に、インクカートリッジ収容部220の高さH(mm)について、具体的な数値を用いて説明する。例えば、インクカートリッジ221〜224から供給室250に至るチューブ226〜229の圧力損失Ptが150(mmHO)であって、弁体255の開放圧力Poが100(mmHO)であるとする。このとき、インクが供給室250から圧力室252へ十分に供給されるために必要な位置水頭Heは以下のように表される。
He=−100(mmHO)+150(mmHO)=50(mmHO)
また、開放圧力Pvと圧力損失Pfは同じで、例えば、チューブ226〜229を長くして、圧力損失Ptが200(mmHO)まで増加した場合には、図7に二点鎖線で示すように位置水頭Heは100(mmHO)と、高くなる。
次に、本実施形態のプリンタの作用について説明する。
プリンタ210を使用するにあたっては、給紙部219に巻心219aに巻かれた紙Sが収容され、インクカートリッジ収容部220に各色のインクカートリッジ221〜224が収容される。また、インクカートリッジ221〜224のインク導出口221a〜224aが針Iに係合される。
そして、プリンタ210は、接続された図示しないコンピュータから印刷データを受信すると、その印刷データをメモリに蓄積する。次に、印刷データの印刷が実行されると、図示しない紙送り装置により前記紙Sがハウジング215へと導入される。そして、プリンタ210は、紙Sがプラテン235及びキャリッジ236の間に至ると、キャリッジ236の記録ヘッド237の吐出口から適宜インクを吐出させながら、キャリッジ236をX方向に移動させて、印刷を行う。
詳述すると、記録ヘッド237からインクが吐出されると、その吐出されたインクの容積分だけバルブユニット241〜244の圧力室252の容積が減少し、一定の負圧が発生する。この負圧が上述した開放圧力Poとなる。この負圧により排出側フィルム249が、閉弁用バネ257及び負圧保持バネ260に抗して、導入側フィルム248側に変形する(図2のバルブユニット243参照)。排出側フィルム249が変形すると、排出側フィルム249に固着した受圧板254が移動して弁体255を当接し、弁体255を左方に押圧する。これにより弁体255が左方に移動して、円板部255bがシール部材259から離れ、供給室250は貫通孔245eを介して圧力室252と連通し、供給室250からインクが圧力室252に流入する。インクが圧力室252に流入すると、圧力室252の負圧が解消され、弁体255は閉弁用バネ257の付勢力により右方に移動されて、閉弁する(図2のバルブユニット242参照)。
プリンタ210は、上述のようにインクを吐出しながら、キャリッジ236がX方向に一往復移動させる度に、図示しない紙送り機構を駆動して、紙Sをプリンタ210の下方に移動させる。そして、上述した一連の動作を繰り返しながら、印刷を行う。
本実施形態のプリンタ210によれば、以下のような効果を得ることができる。
(a)本実施形態では、インクカートリッジ221〜224は、キャリッジ236の可動領域であって、記録ヘッド237の上方に設けられている。そのため、インクカートリッジ221〜224の記録ヘッド237からの水頭差によりインクが記録ヘッド237に供給されるので、加圧ポンプなどのインク供給装置を設ける必要がない。また、チューブ226〜229の長さは、各インク導出口221a〜224aから最も遠いキャリッジ236の可動範囲まであればよいので、従来の場合よりも、記録ヘッド237にインクを供給するチューブ226〜229を短くすることができる。すなわち、圧力損失を小さくすることができるので、記録ヘッド237からインクカートリッジ221〜224までの高さHを低くしても、インクを記録ヘッド237により確実に供給することができる。従って、記録ヘッド237からインクカートリッジ221〜224までの高さHを従来よりも低くすることができるので、プリンタ210を小型化することができる。
(b)本実施形態では、キャリッジ236の記録ヘッド237の上流側に、供給室250の圧力が圧力室252の圧力より高い場合に閉弁するバルブユニット241〜244を設けている。そのため、インクカートリッジ221〜224が記録ヘッド237より上方にあっても、その圧力によって記録ヘッド237からインクが漏出することがない。また、記録ヘッド237からインクカートリッジ221〜224までの水頭差を利用してインクカートリッジ221〜224のインクを記録ヘッド237に供給するので、インクを記録ヘッド237に供給するための加圧ポンプなどの大がかりな装置を設ける必要がない。そのため、一層、プリンタ210を小型化することができる。加えて、インクカートリッジ収容部220がキャリッジ236の上方に配設されているため、印刷中に、印刷された紙Sがキャリッジ236の下方に排出された場合であっても、インクの交換が容易に行える。
(c)本実施形態では、バルブユニット241〜244の弁体255からインクカートリッジ収容部220までの高さHは、チューブ226〜229の圧力損失Ptによる圧力水頭と、バルブユニット241〜244の弁体255の開放圧力Po(負圧)による圧力水頭との和に等しい位置水頭となっている。そのため、高さHにより生じるエネルギによって、インクカートリッジ221〜224のインクは、記録ヘッド237までより確実に供給することができる。従って、インクは記録ヘッド237からスムーズに吐出することができる。
(d)本実施形態では、バルブユニット241〜244の弁体255からインクカートリッジ収容部220までの高さHは、チューブ226〜229の圧力損失Ptの圧力水頭と、バルブユニット241〜244の弁体255の開放圧力Po(負圧)による圧力水頭との和に等しい位置水頭となっている。すなわち、インクカートリッジ221〜224のインクを記録ヘッド237に対してより確実に供給することができる最も低い高さHとなっている。従って、より一層、プリンタ210を小型化することができる。
(e)本実施形態では、インクカートリッジ221〜224を扁平な箱状に形成し、平らに配設したので、インクジェット式プリンタ210の高さ寸法をより小さくすることができる。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。ただし、以下の各実施形態において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第2実施形態の液体噴射装置としてのプリンタ210のインクカートリッジ収容部220は、プリンタ210のほぼ中央に配設されており、縦長形状のインクカートリッジ221〜224を収容している。
更に、本実施形態では、バルブユニット241〜244の弁体255からインクカートリッジ221〜224までの高さHは、インクカートリッジ221〜224内のインクパック225内における静水頭変化をdとすると、次の式のように設定されている。
H=He+d ・・・(3)
すなわち、本実施形態のインクカートリッジ収容部220の高さHは、インク消費によるインクカートリッジ221〜224内の静水頭の変化を考慮したものとなっている。
従って、本実施形態のプリンタ210においても、インクカートリッジ収容部220にインクカートリッジ221〜224が収容されて、針Iに係合され、弁体255が閉弁した状態となっている。そして、プリンタ210は、上記第1実施形態と同様に、印刷が実行されると、紙Sをプラテン235及びキャリッジ236の間に搬送しながら、かつキャリッジ236をX方向に移動させながら、キャリッジ236の記録ヘッド237からインクが吐出させて、印刷を行う。
その後、インクカートリッジ221〜224内のインクが消費されると、インクカートリッジ221〜224内の静水頭が負圧となる。従って、インクが記録ヘッド237のノズルの吐出口から吐出されて圧力室252内の容積が減少したことに伴って発生する負圧により、供給室250から圧力室252へのインクの供給が不足し、圧力室252の圧力が大幅に低下するおそれが発生する。しかしながら、本実施形態の高さHは、上記第1実施形態の位置水頭Heに、インクカートリッジ221〜224内のインクの深さによる静水頭変化dを加えた値に設定されている。そのため、インクカートリッジ221〜224内のインクがほとんど消費されたとしても、供給室250の圧力は、圧力室252の圧力より高く、供給室250から圧力室252へのインクの供給は十分に行われ、圧力室内の圧力は適切に保たれる。
従って、本実施形態は、上記実施形態の(a)、(b)及び(d)と同様の効果を得ることができるとともに、以下の効果を得ることができる。
(f)本実施形態においては、インクカートリッジ収容部220内に、プリンタ210のほぼ中央で左右に整列するように、インクカートリッジ221〜224が収容されている。従って、各インクカートリッジ221〜224から各バルブユニット241〜244にインクを供給するチューブ226〜229の長さは、キャリッジ236の可動範囲のほぼ半分とすることができる。従って、キャリッジにインクが供給されるチューブ226〜229をより短くすることができるので、圧力損失をより小さくすることができ、プリンタ210をより小型化することができる。
(g)本実施形態においては、高さHは、インクカートリッジ221〜224内のインクの深さによる水頭差変化を考慮した値に設定されている。そのため、インクカートリッジ221〜224内のインクがほとんど消費された場合であっても、スムーズにインクカートリッジ221〜224内のインクを記録ヘッド237へと供給することができる。
なお、上記第1,第2実施形態は、以下のように変更してもよい。
上記各実施形態においては、圧力室252に負圧保持バネ260を配設した。この負圧保持バネ260は、コストの低減などのために省略してもよい。
上記第1実施形態においては、バルブユニット241〜244の弁体255からインクカートリッジ221〜224までの高さHを、チューブ226〜229の圧力損失Ptによる圧力水頭と、バルブユニット241〜244の弁体255の開放圧力Po(負圧)による圧力水頭との和の位置水頭Heと同じにした。また、上記第2実施形態では、高さHをHe+dと同じとした。しかしながら、バルブユニット241〜244の弁体255からインクカートリッジ221〜224までの高さHは、位置水頭Heと全く同じでなくても、位置水頭He以上であればよい。この場合であっても、インクカートリッジ221〜224のインクを、より確実にバルブユニット241〜244に供給することができる。
上記第2実施形態においては、インクカートリッジ221〜224を収容するインクカートリッジ収容部220をハウジング215の中央に載置した。しかしながら、プリンタの他の構成部品の配置に応じて、インクカートリッジ収容部220はインクジェット式プリンタ210の中央でなくても、キャリッジ236の可動範囲内であればよい。この場合にも、従来よりチューブ226〜229を短くすることができるので、圧力損失を低減することができ、プリンタ210の小型化に寄与することができる。
上記各実施形態では、インクパック225を収容したインクカートリッジ221〜224について説明した。これに代えて、例えば、多孔質体にインクを貯留したインクカートリッジ221〜224を用いるようにしてもよい。
第1実施形態のプリンタの斜視図。 図1のプリンタの要部を示す部分拡大断面。 図1のプリンタの要部を示す平面図。 図1のプリンタに使用するバルブユニットの左側面図。 同じくバルブユニットの右側面図。 バルブユニットに作用する力を示す概念図。 バルブユニットの高さと圧力損失との関係を示す図。 第2実施形態のプリンタの要部を示す斜視図。 図8におけるプリンタの要部を示す部分拡大断面図。 従来例におけるプリンタの正面図。 図10のプリンタの構成を示す概略図。
符号の説明
S… ターゲットとしての紙
221,222,223,224… 液体収容体としての各色のインクカートリッジ
226,227,228,229… 供給管としての可撓性のチューブ
236… キャリッジ
237… 液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド
255… 弁機構を構成する弁体
257… 弁機構を構成する閉弁用バネ

Claims (4)

  1. ターゲットに対して相対移動しながら、液体噴射ヘッドの複数のノズルから液体を噴射して前記ターゲットに前記液体を付着させるキャリッジと、
    前記キャリッジから上方に離間した位置に設けられ、前記キャリッジに供給される前記液体を貯留する液体収容体と、
    前記液体収容体と前記キャリッジとの間に配置され、液体収容体からキャリッジに至る液体流路を形成する可撓性の供給管と、
    前記キャリッジに搭載され、前記供給管から前記液体噴射ヘッドに至る液体流路に設けられた弁機構とを備えた液体噴射装置において、
    前記弁機構は、前記供給管及び前記液体流路を介して前記液体収容体に接続されると共に前記液体流路を介して前記液体噴射ヘッドに接続された圧力室と、該圧力室に前記液体収容体側から前記液体を供給するために前記供給管と前記圧力室との間の前記液体流路を開放又は閉鎖する弁体と、該弁体を前記液体流路を閉鎖する方向へ付勢するバネと、前記ノズルからの液体の噴射に基づいた前記圧力室内の液体の減少によって生じる負圧により変形し、その変形に伴い前記弁体を押圧することにより該弁体を前記バネの付勢力に抗して前記液体流路を開放するように動作させる可撓性のフィルムとを備え、
    前記液体収容体は、前記キャリッジが移動する範囲の上方の領域であって、前記弁機構より所定高さだけ上方となる位置に配設されており、
    前記所定高さは、その高さでの位置水頭が、前記液体収容体から前記供給管を介して前記液体が前記弁機構に至るまでの圧力損失による圧力水頭と、前記フィルムが変形して前記弁機構の前記弁体を開弁状態とするときに必要な前記圧力室の圧力による圧力水頭と、前記液体収容体における液体の消費による液体の位置水頭の変化との和以上の位置水頭となるように設定されている液体噴射装置。
  2. 前記所定高さは、その高さでの位置水頭が、前記液体収容体から前記供給管を介して前記液体が前記弁機構に至るまでの圧力損失による圧力水頭と、前記フィルムが変形して前記弁機構の前記弁体を開弁状態とするときに必要な前記圧力室の圧力による圧力水頭と、前記液体収容体における液体の位置水頭変化との和と同じ位置水頭となるように設定されている請求項1に記載の液体噴射装置。
  3. 前記液体収容体は、前記キャリッジが移動する範囲の上方の領域内のほぼ中央に配設されている請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
  4. 前記圧力室は、剛性を有するケースの側面に対して該側面に形成された凹部を覆うように前記フィルムが貼着されることにより形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
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